説明

ガス遮断弁およびモータ安全弁

【課題】地震検知機能を有しないガス遮断弁を組み込んだ既存のガス機器に、部品交換のみで地震検知機能を付与することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ガス遮断弁2は、弁体16,18と、弁体付勢部材と、アーマチュア28と、コア30と、コイル32を備えるて具現化される。ガス遮断弁2内のコイル32への通電経路に配置された接点部材と、接点部材を付勢する接点付勢部材を備えている。接点部材は導電部材と重量部材を備えている。そのガス遮断弁2では、接点付勢部材が接点部材を付勢することで前記コイル32への通電が確保されている。ガス遮断弁2では、地震の発生時に前記接点部材が振動して、接点部材が接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、コイルへの通電が遮断されガス通路を閉弁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断弁およびそのガス遮断弁を組み込んだモータ安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、地震検知機能を有するガス遮断弁が開示されている。このガス遮断弁は、ばねにより上方に付勢された弁体によって弁口を封止する。弁体には上方に伸びる棒状突起が形成されており、弁体が弁口を封止する状態ではその棒状突起が球状の可動子が収容された可動子室内に突出する。可動子室の底面は、棒状突起が突出する箇所を最下点とするすり鉢状に形成されており、通常時には可動子が棒状突起を押し下げることで弁体が弁口から離反し、ガス遮断弁は開弁されている。地震の発生時には可動子が転がって可動子室内を移動することで、弁体が弁口を封止し、ガス遮断弁は閉弁される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−89510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存のガス機器の多くは、ガスの燃焼が立ち消えしたときに自動的に閉弁するガス遮断弁を備えている。しかしながら、これらのガス遮断弁は、地震の発生時に自動的に閉弁する機能を有していない場合がある。地震の際の災害の発生を防止するためには、既存のガス機器についても、特許文献1のような地震検知機能を付与できることが好ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなガス遮断弁では、球状の可動子を収容するための可動子室を設ける必要がある。既存のガス機器で用いられている、地震検知機能を有していないガス遮断弁では、このような球状の可動子や可動子室を有していない。従って、両者の形状は大きく異なっており、部品を交換する場合の互換性がない。既存のガス機器について、部品の交換のみで地震検知機能を付与することは困難であった。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みて創作されたものであり、地震検知機能を有しないガス遮断弁を組み込んだ既存のガス機器に、部品交換のみで地震検知機能を付与することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、弁体と、前記弁体を弁口に向けて付勢する弁体付勢部材と、前記弁体と一体的に移動するアーマチュアと、前記アーマチュアと当接した状態で磁化されると前記アーマチュアを吸着するコアと、通電により前記コアを磁化するコイルを備えるガス遮断弁として具現化される。そのガス遮断弁は、そのガス遮断弁内の前記コイルへの通電経路に配置された接点部材と、前記接点部材を付勢する接点付勢部材を備えている。前記接点部材は導電部材と重量部材を備えている。そのガス遮断弁では、前記接点付勢部材が前記接点部材を付勢することで前記コイルへの通電が確保されている。そのガス遮断弁では、地震の発生時に前記接点部材が振動して、前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電が遮断される。
【0008】
上記のガス遮断弁では、その内部のコイルへの通電経路に導電部材と重量部材からなる接点部材を設け、その接点部材を付勢する接点付勢部材を設けることによって、地震の発生時に自動的に閉弁する機能を実現している。このような構成とすることによって、従来から用いられている地震検知機能を有していないガス遮断弁と同様の外形形状とすることができ、既存のガス機器に組み込まれているガス遮断弁との互換性を持たせることができる。上記のガス遮断弁によれば、地震検知機能を有しないガス遮断弁を組み込んだ既存のガス機器に、部品交換のみで地震検知機能を付与することが出来る。
【0009】
上記のガス遮断弁では、前記導電部材が前記コイルへの通電経路の一部を構成しており、前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電経路が切断されて、前記コイルへの通電が遮断されることが好ましい。
【0010】
上記のガス遮断弁によれば、複雑な制御回路やマイコン等を介在させることなく、シンプルな構成で、地震の発生時に迅速かつ確実にコイルへの通電を遮断することが出来る。制御系の動作不良などに起因するガス遮断弁の誤動作を防止することが出来る。
【0011】
なお本発明は、上記のガス遮断弁を組み込んだモータ安全弁として具現化することも出来る。
【0012】
上記のガス遮断弁は、前記導電部材が前記コイルの端子であり、前記重量部材が前記コアであることが好ましい。
【0013】
上記のガス遮断弁では、地震検知機能を有さないガス遮断弁でも使用されているコアおよびコイルを、地震検知機能を実現するための導電部材および重量部材として兼用している。上記のガス遮断弁によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、ガス遮断弁に地震検知機能を付与することが出来る。
【0014】
あるいは、上記のガス遮断弁は、前記導電部材が前記コイルへの通電経路とは別に設けられており、前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電経路に短絡回路が形成されて、前記コイルへの通電が遮断されることが好ましい。
【0015】
上記のガス遮断弁によっても、複雑な制御回路やマイコン等を介在させることなく、シンプルな構成で、地震の発生時に迅速かつ確実にコイルへの通電を遮断することが出来る。制御系の動作不良などに起因するガス遮断弁の誤動作を防止することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス遮断弁によれば、地震検知機能を有しないガス遮断弁を組み込んだ既存のガス機器に、部品交換のみで地震検知機能を付与することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1のガス遮断弁2を組み込んだ弁ケース4の閉弁時の構成を示す縦断面図である。
【図2】実施例1のガス遮断弁2の閉弁時の構成を示す縦断面図である。
【図3】実施例1のガス遮断弁2を組み込んだ弁ケース4の点火時の構成を示す縦断面図である。
【図4】実施例1のガス遮断弁2を組み込んだ弁ケース4の燃焼時の構成を示す縦断面図である。
【図5】実施例1のガス遮断弁2を組み込んだ弁ケース4の地震検知による消火時の構成を示す縦断面図である。
【図6】実施例2のガス遮断弁60を組み込んだ弁ケース4の閉弁時の構成を示す縦断面図である。
【図7】実施例2のガス遮断弁60の閉弁時の構成を示す縦断面図である。
【図8】実施例2のガス遮断弁60の地震検知による消火時の構成を示す縦断面図である。
【図9】実施例3のモータ安全弁100の閉弁時の構成を示す縦断面図である。
【図10】実施例3のモータ安全弁100の点火の為の準備動作時の構成を示す縦断面図である。
【図11】実施例3のモータ安全弁100の燃焼時の構成を示す縦断面図である。
【図12】実施例3のモータ安全弁100の地震検知による消火時の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)
図1〜図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係るガス遮断弁2について説明する。図1に示すように、本実施例のガス遮断弁2は、ガスコンロのガス供給経路を形成する弁ケース4に組み込まれて使用される。弁ケース4は、ガスを受け入れる流入口6と、ガスを送り出す流出口8と、流入口6と流出口8の間に設けられた第1弁口10および第2弁口12を備えている。弁ケース4には、ガス遮断弁2のほかに、ガス元弁14が組み込まれている。弁ケース4の第1弁口10はガス遮断弁2の弁体16によって封止される。弁ケース4の第2弁口12はガス元弁14の弁体18によって封止される。ガス遮断弁2の弁体16が第1弁口10から離反し、かつガス元弁14の弁体18が第2弁口12から離反すると、流入口6と流出口8が連通して、ガス供給経路内をガスが流れる。
【0019】
図2に示すように、ガス遮断弁2は、弁体16と、ブラケット20と、ブラケット20と弁体16の間に設けられた第1ばね22を備えている。第1ばね22は弁体16を第1弁口10に向けて(図2の右側に向けて)付勢する。弁体16には、ブラケット20の開口24を貫通するロッド26を介して、アーマチュア28が固定されている。アーマチュア28は、磁性材料から形成されており、ブラケット20の内部に配置されている。弁体16とアーマチュア28は、ブラケット20の開口24とロッド26をガイドとして、図2の左右方向に関して一体的に移動する。
【0020】
ブラケット20の内部には、コイルアッシー30が収容されている。コイルアッシー30は、円筒状に捲回されたコイル32と、コイル32の内部に収容されたコア34を備えている。コイルアッシー30は、コア34がアーマチュア28と対向するように配置されている。アーマチュア28がコア34に当接した状態でコイル32に通電がされると、コア34は磁化してアーマチュア28を吸着する。コイルアッシー30は、第2ばね36によってホルダ38に押し付けられている。
【0021】
ホルダ38は導電性の材料から構成されている。ホルダ38の内部には第1電極ピン40が配置されている。第1電極ピン40は絶縁性の材料から構成されるスペーサ37a、37b、37c、37dおよびOリング39を介してホルダ38に固定されている。コイルアッシー30がホルダ38に当接している状態では、コイル32の一方の端子32aが第1電極ピン40と導通し、コイル32の他方の端子32bがホルダ38と導通する。
【0022】
ホルダ38は導電性のワッシャ42を介して樹脂製の端子カバー44に固定されている。ワッシャ42は第2電極ピン46と導通している。
【0023】
端子カバー44は第1電極ピン40と第2電極ピン46の周囲を覆っている。第1電極ピン40は、ガスコンロのバーナの炎を検知するサーモカップルに接続している。第2電極ピン46は、接地されている。
【0024】
図1に示すガス元弁14は、弁体18と、プッシュロッド50と、第3ばね52を備えている。弁体18は第3ばね52によって第2弁口12に向けて(図1の右側に向けて)付勢されている。プッシュロッド50は弁体18に固定されており、図1の左右方向に関して弁体18と一体的に移動する。
【0025】
弁体18にはガスコンロの点火/消火スイッチに連動するプッシュロッド54が当接している。バーナを点火する際には、使用者が点火/消火スイッチを押しこむことで、プッシュロッド54の先端が点火位置まで移動する。点火/消火スイッチはオルタネイト型であり、バーナの点火後に使用者が点火/消火スイッチから手を離しても、プッシュロッド54の先端は開弁位置で停止する。その後に使用者が点火/消火スイッチを押し操作すると、プッシュロッド54の先端は閉弁位置に移動して停止する。
【0026】
以下では通常時の動作について説明する。ガス遮断弁2とガス元弁14がともに閉弁している状態で使用者が点火/消火スイッチを押しこむと、図3に示すように、プッシュロッド54の先端が点火位置まで押し込まれて、ガス元弁14の弁体18が第3ばね52の付勢力に抗して図3の左側に移動し、第2弁口12が開放される。さらに、プッシュロッド50がガス遮断弁2の弁体16に当接して押しこむことで、ガス遮断弁2の弁体16が第1ばね22の付勢力に抗して図3の左側に移動し、第1弁口10が開放される。さらにアーマチュア28がコア34と当接する。
【0027】
第1弁口10と第2弁口12がともに開放されると、流入口6から流出口8にガスが流れる。この状態でイグナイタによってバーナに着火されると、バーナは燃焼を開始する。バーナが燃焼を開始すると、サーモカップルの起電力によって第1電極ピン40から第2電極ピン46へ電流が流れ、コイルアッシー30のコイル32に通電されて、アーマチュア28はコア34に磁力によって吸着される。使用者が点火/消火スイッチから手を離すと、図4に示すように、プッシュロッド54が開弁位置まで移動し、第3ばね52の付勢力によってガス元弁14の弁体18とプッシュロッド50もプッシュロッド54に追従して移動するが、ガス遮断弁2の弁体16とアーマチュア28はコイルアッシー30の磁力によってそのまま保持される。
【0028】
バーナの燃焼中に使用者が点火/消火スイッチを押し操作すると、プッシュロッド54の先端が閉弁位置まで移動し、第3ばね52の付勢力によってガス元弁14の弁体18とプッシュロッド50もプッシュロッド54に追従して移動する。弁体18によって第2弁口12が封止され、ガス供給路内のガスの流れが遮断される。バーナが消火し、サーモカップルの起電力が消失する。これによって、コイルアッシー30のコイル32への通電がされなくなり、アーマチュア28とコア34の間の吸着力が消失する。第1ばね22の付勢力によって弁体16とアーマチュア28が移動し、弁体16によって第1弁口10も封止される。図1に示すように、ガス遮断弁2とガス元弁14の両方が閉弁された状態に戻る。
【0029】
以下ではバーナの燃焼中に何らかの理由でバーナが立ち消えした場合の動作について説明する。図4に示すようにバーナが燃焼している状態でバーナが立ち消えすると、バーナの消火によってサーモカップルの起電力が消失する。これによって、コイルアッシー30のコイル32への通電がされなくなり、アーマチュア28とコア34の間の吸着力が消失する。図5に示すように、第1ばね22の付勢力によって弁体16とアーマチュア28が移動し、弁体16によって第1弁口10が封止される。これによって、ガス供給路内のガスの流れが遮断される。その後に使用者が点火/消火スイッチを押し操作してガス元弁14を閉弁することで、図1に示すように、ガス遮断弁2とガス元弁14の両方が閉弁された状態に戻る。
【0030】
以下ではバーナの燃焼中に地震が発生した場合の動作について説明する。図4に示すバーナが燃焼している状態で地震が発生すると、コイルアッシー30が第2ばね36の付勢力に抗して振動し、コイルアッシー30がホルダ38から離反する。これによって、コイル32の一方の端子32aと第1電極ピン40の間の導通が遮断され、さらにコイル32の他方の端子32bとホルダ38の間の導通が遮断される。コイルアッシー30のコイル32への通電がされなくなり、アーマチュア28とコア34の間の吸着力が消失する。その後に第2ばね36の付勢力によってコイルアッシー30が再びホルダ38に当接しても、第1ばね22の付勢力によってアーマチュア28はコア34からすでに離反しているので、両者の間に吸着力は作用しない。図5に示すように、第1ばね22の付勢力によって弁体16とアーマチュア28が移動し、弁体16によって第1弁口10が封止される。ガス供給路内のガスの流れが遮断されて、バーナが消火する。地震が収まった後は、使用者が点火/消火スイッチを押し操作してガス元弁14を閉弁することで、図1に示すように、ガス遮断弁2とガス元弁14の両方が閉弁された状態に戻る。
【0031】
本実施例のガス遮断弁2では、コイルアッシー30をホルダ38に対して完全に固定することなく、第2ばね36の付勢力によってコイルアッシー30をホルダ38に押し付けることで、コイル32への通電経路を確保する構成としている。このような構成とすることで、地震発生時にはコイルアッシー30が振動してホルダ38から離反し、コイル32への通電経路が切断されて、コイル32への通電が遮断される。地震の発生時にガス遮断弁2を迅速かつ確実に閉弁することが出来る。
【0032】
コイルアッシー30は、コイル32とコア34から構成されており、もともとある程度の重量を有している。本実施例のガス遮断弁2によれば、地震を感知するための錘を別途設けることなく、地震発生を検知して閉弁することが出来る。
【0033】
本実施例のガス遮断弁2によれば、地震を検知するための機構がすべて弁ケース4の内部に収容されている。このような構成とすることで、水や汚れの付着による地震検知機能の低下を防ぐことができる。
【0034】
本実施例のガス遮断弁2は、従来から用いられている地震検知機能を有していないガス遮断弁と同様の外形形状を有しており、部品を交換する場合の互換性を有している。地震検知機能を有していない既存のガス機器に対して、部品交換のみで地震検知機能を付与することが出来る。
【0035】
なお、上記では、サーモカップルの起電力が第1電極ピン40に直接供給されて、コイルアッシー30のコイル32に通電する構成のガスコンロにガス遮断弁2を組み込む場合を例として説明した。これとは異なり、サーモカップルからの信号が一旦制御基板に入力され、その制御基板から第1電極ピン40を介してコイルアッシー30のコイル32に通電する構成のガスコンロにガス遮断弁2を組み込んでも良い。
【0036】
(実施例2)
以下では図6から図8を参照しながら、本実施例のガス遮断弁60について説明する。図6に示すように、本実施例のガス遮断弁60は、実施例1のガス遮断弁2と同様に、ガス元弁14とともに弁ケース4に組み込まれて使用される。以下では実施例1のガス遮断弁2と相違する点について説明する。
【0037】
図7に示すように、本実施例のガス遮断弁60ではコイルアッシー30がホルダ38に常に固定されており、ガス遮断弁60は第2ばね36を備えていない。コイル32の一方の端子32aは第1電極ピン40と常に導通しており、コイル32の他方の端子32bはホルダ38と常に導通している。
【0038】
ガス遮断弁60は、端子カバー44内に、ショート板62と、錘64と、第4ばね66を備えている。ショート板62は、導電性の材料から構成されている。ショート板62は、第1電極ピン40に対して摺動可能である。錘64はショート板62に固定されている。第4ばね66は、ショート板62をホルダ38から離反する方向に付勢している。端子カバー44には係合爪68が形成されており、第4ばね66により付勢されたショート板62は係合爪68と係合している。
【0039】
通常時のガス遮断弁60の動作は、実施例1のガス遮断弁2と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
以下ではバーナの燃焼中に地震が発生した場合の動作について説明する。バーナの燃焼中に地震が発生すると、錘64とショート板62が第4ばね66の付勢力に抗して振動し、図8に示すように、ショート板62がホルダ38と接触する。これによって、第1電極ピン40とホルダ38の間に短絡回路が形成されて、コイルアッシー30のコイル32への通電が遮断される。アーマチュア28とコア34の間の吸着力が消失し、第1ばね22の付勢力によって弁体16とアーマチュア28が図8の右方向へ移動する。その後に第4ばね66の付勢力によってショート板62がホルダ38から離反しても、アーマチュア28はコア34からすでに離反しており、両者の間に吸着力は作用しない。その結果、第1ばね22の付勢力によって弁体16とアーマチュア28が移動し、弁体16によって第1弁口10が封止される。ガス供給路内のガスの流れが遮断されて、バーナが消火する。地震が収まった後は、使用者が点火/消火スイッチを押し操作してガス元弁14を閉弁することで、図6に示すように、ガス遮断弁60とガス元弁14の両方が閉弁された状態に戻る。
【0041】
本実施例のガス遮断弁60によれば、端子カバー44内の余剰の空間にショート板62、錘64および第4ばね66を配置することで、地震検知機能を実現している。本実施例のガス遮断弁60も、実施例1のガス遮断弁2と同様に、従来から用いられている地震検知機能を有していないガス遮断弁と同様の外形形状を有しており、部品を交換する場合の互換性を有している。地震検知機能を有していない既存のガス機器に対して、部品交換のみで地震検知機能を付与することが出来る。
【0042】
(実施例3)
以下では図9〜図12を参照しながら、本実施例のモータ安全弁100について説明する。後述するように、モータ安全弁100にはガス遮断弁としての機能が組み込まれている。
【0043】
図9に示すように、モータ安全弁100は、ガスコンロのガス供給経路を形成する弁ケース102に組み込まれて使用される。弁ケース102は、ガスを受け入れる流入口104と、ガスを送り出す流出口106を備えている。流出口106には弁座108が形成されており、弁体110が弁座108に当接することで、流出口106が封止される。
【0044】
弁ケース102にはシール111によって内部を気密に封止するカバー112が取り付けられており、カバー112上にステッピングモータ114が設けられている。カバー112には貫通孔115が形成されており、貫通孔115の内部にステッピングモータ114の出力軸116が配置されている。出力軸116は円筒状の部材であり、内面に雌ネジが切られている。出力軸116には、外面に雄ネジが切られている送りねじ118が螺合している。送りねじ118の端部にはピン120によってホルダ122が結合している。ホルダ122にはコイルアッシー124が取り付けられている。コイルアッシー124は、二股状のコア126と、コア126の片側に取り付けられたボビン部128に捲回されたコイル130を備えている。
【0045】
ホルダ122はモールド132に固定されている。モールド132にはブラケット134が固定されている。ブラケット134の外側にはフィン136が形成されている。送りねじ118、ピン120、ホルダ122、コイルアッシー124、モールド132、ブラケット134、フィン136は、全体が一体的に移動する可動体137を構成している。フィン136が弁ケース102の内面に対する回り止めとなって、可動体137の回転が拘束されている。このため、ステッピングモータ114が出力軸116を回転させることで、可動体137は図9の上下方向に移動する。ステッピングモータ114が正方向に回転すると、可動体137は図9の上方向に移動する。ステッピングモータ114が逆方向に回転すると、可動体137は図9の下方向に移動する。
【0046】
ブラケット134は開口138を有しており、開口138にはロッド140が挿通している。ロッド140の一端(図9の下方向の端部)には弁体110が連結している。弁体110はラッチ139と第1ばね141によってロッド140に連結しており、弁体110はロッド140に対して傾動可能である。従って、可動体137が傾斜した場合であっても、弁体110の弁座108に対する片当たりを防ぐことができる。ロッド140の他端(図9の上方向の端部)にはピン142を介してアーマチュア144が連結されている。アーマチュア144はロッド140に対して傾動可能に連結されているため、可動体137が傾斜した場合であっても、コア126とアーマチュア144の片当たりを防ぐことができる。
【0047】
弁体110とブラケット134の間には第2ばね145が配置されている。第2ばね145は弁体110を弁座108に向けて付勢している。
【0048】
コイルアッシー124のコイル130には、2極のコネクタ146を介して通電がなされる。コネクタ146は可撓性のFPCケーブル148を介して可動導電板150に導通している。可動導電板150の一方の端部には錘152が取り付けられている。可動導電板150の他方の端部には貫通孔が形成されており、その貫通孔にはカバー112から伸びる絶縁性の支持柱154が挿通している。支持柱154の付け根には固定導電板160が固定されている。支持柱154の先端には支持板156が固定されており、支持板156と可動導電板150の間に第3ばね158が配置されている。可動導電板150は第3ばね158によって固定導電板160に押し付けられている。固定導電板160には外部のコントローラから通電がなされる。
【0049】
以下では通常時の動作について説明する。使用者がガスコンロの点火/消火スイッチを押し操作すると、コントローラがステッピングモータ114を逆方向に回転させる。これによって、図10に示すように、可動体137が第2ばね145の付勢力に抗して図10の下方向に移動し、コア126がアーマチュア144に当接する。この状態で、コントローラがコイル130へ通電させることで、アーマチュア144がコア126に吸着する。次いで、コントローラがステッピングモータ114を正方向に回転させることで、図11に示すように、弁体110が弁座108から離反し、流入口104と流出口106が連通する。イグナイタによってバーナに着火されて、バーナは燃焼を開始する。
【0050】
バーナの燃焼中に使用者が点火/消火スイッチを押し操作すると、コントローラはコイル130への通電を停止する。第2ばね145の付勢力によって弁体110が弁座108を封止し、流入口104と流出口106の間の連通が遮断される。モータ安全弁100は閉弁された状態となる。
【0051】
バーナの燃焼中に何らかの理由でバーナが立ち消えした場合には、バーナの炎を検知するサーモカップルからの出力の変化に応じて、コントローラがコイル130への通電を停止し、モータ安全弁100は閉弁する。
【0052】
以下ではバーナの燃焼中に地震が発生した場合の動作について説明する。図11に示すバーナが燃焼している状態で地震が発生すると、図12に示すように、可動導電板150と錘152が第3ばね158の付勢力に抗して振動し、可動導電板150が固定導電板160から離反する。これによって、コイル130への通電が遮断されて、アーマチュア144とコア126の間の吸着力が消失する。その後に第3ばね158の付勢力によって可動導電板150が固定導電板160に再び当接しても、第2ばね145の付勢力によってアーマチュア144はコア126からすでに離反しているので、両者の間に吸着力は作用しない。第2ばね145の付勢力によって弁体110とアーマチュア144が移動し、弁体110が弁座108を封止する。流入口104と流出口106の間の連通が遮断されて、モータ安全弁100は閉弁された状態となる。
【0053】
本実施例のモータ安全弁100では、コイル130への通電経路に錘152を備える可動導電板150を設け、その可動導電板150を第3ばね158の付勢力によって固定導電板160に押し付けることで、コイル130への通電を確保する構成としている。このような構成とすることで、地震発生時には可動導電板150が振動して固定導電板160から離反し、コイル130への通電経路が切断されて、コイル130への通電が遮断される。地震の発生時にモータ安全弁100を迅速かつ確実に閉弁することが出来る。
【0054】
本実施例のモータ安全弁100では、複雑な制御回路やマイコン等を介在させることなく、地震の発生時にコイル130への通電を遮断することができる。制御系の動作不良などに起因するガス遮断弁の誤動作を防止することが出来る。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0056】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
2 ガス遮断弁;4 弁ケース;6 流入口;8 流出口;10 第1弁口;12 第2弁口;14 ガス元弁;16 弁体;18 弁体;20 ブラケット;22 第1ばね;24 開口;26 ロッド;28 アーマチュア;30 コイルアッシー;32 コイル;32a 端子;32b 端子;34 コア;36 第2ばね;37a、37b、37c、37d スペーサ;38 ホルダ;39 Oリング;40 第1電極ピン;42 ワッシャ;44 端子カバー;46 第2電極ピン;50 プッシュロッド;52 第3ばね;54 プッシュロッド;60 ガス遮断弁;62 ショート板;64 錘;66 第4ばね;68 係合爪;100 モータ安全弁;102 弁ケース;104 流入口;106 流出口;108 弁座;110 弁体;111 シール;112 カバー;114 ステッピングモータ;115 貫通孔;116 出力軸;118 送りねじ;120 ピン;122 ホルダ;124 コイルアッシー;126 コア;128 ボビン部;130 コイル;132 モールド;134 ブラケット;136 フィン;137 可動体;138 開口;139 ラッチ;140 ロッド;141 第1ばね;142 ピン;144 アーマチュア;第2ばね145;146 コネクタ;148 FPCケーブル;150 可動導電板;152 錘;154 支持柱;156 支持板;158 第3ばね;160 固定導電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体と、前記弁体を弁口に向けて付勢する弁体付勢部材と、前記弁体と一体的に移動するアーマチュアと、前記アーマチュアと当接した状態で磁化されると前記アーマチュアを吸着するコアと、通電により前記コアを磁化するコイルを備えるガス遮断弁であって、
前記ガス遮断弁内の前記コイルへの通電経路に配置された接点部材と、前記接点部材を付勢する接点付勢部材を備えており、
前記接点部材は導電部材と重量部材を備えており、
前記接点付勢部材が前記接点部材を付勢することで前記コイルへの通電が確保されており、
地震の発生時に前記接点部材が振動して、前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電が遮断されることを特徴とするガス遮断弁。
【請求項2】
前記導電部材が前記コイルへの通電経路の一部を構成しており、
前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電経路が切断されて、前記コイルへの通電が遮断されることを特徴とする請求項1のガス遮断弁。
【請求項3】
前記導電部材が前記コイルの端子であり、前記重量部材が前記コアであることを特徴とする請求項1のガス遮断弁。
【請求項4】
前記導電部材が前記コイルへの通電経路とは別に設けられており、
前記接点部材が前記接点付勢部材による付勢に抗して移動することで、前記コイルへの通電経路に短絡回路が形成されて、前記コイルへの通電が遮断されることを特徴とする請求項1のガス遮断弁。
【請求項5】
請求項1または2のガス遮断弁を組み込んだモータ安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−241854(P2012−241854A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114661(P2011−114661)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】