説明

ガラスセラミック板下面に不透明コーティングと、ディスプレイウインド上の改良型ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板を有して成る調理用レンジ

【課題】ウインド部分あるいはディスプレイ部分が設けられた無色透明なガラスセラミック板を調理用レンジの調理面として提供する。
【解決手段】ガラスセラミック板1を、調理用レンジの調理面として用い、400〜750nmの波長の可視光に対して高くかつ均質な透過性をもち、ガラスセラミック板の下方に配置される照明装置5をはっきりと見ることができ、照明装置からの光の散乱が多くても3%であるので調理用レンジ内のディスプレイ装置3及び他の表示装置2を明瞭かつ識別可能に見ることができ、照明手段が該ガラスセラミック板を通して明るく輝くほど十分透過性であり、かつ調理部分あるいは装置の内部が隠れる程度に十分に不透明であり、機械的負荷(引っ掻き傷あるいはひび割れ)に対して耐久性であり、及び容量原理によって作動されるタッチセンサ6を該ガラスセラミック板下方のウインド部分内に配置することができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に調理面を有し、下面に不透明コーティングが施され、及び該下面に少なくとも1個のウインド部分が設けられた無色ガラスセラミック板を有して成る調理用レンジに関する。前記少なくとも1個のウインド部分には不透明コーティングは処理されず、該ウインド部分のガラスセラミック板下面へ特殊なコーティングが施される。
【背景技術】
【0002】
最新キッチンには、調理面となるガラスセラミック板を伴った調理用レンジが備えられている。レンジ下方にある審美的理由から望ましくない加熱装置、回路板等の調理装置構成部品を見えなくするため、一般的に、グリーンガラスプレートとも称されるセラミック化される前駆体ガラス板の製造原料となるガラスが溶融液状態で着色される。かかる処理により、原料ガラスは上方から見た時に暗色ないし黒色を呈し、要求される不透明性が確実に実現される。
【0003】
ガラスが溶融液状態で着色されない場合、すなわち透明ガラス板が製造され、そしてセラミック化される場合、主成分として高含量の石英を含む混合結晶が生成されるため、ガラスセラミック板も可視光に対して透明である。必要とされる不透明度を得るため、公知の方法により透明ガラスセラミック板の下面へ不透明コーティングが施され、必要な場合にはその上面へ装飾が施される。
【0004】
最新のガラスセラミック製調理用レンジにはウインドが設けられ、その中に例えば加熱段階の選択状態及び/または調理ゾーンの残熱等の操作状態あるいはパラメータが照明手段によって表示される。また、調理ゾーンをオン・オフしたり、あるいは加熱段階をタッチ式に調節できる機能部が、通常ウインドの付近あるいはウインド自体の中に見出される。タッチ動作はガラスセラミックの下にある所謂「タッチセンサ」によって電気信号へと変換される。
【0005】
以下の説明において、照明手段に加えタッチセンサが下方に配置されたウインドを「ディスプレイ部あるいはウインド部」として記載する。
【0006】
ウインド部分後方のガラスセラミック板下方に配置される照明手段(例えば白熱ランプ、LED、LCDあるいはOLED)がキッチンの通常条件下で容易に読み取れるように、該照明手段の上方部分、すなわちウインド部分のガラスセラミック板には発光波長に対する十分な透明性が要求される。かかる要求から、ディスプレイ部上面への不透明コーティングあるいは下面への不透明コーティングは禁じられる。
【0007】
それゆえ、ディスプレイウインドが位置する部分、特に無色ガラスセラミック材から作製されたガラスセラミック調理面に対しては、光不透過性下面コーティングのみならず、より商業的に重要な上面装飾も禁じられる。
【0008】
ディスプレイ装置上方の調理面を与えるガラスセラミック板へのコーティングの除外は1991年にEP0438656によって初めて開示された。ここでの目的は調理ゾーンの操作状態を記号(○、ライン、あるいはリング)を用いて照明表示することであった。但しこの開示には、ガラスセラミック上面あるいは下面へのコーティングの除外に関する記載はない。
【0009】
EP1435759B1には、調理面を与える無色ガラスセラミック板へのガラスを基材とした下面コーティングの除外に関する記載がある。同様にコーティングの除外が可能なことは、EP1267593B1及びJP(A)2003−338359にも記載されている。
【0010】
JP(A)2003−338360においては、光沢性塗料から成る第一層と、例えばシリコーンを基材とする有機コーティングから成る第二層から構成されるガラスを基材とする2層の不透明コーティングが施されている。ディスプレイ装置上方のウインド部分付近へのコーティングはいずれも除外されなければならない。
【0011】
JP(A)2005−090906及びWO/03098115A1には、ウインド部分を設けるためにスパッタリングによる下面コーティングを省き、また上面及び下面の抗反射層を厚くすることによってディスプレイの質を向上させる技術が開示されている。
【0012】
DE29902875U1では、照明リングではなく、点や文字だけを読み取ることができるように、調理面を与える暗色ガラスセラミック板への望ましくない光不透過性コーティングを一部省くことによって高温ゾーン周辺にディスプレイ装置が作製されている。
【0013】
上記の最後に挙げた例のような例えばCERAN SUPREMA(登録商標)等の名称で上市されている調理面を与える着色ガラスセラミック板の場合には、その下面へコーティングを施さなくとも左程審美性は失われないのに対して、無色のガラスセラミック板の場合、特にディスプレイ装置がスイッチ・オフされた際、ガラスセラミック板には下面コーティングが施されていいないため、ウインドを通して調理部分内部が見えてしまう。調理部分内部の一部、例えば回路板が見えることは審美的理由から望ましいことではない。
【0014】
JP(A)2003−086337では2層構造の下面コーティングが開示されており、ここで第一層にはディスプレイ装置からの光を透過する配合顔料が含まれ、第二層は黒色顔料、例えばFe−Cr−Coスピネルが含まれた光不透過層である。ディスプレイ装置上方の第二層のみを省いた場合、配合顔料層を通して作動状態にあるディスプレイ装置がはっきりと見えるのに対して、ディスプレイ装置の電源が切られた際には調理部分内部は配合顔料によって十分隠される。なお、JP(A)2003−297540にも同様な装置が開示されている。
【0015】
しかしながら、配合顔料層を伴うディスプレイ部分の下面コーティングには、黒色被覆層がないため搬送中あるいは組立て中に配合顔料層に容易にひびが入り、あるいは引っ掻き傷がつく欠点がある。さらに、配合顔料が数ミクロンの大きさであるため照明手段の光が配合顔料によって著しく散乱され、それによってディスプレイ装置の鮮明度がなくなりぼやけてしまう。図4に示されているように、この種のウインドから散乱される光の分量は、市販の調理用レンジと同様に、30%にも達することが明らかとされている。拡散が大きいため、照明装置を明瞭に見ることができなくなっている。従って、配合顔料層を伴うディスプレイ・ウインドは、加熱段階を表示するディスプレイ装置がそれら層の下方に配置されている場合に表示されている数値を読み取ることが困難であることから、安全面において障害となり得る。
【0016】
ディスプレイ装置の光は、着色ガラスセラミック板の場合であっても、例えばUS2005/0224491に開示されている乳白色ガラスセラミック板中の散乱を起こすのに十分な微結晶によって散乱される可能性がある。
【0017】
着色ガラスセラミック板にはその下面にしばしばこぶや隆起があり、これらによってディスプレイ装置の歪みが生じる場合がある。そのため、上記開示においては、無色のシリコーン層が施されるDE04104983の場合と同様に、ディスプレイ部分下面は平滑に作製されている。
【0018】
ディスプレイ装置用のウインドを備え、ディスプレイ装置の光を僅かしか散乱させず、かつ調理用レンジ下部の調理部内が見えないように防止する透明無色ガラスセラミック板を備えて成る調理用レンジを製造する公知の最良の方法によれば、ウインド下方のディスプレイ部分のガラスセラミックの下面コーティングは貴金属を用いて調製される。
【0019】
貴金属コーティングには顔料が含まれていないため、可視光線(波長400〜750nm)の散乱は極めて僅かである。この種のウインド付近における可視光線の散乱は1〜3%程度であるため、ウインド下方の照明手段は比較的明瞭に見える。図5の曲線a及びbは、例として調理面を与える市販のガラスセラミック板2種による散乱量及び散乱率を示している。図6aは調理面を与える市販のガラスセラミック板から成るウインド中の表示部分を示した図である。この表示では、調理装置内部の見え易さは主として可視光透過率が約0〜45%である黒褐色の貴金属コーティング(図7曲線a)によって十分に抑えられてている。
【0020】
貴金属コーティングの導電率は極めて低い。その表面抵抗は1MΩ/平方(スクエア)である(単位については、WikipediaのSheet resistanceの項参照)。それゆえ、容量原理に基づいて作動する照明手段だけでなくタッチセンサも貴金属コーティングの下へ配置されて作動される。最新の調理部分には容量原理に従って作動するタッチセンサが用いられている。これらのセンサがウインド付近や照明手段付近に配置されてディスプレイ部分が形成されるのが一般的である。
【0021】
貴金属コーティングには調理用レンジの運搬、組立て、使用に十分耐え得る機械的強度がある。
【0022】
図7に示した透過率曲線から、貴金属コーティングは紫外光を殆ど透過させない(400nmの透過率が約0.6%)のに対し、赤外光を透過させる(700〜750nmの透過率が約20〜45%)ことが分かる。
【0023】
既知の貴金属コーティングは波長400〜450nmの光をほぼ完全に遮断するため、紫色あるいは暗青色の照明装置には適さない欠点がある。既知の貴金属コーティングは波長400〜750nmの可視光に対する透過率が大きく変動するため、多色ディスプレイ、すなわち情報表示に多数の異なる有色形状を用いるディスプレイには不向きである。多色ディスプレイ用のウインドの作製に既知の貴金属コーティングを用いる場合、貴金属コーティングの透過率が波長に従属して変動するため、個々の色の強度がアンバランスとなることがある。しかしながら、電子的機能が益々多様化していることから、多色ディスプレイや、あるいは暗青色ディスプレイが、調理面として用いられるガラスセラミック板へ今後さらに頻繁に使用されることが考えられる。
【0024】
現在用いられている貴金属コーティングは400〜450nmの波長範囲で透過率が減少するため、紫色あるいは暗青色で表示される情報は見えないか、あるいは弱い光度でしか見ることができない。それに対して(700〜750nm)で表示される情報は極めて強い明暗のある明るい状態で見ることができる。表示される色、特に人間の眼が最も敏感である強い赤における強度の相違によって調理用レンジの操作中に不快な気分になる可能性がある。
【0025】
それぞれ別個の波長を発するいくつかの光源を用い、あるいは主要分光色である赤、緑、青を組合せて加えることにより好みの色調を出すことも可能である。ここで用語「色調」とは、Hollemann-Wilberg, Lehrbuch der Anorganischen Cemie (無機化学教科書)、91-100版、Walter de Gruyter編、Berlin, 1985, p.103)に従えば、紫(400nm)から青(450nm)、緑(550nm)、黄色(600nm)、オレンジ(650nm)、赤(700nm)及び暗赤色(750nm)の全色の配合を意味する。しかし、現在使用されている貴金属コーティングではいずれの方法によっても情報の色による表示が損なわれる。
【0026】
調理面を与える市販のガラスセラミック板のウインドのさらに別の欠点は表示に極めて小さな暗い部分あるいはスポットが生ずることである。そのため、例えば7つの部分から成る表示の照明部分が点在して見えてしまう。特に高価かつ高品質な調理面の場合、ガラスセラミック板下方へ配置された照明手段によってウインド部分が均質に照明されることが極めて望ましい。
【0027】
要約すれば、着色された透明な平滑面(特に両面)をもつガラスセラミック板へ設けられたウインド部分あるいはディスプレイ部分へコーティングする公知の方法では、可視範囲において満足される均質な光透過性は得られず、またウインド部分下方のディスプレイ装置によって表示される情報に許容される程度の明瞭性は与えられない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、調理用レンジの調理面として用いることができ、
400〜750nmの波長範囲内の可視光に対して可能な限り高くかつ均質な透過性をもつガラスセラミック板であって、
該ガラスセラミック板を通してその下方に配置される照明装置をはっきりと見ることができ、
前記照明装置からの光の散乱が多くても3%であるため組み立てられた調理用レンジ内のディスプレイ装置及び他の表示装置を明瞭かつ識別可能に(ぼやけることなく)見ることができ、
照明手段が該ガラスセラミック板を通して明るく輝くほど十分透過性であり、
調理部分あるいは装置の内部が隠れる程度に十分不透明であり、
機械的負荷(引っ掻き傷あるいはひび割れ)に対して耐久性であり、及び
容量原理によって作動されるタッチセンサを該ガラスセラミック板下方のウインド部分内に配置することができる無色かつ透明なガラスセラミック板上へウインド部分あるいはディスプレイ部分を設けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
以下においてさらに明らかにされる本発明の上記目的及び他の目的は、その上面が調理面となり、不透明コーティングの適当な位置においてガラスセラミック板下面へウインドコーティングが施される少なくとも1箇所のウインド部分を除いてその下面全体に亘って不透明コーティングが施された無色かつ透明なガラスセラミック板を備えて成る調理用レンジを提供することにより達成される。
【0030】
本発明に従って、前記ウインドコーティングは1MΩ/平方以上の電気表面抵抗をもつ焼き付けられた貴金属調製品から成り、前記少なくとも1箇所のウインド部分においてウインドコーティング処理されたガラスセラミック板は400nm〜750nmの波長範囲内の可視光に対して1.0〜21.0%の範囲内の透過率を有し、また400nm〜750nmの波長範囲の可視光に対して0.0〜1.0%の範囲内の光散乱性を有する。
【0031】
特許請求の範囲の従属項において好ましい実施態様がクレームされているが、これら好ましい実施態様について添付図面を参照しながら以下において詳細に説明する。
【発明を実施するための手段】
【0032】
以下に記載の好ましい実施態様を用いて本発明の目的、特徴、及び利点についてより詳細に説明する。
【0033】
図1には、上面がスポットあるいは点パターンに装飾された調理面をもち、かつディスプレイあるいはウインド部分3が設けられたガラスセラミック板1が示されている。この上面装飾2は、例えばガラス融剤を基材とする塗料を用いて公知の方法で作製される。
【0034】
図2の断面図に示されるように、ガラスセラミック板1には不透明な下面コーティング、すなわちディスプレイあるいはウインド部分を除いたガラスセラミック板1の下面全体に広がってそれを覆うコーティング4が施される。下方にディスプレイ用の照明装置5が表象的に表示され、また所謂タッチセンサ6が配置されるウインド部分3には、不透明コーティング4ではなく、本発明に従った特殊な貴金属コーティング7が該ウインド部分中のガラスセラミック板下面の適正位置へ施される。
【0035】
貴金属コーティングは導電性が極めて高く、すなわちその電気表面抵抗Rsqが小さく、平方(スクエア)当り約1〜10Ωの範囲内である。高導電性であるゆえに、容量原理に基づいて作動するタッチセンサをウインド部分へ一体化することは不可である。このような一体化が可能となるのは光学あるいは圧電原理に基づいて作動するセンサだけであると考えられる。しかしながら、近年調理用レンジには容量型タッチセンサが標準であり、ディスプレイ部分の照明装置を除いてこのようなセンサを配備することが一般的である。それゆえ、本発明に従ってコーティングされたディスプレイ部分へ組み込むことができる容量原理に基づいて作動するタッチセンサが要求される。
【0036】
しかしながら、この貴金属コーティングの問題となる導電性は、基材となる金属、特にシリコンあるいはビスマスを添加することにより減少させることが可能である(Gunter Landgraf:「化学、生化学及び工業技術における金の発展」(1999年John Wiley & Sons編、p.153f)中の“ガラス及びセラミックスの装飾中の金”参照)。この導電性低下作用は特に、家庭用マイクロ波装置中の器具を用いる際にスパーク発生が起きないように電気表面抵抗がキロΩあるいはメガΩ範囲内になければならいマイクロ波器具の貴金属装飾に利用される。
【0037】
EP0296312B1及びEP1043294A1に記載されているマイクロ波器具用の貴金属調製品を用いた実験から、高電気抵抗をもつ貴金属コーティングが基本的に調理面として用いられるガラスセラミック板の下面コーティングに適することが示されている。しかしながら、寸法約30cm×5cmのディスプレイ面積を用いた実験によって、典型的なマイクロ波製品、例えばGGP2531(HERAUS製「マイクロウエーブ・ゴールド」の表面抵抗は明らかにキロΩ範囲ないしメガΩ範囲まで大きく変動すること、またコーティングをペーパータオルでクリーニングすると表面抵抗が低キロΩ程度まで減じられることが示されている。しかしながら、表面抵抗がキロΩ領域にあるタッチセンサは作動しない。
【0038】
従って、例えばEGO社製品のような容量原理に基づいて作動する最新のタッチセンサ装置の作動は保証されているため、焼き付けられた貴金属コーティングの電気表面抵抗はマイクロ波器具の従来の貴金属装飾の電気表面抵抗よりも1000倍高く、109Ω/平方以上のギガΩ領域となっている筈である。導電性が最も極端に小さい(表面抵抗が高い)この種の貴金属コーティングは、公知のマイクロ波製品(マイクロ波器具用の貴金属塗料)を改良することにより、また酸化物成分の量を焼き付けられた貴金属フィルムの全量に対して例えば酸化物として10〜15重量%添加により増加させることにより、また特に酸化物生成体としてシリコンあるいはビスマスを用いることによって作製可能である。前記酸化物生成体、特にシリコン及びビスマスの割合は焼き付けられた貴金属フィルムの全量に対して少なくとも15重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲内でなければならない。合金貴金属の場合を除き、貴金属製品、例えばディスプレイ塗料の焼付け中に極めて精細に分離された金属酸化物、特に二酸化ケイ素及び酸化ビスマスが生成され、それによってこの種の酸化物生成体の割合が増加する。これら精細に分離された金属酸化物によって貴金属粒子が取り囲まれ、あるいは包まれ、それら貴金属粒子が互いに電気的に絶縁性となるため、この種の層あるいはコーティングの導電性は極めて小さく、すなわちその表面抵抗はメガΩないしギガΩ領域まで極めて高くなる。概して、メタロイド酸化物及び塩基性金属酸化物はこのような目的に適している。
【0039】
焼き付けられたディスプレイ塗料は、それらの種類及び塗料組成物中の貴金属含量によってメタリックブラック、プラチナグレイ、黒褐色ないし金褐色、イエローレッドないし銅色のコーティングとなる。また、貴金属フィルムのコーティング厚によってもコーティング色は影響を受ける。前記コーティングの色は、貴金属製品へ有機化合物として例えばニッケル、クロムあるいはジルコニウム、あるいはアルミニウム、アンチモン、バリウム、ホウ素、セリウム、鉄、コバルト、ゲルマニウム、タンタル、錫、チタン、バナジウム、マンガン、ストロンチウム、モリブデン、ルテニウム、インジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、ロジウム、または亜鉛等の金属あるいはメタロイドをさらに加えることによっても影響される。被着体として公知な金属を用いることにより耐磨耗性あるいは耐摩損性がさらに増強される。
【0040】
意外にも、貴金属コーティングに酸化鉄あるいは二酸化チタンが全く含まれていないか、あるいは焼き付けられた貴金属コーティングの全量に対する酸化鉄含量が1重量%未満であり、かつ二酸化チタン含量が1重量%未満であるならば、ウインド部分の従来の貴金属コーティングが施されたガラスセラミックスよりも、この種の貴金属製品でコーティングが施された無色透明なガラスセラミックの赤色光に対する透過率が明らかに低く、他方紫色及び暗青色光に対する透過率が明らかに高くなることが示された。
【0041】
貴金属製品、可溶性有機化合物、好ましくは樹脂酸塩あるいはスルホ樹脂酸塩としてのディスプレイ塗料中には金属が存在している。有機金属化合物が完全に消費され、また酸化物網状組織が完全に形成されるように、ディスプレイ塗料には焼付け中酸素が十分量必要とされる。焼付け中に酸素を空気の形で供給することが可能であり、あるいは酸素を例えば過酸化物から化学的に放出することが可能である。最適な接着性及び引っ掻き傷耐久性を得るためには、400〜1200℃、特に800〜850℃の最高温度が必要である。
【0042】
金属樹脂酸塩及びスルホ樹脂酸塩は前記有機金属化合物として適切な選択である。スクリーン印刷可能な貴金属ペーストは溶媒を用いて調製でき、該ペーストを140−31メッシュスクリーンを用いたスクリーン印刷によってディスプレイ部分へ表面被覆率100%の全面コーティングとして処理することが可能である。
【0043】
例えば、従来のエナメル塗料で既に装飾された調理面を有する無色のガラスセラミック板の下面へ、ディスプレイ部分を除いて、貴金属製品であるGPP4510/Sをコーティングした場合、黒色ディスプレイ部分を有する銀色調理面を極めて簡単かつ安価に製造することが可能である。ガラスセラミック板へ処理された貴金属製品のGPP4510/Sがその感触あるいは手触りから乾燥していると判断された後、ディスプレイ部分へディスプレイ塗料であるGPP010106がコーティングされる。ガラスセラミックパネル下面上へプリントされた貴金属塗料の焼付けを行った後、ディスプレイ部分へ黒色コーティングが施され、さらに残りの表面部分へ銀色コーティングが施される。両塗料の焼付けは別個に行うことも可能であるが、両塗料の同時焼付けを行う方が通常経済的である。
【0044】
LiO−Al−SiOの組成をもつガラスセラミック材料は本発明に従ってコーティングされるガラスセラミック板の基板材料として特に適した材料である。一例として、EP1170264B1に記載された無色のガラスセラミックは30〜500℃の温度範囲において−10・10−7−1〜+30・10−7−1の熱膨張係数を有する。このガラスセラミック板の公知な組成を特に表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
貴金属製剤でのディスプレイ部分のコーティングはスクリーン印刷以外の他の方法、例えば噴霧方法やスタンプ方法によっても実施可能である。スパッタリングによってディスプレイ部分へ貴金属フィルムを処理することも原理的には可能である。しかしながら、スパッタリングあるいは噴霧方法にはマスキング技術が要求されるため生産工学的観点からみれば不利である。
【0047】
ディスプレイ塗料が一定条件下、特に一定温度で処理されている場合、層厚の極端な変動及びそれによる透過率及びディスプレイ装置の明度における見掛け上の変化を最小限に抑えることが可能である。溶媒の蒸発によるスクリーン印刷中におけるディスプレイ塗料の濃縮は、好ましい高沸点溶媒を選択選抜することによって防止可能である。
【0048】
貴金属コーティングのコーティング厚を減じることによって貴金属製剤を希釈化して透過率を高め、あるいはスクリーン印刷法によってコーティング処理を行う場合にはさらに細かいスクリーンメッシュを用いることにより透過率を高めることが可能である。最新のディスプレイ装置(例えばEGO製ディスプレイ装置)が発する光に対してコーティングされたガラスセラミックが十分な透過率をもち、また調理用レンジ内部にあるケーブル等の部品が猶見えないまま保てるように、前記コーティング厚を調整することが可能である。可視光、すなわち波長域400〜750nmの範囲内の光に対するコーティングされたガラスセラミックの透過率が1.0〜21%の範囲内にあれば、上記貴金属コーティングはコーティングされたガラスセラミック板の透過率に関して要求を満たすものである。この透過率が1.0%未満であれば、従来の照明条件において、現行のディスプレイ装置を見ることは実際上不可となる。しかしながら、透過率が21%を超えると、特にケーブル、回路板等のレンジ内部部品がガラスセラミック板を透して見えてしまうようになる。貴金属コーティングは従来のコーティング厚である150〜250nmにおいて適切な透過率を有している。調理面を与えるガラスセラミック板に用いられる公知の貴金属コーティングの厚さはディスプレイ部分においては300〜400nmとおよそ倍である。本発明に従ったコーティングの厚さはそれより薄くされているため、貴金属材料の消費が減じられる点で経済性において有利である。
【0049】
ディスプレイ装置の光は、ウインド部分において、前記組成から成る貴金属コーティングによって僅かしか散乱されない。散乱される光の割合は明らかに1%に満たない。貴金属コーティングには、光を複雑に散乱させる粒子(例えばミクロン範囲の粒径をもつ顔料あるいは結晶)は含まれていない。構造解析図(図3)には、コーティング中にサイズが150nm未満の結晶(通常サイズは10〜60nmの範囲内)が存在することが示されているが、これら結晶のサイズは透過光の波長である400〜750nmよりも小さいため眼に見える散乱を生じないことは自明である。
【0050】
しかしながら、貴金属コーティングによって有意量の可視光が散乱されてはならない要件だけではなく、ガラスセラミック板の下方に配置された照明装置が暗部分あるいは暗領域(図6a)で均質に輝いて見えるように、ガラスセラミック板は十分平滑でなければならない。平滑でなければ、ガラスセラミック板下面へ処理された貴金属製剤がガラスセラミック表面中の窪み中へ流れ込み、局部的に貴金属フィルムの厚さが増大した部分あるいは領域が生ずる。ディスプレイ装置中のこのような部位に、ディスプレイ部分に斑あるいはスポットとして現れる暗領域が生じる。公知の調理用レンジの製造に用いられるガラスセラミック板には、幅が約250μmで長さが約300μmである5μm以下の窪みあるいは凹み(図9a)がウインド部分の近接部分に見出される。これら公知の調理用レンジのウインド部分におけるガラスセラミック板下面の状態は、側方寸法が100μm以上ある1〜5μmの窪みあるいは凹みによって特徴づけられる。
【0051】
ガラスセラミック表面の粗さがRa=0.3μm未満、とりわけRa=0.2μm未満(DIN EN ISO4287に準じた測定値)であるとき、ガラスセラミック板のウインド部分は均質に透明である。ガラスセラミック板下面中に存在する避けられない窪みの大きさは、長さ200μm未満、幅50μm未満、及び深さ1.0μm未満であり、特に深さは0.5μm未満である。図6bは図6aと同一のディスプレイ装置を示すものであるが、図6bのディスプレイ装置は本発明に従った極限粘度(■)金属コーティングが施された表面が十分平滑なガラスセラミック板を透して見た場合である。図9bには、この平滑なガラスセラミック面についての感触あるいはタッチ分布が示されている。このディスプレイ装置はその多数の部分において、下面の粗さの大きい公知のガラスセラミック面を用いた場合に比して、有意に均質性の高い表示となっている。
【0052】
貴金属含有コーティングの残存特性は要求を十分満たすものである。該コーティングの厚さは薄いため、該コーティングによってガラスセラミック基板の強度が減じられることはない。耐衝撃性についてもDIN EN 60335に従って衝撃強度試験装置を用いて試験されている。平均曲げ強度[DIN EN 1288−5(R45)]は110MPa以上である。酸化物から成る組成及び貴金属たる金、白金及びパラジウムの不活性性ゆえに耐熱性に極めて優れている(300〜500℃の不変負荷に耐え得る)。さらに、上記コーティングは高湿及び食品油脂に対しても十分耐久性である。また本コーティングが油に濡れても、調理面に脱色は観察されない。
【0053】
さらに、上記貴金属コーティングには、その薄い厚さにも拘わらず、前述した配合顔料コーティングよりも明らかに高い引っ掻き傷耐久性が備えられている。400gの負荷が掛けられた、先端が丸くされた金属片(湾曲径0.5mm)によっても、焼付け貴金属コーティングに、該負荷によって損傷は生じなかった。備え付けられた調理面上方からは金属先端の引っ掻き傷跡は見られない。JP(A)2003−086337に従った多孔性配合顔料コーティングでは同じ負荷に対して耐えられない。
【0054】
従って、得られた貴金属コーティングは、ディスプレイ部分の下面に適したものである。これら貴金属コーティングは、表面耐久性が極めて高いこと及び透明度の調整が可能であることから、JP H7−17409の貴金属コーティングとは全く異なるものである。
【0055】
本発明により得られる貴金属コーティングは、紫色光に対する透過率が高く、及び赤色光に対する透過率が明らかに低く、同時に400〜750nmの全波長域に亘る可視光のそれぞれに対する透過率の差が小さい特徴をもつことより、公知の調理用レンジに使用されている他の公知の貴金属コーティングと異なるものである。このように、本発明によって得られる貴金属コーティングは、情報が多色光表示される調理面を備えた調理用レンジの製造に最も適したものである。
【0056】
さらに、上述した本発明に従った貴金属コーティングが施されたウインド部分が設けられた調理面を与えるガラスセラミック板は、市販の調理用レンジの現行のウインド部分に比して、照明装置の発する光を散乱させる程度が少ない。本発明に従ったウインド部分下方の照明装置の輝きは、公知の調理用レンジのウインド部分に比べて均質性に優れる。
【0057】
原理上、調理面を与えるセラミック板の下面全面がディスプレイ塗料で全体が被覆されるように印刷され、あるいはガラスディスプレイ塗料でパターン状に印刷され、かつ他のコーティングと結合された調理用レンジを製造することが可能である。例えば、ガラスセラミック板下面を、前述した銀色貴金属調剤GPP4510/Sや、シリコーン、ポリアミド、ポリイミド等の有機ポリマーを基材とするラッカー類、ゾル−ゲル塗料あるいはセラミック塗料(ガラスセラミック板の上面にも処理される)等の他の貴金属塗料でコーティングすることが可能である。
【0058】
従って、調理面を与えるガラスセラミック板の下面上のディスプレイ部分全体を単一のスクリーン印刷工程においてディスプレイ塗料で被覆されるように印刷し、かつ他の部分へ点パターン(あるいはいずれか他のパターン)を印刷することが可能である。次いでディスプレイ塗料の乾燥後に、ガラスセラミック板下面へGPP4510/S(銀色貴金属塗料)をディスプレイ塗料でコーティングされたディスプレイ部分までコーティングすれば、ガラスセラミック板下面へ双方の貴金属調整品が焼付けられた後、調理面はディスプレイ部分が暗色、かつその他の部分が黒のスポットあるいは点を伴った銀色を呈するようになる。上記双方の塗料が相溶性でない場合には、それら塗料を別々に焼き付けることにより同様な調理面を得ることが可能であった。貴金属フィルムのコーティング厚は薄いため、その接着及び焼付け状態は完璧となる。焼付け後、双方の金属フィルムが重なり合う部分のコーティング厚は250〜400nmである。
【0059】
この種の調理面のディスプレイ部分を多色ディスプレイとすることも可能である。調理装置の機能制御を行うためにディスプレイ部分へ容量作動型タッチセンサを配備することも可能である。
【0060】
上述した貴金属コーティングは、機械的耐久性、耐薬品性及び耐熱性において、有機材料(例えばポリウレタン、シリコーン、エポキシ化合物樹脂ラッカー)を基材とする有色プラスチックホイル及びコーティングよりも明らかに優れるものである。有機顔料(アゾ顔料、多環式顔料)、カーボンブラック顔料、無機顔料、あるいはナノ粒子を含むこれらのラッカー類は、器具内部が見えないようするために、オーブンの操作制御パネル、マイクロ波装置、皿洗い機、あるいは他の家庭用電機製品のウインド部分のコーティングに用いられている。
【0061】
試験方法
光学的方法(MicroGilder(登録商標)装置FRT)を用いてDIN EN ISO 4288に従って表面粗さを測定するため、間隔5.6mmに亘ってフィラー装置を用いて5つの側面について測定し、DIN EN ISO 4288に従ってこの側面データから粗さ値を標準偏差と共に算出した。
【0062】
透過率の測定
光源8からの入射光9の光線の光路中に図8aに示すように試験サンプル1、7を配置した。ボール状あるいは球状の検知器11を配置してサンプル1、7を透過した光10を検知した。下記式から透過率Tを算出した。
=φex/φin (1)
式中、φexはサンプルを透過する光10の光強度であり、φinは入射光9の光強度である。
【0063】
散乱の測定
まず図8aに示した測定構造に従って透過率測定を実施し、この測定において光散乱量を測定するためにサンプル1、7を透過した光の全量Tを検量した。サンプル1、7からボール状検知器11までの距離が相対的に長く(50cm)されている図8bに示す測定構造を用いてさらに測定を行い、サンプルによって偏向されなかった、すなわち散乱されなかった透過光Tgerのみについて検量した。これら得られた透過光測定値を引算して、すなわち式;
S=T−Tger (2)
から散乱された光部分Sを算出した。
【0064】
電気表面抵抗(Ω/平方)の測定
オームメーターを用いて貴金属コーティングの電気表面抵抗が生ずる部分を充分に正確に測定した。この測定においては、測定装置の両電極の間隔を可能な限り互いに近接させて、すなわち約0.5〜1mmの間隔でコーティング上へ配置した。測定装置に表示された抵抗値は表面抵抗にほぼ等しい数値であった。
【0065】
直線状に等間隔(間隔a)で配列された4個の測定用先端をもつ測定ヘッドを用いて、Valdesの方法(L.B.Valdes,Proc.IRE,1954年2月、420〜427頁)に従って電気表面抵抗を正確に測定した。外側にある2個の測定用先端から一定電流を与え、高オーム電位計を用いて内側の2個の測定用先端から電圧降下を測定した。コーティング厚dは無視でき(d<<a)、またコーティングは横方向へ広く広がっている(w>>a)と仮定すると、表面抵抗Rsqを下記式によって電圧U及び電流Iから算出することが可能である。
sq=(π/In2)・(U/I)=4.53・(U/I) (3)
【実施例】
【0066】
黒色ディスプレイ塗料(低電導性)
EP1170264B1に従った組成(表1左欄)をもつ平滑な無色のガラスセラミック板1(深さ約60cm、幅80cm、厚さ4mm)上面をDE19721737C1に記載されたセラミック装飾塗料を用いてディスプレイ用の矩形のウインド部分3まで規則的な点パターンでコーティングした。次いでコーティングされたガラスセラミック板1をセラミック化した。
【0067】
次いで、市販の貴金属調製品GPP4510/S(HERAUS,Hanau)を、スクリーン印刷法(140−31メッシュ)を用いてセラミックされたガラスセラミック板下面へ処理した。但し、ディスプレイ部分3は無コーティング状態のままとした。このコーティングを20℃で約3時間乾燥させた。次いでディスプレイ部分3へスクリーン印刷法によって貴金属調製品GPP010106(HERAUS,Hanau)をコーティングし、ディスプレイ部分中にウインドコーティング7を形成した。次いでこの貴金属調製品を830℃で1時間焼き付けた。
【0068】
仕上げられた調理面のディスプレイ部分は黒色となり、その他の部分の下面は銀色のコーティングとなった。
【0069】
ディスプレイ部分の黒色貴金属フィルムは、重量%で40〜60%の金、10〜20%の白金、5〜20%の二酸化ケイ素、5〜20%の酸化ビスマス、0〜10%の酸化ニッケル、酸化クロム及び酸化ジルコニウムから構成される。
【0070】
前記焼き付けられたディスプレイ塗料GPP010106の層厚は170±20nmである(図3参照)。
【0071】
前記黒色コーティングでコーティングされた部分(ディスプレイ部分)における光透過率及び容量型タッチセンサの作動状態をE.G.O.製タッチ制御装置を用いて試験した。
【0072】
ディスプレイ装置の明るさは十分であり、縁部分の表示も鮮明であった。すなわち、表示された情報がぼやけず、コーティングされたガラスセラミックによって散乱される光は僅かに0.2〜0.3%であった。図5は、ウインド部分における本発明に従ったコーティングからの光散乱の波長依存性(曲線c)を、現在入手可能な従来技術による対応コーティング品2種からの光散乱の波長依存性と比較して示した図である。図5において符号a及びbで示されたこれら公知のコーティングされたガラスセラミック板による散乱率は明らかに3%に達しており、かかる散乱率は本発明に従ったコーティングされたガラスセラミック板の前記例示的実施態様から得られた散乱率(曲線c)よりもずっと高かった。図3はこのようなコーティングの構造を示した写真であり、この写真からは大きなもので130nm程度の結晶が検出される。
【0073】
ガラスセラミック板の粗さRaは僅かに0.2μmである。現在使用されている公知のガラスセラミック板に見られるような極端な窪みは生じない。ガラスセラミック表面に生じるそれら窪みの程度は最大で0.5μmである。ディスプレイに黒いスポットあるいは部分はない(図6a参照)。
【0074】
本発明に従った黒色コーティングされたガラスセラミック板の波長400nmの紫色光に対する透過率は2.8%であり、また波長750nmの赤色光に対する透過率は13.5%である。赤色光に対する透過率は、公知の同様な調理用レンジにおける42〜45%よりも明らかに少なく、他方紫色光に対する透過率は、公知の同様な調理用レンジでの僅か0.5〜0.6%よりも明らかに高かった。図7にはこれに関する透過率曲線が示されている。従って、コーティングGPP010106は、公知の調理用レンジに用いられているコーティングよりも、多色ディスプレイ装置により適することが分かる。
【0075】
調理ゾーンは問題なく制御可能であり、加熱段階もディスプレイ部分内のディスプレイ装置と同様にディスプレイ下方に配置された容量型タッチセンサを用いて選択可能である。電気表面抵抗は20±2GΩ/平方の範囲内である。
【0076】
(ペーパータオルを用いた)クリーニングによってコーティングの電気表面抵抗が減じられることはない。
【0077】
前記コーティングの引っ掻き傷耐久性は極めて良好であった。湾曲径0.5mmの丸い金属先端を用いて400gの荷重をかけても、組み込まれた状態で調理面上方から検出できる引っ掻き傷は生じなかった。
【0078】
不透明度の評価を、調理用レンジ中において85cmの距離から実用上適する照明(NEF製照明が一体化されたレンジフードDET77)を用いて組み込まれた状態で実施した。レンジ内部の中を観察することはできなかった(ケーブルや白金は観察できなかった)。
【0079】
本発明は調理面を与えるガラスセラミック板を備えた調理用レンジとして具現化されて図示され説明されたが、本発明を上述した詳細に限定することを意図したものではなく、本発明の精神から全く逸脱することなく種々変更及び変形を加えることが可能である。
【0080】
上記説明によって、さらなる分析を必要とせず、本発明の要旨が完全に明らかにされていることから、第三者は、最新の知識に基づいて、従来技術の見地から本発明の本質的な包括的あるいは特定の観点を明らかに成す特徴を漏らすことなく本発明を容易に種々用途へ適合させることが可能である。
【0081】
本願によって提供される発明は新規であり、添付の特許請求の範囲に明記された通りである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に従ってコーティングされたディスプレイ装置用矩形ウインド部分が設けられたガラスセラミック板を備えて成る調理用レンジの上面図である。
【図2】図1に従ったウインド部分を備える調理用レンジの図1に示した切断線A−Aに沿って切断した略断面図である。
【図3】HERAUS,Hanau社製の貴金属製剤GPP010106から作製された、本発明に従った高電気表面抵抗をもつ黒色下面コーティングの断面図である。
【図4】ガラスセラミック板下面上へ配合顔料コーティングが施されたウインド部分付近における、本発明に従ったガラスセラミック板(a)及び従来技術によるガラスセラミック板(b)によって散乱される光の分光それぞれの波長依存性を示したグラスである。
【図5】ウインド部分付近においてガラスセラミック板(a)、(b)及び(c)によって散乱される光の分光それぞれの波長依存性を示したグラフであり、グラフ中、ガラスセラミック板(a)及び(b)には従来技術による貴金属コーティングが施され、他方ガラスセラミック板(c)には本発明に従った貴金属コーティングが施されている。
【図6】aは調理面を与える市販のガラスセラミック板を用いて作製されたディスプレイ部分(a)の光学顕微鏡写真である。 bは図3に従った貴金属調製品GPP010106がガラスセラミック板下面へ処理され焼き付けられた本発明に従ったガラスセラミック板を用いて作製されたディスプレイ装置(b)の光学顕微鏡写真である。
【図7】調理面を与える市販のガラスセラミック板を用いて作製されたディスプレイ部分(a)と、図3に従った貴金属調製品GPP010106がガラスセラミック板下面へ処理され焼き付けられた本発明に従ったガラスセラミック板を用いて作製されたディスプレイ部分(b)における透過率の波長依存特性を示したグラフである。
【図8】aは透過率を測定するための測定配置方式を示す概略図である。 bは散乱を測定するための測定配置方式を示す概略図である。
【図9】aはTENCOR INSTRUMENTS製フィラー装置「アルファステップ200」を用いて測定した、調理面を与える市販のガラスセラミック板(a)から成るウインド部分におけるガラスセラミック板下面の未透過光の主要分布を示したグラフである。 bはTENCOR INSTRUMENTS製フィラー装置「アルファステップ200」を用いて測定した、本発明に従ったガラスセラミック板(b)から成るウインド部分におけるガラスセラミック板下面の未透過光の主要分布を示したグラフである。
【図10】暗色部分を有する市販の調理面から成るウインド部分中の貴金属コーティングの光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に調理面を備え、下面に少なくともウインド部分を除いて不透明コーティングが全体に施された無色透明なガラスセラミック板を備えて構成される調理装置の調理用レンジであって、前記ウインド部分においては、前記不透明コーティングにかわってウインドコーティングが前記ガラスセラミック板下面へ施され、
前記ウインドコーティングは1MΩ/平方以上の電気表面抵抗をもつ貴金属調製品が焼き付けられて成り、前記少なくとも1つのウインド部分において、ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板の波長400〜740nmの可視光に対する透過率が1.0〜21.0%の範囲内であり、かつ波長400〜750nmの可視光に対する光散乱率が0.0〜1.0%の範囲内であることを特徴とする前記調理用レンジ。
【請求項2】
ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板の前記少なくとも1つのウインド部分における波長400nmの紫色光に対する透過率が1.4〜7.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項3】
ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板の前記少なくとも1つのウインド部分における波長750nmの赤色光に対する透過率が7.0〜14.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項4】
ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板によって少なくとも1つのウインド部分へ入射した可視光の0.1〜0.5%が散乱されることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項5】
ウインドコーティングが施されたガラスセラミック板によって少なくとも1つのウインド部分へ入射した可視光の0.2〜0.3%が散乱されることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項6】
ガラスセラミック板上のウインドコーティングがおよそ1×10〜100・10Ω/平方の表面抵抗をもつことを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項7】
表面抵抗が1〜20ギガΩ/平方であることを特徴とする請求項6項記載の調理用レンジ。
【請求項8】
ウインドコーティングの厚さが250nm以下であることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項9】
前記厚さが150nm〜200nmの範囲内であることを特徴とする請求項8項記載の調理用レンジ。
【請求項10】
前記ウインドコーティングが、金、白金、パラジウム、金合金、白金合金、パラジウム合金、塩基性金属酸化物及びメタロイド酸化物から選択される少なくとも1種の金属から成ることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項11】
前記ウインドコーティングが、ケイ素、ビスマス、ニッケル、鉄、クロム、ジルコニウム、アルミニウム、アンチモン、バリウム、ホウ素、カルシウム、セリウム、コバルト、ゲルマニウム、タンタル、錫、チタン、バナジウム、マンガン、ストロンチウム、モリブデン、ルテニウム、インジウム、タングステン、オスミウム、イリジウム、ロジウム、及び亜鉛から選択される少なくとも1種の元素の酸化物から成ることを特徴とする請求項10項記載の調理用レンジ。
【請求項12】
前記ウインドコーティングに、酸化鉄及び二酸化チタンがそれぞれ前記ウインドコーティングの全重量に対して1.0重量%に満たない量含まれることを特徴とする請求項10項記載の調理用レンジ。
【請求項13】
前記ウインドコーティングに二酸化ケイ素及び酸化ビスマスの少なくとも一方が含まれることを特徴とする請求項10項記載の調理用レンジ。
【請求項14】
前記ウインドコーティングに前記酸化物が前記ウインドコーティングの全重量に対して少なくとも15重量%含まれることを特徴とする請求項10項記載の調理用レンジ。
【請求項15】
前記ウインドコーティングに前記酸化物が前記ウインドコーティングの全重量に対して20〜40重量%含まれることを特徴とする請求項10項記載の調理用レンジ。
【請求項16】
少なくとも1つのウインド部分において前記ガラスセラミック板の両面の少なくとも一方の粗さRaが0.3以下であることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項17】
ガラスセラミック板の下面のみ粗さRaが0.3以下であることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項18】
ガラスセラミック板の表面に深さが多くても1μmの窪みが設けられることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項19】
前記深さが多くて0.5μmであることを特徴とする請求項18項記載の調理用レンジ。
【請求項20】
ウインドコーティングに金が40〜60重量%、白金が10〜20重量%、二酸化ケイ素が5〜20重量%、酸化ビスマスが5〜20重量%、酸化ニッケルが0〜10重量%、酸化クロムが0〜10重量%、及び酸化ジルコニウムが0〜10重量%含まれることを特徴とする請求項1項記載の調理用レンジ。
【請求項21】
ウインドコーティングの厚さが170±20nmであり、表面抵抗が1×106〜100・109Ω/平方であることを特徴とする請求項20項記載の調理用レンジ。
【請求項22】
少なくとも1つのウインド部分における前記ガラスセラミック板両面の粗さRaが0.3以下であることを特徴とする請求項20項記載の調理用レンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−8609(P2008−8609A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−157796(P2007−157796)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】