説明

ガラス封止パッケージ及び使用済み部材の利用方法

【課題】
使用済み部材に含まれるレアメタルを、再利用可能に保管する。
【解決手段】
溶融状態の第1のガラス素材を第1の容器中に保持し、レアメタルを含有する使用済み部材を第1の容器中の溶融状態の第1のガラス素材表面部に配置し、冷却材で溶融状態の第1のガラス素材を急冷・固化して、使用済み部材と結合した半パッケージとし、溶融状態の第2のガラス素材を第2の容器中に保持し、半パッケージを使用済み部材を下方にして、第2の容器中の溶融状態の第2のガラス素材表面部に配置し、半パッケージの第1のガラス素材と溶融状態の第2のガラス素材とを接しさせ、冷却材で溶融状態の第2のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材を気密に内包するパッケージとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レアメタルを含有するガラス封止パッケージ及び使用済み部材の利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄金属のうち,埋蔵量が少なかったり採取が難しいなどの理由で,生産量や流通量が非常に少ない金属をレアメタルと呼んでいる。図1Aは、31種類のレアメタルをリストした表である。この内、希土類元素は図1Bの表に示す17元素である。
【0003】
レアメタルは,特に情報機器などの電子製品、電気製品(まとめて、電気・電子製品と呼ぶ)に欠かせない金属になっている。例えば、液晶表示パネルの透明電極(インジウム錫酸化物)の材料として、インジウムが用いられる。電気自動車用等の用途で注目されている高機能2次電池にリチウムが用いられる。ネオジウムはハイブリッド自動車の動力モーターやハードディスクの磁性材に, コバルトは携帯電話の充電池の材料に使われている。鉄が「産業のコメ」といわれるのに対して,レアメタルは「産業のビタミン」とも呼ばれる。
【0004】
レアメタルはそもそも供給量が限られるため、需要が増加すると国際市場価格が上がる。また、新興国の台頭で, 自動車や携帯電話などの生産量が急速に増えて需要がひっ迫し、入手難、価格高騰の可能性がある。 中国やロシア, アフリカといった資源産出国が, レアメタルの生産や輸出を制限したり, 自国内での需要を優先する政策を取り始めている。
【0005】
こうした国際情勢の中、産業競争力を維持する狙いから, レアメタルの安定供給確保が重要である。電気・電子製品などレアメタルを含む使用済み部材からレアメタルをリサイクルすることも、レアメタルの安定供給に寄与する。使用済み部材のリサイクルは, レアメタルの価格を安定させるほか,鉱山開発による環境破壊を抑える効果もある。
【0006】
特開2009−242877号は、液晶パネルのガラスに亀裂を発生させ、酸溶液に浸漬し、金属を浸出する方法を提案している。
【0007】
使用済み部材からレアメタルを回収しても、リサイクルコストがレアメタルの市場価格を上回れば、レアメタルのリサイクルは産業的に成り立ちにくい。レアメタルの含有状況が明らかでないため、回収されず、廃棄される部材も多い。しかし、レアメタルを含有する使用済み電気・電子製品ないし部材は資源であり、リサイクルコストが市場価格を下回れば、これらの使用済み電気・電子製品ないし部材に産業利用性が生じる。
【0008】
現在、「都市鉱山」といった構想が提案されており、レアメタルが含有されている部材を保管しておき、必要になった時点でそれを活用することが考えられている。日本国内の製品・部品に含有されているレアメタルの割合が極めて大きく、これが実現されれば、レアメタルの安定供給の解決策の一つになる。
【0009】
レアメタルが含有されている部材をどこに保管するか、どのように保管するか、使用する時にはどのようにレアメタルを取り出すのかについて、研究はあまり進んでいない。現段階で特許、実用新案に対して調査を行ったが、該当するものは見出せなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−242877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
レアメタルが含有されている使用済み部材を保管し、環境に与える影響を防止しつつ、必要な場合には、使用済み部材に含有されているレアメタルを回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの観点によれば、
溶融状態の第1のガラス素材を第1の容器中に保持し、
レアメタルを含有する使用済み部材を前記第1の容器中の溶融状態の第1のガラス素材表面部に配置し、
冷却材で前記溶融状態の第1のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材と結合した半パッケージとし、
溶融状態の第2のガラス素材を第2の容器中に保持し、
前記半パッケージを前記使用済み部材を下方にして、前記第2の容器中の溶融状態の第2のガラス素材表面部に配置し、前記半パッケージの第1のガラス素材と前記溶融状態の第2のガラス素材とを接しさせ、
冷却材で前記溶融状態の第2のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材を気密に内包するパッケージとする、
使用済み部材の利用方法
が提供される。
【発明の効果】
【0013】
使用済み部材を、安全、気密に封止したパッケージ状態で保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A,1Bは、レアメタルの31元素の表1、及び希土類の17元素の表2である。
【図2】実施例によるレアメタルが含有されている使用済み部材の利用方法(保管、再生方法)のフローチャートである。
【図3】図3A〜3Iは、実施例において、レアメタルが含有されている使用済み部材をパッケージ化する方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図2を参照し、実施例によるレアメタルを含有する部材の利用方法を説明する。まず、工程S1において、レアメタルを含有する、使用済みの製品、部品などの部材、例えば半導体集積回路装置を搭載したプリント基板、を収集する。
【0016】
工程S2において、レアメタルを含有する部材のガラスパッケージ化を行う。ガラスパッケージは、例えば、野ざらしや地中、水中に埋めた状態で保管しても環境に悪影響を与えないための形態である。環境に悪影響を与えないため、気体、液体に対して遮蔽効果を有するパッケージが好ましい。ガラスパッケージはレアメタルを含有する部材を気密に封じ、水などに接しても溶け出さない。
【0017】
図3A〜3Iは、レアメタルを含有する部材をガラスパッケージ化する主要工程を示す概略断面図である。
【0018】
図3Aは、ガラス溶液を収容するための凹型炭素成型器を示す。炭素成型器1は、炭素で形成される。矩形断面の凹部を有するように図示したが、固化したガラスを離型させ易いように、上広がりの断面で、ガラスパッケージの破損を抑制するために角部は丸め込まれた形状とすることが好ましい。カーボンヒータ等の加熱手段と共に、窒素などの不活性雰囲気、又は真空雰囲気を形成できるパッケージ化室内に収容する。例えば窒素雰囲気中で、炭素成型器1を予め300℃〜800℃に加熱しておく。
【0019】
図3Bに示すように、ガラス素材2を1200℃〜1500℃に加熱して溶融させ、炭素成型器1に流し込む。ガラス素材としては、SiO−CaO−NaOもしくはSiO−Al−CaOを主成分とし、紫外線対策や、ガラスパッケージの安定性を向上させるために、KO,MgO,TiO,Feを1.0mol%以上添加する。ここで、SiO−CaO−NaOもしくはSiO−Al−CaO組成のガラスカレットを10wt%以上混入することで、低温・省エネルギでガラスを溶融することが可能になる。
【0020】
図3Cに示すように、レアメタルを含有する使用済み部材3、例えば半導体集積回路装置等を搭載したプリント基板等、を、溶融ガラス2の表面部に配置する。使用済み部材3は、溶融ガラス2中に一部沈み込む。
【0021】
図3Dに示すように、使用済み部材3を配置した後、例えば5秒以内に、10℃〜25℃の冷水4を部材3及び溶融ガラス2上に噴射し、溶融ガラスを急冷し、ガラス状態で固化させる。使用済み部材の一方の面がガラス素材で風刺された半パッケージが得られる。なお、徐冷すると、溶融ガラスが結晶化し、気密封止能力を劣化させる可能性があるため、急冷することが好ましい。
【0022】
図3Eに示すように、使用済み部材3の一方の面をガラス素材2で封止した半パッケージ5を炭素成型器1から取り出す。使用済み部材3の片面のガラスパッケージ化が終了する。その後、使用済み部材3の残る他面のパッケージ化を行なう。
【0023】
図3Fに示すように、図3A,3B同様の工程により、予め300℃〜800℃に過熱した凹型炭素成型器11に、1200℃〜1500℃で溶融させた溶融ガラス素材を流し込み、溶融ガラス12を形成する。なお、凹型炭素成型器11は、炭素成型器1同様の構成である。炭素成型器1より若干大きな凹部を有する方が後の工程を滑らかに進行させやすい。
【0024】
図3Gに示すように、図3Eで得た半パッケージ5を裏返し、部材3の露出部が溶融ガラス12内に入るように配置し、ガラス2が溶融ガラス12に接するようにする。
【0025】
図3Hに示すように、半パッケージ5を溶融ガラス12表面部に配置した後、例えば5秒以内に、10℃〜25℃の冷水14をガラス2及び溶融ガラス12上に噴射し、溶融ガラスを急冷し、ガラス状態で固化させる。
【0026】
図3Iに示すように、炭素成型器11からガラスパッケージ15を取り出す。使用済み部材3を一方の面から固化したガラス素材2が覆い、使用済み部材3の他方の面から固化したガラス素材12が覆い、使用済み部材3が気密に封じられたパッケージ15が得られる。なお、必要に応じて、歪みを取り除くためのアニールを行なう。
【0027】
図2のフローチャートに戻る。工程S2のガラスパッケージ化が上記のように行われる。
【0028】
工程S3において、ガラスパッケージ化した使用済み部材を埋立地などで保管する。長期に保管する可能性があるので、保管費用はなるべく低くする必要がある。保管場所に野ざらし状態で保管してもよい。環境に与える影響、環境から受ける影響を低減するためには、地中、ないし水中に埋めて保管する方が好ましい。このような形態でリサイクル時まで保管する。都市鉱山が実現される。ガラスパッケージは、保管時の安全性や復元性に優れている。コスト的にも維持が容易になる。
【0029】
工程S4において、リサイクルする時には、地中に埋めた場合は掘り出して、野ざらし、又は水中保管の場合は取り出して、水などで洗浄し、弗酸に浸漬してガラスパッケージを溶解する。パッケージから取り出された部材を王水などに浸漬し、レアメタルを溶解する。
【0030】
工程S5において、目的とする金属を含む材料を沈殿化させ、取り出す。必要な処理を行い、目的とするレアメタルを復元し、活用する。
【0031】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、溶融状態のガラスを収納する容器は炭素製に限らない。使用温度に耐えるステンレス等の金属、セラミックスなどを用いることもできよう。カーボンヒータもメタルヒータ、ランプヒータ等に置換すれば、雰囲気を不活性ガスにしなくてもよいであろう。溶融したガラス素材を冷却する冷却材は、水に限らない。熱容量の大きなグリセリン等を用いることも可能である。
【0032】
以下、本発明の特徴を付記する。
(付記1)
レアメタルを含有する使用済み部材を、一方から第1のガラス素材が覆い、他方から第2のガラス素材が覆い、気密に封止したガラス封止パッケージ。
(付記2)
前記第1及び第2のガラス素材が、SiO−CaO−NaOもしくはSiO−Al−CaOを主成分とし、KO,MgO,TiO,Feの少なくとも1種を1.0mol%以上添加した材料である付記1記載のガラス封止パッケージ。
(付記3)
溶融状態の第1のガラス素材を第1の容器中に保持し、
レアメタルを含有する使用済み部材を前記第1の容器中の溶融状態の第1のガラス素材表面部に配置し、
冷却材で前記溶融状態の第1のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材と結合した半パッケージとし、
溶融状態の第2のガラス素材を第2の容器中に保持し、
前記半パッケージを前記使用済み部材を下方にして、前記第2の容器中の溶融状態の第2のガラス素材表面部に配置し、前記半パッケージの第1のガラス素材と前記溶融状態の第2のガラス素材とを接しさせ、
冷却材で前記溶融状態の第2のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材を気密に内包するパッケージとする、
使用済み部材の利用方法。
(付記4)
前記パッケージを取り出し、弗酸で前記第1及び第2のガラス素材を溶解させ、
前記使用済み部材のレアメタルを王水に溶解させ、
レアメタルを取り出す。
付記3記載の使用済み部材の利用方法。
(付記5)
前記第1及び第2のガラス素材が、SiO−CaO−NaOもしくはSiO−Al−CaOを主成分とし、KO,MgO,TiO,Feの少なくとも1種を1.0mol%以上添加した材料である付記3又は4記載の使用済み部材の利用方法。
(付記6)
前記溶融状態の第1又は第2のガラス素材を第1又は第2の容器中に保持する際、炭素成型器を300℃〜800℃に加熱し、1200℃〜1500℃に加熱したガラス素材を前記炭素成型器に流し込む、付記3〜5のいずれか1項記載の使用済み部材の利用方法。
(付記7)
前記溶融状態の第1又は第2のガラス素材は、カレットを10wt%以上混入して作成する付記6記載の使用済み部材の利用方法。
(付記8)
前記冷却材は、室温以下の水である付記3〜7のいずれか1項記載の使用済み部材の利用方法。
【符号の説明】
【0033】
1,11 炭素成型器、
2,12 (第1、第2の)ガラス素材、
3 使用済み部材、
4,14 冷却材(水)、
5 半パッケージ、
15 パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レアメタルを含有する使用済み部材を、一方から第1のガラス素材が覆い、他方から第2のガラス素材が覆い、気密に封止したガラス封止パッケージ。
【請求項2】
溶融状態の第1のガラス素材を第1の容器中に保持し、
レアメタルを含有する使用済み部材を前記第1の容器中の溶融状態の第1のガラス素材表面部に配置し、
冷却材で前記溶融状態の第1のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材と結合した半パッケージとし、
溶融状態の第2のガラス素材を第2の容器中に保持し、
前記半パッケージを前記使用済み部材を下方にして、前記第2の容器中の溶融状態の第2のガラス素材表面部に配置し、前記半パッケージの第1のガラス素材と前記溶融状態の第2のガラス素材とを接しさせ、
冷却材で前記溶融状態の第2のガラス素材を急冷・固化して、前記使用済み部材を気密に内包するパッケージとする、
使用済み部材の利用方法。
【請求項3】
前記パッケージを取り出し、弗酸で前記第1及び第2のガラス素材を溶解させ、
前記使用済み部材のレアメタルを王水に溶解させ、
レアメタルを取り出す。
請求項2記載の使用済み部材の利用方法。
【請求項4】
前記第1及び第2のガラス素材が、SiO−CaO−NaOもしくはSiO−Al−CaOを主成分とし、KO,MgO,TiO,Feの少なくとも1種を1.0mol%以上添加した材料である請求項2又は3記載の使用済み部材の利用方法。
【請求項5】
前記溶融状態の第1又は第2のガラス素材を第1又は第2の容器中に保持する際、炭素成型器を300℃〜800℃に加熱し、1200℃〜1500℃に加熱したガラス素材を前記炭素成型器に流し込む、請求項2〜4のいずれか1項記載の使用済み部材の利用方法。
【請求項6】
前記溶融状態の第1又は第2のガラス素材は、カレットを10wt%以上混入して作成する請求項5記載の使用済み部材の利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−40471(P2012−40471A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181587(P2010−181587)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】