説明

ガス置換を行う包装袋の製造方法および縦型包装機

【課題】包装袋の密封を行う前にガス置換を行う包装袋の製造方法に関し、ガス供給時の内容物の舞い上がりが生じにくく、しかも効率的にガス置換を行うことができる包装機等を提供する。
【解決手段】包装機1は、筒状フィルム10内に内容物を供給する内容物供給手段と、ガス置換を行うためガス筒状フィルム内に不活性ガスを供給するガス供給手段と、内容物が供給された筒状フィルム10の上方開口部を密封する横シール装置20とを有している。ガス供給手段は、不活性ガスの通路であるガス供給通路56を含み、該ガス供給通路56は、投入パイプ52の外周面と筒状部材34の内周面との間に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺シート状のフィルムを袋状に形成しながらその中に食品等を投入して包装袋(袋詰め製品)を製造する技術に関し、特に、包装袋内の空気を他のガスに置換することができる包装機および包装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばポテトチップスや鰹節などを袋詰めする包装機として、図9に示すような構成のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図9の包装機102は、大きく分けてフィルム繰出機構112と製袋機構113とで構成されており、フィルム繰出機構112から引き出された長尺なシート状のフィルム110が製袋機構113側で袋状に形成され、それにより包装体122が連続的に製造されるようになっている。
【0004】
製袋機構113は、より具体的には、フィルム110を筒状に折り込む製袋ガイド114と、製袋ガイド114によって筒状とされたフィルムの両側縁同士を熱シールする縦シール装置116とを有している。縦シール装置116の近くには、エンドレスベルト式のフィルム送り装置118が配置されており、これにより、筒状とされたフィルム110(「筒状フィルム」とも言う)が下方に送られるようになっている。
【0005】
横シール装置120は、フィルム送り装置118等よりもさらに下方に配置されており、筒状フィルムを横方向(幅方向)に熱シールできるように一対の部材を備えている。この一対の部材の一方にはカッター130が設けられており、これにより、包装体122が筒状フィルムから切り分けられるようになっている。
【0006】
筒状とされたフィルムの内部には、投入パイプ104とガス供給管132とが配置されている。投入パイプ104の上部にはホッパー106が設けられており、このホッパー106から、内容物がフィルム内に供給されるようになっている。ガス供給管132は、より具体的には図10に示すように、筒状の投入パイプ104の内周面に沿って上下方向に延びる比較的細い管であり、その下端の開口部134から窒素ガスが送出されるようになっている。
【0007】
以上のように構成された包装機の動作について、以下、簡単に説明する。なお、フィルム110はあらかじめ図9のような状態にセットされており、製袋ガイド114によって筒状とされ、投入パイプ104の外周面に沿って案内される状態となっている。筒状フィルムの下端には、前回の製袋動作で形成されたシール部110aが残っており、これにより筒状フィルムが有底状となっている。
【0008】
このような状態(図9参照)で、まず、ガス供給管132を通じて筒状フィルム内に窒素ガスが供給される。供給された窒素ガスは筒状フィルム内の空気と混合され、混合された空気がフィルムの上方開口部から外部へと押し出されていくことで、内部の残留酸素濃度が徐々に低下していく。なお、このようにガスが供給されている状態では、筒状フィルム内は陽圧となっており、筒状フィルムは張った状態となっている。
【0009】
次いで、一袋分の内容物が、ホッパー106から投入パイプ104を通じて筒状フィルム内に供給される。窒素ガスの供給はこの間も継続して行われているため、内容物に含まれていた空気(一例として、ポテトチップスの個々の小片同士の間に存在していた空気など)も排除されることとなる。
【0010】
次いで、横シール装置120を動作させ、筒状フィルムに対し熱シールを施して包装体122の上部側を密封する共に、カッター130により、包装体122をフィルムから切り分ける。この状態では、筒状フィルムのシール部110aが横シール装置120の高さに位置しているので、次の製袋動作のために、次いでフィルム送り装置118を動作させ、図9に示すような位置まで筒状フィルムを引き下ろす。このような1袋についての製袋動作を1サイクルとして、上記同様の工程を繰り返し行っていくことで包装袋122が連続的に製造されることとなる。
【0011】
上述したようなガス置換を行う包装機については例えば特許文献2等にも開示がある。同文献の構成では、図11に示すように、ホッパー206に連通するように設けられた投入パイプ204の内部にガス供給管232が設けられている。
【特許文献1】特開平10−53217号公報
【特許文献2】特開2001−55206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述したような従来の構成では、内容物の供給の妨げとならないように、ガス供給管132、232は比較的細い通路として構成されていたため、短時間に多量の不活性ガスを供給しようとすると、供給管から吹き出されるガスの流速はどうしても速くなってしまう。このようにガスの流速が速い場合、筒状フィルム内に投入された内容物が上方に舞い上げられたり、あるいは、底部への内容物の投入が妨げられたりする可能性があった。こうした問題を生じさせないようにする1つの方策として、不活性ガスをゆっくりと供給することが考えられるが、これでは生産性を低下させるおそれもある。さらに上記に加え、ガス置換においては、筒状フィルム内の空気をいかに効率的に不活性ガスと置換するかも重要である。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、包装袋の密封を行う前にガス置換行う包装袋の製造方法に関し、不活性ガスの供給時に内容物の舞い上がりが生じにくく、しかも効率的にガス置換を行うことができる、包装袋の製造方法およびその方法を実施可能な包装機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の包装袋の製造方法は、有底状とされた筒状フィルム内にガス置換のための不活性ガスを供給する工程と、投入パイプを通じて、前記筒状フィルムの上方開口部から包装すべき内容物を供給する工程と、前記筒状フィルム内に前記内容物が供給された後に前記筒状フィルムの前記上方開口部を密封する工程とを有する包装袋の製造方法において、前記不活性ガスを供給する工程は、前記投入パイプの外周面と、前記投入パイプの外側に配置された筒状部材の内周面との間に形成されたガス供給通路から前記不活性ガスを送出させることを特徴とする。
【0015】
上記本発明の製造方法を良好に実施するための縦型包装機は、有底状とされた筒状フィルム内に、筒状の投入パイプを通じて、包装すべき内容物を該筒状フィルムの上方開口部から供給する内容物供給手段と、ガス供給通路を通じて、ガス置換のための不活性ガスを前記筒状フィルム内に供給するガス供給手段と、前記筒状フィルム内に前記内容物が供給された後に前記筒状フィルムの前記上方開口部を密封する横シール手段とを有する縦型包装機において、前記ガス供給手段は、前記投入パイプの外側に配置された筒状部材を有し、前記ガス供給通路が、前記投入パイプの外周面と前記筒状部材の内周面との間に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、投入パイプと筒状部材との間に形成されたガス供給通路を通じて筒状フィルム内に供給されるようになっていることから、次のような利点が得られる。すなわち、本発明におけるガス供給通路は、例えば図10に示したような従来の構成(比較的細い管を通じてガスを供給する構成)と比較して通路断面積が増加するため、供給されるガスの送出速度が低下し、その結果、内容物も舞い上がりにくくなる。また、投入パイプの外側にガスの供給通路が設けられているため、該通路のレイアウト等の自由度も向上する。さらに、環状のガス供給通路から不活性ガスを供給する場合、筒状フィルム内へのガスの行き渡りが良いという利点もある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環状のガス供給通路から不活性ガスを供給してガス置換を行うものであるため、上述したようにガス供給時の内容物の舞い上がりが生じにくく、しかも効率的にガス置換を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳しく述べる。図1は、本発明に係る縦型包装機の全体構成を概略的に示す正面図であり、図2は、図1の縦型包装機の側面図である(包装機の筐体は不図示)。
【0019】
包装機1は、基本的には従来の構成と同じように、原反ロールRから引き出されたフィルム10’を筒状に折り込む製袋ガイド14と、製袋ガイド14によって筒状とされたフィルムの両側縁同士を熱シール(縦シール)する縦シール装置26とを有している。本明細書においては、縦シール装置26によって縦シールされた状態のフィルム10’を、「筒状フィルム(10)」と呼ぶものとする。
【0020】
縦シール装置26の近くには(図2参照)、フィルム送り装置28として一対のエンドレスベルト28A、28Bが配置されており、これを駆動させることで、フィルムが下方に搬送されるようになっている。各エンドレスベルト28A、28Bは、筒状フィルム10に対して進退移動可能に構成されると共に、吸引力によりフィルムをベルト表面に吸着させながら、フィルムの搬送を行うことができるように構成されている。
【0021】
横シール装置20は、フィルム送り装置28よりさらに下方に配置されており、筒状フィルムの上方開口部を熱シールして密封することができるように、一対の部材を備えている。図1に示すように、一対の部材のうちの一方は、加熱手段(不図示)を内臓したヒータバー21であり、他方は、ヒータバー21に対して対向配置された受け部材22である。詳細な図示を省略するが、受け部材22にはカッターが設けられており、このカッターにより製造された包装袋115が筒状フィルム10から切り分けられるようになっている。
【0022】
次に、本発明に係る包装機1の特徴部である内容物供給機構30およびガス供給機構50について説明する。内容物供給機構30の主な機能は、筒状フィルムの内部に内容物(例えばポテトチップスや鰹節など)を供給することである。ガス供給機構50の主な機能は筒状フィルムの内に例えば窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給することである。
【0023】
内容物供給機構30は、所定分量の内容物を一時的に蓄えるホッパー31と、該ホッパー31の下方に設けられた投入パイプ52とを有しており、ホッパー31に供給された内容物が、投入パイプ52内の内容物供給経路36を通じて、筒状フィルム内へと投入されるようになっている。投入パイプ52の形状としては、断面形状が楕円形や多角形型となるようなものであってもよいが、本実施形態では図3(a)に示すように円筒状となっている。
【0024】
図2に示すように、ホッパー31の下部にはシャッター機構37が設けられており、このシャッター機構37により、ホッパー31の下端開口部が開閉されるようになっている。シャッター機構37は具体的には、図4(上面図)に示すように、対向配置された2枚のシャッター板39A、39Bを有している。各シャッター板39A、39Bの駆動源には、それぞれエアシリンダ38A、38Bが用いられている。図4は、各エアシリンダのアームが押し出され、シャッター板の先端同士が突き当たった状態(あるいは、先端部同士が部分的に重なるようになっていてもよいが)を示している。なお、内容物供給経路36内には、圧力開放用のパイプ45が配置されているので、このパイプ45と干渉しないように、シャッター板には逃げ部35が形成されている。
【0025】
このように構成されたシャッター機構37は、ホッパー31内に供給された一袋分の分量の内容物を、シャッター板39A、39Bの上面で受けることで、内容物を一時的に保持できるように構成されている。各シャッター板39A、39Bを退避位置に移動させることで、保持されていた内容物が内容物供給経路36内に落下する。
【0026】
再び図1を参照すると、上記した圧力開放用のパイプ45は、比較的細い径のパイプとして用意され、その一端側(符号45a側)は、内容物供給経路の内部に連通しており、他端側(符号45b側)は内容物供給経路の外側で大気開放されている。別な言い方をすれば、各パイプ45はシャッター板を貫通するような配置で設けられている。特に限定されるものでもないが、包装機1では、2本のパイプ45が用いられており、外側に引き出されたこの2本のパイプは途中で1本にまとめられ、まとめられた1本の通路上に弁部材48が配置されている。
【0027】
弁部材48には例えば電磁弁を利用可能である。図4のようにシャッター板39A、39Bを閉じた状態で、弁部材48を閉じることにより、内容物供給経路36内(すなわち筒状フィルム10内)がほぼ密閉された状態となる。シャッター板39A、39Bを閉じたままの状態で弁部材48を開くことにより、筒状フィルム10内が、パイプ45を通じて大気開放されることとなる。
【0028】
パイプ45の本数は特に限定されるものではなく、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。パイプ45の配置位置は、図3(a)に示すように、内容物供給経路36の中心を通る中心線Lを挟んで左右対称となっていることが好ましい。これにより、経路36内の圧力を均一的に開ができるようになる。なお、パイプ45が1本の場合、その1本のパイプが内容物供給経路36の中心に位置するように(同軸に)配置されていてもよい。
【0029】
続いてガス供給機構50について説明する。包装機1では、図1、図3に示すように、投入パイプ52の外側にさらに他の筒状部材34が配置されており、筒状部材34の内周面と投入パイプ52の外周面との間に、ガス供給通路56が構成されている。図3(a)に示されているように、筒状部材34は円形断面であり、投入パイプ52と同軸に配置されている。これにより、ガス供給経路56の断面形状も環状となっている。ガス供給経路56は、その下端が吹出し口56aとなっており、ここから不活性ガスが送出されるようになっている。
【0030】
なお、図5(a)に示すように、投入パイプ52の下端の高さと筒状部材34の下端の高さとが揃っていてもよいし、図5(b)に示すように投入パイプ52が相対的に短く形成され下端の高さが相対的に高くなっていてもよい。あるいは図5(c)に示すように、筒状部材34が相対的に短く形成され下端の高さが相対的に高くなっていてもよい。ガス供給経路56の幅寸法L56は3mm〜10mm程度に設定されている。
【0031】
再び図3を参照する。ガス供給通路56の上部側(正確には図1に示すように製袋ガイド14よりも上方)には、通路内にガスを送るためのガス導入口51が設けられている。特に限定されるものではないが、図3(a)に示すように本実施形態では4つの導入口51が形成されており、各導入口51は筒状部材34の周囲に等ピッチで配置されている。各導入口51には、図示しないガス供給用ホースが接続され、このホースを通じて不活性ガスが供給されるようになっている。
【0032】
上記のように構成された本実施形態の包装機1の動作について、以下、図6、図7を参照して説明する。なお、本質的な相違ではないが、図6、図7では、パイプ45は1本として示されている。
【0033】
図6(a)の状態は、前回の製袋動作が終了した時点での状態(初期状態)を示しており、筒状フィルム10の下端にはシール部10aが形成され、シール部10aの高さは横シール装置20の高さh1となっている。シャッター機構37は閉じた状態となっており、ホッパー31には一袋分の内容物が供給されている。
【0034】
このようにシャッター機構37を閉じることにより、内容物供給経路36が閉塞され、筒状フィルム10内が密閉された状態となっている。もっとも、筒状フィルム10内が完全に密閉されるわけではなく、例えば、筒状部材34の外周面とフィルム内周面との間には僅かな隙間が生じている。
【0035】
図6(a)の状態では、ガス供給通路56を通じて不活性ガス(窒素ガス)が連続的に供給されている。このガスの供給により、筒状フィルム内は陽圧となっており、筒状フィルム10はハリを持った状態となっている。上記の通り、筒状フィルム内は完全に密閉されているわけではなく、筒状フィルム内の空気(または不活性ガス)は、例えば投入ノズル外周面の上記隙間を通じて外部へと放出されるようになっている。
【0036】
図6(a)の動作を所定時間行うことで、筒状フィルム10内の空気が不活性ガスに置換され、内部の残留酸素濃度が低下する。このようなガスの置換動作が「ガス置換」と呼ばれるものである。ガス置換を所定時間行った後、次いで、図6(b)に示すように、ガスの供給を継続したままの状態でシャッター機構37を開け内容物を筒状フィルム10内に投入する。
【0037】
具体的には、シャッター機構37を開ける前に、弁部材48が開かれ筒状フィルム内の圧力が開放されるようになっている。これについて図8を参照して説明する。図8に示すように、シャッター機構37が閉じられている状態で、まず、弁部材48が開かれる。筒状フィルム内は上記の通り、ガスの供給により陽圧となっているので、弁部材48の開放と同時に、フィルム内のガス(空気)がパイプ45を通じて外部に放出され、その結果、筒状フィルム内の圧力が瞬間的に低下する。
【0038】
このように圧力開放を行った後、例えば弁部材の開放から0.25秒後に、シャッター機構37が開かれ、内容物が筒状フィルム内に投入される。このように、まず圧力開放を行い、その後にシャッター機構37を開くといった動作は、例えば鰹節など、比較的軽量な内容物を袋詰めする場合に有効である。つまり、筒状フィルム内が陽圧となっている状態のままシャッター機構37を開いた場合、シャッターを開くと同時に筒状フィルム内のガス(空気)が外部へと送り出され、これにより内容物が舞い上がってしまう可能性があるためである。これに対して上記方法のように、内容物の投入に先立って圧力開放を行うようにすれば、そのような問題が生じることもない。なお、弁部材48を開いている時間は特に限定されるものではないが、一例として、0.5〜1.0秒であってもよい。
【0039】
内容物の投入が終了したら、次いで、図6(c)に示すように、シャッター機構37を再び閉鎖する。シャッター機構37を開けている時間は、一回の動作で投入される内容物の量や、内容物の種類などによって適宜設定すればよいが、鰹物などを投入する場合例えば2.0秒程度であればよい。なお、図8では、シャッター機構37を閉じる前に弁部材48が閉じられているが、このタイミングに限らず、両機構が同時に閉じられるようになっていてもよいし、あるいは弁部材48が相対的に遅れて閉じられるようになっていてもよい。
【0040】
次いで、ガスの供給を継続したまま、図7(a)に示すように、筒状フィルムのシール部10aが高さh2となるまで、筒状フィルム10を所定距離だけ下方に搬送する。具体的にはこの搬送は、一対のエンドレスベルト28A、28Bによって行われる。本工程は、シャッター機構37および弁部材48を閉じた状態で行われるものであるため、この搬送が行われている間もガス置換が行われている。この工程では、また、不図示の分配機構により、一袋分の内容物がホッパー31内に供給される。
【0041】
次いで、図7(b)に示すように、ガスの供給を継続した状態で、横シール装置20を駆動する。これにより、筒状フィルムの上部開口部にシール部10bが形成される。ここで、このシール工程はガスの供給を継続したまま行われるものであるため、包装袋15はハリを持ったものとなる。このように包装袋がハリを持っている場合、例えば包装袋の流通時に、外部からの衝撃を受けて内容物が破損するといった不具合が生じにくくなる。従来の構成同様、横シール装置20のカッターを駆動することにより、包装袋15が筒状フィルム10から切り分けられる。
【0042】
なお、本質的な部分ではないが、ハリのない包装袋を製造することも当然ながら可能であり、この場合例えば、横シール機構の下方に、筒状フィルムを挟み込む一対の部材を配置し、この部材により筒状フィルムを挟み込むことで形を整え、最終的な包装袋のサイズの調整が行われるようになっていてもよい。
【0043】
上述した一連の工程により内容物が袋詰めされた包装袋15が1つ製造され、この工程を繰り返し行っていくことで包装袋15の連続的な製造が実現される。
【0044】
以上説明した本発明に係る包装袋の製造方法によれば、不活性ガスが、環状に形成されたガス供給通路56から供給されるものであるため、次のような利点が得られる。すなわち、環状のガス供給通路56の場合、図10に示したような投入パイプ内の一部にのみ形成されたガス供給用の通路と比較して、その通路断面積が増加するためガスの送出速度が低下する。したがって、不活性ガスが比較的緩やかに供給されるため、内容物を舞い上がりが生じにくいという利点が得られる。内容物が舞い上がると、シール部への内容物の噛み込みの問題が発生しやすくなるが、本発明によればそうした問題の発生も抑制される。
【0045】
他にも、環状の通路からガスの供給が行われる構成は、図10のような一箇所からのガスの供給と比較して、筒状フィルム内へのガスの行き渡りが良いという利点もある。したがって、効率的なガス置換が行われ、包装袋15の最終的な残留酸素濃度をより低くすることが可能となる。さらに、ガス供給通路が投入パイプの外に形成されているということは、通路56の設計の自由度が向上する点でも有利である。
【0046】
上記作用効果に加えて、本発明に係る製造方法では、図6(a)に示したようにシャッター機構37を閉じた状態でガスの供給が行われるため、ガス置換の効率がより高められている。すなわち、シャッター機構37を閉じない状態では、筒状フィルムの内部が内容物供給通路36を通じて大きく大気開放された状態となっている。このような状態でガスを供給したとしても、内容物供給通路36を通じて筒状フィルム内に外気が入ってきてしまうため、ガス置換が効率よく行われないという問題があった。これに対して本発明に係る製造方法では、シャッター機構37で内容物供給通路36を閉塞した状態でガスの供給が行われるので、筒状フィルム内への外気の導入が抑えられ、その結果、ガス置換効率がより高まることとなる。
【0047】
このように、内容物供給経路36を閉塞した状態でガスの供給を行うと、上述したように筒状フィルム内は陽圧となる。この状態で、シャッター機構37を開けて(図6(b)参照)内容物を落下させようとすると、内容物が舞い上がってしまう可能性もある。しかしながら、本発明に係る製造方法では上述したように、まず筒状フィルム内を大気開放し、その後にシャッター機構37を開くような構成とされているので、そうした問題の発生も防止されている。
【0048】
この、シャッター機構開放時の内容物の舞い上がりは、例えば、ガスの供給を一旦停止することによっても実現することができる。ただし、このように1サイクルごとにガスの供給を停止する方法では、包装袋製造のサイクルタイムが遅くなることも懸念されるので、やはり、上記したような、弁部材48による大気開放(ガス抜き)を利用することがより好ましい。これにより、サイクルタイムの短縮も実現される。
【0049】
以上、本発明に係る包装袋の製造方法、および、それを実現するための包装機1について説明したが、本発明は上記の他にも種々変更可能である。例えば、筒状フィルム10の内部となる位置に、酸素濃度を計測可能なセンサを配置し、このセンサの検出結果に基づいて、包装機の各構造部の動作のタイミングが生成されるような構成としてもよい。センサの配置位置の一例としてはパイプ45の端部であってもよい。このような構成によれば、例えばシャッター機構37の開放は(図6(a)参照)、筒状フィルム内の酸素濃度が所定の設定値以下となったときに行われる。同様にして、横シール装置20の駆動のタイミングが、上記センサの検出結果に基づいて生成されるようになっていてもよい。
【0050】
あるいは、上記センサの検出結果は、必ずしも各構造部の動作に反映されるようになっていなくてもよい。センサの検出結果が所定の設定値(例えば酸素濃度が10%)以上となった際に、アラームが表示されたり、装置の動作が停止されるような構成となっていてもよい。このような構成によれば、例えば何らかの原因で不活性ガスの供給が正常に行われなくなった際に、アラームが表示されたり装置の動作が停止されたりするので、ガス置換が正常に行われていない無駄な包装袋15を作らずに済む。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の実施例として、鰹節(鰹削り節)袋詰めした例について説明する。ここで、投入パイプ52の内径は211mm、筒状部材34の外形は200mmとした。包装袋は、いわゆるピロー形の包装袋とし、そのサイズは340mm×360mm(長さ×幅)とした。
【0052】
不活性ガスとしては窒素(N2)を利用し、図6、図7を参照して説明したようにガスは、停止させることなく供給し続けるものとした。このときの供給量は350L/minである。図6(b)に示した工程において、弁部材48とシャッター機構37の駆動のタイミングは図8に示した通りであり、弁部材を開放し、その0.25秒後にシャッター機構37を開いて内容物を投入するようにした。
【0053】
内容物は具体的には、「さば・いわし混合」の鰹節と、「宗田鰹削り節」の2種類を用いた。「さば・いわし混合」の鰹節は、粉末状の内容物を含むものであり、2種類のうち、相対的に内容物の舞い上がりが生じやすい鰹節である。「宗田鰹削り節」は、厚削りされたものであり、相対的に舞い上がりが生じにくい鰹節である。
【0054】
ホッパー31への内容物の供給は、分配機構を利用するのではなく、作業員がその都度ホッパー31内へ供給するものとした。一袋分の内容物の量は1000gとした。基本的には、一回の製袋動作で20袋の包装袋を連続して製造するものとし、最初の10袋の内容物は「さば・いわし混合」の鰹節とし、それに続く10袋の内容物は「宗田鰹削り節」とした。
【0055】
このようにして製造した包装袋のそれぞれについて、残留酸素濃度の計測を行った。この計測には、東レ社製、ジルコニア式酸素計(OXYGAN ANALYER「LC-700F」)を利用した。具体的には、包装袋内の気体を、注射器にて30cc採取し、これを上記機器に供給して計測を行った。
【0056】
このようにして計測をした結果を、表1〜表5に示す。表1〜表5は、同じ試験を繰返し行った結果を示すものであり、基本的には、使用した包装機や不活性ガスについての差異はない。表4、表5からも明らかなように、4回目、5回目では、「さば・いわし混合」の鰹節を内容物とする包装袋を10袋だけ製造するものとした。
【0057】
ただし、4回目に行った表4の結果については、包装機1の一次側の圧力(ガス導入口51付近に設けた圧力計における読み値)が3.7〜4.5Mpaとなっていた。1〜3回目(表1〜3参照)および5回目(表5参照)では、この値は5Mpa程度であったことから、4回目の試験のみ、やや低圧であったといえる。また、一回目〜4回目については、12袋/分の速さで製袋動作を行った。これに対して5回目は、10袋/分の速さで製袋動作を行った。
【0058】
表1〜表5に示すように、本発明に係る製造方法により製造したいずれの包装袋においても、その残留酸素濃度は、0.3%を下回っていた。鰹削り節の袋詰め製品に関し、残留酸素濃度が0.5%以下であることが業界における一般的な基準値である。したがって、本発明に係る包装袋の製造方法によれば、この基準値を下回る高信頼性な袋詰め製品を製造できることが実証された。また、「さば・いわし混合」の鰹節と、「宗田鰹削り節」とを比較に関して言えば、厚切りで舞い上がりが比較的生じにくい「宗田鰹削り節」の方が残留酸素濃度が低くなっていた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る縦型包装機の全体構成を概略的に示す正面図である。
【図2】図1の縦型包装機の側面図である(包装機の筐体は不図示)。
【図3】図1の縦型包装機のガス供給通路周辺の構成を示す図であり、図3(a)は図3(b)のA−A切断線における横断面図であり、図3(b)は縦断面図である。
【図4】シャッター機構の構成を示す図であり、図1の包装機の上面図である。
【図5】ガス供給通路の下端の構成の幾つかの例を示す縦断面図である。
【図6】図1の包装機による製袋動作を説明するための工程図である。
【図7】図1の包装機による製袋動作を説明するための工程図である。
【図8】弁部材とシャッター機構の動作のタイミングを説明するための図である。
【図9】従来の縦型包装機の基本的構成を示す斜視図である。
【図10】図9の包装機におけるガス供給通路を示す図である。
【図11】従来の包装機におけるガス供給通路の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 包装機
10 筒状フィルム
10a シール部
14 製袋ガイド
20 横シール装置
21 ヒータバー
22 受け部材
26 縦シール装置
28A、28B エンドレスベルト
28 フィルム送り装置
30 内容物供給機構
31 ホッパー
34 筒状部材
35 逃げ部
36 内容物供給経路
37 シャッター機構
38 エアシリンダ
39A、39B シャッター板
45 パイプ
48 弁部材
50 ガス供給機構
51 ガス導入口
52 投入パイプ
56 ガス供給通路
56a 吹出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底状とされた筒状フィルム内にガス置換のための不活性ガスを供給する工程と、
投入パイプを通じて、前記筒状フィルムの上方開口部から包装すべき内容物を供給する工程と、
前記筒状フィルム内に前記内容物が供給された後に前記筒状フィルムの前記上方開口部を密封する工程とを有する包装袋の製造方法において、
前記不活性ガスを供給する工程は、前記投入パイプの外周面と、前記投入パイプの外側に配置された筒状部材の内周面との間に形成されたガス供給通路から前記不活性ガスを送出させることを特徴とする包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記不活性ガスを供給する工程は、前記内容物を前記筒状フィルム内まで移送するための内容物供給経路を閉塞した状態で、前記筒状フィルム内を陽圧としながら、前記筒状フィルム内に前記不活性ガスを供給する、請求項1に記載の包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記内容物を供給する工程は、陽圧状態となっている前記筒状フィルム内の圧力を開放した後、前記筒状フィルム内に前記内容物を投入する、請求項2に記載の包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記内容物を供給する工程は、前記不活性ガスの供給を続けながら、前記内容物の投入を行うものである、請求項1から3のいずれか1項に記載の包装袋の製造方法。
【請求項5】
有底状とされた筒状フィルム内に、筒状の投入パイプを通じて、包装すべき内容物を該筒状フィルムの上方開口部から供給する内容物供給手段と、
ガス供給通路を通じて、ガス置換のための不活性ガスを前記筒状フィルム内に供給するガス供給手段と、
前記筒状フィルム内に前記内容物が供給された後に前記筒状フィルムの前記上方開口部を密封する横シール手段とを有する縦型包装機において、
前記ガス供給手段は、前記投入パイプの外側に配置された筒状部材を有し、前記ガス供給通路が、前記投入パイプの外周面と前記筒状部材の内周面との間に形成されていることを特徴とする縦型包装機。
【請求項6】
前記投入パイプの内側が、前記内容物を前記筒状フィルム内まで移送するための内容物供給経路となっており、前記内容物供給手段は、前記内容物供給経路を閉塞することが可能なシャッター機構を有する、請求項5に記載の縦型包装機。
【請求項7】
前記内容物供給手段は、
一端側が、前記シャッター機構により閉塞された前記内容物供給経路の内部に連通すると共に、他端側が前記内容物供給経路の外部に連通する圧力開放用通路と、
該大気開放用通路の開閉を制御する弁部材と、をさらに有している、請求項5または6に記載の縦型包装機。
【請求項8】
前記シャッター機構は、前記内容物供給経路に対して進退移動自在に構成されたシャッター板を備え、前記大気開放用通路は、前記シャッター板を貫通して延在するような形状に設けられている、請求項7に記載の縦型包装機。
【請求項9】
前記内容物供給手段は、一袋分の分量の前記内容物を一時的に蓄えるホッパーを備え、前記シャッター板が、前記ホッパーの底部に配置されて前記内容物を受けるように構成されている、請求項8に記載の縦型包装機。
【請求項10】
前記投入パイプおよび前記筒状部材はいずれも円筒状であり、互いに同軸に配置されている、請求項5から9のいずれか1項に記載の縦型包装機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−290735(P2007−290735A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119439(P2006−119439)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(596088093)オリヒロエンジニアリング株式会社 (15)
【Fターム(参考)】