説明

ガラス支持枠体

【課題】 搬送用トレイ等のガラス搬送装置を使用してガラス基板を搬送する際に、ガラス基板の跳ね上がりを抑えるとともに、衝撃や振動が生じた場合であっても、ガラス基板の周端縁以外の表面に僅かな傷も生じさせないガラス搬送装置を提供すること。
【解決手段】 搬送装置1のガラス基板14の周端縁14a以外の上下面は開口1aにあるので、ガラス基板14の周縁部14a以外のほぼ全面が無接触状態で保持されていることになり無傷の状態で搬送でき、かつ、ガラス基板14の自重により中央部14bが下方に湾曲しても、湾曲フレーム4,5でガラス基板14の湾曲を許容できるようにしてあるので、周縁部14a全体でガラス基板14の荷重を支えることができ、しかも外力が作用しても常にガラス基板14が湾曲した状態に戻る復元力が作用し、跳ね上がりが抑えられて安定した搬送が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中央部が上下方向に貫通した開口を有し、周囲がフレームによって囲まれたロ形の支持枠体上に一枚のガラス基板の周縁部を載置して搬送するガラス支持枠体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶基板等に用いるためのガラス基板、特に大型で極薄のガラス基板を搬送するガラス支持枠体には、搬送用トレイが用いられており、この搬送用トレイは、主に平面形状が矩形の底板と、左右の側縁部と、前後の側縁部と、から構成されている。底部の上面には緩衝性のあるプラスチック発砲体等で形成された突起部が複数設けられており、これらの突起部で搬送トレイに収納される大型ガラス基板の底面が支持されている。
【0003】
左右の側縁部には、それぞれ押さえ板が内方に折れ曲がるように蝶番で取り付けてあり、押さえ板を下方に向けて閉じると大型ガラス基板が軽く底板に固定される。この搬送用トレイは左右方向から中央部に向かって緩やかな凸状または凹状に湾曲されており、この大型ガラス基板を載置させると搬送用トレイの凸状面または凹状面に沿って湾曲され載置される。
【0004】
このようにして、ガラス基板を収納させた搬送用トレイを直下に位置する搬送トレイの前後左右の側縁部に重ね合わせることで、上下方向に多段で搬送用トレイが積層され、搬送用トレイの搬送中に振動や衝撃が生じても、大型ガラス基板が搬送用トレイの凸状または凹状に沿って載置されるので、水平方向に戻ろうとする力に対して反発力が働くため、大型ガラス基板の跳ね上がりは発生しにくくなっている。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−149149号公報(段落0015〜段落0023、図3,図4,図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、搬送用トレイに載置された大型ガラス基板の上部は左右の側端縁に設けられた押さえ板で軽く固定させている程度なので、多段に積層された搬送用トレイの搬送中に大きな振動や衝撃が生じた場合には、底板に設けられた複数の緩衝性のある突起部で殆どの衝撃が吸収されるものの、突起部に接する当接支持面に細かな傷を生じさせる恐れがあった。特に、ガラス基板の表面に僅かでも傷が生じてしまうと、新たなガラス基板を用意する必要があり手間とコストが掛かっていた。
【0007】
さらに、近年ではガラス基板のさらなる薄型の大型化[例えば、厚さ0.7mmで、縦(1500〜2200mm)×横(1800〜2600mm)であるG6,G7サイズ]の実用化がされ、さらに次世代規格であるG8サイズ[厚さ0.7mmで、縦(2380mm)×横(2600mm)]の大型ガラス基板の実用化に向けての目処がついている。このようなことから、薄型かつ大型化するガラス基板を従来の搬送用トレイの凹状に沿わせて、凹状に湾曲させ載置させただけでは、ガラス基板の跳ね上がりを確実に防止して、傷等の損傷を未然に防止し保護することは困難になってきている。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、搬送用トレイ等のガラス支持枠体を使用してガラス基板を搬送する際に、ガラス基板の跳ね上がりを抑えるとともに、ガラス支持枠体に衝撃や振動が生じた場合であっても、ガラス基板の周端縁以外の表面に僅かな傷も生じさせないガラス支持枠体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のガラス支持枠体は、中央部が上下方向に貫通した開口を有し、周囲がフレームによって囲まれたロ形の支持枠体上に一枚のガラス基板の周縁部を載置して搬送するガラス搬送装置であって、前記支持枠体の対向する2辺を真直フレームで、他の対向する2辺がそれぞれ両側部から中央に向けて下方に緩やかに屈曲可能な湾曲フレームで構成し、該湾曲フレームの屈曲量は所定以上にならないように制限されていることを特徴としている。
この特徴によれば、ガラス基板の周縁部のみが支持枠体に触れ、周縁部以外の上下面は無接触状態で保持しているので、ガラス基板は周縁部を除いてのほぼ全表面を無傷の状態で搬送でき、かつ、ガラス基板の自重により中央部が下方に湾曲しても、湾曲フレームでガラス基板の湾曲を許容できるようにしてあるので、ガラス基板の周縁部全体で荷重を支えることができ、しかもガラス基板に外力が作用しても常にガラス基板が湾曲した状態に戻る復元力が作用し、ガラス基板の跳ね上がりが抑えられてガラス基板を安定して保持、搬送させることができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載のガラス支持枠体は、請求項1に記載のガラス支持枠体であって、前記湾曲フレームは複数のフレーム駒から成り、各フレーム駒は連結ピンにより相互に回動自在に連結されるとともに、該フレーム駒の相互の回動移動量が一方のフレーム駒に設けた係止ピンと、他方のフレーム駒に設けた長孔により制限されていることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のフレーム駒の相互の回動量を所定量に制限した状態で回動連結することにより、ガラス基板を所定の湾曲度をもって支持させることができる。
【0011】
本発明の請求項3に記載のガラス支持枠体は、請求項1または2に記載のガラス支持枠体であって、前記支持枠体の少なくともガラス基板載置面に伸縮可能な緩衝カバーが設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、伸縮可能な緩衝カバーにより、湾曲フレームが屈曲しても対応可能であり、搬送時の支持枠体からガラス基板に作用する振動や衝撃を抑えることができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載のガラス支持枠体は、請求項1乃至3のいずれかに記載のガラス支持枠体であって、一枚のガラス基板の周縁部を載置した支持枠体の上に、同一形状の支持枠体を一つあるいは1枚ずつガラス基板を載置した複数の支持枠体を多層に積層し、ガラス基板の移動を上下の支持枠体間で拘束したことを特徴としている。
この特徴によれば、ガラス基板の移動を上下の支持枠体で拘束するので、ガラス基板移送中もガラス基板を安定して搬送できる。
【0013】
本発明の請求項5に記載のガラス支持枠体は、請求項4に記載のガラス支持枠体であって、前記ガラス基板を載置した支持枠体の上面と、該支持枠体の上に載置した支持枠体の下面に緩衝カバーを設けてガラス基板の周縁部を挟持したことを特徴としている。
この特徴によれば、ガラス基板の周縁部を上下に配置した緩衝カバーで挟持するので、支持枠体に振動や衝撃が加わってもガラス基板に及ぼす振動を確実に抑えることができる。
【0014】
本発明の請求項6に記載のガラス支持枠体は、請求項5に記載のガラス支持枠体であって、隣接した上下の前記支持枠体間の相互移動はそれぞれの支持枠体に設けた前記緩衝カバーの凹凸嵌合により阻止されていることを特徴としている。
この特徴によれば、上下の支持枠体に設けた緩衝カバーが凹凸嵌合によりその相互の移動が阻止されているので、支持枠体の相互の移動が確実に規制できる。
【0015】
本発明の請求項7に記載のガラス支持枠体は、請求項4または5に記載のガラス支持枠体であって、隣接した上下の前記支持枠体間の相互移動は、それぞれの支持枠体の凹凸嵌合により阻止されていることを特徴としている。
この特徴によれば、上下の支持枠体が凹凸嵌合によりその相互の移動が阻止されているので、多層に支持枠体を積層しても、安定してガラス基板を搬送することができる。
【0016】
本発明の請求項8に記載のガラス支持枠体は、請求項1乃至7のいずれかに記載のガラス支持枠体であって、前記真直フレームに手掛け部を設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、真直フレームに手掛け部が設けられているので、人手による支持枠体の移動、運搬に便利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、ガラス支持枠体にガラス基板を載置する状態を示す上方側から見下ろした斜視図であり、図2は、ガラス支持枠体の積層状態を示す下方側から見上げた斜視図であり、図3は、ガラス支持枠体の分解組立斜視図であり、図4(a)は、ガラス支持枠体の湾曲フレームを構成するフレーム駒の平面図であり、図4(b)は、フレーム駒の正面図であり、図4(c)は、2本のフレーム駒のボルト連結による内部構造を示す要部拡大断面図であり、図4(d)は、ボルト連結後のフレーム駒の両端部を示す要部拡大正面図であり、図5(a)と図5(b)は、ガラス基板をガラス支持枠体に載置した載置時と、載置後における湾曲フレームの湾曲状態を示す比較対照図であり、図6(a)は、図2のA−A線の断面図であり、図6(b)は、図2のB−B線の断面図である。
【0019】
図1に示されるように、薄型かつ大型のガラス基板14(本実施例では厚さ0.7mmで縦2380mm×横2600mmのG8規格サイズ)が複数の吸盤体からなる吸着搬送体25に吸着され、図示しないフォークリフト等でガラス基板14の中央部14bに歪みが生じないように持ち上げられており、下方に位置するガラス支持枠体(以下、支持枠体)1に載置可能になっている。
【0020】
本発明は、ディスプレイの液晶パネル・PDPパネル・無機および有機ELパネル等に使用される薄型かつ大型のガラス基板を搬送する際にこの支持枠体1に載置して搬送するガラス支持枠体に係わるものであり、以下、本実施例の説明において、支持枠体1の正面側を前方をとし背面側を後方とし、支持枠体1の左側を左方とし右側を右方として説明する。
【0021】
支持枠体1は、一対の短尺の左方の真直フレーム2および右方の真直フレーム3と、この両端部から中央に向けて下方に緩やかに湾曲された一対の長尺の前方の湾曲フレーム4および後方の湾曲フレーム5からなる横長の矩形枠とからなり、中央位置に開口1aが形成された上面視ロ形の枠体で構成されている。
【0022】
左右の真直フレーム2,3にはそれぞれ上下に2分割された上枠カバー体10aと下枠カバー体10dからなる緩衝性の高い衝撃吸収材等の緩衝材から構成された緩衝カバー10で外周面が覆われており、これら上枠カバー体10aの上面は段付き形状となっており、ガラス基板14の左右の周縁部14aが載置される水平な載置面10cと、この載置面10cの外側の係合凸条10bが形成されている。
【0023】
同様にして、前後の湾曲フレーム4,5にも、それぞれ上下に2分割された上枠カバー体11aと下枠カバー体11dからなる緩衝性の高い衝撃吸収材等の緩衝材から構成された伸縮可能な緩衝カバー11で外周面が覆われており、これら上枠カバー体11aの上面は段付き形状となっており、ガラス基板14の前後の周縁部14a下面が載置される水平な載置面11cと、この載置面11cの外側の係合凸条11bが形成されている。
【0024】
これら真直フレーム2,3の矩形枠には、中空アルミニウム等が用いられ軽量化が図られている。強度強化の目的でこの中空アルミニウムの中に金属パイプを挿入して使用することも可能である。また、左右の真直フレーム2,3の外周面には、所定の間隔で前後位置に外方に向けて突設された上面視コ字状の手掛部13が設けられ、この手掛部13を利用して支持枠体1を搬送可能になっている。さらに、左右の上枠カバー体10aの載置面10cの両端部近傍には、後述する突状体12と嵌合可能な嵌合凹部12bが形成されている。
【0025】
図2に示されるように左右の下枠カバー10d下面には、ガラス基板14の左右の周縁部14a上面を保持する水平な保持面10fと、中央の長さ方向に沿って延在する係合凸条10eが形成されている。同様に前後の下枠カバー11dの下面にも、ガラス基板14の前後の周縁部14a上面を保持する水平な保持面11fと、中央の長さ方向に沿って延在する係合凸条11eが形成されている。
【0026】
左右の下枠カバー体10dの保持面10fの両端部近傍には、下方に向けて嵌合凸部12aが突設された突状体12が形成され、後述において詳しく説明するが下方に位置する他の支持枠体1の嵌合凹部12b(図1参照)に嵌合可能になっており、複数の支持枠体1を上下方向に積層させて、同時に複数のガラス基板14を搬送可能になっている。
【0027】
そこで、図3に示されるように支持枠体1の構造について説明すると、前後の湾曲フレーム4,5は複数(本実施例では5本)のフレーム駒6から構成されている。このフレーム駒6は軽量なプラスチック樹脂材から成型されている。これらフレーム駒6は左右の長さ方向に並べられ、互いに隣合うフレーム駒6同士の端部を2本のピンで軸支して連結されており、この端部の上部のピンには連結ピン21、下部のピンには係止ピン22が用いられている。フレーム駒6と連結ピン21および係止ピン22との連結における内部構造については後述する。
【0028】
前後の湾曲フレーム4,5と左右の真直フレーム2,3の連結には、プラスチック樹脂材から成型されたコーナ枠材9が用いられており、湾曲フレーム4,5と真直フレーム2,3の一端部をコーナ枠材9に係合させ、外側より上下2本の連結ボルト23で両フレームが強固に連結されている。
【0029】
このように、左右の対向する2辺を真直フレーム2,3で、前後の対向する2辺を複数のフレーム駒6からなる多節の湾曲フレーム4,5で構成したことで、湾曲フレーム4,5が左右の両端部から中央に向けて緩やかに屈曲可能なフレーム構成となっている。
【0030】
次いで、フレーム駒6について具体的に説明すると、図4(a)に示されるようにフレーム駒6の左側の第1連結端部7は上面視逆E字のフォーク形状になっており、前後に貫通するピン孔7aがそれぞれの片に形成されている。右側の第2連結端部8には上面視2股状のフォーク形状となっており、それぞれの片に前後に貫通するピン孔8aが形成されている。これらピン孔7a,8aの直下位置には、図4(b)に示されるようにピン孔7aの下部位置にはピン孔7bが形成され、ピン孔8aの下部位置にはこれよりも若干大きな長孔8bが形成されている。
【0031】
そこで、2本のフレーム駒6の連結について図4(c)により説明する。一方のフレーム駒6の第1連結端部7と、他方のフレーム駒6’の第2連結端部8をピン孔7aとピン孔8aの重なる位置まで嵌め合わせ、これらピン孔7a,8aに外方側より内方に向けて連結ピン21を貫通させていく。そして予め内方側のピン孔7aの端部に形成された螺合孔7cに連結ピン21の先端部を螺合させることで、両フレーム駒6,6’は連結ピン21を中心として相互に回動できる連結が作業が完了する。
【0032】
図4(d)に示されるようにピン孔7a,8aの下部に位置するピン孔7b,8bには連結ピン21と同形状の係止ピン22が用いられており、しかも、ピン孔8bの形状は前述での説明のとおり若干横長に径が拡大した長孔8bであるため、係止ピン22が上部に位置する連結ピン21の中心軸に対して左右方向に所定角度(θ)を回動可能なスペースが形成されている。つまり、各フレーム駒6は連結ピン21により相互に回動自在に連結されるとともに、これらフレーム駒6の相互の回動移動量が一方のフレーム駒6に設けた係止ピン22と、他方のフレーム駒6’に設けた長孔8bにより制限されている。
【0033】
このようにして図5(a)に示されるように、5本のフレーム駒6の連結により湾曲フレーム4,5が構成されており、ガラス基板14の載置前では左右直線の水平状態となっている。そこで、ガラス基板14が下方に向けて矢印に示されるように支持枠体1に載置されると、図5(b)に示されるように、ガラス基板14の中央部14bに自重が集中し撓もうとする。このとき各フレーム駒6の第2連結端部8に形成された長孔8bと係止ピン22の関係により、ガラス基板14の自重によって上部の連結ピン21を軸としてフレーム駒6が相互に回動され、ガラス基板14の撓みに沿って湾曲フレーム4,5が下方に向けて湾曲される。
【0034】
そして、係止ピン22の回動移動量が長孔8bの左右幅で制限されることから、所定の湾曲状態で湾曲フレーム4,5の湾曲が停止され、ガラス基板14が所定の湾曲度をもって支持される。このように、ガラス基板14の自重により中央部14bが下方に湾曲しても、湾曲フレーム4,5でガラス基板14の湾曲を許容できるようにしてあるので、ガラス基板14の周縁部14a全体で荷重を支えることができる。
【0035】
しかもガラス基板14に外力が作用しても常にガラス基板14が湾曲した状態に戻る復元力が作用し、ガラス基板14の跳ね上がりが抑えられるので、支持枠体1でガラス基板14を安定して保持、搬送させることができる。
【0036】
次に複数の支持枠体1およびガラス基板14の積層させる手順について説明する。図6(a)に示されるように、ガラス基板14が載置された直下に位置する支持枠体1に、新たな支持枠体1を矢印に示されるように上方より下方に向けて積層させていく。すると、直下の真直フレーム2,3に上下方向に貫通して設けられた嵌合凹部12b内に、新たに積層される支持枠体1の嵌合凸部12aが下方に向けて案内され、正しい積層位置に嵌入されていく。
【0037】
そして、直下の支持枠体1の嵌合凹部12bと新たな支持枠体1の嵌合凸部12aが互いに嵌合されると、上下の支持枠体1,1の相互移動が確実に規制され、直下の係合凸条10bと、新たな支持枠体1の係合凸条10eが相手支持枠体側の凹部に嵌合され位置固定されるとともに、直下に位置するガラス基板14の周縁部14aの上下面が上方の保持面10fと直下の載置面10cに挟持され安定した状態で載置される。
【0038】
しかも、これら上下に隣接する下枠カバー体10dおよび上枠カバー体10aは緩衝材で構成されているので、外部からの各支持枠体1に伝達される振動や衝撃も、緩衝材によって吸収され、特に多段に積層された支持枠体1の搬送時においては有効である。また真直フレーム2,3には手掛部13が設けられているので、人手による移動や運搬に便利である。
【0039】
一方、図6(b)に示されるように、前後の湾曲フレーム4,5も同様にして、直下の支持枠体1に新たな支持枠体1が積層されたことで、直下の係合凸条11bと、新たな支持枠体1の係合凸条11eが相手支持枠体側の凹部に嵌合され位置固定されるとともに、直下に位置するガラス基板14の周縁部14aの上下面が上方の保持面11fと直下の載置面11cに挟持され安定した状態で載置される。このように、緩衝カバー10,11に形成される係合凸条10b,11bおよび係合凸条10e,11eの凹凸嵌合により、ガラス基板の移動を阻止することができる。なお、この緩衝カバー10,11による凹凸嵌合は、突状体12を設けない場合において、支持枠体全体の相互の移動規制の機能を有している。
【0040】
このようにして、ガラス基板14の周端縁14a下面を真直フレーム2,3および湾曲フレーム4,5からなる支持枠体に支持させた状態で、新たな同一形状の支持枠体1を直下の支持枠体1に積層させてガラス基板の移動を拘束したり、あるいは、ガラス基板を載置した新たな支持枠体1を多層に積層することもできる。そして、ガラス基板14全体が前述の図2に示されるように、湾曲フレーム4,5に沿って、左右方向から中央部に向かって緩やかに凹状で湾曲されることになり、水平方向に戻ろうとする力に対して反発力が働くため、ガラス基板14の跳ね上がりが発生しにくい構造となる。また、緩衝カバー10,11は伸縮可能な構成により、湾曲フレーム4,5が屈曲しても対応可能であり、搬送時のガラス基板14に作用する振動や衝撃も抑えられる。
【0041】
以上の説明により実施例では、図6(a)(b)に示されるように、支持枠体1を積層状態においても、ガラス基板14の周端縁14a以外の上下面は開口1aにあるので、ガラス基板14の周縁部14a以外のほぼ全面が無接触状態で保持されていることになり無傷の状態で搬送でき、支持枠体1を使用してガラス基板14が搬送される際に、支持枠体1に衝撃や振動が生じた場合であっても、ガラス基板14の周端縁以外の表面に傷が付く恐れがなく安定して搬送できる。
【0042】
なお、保持面10f,11fのガラス基板14への当接における押圧力については、あくまでガラス基板14を載置面10c,11cに保持させる程度のものであって、保持面10f,11fと載置面10c,11cでガラス基板14の自重が支持されるものではなく、新たに積層される支持枠体1の自重は直下に位置する支持枠体1によって確実に支持されているので、多段に支持枠体1が積層されても、多段に設けられたガラス基板14に何ら支持枠体自身の重量が掛からない構成になっている。
【0043】
また、特に図示しないが、多段に積層された各支持枠体1の緩衝カバー10,11および手掛部13には、結露防止材が含まれる塗膜が形成されており、この結露防止材によって支持枠体1の外周面には結露により水分が付着されることがないので、支持枠体1の外周面および手掛部13側から支持枠体1の内部に水分が入り込むことが防止されている。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれ、例えば上記実施例では、複数のフレーム駒6を用い、相互のフレーム駒6の回動移動量を制限して湾曲フレーム4,5を湾曲可能にしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも湾曲フレーム4,5の中央位置から緩やかに下方に湾曲させ、かつ所定の湾曲で回動移動量を規制可能な構成であれば他の構成、例えばベルトのようなものであっても良い。
【0045】
また、上記実施例では、上下に積層される支持枠体1の相互の移動は、真直フレームに設けた突条体12により確実に規制することができるので、緩衝カバー10,11による凹凸嵌合は特に必要ないが、突条体12を設けない場合には、緩衝カバー10,11によに、上下に積層される支持枠体1の相互の移動が確実に規制されることから設けることが好ましい。
【0046】
さらに、支持枠体の形状を本実施例では横長の矩形枠としたが、特にこれに限定されるものではなく、ガラス基板の形状に応じた適宜の枠形状にすることは言うまでもない。そしてガラス基板1枚だけ搬送する場合には、支持枠体1の上に載せるだけで、運搬、搬送可能であるが、ガラス基板の移動を確実に抑えるために支持枠体を上に重ねて使用する方がより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例におけるガラス支持枠体にガラス基板を載置する状態を示す上方側から見下ろした斜視図である。
【図2】ガラス支持枠体の積層状態を示す下方側から見上げた斜視図である。
【図3】ガラス支持枠体の分解組立斜視図である。
【図4】(a)は、ガラス支持枠体の湾曲フレームを構成するフレーム駒の平面図であり、(b)は、フレーム駒の正面図であり、(c)は、2本のフレーム駒のボルト連結による内部構造を示す要部拡大断面図であり、(d)は、ボルト連結後のフレーム駒の両端部を示す要部拡大正面図である。
【図5】(a)と(b)は、ガラス基板をガラス支持枠体に載置した載置時と、載置後における湾曲フレームの湾曲状態を示す比較対照図である。
【図6】(a)は、図2のA−A線の断面図であり、(b)は、図2のB−B線の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 支持枠体(ガラス支持枠体)
1a 開口
2 左方の真直フレーム(支持枠体の一部)
2a 外周面
3 右方の真直フレーム(支持枠体の一部)
3a 外周面
4 前方の湾曲フレーム(湾曲可能な支持枠体の一部)
5 後方の湾曲フレーム(湾曲可能な支持枠体の一部)
6 一方のフレーム駒
6’ 他方のフレーム駒
7 第1連結端部
7a ピン孔
7b ピン孔
7c 螺合孔
8 第2連結端部
8a ピン孔
8b 長孔
9 コーナ枠材
10 緩衝カバー
10a 上枠カバー体
10b 係合凸条
10c 載置面
10d 下枠カバー体
10e 係合凸条
10f 保持面
11 緩衝カバー
11a 上枠カバー体
11b 係合凸条
11c 載置面
11d 下枠カバー体
11e 係合凸条
11f 保持面
12 突状体
12a 嵌合凸部
12b 嵌合凹部
13 手掛け部
14 ガラス基板
14a 周縁部
14b 中央部
15 支持枠体
21 連結ピン
22 係止ピン
23 連結ボルト
25 吸着搬送体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部が上下方向に貫通した開口を有し、周囲がフレームによって囲まれたロ形の支持枠体上に一枚のガラス基板の周縁部を載置して搬送するガラス搬送装置であって、前記支持枠体の対向する2辺を真直フレームで、他の対向する2辺がそれぞれ両側部から中央に向けて下方に緩やかに屈曲可能な湾曲フレームで構成し、該湾曲フレームの屈曲量は所定以上にならないように制限されていることを特徴とするガラス搬送装置。
【請求項2】
前記湾曲フレームは複数のフレーム駒から成り、各フレーム駒は連結ピンにより相互に回動自在に連結されるとともに、該フレーム駒の相互の回動移動量が一方のフレーム駒に設けた係止ピンと、他方のフレーム駒に設けた長孔により制限されている請求項1に記載のガラス搬送装置。
【請求項3】
前記支持枠体の少なくともガラス基板載置面に伸縮可能な緩衝カバーが設けられている請求項1または2に記載のガラス搬送装置。
【請求項4】
一枚のガラス基板の周縁部を載置した支持枠体の上に、同一形状の支持枠体を一つあるいは1枚ずつガラス基板を載置した複数の支持枠体を多層に積層し、ガラス基板の移動を上下の支持枠体間で拘束した請求項1乃至3のいずれかに記載のガラス搬送装置。
【請求項5】
前記ガラス基板を載置した支持枠体の上面と、該支持枠体の上に載置した支持枠体の下面に緩衝カバーを設けてガラス基板の周縁部を挟持した請求項4に記載のガラス搬送装置。
【請求項6】
隣接した上下の前記支持枠体間の相互移動はそれぞれの支持枠体に設けた前記緩衝カバーの凹凸嵌合により阻止されている請求項5に記載のガラス搬送装置。
【請求項7】
隣接した上下の前記支持枠体間の相互移動は、それぞれの支持枠体の凹凸嵌合により阻止されている請求項4または5に記載のガラス搬送装置。
【請求項8】
前記真直フレームに手掛け部を設けた請求項1乃至7のいずれかに記載のガラス搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−312511(P2006−312511A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135292(P2005−135292)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591262366)旭平硝子加工株式会社 (21)
【出願人】(394014087)近藤化学工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】