説明

ガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ

【課題】ピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクション性能のばらつきを抑制し、オイル消費の低減及びフリクション低減の効果を安定して得られる、トップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるピストンリングを用いたガソリンエンジン用ピストンリングの組合せを提供する。
【解決手段】ピストンリングの組合せとしてトップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるものを用いるガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、当該トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比は、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、A/D≦0.10及びC/D≦0.22の各条件を満足するガソリンエンジン用ピストンリングの組合せを採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、オイル消費の低減及びフリクションの低減に効果のある、ガソリンエンジン用ピストンリングの組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
近年における自動車用内燃機関の長寿命化及び燃費向上の市場要求に伴い、当該内燃機関に用いられるピストンリングには、薄幅で軽く、低張力で摩擦ロスの少ないものが求められている。ここで、内燃機関におけるピストンには、シリンダボア内におけるスムーズな往復運動を実現し、また、高温な燃焼ガスをシールするためのピストンリングが装着されている。ピストンリングは、ガス漏れ防止用として装着されるコンプレッションリングと、シリンダボア壁面に付着した余分なオイルを掻き落としオイルコントロールを行うために装着されるオイルリングとからなり、通常これらを組み合わせて用いられる。また、ピストンリングは、燃焼室に近いピストン頂部側から順に、例えばコンプレッションリングであるトップリング、セカンドリング、そしてオイルリングが装着される。
【0003】
内燃機関において、ピストンとシリンダ等の接触箇所のフリクションを低減させるためには、ピストンリングの張力を低くすると共に、ピストンリングによるシリンダボア壁面への押圧力も低くなるよう設定することで実現でき、例えばピストンリングの軸方向の幅寸法や径方向の厚さ寸法を小さく設定することで可能となる。但し、このような手段は従来より採用されていたものの、ピストンリングのシール性の低下を招く恐れや、ピストンリングとシリンダボア壁面との間に隙間が生じる恐れがある。仮に、ピストンリングとシリンダボア壁面との間に隙間が生じた場合、ピストンリングによる燃焼室での爆発衝撃に耐えて高温な燃焼ガスを長期間安定してシールする働き、及びオイルを燃焼室内へ侵入させずにシールする働きが不十分となり、エンジン出力の低下やオイル消費の増大を招くこととなる。
【0004】
上述の問題を回避すべく、例えば、特許文献1(特開2000−9225号)には、セカンドランドの圧力を下げた状態で使用できるセカンドリング用のピストンリングであって、高圧往復動機構、特に、内燃機関のピストンに装着するのに適するピストンリングについて開示されている。具体的には、特許文献1のピストンリングは、「トップリングとはセカンドランドを介して離間して配されるセカンドリングであって、該セカンドリングが径方向の厚みおよび軸線方向の幅寸法がトップリングの対応寸法より小さく、セカンドリングの張力がトップリングの張力より小さくかつその内周部がリング溝底面より浮き上がるねじれをセカンドリングに付与されている」ことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−9225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に係るピストンリングは、ピストンリングの張力に関して、「セカンドリングの径方向の厚みと張力をトップリングの径方向の厚みと張力とより小さくする」旨の開示しかされていない。すなわち、特許文献1に係るピストンリングの組合せは、セカンドリングの径方向の厚み(a1寸法)を小さくして張力を低くすることで、ピストンリングの組合せの合計張力を小さくしたものである。また、特許文献1に係るピストンリングの組合せは、トップリング張力(11.7N)と、セカンドリング張力(0.4N)とに大きな差(トップリングの張力がセカンドリングの張力の約30倍)が生じている。このように、この特許文献1では、オイルリングに対しての張力低減やオイルコントロールについては全く言及していない。よって、単に、特許文献1に係るピストンリングの技術思想を用いるだけで、当該セカンドリングと、トップリングとオイルリングとを含めたピストンリングの組合せを用いた場合には、ピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクション性能にばらつきが生じやすく、オイル消費の低減及びフリクション低減の効果を安定化させることが難しい。
【0007】
以上のことから、本件発明は、ピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクション性能のばらつきを抑制し、オイル消費の低減及びフリクション低減の効果を安定して得られる、トップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるピストンリングを用いたガソリンエンジン用ピストンリングの組合せの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、ピストンリングの張力について所定の条件を満たすことで、上述した課題を解決するに到った。以下、本件発明に関して説明する。
【0009】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ: ガソリンエンジンに用いられるトップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるピストンリングの組合せにおいて、当該トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比は、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、下記数1に示す式(1)及び式(2)の各条件を満足するものであることを特徴とする。
【0010】
【数1】

【0011】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、前記トップリングの張力(N)をAとし、前記セカンドリングの張力(N)をBとし、前記オイルリングの張力(N)をCとし、前記シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比は、当該下記数2に示す式(3)の条件を満足することが好ましい。
【0012】
【数2】

【0013】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、前記トップリングの張力(N)をAとし、前記オイルリングの張力(N)をCとし、前記シリンダボア径(mm)をDとした場合に、下記数3に示す式(4)の条件を満足することが好ましい。
【0014】
【数3】

【0015】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、前記トップリング及び前記オイルリングは、少なくとも外周摺動面にガス窒化処理層及び/又はPVD処理層を備えることが好ましい。
【0016】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、前記トップリングの外周摺動面がバレルフェース形状であり、前記オイルリングの外周摺動面がステップランド形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、ピストンに装着されるピストンリングのシリンダボア径に対する張力比について、それぞれ本件発明に定める条件とすることで、オイル消費の低減、及びフリクション低減の効果を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本件発明のピストンリングを装着したピストンとシリンダとの関係を説明するためにシリンダ軸方向で切断して示した概略断面図である。
【図2】本件発明のオイルリングの外周摺動面の形状について説明するために軸方向で切断して例示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せの好ましい実施の形態について、以下に図を用いて示しながら本件発明をより詳細に説明する。
【0020】
図1は、本件発明のピストンリングを装着したピストンとシリンダとの関係を説明するためにシリンダ軸方向で切断して示した概略断面図である。図1に示すように、ピストン10は、当該ピストン10に設けられるピストンリング溝12〜14にピストン頂部側から順に、ピストンリング1であるトップリング2、セカンドリング3、オイルリング4が装着された状態で、シリンダ20に設けられるシリンダボア22内を往復動する。このときに、ピストンリング1は、所謂コンプレッションリングであるトップリング2及びセカンドリング3が、それぞれピストンリング溝12,13内に装着された状態で、シリンダボア壁面21に対して押圧することで、ピストン10とシリンダボア壁面21との間の隙間を埋めて燃焼ガスをシールする。また、ピストンリング1は、オイルリング4がピストンリング溝14に装着された状態で、シリンダボア壁面21に対して自己の持つ張力により押圧することで、シリンダボア壁面21の余分な油を掻き落とすと共に、シリンダボア壁面21の油膜の厚みを適度にコントロールする。なお、本件発明のオイルリング4は、図1に示すように、コイルエキスパンダ5とオイルリング本体6とから構成される、所謂2ピース型オイルリングと称されるものを採用している。
【0021】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ: 本件発明に係るガソリンエンジンに用いられるピストンリング1の組合せは、図1に示すように、トップリング2とセカンドリング3とオイルリング4とからなるものである。そして、本件発明に係るピストンリングの組合せにおいて、当該トップリング2又は当該オイルリング4のシリンダボア22の直径に対する張力比は、当該トップリング2の張力(N)をAとし、当該オイルリング4の張力(N)をCとし、当該シリンダボア22の直径(mm)をDとした場合に、下記数1に示す式(1)及び式(2)の各条件を満足するものであることを特徴とする。
【0022】
【数1】

【0023】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、用いるトップリング2又はオイルリング4のシリンダボア22の直径に対する張力比について、上記数1に示す式(1)及び式(2)の各条件を満足することで、ピストン10のシリンダボア壁面21に対するシール性を維持させてオイル消費の低減を図りながらも、当該ピストンリング1と当該シリンダボア壁面21との間のフリクションを効果的に低減させることができる。なお、式(1)において、A/Dが0.10を超えるとトップリング2のシリンダボア壁面21に対する押圧力が高くなりすぎて、ピストンリング1とシリンダボア壁面21との間のフリクションの低減を図ることができない。そして、式(2)において、C/Dが0.22を超える場合には、オイルリング4のシリンダボア壁面21に対する押圧力が高くなりすぎて、当該シリンダボア壁面21の油膜の厚みをコントロールできるものの、フリクションの低減を図ることが困難となる。
【0024】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、トップリング2の張力(N)をAとし、セカンドリング3の張力(N)をBとし、オイルリング4の張力(N)をCとし、シリンダボア22の直径(mm)をDとした場合に、当該トップリング2、当該セカンドリング3、及び当該オイルリング4の各リングのシリンダボア22の直径に対する張力比の合計張力比は、当該下記数2に示す式(3)の条件を満足することが好ましい。
【0025】
【数2】

【0026】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、用いるトップリング2、セカンドリング3、及びオイルリング4のシリンダボア22の直径に対する合計張力比を上記数2に示す式(3)の条件を満足することで、各リングそれぞれの張力を、ピストンリング1の組合せとして好ましいバランス配分にすることができる。その結果、本件発明に係るピストンリングの組合せによれば、オイル消費の低減、及びピストンリング1とシリンダボア壁面21との間のフリクションの低減をより効果的に図ることができる。なお、式(3)において、(A+B+C)/Dが0.45を超える場合には、トップリング2及び/又はセカンドリング3の張力が高すぎるために、ピストンリング1とシリンダボア壁面21との間のフリクションの低減を図ることが困難となる。
【0027】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、トップリング2の張力(N)をAとし、オイルリング4の張力(N)をCとし、当該シリンダボア22の直径(mm)をDとした場合に、下記数3に示す式(4)の条件を満足することが好ましい。
【0028】
【数3】

【0029】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、用いる「トップリング2のシリンダボア22の直径に対する張力比」に対する「オイルリング4のシリンダボア22の直径に対する張力比」の比率について、上記数3に示す式(4)の条件を満足することで、オイル消費の低減、及びピストンリング1とシリンダボア壁面21との間のフリクションの低減に関する効果についてより安定性を増す。なお、式(4)において、(C/D)/(A/D)が1.25未満の場合には、「トップリング2のシリンダボア22の直径に対する張力比」に対する「オイルリング4のシリンダボア22の直径に対する張力比」の比率が低すぎるために、シリンダボア壁面21の余分なオイルを掻き落とす機能を安定して得られなくなり、オイル消費の低減効果の安定性に欠くこととなる。また、式(4)において、(C/D)/(A/D)が2.40を超える場合には、「トップリング2のシリンダボア22の直径に対する張力比」に対する「オイルリング4のシリンダボア22の直径に対する張力比」の比率が高すぎるために、オイル掻き性能が向上するものの、ピストンリング1とシリンダボア壁面21との間のフリクションの増大を招いてしまう。
【0030】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、トップリング2及びオイルリング4は、少なくとも外周摺動面にPVDにより形成される皮膜を備えることが好ましい。
【0031】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せにおいて、トップリング2及びオイルリング4は、少なくとも外周摺動面にガス窒化処理層及び/又はPVD処理層を備えることで、ピストンリング1について耐久性を向上させ、内燃機関の長寿命化を図ることができる。なお、当該ガス窒化処理層及び/又はPVD処理層は、ピストンリング1のシリンダボア壁面との摺動面のみならず、ピストンリング溝と接触する上面及び下面を含む全表面に形成しても良い。また、セカンドリング3については、特に言及していないが、当該セカンドリング3に対してもトップリング2やオイルリング4のように、少なくとも外周摺動面にガス窒化処理層及び/又はPVD処理層を備えることで、内燃機関の長寿命化を更に図ることができる。
【0032】
ちなみに、本件発明のピストンリング1は、その上面及び下面に耐摩耗性を有する耐摩耗層としてダイアモンド ライク カーボン層(以下、「DLC層」と称する。)を形成することもできる。このDLC層は、上述のピストンリングのPVD処理層を形成した上面及び下面の最外層に設けることができる。このDLC層は、摩擦係数が低い低摩擦材料として知られており、当該上面及び下面の表面にDLC層を設けることで、ピストンリング1の耐摩耗特性を飛躍的に向上させることができる。なお、本件発明のピストンリング1は、更なる耐久性の向上を図るべく、耐摩耗層としてDLC層をリングの外周摺動面に設けても良い。
【0033】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せは、トップリング2の外周摺動面がバレルフェース形状であり、オイルリング4の外周摺動面がステップランド形状であることが好ましい。
【0034】
本件発明のトップリング2の外周摺動面は、図1に示すようなバレルフェース形状であることで、当該トップリング2のシリンダボア壁面21に対する押圧力を周方向に均一に付与することができることとなる。その結果、本件発明のトップリング2によれば、トップリング2とシリンダボア壁面21との間のシール性を安定して維持することができ、オイル消費の低減及びフリクションの低減を図ることができるため好ましい。また、本件発明のオイルリング4の外周摺動面は、図1に示すようなステップランド形状であることで、当該オイルリング4によるシリンダボア壁面21の余分なオイルを掻き落とす効果が更に得られることとなる。すなわち、本件発明のオイルリング4によれば、その外周摺動面がステップランド形状であることで、オイル上がりが生じ難く、また、オイル消費の低減及びフリクションの低減を図ることができることとなる。
【0035】
図2は、本件発明のオイルリングの外周摺動面の形状について説明するために軸方向で切断して例示した概略断面図である。図2に示すように、本件発明のオイルリング4におけるオイルリング本体6は、オイルリング本体の上側部分及び下側部分を構成する上側レール6a及び下側レール6bと、これら各レールと連結するウェブ6cとからなる。そして、当該上側レール6a及び下側レール6bの外周摺動面には、ステップ状の切り欠き6a’、6b’が形成されている。ここで、図2(A)〜(D)には、本件発明のオイルリング4の上側レール6a及び下側レール6bに形成されるステップ6a’、6b’の位置に関するバリエーションの例が示してある。例えば、図2(A)及び(B)には、第1レール6aに設けられるステップ6a’と第2レール6bに設けられるステップ6b’とがウェブ6cを挟んで対称となる位置に形成されている。また、図2(C)及び(D)には、第1レール6aに設けられるステップ6a’と第2レール6bに設けられるステップ6b’とがウェブ6cを挟んで非対称となる位置に形成されている。本件発明のオイルリング4は、例えば図2(A)〜(D)に示す箇所にステップ6a’、6b’を設けることで、オイルリング4によるオイルコントロール機能をより発揮することができると共に、フリクションの低減をも図ることができる。
【0036】
なお、オイルリング4の外周摺動面に設けられるステップ6a’、6b’は、オイルリング本体6の第1レール6a及び第2レール6bのシリンダボア壁21に対する当たり面の軸方向幅を考慮した上で、当該第1レール6a及び第2レール6bに例えば研磨部材や砥石等を用いた研削加工を施して形成することができる。従って、本件発明のオイルリング本体6は、その形成に際し特別な設備や特別なスキルが不要な簡単な方法でありながらも、高い寸法精度で当該レールの6a、6b外周形状を形成することができる。
【0037】
ここで、参考までに本件発明に係るガソリン用ピストンリングの組合せに用いられる、トップリング、セカンドリング、オイルリングの各ピストンリングに好適に用いられる材質及びその組成を以下に例示しておく。なお、本件発明のオイルリング本体の材質は、これら材質に限定されるものではない。
【0038】
まず、本件発明のトップリング用ピストンリングは、JIS SWOSC−V相当材を用いることができる。このJIS SWOSC−V相当材は、炭素0.5〜0.6質量%、ケイ素1.20〜1.60質量%、マンガン0.50〜0.80質量%、リン0.03質量%以下、硫黄0.03質量%以下、クロム0.5〜0.8質量%、銅0.12質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0039】
また、本件発明のトップリング用ピストンリングは、13Cr鋼を用いることができる。この13Cr鋼は、炭素0.6〜0.7質量%、ケイ素0.25〜0.5質量%、マンガン0.20〜0.50質量%、クロム13.0〜14.0質量%、モリブデン0.2〜0.4質量%、リン0.03質量%以下、硫黄0.03質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0040】
また、本件発明のトップリング用ピストンリングは、17Cr鋼を用いることができる。この17Cr鋼は、炭素0.80〜0.95質量%、ケイ素0.35〜0.5質量%、マンガン0.25〜0.40質量%、クロム17.0〜18.0質量%、モリブデン1.00〜1.25質量%、リン0.04質量%以下、硫黄0.04質量%以下、バナジウム0.08〜0.15質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0041】
次に、本件発明のセカンドリング用ピストンリングは、鋳鉄材(片状黒鉛鋳鉄)を用いることができる。この鋳鉄材は、炭素3.00〜3.50質量%、ケイ素2.00〜3.00質量%、マンガン0.40〜1.00質量%、リン0.20〜0.60質量%、硫黄0.12質量%以下、残部鉄及び不可避不純物からなる組成のものをいう。
【0042】
また、本件発明のセカンドリング用ピストンリングは、SWRH62Bを用いることができる。このSWRH62Bは、炭素0.59〜0.66質量%、ケイ素0.15〜0.35質量%、マンガン0.60〜0.90質量%、リン0.03質量%以下、硫黄0.03質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0043】
次に、本件発明のオイルリング本体は、8Cr鋼を用いることができる。この8Cr鋼は、炭素0.6〜0.8質量%、ケイ素0.15〜0.35質量%、マンガン0.20〜0.40質量%、クロム7.00〜9.00質量%、リン0.04質量%以下、硫黄0.03質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0044】
また、本件発明のオイルリング本体は、10Cr鋼を用いることができる。この10Cr鋼は、炭素0.4〜0.6質量%、ケイ素0.1〜0.3質量%、マンガン0.20〜0.40質量%、クロム9.0〜11.0質量%、リン0.04質量%以下、硫黄0.03質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0045】
また、本件発明のオイルリング本体は、13Cr鋼を用いることができる。この13Cr鋼は、炭素0.6〜0.7質量%、ケイ素0.25〜0.5質量%、マンガン0.20〜0.50質量%、クロム13.0〜14.0質量%、モリブデン0.2〜0.4質量%、リン0.03質量%以下、硫黄0.03質量%以下、残部鉄及び不可避不純物の組成のものをいう。
【0046】
以下、実施例及び比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
実施例1では、排気量が2000cc、シリンダボア径が85.5mmの直列4気筒ガソリンエンジンの実機試験を行い、用いるピストンリングのシリンダボア径に対する張力比の相違がオイル消費量にどのような影響を及ぼすかについて確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、全負荷(WOT)で50時間行った。そして、用いるピストンリングは、トップリング、セカンドリング、オイルリングの3本からなる組合せとした。このときのトップリングは、13Cr鋼からなる軸方向高さが1.0mm、径方向厚さが2.7mmのものにガス窒化処理を施し、更に外周摺動面にPVD処理(Cr−N系)を施したものを用いた。セカンドリングは、10Cr鋼からなり、軸方向高さが1.0mm、径方向厚さが2.7mmのものにガス窒化処理を施したものを用いた。オイルリングは、8Cr鋼からなり、軸方向高さ1.5mm、径方向厚さ1.5mmのものにPVD処理(Cr−N系)を施したものを用いた。なお、当該オイルリングに関しては、外周摺動面がステップランド形状であるものを用いた。
【0048】
ここで、トップリングを構成する13Cr鋼は、炭素0.65質量%、ケイ素0.37質量%、マンガン0.35質量%、クロム13.5質量%、モリブデン0.3質量%、リン0.02質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0049】
また、セカンドリングを構成する10Cr鋼は、炭素0.50質量%、ケイ素0.20質量%、マンガン0.30質量%、クロム10.2質量%、リン0.02質量%、硫黄0.02質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0050】
また、オイルリング本体を構成する8Cr鋼は、炭素0.70質量%、ケイ素0.28質量%、マンガン0.35質量%、クロム8.1質量%、リン0.01質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0051】
そして、実施例1では、ピストンリングの組合せとして、用いられるトップリング、セカンドリング、オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、それぞれ異なる組合せを用いた。具体的には、実施例1において、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングの張力、及びシリンダボア径は、以下の表1に示す条件に設定した。表1より、実施例1のピストンリングの組合せは、下記に示す条件となる。
【0052】
トップリングの張力A :5.6N
セカンドリングの張力B :4.9N
オイルリングの張力C :8.0N
シリンダボア径D :85.5mm
【0053】
実施例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、A/Dが0.065となり、C/Dが0.094となるものである。すなわち、実施例1は、本件発明の条件(数1の式(1)、(2))を満足するものである。
【0054】
また、実施例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、セカンドリングの張力(N)をBとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比((A+B+C)/D)が0.216となるものである。すなわち、実施例1は、本件発明の条件(数2の式(3))を満足するものである。
【0055】
また、実施例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、(C/D)/(A/D)が1.429となるものである。すなわち、実施例1は、本件発明の条件(数3の式(4))を満足するものである。
【0056】
以上のことから、実施例1は、本件発明の条件(数1の式(1)、(2)、数2の式(3)、及び数3の式(4))の全てを満足したものである。以上をふまえ、実施例1の条件でオイル消費量確認試験を行った結果を、当該条件と併せて表1に示す。表1には、本件発明の条件の内、数3の式(4)に示す条件を満足しないピストンリングの組合せ(以下に示す比較例1)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、実施例1のオイル消費量比は1となった。
【実施例2】
【0057】
実施例2では、排気量が2000cc、シリンダボア径が83.0mmの直列4気筒ガソリンエンジンの実機試験を行い、用いるピストンリングのシリンダボア径に対する張力比の相違がオイル消費量にどのような影響を及ぼすかについて確認を行った。なお、エンジンの運転条件は、全負荷(WOT)で50時間行った。そして、用いるピストンリングは、トップリング、セカンドリング、オイルリングの3本からなる組合せとした。このときのトップリングは、13Cr鋼からなる軸方向高さが1.2mm、径方向厚さが2.9mmのものにガス窒化処理を施し、更に外周摺動面にPVD処理(Cr−N系)を施したものを用いた。セカンドリングは、鋳鉄材からなり、軸方向高さが1.5mm、径方向厚さが3.5mmのものを用いた。オイルリングは、8Cr鋼からなり、軸方向高さ2.0mm、径方向厚さ2.75mmのものにガス窒化処理を施し、更に外周摺動面にPVD処理(Cr−N系)を施したものを用いた。なお、当該オイルリングに関しては、外周摺動面がステップランド形状であるものを用いた。
【0058】
ここで、トップリングを構成する13Cr鋼は、炭素0.65質量%、ケイ素0.37質量%、マンガン0.35質量%、クロム13.5質量%、モリブデン0.3質量%、リン0.02質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0059】
また、セカンドリングを構成する鋳鉄材は、炭素3.25質量%、ケイ素2.50質量%、マンガン0.70質量%、リン0.40質量%、硫黄0.06質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0060】
また、オイルリング本体を構成する8Cr鋼は、炭素0.70質量%、ケイ素0.28質量%、マンガン0.35質量%、クロム8.1質量%、リン0.01質量%、硫黄0.01質量%、残部鉄及び不可避不純物の組成を備えるものである。
【0061】
そして、実施例2では、ピストンリングの組合せとして、用いられるトップリング、セカンドリング、オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、それぞれ異なる組合せを用いた。具体的には、実施例2において、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングの張力、及びシリンダボア径は、以下の表1に示す条件に設定した。表1より、実施例2のピストンリングの組合せは、下記に示す条件となる。
【0062】
トップリングの張力A :7.8N
セカンドリングの張力B :10.0N
オイルリングの張力C :18.0N
シリンダボア径D :83.0mm
【0063】
実施例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、A/Dが0.094となり、C/Dが0.217となるものである。すなわち、実施例2は、本件発明の条件(数1の式(1)、(2))を満足するものである。
【0064】
また、実施例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、セカンドリングの張力(N)をBとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比((A+B+C)/D)が0.431となるものである。すなわち、実施例2は、本件発明の条件(数2の式(3))を満足するものである。
【0065】
また、実施例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、(C/D)/(A/D)が2.308となるものである。すなわち、実施例2は、本件発明の条件(数3の式(4))を満足するものである。
【0066】
以上のことから、実施例2は、本件発明の条件(数1の式(1)、(2)、数2の式(3)、及び数3の式(4))の全てを満足したものである。以上をふまえ、実施例2の条件でオイル消費量確認試験を行った結果を、当該条件と併せて表1に示す。表1には、本件発明の条件の内、数1の式(2)、数2の式(3)、及び数3の式(4)に示す条件を満足しないピストンリングの組合せ(以下に示す比較例2)を用いて実機試験をして得られたオイル消費量を基準「1」として、これに対する相対比で表示している。その結果、実施例2のオイル消費量比は1となった。
【比較例】
【0067】
[比較例1]
比較例1は、実施例1との対比用として用いる。比較例1では、実施例1と同じエンジンを用い、また、実施例1と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例1のピストンリングは、実施例1と同様に、トップリング、セカンドリング、及びオイルリングの3本からなる組合せを採用し、また、当該オイルリングの外周摺動面がステップランド形状でない点を除き、全て実施例1のピストンリングと同じ断面形状及び材質のリングを用いた。
【0068】
そして、比較例1では、ピストンリングの組合せとして、用いられるトップリング、セカンドリング、オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、それぞれ異なる組合せの従来相当品を用いた。具体的には、比較例1において、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングの張力、及びシリンダボア径は、以下の表1に示す条件に設定した。表1より、比較例1のピストンリングの組合せは、下記に示す条件となる。
【0069】
トップリングの張力A :5.6N
セカンドリングの張力B :4.9N
オイルリングの張力C :16.0N
シリンダボア径D :85.5mm
【0070】
比較例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、A/Dが0.065となり、C/Dが0.187となるものである。すなわち、比較例1は、本件発明の条件(数1の式(1)、(2))を満足するものである。
【0071】
また、比較例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、セカンドリングの張力(N)をBとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比((A+B+C)/D)が0.310となるものである。すなわち、比較例1は、本件発明の条件(数2の式(3))を満足するものである。
【0072】
また、比較例1は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、(C/D)/(A/D)が2.857となるものである。すなわち、比較例1は、本件発明の条件(数3の式(4))を満足しないものである。
【0073】
以上のことから、比較例1は、本件発明の条件の内、数3の式(4)に示す条件のみ満足しないものである。以上をふまえ、比較例1の条件でオイル消費量確認試験を行った結果を、当該条件と併せて表1に示す。なお、表1には、上述したように、比較例1のピストンリングの組合せを用いて実機試験をして得られたオイル消費量比を基準「1」として示している。
【0074】
[比較例2]
比較例2は、実施例2との対比用として用いる。比較例2では、実施例2と同じエンジンを用い、また、実施例2と同じ駆動条件でエンジンを駆動させてオイル消費量の確認を行った。そして、比較例2のピストンリングは、実施例2と同様に、トップリング、セカンドリング、及びオイルリングを組み合わせたものを使用し、また、当該オイルリングの外周摺動面がステップランド形状でない点を除き、全て実施例2のピストンリングと同じ断面形状及び材質のリングを用いた。
【0075】
そして、比較例2では、ピストンリングの組合せとして、用いられるトップリング、セカンドリング、オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、それぞれ異なる組合せの従来相当品を用いた。具体的には、比較例2において、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングの張力、及びシリンダボア径は、以下の表1に示す条件に設定した。表1より、比較例2のピストンリングの組合せは、下記に示す条件となる。
【0076】
トップリングの張力A :7.8N
セカンドリングの張力B :10.0N
オイルリングの張力C :27.0N
シリンダボア径D :83.0mm
【0077】
比較例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比が、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、A/Dが0.094となり、C/Dが0.325となるものである。すなわち、比較例2は、本件発明の条件の内、数1の式(2)に示す条件を満足しないものである。
【0078】
また、比較例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、セカンドリングの張力(N)をBとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比((A+B+C)/D)が0.540となるものである。すなわち、比較例2は、本件発明の条件の内、数2の式(3)に示す条件を満足しないものである。
【0079】
また、比較例2は、ピストンリングの組合せを上記条件に設定することで、トップリングの張力(N)をAとし、オイルリングの張力(N)をCとし、シリンダボア径(mm)をDとした場合に、(C/D)/(A/D)が3.462となるものである。すなわち、比較例2は、本件発明の条件の内、数3の式(4)に示す条件を満足しないものである。
【0080】
以上のことから、比較例2は、本件発明の条件の内、数1の式(2)、数2の式(3)、及び数3の式(4)に示す条件を満足しないものである。以上をふまえ、比較例2の条件でオイル消費量確認試験を行った結果を、当該条件と併せて表1に示す。なお、表1には、上述したように、比較例2のピストンリングの組合せを用いて実機試験をして得られたオイル消費量比を基準「1」として示している。
【0081】
[実施例と比較例との対比]
実施例と比較例との対比: 以下に示す表1には、ピストンリングの組合せとして各リングのシリンダボア径に対する張力がそれぞれ異なる、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2について、オイル消費量を対比した結果を示している。
【0082】
【表1】

【0083】
表1より、ガソリンエンジンの実機試験を全負荷(WOT)で50時間行った結果、ピストンリングの組合せの条件がそれぞれ異なる、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2のオイル消費量比は、皆同じ数値「1」であった。すなわち、実施例(実施例1又は実施例2)と、比較例(比較例又は比較例2)とを同じエンジン及び排気量同士で比較したときに、それぞれピストンリングの組合せの条件が異なるにもかかわらず、オイル消費量に差が生じない結果が得られた。しかし、本試験において、用いたエンジン及び排気量が同じ条件である、実施例1と比較例1、また実施例2と比較例2についてピストンリングの組合せの条件をみると、オイルリングの張力Cは、実施例(実施例1又は実施例2)の方が比較例(比較例1又は比較例2)よりもかなり小さい。この事実より、実施例1又は実施例2のピストンリングの組合せによれば、従来相当品であるピストンリングの組合せ(比較例1又は比較例2)に対してオイル消費量を増大させずにピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクションを大幅に低減させることが可能となることが分かった。
【0084】
以上の結果より、ガソリンエンジンに用いられるトップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるピストンリングの組合せにおいて、各リングのシリンダボア径に対する張力比を本件発明に規定する条件を満足することで、ピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクション性能のばらつきを抑制できることに加え、オイル消費の低減及びフリクション低減の効果を長期間安定して得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せを用いることで、用いられるピストンリングとシリンダボア壁面との間のフリクションのばらつきを抑制可能となり、内燃機関の駆動時のオイル消費の低減効果を安定して得ることができることとなる。従って、本件発明に係るガソリンエンジン用ピストンリングの組合せによれば、オイル供給頻度の低減、オイルの効率的消費が可能になり、資源の有効利用、環境負荷を低減化するという観点から好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1 ピストンリング
2 トップリング
3 セカンドリング
4 オイルリング
5 コイルエキスパンダ
10 ピストン
20 シリンダ
21 シリンダボア壁面
22 シリンダボア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリンエンジンに用いられるトップリングとセカンドリングとオイルリングとからなるピストンリングの組合せにおいて、
当該トップリング又は当該オイルリングのシリンダボア径に対する張力比は、当該トップリングの張力(N)をAとし、当該オイルリングの張力(N)をCとし、当該シリンダボア径(mm)をDとした場合に、下記数1に示す式(1)及び式(2)の各条件を満足するものであることを特徴とするガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ。
【数1】

【請求項2】
前記トップリングの張力(N)をAとし、前記セカンドリングの張力(N)をBとし、前記オイルリングの張力(N)をCとし、前記シリンダボア径(mm)をDとした場合に、当該トップリング、当該セカンドリング、及び当該オイルリングの各リングのシリンダボア径に対する張力比の合計張力比は、当該下記数2に示す式(3)の条件を満足する請求項1に記載のガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ。
【数2】

【請求項3】
前記トップリングの張力(N)をAとし、前記オイルリングの張力(N)をCとし、前記シリンダボア径(mm)をDとした場合に、下記数3に示す式(4)の条件を満足する請求項1又は請求項2に記載のガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ。
【数3】

【請求項4】
前記トップリング及び前記オイルリングは、少なくとも外周摺動面にガス窒化処理層及び/又はPVD処理層を備える請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ。
【請求項5】
前記トップリングの外周摺動面がバレルフェース形状であり、前記オイルリングの外周摺動面がステップランド形状である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガソリンエンジン用ピストンリングの組合せ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215238(P2012−215238A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80727(P2011−80727)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(390022806)日本ピストンリング株式会社 (137)
【Fターム(参考)】