説明

ガラスパネル用免震装置

【課題】免震装置3の性能を十分に確保しつつ、この免震装置3を外観上目立たなくでき、しかも、地震が収まった後に、各ガラスパネル1、1を元の位置に戻す力を作用させられる構造を実現する。
【解決手段】免震装置3は、支持部材4と、支持ブラケット7と、ガイドピン8と、移動ブラケット9と、圧縮コイルばね10、10とを備える。又、弾性を有するシール接着材22により上記各ガラスパネル1、1を、上記移動ブラケット9に対し接合している。比較的小さな地震の際には、各部が(B)の様に変位し、大きな地震の際には(C)の様に変位する。地震が収まると、上記圧縮コイルばね10、10及び上記シール接着材22の弾力により、上記各ガラスパネル1、1を元の位置に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種ホール、商業施設、オフィスビル等の建造物の外壁面の大部分を複数枚のガラスパネルにより覆うガラスパネル壁構造体に組み込み、地震による建造物の揺れ(歪み)に拘らず、これら各ガラスパネルが損傷する(割れる)事を防止する免震装置の改良に関する。具体的には、この免震装置の性能を十分に確保しつつ、この免震装置を外観上目立たなくできる構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の外壁面の大部分を複数枚のガラスパネルにより覆うガラスパネル壁構造体に組み込んで、地震による建造物の揺れに拘らず、これら各ガラスパネルが損傷する事を防止する免震装置として、特許文献1、2に記載された構造が知られている。これら特許文献1、2に記載された構造の場合、建造物の外壁面の大部分を複数枚のガラスパネルにより覆う構造で、地震の際にこれら各ガラスパネルが損傷するのを防止する事を考慮してはいるが、建築主の要求によっては、必ずしも十分に満足できる設計を行なえない可能性がある。即ち、上記特許文献1、2に記載された何れの構造も、屋外から見た場合に、隣り合うガラスパネル同士の間に存在する押縁或いはシール材が目立つものと考えられる。又、地震が収まった後、各ガラスパネルを元の位置に戻す力を積極的に作用させる構造ではない為、地震によりこれら各ガラスパネル同士の位置関係が微妙にずれる可能性がある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−28148号公報
【特許文献2】特開2005−127097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、免震装置としての性能を十分に確保しつつ、方立構造等、この免震装置の構成各部材を外観上目立たなくでき、しかも、地震が収まった後に、各ガラスパネルを元の位置に戻す力を作用させられる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のガラスパネル用免震装置は、互いの端縁同士を近接対向させた状態で同一平面上に配置した複数枚のガラスパネルを躯体に対し、地震に伴う揺れを吸収可能に支持するものである。
この様な本発明のガラスパネル用免震装置は、支持部材と、支持ブラケットと、ガイドピンと、移動ブラケットと、弾性部材とを備える。
このうちの支持部材は、上記各ガラスパネルのうちの隣り合う1対のガラスパネルの端縁に沿って、上記躯体に支持されている。
又、上記支持ブラケットは、上記両ガラスパネルの配設方向に離隔した1対の固定板部を有し、この支持部材のうちでこれら両ガラスパネルの片側面端縁寄り部分に対向する面に固定されている。
又、上記ガイドピンは、上記支持ブラケットの上記両固定板部同士の間に掛け渡されている。
又、上記移動ブラケットは、上記ガイドピンに沿って上記両ガラスパネルの配設方向に変位可能とされた状態で、これら両ガラスパネルの互いに対向する端縁同士の間に配置されている。
又、上記弾性部材は、上記移動ブラケットの両側面と上記支持ブラケットを構成する上記両固定板部との間に設けられて、この移動ブラケットを中立位置に付勢する。
更に、この移動ブラケットに対し上記両ガラスパネルを、高分子弾性材により接合している。
【0006】
上述の様な本発明のガラスパネル用免震装置を実施する場合に、例えば請求項2に記載した様に、上記移動ブラケットを、上記ガイドピンを軸方向の相対変位を可能に挿通する通孔を基端部に有する変位板部と、この変位板部の先端縁で両ガラスパネルの端縁同士の間から支持ブラケットと反対側に突出した部分にその幅方向中間部を結合した抑え板部とから成る、断面T字形とする。そして、上記両固定板部の先端縁と上記両ガラスパネルの片側面端縁寄り部分との間、並びに、上記両ガラスパネルの他側面端縁寄り部分と上記抑え板部とを、それぞれ高分子弾性材により接合する。
【発明の効果】
【0007】
上述の様に構成する本発明のガラスパネル用免震装置によれば、免震装置としての性能を十分に確保しつつ、方立構造等、この免震装置の構成各部材を外観上目立たなくでき、しかも、地震が収まった後に、各ガラスパネルを元の位置に戻す力を作用させられる。
先ず、免震装置の性能は、躯体に対する上記各ガラスパネルの変位可能量を多くする程良好になる。本発明の場合に、この変位可能量は、移動ブラケットがガイドピンに沿って変位する事に伴う、この移動ブラケットの支持ブラケットに対する変位量と、高分子弾性材の弾性変形に伴う、この移動ブラケットに対する上記各ガラスパネルの変位量との合計になる。この為本発明の場合には、上記躯体に対する上記各ガラスパネルの変位可能量を多くして、上記免震装置としての性能を良好にできる。
【0008】
又、免震装置は、上記各ガラスパネルの端縁のうちの一部に設ければ良く、しかも、この免震装置の構成部材のうちでこれら各ガラスパネルの外側に露出するのは、上記移動ブラケットの一部のみである。従って、上記免震装置を外観上目立たなくできて、ガラスパネル壁構造体の意匠設計上の自由度が高くなる。
更に、上記移動ブラケットは弾性部材の弾力により上記支持ブラケットに対し、上記各ガラスパネルは高分子弾性材の弾力により上記移動ブラケットに対し、それぞれ中立位置に向かう弾力を付与されているので、地震が収まった後、上記各ガラスパネルを元の位置に戻す力が積極的に加わる。この為、地震によりこれら各ガラスパネル同士の位置関係がずれたままになる事がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1〜9、本発明の実施の形態の1例を示している。本発明の免震装置を組み付けるべき建造物用ガラスパネル壁構造体は、それぞれが上下方向に長い矩形である複数枚のガラスパネル1、1を、それぞれ同一の鉛直面上に規則的に配置して成る。これら各ガラスパネル1、1は建造物の躯体(鉄骨)2に対し、本発明の特徴である免震装置3により、地震の揺れに基づく、この躯体2に対する相対変位を吸収可能に支持している。
【0010】
上記免震装置3による上記相対変位を吸収可能にする為に、上記各ガラスパネル1、1は上記躯体2に対し、大きな力が加わった場合には、水平方向の変位を可能に支持している。この為に本例の場合には、図2、4、5に示す様に、上記躯体2に対し、上記免震装置3を構成する支持部材4、4を支持している。これら各支持部材4、4は、厚肉鋼板等の、十分な強度及び剛性を有する部材であり、これら各支持部材4、4に対し上記各ガラスパネル1、1の上下両端縁部を、水平方向の変位を可能に支持している。
【0011】
上記各ガラスパネル1、1の上下両縁は、上記躯体2に固定した上枠5及び下枠6に、シール材等を介して保持している。地震によりこの躯体2が、上記各ガラスパネル1、1の上側と下側とで水平方向にずれると、上記各ガラスパネル1、1の上下両縁と、上記上下両枠5、6との一方又は双方が水平方向にずれる。この様な構成により、地震の際に上記躯体2と上記各ガラスパネル1、1との間に、水平方向に強い力が加わった場合にも、これら各ガラスパネル1、1を上記躯体2に対し水平方向に変位させて、これら各ガラスパネル1、1が損傷する事を防止できる。但し、これだけでは、地震が収まった後にも、これら各ガラスパネル1、1が元の位置に復帰する事はない。又、地震発生時に、これら各ガラスパネル1、1の水平方向移動が勢い良く開始された場合に、これら各ガラスパネル1、1同士が勢い良く衝突して、これら各ガラスパネル1、1が損傷する可能性がある。そこで本例の場合には、これら各ガラスパネル1、1と上記各支持部材4、4との間に次述する様な免震装置3を設けて、地震発生時にこれら各ガラスパネル1、1に衝撃が加わる事を防止すると共に、地震が収まった後に、これら各ガラスパネル1、1を元の位置に戻せる様にしている。
【0012】
上記免震装置3は、図4〜6、9に示す様に、上記支持部材4の他に、支持ブラケット7と、ガイドピン8と、移動ブラケット9と、弾性部材である1対の圧縮コイルばね10、10とを備える。このうちの支持ブラケット7は、アルミニウム合金の押し出し型材製で、水平方向に離隔した1対の固定板部11、11を有し、上記支持部材4の屋外側端面(図4、5の左端面、図6、9の下端面)に、ねじ止め固定されている。
【0013】
又、上記ガイドピン8は、例えば上記支持ブラケット7の上下方向2個所位置(又は4個所位置等、必要とされる強度等に応じた所望位置)で、上記両固定板部11、11同士の間に掛け渡されている。この為に、これら両固定板部11、11の中間部上寄り部分でうち、前記各ガラスパネル1、1の下端部に見合う位置、及び、中間部下寄り部分でこれら各ガラスパネル1、1の上端部に見合う位置(並びに、両固定板部11、11の上下方向両端寄り部)にそれぞれ、互いに同心の円孔を形成している。上記ガイドピン8は、図8に示す様に、主部12と固定ねじ13とを組み合わせて成る。このうちの主部12は、円柱状のガイド杆部14の基端部(図8の右端部)に外向フランジ状の鍔部15を、このガイド杆部14の先端面中央部にねじ孔16を、それぞれ形成している。又、これら鍔部15とガイド杆部14との連続部には、上記円孔にがたつきなく挿入自在な円筒面部17を形成している。一方、上記固定ねじ13は、この円筒面部17と同様の円筒面部17aの軸方向両側に、ねじ杆18と上記鍔部15と同様の鍔部15aとを形成して成る。この様なガイドピン8を構成する上記主部12と固定ねじ13とは、上記両固定板部11、11の反対側から上記円孔内に挿入し、上記ねじ杆18と上記ねじ孔16とを螺合し更に緊締する事で、互いに結合する。この状態で、上記両円筒面部17、17aが、上記円孔内に位置する。
【0014】
又、前記移動ブラケット9は、アルミニウム合金を押し出し成形する事により、変位板部19と抑え板部20とから成る、断面T字形に形成している。このうちの変位板部19の基端部(図6、9の上端部)には、上記ガイドピン8のガイド杆部14を軸方向(図6、9の左右方向)の相対変位を可能に挿通する円形の通孔21を設けている。この様な変位板部19は、この円孔21に上記ガイド杆部14を挿通した状態で、前記支持ブラケット7の上記両固定板部11、11同士の間に組み付ける。この際、前記両圧縮コイルばね10、10を、これら両固定板部11、11の内側面と上記変位板部19の両側面との間に、弾性的に圧縮した状態で組み付ける。この状態でこの変位板部19は、上記両固定板部11、11同士の間に、上記ガイド杆部14に沿った変位を可能に支持される。又、上記変位板部19は、外力が作用しない限り、上記両固定板部11、11同士の丁度中間位置に留まる。
【0015】
又、上記抑え板部20は、上記変位板部19の先端縁(図6、9の下端縁)から水平方向両側に突出する状態で設けられている。ガラスパネル壁構造体を構築した状態で上記変位板部19の先端縁は、水平方向に隣接する1対のガラスパネル1、1の端縁同士の間から屋外側に突出するので、上記抑え板部20は、その屋内側面とこれら各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部屋外側面とを互いに対向させた状態となる。そこで、図4〜6、9に示す様に、上記抑え板部20の屋内側面と上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部屋外側面とを、高分子弾性材であるシール接着材22により接合する。又、図示の例では、上記両固定板部11、11の先端縁と上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部屋内側面とに就いても、それぞれ高分子弾性材であるシール接着材22aにより接合している。
【0016】
又、図示の例では、上記変位板部19の両側面屋内外方向中間部、且つ、上下方向端部で、上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁に対向する部分に、ゴムシート等の緩衝板23、23を貼着している。これら各緩衝板23、23には、地震の際に、上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁が衝合する。
本例の場合には、上述の様な免震装置3を、上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部同士の接合部の、上端部と下端部とにのみ設けている。言い換えれば、この接合部の上下方向中間部には、上記免震装置3を構成する、前記支持部材4も、前記支持ブラケット7も、前記移動ブラケット9も存在しない。そこで本例の場合には、図7に示す様に、水平方向に隣接するガラスパネル1、1の上下方向中間部同士の間に、弾性を有する高分子材料製のシール材24のみを設けている。このシール材24を設ける、上記水平方向に隣接するガラスパネル1、1同士の間の隙間の幅寸法W(図7)は、地震の際にこれら各ガラスパネル1、1同士の衝突を、上記免震装置3を設けた部分を含め、確実に防止できる範囲で、できるだけ小さくする事が好ましい。
【0017】
上述の様に構成する本例のガラスパネル用免震装置によれば、上記免震装置3の性能を十分に確保しつつ、この免震装置3を外観上目立たなくでき、しかも、地震が収まった後に、上記各ガラスパネル1、1を元の位置に戻す力を作用させられる。
先ず、上記免震装置3の性能は、前記躯体2に対する上記各ガラスパネル1、1の変位可能量を多くする程良好になる。本例の場合に、この変位可能量は、図9の(A)→(B)に示した、前記シール接着材22の弾性変形に伴う、前記移動ブラケット9に対する上記各ガラスパネル1、1の変位量δ1 と、図9の(B)→(C)に示した、この移動ブラケット9が前記ガイドピン8に沿って変位する事に伴う、この移動ブラケット9の前記支持ブラケット7に対する変位量δ2 との合計(δ1 +δ2 )になる。
【0018】
即ち、本例の構造の場合には、比較的小さな地震で、上記躯体2に対する上記各ガラスパネル1、1の変位量が少ない場合には、各部の変形状態が図9の(B)に示す様になる。この状態では、上記移動ブラケット9が、前記圧縮コイルばね10、10の弾力に基づき、中立位置に保持された状態のまま、上記シール接着材22の弾性変形に基づき、上記躯体2に対して上記各ガラスパネル1、1を変位させる。この状態で、何れかのガラスパネル1の水平方向端縁が上記移動ブラケット9の変位板部19に突き当たる可能性があるが、この場合でも、前記緩衝板23の存在に基づき、当該ガラスパネル1の損傷防止が図られる。
【0019】
これに対して、大きな地震が発生した状態では、上記躯体2に対する上記各ガラスパネル1、1の変位量が多くなり、各部の変形状態が図9の(C)に示す様になる。この状態では、上記移動ブラケット9と上記各ガラスパネル1、1との間のシール接着材22の弾性変形状態が上記図9の(B)に示した比較的小さな地震の場合と同じまま、上記移動ブラケット9が、何れか(図9の右側)の圧縮コイルばね10の弾力に抗して、上記支持ブラケット7に対し変位する。この状態で上記躯体2に対する上記各ガラスパネル1、1の変位可能量は、上述した様に、各部の変位量の合計(δ1 +δ2 )になる。この為、大きな地震の際に上記躯体2に対する上記各ガラスパネル1、1との間に発生する、大きな変位を吸収できる。尚、大きな地震が発生した状態では、前記両固定板部11、11の先端縁と上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部屋内側面との間のシール接着材22aの弾性変形量が多くなるが、この様な状態でも、上記各ガラスパネル1、1が損傷を受ける事はない。これら各ガラスパネル1、1が損傷を受けない限り、上記シール接着材22aが損傷を受ける事は特に問題とはならない(大地震の際の損傷として許容限度内である)。
【0020】
又、前記免震装置3は、図1、2に示す様に、上記各ガラスパネル1、1の水平方向両端縁のうちの上下両端部に設ければ良い。しかも、この免震装置3の構成部材のうちで上記各ガラスパネル1、1の屋外側に露出するのは、上記移動ブラケット9のうちの抑え板部20のみである。従って、図1から明らかな通り、上記免震装置3を外観上目立たなくできて、ガラスパネル壁構造体の意匠設計上の自由度が高くなる。しかも、上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁を非直線状に切断する必要がなく、これら各ガラスパネル1、1の加工処理が面倒になる事もない。
【0021】
この点に就いて、本発明の構造を採用しない場合との効果の違いに就いて、前述の図9に図10〜11を加えて説明する。一般的な従来構造の場合、図10の(A)に示す様に、ガラスパネル1、1の水平方向端縁部を方立28により支持する。地震の際には、図10の(B)に示す様に、これらガラスパネル1、1と方立28とが水平方向に相対変位する。この相対変位は、これら各ガラス1、1の側縁部をこの方立28に結合している、高分子弾性材製のシール材29、29(コーキング材)の弾性変形により許容する。耐震基準では、この様にして行なわれる上記各ガラスパネル1、1と方立28との相対変位を、最大でこれら各ガラスパネル1、1の幅寸法の1/100まで許容する事が求められている。図10に示した構造の場合、上記相対変位の最大量は、この図10の(A)に示した中立状態での、上記各ガラスパネル1、1の側縁と上記方立28を構成する押縁25の脚部26の側面との距離により規制される。そして、この距離を大きくする為には、この押縁25の覆い部27の幅寸法W27を大きくする必要があり、この覆い部27が目立ってしまう。
【0022】
又、上記相対変位の最大量を確保すべく、上記各ガラスパネル1、1の側縁と上記方立28を構成する押縁25の脚部26の側面との距離を大きくすると、仮に免震装置を、ガラスパネル1、1の上下方向の一部にのみ設けたとしても、図11の(A)に示す様に、隣り合う上記各ガラスパネル1、1の側縁同士の間隔Wa が、上記脚部26から外れた部分でも大きくなる。図11の(B)に示す様に、各ガラスパネル1、1の水平方向側縁同士の間隔を、上記脚部26に対向する部分で大きく、この脚部26から外れた部分で小さくすれば、上記押縁25を設けない部分で水平方向に隣り合うガラスパネル1、1同士の間隔Wb を狭くして、ガラスパネル壁構造体の外観意匠を整えられるが、これら各ガラスパネル1、1の加工が面倒になる。この様な面倒が生じる、従来構造を適用した場合に比べて、本例の構造によれば、ガラスパネル1、1の水平方向端縁に面倒な加工を施さずに、水平方向に隣り合うガラスパネル1、1同士の間隔を狭くして、ガラスパネル壁構造体の外観意匠を整える事ができる。
【0023】
更に、本例の構造の場合には、前記移動ブラケット9は、前記両圧縮コイルばね10、10の弾力により前記支持ブラケット7に対し、上記各ガラスパネル1、1は上記各シール接着材22、22aの弾力によりこの支持ブラケット7及び上記移動ブラケット9に対し、それぞれ中立位置に向かう弾力を付与されている。特に、上記両圧縮コイルばね10、10の弾力、及び、上記各ガラスパネル1、1と上記移動ブラケット9との間に設けるシール接着材22の弾力は、耐久性、信頼性を考慮しても、十分に大きくできる。この為、地震が収まった後、上記各ガラスパネル1、1を元の位置に戻す為に十分な力が、これら各ガラスパネル1、1に対し積極的に加わる。この為、地震によりこれら各ガラスパネル1、1同士の位置関係がずれたままになる事がない。
【0024】
尚、図示の例では、上記免震装置3を、上記各ガラスパネル1、1の水平方向端縁部の上下両端部に設けている。但し、ガラスパネル壁構造体の外観意匠に関する、建築主の要求との関係で、この免震装置3を、これら各ガラスパネル1、1の上下方向中間部に設ける事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、免震装置を組み込んだガラスパネル壁構造体の一部を建造物の屋外側から見た正面図。
【図2】同じく縦断側面図。
【図3】同じく横断平面図。
【図4】図2のA部拡大図。
【図5】同B部拡大図。
【図6】図1の拡大C−C断面図。
【図7】同拡大D−D断面図。
【図8】ガイドピン及び圧縮コイルばねを示しており、(A)は組み合わせた状態の平面図、(B)はガイドピンの主部の部分切断平面図、(C)は同じく固定ねじの平面図。
【図9】地震発生時に於ける免震装置の挙動を示す、図6と同様の図。
【図10】従来構造の1例を示す、図9と同様の図。
【図11】この従来構造を適用した場合に生じる面倒を説明する為の、ガラスパネルの部分正面図。
【符号の説明】
【0026】
1 ガラスパネル
2 駆体(鉄骨)
3 免震装置
4 支持部材
5 上枠
6 下枠
7 支持ブラケット
8 ガイドピン
9 移動ブラケット
10 圧縮コイルばね
11 固定板部
12 主部
13 固定ねじ
14 ガイド杆部
15、15a 鍔部
16 ねじ孔
17、17a 円筒面部
18 ねじ杆
19 変位板部
20 抑え板部
21 通孔
22、22a シール接着材
23 緩衝板
24 シール材
25 押縁
26 脚部
27 覆い部
28 方立
29 シール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの端縁同士を近接対向させた状態で同一平面上に配置した複数枚のガラスパネルを躯体に対し、地震に伴う揺れを吸収可能に支持するガラスパネル用免震装置であって、上記各ガラスパネルのうちの隣り合う1対のガラスパネルの端縁に沿って上記躯体に支持された支持部材と、これら両ガラスパネルの配設方向に離隔した1対の固定板部を有し、この支持部材のうちでこれら両ガラスパネルの片側面端縁寄り部分に対向する面に固定された支持ブラケットと、この支持ブラケットの上記両固定板部同士の間に掛け渡されたガイドピンと、このガイドピンに沿って上記両ガラスパネルの配設方向に変位可能とされた状態で、これら両ガラスパネルの互いに対向する端縁同士の間に配置された移動ブラケットと、この移動ブラケットの両側面と上記支持ブラケットを構成する上記両固定板部との間に設けられて、この移動ブラケットを中立位置に付勢する弾性部材とを備え、この移動ブラケットに対し上記両ガラスパネルを、高分子弾性材により接合して成るガラスパネル用免震装置。
【請求項2】
移動ブラケットが、ガイドピンを軸方向の相対変位を可能に挿通する通孔を基端部に有する変位板部と、この変位板部の先端縁で両ガラスパネルの端縁同士の間から支持ブラケットと反対側に突出した部分にその幅方向中間部を結合した抑え板部とから成る断面T字形であり、両固定板部の先端縁と上記両ガラスパネルの片側面端縁寄り部分との間、並びに、上記両ガラスパネルの他側面端縁寄り部分と上記抑え板部とを、それぞれ高分子弾性材により接合した、請求項1に記載したガラスパネル用免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−309022(P2007−309022A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140705(P2006−140705)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000005005)不二サッシ株式会社 (118)
【Fターム(参考)】