説明

ガラスチョップドストランドの乾燥装置及びガラスチョップドストランドの製造方法

【課題】ガラスチョップドストランドの製造効率と製品収率を高める。
【解決手段】乾燥装置の整流板20には、ガラスチョップドストランドCが振動を受けて移送される際にスルーホール21から下方に落下するのを防止するための落下防止部22が設けられている。落下防止部22は、各スルーホール21の下方にそれぞれ整流板20と一体に設けられており、スルーホール21の相対向する2つの開口縁から下方に連続して延びた2つの側壁部22a、22bと、側壁部22a、22bの下端縁に連続した底壁部22cとで構成されている。落下防止部22の両側はそれぞれ開口21bになっており、整流板20の下方側に供給される熱風は、落下防止部22の両側の開口21bからスルーホール21を通り抜けて、整流板20の上方側に噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスチョップドストランドを高い製造効率と製品収率で製造することのできるガラスチョップドストランドの乾燥装置と、この装置を用いたガラスチョップドストランドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスチョップドストランドは、主に熱可塑性樹脂などを強化する目的で用いられ、ガラスチョップドストランドによって強化されたFRTP(Fiber Reinforced ThermoPlastics)は、機械的強度などで優れた性能を有するため多くの用途で用いられている。ガラス長繊維から製造されるガラスチョップドストランドは、一般に次のような工程で製造されている。まず、所定のガラス組成となるように調合されたガラス原料を均質に熔解し、得られた熔融ガラスをガラス熔融炉の成形域に配設されたブッシングから引き出してガラスフィラメントを得る。このガラスフィラメントに予め調整された集束剤を塗布した後、複数のガラスフィラメントを集束させてガラスストランドとし、巻き取り装置に巻き取ってケーキをとする。その後、製造されたケーキから複数のガラスストランドを解舒し、切断装置にて所定長のチョップに切断する。切断されたチョップは湿潤状態にあるために乾燥装置によって乾燥を行い、乾燥後のガラスチョップドストランドは袋詰めされて梱包体となる。
【0003】
以上のようにガラスチョップドストランドは、製造の最終段階で乾燥工程を行うことによって製造されており、乾燥効率が悪いとガラスチョップドストランドの製造効率の低下に繋がる。このため、これまでにもガラスチョップドストランド及びその製造に関して様々な発明が行われてきた。例えば、特許文献1は、ガラス繊維のストランド又はストランド製品を湿潤下で切断して得られる扁平な形状を有するチョップドストランドに関するものである。同文献には、ガラスチョップドストランドを振動作用に付して造粒、緊密化し、次いで、前記振動作用によって層状に形成、移送されつつある湿潤チョップドストランド群に対し、その下方から多数の細い加熱空気流を噴出、導通して、乾燥する高密度チョップドストランドの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ガラスチョップドストランドを振動トラフ上で振動により移送しつつ乾燥させる振動乾燥機と、振動乾燥機の下流側に配設されたグリズリバーと、グリズリバーの下流側の上方に鉄粉分離装置を配設させた振動フィーダーとを備えた振動乾燥装置が記載されている。振動乾燥機から排出されるガラス繊維中の風綿をグリズリバーによって篩い分けて外方に導くと共に、ふるい下中の鉄粉を鉄粉分離装置で除去するようにしている。
【0005】
特許文献3には、ガラスチョップドストランドの乾燥工程で用いられる振動乾燥装置に関し、ガラスチョップドストランドを移送するために用いられる整流板の表面にポリテトラフルオロエチレンの被覆層を形成することが記載されている。このような構成とすることによって、ガラスチョップドストランド表面に塗布された集束剤の樹脂成分が、乾燥中に少しずつ整流板の表面に固着して、整流板の表面全体が樹脂成分で覆われたり、整流板に形成された多数の小孔が樹脂成分によって塞がれたりすることが防止される。また、集束剤の樹脂成分が整流板に固着したとしても、ハケやヘラを用いて簡単に取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭62−41185号公報
【特許文献2】特公平4−77692号公報
【特許文献3】特開平6−135734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラスチョップドストランドを振動乾燥装置で乾燥する際、ガラスチョップドストランドが熱風の噴出のために設けられた整流板の小孔(スルーホール)から下方へ落下してしまうことがある。この落下したガラスチョップドストランドは、整流板の下方側から供給される熱風に長時間曝されることになるため、その表面に塗布された集束剤が熱によって炭化して、再使用できない状態になる。そして、このような不良品発生のために、ガラスチョップドストランドの製品収率が低下するという問題があった。一方、ガラスチョップドストランドの落下を防止するために、整流板の小孔をより小径にすると、小孔が詰まり易くなる。小孔がガラスチョップドストランド等で詰まると、熱風の噴出しに支障が生じ、乾燥効率が低下するという問題が生じる。また、小孔に詰まった閉塞物を取り除く作業も必要となり、製造効率を低下させる原因となる。
【0008】
本発明は係る状況に鑑み、ガラスチョップドストランドの製造効率と製品収率を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、複数のスルーホールを有する整流板上に湿潤状態のガラスチョップドストランドを堆積させ、整流板の下方側に供給される熱風をスルーホールを通して噴出させつつ、整流板に振動を付与することにより、ガラスチョップドストランドを整流板上で移送しながら乾燥するガラスチョップドストランドの乾燥装置であって、整流板上のガラスチョップドストランドがスルーホールを通って下方に落下するのを防止する落下防止部が設けられている構成を提供する。
【0010】
ガラスチョップドストランドは、集束剤が表面に塗布された多数本のガラスフィラメントを集束することによって作製されたガラスストランドを所定長に切断することによって作製される。そのため、ガラスチョップドストランドには集束剤が付着しており、乾燥前のガラスチョップドストランドは集束剤中の水分を含んだ湿潤状態である。通常、乾燥工程に入る前のガラスチョップドストランドは質量百分率表示で10%程度の水分を含んでいる。本発明の乾燥装置は、このような湿潤状態のガラスチョップドストランドを整流板上に堆積させ、整流板の振動により移送しながら、整流板のスルーホールを通って噴出する熱風によって、例えば水分含有量が質量百分率表示で1%未満になるまで乾燥させるものである。その際、整流板上のガラスチョップドストランドの一部はスルーホールを通って下方に落下しようとするが、その落下が落下防止部によって防止されるので、再使用できない不良品の発生が低減して製品収率が向上する。また、ガラスチョップドストランドの落下を防止するために、スルーホールの孔径を過剰に小さくする必要がないので、スルーホールの詰まりが少なくなり、製造効率が向上する。
【0011】
整流板は、ガラスチョップドストランドを堆積させた状態で熱風によって加熱され続けても大きく変形することのない材質で形成されていればよく、例えば、ステンレス鋼等の鋼鉄や耐熱合金製で形成することができる。
【0012】
スルーホール(貫通孔)の数、形状、大きさ、配列態様は、整流板上に堆積したガラスチョップドストランドを均等に乾燥できるものであれば、特に制限はない。例えば、スルーホールの形状は、楕円形、矩形、多角形、あるいはこれらを複合させた形状にすることができる。また、スルーホールの大きさは、堆積したガラスチョップドストランドを乾燥させるのに十分な風速の熱風を供給するために、例えば、円に換算したときの円直径を0.5mm以上10mm以下、好ましくは1mm以上9mm以下、さらに好ましくは2mm以上8mm以下とすることができる。
【0013】
落下防止部は、整流板の下方側に供給される熱風がスルーホールを通って噴出するという熱風の流れを妨げず、かつ、ガラスチョップドストランドがスルーホールを通って下方に落下するのを防止できる構造を有するものであれば良い。例えば、落下防止部は、板状部材、ガラスチョップドストランドの繊維径よりも小さな空隙を有するメッシュ状構造物(又は網状構造物)、ガラスチョップドストランドの繊維径よりも小さなスリットを有するストライプ状構造物(又は櫛歯状構造物)などをスルーホールの下方側に付設することによって構成することができる。あるいは、落下防止部は、スルーホールの上方側に庇状に付設することによって構成することもできる。ただし、落下防止部をスルーホールの上方側に付設した場合、整流板上を振動により移送されるガラスチョップドストランドの移動が落下防止部によって妨げられ、整流板上のガラスチョップドストランドの層厚が局部的に大きくなる現象(いわゆる振動偏析現象)が生じ、ガラスチョップドストランドが均等に乾燥されないことがあるので、落下防止部はスルーホールの下方側に付設するのが好ましい。
【0014】
上記の落下防止部を設けることにより、ガラスチョップドストランドは整流板上で振動を受けて移送されつつ、スルーホールを通って噴出する熱風によって効率的に乾燥され、しかも移送中にスルーホールを通って下方に落下することが防止される。これにより、製造効率を高めることができると共に、下方への落下に伴う過熱により再生不能となる不良品の発生を低減することができる。
【0015】
上記の落下防止部は、各スルーホールの下方側にそれぞれ個別的に設けられていても良い。この場合、各落下防止部を整流板に一体形成することにより、部品点数と製造コストを低減することができる。この構成の落下防止部は、例えば、整流板の素材となる金属板にプレス加工を施して、スルーホールの相対向する2つの開口縁の打ち抜きと、スルーホールに対応する板部分の下方への屈曲成形を行うことによって形成することができる。
【0016】
あるいは、上記の落下防止部は、上記の板状部材、メッシュ状構造物、ストライプ状構造物等を整流板に係合構造、嵌合構造、ネジ止め、蝋付け、溶接等の適宜の手段によって固定したものであっても良い。
【0017】
上記構成において、スルーホールの開口率は2%以上30%以下であるが好ましい。ここで、スルーホールの開口率は、整流板の総面積(スルーホールの総面積を含む)に対するスルーホールの総面積の比率である。スルーホールの開口率を上記範囲内にすることにより、整流板は高温で長期使用に耐える耐久性を備えたものとなり、しかも十分な乾燥効率を実現することができる。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明は、湿潤状態のガラスストランドを切断装置によって所定長に切断する切断工程と、該切断工程によって得られた湿潤状態のガラスチョップドストランドを上記の乾燥装置の整流板上に落下堆積させる投入工程と、乾燥装置によりガラスチョップドストランドの乾燥を行う乾燥工程とを有する構成を提供する。さらに、乾燥工程後のガラスチョップドストランドを袋状物内に収納する梱包工程を有していても良い。
【0019】
本発明において、ガラスチョップドストランドを構成するガラス繊維のガラス組成や、集束剤については、必要に応じて様々なものを適宜選択することができる。また、ガラスチョップドストランドの寸法は特に限定されるものではなく、例えば、その長さは3mm、6mm、または9mmであり、その直径は概ね1〜5mm程度である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラスチョップドストランドの製造効率と製品収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例に係る乾燥装置の概念図である。
【図2】整流板のスルーホールの周辺部を示す図であり、(A)は部分断面図、(B)は(A)図のZ方向からの斜視図、(C)は部分平面図である。
【図3】他の実施例に係る整流板のスルーホールの周辺部を示す部分断面図である。
【図4】他の実施例に係る整流板のスルーホールの周辺部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明のガラスチョップドストランド乾燥装置と、ガラスチョップドストランドの製造方法について、実施例に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例に係るガラスチョップドストランドの製造装置を概念的に示している。この製造装置は、FRTP用途で用いられるガラスストランドSを所定長、例えば長さ3mmに切断してEガラス組成のガラスチョップドストランドCを形成する切断装置50と、切断装置50で切断された湿潤状態のガラスチョップドストランドCを乾燥させる乾燥装置10とを備えている。
【0024】
水溶性の集束剤が塗布されたガラスフィラメントの多数本を集束することによって作製したガラスストランドSの回巻体(ケーキ)LからガラスストランドSが解舒され、切断装置50に供給される。切断装置50は、切断刃51が放射状に配設され、モーター駆動で回転する切断ロール52と、ゴムロール53とを備えており、ケーキLから解舒されたガラスストランドSは切断ロール52とゴムロール53との間に連続的に送り込まれ、所定長に切断されてガラスチョップドストランドCになる。切断された直後のガラスチョップドストランドCには集束剤が付着しており、ガラスチョップドストランドCは湿潤状態である。
【0025】
こうして得られたガラスチョップドストランドCは、切断装置50の直下に配設された投入口から乾燥装置10内に自由落下し、乾燥装置10内に配設された整流板20上に不規則な向きで堆積する。この状態の詳細を図2(A)に示している。
【0026】
整流板20は、例えば板厚2mmのステンレス鋼板で形成され、その板厚方向に貫通した多数の矩形状のスルーホール21を備えている。整流板20は、熱風供給室25の上部に配設されており、その上方はケーシング11で全体的に覆われて上部空間になっている。熱風発生装置30で発生した100℃〜300℃の熱風は、熱風供給室25に供給され、熱風供給室25から整流板20のスルーホール21を通って上部空間に噴出する。この整流板20のスルーホール21通って上部空間に噴出する熱風により、整流板20上のガラスチョップドストランドCが加熱され、付着した集束剤中の水分が蒸発して乾燥される。上部空間内の熱風は、排気管61を介して熱風排気装置60に入り、熱風排気装置60内のフィルタを通過して外部に排気される。尚、ここでは、熱風を排気する設備を例示しているが、省エネルギーの観点から熱風を排気せずに循環させるシステムを構成してもよい。
【0027】
乾燥装置10の熱風供給室25には、整流板20を振動駆動させる振動発生装置40が配設されている。この振動発生装置40は、例えば、電磁石によってスプリングに平行往復運動を生じさせて振動を発生させる、いわゆる電磁石振動発生装置、あるいは不平行回転錐等による円運動を振動動作へと転換する機械的振動発生装置である。
【0028】
整流板20は振動発生装置40によって振動されるが、この振動を吸収するため、乾燥装置10の底部には振動吸収装置41と、振動吸収装置41を下方から支持する支柱42とが設けられている。
【0029】
整流板20上に堆積したガラスチョップドストランドCは、熱風によって乾燥されながら、整流板20の振動を受けて乾燥装置10の排出側へと移送されていく。こうして、十分に乾燥されたガラスチョップドストランドDは、ベルトコンベヤ70に移送され、さらにその下流側に配設された選別装置(篩選別装置)80にて、解繊できない凝集物や、切断長の長いミスカット品等を選別除去された後、フレキシブルコンテナ90に収納され、使用時まで貯蔵される。
【0030】
図2に示すように、整流板20には、ガラスチョップドストランドCが振動を受けて移送される際にスルーホール21から下方の熱風供給室25に落下するのを防止するための落下防止部22が設けられている。この実施例において、落下防止部22は、各スルーホール21の下方にそれぞれ整流板20と一体に設けられており、スルーホール21の相対向する2つの開口縁から下方に(傾斜下方に)連続して延びた2つの側壁部22a、22bと、側壁部22a、22bの下端縁に連続した底壁部22cとで構成されている。落下防止部22の両側はそれぞれ開口21b(高さは例えば1mm)になっており、熱風供給室25内の熱風は、図2(A)及び(B)に矢印Hで示すように、落下防止部22の両側の開口21bからスルーホール21を通り抜けて、整流板20の上方側に噴出する。
【0031】
落下防止部22は、例えば、整流板20の素材となる矩形状のステンレス鋼板にプレス加工(スルーホール21の相対向する2つの開口縁の打ち抜きと、側壁部22a、22b及び底壁部22cの屈曲成形)を施すことによって形成することができる。整流板20の構造はこれに限らず、例えば、整流板20の素材となるステンレス鋼板にスルーホール21を形成した後、この鋼板素材に、側壁部22a、22b及び底壁部22cからなる落下防止部22を溶接、蝋付け、嵌合などの適宜の方法で固定するようにしても良い。
【0032】
この実施例において、整流板20におけるスルーホール21の開口率{整流板20の総面積(スルーホール21の総面積を含む)に対するスルーホール21の総面積の比率}は、例えば5.3%である。また、各スルーホール21を円に換算したときの円直径は、例えば1.5mmである。ガラスチョップドストランドCの長手方向の寸法は3mmであり、スルーホール21よりも大きいため、横向き姿勢で整流板20上に落下したガラスチョップドストランドCはスルーホール21を通り抜けることはできない。また、縦向き姿勢や傾斜姿勢で整流板20上に落下したガラスチョップドストランドCの一部はスルーホール21を通り抜けるが、スルーホール21の下方に位置する落下防止部22によって下方への落下が防止される。いずれの場合でも、整流板20上に落下したガラスチョップドストランドCは下方の熱風供給室25には落下しない。
【0033】
この実施例の乾燥装置10で乾燥されたガラスチョップドストランドDの水分含有率を抜き取り検査でサンプリングしてカールフィッシャー水分計で計測したところ、いずれも1%未満にまでなっており(乾燥前のガラスチョップドストランドCの水分含有率は10%程度)、十分かつ均等な乾燥が行われていた。
【0034】
以上のように、この実施例の乾燥装置10は、ガラスチョップドストランドCを十分かつ均等に乾燥することができると共に、乾燥時にガラスチョップドストランドCが整流板20のスルーホール21から下方の熱風供給室25に落下して再使用不能となってしまう事態を防止し、不良品の発生を抑制して、製品収率を大幅に向上させることができる。
【実施例2】
【0035】
図3は、他の実施例に係る整流板20を示している。この実施例の整流板20では、メッシュ状の落下防止部22がその下面に蝋付けで固定されている。各スルーホール21は、1mm×2mmの矩形状を呈している。整流板20におけるスルーホール21の開口率{整流板20の総面積(スルーホール21の総面積を含む)に対するスルーホール21の総面積の比率}は、例えば5.9%であり、また、各スルーホール21を円に換算したときの円直径は、例えば0.8mmである。
【0036】
メッシュ状の落下防止部22は、整流板20の下面に蝋付けされた支持部23で支持され、熱風供給室25内の熱風は、同図に矢印Hで示すように、落下防止部22の網目の空隙21bを通ってスルーホール21に入り、スルーホール21から整流板20の上方側に噴出して、湿潤状態のガラスチョップドストランドCを乾燥させる。
【実施例3】
【0037】
図4は、他の実施例に係る整流板20を示している。この実施例の整流板20では、金属繊維を組み紐状に編みこんだ落下防止部22がその下面に蝋付けで固定されている。各スルーホール21は、0.7mm×2.6mmの矩形状を呈している。整流板20におけるスルーホール21の開口率{整流板20の総面積(スルーホール21の総面積を含む)に対するスルーホール21の総面積の比率}は、例えば3.1%であり、また、各スルーホール21を円に換算したときの円直径は、例えば0.76mmである。
【0038】
金属繊維を編みこんだ組み紐状の落下防止部22は、整流板20の下面に蝋付けされた支持部23で支持され、熱風供給室25内の熱風は、同図に矢印Hで示すように、落下防止部22の網目の空隙21bを通ってスルーホール21に入り、スルーホール21から整流板20の上方側に噴出して、湿潤状態のガラスチョップドストランドCを乾燥させる。
【0039】
上記実施例2及び3の整流板20を用いた乾燥装置10で乾燥されたガラスチョップドストランドDの水分含有率を抜き取り検査でサンプリングしてカールフィッシャー水分計で計測したところ、いずれも1%未満にまでなっており(乾燥前のガラスチョップドストランドCの水分含有率は10%程度)、十分かつ均等な乾燥が行われていた。
【0040】
以上のように、上記実施例2及び3の整流板20を用いた乾燥装置10は、ガラスチョップドストランドCを十分かつ均等に乾燥することができると共に、乾燥時にガラスチョップドストランドCが整流板20のスルーホール21から下方の熱風供給室25に落下して再使用不能となってしまう事態を防止し、不良品の発生を抑制して、製品の収率を大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10 乾燥装置
11 ケーシング
20 整流板
21 スルーホール
22 落下防止部
25 熱風供給室
30 熱風発生装置
40 振動発生装置
50 切断装置
60 熱風排気装置
70 ベルトコンベヤ
80 篩選別装置
90 フレキシブルコンテナ
C 湿潤状態のガラスチョップドストランド
D 乾燥状態のガラスチョップドストランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスルーホールを有する整流板上に湿潤状態のガラスチョップドストランドを堆積させ、該整流板の下方側に供給される熱風を前記スルーホールを通して噴出させつつ、該整流板に振動を付与することにより、前記ガラスチョップドストランドを前記整流板上で移送しながら乾燥するガラスチョップドストランドの乾燥装置であって、
前記整流板上のガラスチョップドストランドが前記スルーホールを通って下方に落下するのを防止する落下防止部が設けられていることを特徴とするガラスチョップドストランドの乾燥装置。
【請求項2】
前記落下防止部は、前記各スルーホールの下方側にそれぞれ個別的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガラスチョップドストランドの乾燥装置。
【請求項3】
前記落下防止部は、前記整流板に一体形成されていることを特徴とする請求項2に記載のガラスチョップドストランドの乾燥装置。
【請求項4】
前記落下防止部は、前記整流板に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラスチョップドストランドの乾燥装置。
【請求項5】
前記スルーホールの開口率が2%以上30%以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のガラスチョップドストランドの乾燥装置。
【請求項6】
湿潤状態のガラスストランドを切断装置によって所定長に切断する切断工程と、該切断工程によって得られた湿潤状態のガラスチョップドストランドを請求項1から5の何れか1項に記載のガラスチョップドストランドの乾燥装置の前記整流板上に落下堆積させる投入工程と、前記乾燥装置により前記ガラスチョップドストランドの乾燥を行う乾燥工程とを有することを特徴とするガラスチョップドストランドの製造方法。
【請求項7】
前記乾燥工程後のガラスチョップドストランドを袋状物内に収納する梱包工程をさらに有することを特徴とする請求項6に記載のガラスチョップドストランドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−1218(P2011−1218A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145317(P2009−145317)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507420732)電気硝子ファイバー加工株式会社 (7)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】