説明

ガラス板の加工装置

【課題】型板等を必要としなく、しかも、高速にガラス板の折割りを行い得る折割り装置を具備したガラス板の加工装置を提供すること。
【解決手段】折割り装置7は、折割りされるべきガラス板2を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板2の所与の部位を押して当該ガラス板2を切り線に沿って折割る折割りヘッド手段72aと、支持手段に支持されたガラス板2において押すべき所与の部位に対して折割りヘッド手段72aを相対的に移動させる移動手段73aを具備している。支持手段は、ガラス板2が載置される無端ベルト60と、無端ベルト60を裏面から部分的に支持する可動な部分的支持機構と、折割りヘッド手段72aによって押されるガラス板2の所与の部位に対応して、ガラス板2に対して部分的支持機構の夫々を相対的に移動させる移動手段とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折割り用の切り線(折割り線)が形成されたガラス板を押圧して切り線に沿って当該ガラス板を押し割ってガラス板を所望の形状に折割る折割り装置を具備したガラス板の加工装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
素板ガラスであるガラス板から所定形状のガラス板を製造するガラス板の加工装置は、通常、切り線が形成されたガラス板を押圧して切り線に沿って押し割る折割りヘッド手段と、折割りヘッド手段の下方に設けられて、折割るべきガラス板を支持する支持手段とを有した折割り装置を具備しており、支持手段は、無端ベルトと、この無端ベルトをその裏面からほぼ全体的に平坦に支持する支持板とを具備している。そして、折割りヘッド手段は、ガラス板を押圧して切り線に沿ってガラス板を押し割る際には、押し棒を無端ベルト上に載置されたガラス板に押し付けるようにしている。
【0003】
ところで、無端ベルトが支持板によりその裏面からほぼ全体的に平坦に支持されていると、押し棒のガラス板への押し付けのみでは、ガラス板に所定の撓みを生じさせ難く、切り線に沿うガラス板の折割りが行われない場合が生じ得る。そこで、無端ベルトと支持板との間に、折割り形状をもって予め形成された型板を配して、型板の周縁周りに段部を形成して、押し棒のガラス板への押し付けにおいて段部を介してガラス板を撓み易くする場合には、折割り形状の変更毎にそれに相当した型板を準備して、これを無端ベルトと支持板との間に配する必要があり、加工作業が極めて面倒になる。また、支持板に開口部を設けて無端ベルトの周囲のみを支持板にて支持して、開口部においては撓み易くしても、今度は、押し棒のガラス板への押し付けで、押し付け位置の近傍の全体の無端ベルトが沈み込んでしまったりして、これによっても折割りが行われない場合が生じ得る。
【0004】
また上記のようなガラス板の加工装置では、通常、折割り段の前段に、素板ガラス板に折割り用の切り線を形成する切り線形成段等の前加工段が配されて、この前加工段から折割り段に、前加工が施されたガラス板が搬入されるのであるが、この搬入のために、前加工が施されたガラス板を持ち上げたりすると、ガラス板に割れを生じさせて思わぬ事故が生じ得る虞がある。加えて、前加工段の切り線形成装置と折割り装置とを直列に配すると、極めて細長いスペースを占有することになり、ガラス板の加工工場の有効利用を図り難くなる。
【0005】
本発明は前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、型板等を必要としなく、しかも、高速にガラス板の折割りを行い得る折割り装置を具備したガラス板の加工装置を提供することにある。
【0006】
本発明は他の目的とするところは、ガラス板に割れを生じさせたりしないで事故なく折割り装置へガラス板を搬入できるガラス板の加工装置を提供することにある。
【0007】
本発明は更に他の目的とするところは、設置における柔軟性があり、ガラス板の加工工場の有効利用を図り得るガラス板の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様のガラス板の加工装置は、折割りされるべきガラス板を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板の所与の部位を押して当該ガラス板を切り線に沿って折割る折割りヘッド手段と、支持手段に支持されたガラス板において押すべき所与の部位に対して折割りヘッド手段を相対的に移動させる第一の移動手段とを有した折割り装置をガラス板の折割り段に具備しており、ここで、支持手段は、ガラス板が載置される可撓性のシート部材と、このシート部材を裏面から部分的に支持する可動な部分的支持機構と、折割りヘッド手段によって押されるガラス板の所与の部位に対応して、ガラス板に対して部分的支持機構を相対的に移動させる第二の移動手段とを有している。
【0009】
第一の態様のガラス板の加工装置では、折割りヘッド手段、第一及び第二の移動手段並びに部分的支持機構を具備しているために、型板等を必要としなく、高速に折割りを行い得る。
【0010】
本発明の第二の態様のガラス板の加工装置では、第一の態様のガラス板の加工装置において、シート部材は、折割り段よりも前段のガラス板の加工段から折割り段までに亘って張設された無端ベルトからなり、支持手段は、ガラス板を前段の加工段から折割り段まで搬送するために、無端ベルトを走行させる走行機構を具備している。
【0011】
第二の態様のガラス板の加工装置によれば、前段の加工段で加工されたガラス板を支持手段の無端ベルトに載置されたままで折割り段に搬入できるために、前加工されたガラス板に割れを生じさせる等の事故を搬入作業においてなくし得る。
【0012】
本発明の第三の態様のガラス板の加工装置では、上記の第二の態様のガラス板の加工装置において、折割り装置は、折割られたガラス板を持ち上げて、当該ガラス板を折割り段から搬出する搬出手段を更に具備している。
【0013】
本発明の第四の態様のガラス板の加工装置では、上記の第一の態様のガラス板の加工装置において、シート部材は、前段の加工段においてガラス板を支持する可撓性のシート部材に対して独立な無端ベルトからなる。
【0014】
第四の態様のガラス板の加工装置によれば、シート部材が前段の加工段においてガラス板を支持する可撓性のシート部材に対して独立な無端ベルトからなるために、折割り装置を前段の加工段に対して配置関係においてある程度の自由度をもつことができ、而して、ガラス板の加工工場の設置空間に対応して折割り装置を設置できて、ガラス板の加工工場の有効利用を図り得る。
【0015】
本発明の第五の態様のガラス板の加工装置では、上記の第四の態様のガラス板の加工装置において、折割り装置は、前段の加工段で加工されたガラス板を持ち上げて折割り段に搬入すると共に、折割り段で折割られたガラス板を持ち上げて、当該ガラス板を折割り段から搬出する搬送手段を更に具備している。
【0016】
第五の態様のガラス板の加工装置によれば、第四の態様のガラス板の加工装置においてシート部材が独立な無端ベルトからなっていても、ガラス板を折割り段に搬入できて人手を省き得る。
【0017】
本発明の第六の態様のガラス板の加工装置では、上記の第一から第五のいずれかの態様のガラス板の加工装置において、折割り段よりも前段のガラス板の加工段には、ガラス板に折割り用の切り線を形成する切り線形成装置が配されている。
【0018】
第六の態様のガラス板の加工装置において、切り線形成装置は、切り線のうち主切り線及び端切り線の両方を形成するように構成されていても、これに代えて、主切り線又は端切り線のみを形成するように構成されていてもよく、切り線形成装置で端切り線のみを形成する場合には、更に前の段で主切り線を形成するように構成し、切り線形成装置で主切り線のみを形成する場合には、折割り段で折割りの前に端切り線を形成するように構成するとよい。
【0019】
本発明の第七の態様のガラス板の加工装置では、上記の第一から第六のいずれかの態様のガラス板の加工装置において、支持手段は、折割り段のシート部材上に載置されたガラス板を固定する固定装置を更に具備している。
【0020】
本発明の第八の態様のガラス板の加工装置では、上記の第七の態様のガラス板の加工装置において、固定装置は、シート部材に穿設された孔と、この孔を介してシート部材上に載置されたガラス板を真空吸引する吸引装置とを具備している。
【0021】
本発明の第七の態様のガラス板の加工装置によれば、固定装置を具備しているために、折割りにおいてガラス板が持ち上がったり、位置変動することがなく、したがって、意図しないところでガラス板が折割られることを防止でき、第八の態様のガラス板の加工装置によれば、吸引装置でもってガラス板を固定するために、ガラス板の表面に傷を付けたり、ガラス板を破損するような事態を避けることができる。
【0022】
本発明の第九の態様のガラス板の加工装置によれば、上記の第七の態様のガラス板の加工装置において、固定装置は、折割り段のシート部材を介してガラス板を固定する固定支持台を具備している。
【0023】
本発明の第十の態様のガラス板の加工装置によれば、上記の第七から第九のいずれかのガラス板の加工装置において、固定装置は、ガラス板が折割りヘッド手段によって押される際に、ガラス板を固定するようになっている。
【0024】
なお、本発明では、折割り装置が配された折割り段のみを設けてガラス板の加工装置を構成してもよく、折割り段より前段のガラス板の加工段としては、切り線形成段を好ましい例として挙げることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、型板等を必要としなく、しかも、高速にガラス板の折割りを行い得るガラス板の加工装置を提供することができる。
【0026】
また本発明によれば、ガラス板に割れを生じさせたりしないで事故なく折割り装置へガラス板を搬入できるガラス板の加工装置を提供することができる。
【0027】
更に本発明によれば、設置における柔軟性があり、ガラス板の加工工場の有効利用を図り得るガラス板の加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施の形態の一例の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す例の一部破断側面図である。
【図3】図3は、図1に示す例の平面図である。
【図4】図4は、図1に示す例の一部破断平面図である。
【図5】図5は、本発明の好ましい実施の形態の他の例の一部破断側面図である。
【図6】図6は、図5に示す例の一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0030】
図1から図4において、本例のガラス板の加工装置1は、ガラス板2に折割り用の切り線3を形成する切り線形成段4に配された切り線形成装置5と、前段の加工手段としての切り線形成段4において切り線3が形成されたガラス板2を切り線3に沿って折割る折割り段6に配された折割り装置7とを具備している。
【0031】
切り線形成装置5は、ガラス板2に折割り用の切り線3を形成するカッタヘッド手段11と、カッタヘッド手段11をガラス板2の面に平行に移動させる移動手段12と、切り線3を形成すべき素板ガラスとしてのガラス板2を切り線形成段4の搬入部13に搬入する搬入装置14と、切り線3を形成すべきガラス板2を支持する支持手段15とを具備している。なお、本例では、切り線3を形成すべきガラス板2を支持する支持手段15は、後述のように、折割り装置7における折割りされるべきガラス板2を支持する支持手段と部分的に共用されている。
【0032】
カッタヘッド手段11は、可動台21と、可動台21に取り付けられた電動モータ22と、同じく移動台21に取り付けられた空気圧シリンダ23と、空気圧シリンダ23のピストンロッドの先端に転がり自在(回転自在)に取り付けられたカッタホイール24とを具備しており、可動台21は、案内レール25に案内されてX方向に可動となるように可動フレーム26に取り付けられており、電動モータ22は、空気圧シリンダ23のピストンロッドを回転させて、カッタホイール24の刃先を切り線形成方向に配向させ、空気圧シリンダ23は、そのピストンロッドを伸長させて、カッタホイール24をガラス板2に押し付けるようになっている。可動フレーム26は、その両端で案内レール27及び28に案内されてY方向に可動となるように固定フレーム29及び30に取り付けられている。固定フレーム28及び29は、主フレーム31の両側面32及び33に夫々固定的に支持されている。
【0033】
移動手段12は、可動台21をX方向に移動させるX方向移動機構35と、可動フレーム25をY方向に移動させるY方向移動機構36とを具備しており、X方向移動機構35は、可動台21に取り付けられた電動モータ37と、可動フレーム25にX方向に伸びて取り付けられたラックバー38と、ラックバー38のラック歯39に噛み合って電動モータ37の出力回転軸に取り付けられたピニオン40とを具備しており、電動モータ37の作動でピニオン40を回転させて可動台21をX方向に移動させるようになっており、Y方向移動機構36は、可動フレーム26の一端に取り付けられた電動モータ45と、固定フレーム29及び30の夫々に取り付けられたラックバー46及び47と、ラックバー46及び47の夫々に噛み合って電動モータ45の出力回転軸に取り付けられたピニオン48及び49とを具備しており、電動モータ45の作動でピニオン48及び49を同期して回転させて可動フレーム26をY方向に移動させるようになっている。
【0034】
以上のようにして移動手段12は、X方向移動機構35及びY方向移動機構36の作動により、可動台21をX−Y平面のプログラムされた所定位置に移動させ、而して、可動台21を含むカッタヘッド手段11をガラス板2の面に平行に移動させるようになっている。
【0035】
なお、移動手段12としては、ラック−ピニオン機構を用いたものでなくてもよく、要は、カッタヘッド手段11をガラス板2の面に平行に移動させるものであればよい。
【0036】
移動手段12及びカッタヘッド手段11の作動により、カッタホイール24を介してガラス板2に、まず、切り線3において主切り線3aが形成され、主切り線3aの形成後に、切り線3において端切り線3bが夫々形成されるようになっている。
【0037】
搬入装置14は、上固定フレーム55にY方向に可動に取り付けられた可動台56と、可動台56に取り付けられた空気圧シリンダ57と、空気圧シリンダ57のピストンロッドに取り付けられた吸盤58と、可動台56をY方向に移動させる移動装置(図示せず)とを具備している。
【0038】
搬入装置14は、ガラス板2の集積箇所から吸盤57により一つのガラス板2を吸着して空気圧シリンダ57の作動により持ち上げ、この吸着、持ち上げたガラス板2を移動装置の作動により支持手段15の無端ベルト60の上方の所定位置に搬送して、当該所定位置において空気圧シリンダ57の作動により吸盤57を下降させて、無端ベルト60上にガラス板2を載置し、その後、吸盤57によるガラス板2に対する吸着を解除し、解除後、空気圧シリンダ57の作動により吸盤57を上昇させると共に、移動装置の作動により当該吸盤57をガラス板2の集積箇所に移動させて、以上の動作を繰り返すようになっている。
【0039】
折割り装置7の支持手段と部分的に共用の支持手段15は、前記の無端ベルト60と、無端ベルト60を走行させる走行機構61と、無端ベルト60の下面62を支えるフレーム31の天井板64とを具備しており、走行機構61は、フレーム31の支持脚63に取り付けられた電動モータ65と、電動モータ65の出力回転軸に歯付きプーリ、タイミングベルト等を介して連結されて、フレーム31に回転自在に取り付けられた駆動ドラム66と、フレーム31に回転自在に取り付けられた従動ドラム67及びテンション又は転向ドラム68とを具備しており、無端ベルト60は、駆動ドラム66、従動ドラム67及びテンション又は転向ドラム68に掛け回されている。
【0040】
支持手段15は、無端ベルト60及び天井板64により当該無端ベルト60上に載置されたガラス板2を支持すると共に、電動モータ65の作動により無端ベルト60をA方向に走行させて、無端ベルト60上の所定位置(搬入位置)に搬入装置14により搬入されたガラス板2を切り線形成段4の所定位置に搬送し、切り線形成段4で切り線3が形成されたガラス板2を折割り段6の所定位置に搬送し、折割り段6で折割られたガラス板2の折割り屑(折割りカレット)を下流端で排出するようになっている。
【0041】
折割り装置7は、折割りされるべきガラス板2を支持する支持手段71と、支持手段71に支持されたガラス板2の所与の部位を押して当該ガラス板2を切り線3に沿って折割る本例では2機の折割りヘッド手段72a及び72bと、支持手段71に支持されたガラス板2において押すべき所与の部位に対して折割りヘッド手段72a及び72bの夫々を相対的に移動させる移動手段73a及び73bと、折割られたガラス板2を持ち上げて、折割り段6から後段に当該ガラス板2を搬出する搬出する搬出手段74とを具備している。
【0042】
支持手段71は、ガラス板2が載置される可撓性のシート部材としての前記の無端ベルト60と、無端ベルト60を裏面から部分的に支持する可動な複数、本例では4機の部分的支持機構81a、81b、81c及び81dと、折割りヘッド手段72a及び72bによって押されるガラス板2の所与の部位に対応して、ガラス板2に対して部分的支持機構81a、81b、81c及び81dの夫々を相対的に移動させる移動手段82a、82b、82c及び82dと、無端ベルト60上に載置されたガラス板2を固定する固定装置83とを有している。
【0043】
無端ベルト60は、前記のように前段の切り線形成段4から折割り段6までに亘って張設されており、支持手段71は、ガラス板2を前段の切り線形成段4から折割り段6まで搬入するために、無端ベルト60を走行させる前記の走行機構61を具備している。
【0044】
天井板64の開口部84において無端ベルト60を裏面から部分的に支持する部分的支持機構81a、81b、81c及び81dは、互いに同様に形成されており、以下、部分的支持機構81aのみについて詳細に説明し、部分的支持機構81b、81c及び81dについては、部分的支持機構81aに対応する構成に必要に応じて同一数字符号にb、c及びdを付して詳細な説明を省略する。
【0045】
部分的支持機構81aは、可動フレーム85aに案内レール86aを介してY方向に可動に取り付けられた可動台87aと、可動台87aに固定して取り付けられた受け台88aとを具備しており、受け台88aの上面が無端ベルト60の裏面に接触して、無端ベルト60をその裏面から部分的に支持し、この裏面からの無端ベルト60の支持により、当該無端ベルト60に載置されたガラス板2をも部分的に支持するようになっている。なお、可動台87aと受け台88aと間に空気圧又は液圧シリンダを介在させて、このシリンダのピストンロッドの先端に受け台88aを取り付けて、折割り時においてはピストンロッドを伸長させて、無端ベルト60に載置されたガラス板2を部分的に支持し、可動台87aを移動させる等の折割り時以外においては、ピストンロッドを縮小させて、無端ベルト60に載置されたガラス板2の部分的な支持を解除するように構成してもよい。
【0046】
部分的支持機構81a、81b、81c及び81dに夫々対応して設けられた移動手段82a、82b、82c及び82dも、部分的支持機構81a、81b、81c及び81dと同様に、互いに同様に形成されており、以下、移動手段82aのみについて詳細に説明し、移動手段82b、82c及び82dについては、移動手段82aに対応する構成に必要に応じて同一数字符号にb、c及びdを付して詳細な説明を省略する。
【0047】
移動手段82aは、可動台87aをY方向に移動させるY方向移動機構91aと、固定フレーム92aに案内レール93aを介してX方向に可動に取り付けられた可動フレーム85aをX方向に移動させるX方向移動機構94aとを具備しており、Y方向移動機構91aは、可動フレーム85aの一端に取り付けられた電動モータ95aと、電動モータ95aの出力回転軸に連結されたねじ軸96aと、ねじ軸96aに螺合して可動台87aに固着されたナット97aとを具備しており、電動モータ95aの作動でねじ軸96aを回転させて可動台87aをY方向に移動させるようになっており、X方向移動機構94aは、固定フレーム92aの一端に取り付けられた電動モータ98aと、電動モータ98aの出力回転軸に連結されたねじ軸99aと、ねじ軸99aに螺合して可動フレーム85aに固着されたナット100aとを具備しており、電動モータ98aの作動でねじ軸99aを回転させて可動フレーム85aをX方向に移動させるようになっている。なお、固定フレーム92aは、フレーム31の底板101に固定的に取り付けられている。
【0048】
以上のようにして移動手段82aは、Y方向移動機構91a及びX方向移動機構94aの作動により、可動台87aをX−Y平面のプログラムされた所定位置に移動させ、而して、受け台88aをガラス板2の面に平行に移動させるようになっている。
【0049】
移動手段82aとしては、ねじ軸−ナット機構を用いたものでなくてもよく、要は、受け台88aをガラス板2の面に平行に移動させるものであればよい。
【0050】
部分的支持機構81a、81b、81c及び81dの夫々の受け台88a、88b、88c及び88dの夫々は、裏面からの無端ベルト60の支持を分担して行い、而して、当該無端ベルト60に載置されたガラス板2の部分的な支持をも分担して行うようになっており、そして、部分的支持機構81a、81b、81c及び81dは、折割りに際して、分担して夫々の受け台88a、88b、88c及び88dをガラス板2の切り線3の下に配置させる。
【0051】
固定装置84は、無端ベルト60に穿設された多数の孔111と、孔111を介して無端ベルト60に載置されたガラス板2を真空吸引する吸引装置112とを具備している。吸引装置112は、天井板64の開口部84の中央において、上面113が無端ベルト60の裏面に接触するように配されて、孔111に臨むように上面113に複数の直線溝114が形成された固定支持台としての吸引板115と、吸引板115をフレーム31の底板101に連結支持する縦壁116に形成されて、一端が直線溝114の夫々に連通した連通孔117と、連通孔117に連結された真空吸引ポンプ(図示せず)とを具備している。
【0052】
固定装置83は、折割りにおいてガラス板が折割りヘッド手段72a及び72bによって押される際に、真空吸引ポンプを作動させて、連通孔117、直線溝114及び孔111を介してガラス板2を真空吸引して無端ベルト60に、動かないようにしっかりと固定するようになっている。
【0053】
折割りヘッド手段72a及び72bは、互いに同様に形成されており、以下、折割りヘッド手段72aのみについて詳細に説明し、折割りヘッド手段72bについては、折割りヘッド手段72aに対応する構成に必要に応じて同一数字符号にbを付して詳細な説明を省略する。
【0054】
折割りヘッド手段72aは、可動台121aと、可動台121aに取り付けられた空気圧シリンダ122aと、空気圧シリンダ122aのピストンロッドの先端に取り付けられた押し棒123aとを具備しており、予めプログラムされた所定位置での空気圧シリンダ122aの作動によるそのピストンロッドの伸長で押し棒123aを切り線3の近傍であって切り線3で囲まれる範囲外のガラス板2に押し付け、無端ベルト60の撓みと共にガラス板2を撓ませて、ガラス板2を切り線3に沿って押し割るようになっている。なお、この押し割りにおいて、部分的支持機構81a、81b、81c及び81dの夫々の受け台88a、88b、88c及び88d夫々は、ガラス板2の撓みが適切に行われて、ガラス板2が切り線3に沿って確実に行われるように、ガラス板2を所与の位置で部分的に支持するようになっている。
【0055】
折割りヘッド手段72a及び72bに夫々対応して設けられた移動手段73a及び73bも、折割りヘッド手段72a及び72bと同様に、互いに同様に形成されており、以下、移動手段73aのみについて詳細に説明し、移動手段73bについては、移動手段73aに対応する構成に必要に応じて同一数字符号にbを付して詳細な説明を省略する。
【0056】
移動手段73aは、可動台121aをX方向に移動させるX方向移動機構131aと、横固定フレーム132aに案内レール133aを介してY方向に可動に取り付けられた可動フレーム134aをY方向に移動させるY方向移動機構135aとを具備しており、X方向移動機構131aは、可動フレーム134aの一端に取り付けられた電動モータ136aと、電動モータ136aの出力回転軸に連結されたねじ軸137aと、ねじ軸137aに螺合して可動台121aに固着されたナット138aとを具備しており、電動モータ136aの作動でねじ軸137aを回転させて可動台121aをX方向に移動させるようになっており、Y方向移動機構135aは、横固定フレーム132aの一端に取り付けられた電動モータ141aと、電動モータ141aの出力回転軸に連結されたねじ軸(図示せず)と、当該ねじ軸に螺合して可動フレーム134aに固着されたナット143aとを具備しており、電動モータ141aの作動でねじ軸を回転させて可動フレーム134aをY方向に移動させるようになっている。なお、横固定フレーム132aは、フレーム144aを介してフレーム31の側面33に固定的に取り付けられている。
【0057】
以上のようにして移動手段73aは、X方向移動機構131a及びY方向移動機構135aの作動により、可動台121aをX−Y平面のプログラムされた所定位置に移動させ、而して、押し棒123aをガラス板2の面に平行に移動させて、押し付け位置上に押し棒123aを位置決めするようになっている。
【0058】
移動手段73aとしては、ねじ軸−ナット機構を用いたものでなくてもよく、要は、可動台121aをガラス板2の面に平行に移動させるものであればよい。
【0059】
折割りヘッド手段72a及び72bは、無端ベルト60に載置されたガラス板2の押し割りを分担して行うようになっている。
【0060】
搬出手段74は、搬入装置14と同様に構成されており、上固定フレーム151に案内レール152を介してY方向に可動に取り付けられた可動台153と、可動台153に取り付けられた空気圧シリンダ154と、空気圧シリンダ154のピストンロッドに取り付けられた吸盤155と、可動台153をY方向に移動させる移動装置156とを具備している。
【0061】
移動装置156は、上固定フレーム151に取り付けられた電動モータ157と、電動モータ157の出力回転軸に連結されたねじ軸158と、ねじ軸158に螺合して、可動台153に固定的に取り付けられたナット159とを具備しており、電動モータ157の作動でねじ軸158を回転させて可動台153をY方向に移動させるようになっている。
【0062】
搬出手段74は、切り線3に沿って折割られたガラス板2を吸盤155により吸着して空気圧シリンダ154の作動により持ち上げ、この吸着、持ち上げたガラス板2を移動装置156の作動により無端ベルト60の上方外の集積箇所に搬出して、当該集積箇所において空気圧シリンダ154の作動によりガラス板2を下降させて、集積箇所にガラス板2を載置し、その後、吸盤155によるガラス板2に対する吸着を解除し、解除後、空気圧シリンダ154の作動により吸盤155を上昇させると共に、移動装置156の作動により当該吸盤155を無端ベルト60の上の所定位置に移動させて、以上の動作を繰り返すようになっている。
【0063】
以上のガラス板の加工装置1では、支持手段15及び支持手段71における可撓性のシート部材としての無端ベルト60を、切り線形成段4と折割り段6とに共用したが、図5及び図6に示すように、切り線形成段4に可撓性のシート部材としての無端ベルト161を、折割り段6の可撓性のシート部材としての無端ベルト60と独立に設けると共に、無端ベルト161に対して走行機構61と同様の走行装置162を設けてもよい。この場合、走行装置162は、フレーム31と独立なフレーム165の支持脚166に取り付けられた電動モータ171と、電動モータ171の出力回転軸に歯付きプーリ、タイミングベルト等を介して連結されて、フレーム171に回転自在に取り付けられた駆動ドラム172と、フレーム171に回転自在に取り付けられた従動ドラム173及びテンション又は転向ドラム174とを具備しており、無端ベルト161は、駆動ドラム172、従動ドラム173及びテンション又は転向ドラムドラム174に掛け回されている。
【0064】
図5及び図6に示すような、切り線形成段4の無端ベルト161に対して独立な無端ベルト60を具備したガラス板の加工装置1においても、切り線3が形成されたガラス板2を無端ベルト161のA方向の走行により無端ベルト60側に搬送して、こうして無端ベルト60側に移送されたガラス板2を無端ベルト60の走行により折割位置まで搬送してもよいのであるが、これに代えて、空気圧シリンダ154と同等の空気圧シリンダを可動台153に更に取り付け、この追加の空気圧シリンダのピストンロッドに吸盤155と同等の吸盤を取り付けて、しかも、この追加の吸盤が無端ベルト161上まで移動できるように、可動台153及びフレーム151等を形成して、追加の吸盤でもって、切り線3が形成されたガラス板2を折割位置まで搬送するようにしてもよいのである。この場合、追加の空気圧シリンダ及び吸盤を具備した搬出手段74は、ガラス板2を持ち上げて前段の切り線形成段4から折割り段6まで当該ガラス板2を搬送するための搬送手段を兼ねることになる。
【0065】
上述のガラス板の加工装置1によれば、部分的支持機構81a、81b、81c及び81dを設けているため、折割り用の型板等を必要としなく、プログラム変更により任意の形状の折割りを行うことができる。しかも、ガラス板の加工装置1によれば、複数の折割りヘッド手段72a及び72b、複数の移動手段73a及び73b、複数の部分的支持機構81a、81b、81c及び81d並びに複数の移動手段82a、82b、82c及び82dを具備して、これらにより分担して折割りを行うようにしているために、高速に折割りを行い得る。
【0066】
また、図1から図4に示すガラス板の加工装置1によれば、前段の切り線形成段4で切り線3が形成されたガラス板2を支持手段71の無端ベルト60に載置されたままで折割り段6に搬入できるために、切り線3が形成されたガラス板2に割れを生じさせる等の事故を搬入作業においてなくし得、一方、図5及び図6に示すガラス板の加工装置1によれば、無端ベルト60が前段の無端ベルト161に対して独立であるために、折割り装置7を前段の切り線形成段4に対して配置関係においてある程度の自由度をもつことができ、而して、ガラス板の加工工場の設置空間に対応して折割り装置7を設置できて、ガラス板の加工工場の有効利用を図り得る。
【0067】
更に、ガラス板の加工装置1によれば、搬送手段である搬出手段74を、ガラス板2の搬出にも用いることができるために、構成を簡単にできると共にコストを低減でき、その上、固定装置83を具備しているために、折割りにおいてガラス板2が持ち上がったり、位置変動することがなく、したがって、意図しないところでガラス板2が折割られることを防止でき、特に、吸引装置112でもってガラス板2を固定するために、ガラス板2の表面に傷を付けたり、ガラス板2を破損するような事態を避けることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ガラス板の加工装置
2 ガラス板
3 切り線
7 折割り装置
60 無端ベルト
71 支持手段
72a、72b
73a、73b 移動手段
81a、81b、81c、81d 部分的支持機構
82a、82b、82c、82d 部分的支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折割りされるべきガラス板を支持する支持手段と、支持手段に支持されたガラス板の所与の部位を押して当該ガラス板を切り線に沿って折割る折割りヘッド手段と、支持手段に支持されたガラス板において押すべき所与の部位に対して折割りヘッド手段を相対的に移動させる第一の移動手段とを有した折割り装置をガラス板の折割り段に具備したガラス板の加工装置であって、支持手段は、ガラス板が載置される可撓性のシート部材と、このシート部材を裏面から部分的に支持する可動な部分的支持機構と、折割りヘッド手段によって押されるガラス板の所与の部位に対応して、ガラス板に対して部分的支持機構を相対的に移動させる第二の移動手段とを有しているガラス板の加工装置。
【請求項2】
シート部材は、折割り段よりも前段のガラス板の加工段から折割り段までに亘って張設された無端ベルトからなり、支持手段は、ガラス板を前段の加工段から折割り段まで搬送するために、無端ベルトを走行させる走行機構を具備している請求項1に記載のガラス板の加工装置。
【請求項3】
折割り装置は、折割られたガラス板を持ち上げて、当該ガラス板を折割り段から搬出する搬出手段を更に具備している請求項2に記載のガラス板の加工装置。
【請求項4】
シート部材は、前段の加工段においてガラス板を支持する可撓性のシート部材に対して独立な無端ベルトからなる請求項1に記載のガラス板の加工装置。
【請求項5】
折割り装置は、前段の加工段で加工されたガラス板を持ち上げて折割り段に搬入すると共に、折割り段で折割られたガラス板を持ち上げて、当該ガラス板を折割り段から搬出する搬送手段を更に具備している請求項4に記載のガラス板の加工装置。
【請求項6】
折割り段よりも前段のガラス板の加工段には、ガラス板に折割り用の切り線を形成する切り線形成装置が配されている請求項1から5のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項7】
支持手段は、折割り段のシート部材上に載置されたガラス板を固定する固定装置を更に具備している請求項1から6のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。
【請求項8】
固定装置は、シート部材に穿設された孔と、この孔を介してシート部材上に載置されたガラス板を真空吸引する吸引装置とを具備している請求項7に記載のガラス板の加工装置。
【請求項9】
固定装置は、折割り段のシート部材を介してガラス板を固定する固定支持台を具備している請求項7に記載のガラス板の加工装置。
【請求項10】
固定装置は、ガラス板が折割りヘッド手段によって押される際に、ガラス板を固定するようになっている請求項7から9のいずれか一項に記載のガラス板の加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28531(P2013−28531A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202101(P2012−202101)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願平11−173204の分割
【原出願日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【出願人】(000174220)坂東機工株式会社 (51)
【Fターム(参考)】