ガス除去具
【課題】フォトマスクなどの収納容器内に、格別のスペースを要することなく、また、フォトマスクなどに悪影響を及ぼす要因を増やすことなく、容易に備え付け可能なガス除去具の提供。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体１ａからなる通気性を備えた扁平袋体１と、この扁平袋体１内に封入される活性炭シート２と、扁平袋体１の外側に巻き付けられた周回テープ体３とを備えている。この周回テープ体３の外面の一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層３ｂ’よりなる吸着面３ａが形成されていると共に、扁平袋体１における周回テープ体３の巻き付け箇所１ｆに位置される縁部には、扁平袋体１の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体３の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部１ｇが形成されている。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体１ａからなる通気性を備えた扁平袋体１と、この扁平袋体１内に封入される活性炭シート２と、扁平袋体１の外側に巻き付けられた周回テープ体３とを備えている。この周回テープ体３の外面の一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層３ｂ’よりなる吸着面３ａが形成されていると共に、扁平袋体１における周回テープ体３の巻き付け箇所１ｆに位置される縁部には、扁平袋体１の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体３の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部１ｇが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、フォトマスク、マスクブランクス、シリコンウエハーなどの運搬や保管に用いられるプラスチック製の収納容器内に備えられて、この収納容器に納められたフォトマスクなどに対して悪影響を及ぼし得る微量なガスを、除去するために用いられるガス除去具に関する。
【背景技術】
【０００２】
現在、電子デバイスの製造に用いられるフォトマスクやその材料となるマスクブランクス、電子デバイスの材料となるシリコンウエハーなどの運搬や保管にあたっては、プラスチック製の収納容器が用いられている。
【０００３】
これらフォトマスクなどのパターンは微細化する一方であり、その欠陥を防ぐ観点からはこれらのフォトマスクなどがこれらに悪影響を及ぼすｐｐｂレベルの微量なガスに晒されることも忌避されるところである。
【０００４】
マスクブランクスの収納容器内への外気中の異物の進入阻止に関するものとして特許文献１に示されれるものがあるが、プラスチック製の収納容器はそれ自体もフォトマスクなどに悪影響を及ぼす微量なガスを生じる場合がある。また、こうした進入阻止だけでは、収納容器の開閉に伴ってこうしたガスが入り込んだ場合に十分に対処し得ないところである。
【特許文献１】特開２００５−４３７９６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のフォトマスクなどの収納容器内に、格別のスペースを要することなく、また、フォトマスクなどに悪影響を及ぼす要因を増やすことなく、容易に備え付け可能なガス除去具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ガス除去具を、以下の（１）〜（５）の構成を備えたものとした。
（１）ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体からなる通気性を備えた扁平袋体と、
（２）この扁平袋体内に封入される活性炭シートと、
（３）扁平袋体の外側に巻き付けられた周回テープ体とを備えており、
（４）この周回テープ体の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層よりなる吸着面が形成されていると共に、
（５）扁平袋体における周回テープ体の巻き付け箇所に位置される縁部には、扁平袋体の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部が形成されている。
【０００７】
ガス除去具におけるガス除去剤は活性炭シートであることから、ガス除去具はできるだけ薄く構成させることができ、例えば、フォトマスクなどの収納容器の内面に格別のスペースを要することなく、周回テープ体の吸着面をもって吸着させて備え付けさせることができる。扁平袋体は通気性を有することから、かかる収納容器などの内部空間内に扁平袋体内に封入された活性炭シートによって吸着され得るガスがある場合にはかかるガスはガス除去具によって捕捉除去される。扁平袋体を構成するポリテトラフルオロエチレンを主体としたシート体は、自身よりガスや粉塵を生じさせることがなく、また、扁平袋体に封入された活性炭シートから生じる粉塵などを外部に漏れ出させることもない。また、扁平袋体は、前記収納容器などの内面に、周回テープ体の吸着面により吸着により取り付けられ、また、周回テープ体は扁平袋体の切り欠き部によって扁平袋体と一体化され、こうした内面に適宜取り付け取り外し可能な構造を持ちながら、この周回テープ体がガスの発生源となることはない。
【０００８】
前記扁平袋体内に、少なくとも二枚の活性炭シートを積層状態で封入させると共に、
少なくとも、これらの活性炭シートの一つにアルカリ化合物を担持させ、さらに、これらの活性炭シートの他の一つに酸性化合物を担持させるようにしておくこともある。
【０００９】
このようにした場合、単一のガス除去具をもって、有機性ガス、酸性ガス、アリカリ性ガスのいずれをも捕捉除去することができる。
【発明の効果】
【００１０】
この発明にかかるガス除去具は、フォトマスクなどの収納容器内に、格別のスペースを要することなく備え付けることができ、また、扁平袋体の切り欠き部を利用して接着剤などを使用することなくこの扁平袋体にしっかりと組み合わされた周回テープ体の吸着面により接着剤や粘着剤などを使用することなく収納容器の内面の所定の位置に容易に備え付けることができ、フォトマスクなどに悪影響を及ぼす要因を増やすことなく、かかる収納容器内のエアを清浄に保たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下、図１〜図８に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【００１２】
なお、ここで図１は、周回テープ体３を巻き付けていない状態の扁平袋体１を、図２は、これを巻き付けてなるガス除去具Ｆを、図３は、その要部の断面構成を拡大して、それぞれ示している。また、図４は、収納容器１００の内側面１０２ｂに周回テープ体３の吸着面３ａをもって扁平袋体１の一面１ｄを吸着させた備え付け状態を示している。図５は、図６に示される周回テープ体３を構成する吸着テープ３ｂと非吸着テープ３ｃとを分離させた状態で示しており、図７はその吸着テープ３ｂの断面構成を拡大して示している。図２および図６においては、周回テープ体３の吸着面３ａの形成箇所を理解しやすいように、この形成箇所に作図の便宜上実際にはない細かな点を付している。また、図８は、ガス除去具Ｆの他の構成例を示している。
【００１３】
この実施の形態にかかるガス除去具Ｆは、フォトマスク、マスクブランクス、シリコンウエハーなどの運搬や保管に用いられるプラスチック製の収納容器１００内に備えられて、この収納容器１００に納められたフォトマスクなどに対して悪影響を及ぼし得る微量なガスを、除去するために用いられるものである。
【００１４】
前記ガスとしては、典型的には、以下のようなガスを想定するものである。
（ａ）芳香族炭化水素、シロキサン系成分、アルコール類、エステル類などのなどの有機物よりなるガス
（ｂ）硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などの酸性物質よりなるガス
（ｃ）アンモニア、アミン類などのアルカリ性物質よりなるガス
【００１５】
この実施の形態にかかるガス除去具Ｆは、前記のプラスチック製の収納容器１００内に前記フォトマスクなどと一緒に納められて、この収納容器１００を構成するプラスチックから生じるガスや、収納容器１００からのフォトマスクなどの取り出しや納め入れ時に収納容器１００内に入り込むに至ったガスなどを吸着・除去するものである。
【００１６】
かかるガス除去具Ｆは、通気性を備えた扁平袋体１と、この扁平袋体１内に封入されるガス吸着剤としての活性炭シート２と、周回テープ体３とから構成されている。
【００１７】
扁平袋体１は、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）を主体としたシート体１ａによって構成されている。
【００１８】
図示の例では、かかる扁平袋体１を、長方形の細長い帯状の外観を呈するように構成させている。
【００１９】
かかる扁平袋体１は、例えば、ＰＴＦＥを延伸させて得られた、微細な孔を持ったシートの両面に、ポリエチレン（ＰＥ）とポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）との複合素材よりなるシート状の不織布を、積層させてなるシート体１ａによって構成される。図示の例にあっては、二枚のこうしたシート体１ａ、１ａを重ね合わせるようにした状態から、これらに一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂと一対の巾側ヒートシール１ｃ、１ｃとを施して、幅広の両面１ｄ、１ｅをそれぞれ長方形状にした扁平袋体１を得るようにしている。活性炭シート２は、これら各ヒートシール１ｂ、１ｃによって扁平袋体１内に封入されることとなる。
【００２０】
活性炭シート２は、扁平袋体１の一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂの内縁間に納まる巾と、一対の巾側ヒートシール１ｃ、１ｃの内縁間に納まる長さを持ち、長方形の細長い帯状の外観を呈するように構成されている。
【００２１】
図示の例では、前記扁平袋体１内に、三枚の活性炭シート２が積層状態で封入されている。また、これらの活性炭シート２の一つにアルカリ化合物を担持されると共に、これらの活性炭シート２の他の一つに酸性化合物を担持させている。また、これらの活性炭シート２の残りの一つ２’にはこうした化合物を担持させていない。かかるアルカリ化合物としては、例えば、炭酸カリウムなどを、また、かかる酸性化合物としては、例えば、リン酸化合物などを用いることができる。活性炭シート２としては、繊維状活性炭を不織布状にしてなるものや、不織布状のシートを形成させる過程でこれに粉末の活性炭を担持させたものなどを用いることができる。
【００２２】
これにより、この例にあっては、単一のガス除去具Ｆをもって、有機性ガス、酸性ガス、アルカリ性ガスのいずれをも捕捉除去することができるようになっている。
【００２３】
この例では、後述するように、周回テープ体３における扁平袋体１の幅広の一面１ｄ側に位置される部分にのみ吸着面３ａが形成されており、この一面１ｄ側でのみ収納容器１００の内面に吸着されると共に、前記化合物無担持の活性炭シート２’は扁平袋体１の幅広の他面１ｅ側に位置されるようになっている。（図２、図３）これにより、この例にあっては、酸性化合物を担持させた活性炭シート２およびアルカリ化合物を担持させた活性炭シート２から担持させた化合物が分離してもかかる化合物無担持の活性炭シート２によってこれを捕捉することができ、収納容器１００内に納められたフォトマスクなどに影響を与えることがない。また、ガス除去具Ｆにおける有機性ガスの捕捉容量を十分に確保できるようになっている。
【００２４】
周回テープ体３は、扁平袋体１の外側に巻き付けられるように構成されている。
【００２５】
図示の例では、扁平袋体１の両端側と長さ方向略中程の位置との計三箇所にそれぞれ、無端状の細帯状をなす周回テープ体３が巻き付けられるようになっている。
【００２６】
かかる周回テープ体３の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層３ｂ’よりなる吸着面３ａが形成されている。この例では、基材３ｂ”の一面にかかる発泡プラスチック層３ｂ’を備えてなる吸着テープ３ｂと、ＰＥＴからなる非吸着テープ３ｃとを組み合わせて、周回テープ体３の一部のみが前記吸着面３ａを備えるように構成させている。発泡プラスチック層３ｂ’は複数の微細な孔を持っており、この孔が吸盤機能を発揮するようになっている。吸着面３ａは未使用時には図示しない剥離シートによって被覆させておくことが好ましい。こうした吸着テープ３ｂとしては、例えば、ゼオン化成株式会社製のゼオンＡＬシート（ゼオンＡＬシートは同社の商標である。）を用いることができる。
【００２７】
図示の例では、非吸着テープ３ｃの一端の内面に吸着テープ３ｂの一端の吸着面３ａを吸着させ、かつ、非吸着テープ３ｃの他端の内面に吸着テープ３ｂの他端の吸着面３ａを吸着させることにより、周回テープ体３の外面の略半分が吸着面３ａとなるようにしている。（図５、図６）
【００２８】
一方、扁平袋体１における周回テープ体３の巻き付け箇所１ｆに位置される縁部には、扁平袋体１の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体３の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部１ｇが形成されている。そして、周回テープ体３は、この切り欠き部１ｇによって巾狭となった扁平袋体１の巻き付け箇所１ｆに、緩みを生じないように巻き付けられている。
【００２９】
図示の例では、切り欠き部１ｇは、長さ側ヒートシール１ｂの巾寸法の範囲内において、この長さ側ヒートシール１ｂの一部を外側から切除することで形成されている。一つの巻き付け箇所１ｆにおいて一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂのそれぞれにおいて切り欠き部１ｇが形成されており、周回テープ体３は一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂのいずれの側においても切り欠き部１ｇから外れ出すことがなく、巻き付け箇所１ｆに安定的に位置されるようになっている。
【００３０】
ガス除去具Ｆにおけるガス除去剤は活性炭シート２であることから、ガス除去具Ｆはできるだけ薄く構成させることができ、例えば、フォトマスクなどの収納容器１００の内面に格別のスペースを要することなく、周回テープ体３の吸着面３ａをもって吸着させて備え付けさせることができる。扁平袋体１は通気性を有することから、かかる収納容器１００などの内部空間内に扁平袋体１内に封入された活性炭シート２によって吸着され得るガスがある場合にはかかるガスはガス除去具Ｆによって捕捉除去される。扁平袋体１を構成するＰＴＦＥよりなるシート体１ａは、自身よりガスや粉塵を生じさせることがなく、また、扁平袋体１に封入された活性炭シート２から生じる粉塵などを外部に漏れ出させることもない。また、扁平袋体１は、前記収納容器１００などの内面に、周回テープ体３の吸着面３ａにより吸着により取り付けられ、また、周回テープ体３は扁平袋体１の切り欠き部１ｇによって扁平袋体１と一体化され、こうした内面に適宜取り付け取り外し可能な構造を持ちながら、この周回テープ体３がガスの発生源となることはない。
【００３１】
なお、図示の例では、扁平袋体１の他面１ｅにおける長さ方向に沿った一方縁（図示の例では下縁１ｂ’）から他方縁（図示の例では上縁１ｂ”）に亘りかつこの上縁１ｂ”から扁平袋体１の一面１ｄ側に回り込みこの一面の上縁１ｂ”側を覆う非吸着テープ３ｃの、その下端と上端との間に亘るように吸着テープ３ｂを備えさせて、周回テープ体３を構成させている。これにより、扁平袋体１はその一面側において収納容器１００の内面に吸着できるものとされると共に、その上縁１ｂ”側に位置される周回テープ体３の外面は非吸着面３ｃ’となっている。図示の例では、蓋１０１と本体１０２とからなる収納容器１００の閉蓋状態において蓋１０１の内面１０１ａから本体１０２の底１０２ａまでのピッチが扁平袋体１の巾寸法と略等しくなっており、扁平袋体１は本体１０２の内側面１０２ｂにその巾方向を本体１０２の高さ方向に沿わせる向きでその一面側において吸着されるようになっている。そして、このように本体１０２に吸着された扁平袋体１の一面１ｄ側であって開蓋１０１状態において本体１０２の開口１０２ｃから突き出される部分にある周回テープ体３の外面が非吸着面３ｃ’となるようにしてある。これにより、図示の例では、蓋と本体との突き合わせ箇所を閉蓋状態において収納容器の内側からガス除去具Ｆによって覆うようにしながら周回テープ体３の吸着面３ａが開蓋操作および閉蓋操作を邪魔することがないようになっている。
【００３２】
図８は、左右に活性炭シート２を納めた二つの細長い封入空間をそれぞれ持った扁平袋体１からガス除去具Ｆを構成させた例を示している。この例では、扁平袋体１は、細長いシート体１ａをその長さ方向に沿って二つ折りし、折った側と反対の側に長さ側ヒートシール１ｂを施すと共に、両端とその長さ方向略中程に巾側ヒートシール１ｃを施すことにより構成されている。この例では、中間の巾側ヒートシール１ｃを挟んで左側に位置される長さ側ヒートシール１ｂの長さ方向中程の位置に一箇所の切り欠き部１ｇが、また、中間の巾側ヒートシール１ｃを挟んで右側に位置される長さ側ヒートシール１ｂの長さ方向中程の位置に一箇所の切り欠き部１ｇが、それぞれ形成されており、周回テープ体３は、扁平袋体１の左側と右側にそれぞれ一つづつ備えられている。このようにガス除去具Ｆを構成させた場合、中間の巾側ヒートシール１ｃを折り目にしてガス除去具Ｆを屈曲させることができ、収納容器１００の例えば本体１０２の内隅１０２ｄにこの折り目を位置させて、この内隅１０２ｄを挟んだ収納容器１００の内側面１０２ｂの一方にガス除去具Ｆの例えば左側を貼り込み、かつ、この内隅１０２ｄを挟んだ収納容器１００の内側面１０２ｂの他方にガス除去具Ｆの例えば右側を貼り込むようにして、収納容器１００にガス除去具を備え付けさせることができる。このようにした場合、二つの封入空間の一方にのみ活性炭シート２を納め、これらの他方にはシート状の吸湿剤などの他の空気質の改善ないしは改良剤を納めるようにしておいても良い。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】扁平袋体１の斜視図
【図２】ガス除去具Ｆの斜視図
【図３】図２におけるＡ−Ａ線位置での拡大断面構成図
【図４】ガス除去具Ｆの使用状態を示した側面構成図
【図５】扁平袋体１と周回テープ体３とを分離した状態の側面構成図
【図６】周回テープ体３の斜視構成図
【図７】同拡大断面構成図
【図８】扁平袋体１の他の構成例を示した斜視図
【符号の説明】
【００３４】
Ｆ ガス除去具
１ 扁平袋体
１ａ シート体
１ｆ 巻き付け箇所
１ｇ 切り欠き部
２ 活性炭シート
３ 周回テープ体
３ａ 吸着面
３ｂ’ 発泡プラスチック層
【技術分野】
【０００１】
この発明は、フォトマスク、マスクブランクス、シリコンウエハーなどの運搬や保管に用いられるプラスチック製の収納容器内に備えられて、この収納容器に納められたフォトマスクなどに対して悪影響を及ぼし得る微量なガスを、除去するために用いられるガス除去具に関する。
【背景技術】
【０００２】
現在、電子デバイスの製造に用いられるフォトマスクやその材料となるマスクブランクス、電子デバイスの材料となるシリコンウエハーなどの運搬や保管にあたっては、プラスチック製の収納容器が用いられている。
【０００３】
これらフォトマスクなどのパターンは微細化する一方であり、その欠陥を防ぐ観点からはこれらのフォトマスクなどがこれらに悪影響を及ぼすｐｐｂレベルの微量なガスに晒されることも忌避されるところである。
【０００４】
マスクブランクスの収納容器内への外気中の異物の進入阻止に関するものとして特許文献１に示されれるものがあるが、プラスチック製の収納容器はそれ自体もフォトマスクなどに悪影響を及ぼす微量なガスを生じる場合がある。また、こうした進入阻止だけでは、収納容器の開閉に伴ってこうしたガスが入り込んだ場合に十分に対処し得ないところである。
【特許文献１】特開２００５−４３７９６号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のフォトマスクなどの収納容器内に、格別のスペースを要することなく、また、フォトマスクなどに悪影響を及ぼす要因を増やすことなく、容易に備え付け可能なガス除去具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ガス除去具を、以下の（１）〜（５）の構成を備えたものとした。
（１）ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体からなる通気性を備えた扁平袋体と、
（２）この扁平袋体内に封入される活性炭シートと、
（３）扁平袋体の外側に巻き付けられた周回テープ体とを備えており、
（４）この周回テープ体の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層よりなる吸着面が形成されていると共に、
（５）扁平袋体における周回テープ体の巻き付け箇所に位置される縁部には、扁平袋体の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部が形成されている。
【０００７】
ガス除去具におけるガス除去剤は活性炭シートであることから、ガス除去具はできるだけ薄く構成させることができ、例えば、フォトマスクなどの収納容器の内面に格別のスペースを要することなく、周回テープ体の吸着面をもって吸着させて備え付けさせることができる。扁平袋体は通気性を有することから、かかる収納容器などの内部空間内に扁平袋体内に封入された活性炭シートによって吸着され得るガスがある場合にはかかるガスはガス除去具によって捕捉除去される。扁平袋体を構成するポリテトラフルオロエチレンを主体としたシート体は、自身よりガスや粉塵を生じさせることがなく、また、扁平袋体に封入された活性炭シートから生じる粉塵などを外部に漏れ出させることもない。また、扁平袋体は、前記収納容器などの内面に、周回テープ体の吸着面により吸着により取り付けられ、また、周回テープ体は扁平袋体の切り欠き部によって扁平袋体と一体化され、こうした内面に適宜取り付け取り外し可能な構造を持ちながら、この周回テープ体がガスの発生源となることはない。
【０００８】
前記扁平袋体内に、少なくとも二枚の活性炭シートを積層状態で封入させると共に、
少なくとも、これらの活性炭シートの一つにアルカリ化合物を担持させ、さらに、これらの活性炭シートの他の一つに酸性化合物を担持させるようにしておくこともある。
【０００９】
このようにした場合、単一のガス除去具をもって、有機性ガス、酸性ガス、アリカリ性ガスのいずれをも捕捉除去することができる。
【発明の効果】
【００１０】
この発明にかかるガス除去具は、フォトマスクなどの収納容器内に、格別のスペースを要することなく備え付けることができ、また、扁平袋体の切り欠き部を利用して接着剤などを使用することなくこの扁平袋体にしっかりと組み合わされた周回テープ体の吸着面により接着剤や粘着剤などを使用することなく収納容器の内面の所定の位置に容易に備え付けることができ、フォトマスクなどに悪影響を及ぼす要因を増やすことなく、かかる収納容器内のエアを清浄に保たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
以下、図１〜図８に基づいて、この発明を実施するための最良の形態について説明する。
【００１２】
なお、ここで図１は、周回テープ体３を巻き付けていない状態の扁平袋体１を、図２は、これを巻き付けてなるガス除去具Ｆを、図３は、その要部の断面構成を拡大して、それぞれ示している。また、図４は、収納容器１００の内側面１０２ｂに周回テープ体３の吸着面３ａをもって扁平袋体１の一面１ｄを吸着させた備え付け状態を示している。図５は、図６に示される周回テープ体３を構成する吸着テープ３ｂと非吸着テープ３ｃとを分離させた状態で示しており、図７はその吸着テープ３ｂの断面構成を拡大して示している。図２および図６においては、周回テープ体３の吸着面３ａの形成箇所を理解しやすいように、この形成箇所に作図の便宜上実際にはない細かな点を付している。また、図８は、ガス除去具Ｆの他の構成例を示している。
【００１３】
この実施の形態にかかるガス除去具Ｆは、フォトマスク、マスクブランクス、シリコンウエハーなどの運搬や保管に用いられるプラスチック製の収納容器１００内に備えられて、この収納容器１００に納められたフォトマスクなどに対して悪影響を及ぼし得る微量なガスを、除去するために用いられるものである。
【００１４】
前記ガスとしては、典型的には、以下のようなガスを想定するものである。
（ａ）芳香族炭化水素、シロキサン系成分、アルコール類、エステル類などのなどの有機物よりなるガス
（ｂ）硝酸、硫酸、塩酸、リン酸などの酸性物質よりなるガス
（ｃ）アンモニア、アミン類などのアルカリ性物質よりなるガス
【００１５】
この実施の形態にかかるガス除去具Ｆは、前記のプラスチック製の収納容器１００内に前記フォトマスクなどと一緒に納められて、この収納容器１００を構成するプラスチックから生じるガスや、収納容器１００からのフォトマスクなどの取り出しや納め入れ時に収納容器１００内に入り込むに至ったガスなどを吸着・除去するものである。
【００１６】
かかるガス除去具Ｆは、通気性を備えた扁平袋体１と、この扁平袋体１内に封入されるガス吸着剤としての活性炭シート２と、周回テープ体３とから構成されている。
【００１７】
扁平袋体１は、ポリテトラフルオロエチレン（ＰＴＦＥ）を主体としたシート体１ａによって構成されている。
【００１８】
図示の例では、かかる扁平袋体１を、長方形の細長い帯状の外観を呈するように構成させている。
【００１９】
かかる扁平袋体１は、例えば、ＰＴＦＥを延伸させて得られた、微細な孔を持ったシートの両面に、ポリエチレン（ＰＥ）とポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）との複合素材よりなるシート状の不織布を、積層させてなるシート体１ａによって構成される。図示の例にあっては、二枚のこうしたシート体１ａ、１ａを重ね合わせるようにした状態から、これらに一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂと一対の巾側ヒートシール１ｃ、１ｃとを施して、幅広の両面１ｄ、１ｅをそれぞれ長方形状にした扁平袋体１を得るようにしている。活性炭シート２は、これら各ヒートシール１ｂ、１ｃによって扁平袋体１内に封入されることとなる。
【００２０】
活性炭シート２は、扁平袋体１の一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂの内縁間に納まる巾と、一対の巾側ヒートシール１ｃ、１ｃの内縁間に納まる長さを持ち、長方形の細長い帯状の外観を呈するように構成されている。
【００２１】
図示の例では、前記扁平袋体１内に、三枚の活性炭シート２が積層状態で封入されている。また、これらの活性炭シート２の一つにアルカリ化合物を担持されると共に、これらの活性炭シート２の他の一つに酸性化合物を担持させている。また、これらの活性炭シート２の残りの一つ２’にはこうした化合物を担持させていない。かかるアルカリ化合物としては、例えば、炭酸カリウムなどを、また、かかる酸性化合物としては、例えば、リン酸化合物などを用いることができる。活性炭シート２としては、繊維状活性炭を不織布状にしてなるものや、不織布状のシートを形成させる過程でこれに粉末の活性炭を担持させたものなどを用いることができる。
【００２２】
これにより、この例にあっては、単一のガス除去具Ｆをもって、有機性ガス、酸性ガス、アルカリ性ガスのいずれをも捕捉除去することができるようになっている。
【００２３】
この例では、後述するように、周回テープ体３における扁平袋体１の幅広の一面１ｄ側に位置される部分にのみ吸着面３ａが形成されており、この一面１ｄ側でのみ収納容器１００の内面に吸着されると共に、前記化合物無担持の活性炭シート２’は扁平袋体１の幅広の他面１ｅ側に位置されるようになっている。（図２、図３）これにより、この例にあっては、酸性化合物を担持させた活性炭シート２およびアルカリ化合物を担持させた活性炭シート２から担持させた化合物が分離してもかかる化合物無担持の活性炭シート２によってこれを捕捉することができ、収納容器１００内に納められたフォトマスクなどに影響を与えることがない。また、ガス除去具Ｆにおける有機性ガスの捕捉容量を十分に確保できるようになっている。
【００２４】
周回テープ体３は、扁平袋体１の外側に巻き付けられるように構成されている。
【００２５】
図示の例では、扁平袋体１の両端側と長さ方向略中程の位置との計三箇所にそれぞれ、無端状の細帯状をなす周回テープ体３が巻き付けられるようになっている。
【００２６】
かかる周回テープ体３の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層３ｂ’よりなる吸着面３ａが形成されている。この例では、基材３ｂ”の一面にかかる発泡プラスチック層３ｂ’を備えてなる吸着テープ３ｂと、ＰＥＴからなる非吸着テープ３ｃとを組み合わせて、周回テープ体３の一部のみが前記吸着面３ａを備えるように構成させている。発泡プラスチック層３ｂ’は複数の微細な孔を持っており、この孔が吸盤機能を発揮するようになっている。吸着面３ａは未使用時には図示しない剥離シートによって被覆させておくことが好ましい。こうした吸着テープ３ｂとしては、例えば、ゼオン化成株式会社製のゼオンＡＬシート（ゼオンＡＬシートは同社の商標である。）を用いることができる。
【００２７】
図示の例では、非吸着テープ３ｃの一端の内面に吸着テープ３ｂの一端の吸着面３ａを吸着させ、かつ、非吸着テープ３ｃの他端の内面に吸着テープ３ｂの他端の吸着面３ａを吸着させることにより、周回テープ体３の外面の略半分が吸着面３ａとなるようにしている。（図５、図６）
【００２８】
一方、扁平袋体１における周回テープ体３の巻き付け箇所１ｆに位置される縁部には、扁平袋体１の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体３の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部１ｇが形成されている。そして、周回テープ体３は、この切り欠き部１ｇによって巾狭となった扁平袋体１の巻き付け箇所１ｆに、緩みを生じないように巻き付けられている。
【００２９】
図示の例では、切り欠き部１ｇは、長さ側ヒートシール１ｂの巾寸法の範囲内において、この長さ側ヒートシール１ｂの一部を外側から切除することで形成されている。一つの巻き付け箇所１ｆにおいて一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂのそれぞれにおいて切り欠き部１ｇが形成されており、周回テープ体３は一対の長さ側ヒートシール１ｂ、１ｂのいずれの側においても切り欠き部１ｇから外れ出すことがなく、巻き付け箇所１ｆに安定的に位置されるようになっている。
【００３０】
ガス除去具Ｆにおけるガス除去剤は活性炭シート２であることから、ガス除去具Ｆはできるだけ薄く構成させることができ、例えば、フォトマスクなどの収納容器１００の内面に格別のスペースを要することなく、周回テープ体３の吸着面３ａをもって吸着させて備え付けさせることができる。扁平袋体１は通気性を有することから、かかる収納容器１００などの内部空間内に扁平袋体１内に封入された活性炭シート２によって吸着され得るガスがある場合にはかかるガスはガス除去具Ｆによって捕捉除去される。扁平袋体１を構成するＰＴＦＥよりなるシート体１ａは、自身よりガスや粉塵を生じさせることがなく、また、扁平袋体１に封入された活性炭シート２から生じる粉塵などを外部に漏れ出させることもない。また、扁平袋体１は、前記収納容器１００などの内面に、周回テープ体３の吸着面３ａにより吸着により取り付けられ、また、周回テープ体３は扁平袋体１の切り欠き部１ｇによって扁平袋体１と一体化され、こうした内面に適宜取り付け取り外し可能な構造を持ちながら、この周回テープ体３がガスの発生源となることはない。
【００３１】
なお、図示の例では、扁平袋体１の他面１ｅにおける長さ方向に沿った一方縁（図示の例では下縁１ｂ’）から他方縁（図示の例では上縁１ｂ”）に亘りかつこの上縁１ｂ”から扁平袋体１の一面１ｄ側に回り込みこの一面の上縁１ｂ”側を覆う非吸着テープ３ｃの、その下端と上端との間に亘るように吸着テープ３ｂを備えさせて、周回テープ体３を構成させている。これにより、扁平袋体１はその一面側において収納容器１００の内面に吸着できるものとされると共に、その上縁１ｂ”側に位置される周回テープ体３の外面は非吸着面３ｃ’となっている。図示の例では、蓋１０１と本体１０２とからなる収納容器１００の閉蓋状態において蓋１０１の内面１０１ａから本体１０２の底１０２ａまでのピッチが扁平袋体１の巾寸法と略等しくなっており、扁平袋体１は本体１０２の内側面１０２ｂにその巾方向を本体１０２の高さ方向に沿わせる向きでその一面側において吸着されるようになっている。そして、このように本体１０２に吸着された扁平袋体１の一面１ｄ側であって開蓋１０１状態において本体１０２の開口１０２ｃから突き出される部分にある周回テープ体３の外面が非吸着面３ｃ’となるようにしてある。これにより、図示の例では、蓋と本体との突き合わせ箇所を閉蓋状態において収納容器の内側からガス除去具Ｆによって覆うようにしながら周回テープ体３の吸着面３ａが開蓋操作および閉蓋操作を邪魔することがないようになっている。
【００３２】
図８は、左右に活性炭シート２を納めた二つの細長い封入空間をそれぞれ持った扁平袋体１からガス除去具Ｆを構成させた例を示している。この例では、扁平袋体１は、細長いシート体１ａをその長さ方向に沿って二つ折りし、折った側と反対の側に長さ側ヒートシール１ｂを施すと共に、両端とその長さ方向略中程に巾側ヒートシール１ｃを施すことにより構成されている。この例では、中間の巾側ヒートシール１ｃを挟んで左側に位置される長さ側ヒートシール１ｂの長さ方向中程の位置に一箇所の切り欠き部１ｇが、また、中間の巾側ヒートシール１ｃを挟んで右側に位置される長さ側ヒートシール１ｂの長さ方向中程の位置に一箇所の切り欠き部１ｇが、それぞれ形成されており、周回テープ体３は、扁平袋体１の左側と右側にそれぞれ一つづつ備えられている。このようにガス除去具Ｆを構成させた場合、中間の巾側ヒートシール１ｃを折り目にしてガス除去具Ｆを屈曲させることができ、収納容器１００の例えば本体１０２の内隅１０２ｄにこの折り目を位置させて、この内隅１０２ｄを挟んだ収納容器１００の内側面１０２ｂの一方にガス除去具Ｆの例えば左側を貼り込み、かつ、この内隅１０２ｄを挟んだ収納容器１００の内側面１０２ｂの他方にガス除去具Ｆの例えば右側を貼り込むようにして、収納容器１００にガス除去具を備え付けさせることができる。このようにした場合、二つの封入空間の一方にのみ活性炭シート２を納め、これらの他方にはシート状の吸湿剤などの他の空気質の改善ないしは改良剤を納めるようにしておいても良い。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】扁平袋体１の斜視図
【図２】ガス除去具Ｆの斜視図
【図３】図２におけるＡ−Ａ線位置での拡大断面構成図
【図４】ガス除去具Ｆの使用状態を示した側面構成図
【図５】扁平袋体１と周回テープ体３とを分離した状態の側面構成図
【図６】周回テープ体３の斜視構成図
【図７】同拡大断面構成図
【図８】扁平袋体１の他の構成例を示した斜視図
【符号の説明】
【００３４】
Ｆ ガス除去具
１ 扁平袋体
１ａ シート体
１ｆ 巻き付け箇所
１ｇ 切り欠き部
２ 活性炭シート
３ 周回テープ体
３ａ 吸着面
３ｂ’ 発泡プラスチック層
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体からなる通気性を備えた扁平袋体と、
この扁平袋体内に封入される活性炭シートと、
扁平袋体の外側に巻き付けられた周回テープ体とを備えており、
この周回テープ体の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層よりなる吸着面が形成されていると共に、
扁平袋体における周回テープ体の巻き付け箇所に位置される縁部には、扁平袋体の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部が形成されていることを特徴とするガス除去具。
【請求項２】
扁平袋体内に、少なくとも二枚の活性炭シートが積層状態で封入されており、
少なくとも、これらの活性炭シートの一つにアルカリ化合物が担持されると共に、これらの活性炭シートの他の一つに酸性化合物が担持されていることを特徴とする請求項１記載のガス除去具。
【請求項１】
ポリテトラフルオロエチレンを主体として構成されるシート体からなる通気性を備えた扁平袋体と、
この扁平袋体内に封入される活性炭シートと、
扁平袋体の外側に巻き付けられた周回テープ体とを備えており、
この周回テープ体の外面の全部又は一部には、吸盤機能を持った発泡プラスチック層よりなる吸着面が形成されていると共に、
扁平袋体における周回テープ体の巻き付け箇所に位置される縁部には、扁平袋体の内部に至らない深さで、かつ、周回テープ体の巾と略等しいかそれより広い巾を持った切り欠き部が形成されていることを特徴とするガス除去具。
【請求項２】
扁平袋体内に、少なくとも二枚の活性炭シートが積層状態で封入されており、
少なくとも、これらの活性炭シートの一つにアルカリ化合物が担持されると共に、これらの活性炭シートの他の一つに酸性化合物が担持されていることを特徴とする請求項１記載のガス除去具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【公開番号】特開２００８−９１６３（Ｐ２００８−９１６３Ａ）
【公開日】平成２０年１月１７日（２００８．１．１７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１８００５０（Ｐ２００６−１８００５０）
【出願日】平成１８年６月２９日（２００６．６．２９）
【出願人】（５９６０４２５７８）日本ピュアテック株式会社 (15)
【出願人】（５０６２２４２１８）アドハンド株式会社 (6)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年１月１７日（２００８．１．１７）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年６月２９日（２００６．６．２９）
【出願人】（５９６０４２５７８）日本ピュアテック株式会社 (15)
【出願人】（５０６２２４２１８）アドハンド株式会社 (6)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]