説明

ガラスドロー中の導電膜の電気蒸着

ドロー中、例えばフュージョンドロー中またはファイバードロー中に、ガラス基板を被覆する方法が記載される。被覆は、導電被覆であり、透明でもよい。導電薄膜で被覆されたガラス基板は、例えば、ディスプレイ装置、太陽電池用途および多くの他の急伸する産業および用途において使用できる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2008年11月24日に出願された米国仮特許出願第61/117,373号および2009年9月30日に出願された米国特許出願第12/570,762号に優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明の実施の形態は、基板を被覆する方法に関し、より詳細には、例えば電気蒸着を使用してガラスドロー中に導電薄膜でガラス基板を被覆する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
透明で導電性の薄膜で被覆されたガラスは、多くの用途、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)のようなディスプレイ装置の背面構造等のディスプレイ用途、および携帯電話のための有機発光ダイオード(OLED)に有用である。透明で導電性の薄膜で被覆されたガラスはまた、太陽電池用途、例えば、ある種類の太陽電池のための透明電極として、および多くの他の急伸する産業および用途において、有用である。
【0004】
ガラス基板を被覆する従来の方法は通常、材料を真空排気し、被覆前にガラス基板を洗浄し、被覆前にガラス基板を加熱し、その後特定の被覆材料を蒸着する工程を含む。
【0005】
通常、ガラス基板上への導電透明薄膜の蒸着は、スパッタリングにより、または化学蒸着(CVD)、例えばプラズマ支援化学蒸着(PECVD)により、真空槽中で行われる。
【0006】
ガラス上への導電透明薄膜のスパッタリング、例えば、ガラス上へのインジウムドープされた酸化スズのスパッタ蒸着には、以下の不都合が1つ以上ある:大面積スパッタリングは、難しく、時間がかかり、一般にガラス基板上、特にサイズの増大したガラス基板、例えばテレビ用のディスプレイガラス上に不均一の膜を生じる。
【0007】
従来の被覆方法のいくつかにおいて被覆前にガラスを洗浄する工程は、複雑さおよび追加の費用をもたらす。また、従来の被覆方法のいくつかは、被覆をドープする工程を必要とし、これは通常困難であり追加の処理工程をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被覆密度を増加させおよび/または従来の被覆方法において明らかな形態の変動を最小にする一方で製造費用および製造時間を減少させる、導電薄膜でガラス基板を被覆する方法を開発することが好都合であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここに記載されるように、導電薄膜でガラス基板を被覆する方法は、特に被覆が金属および/または金属酸化物を含む場合に、従来の被覆方法の上記の1つ以上の不都合を解決しようとする。
【0010】
ある実施の形態において、ガラスドロー中にガラス基板を被覆する方法が開示される。この方法は、ガラス基板をドローし、ドロー中のガラス基板の近くに電場を与え、電場を通しておよびドロー中のガラス基板上に導電粒子を含むエアロゾルの流れを通過させる、各工程を含む。
【0011】
本発明のさらなる特徴および利点が、以下の詳細な説明に記載され、一部はこの記載から当業者に明らかであろう、または、明細書および特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載されるように本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0012】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、本発明の単なる例示であり、特許請求される発明の性質および特徴を理解するための概要または骨組みを提供することを意図することが理解されるべきである。
【0013】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明の1つ以上の実施の形態を示し、明細書本文と共に本発明の原理および動作を説明する作用をする。
【0014】
本発明は、以下の詳細な説明のみから、または添付の図面と共に以下の詳細な説明から、理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】図1Aは、ある実施の形態によるドロー中のガラス基板へのエアロゾルの塗布の側面概略図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示される実施の形態によるドロー中のガラス基板へのエアロゾルの塗布の正面概略図である。
【図2】図2は、ある実施の形態によるドロー中のガラス基板へのエアロゾルの塗布の概略図である。
【図3】図3は、ある実施の形態によるドロー中のガラス基板へのエアロゾルの塗布の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の様々の実施の形態が詳細に参照され、そのうちのある実施例が添付の図面に示される。
【0017】
ある実施の形態において、ガラスドロー中にガラス基板を被覆する方法が開示される。本発明の方法は、ガラス基板をドローし、ドロー中のガラス基板の近くに電場を与え、電場を通しておよびドロー中のガラス基板上に導電粒子を含むエアロゾルの流れを通過させる、各工程を含む。
【0018】
導電粒子は、ある実施の形態によれば、金属、金属酸化物、金属ハロゲン化物、ドーパント、またはそれらの組合せを含む。例示的な金属ハロゲン化物は、SnCl、SnCl、SnBr、ZnCl、およびそれらの組合せである。例示的な金属酸化物は、ZnO、SnO、In、およびそれらの組合せである。例示的な金属は、Sn、Zn、In、およびそれらの組合せである。導電粒子は、直径500ナノメートルでもよく、例えば、200ナノメートル以下、例えば、10ナノメートルから100ナノメートルまででもよい。
【0019】
ある実施の形態による方法は、スプレー熱分解、炎色(flame)合成、ホットウォールリアクタ、誘導粒子発生装置、噴霧装置、またはそれらの組合せを使用して導電粒子の流れを生じる工程をさらに含む。
【0020】
例示的なホットウォールリアクタ、例えば、本出願人による、米国特許出願公開第2008/0035682号明細書および2007年7月25日に出願された米国特許出願第11/881119号明細書に記載される誘導粒子発生装置を使用して、エアロゾルの流れを生じてもよい。
【0021】
例えば、本出願人による、米国特許第5,979,185号明細書および同第6,260,385号明細書に記載されるような、例示的な炎色スプレー熱分解リアクタを使用して、エアロゾルの流れを生じてもよい。ある実施の形態によれば、エアロゾルの流れは、導電粒子のためのキャリアガス、例えば、窒素、酸素等またはそれらの組合せ、および前駆物質、反応物質、粒子等またはそれらの組合せを含む。エアロゾルの流れは、エアロゾル液滴を含んでもよく、乾燥導電粒子を含んでもよい。ある実施の形態において、エアロゾル液滴は、直径4000ナノメートル以下の液滴サイズ、例えば、10ナノメートルから1000ナノメートルまで、例えば50ナノメートルから450ナノメートルまでの液滴サイズを有する。
【0022】
気相合成により生じる導電粒子は、通常、導電粒子を生成するために使用される化学反応中に陽性または陰性に帯電される。ある実施の形態において、本発明の方法は、導電粒子を含むエアロゾルの流れを電場に通過させる前に導電粒子を帯電させる工程をさらに含む。ある実施の形態によれば、導電粒子を帯電させる工程は、生じた導電粒子の流れを、帯電した導電粒子を形成するための帯電器を含む帯電ゾーンに通過させる工程を含む。帯電器は、コロナ帯電器、放射性ガスイオナイザ、光電子帯電器、誘導帯電器およびそれらの組合せから選択されてもよい。帯電器を使用して、帯電器により生じる空気イオンから電荷を獲得することにより、導電粒子をさらに帯電してもよい。
【0023】
帯電ゾーンにおけるさらなる粒子の帯電は、複数の帯電メカニズムまたは複数の帯電メカニズムの組合せにより有効に達成できる。例えば、粒子帯電に使用されるガスイオンは、放射性ガスイオナイザにより生成できる。電磁放射線の対応源により生じるUV光または軟X線(光電帯電)によってエアロゾルを照射することにより、エアロゾル粒子を帯電できる。
【0024】
静電蒸着のための例示的なシステムは、本出願人による、米国特許第7,361,207号明細書および同第7,393,385号明細書に記載される。
【0025】
ある実施の形態において、ガラス基板上の導電粒子は、焼結して導電膜を形成する。ある実施の形態において、導電膜は透明である。導電膜は、金属、金属酸化物、ドーパント、またはそれらの組合せを含んでもよい。ある実施の形態において、導電膜は、SnO、ZnO、In、Zn、Sn、In、またはそれらの組合せを含む。ある実施の形態において、導電膜は、ClドープされたSnO、FおよびClドープされたSnO、FドープされたSnO、SnドープされたIn、AlドープされたZnO、CdドープされたSnO、またはそれらの組合せを含む。
【0026】
導電薄膜は、ある実施の形態において、2000ナノメートル以下、例えば、10ナノメートルから1000ナノメートルまで、例えば、10ナノメートルから500ナノメートルまでの厚さを有する。
【0027】
ガラス基板は、ガラスファイバーおよびガラスリボンから選択されてもよい。例示的なドロー工程は、ドローダウンされたガラス形成を含む(例えば、フュージョンドロー、チューブドロー、スロットドローおよび垂直ドロー)。本発明のある実施の形態は、フュージョンドロー工程でアイソパイプからドロー中のガラスリボンにエアロゾルを塗布する工程を含む。
【0028】
ガラスドロー工程中、ガラス基板の初期ガラス表面は通常、汚れがなく、一つにはガラス基板の温度によりおよびガラス基板がガラスドロー工程中に使用される設備によってのみ接触されることにより、ガラス基板上にエアロゾルを蒸着しその後導電薄膜を形成する工程に好ましい。したがって、被覆前にガラス基板を洗浄する工程は必要ではない。
【0029】
ある実施の形態によれば、エアロゾルを塗布する工程は、ガラス遷移温度に達したまたはそれより低いガラス基板にエアロゾルを塗布する工程を含む。
【0030】
ある実施の形態によれば、エアロゾルを塗布する工程は、ガラス基板が伸縮する間にガラス基板にエアロゾルを塗布する工程を含む。
【0031】
ある実施の形態によれば、本発明の方法は、ガラス基板のドロー中に、摂氏200度から摂氏800度の間の温度、例えば、摂氏350度から摂氏600度の間の温度でガラス基板にエアロゾルを塗布する工程を含む。いくつかの用途において、温度範囲の上限は、ガラス基板の軟化点に依存する。導電膜は、通常、ガラス基板の軟化点より低い温度で用いられる。ある実施の形態によれば、導電膜は、大気圧で形成される。
【0032】
フュージョンドロー工程中にガラス基板を被覆する方法の機構100および101が図1Aよび図1Bに示される。この実施の形態においてガラスリボンであるガラス基板10の温度は、アイソパイプ12を出るところで1100℃以上になり得る。アイソパイプの出口14からエアロゾル運搬装置16までの距離Yは、ガラスリボンの所望の温度に対応するように調整できる。ガラスリボンの所望の温度は、導電薄膜で被覆されたガラス基板18、この実施例では導電薄膜で被覆されたガラスリボンを形成するために、ガラスリボン上の金属ハロゲン化物の蒸着の上に金属酸化物を形成するのに必要な温度により特定できる。同様に、エアロゾルの流れからガラスリボンまでの距離Xは、エアロゾルの所望の速度に合うように調整できる。
【0033】
ファイバードロー工程中にガラス基板を被覆する方法の機構200が、図2に示される。この実施の形態ではガラスファイバーであるガラス基板10の温度は、加熱炉20を出るところで1100℃以上になり得る。加熱炉の出口22からエアロゾル運搬装置16までの距離Bは、ガラスファイバーの所望の温度に対応するように調整できる。別の実施の形態によれば、距離Bは、冷却ユニット(図示せず)からエアロゾル運搬装置までの距離でもよい。ガラスファイバーの所望の温度は、例えば、導電薄膜で被覆されたガラス基板18、この実施例では導電薄膜で被覆されたガラスファイバーを形成するためにガラスファイバー上の金属ハロゲン化物の蒸着の上に金属酸化物を形成するのに必要な温度により特定できる。同様に、エアロゾル運搬装置からガラスファイバーまでの距離Aは、エアロゾルの所望の速度に合うように調整できる。
【0034】
図1Aにおける距離XおよびY、または図2における距離AおよびBは、ガラス基板上にエアロゾル液滴または乾燥導電粒子を蒸着するように調整されてもよい。
【0035】
ある実施の形態において、電場を与える工程は、1つ以上の電極に交流(AC)または直流(DC)を与え、ガラス基板がドローされる間に帯電した導電粒子をガラス基板上に蒸着する電場を生じる工程を含む。例えば、図3の本発明の機構300により示されるように、2つの反対に帯電した対向電極26および28が、ドロー中のガラスの両側に配置されてもよい。ガラス基板10はドローされ、電極26および28によりドロー中のガラス基板の近くに電場が与えられ、導電粒子を含む帯電したエアロゾル24の流れが、電場を通しておよびガラス基板上を通過され、したがってガラス基板が被覆される。
【0036】
静電蒸着工程の高捕獲効率により、SnOのような最小粒子でさえも基板上への蒸着を可能とする。基板の高温により、基板上の導電粒子の接着および導電膜を形成するための導電粒子のその後の焼結が容易になり得る。初期ガラス表面の洗浄は、膜蒸着前にガラスを洗浄する追加の工程段階を最小限にし得る。高価な真空システムおよびその複雑な処理装置が膜蒸着に必要ではない。蒸着は周囲条件下で行うことができ、複数種の膜のドーピング/アロイングが比較的容易である。
【0037】
本発明による方法は、単一種の導電薄膜の蒸着、複合した複数種の薄膜の蒸着、膜に追加する「インサイチュ(in-situ)」ドーパント、および/または膜の均一性を確実にするためのガス乱の流最小化という汎用性を有する。高温酸化物(例えばSnO、ZnO)ではなく低温蒸発金属種(例えばSn、Zn)の蒸着および膜の部分的焼結および/または熱処理による金属酸化物のその後の変化は、導電膜を形成するためにかなり低い温度(例えばSnについて300℃であり、SnOについて>1900℃)を使用し得るので、都合がよい。ドロー中のガラス温度は、金属粒子の焼結工程に十分な程高い。通常、金属種の酸化は、蒸着前、合成段階、または蒸着後、焼結の直前のいずれかに起こり得る。
【0038】
本発明の原理および範囲を逸脱せずに、本発明に様々の変更および変化が可能であることが当業者に明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内に基づくものであれば本発明の変更および変化を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスドロー中にガラス基板を被覆する方法であって:
ガラス基板をドローし;
ドロー中の前記ガラス基板の近くに電場を与え;および
該電場を通しておよびドロー中の前記ガラス基板上に、導電粒子を含むエアロゾルの流れを通過させる、
各工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
スプレー熱分解、炎色合成、ホットウォールリアクタ、誘導粒子発生装置、噴霧装置、またはそれらの組合せを使用して導電粒子の流れを生じる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス基板上の前記導電粒子が、焼結して導電膜を形成することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記導電粒子を含むエアロゾルの流れを前記電場に通過させる前に、前記導電粒子を帯電させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記エアロゾルの流れが、エアロゾル液滴を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−509829(P2012−509829A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−537635(P2011−537635)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/065254
【国際公開番号】WO2010/059896
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】