説明

ガラス板の端面撮像装置およびその撮像方法

【課題】搬送中のガラス板を停止させることなく、搬送方向に直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像することのできるガラス板の端面撮像装置およびその撮像方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るガラス板の端面撮像装置5は、水平状態でガラス板を所定方向に搬送する搬送手段3と、搬送手段3で搬送されるガラス板2の搬送方向と直交する向きの直交端面4a(4b)及びその近傍を撮像する撮像手段7(7a,7b)と、撮像手段7(7a,7b)を、ガラス板2の搬送方向に対して斜め方向に移動させる移動手段8と、ガラス板2の搬送時、撮像手段7(7a,7b)と直交端面4a(4b)との距離を一定に保ちつつ、撮像手段7(7a,7b)を移動手段8により直交端面4a(4b)に沿って移動可能とする移動制御手段9とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の端面撮像装置およびその撮像方法に関し、詳しくは、搬送中のガラス板の搬送方向と直交する向きの直交端面を撮像するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどの各種画像表示機器の製作に際しては、大型のガラス基板に対して複数の表示素子を形成した後に、各表示素子の区画ごとに分割する、いわゆる多面取りという手法が採用されるに至っている。そのため、ガラスメーカー等で製造されるガラス基板の大型化が推進されている現状がある。
【0003】
これらのガラス基板は、成形後の素材ガラスを矩形状かつ所定の大きさに切断した後、その切断端面に対して研磨加工を施し、然る後、当該ガラス板の表裏面を清浄な面とするための洗浄処理および乾燥処理を施すことにより得られる。また、研磨加工後に切断端面もしくはその角部が破損したり、あるいはガラス基板として完成した後、積層して搬送する際に隣接する他のガラス基板を傷付けたりする事態を回避すべく、切断端面に対して面取り加工を研磨加工と併せて実施する場合もある。すなわち、成形された素材ガラスを切断して所定の大きさのガラス板を得た後、その切断端面に研磨加工を施すと共に、切断端面の角部にダイヤモンドホイール等で面取り加工を施すことにより、切断端面もしくはその角部の強度を高めて、破損の防止を図っている。
【0004】
しかしながら、上述のような加工を施す場合、加工具の使用状態等に起因して切断端面やその角部にカケや傷などの欠陥が発生することがある。このような欠陥が発生するとガラス板の端面強度が低下し、破損につながるおそれが高まる。そのため、端面やその角部周辺を観察し、破損につながるおそれのある欠陥が検出されたガラス板については、これを製造ラインから排除する必要がある。
【0005】
特に、上記ディスプレイ用途のガラス基板を製作する場合、ガラス基板となるガラス板について、その4辺全ての端面に対して研磨加工を施し、かつ必要に応じて面取り加工等を施すのが通常であるから、上記全ての端面を撮像し、欠陥の有無につき検査を行う必要が生じる。
【0006】
ここで、例えば下記特許文献1には、ガラス基板を搬送する搬送装置に隣接配置され、搬送中のガラス基板の、搬送方向に平行な2つの側端面及びその近傍を撮像し、カケ等の欠点の有無を検査する欠点検査装置が記載されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、搬送されるガラス板の搬送方向に平行な2つの側端面に対する所定位置に、リング照明と2つのCCDカメラとを具備した欠陥検出装置をガラス板を挟むように固設し、ガラス板が欠陥検出装置を通過するときにガラス板の上記側端面を撮像して欠陥検査を行う方法が記載されている。
【0008】
さらに、下記特許文献2には、ガラス板の端面の欠陥検査を全周囲にわたって行う方法として、まず上述のように搬送方向に平行な2つの側端面の欠陥検査を行った後に、ガラス板の未検査の2端面が搬送方向と平行となるように、ガラス板の向きは変えずに搬送方向のみを90度変換し、当該未検査の2端面に対する所定位置に上記と同様の照明系とカメラとを具備した欠陥検出装置をそれぞれ配設し、ガラス板が当該欠陥検出装置を通過するときにガラス板の上記2端面を順次撮像して欠陥検査を行う方法が記載されている。
【0009】
また、下記特許文献2には、少なくともリング照明を備えた照明手段とCCDカメラとを具備した撮像手段を多関節ロボットのハンドに取り付け、このハンドをガラス板の外周端面に沿って順次移動させ、ガラス板の端面全周を順次撮像し、撮像した画像に基づき欠陥の有無を検査する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−30067公報
【特許文献2】特開2006−220540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、上記特許文献1に記載の方法だと、ガラス板の搬送時、搬送方向に平行な側端面しか撮像することができない。また、上記特許文献2に記載されている撮像手段のうち、搬送方向を90度変換して、ガラス板の4辺全ての端面を撮像する手段は、搬送方向に対するガラス板の向きを変えて、ガラス板の搬送方向に平行な側端面を2度にわたり撮像する方法であって、搬送中のガラス板の搬送方向に直交する向きの端面(直交端面)を撮像するものではない。
【0012】
上記特許文献2に記載された、ロボットハンドで把持したカメラを移動させて、ガラス板の端面全周を順次撮像する手段を採る場合には、4辺全ての端面を撮像できるが、この場合には何れの端面を撮像する際にもガラス板を停止させる必要がある。また、上述のように、搬送方向を90度変換して、ガラス板の搬送方向に平行な側端面を撮像する場合、搬送ラインのコーナー部では、搬送ラインが途切れる(別個の搬送手段により構成される)のが通常であるから、一方の搬送ラインから他方の搬送ラインへとガラス板を乗り移らせる際、ガラス板を一旦停止させる必要が生じる。ガラス板を停止するためには、搬送ラインも停止しなければならず、作業効率、ひいてはタクトタイムの低下を招くおそれがある。
【0013】
以上の事情に鑑み、搬送中のガラス板を停止させることなく、搬送方向に直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像することのできるガラス板の端面撮像装置およびその撮像方法を提供することを、本発明により解決すべき技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題の解決は、本発明に係るガラス板の端面撮像装置により達成される。すなわち、この端面撮像装置は、水平状態でガラス板を所定方向に搬送する搬送手段と、搬送手段で搬送されるガラス板の搬送方向と直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像する撮像手段と、撮像手段を、ガラス板の搬送方向に対して斜め方向に移動させる移動手段と、ガラス板の搬送時、撮像手段と上記直交端面との距離を一定に保ちつつ、撮像手段を移動手段により上記直交端面に沿って移動可能とする移動制御手段とを具備した点をもって特徴づけられる。
【0015】
上述の構成によれば、ガラス板を所定方向に搬送させながら、撮像手段を、ガラス板の搬送方向に直交する直交端面の幅方向(搬送方向に直交する向き)一方側から他方側に向けて移動させることができる。また、この際、撮像手段は、移動制御手段により、上記直交端面との距離を一定に保ちながら移動させることができるので、上記直交端面を常に撮像可能な位置に撮像手段を相対配置させることができる。従って、ガラス板との衝突を避けつつ、その搬送方向に直交する直交端面及びその近傍を幅方向全域にわたって順次撮像することができ、これにより、漏れのない適切な欠陥検査が可能となる。また、ガラス板の搬送を止めることなく上記直交端面を撮像できるので、搬送ラインを停止する必要もなく、タクトタイムを維持できる。
【0016】
また、本発明に係る端面撮像装置は、上記構成の撮像手段を2台具備し、一方の撮像手段をガラス板の搬送方向前方側に位置する上記直交端面に沿って移動可能とし、かつ、他方の撮像手段をガラス板の搬送方向後方側に位置する上記直交端面に沿って移動可能としたものであってもよい。
【0017】
例えば、1台の撮像手段でガラス板の搬送方向前後の直交端面を撮像しようとすると、まず、搬送方向前方側の直交端面に沿って撮像手段を移動させて、当該前方側の直交端面を撮像し、然る後、搬送方向後方側の直交端面を追いかけるように、その傾斜方向を異ならせて撮像手段を移動させる必要が生じる。これでは、移動手段がより複雑になり、またガラス板の大きさや搬送ラインのスペースの関係で上記のような軌跡を撮像手段がとれない場合もある。また、1台の撮像手段を2回移動させる分の時間を要する。この点、上記構成の端面撮像装置によれば、搬送方向の所定位置に配設した2台の撮像手段をそれぞれ移動させて、1枚のガラス板の搬送方向前後の上記直交端面を各々1回ずつの移動により撮像することができる。よって、ガラス板の大きさや搬送ラインのスペースが特に制限されることもなく、また、1台の撮像手段を異なる向きに2回移動させて撮像する必要も無い。これにより、1回の移動分の時間でガラス板の両直交端面を効率よく撮像することができ、タクトタイムを維持できる。
【0018】
また、本発明に係る端面撮像装置は、撮像手段が、ガラス板の端面を表裏両面側に跨って撮像可能としたものでもよく、かつこの場合、搬送手段がガラス板の下方に配設されると共に、この搬送手段を搬送方向に対して斜め方向に横断することで分断する分断スペースを有し、この分断スペースを撮像手段が通過することで、撮像手段を直交端面に沿って移動可能としたものであってもよい。
【0019】
上述したように、ガラス板の端部に生じる欠陥は、主にガラス板の端面とその表裏両面側に位置する角部に発生するため、例えばガラス板の斜め上方から端面を撮像したのでは、下面側(裏面側)の角部を撮像することが難しい。よって、撮像手段を、例えばガラス板の端面を表裏両面側に跨って撮像可能としたものとすればよいが、こうすると、今度は、撮像手段をガラス板と同程度の高さに配置し、この高さを維持して移動させる必要が生じるため、必然的に、ガラス板の下方に配設される搬送手段との干渉を避ける必要が生じる。ここで、例えば搬送手段はガラス板の下方に配設されると共に、この搬送手段を搬送方向に対して斜め方向に横断することで分断する分断スペースを有するものとし、この分断スペースを撮像手段が通過することで、撮像手段をガラス板の直交端面に沿って移動可能なように端面撮像装置を構成してもよい。このように構成することで、撮像手段と搬送手段との干渉を避けつつも、ガラス板の直交端面およびその表裏両面側の角部を含む近傍領域を撮像することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る端面撮像装置は、搬送手段が、ガラス板を気圧で浮上支持する浮上支持手段と、浮上支持手段の側方に配設され、ガラス板との間で転動することでガラス板を搬送する搬送ローラとで構成され、浮上支持手段に分断スペースが設けられたものであってもよく、かつこの場合、撮像手段と同期して移動し、分断スペース上を通過中のガラス板を浮上支持する移動支持手段をさらに具備したものであってもよい。
【0021】
ガラス板の直交端面に沿って移動可能とするためには、撮像手段を直線的に移動させることが望ましい。一方、ガラス板の搬送手段としては、ベルトコンベアやローラコンベアなどが一般的であるが、このようなコンベアで搬送手段を構成した場合、撮像手段が搬送方向に対して斜め方向に通過(移動)可能な分断スペースを設けづらい、との問題がある。そこで、搬送手段として、上記浮上支持手段と、転動によりガラス板を搬送する搬送ローラとで構成したものを用い、この浮上支持手段に分断スペースを設けるようにすれば、容易に、分断スペースを、撮像手段が搬送方向に対して斜め方向に直線的に移動可能なスペースとすることができる。
【0022】
また、この場合、本発明に係る端面撮像装置を、撮像手段と同期して移動し、分断スペース上を通過中のガラス板を浮上支持する移動支持手段をさらに具備したものとすることで、ガラス板のうち分断スペース上で撮像手段により撮像される部分についても支持することができる。従って、分断スペースを搬送手段(浮上支持手段)に設けた場合にあっても、搬送中のガラス板が分断スペースを通過する際のたわみや上下の揺れを防止又は抑制でき、これによりガラス板の撮像領域の高さを一定に保って撮像を行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る端面撮像装置は、搬送手段の側方に固定配置され、水平状態で搬送されるガラス板の搬送方向に平行な側端面及びその近傍を撮像する側端面撮像手段をさらに具備したものであってもよい。
【0024】
このように、ガラス板の搬送方向に直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像する撮像手段に加えて、搬送方向に平行な側端面及びその近傍を撮像する側端面撮像手段をさらに設けることで、搬送ラインを曲げることなく、またガラス板を回転させることなく、ガラス板の4辺全ての端面を撮像することができる。そのため、現行の搬送ラインに何ら変更を加えることなく、本発明に係る端面撮像装置を適用することができる。
【0025】
以上の説明に係るガラス板の端面撮像装置は、例えば当該端面撮像装置と、撮像手段で撮像して得た画像情報に基づき、ガラス板の直交端面及びその近傍に存在する欠陥の有無を判定する判定手段とを具備したガラス板の欠陥検査ラインとして提供することも可能である。
【0026】
このように欠陥検査ラインを構築すれば、研磨加工後の全てのガラス板の端面及びその近傍を連続的に撮像することができるので、大幅な設備変更を伴うことなく欠陥検査を実施することが可能となる。
【0027】
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラス板の端面撮像方法によっても達成される。すなわち、この撮像方法は、撮像手段を用いて、水平状態で搬送されるガラス板の搬送方向と直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像する方法において、ガラス板の搬送時、撮像手段と直交端面との距離を一定に保ちつつ、撮像手段をガラス板の搬送方向に対して斜め方向に移動させることで、撮像手段を直交端面に沿って移動可能とした点をもって特徴づけられる。
【0028】
この撮像方法によれば、既に述べた本発明に係るガラス板の端面撮像装置と同様に、ガラス板を所定方向に搬送させながら、撮像手段を、ガラス板の搬送方向に直交する直交端面の幅方向一方側から他方側に向けて移動させることができる。また、この際、撮像手段を、上記直交端面との距離を一定に保ちながら移動させることで、上記直交端面を常に撮像可能な位置に撮像手段を相対配置させることができる。従って、ガラス板との衝突を避けつつ、その搬送方向に直交する端面及びその近傍を幅方向全域にわたって順次撮像することができ、これにより、漏れのない適切な欠陥検査が可能となる。また、ガラス板の搬送を止めることなく上記直交端面を撮像できるので、搬送ラインを停止する必要もなく、タクトタイムを維持できる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、本発明に係るガラス板の端面撮像装置およびその撮像方法によれば、搬送中のガラス板を停止させることなく、搬送方向に直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るガラス板の端面撮像装置を組み込んでなる欠陥検査ラインの平面図である。
【図2】図1に示す撮像手段の斜視図である。
【図3】撮像手段の光学系を含む内部構造を概念的に説明するための部分断面図である。
【図4】図1に示す搬送手段の搬送方向に直交する断面図である。
【図5】本発明に係る端面撮像装置を用いた撮像方法の一例を説明するための要部拡大平面図であって、ガラス板の搬送方向前方側の直交端面を撮像する方法を説明するための平面図である。
【図6】本発明に係る端面撮像装置を用いた撮像方法の一例を説明するための要部拡大平面図であって、ガラス板の搬送方向後方側の直交端面を撮像する方法を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、ディスプレイ用ガラス基板を製作する過程において、研磨加工を実施したガラス板の端面を撮像する場合を例にとって説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係るガラス板の端面撮像装置を組み込んでなる欠陥検査ライン1の平面図を示している。同図に示すように、この欠陥検査ライン1は、搬送手段3で所定方向に搬送されている最中のガラス板2の搬送方向に直交する向きの直交端面4a,4b及びその近傍を撮像するガラス板の端面撮像装置5と、端面撮像装置5で撮像して得た画像情報に基づき、ガラス板2の直交端面4a,4b及びその近傍に存在する欠陥の有無を判定する判定手段6とを具備している。以下、本発明に係る端面撮像装置5の詳細を説明する。
【0033】
ガラス板の端面撮像装置5は、搬送手段3と、水平状態で搬送されるガラス板2の直交端面4a,4b及びその近傍を撮像する撮像手段7と、撮像手段7を、ガラス板2の搬送方向に対して斜め方向に移動させる移動手段8と、ガラス板2の搬送時、撮像手段7と直交端面4a,4bとの距離を一定に保ちつつ、撮像手段7を移動手段8により直交端面4a,4bに沿って移動可能とする移動制御手段9とを具備する。この実施形態では、撮像手段7は、ガラス板2の搬送方向前方側の直交端面4aを撮像するための第一の撮像手段7aと、搬送方向後方側の直交端面4bを撮像するための第二の撮像手段7bとからなり、夫々対応する移動手段8で、第一の撮像手段7aが搬送方向前方側の直交端面4aに沿って(言い換えると、直交端面4aの幅方向一方側から他方側に向けて)移動できると共に、第二の撮像手段7bが搬送方向後方側の直交端面4bに沿って移動できるように構成されている。また、この実施形態では、端面撮像装置5は、搬送手段3を、搬送方向に対して斜め方向に横断することで分断する分断スペース10をさらに具備し、この分断スペース10を各撮像手段7a,7bが通過することで、撮像手段7a,7bを各直交端面4a,4bに沿ってそれぞれ移動できるようになっている。
【0034】
撮像手段7(7a,7b)の光学系は、図3に示すように、ハロゲンランプ等の光源11,11と、ガラス板2の端部2a(2b)の表裏両面側に対向配置され、光源11,11からの照射光を受けてガラス板2の直交端面4a(4b)及びその近傍で反射した光を所定の向きに屈曲、集光する一対のプリズム12,12と、プリズム12,12から出射された光をミラー13を介して受光し、これにより直交端面4a(4b)及びその近傍を撮像するカメラ14とで構成されている。この図示例では、ミラー13の背後にバックライト15が設けられている。また、プリズム12,12の手前、言い換えると、ガラス板2の挿入方向後方側には、当該プリズム12,12間に端部2a(2b)を挿入した状態のガラス板2を裏面側から接触支持するための支持ローラ16が配設されている。これにより、ガラス板2の端部2a(2b)を所定の高さに維持しながら、当該端部2a(2b)を一対のプリズム12,12間に挿入できるようになっている。なお、この実施形態では、第一、第二の撮像手段7a,7bは、図2及び図3に示す如く同一の構造であって、かつ図1に示す如く搬送手段3に対して設置する向きのみを180度異ならせた態様を採っているが、各直交端面4a,4bに適した撮像を行うために、異なる構造を採るようにしてもよい。
【0035】
移動手段8は、図1及び図2に示すように、搬送手段3の側に取付けられたレール17と、撮像手段7(7a,7b)の側に取り付けられ、レール17と嵌り合うことでレール17の長手方向に沿って撮像手段7(7a,7b)と一体的に摺動するスライダ18と、図示は省略するが、移動制御手段9からの指令を受けてスライダ18の駆動又は停止を行う駆動部とで構成される。
【0036】
また、この実施形態では、搬送手段3は、ガラス板2を気圧で浮上支持する浮上支持手段19と、浮上支持手段19の側方に配設され、ガラス板2との間で転動することでガラス板2を搬送する搬送ローラ20(小径部20a,大径部20b)とで構成されている。詳細には、図4に示すように、浮上支持手段19の上面部は、複数の開口部を有する板状体(分散板ともいう。)で形成されており、この板状体を下方から上方に向けて通過した加圧エアなどの加圧気体によりガラス板2を浮上支持できるようになっている。また、搬送ローラ20は、ガラス板2の幅方向両端部(搬送方向に直交する向きの両端部)を接触支持する小径部20aと、小径部20aの幅方向外側に位置し、小径部20aより大径の大径部20bとで構成されている。よって、ガラス板2は、浮上支持手段19の上面から所定高さに浮上支持された状態で搬送ローラ20の小径部20aに接触支持され、搬送ローラ20(の小径部20a)との転動に伴い、所定方向に搬送されるようになっている。また、この際、ガラス板2の幅方向位置は、搬送ローラ20の大径部20bによって規制されるようになっている。
【0037】
搬送手段3が上述のように構成される場合、浮上支持手段19には、図1に示すように、浮上支持手段19を斜め方向に横断するようにして分断スペース10が設けられる。また、各撮像手段7a,7bには、分断スペース10上を通過中のガラス板2を浮上支持する移動支持手段21が一体的に設けられる。この移動支持手段21は、上述の浮上支持手段19と同等の支持構造を有するもので、図5や図6に示すように、取り付け先となる撮像手段7a,7bと共に、分断スペース10中を通過できる程度の大きさに形成されている。また、この実施形態では、移動支持手段21は、隣接する浮上支持手段19と略同一の高さ位置に配設されている。なお、撮像手段7(7a,7b)と同期して移動し、上述のようにガラス板2を浮上支持できるのであれば、移動支持手段21を撮像手段7(7a,7b)と別体に設けるようにしても構わない。
【0038】
移動制御手段9は、各撮像手段7a,7bに設けられ、ガラス板2と撮像手段7との相対変位を検知する変位センサ22と、搬送手段3に設けられ、ガラス板2と接触することでその搬送方向位置を検知する位置センサ23と、これら変位センサ22、位置センサ23との間で通信することにより変位センサ22、位置センサ23で検知した情報を取得し、取得した情報に基づき撮像手段7の駆動部に所定の指令(駆動信号又は停止信号など)を送ることで、撮像手段7の移動を制御する制御部24とを有する。
【0039】
このうち、変位センサ22は、図2に示すように、ガラス板2の直交端面4a(4b)と撮像手段7(7a,7b)との水平方向距離(の変位量)を検知するための水平方向変位センサ部22aと、ガラス板2の端部2a(2b)と撮像手段7(7a,7b)との鉛直方向距離(の変位量)を検知するための鉛直方向変位センサ部22bとを有する。そして、例えば水平方向変位センサ部22aにより検知した情報は制御部24へと送られると共に、当該送られた情報に基づき、制御部24から移動手段8の駆動部へ所定の指令が送られ、これにより移動手段8による撮像手段7(7a,7b)の上記斜め方向への移動が制御されるようになっている。また、鉛直方向変位センサ部22bにより検知した情報は制御部24へと送られると共に、当該送られた情報に基づき、制御部24から浮上支持手段19もしくは移動支持手段21へ所定の指令が送られる。これにより、ガラス板2の特に端部2a(2b)の撮像手段7(7a,7b)に対する高さ方向位置が制御されるようになっている。
【0040】
また、位置センサ23のうち、搬送方向前方側の位置センサ(第一の位置センサ23a)については、搬送手段3の搬送方向所定位置に設けられ、搬送中のガラス板2と接触して、当該ガラス板2が搬送方向所定位置に到達したことを検知することにより、制御部24を介して、第一の撮像手段7aが移動を開始するように設定されている。また、位置センサ23のうち、搬送方向後方側の位置センサ(第二の位置センサ23b)については、搬送手段3の搬送方向所定位置に設けられ、搬送中のガラス板2と接触することで、当該ガラス板2が搬送方向所定位置に到達したことを検知し、かつ、ガラス板2が第二の位置センサ23bを完全に通過し、ガラス板2との接触状態が解除されたことを再度検知することにより、制御部24を介して、第二の撮像手段7bが移動を開始するように設定されている。
【0041】
以下、上記構成の端面撮像装置5を用いた直交端面4a,4bの撮像方法について説明する。
【0042】
まず、図5に示すように、搬送中のガラス板2の搬送方向前方側の端部2aが、搬送方向下流側の(図1でいえば左側の)第一の位置センサ23aに到達し、この第一の位置センサ23aと接触することで、ガラス板2の搬送方向前方側の端部2aの位置を検知する。検知した情報は、図1に示す制御部24に送られると共に、当該送られた情報に基づき制御部24から移動手段8に駆動指令が送られ、第一の撮像手段7aが下流側の分断スペース10の長手方向一端側から他端側に向けて移動を開始する。この際、第一の撮像手段7aに設けた水平方向変位センサ部22aと制御部24とにより、第一の撮像手段7aとガラス板2の第一の直交端面4aとの水平距離が一定に保たれるように、第一の撮像手段7aの移動速度が制御される。これにより、第一の直交端面4aが常に撮像可能な位置にあるよう、第一の撮像手段7aを相対配置させながら、第一の直交端面4aに沿って第一の撮像手段7aを移動させることができる。従って、ガラス板2を搬送させながらも、当該ガラス板2と第一の撮像手段7aの衝突を避けて、第一の直交端面4a及びその近傍を幅方向全域にわたって順次撮像することができる。
【0043】
また、第二の直交端面4bについては、図1に示すように、搬送方向上流側の第二の位置センサ23bにガラス板2の搬送方向前方側の端部2aがまず接触した後、ガラス板2との接触状態を維持したままでガラス板2が第二の位置センサ23を完全に通過し、ガラス板2と第二の位置センサ23との接触状態が解除されることで(図6を参照)、ガラス板2の搬送方向後方側の端部2bの位置を間接的に検知する。検知した情報は図1に示す制御部24に送られると共に、当該送られた情報に基づき制御部24から移動手段8に駆動指令が送られ、第二の撮像手段7bが上流側の分断スペース10の長手方向一端側から他端側に向けて移動を開始する。この際、第二の撮像手段7bに設けた水平方向変位センサ部22aと制御部24とにより、第二の撮像手段7bとガラス板2の第二の直交端面4bとの水平距離が一定に保たれるように、第二の撮像手段7bの移動速度が制御される。これにより、第二の直交端面4bが常に撮像可能な位置にあるよう、第二の撮像手段7bを相対配置させながら、第二の直交端面4bに沿って第二の撮像手段7bを移動させることができる。従って、ガラス板2を搬送させながらも、当該ガラス板2と第二の撮像手段7bとの衝突を避けて、第二の直交端面4b及びその近傍を幅方向全域にわたって順次撮像することができる。
【0044】
また、この実施形態では、各撮像手段7a,7bに支持ローラ16を設けるようにした。具体的には、頂点の高さ位置が、浮上支持手段19で浮上支持された状態のガラス板2の裏面よりも若干高くなるように支持ローラ16を設けるようにした。このように構成することで、ガラス板2が浮上支持手段19からの浮上力を受けない分断スペース10上を通過する間であって、端部2a(2b)が撮像可能な水平方向位置まで到達した際には、当該端部2a(2b)が支持ローラ16に僅かに乗り上げる形で支持される(図3を参照)。これにより、端部2a(2b)の撮像箇所が所定の高さ位置に保たれるので、カメラ14の焦点を合わせることができる。
【0045】
また、この実施形態では、撮像手段7(7a,7b)に移動支持手段21を設け、撮像手段7(7a,7b)の移動に伴い、分断スペース10のうち、撮像手段7本体からガラス板2の撮像側となる端部2a(2b)までの領域を埋めるように移動させるようにした。これにより、ガラス板2の端部2a(2b)のうち今まさに撮像しようとしている箇所の近傍を移動支持手段21で浮上支持して、ガラス板2が分断スペース10を部分的に通過することにより生じるたわみ又は上下の大きな揺れを防ぐことができる。従って、端部2a(2b)の撮像箇所を所定の高さ位置に保って、カメラ14の焦点を維持することができる。
【0046】
加えて、この実施形態では、撮像手段7(7a,7b)に設けた水平方向変位センサ部22aと鉛直方向変位センサ部22bとで、ガラス板2の撮像手段7(7a,7b)に対する水平方向位置ないし鉛直方向位置を検知し、検知した情報を制御部24により撮像手段7(7a,7b)の移動や、浮上支持手段19、移動支持手段21の浮上力にフィードバックするようにした。これにより、撮像手段7に対するガラス板2の相対位置精度を一層高めて、高い撮像精度を確保することが可能となる。
【0047】
なお、上述した第一の撮像手段7aに設けた水平方向変位センサ部22aで検知した値が大きく変動した場合には、第一の撮像手段7aの移動速度(の搬送方向成分)をガラス板2の搬送速度よりも高めて、第一の撮像手段7aとガラス板2とが確実に衝突しない程度の距離にまで両者を引き離すように設定することも可能である。また、第二の撮像手段7bに設けた水平方向変位センサ部22aで検知した値が大きく変動した場合には、第二の撮像手段7bを停止させて、第二の撮像手段7aとガラス板2とが確実に衝突しない程度の距離にまで両者を引き離すように設定することも可能である。
【0048】
また、この実施形態では、図1に示すように、ガラス板2の搬送方向に平行な側端面及びその近傍を撮像するための側端面撮像手段25が、浮上支持手段19の側方所定位置、図示例では、第一及び第二の撮像手段7a,7bの上流側に固定配置されている。この場合、まず、搬送中のガラス板2の搬送方向に平行な側端面及びその近傍をその長手方向に沿って側端面撮像手段25で撮像し、然る後、引き続き同方向に搬送されるガラス板2の搬送方向に直交する向きの直交端面4a,4bを、第一及び第二の撮像手段7a,7bで撮像する。撮像して得た画像情報は判定手段6へと送られ、当該送られた画像情報に基づき、ガラス板2の直交端面4a,4b及びその近傍に存在する欠陥の有無が判定される。そして、カケや傷などの欠陥が存在すると判定されたワーク(ガラス板2)については製造ラインから排除され、特に欠陥が認められなかったワーク(ガラス板2)については次工程へと送られる。このようにして、ガラス板2の4辺全ての端面に対する欠陥検査が全数にわたって実施される。
【0049】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るガラス板の端面撮像装置もしくはその撮像方法は、当然に本発明の範囲内において任意の形態を採ることができる。
【0050】
上記実施形態では、撮像手段7(7a,7b)に対するガラス板2の高さ方向の制御を、浮上支持手段19ないし移動支持手段21の浮上力で調整したが、例えば移動手段8を、撮像手段7(7a,7b)の搬送手段3に対する相対高さ位置を調整可能な機構とし、移動制御手段9で上記機構を制御するようにしてもよい。
【0051】
また、ガラス板2を浮上支持手段19で支持するのであれば、分断スペース10を設けずとも、例えば図示は省略するが、二次元方向にわたって自在に移動可能な移動手段を設け、この移動手段に撮像手段7(7a,7b)を例えば浮上支持手段19から僅かに上方の位置に吊下げ支持し、これを搬送方向に対して斜め方向に移動させるように制御してもよい。もちろん、これに合わせて、光学系についても図示以外の構造を採ることが可能である。
【0052】
また、本発明に係る端面撮像装置およびその撮像方法は、ディスプレイ用ガラス基板を製作する過程において、研磨加工を実施したガラス板の端面を撮像する場合に限らず、端面観察を必要とする他用途のガラス板に対しても好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 欠陥検査ライン
2 ガラス板
2a,2b (搬送方向前後の)端部
3 搬送手段
4a,4b ガラス板の搬送方向に直交する直交端面
5 端面撮像装置
6 判定手段
7(7a,7b) 撮像手段
8 移動手段
9 移動制御手段
10 分断スペース
11 光源
12 プリズム
13 ミラー
14 カメラ
15 バックライト
16 支持ローラ
17 レール
18 スライダ
19 浮上支持手段
20 搬送ローラ
21 移動支持手段
22 変位センサ
22a 水平方向変位センサ部
22b 鉛直方向変位センサ部
23(23a,23b) 位置センサ
24 制御部
25 側端面撮像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平状態でガラス板を所定方向に搬送する搬送手段と、
前記搬送手段で搬送される前記ガラス板の搬送方向と直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段を、前記ガラス板の搬送方向に対して斜め方向に移動させる移動手段と、
前記ガラス板の搬送時、前記撮像手段と前記直交端面との距離を一定に保ちつつ、前記撮像手段を前記移動手段により前記直交端面に沿って移動可能とする移動制御手段とを具備したガラス板の端面撮像装置。
【請求項2】
前記撮像手段を2台具備し、一方の前記撮像手段を前記ガラス板の搬送方向前方側に位置する前記直交端面に沿って移動可能とし、かつ、他方の前記撮像手段を前記ガラス板の搬送方向後方側に位置する前記直交端面に沿って移動可能とした請求項1に記載のガラス板の端面撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、前記ガラス板の端面を表裏両面側に跨って撮像可能としたもので、
前記搬送手段はガラス板の下方に配設されると共に、この搬送手段を搬送方向に対して斜め方向に横断することで分断する分断スペースを有し、
前記分断スペースを前記撮像手段が通過することで、前記撮像手段を前記直交端面に沿って移動可能とした請求項1又は2に記載のガラス板の端面撮像装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記ガラス板を気圧で浮上支持する浮上支持手段と、該浮上支持手段の側方に配設され、前記ガラス板との間で転動することで前記ガラス板を搬送する搬送ローラとで構成され、
前記浮上支持手段に前記分断スペースが設けられ、
前記撮像手段と同期して移動し、前記分断スペース上を通過中の前記ガラス板を浮上支持する移動支持手段をさらに具備した請求項3に記載のガラス板の端面撮像装置。
【請求項5】
前記搬送手段の側方に固定配置され、水平状態で搬送される前記ガラス板の搬送方向に平行な側端面及びその近傍を撮像する側端面撮像手段をさらに具備した請求項1〜4の何れかに記載のガラス板の端面撮像装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のガラス板の端面撮像装置と、前記撮像手段で撮像して得た画像情報に基づき、前記直交端面及びその近傍に存在する欠陥の有無を判定する判定手段とを具備したガラス板の欠陥検査ライン。
【請求項7】
撮像手段を用いて、水平状態で搬送されるガラス板の搬送方向と直交する向きの直交端面及びその近傍を撮像する方法において、
前記ガラス板の搬送時、前記撮像手段と前記直交端面との距離を一定に保ちつつ、前記撮像手段を前記ガラス板の搬送方向に対して斜め方向に移動させることで、前記撮像手段を前記直交端面に沿って移動可能としたことを特徴とするガラス板の端面撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−163358(P2012−163358A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21815(P2011−21815)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】