説明

ガソリン組成物

【課題】環境負荷を低減しつつ、オクタン価を効果的に向上させ、相分離の発生やリード蒸気圧の上昇を招くことなく、自動車用燃料として安定した性能を発揮することができる新規なガソリン組成物を提供する。
【解決手段】ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含み、リサーチ法オクタン価が89以上93未満、モータ法オクタン価が79以上86未満、15℃における密度が0.680〜0.783g/cm、50%留出温度が75〜110℃、70℃留出量が18〜45容量%、リード蒸気圧が45〜93kPaであることを特徴とするガソリン組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリン組成物に関し、さらに詳しくは、自動車用燃料として好適に用いられるガソリン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の性能を高めながら、その環境負荷を軽減することが社会的に要請されており、近年のガソリン組成物は、優れた運転特性を発揮しつつ、清浄な排気ガスを排出するものであることが求められるようになっている。
【0003】
例えば、各種ガソリン基材を混合して得られるベースガソリンに対し、軽質でオクタン価の高い含酸素基材であるメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)を配合することにより、低温運転性に優れるとともに、排気ガス中の一酸化炭素(CO)量や炭化水素(THC)量を低減したガソリン組成物の生産・販売が行われていた。
【0004】
しかしながら、MTBEの環境面に対する影響を懸念して、現在、日本国内においては、MTBEを配合したガソリン組成物の生産・販売が自制されている。
【0005】
MTBEはオクタン価が高いガソリン基材であるために、MTBEに代わる高オクタン価ガソリン基材が必要とされており、その中で、新しいガソリン基材としてエタノールが注目を浴びている(例えば、特許文献1参照)。エタノールは、オクタン価が高いとともに、芳香族分やオレフィン分を含まず、バイオマス系の基材として再生可能なものでもあることから、環境負荷が低いという利点を有している。
【0006】
一方、エタノールは親水性が高いため、エタノールを含有したガソリンは水分を取り込み易く、水分量が所定量以上になると、条件によっては、エタノールを取り込んだ水相がガソリン相と相分離して、ガソリン組成物が所望性能を示さなくなる場合がある。
【0007】
また、エタノール含有ガソリンは、特異な揮発特性を示すことが知られており、ガソリン中の炭化水素成分とエタノールの共沸現象により、エタノール含有ガソリンのリード蒸気圧(RVP)は、エタノール混合前のベースガソリンのRVPよりも高い値を示し、蒸発ガスの増加などガソリン組成物の性状として好ましくない結果を引き起こす場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−029760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況下、本発明は、環境負荷を低減しつつ、オクタン価を効果的に向上させ、相分離の発生やRVPの上昇を招くことなく、自動車用燃料として安定した性能を発揮することができる新規なガソリン組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術課題を解決するために、本発明者等は、鋭意検討した結果、新規なガソリン基材として、ノルマルブタノールに着目した。
【0011】
ノルマルブタノールは、イソブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等の他のブタノール異性体に比較して、オクタン価が低い(リサーチ法オクタン価(RON)で97.6)ことから、これまでにガソリン基材として使用した事例は報告されていない。
【0012】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、ノルマルブタノールをガソリン基材として使用した場合、バイオマス系の基材として再生可能な利点を有するばかりか、親水性が低く、かつ、RVPを低減する効果が期待された。
【0013】
また、本発明者等がさらに検討したところ、特定のベースガソリンとノルマルブタノールとを混合することにより、得られるガソリン組成物のオクタン価が、ベースガソリンのオクタン価とノルマルブタノールのオクタン価から予想されるオクタン価よりも高い値を示す、いわゆるオクタン価ボーナスが生じることを見出し、これ等の知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1)ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含み、
RONが89以上93未満、モータ法オクタン価(MON)が79以上86未満、15℃における密度が0.680〜0.783g/cm、50%留出温度(T50)が75〜110℃、70℃留出量(E70)が18〜45容量%、RVPが45〜93kPaである
ことを特徴とするガソリン組成物、
(2)ノルマルブタノールの含有割合が3〜20容量%である上記(1)に記載のガソリン組成物、
(3)ベースガソリン中のパラフィンの含有割合が65〜90容量%である上記(1)または(2)に記載のガソリン組成物、
(4)ベンゼン含有量が1容量%以下であるとともに、硫黄分含有量が10質量ppm以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン組成物、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ガソリン組成物が、ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含み、RONが89以上93未満、MONが79以上86未満、15℃における密度が0.680〜0.783g/cm、T50が75〜110℃、E70が18〜45容量%、RVPが45〜93kPaであるものであることから、環境負荷を低減しつつ、オクタン価を効果的に向上させ、相分離の発生やRVPの上昇を招くことなく、自動車用燃料として安定した性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のガソリン組成物は、ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含み、RONが89以上93未満、MONが79以上86未満、15℃における密度が0.680〜0.783g/cm、T50が75〜110℃、E70が18〜45容量%、RVPが45〜93kPaであることを特徴とするものである。
【0017】
本発明のガソリン組成物は、ノルマルブタノールを、1〜20容量%含むものであり、3〜20容量%含むものであることが好ましく、5〜20容量%含むものであることがより好ましい。
【0018】
ノルマルブタノールの含有割合が1〜20容量%であることにより、環境負荷を低減しつつ、密度等のガソリン組成物としての基本的性状を満足することができ、後述するオクタン価向上効果を効果的に発揮することができる。
【0019】
ノルマルブタノールは、プロピレン等を主原料として化学合成法により得られたものであってもよいし、バイオマス由来で得られたものであってもよいが、これ等のうち、バイオマス由来で得られたものが、いわゆるカーボンニュートラルの観点からCOの排出量を削減し得るため、好ましい。
【0020】
バイオマスとしては、サトウキビ、トウモロコシなどの食料系バイオマス、トウモロコシの茎葉、麦わら、木質などの非食料系バイオマスが挙げられる。上記バイオマスは前処理(粉砕、多糖類抽出、単糖類化)を行い、微生物を用いて発酵処理した後、適宜精製することによりノルマルブタノールを製造することができる。上記微生物としては、クロストリジウム アセトブチリカム(Clostridium acetobutyricum)などのABE発酵菌、遺伝子を組換えたエシェリヒア コリ(Escherichia coli)などを挙げることができる。
【0021】
バイオマスを原料としてブタノールを製造する場合、通常、オクタン価の低いノルマルブタノールしか得られず、このノルマルブタノールは、上述したように、イソブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール等の異性体に比べるとオクタン価が低いことから、含酸素ガソリン基材としては利用価値が低いものであった。しかしながら、本発明によれば、ガソリン基材として利用価値が低いとされていたノルマルブタノールを用いても、後述するオクタン価ボーナスにより実用上十分なオクタン価を有するガソリン組成物を得ることができ、ノルマルブタノールとしてバイオマス由来のものを使用し得ることから環境負荷を低減することもできる。
【0022】
また、ノルマルブタノールは、燃焼時に完全燃焼して水と二酸化炭素以外の排出物を排出し難い化合物であることから、この意味においても、本発明のガソリン組成物により、環境負荷を低減することができる。さらに、本発明のガソリン組成物は、ノルマルブタノールを含むものであることから、エタノール含有ガソリンに比較して、相分離の発生やRVPの上昇等を抑制することができ、自動車用燃料として安定した性能を発揮することができる。
【0023】
本発明のガソリン組成物は、パラフィン(脂肪族飽和炭化水素)の含有割合が60〜95容量%であるベースガソリンを80〜99容量%含む。
【0024】
本発明のガソリン組成物において、ベースガソリンの含有割合は、80〜99容量%であり、80〜97容量%であることが好ましく、80〜95容量%であることがより好ましい。
【0025】
本出願書類において、ベースガソリンとは、ガソリン組成物を構成する、ノルマルブタノール以外のガソリン基材の混合物を意味する。
【0026】
ベースガソリン中のパラフィンの含有割合は、60〜95容量%であり、65〜90容量%が好ましく、65〜75容量%がより好ましい。
【0027】
上記パラフィンとしては、通常ガソリン組成物中に含まれる、直鎖状飽和炭化水素および分枝状飽和炭化水素から選ばれる1種以上を挙げることができ、通常、ガソリン組成物は、これらの飽和炭化水素を複数種含むものであることから、本出願書類において、ベースガソリン中のパラフィンの含有割合とは、ベースガソリン中に占める上記飽和炭化水素の総量の割合を意味する。
【0028】
なお、本出願書類において、上記パラフィンの含有割合は、石油学会法JPI−5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して求めた値を意味する。
【0029】
また、本発明のガソリン組成物において、ベースガソリンは、芳香族化合物を0〜40容量%含むものであることが適当であり、0〜30容量%含むものであることがより適当であり、5〜30容量%含むものであることがさらに適当である。さらに、本発明のガソリン組成物において、ベースガソリンは、オレフィン(不飽和炭化水素)を0〜40容量%含むものであることが適当であり、1〜30容量%含むものであることがより適当であり、1〜10容量%含むものであることがさらに適当である。本発明のガソリン組成物において、ベースガソリンは、ナフテン(環状飽和炭化水素)を0〜40容量%含むものであることが適当であり、1〜30容量%含むものであることがより適当であり、1〜10容量%含むものであることがさらに適当である。
【0030】
通常、ガソリン組成物は、上記芳香族化合物、オレフィン、ナフテンを複数種含むものであることから、本出願書類において、ベースガソリン中の芳香族化合物、オレフィン、ナフテンの含有割合とは、ベースガソリン中に占める上記芳香族化合物の総量やオレフィンの総量、ナフテンの総量の割合を意味する。
【0031】
なお、本出願書類において、芳香族化合物の含有割合、オレフィンの含有割合、ナフテンの含有割合は、石油学会法JPI−5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値を意味する。
【0032】
ベースガソリンを構成する、パラフィン、芳香族炭化水素、オレフィン、ナフテンの含有割合は、これらの成分を種々の割合で含有するガソリン基材を任意に混合することにより得ることができる。例えば、パラフィンの含有割合を増加させるためには、接触改質ガソリンや接触分解ガソリン等のガソリン基材を得る際の改質、分解条件を調整して得られた、パラフィンを多量に含むガソリン基材を用いたり、アルキレート等のほぼパラフィン成分のみからなる基材を用いて、これらの基材を多量に配合すればよい。
【0033】
本発明のガソリン組成物は、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリンを80〜99容量%含有することにより、ノルマルブタノールとの相乗効果を生じて、ガソリン組成物中のオクタン価が、ノルマルブタノールのオクタン価とベースガソリンのオクタン価から予想される値よりも高くなるいわゆるオクタン価ボーナスを引き出すことができる。
【0034】
一般に、ガソリン組成物のオクタン価は、各成分のオクタン価とその成分の体積混合率を掛け合わせた値の積算値から予測することができるといわれているが、実際に得られるガソリン組成物のオクタン価は、当初予想されたオクタン価よりも低くなる場合が多い。反面、ガソリン基材をある特定の割合で混合したときには、オクタン価ボーナスを生じ、当初予想されたオクタン価よりもオクタン価が高くなる場合があるが、ガソリン組成物は、200〜300種類の炭化水素類が種々の割合で混合されてなるものであることから、一般に、ガソリン組成を制御することで所望のオクタン価ボーナスを得ることは非常に困難である。また、従来、アルコール類やエーテル類を配合したガソリン組成物におけるオクタン価ボーナスは、その挙動について不明な点が多かった。
【0035】
このような状況下、本発明者等が鋭意検討した結果、驚くべきことに、ベースガソリンの構成物のうち、パラフィンの含有割合に着目し、ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含むガソリン組成物が、いわゆるオクタン価ボーナスを生じるとともに、ガソリンとしての基本性状も満たし得ることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0036】
このように、本発明のガソリン組成物は、所望量のノルマルブタノールとベースガソリンから構成されてなるものである。
【0037】
本発明のガソリン組成物は、パラフィンを40〜99容量%含むものであることが適当であり、40〜80容量%含むものであることがより適当であり、50〜80容量%含むものであることがさらに適当である。
【0038】
また、本発明のガソリン組成物は、芳香族化合物を40容量%以下含むものであることが適当であり、0〜25容量%含むものであることがより適当であり、5〜25容量%含むものであることがさらに適当である。ガソリン組成物中の芳香族化合物量が40容量%以内であることにより、排出ガス中の有害成分の増加を防ぐことができる。なお、本出願書類において、芳香族化合物の含有割合には、下記ベンゼンの含有割合も含まれる。
【0039】
さらに、本発明のガソリン組成物は、オレフィンを30容量%以下含むものであることが適当であり、1〜30容量%含むものであることがより適当であり、1〜10容量%含むものであることがさらに適当である。ガソリン組成物中のオレフィン含有量が30容量%以下であることにより、酸化安定性の低下を防ぐことができる。
【0040】
本発明のガソリン組成物は、ナフテンを40容量%以下含むものであることが適当であり、0〜5容量%含むものであることがより適当であり、1〜5容量%含むものであることがさらに適当である。
【0041】
本発明のガソリン組成物は、ベンゼン含有量が1容量%以下であることが好ましく、0.8容量%以下であることがより好ましく、0.6容量%以下であることがさらに好ましい。ガソリン組成物中のベンゼン含有量が1容量%以内であることにより、排出ガス中のベンゼン濃度上昇を抑制して、環境負荷を低減できる可能性がある。
【0042】
なお、本出願において、上記ベンゼン含有量は、石油学会法JPI-5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した値を意味する。
【0043】
本発明のガソリン組成物は、硫黄分含有量が10質量ppm以下であることが好ましく、8質量ppm以下であることがより好ましく、5質量ppm以下であることがさらに好ましい。上記硫黄分含有量が10質量ppm以内であることにより、排出ガス浄化触媒の能力低下を防止し、排出ガス中のNOx、CO、THCの濃度上昇を抑制して、環境負荷を低減できる可能性がある。
【0044】
なお、本出願において、上記硫黄分含有量は、JIS K 2541に準拠して測定した値を意味する。
【0045】
本発明のガソリン組成物は、RONが、89以上93未満であり、89〜92であることが好ましく、89〜91であることがより好ましい。また、本発明のガソリン組成物は、MONが79以上86未満であり、80以上86未満であることが好ましく、80〜85であることがより好ましい。RONが89以上であることにより、高い運転性能を維持することが可能となり、MONが79以上であることにより、高速走行時のアンチノック性の低下を防止することができる。
【0046】
本発明のガソリン組成物は、含酸素化合物として、オクタン価の低いノルマルブタノールを含むものでありながら、上記オクタン価ボーナスによるオクタン価向上効果により、RONやMONを所望範囲にすることができる。
【0047】
なお、本出願書類において、上記RON及びMONは、JIS K 2280に準拠して測定した値を意味する。
【0048】
本発明のガソリン組成物は、15℃における密度が0.680〜0.783g/cmであり、0.685〜0.783g/cmであることが好ましく、0.690〜0.730g/cmであることがより好ましい。上記密度が0.680g/cm以上であることにより良好な燃費を確保することができ、また、上記密度が0.783g/cm以下であることにより高密度の芳香族分を低減でき、排出ガスによる大気への芳香族排出量を低減することができる。上記密度は、本発明のガソリン組成物において、ノルマルブタノールの含有割合を所定範囲に制御すること等により達成することができる。
【0049】
なお、本出願書類において、上記密度は、JIS K 2249に準拠して測定した値を意味する。
【0050】
本発明のガソリン組成物は、T50が、75〜110℃であり、75〜105℃であることが好ましく、75〜100℃であることがより好ましい。また、本発明のガソリン組成物は、E70が18〜45容量%であり、20〜45容量%であることが好ましく、25〜45容量%であることがより好ましい。T50及びE70が上記範囲内にあれば、始動性、運転性、加速性に不具合が生じる場合を防ぐことができる。
【0051】
本発明のガソリン組成物は、含酸素化合物としてエタノールではなくノルマルブタノールを含むことにより、T50やE70を所望範囲に安定して制御することが可能となる。
【0052】
なお、本出願書類において、上記T50やE70は、JIS K 2254に準拠して測定した値を意味する。
【0053】
本発明のガソリン組成物は、RVPが45〜93kPaであり、50〜90kPaであることが好ましく、55〜90kPaであることがより好ましい。RVPが93kPa以下であることにより蒸発ガスの量を少なくすることができ、45kPa以上であることにより低温始動性、暖気性の低下を防ぐことができる。本発明のガソリン組成物は、含酸素化合物として、エタノールではなくノルマルブタノールを含むことにより、RVPを所望範囲に安定して制御することができる。
【0054】
なお、本出願書類において、上記RVPは、JIS K 2258に準拠して測定した値を意味する。
【0055】
本発明のガソリン組成物は、ノルマルブタノールと、ベースガソリンを構成する各種ガソリン基材とを、適宜配合することにより、得ることができる。
【0056】
上記ベースガソリンを構成するガソリン基材としては、特に限定されないが、以下の(a)〜(f)のような各種基材が挙げられる。
(a)接触改質法により、重質の直留ナフサなどを、水素気流中で高温・加圧下で触媒と接触処理して得られた改質ガソリンから、蒸留処理によりベンゼンを除去して得られる脱ベンゼン接触改質ガソリン。
(b)原油を常圧蒸留して得た直留ナフサを軽質留分と重質留分に分けた内の軽質留分を脱硫処理して得られる脱硫直留軽質ナフサ。
(c)流動接触分解法(UOP法、シェル二段式法、フレキシクラッキング法、ウルトラオルソフロー法、テキサコ法、ガルフ法、ウルトラキャットクラッキング法、RCC法、HOC法等)により、重質軽油や減圧軽油などを、固体酸触媒(例えば、シリカ・アルミナにゼオライトを配合したもの等)等の触媒で分解処理して得られる接触分解ガソリン。
(d)イソブタンと低級オレフィン(ブテン、プロピレン等)を原料として、酸触媒(硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム等)の存在下で反応させて得られるアルキレート。
(e)原油や粗油等の常圧蒸留時、改質ガソリン製造時、あるいは分解ガソリン製造時等に蒸留処理して得られるブタン、ブテン類を主成分とするC4留分。
(f)直鎖の低級パラフィン系炭化水素の異性化によって得られるアイソメレート、あるいはアイソメレートを精密蒸留して得られるイソペンタン等。
【0057】
本発明のガソリン組成物は、清浄剤や各種添加剤を含んでもよい。
【0058】
清浄剤としては、ポリエーテルアミン、ポリアルキルアミン、ポリイソブテンアミン、コハク酸イミド等を挙げることができる。清浄剤の含有量は50〜1000質量ppm(50〜1000mg/L)が適当であり、100〜500質量ppm(100〜500mg/L)がより適当である。清浄剤の含有量が50質量ppm以上であることによりIVD(吸気バルブデポジット)の増加を防ぐことができ、同含有量が1000質量ppm以内であることによりCCD(燃焼室デポジット)の増加を防ぐことができる。
【0059】
添加剤としては、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、チオアミド化合物等の金属不活性剤、有機リン系化合物等の表面着火防止剤、多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤、アルケニル琥珀酸エステル等の錆止め剤、及びアゾ染料等の着色剤等、公知の燃料添加剤から選ばれる1種以上を挙げることができる。これら添加剤の添加量は任意であるが、通常、その合計添加量を0.1質量%以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例に更に詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
【0061】
なお、以下の実施例および比較例に記載されている各種含有割合、物性およびガソリン組成物の評価結果は、以下の方法により求めたものである。
<パラフィン含有割合、芳香族化合物含有割合、オレフィン含有割合、ナフテン含有割合、ベンゼン含有割合>
石油学会法JPI−5S-33-90(ガスクロマトグラフ法)に準拠して測定した。
<硫黄分含有割合>
JIS K 2541に準拠して測定した。
<RON、MON>
JIS K 2280に準拠して測定した。
<15℃における密度>
JIS K 2249に準拠して測定した。
<10%留出温度(T10)、T50、90%留出温度(T90)、E70>
JIS K 2254に準拠して測定した。
<RVP>
JIS K 2258に準拠して測定した。
<相分離の有無>
目視観察により相分離の有無を判断した。
<ノルマルブタノールブレンディングRON>
ノルマルブタノールブレンディングRONとは、得られたガソリン組成物中におけるノルマルブタノールの見かけのRONを示すものであって、以下の関係式により算出した。
【0062】
得られたガソリン組成物のRON=ベースガソリンRON×ベースガソリンの配合割合+ノルマルブタノールブレンディングRON×ノルマルブタノール配合割合
ノルマルブタノールのRONが97.6であることからノルマルブタノールブレンディングRONが97.6以上ならばオクタン価向上効果が得られていることになる。
(実施例1〜実施例8)
表1に示す組成および物性を有する、接触改質ガソリン1〜3、接触分解ガソリン、C4留分、脱硫直留ナフサおよびアルキレートを、表2に示す配合割合で配合することにより、表2に示すパラフィン含有割合およびRONを有するベースガソリンを得るとともに、このベースガソリンに対し、ノルマルブタノールを、表2に示す配合比で配合することにより、実施例1〜実施例8に係るガソリン組成物を得た。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
実施例1〜実施例8で得られたガソリン組成物を構成するパラフィン、芳香族化合物、オレフィン、ナフテンの含有割合と、ベンゼンおよび硫黄分の含有割合を表3に示すとともに、各ガソリン組成物の物性と、評価結果を表3に示す。
【0066】
【表3】

【0067】
表3より、実施例1〜8で得られたガソリン組成物は、ノルマルブタノールブレンディングRONが、97.9〜104.8と、いずれもノルマルブタノールのRON97.6よりも高い値を示しており、オクタン価向上効果が得られていることが分かる。また、相分離等も観察されず、自動車用燃料として安定して使用し得るものであることが分かる。
<比較例1〜比較例5>
表1に示す組成および物性を有する、接触改質ガソリン1〜3、接触分解ガソリン、C4留分、脱硫直留ナフサおよびアルキレートを、表4に示す配合割合で配合することにより、表4に示すパラフィン含有割合およびRONを有するベースガソリンを得るとともに、このベースガソリンに対し、ノルマルブタノールを、表4に示す配合比で配合することにより、比較例1〜比較例5に係るガソリン組成物を得た。
【0068】
【表4】

【0069】
比較例1〜比較例5で得られたガソリン組成物を構成するパラフィン、芳香族化合物、オレフィン、ナフテンの含有割合と、ベンゼンおよび硫黄分の含有割合を表5に示すとともに、各ガソリン組成物の物性と、評価結果を表5に示す。
【0070】
【表5】

【0071】
表5より、比較例1〜4のガソリン組成物は、ノルマルブタノールブレンディングRONが、いずれもノルマルブタノールのRON(97.6)未満になっており、オクタン価向上効果が得られていないことが分かる。また、比較例5のガソリン組成物は、ノルマルブタノール配合量が25容量%と多いことから得られるガソリン組成物のRVPが規定を満足しないことが分かる。
【0072】
実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例5の結果より、本発明のガソリン組成物は、環境負荷を低減しつつ、オクタン価を向上させ、自動車用燃料して安定して使用し得るものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、環境負荷を低減しつつ、オクタン価を効果的に向上させ、相分離の発生やRVPの上昇を招くことなく、自動車用燃料として安定した性能を発揮することができる新規なガソリン組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルマルブタノール1〜20容量%と、パラフィンの含有割合が60〜95容量%であるベースガソリン80〜99容量%とを含み、
リサーチ法オクタン価が89以上93未満、モータ法オクタン価が79以上86未満、15℃における密度が0.680〜0.783g/cm、50%留出温度が75〜110℃、70℃留出量が18〜45容量%、リード蒸気圧が45〜93kPaである
ことを特徴とするガソリン組成物。
【請求項2】
ノルマルブタノールの含有割合が3〜20容量%である請求項1に記載のガソリン組成物。
【請求項3】
ベースガソリン中のパラフィンの含有割合が65〜90容量%である請求項1または請求項2に記載のガソリン組成物。
【請求項4】
ベンゼン含有量が1容量%以下であるとともに、硫黄分含有量が10質量ppm以下である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガソリン組成物。