説明

ガラス板を洗浄するための洗浄液体の噴射装置

【課題】 ガラス板の拭き取り機構に対して洗浄液体を噴射するための、簡潔でかさばらない噴射装置を提供する。
【解決手段】 噴射装置(20)は、ガラス板(14)に対するワイパーブレード(12)の掃引運動に連係して、ワイパーブレード(12)のブレードラバー(18)の前方に面して、実質的に長手方向の軸を有するジェット流の形態の洗浄液体を噴射し、かつガラス板(14)の近傍において、ワイパーブレード(12)を左右に二等分する、長手方向に延びる垂直面上に垂直に配置されている。さらに噴射装置(20)は、保持具(16)上に取り付けられており、ブレードラバー(18)は、掃引運動中に、ブレードラバー(18)の一部分(24)が前記垂直面の後方に位置するように、弾性変形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掃引運動中に、ワイパーブレードの前方に洗浄液体を噴射しうるようになっている、ガラス板上に洗浄液体を噴射するための噴射装置の構成に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、ガラス板を洗浄するための拭き取り機構に対して、洗浄液体を噴射するための噴射装置であって、拭き取り機構は、ガラス板に対して、垂直軸を中心として掃引するように可動的に取り付けられており、かつ実質的に長手方向に延在している上部保持具と下部ブレードラバーとを有するワイパーブレードを備えており、また、ガラス板に対するワイパーブレードの掃引運動に連係して、ブレードラバーの前方に面して、実質的に長手方向の軸を有するジェット流の形態の洗浄液体を噴射するように、ワイパーブレードに対して配置されており、かつガラス板の近傍において、ワイパーブレードを左右に2等分する、長手方向に延びる垂直面上に垂直に配置されている構成に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、ガラス板を拭くワイパーブレードを、実質的に垂直な軸を中心として駆動する駆動アームを備えた、自動車のガラス板の拭き取り機構を開示している。
【0004】
駆動アームは、ガラス板の洗浄液体を噴射するための装置を保持している。
【0005】
特許文献1によれば、ワイパーブレードは、アームとワイパーブレードとの上部リンク部に位置する上部長手方向軸のまわりに可動に、アームに連結して取り付けられている。
【0006】
さらに、洗浄液体の噴射装置は、ガラス板の近傍において、アームに対するワイパーブレードの連結部の長手方向軸を通る、長手方向に延びる垂直面上に配置されている。噴射装置は、実質的に長手方向に延びる、ワイパーブレードの垂直対称面に平行な、実質的に長手方向の軸を有するジェット流の形態の洗浄液体を噴射する。
【0007】
したがって、ガラス板を拭いている間、ワイパーブレードは、アームに対して、上部長手方向軸のまわりに、アームの移動方向に関して遅れて回動する。したがって、アームは、ワイパーブレードを「引き寄せる」。
【0008】
そのために、ワイパーブレードのブレードラバーは、どちらの移動方向においても、洗浄液体ジェット流の長手方向軸に関して、後方にずらされる。
【0009】
したがって、ガラス板に対する、垂直連結軸のまわりのアーム、およびワイパーブレードの掃引方向がどちらであっても、洗浄液体のジェット流は、ブレードラバーの前方に噴射される。
【0010】
しかしながら、この可動連結構造は、比較的複雑でかさばっている。したがって、この構造は、自動車のフロントガラス上に装着したときに、外部視界に影響を及ぼすおそれがある。
【0011】
さらに、アームに対するワイパーブレードの可動連結構造のために、ブレードラバーは、ガラス板における掃引領域よりも下の領域を拭く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】ドイツ国特許公開第1755762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記した欠点を克服することを可能にする、ブレードラバーの前方に洗浄液体を噴射するための噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明の噴射装置は、上部保持具上に取り付けられていること、および掃引運動中に、ブレードラバーの一部分が、ワイパーブレードを左右に二等分する、長手方向に延びる垂直面の後方に位置するように、ブレードラバーが弾性変形できることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の他の特性によれば、次のことが、個別に、または組み合わせて適用されている。
− ブレードラバーは、上部保持具に固定されているこぶ状上部、ガラス板に接する下部掻き取り部、およびこぶ状上部と下部掻き取り部との間に垂直方向に配置された中間連結部を有しており、かつワイパーブレードの掃引運動中に、下部掻き取り部が上述の垂直面の後方に位置するように、ブレードラバーの、実質的に長手方向の軸のまわりに、概ね弾性的に変形することができる。
− 噴射装置は、ワイパーブレードの垂直掃引軸の近傍に位置している、上部保持具の長手方向端に取り付けられている。
− 噴射装置は、上部保持具に取り外し可能に固定されている先端部を介して、上部保持具の長手方向端に取り付けられている。
− 先端部は、ブレードラバーに対して、噴射装置を長手方向に位置決めするための手段を備えている。
− 先端部は、噴射装置の両側面において横方向に延在している空気力学的なデフレクタを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による噴射装置の構成を示す斜視略図である。
【図2】ガラス板に対してワイパーブレードを左方から右方に掃引したときの、ブレードラバーに対する噴射装置の位置を示す、図1の構成の断面図である。
【図3】ガラス板に対して、ワイパーブレードを右方から左方に掃引したときの、ブレードラバーに対する噴射装置の位置を示す、図1の構成の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特性および利点が明白になると思う。
【0018】
以下の本発明の説明において、垂直方向、長手方向、および横方向は、図面に示されているV、L、T座標にしたがう方向を非限定的に示している。
【0019】
図1は、自動車のフロントガラスのようなガラス板14の上部外面14sを拭くためのアーム10およびワイパーブレード12を示している。
【0020】
アーム10の第1の端部10aは、実質的に垂直な連結軸Aのまわりに回転可能に、車両本体の構造部材15に連結されており、またアーム10の第2の端部10bは、ワイパーブレード12を支持している。
【0021】
ワイパーブレード12は、フラットブレードタイプの、高さの低いワイパーブレードである。ワイパーブレード12は、コネクタ(図示せず)によって、横方向軸Bのまわりに回転可能に、アーム10の第2の端部10bに連結されて取り付けられている、長手方向に延在する保持具16を備えている。保持具16は、ガラス板14を拭くためのブレードラバー18を保持している。
【0022】
洗浄液体を噴射するための噴射装置20は、ガラス板に対するワイパーブレード12の掃引運動に連係して、ワイパーブレード12の前方のガラス板14の上部外面14s上に洗浄液体を噴射するように構成されている。すなわち、図2に矢印F1によって示されているように、ワイパーブレードが、左方から右方に移動するときに、噴射装置20は、ワイパーブレード12の右方に洗浄液体を噴射し、また図3に矢印F2によって示されているように、ワイパーブレードが、右方から左方に移動するときに、噴射装置20は、ワイパーブレード12の左方に洗浄液体を噴射する。
【0023】
図2および図3に示されているように、噴射装置20は、ガラス板14の上部外面14sの近傍において、保持具16を左右に二等分する、長手方向に延びる垂直面P上に配置されている。
【0024】
本発明によれば、噴射装置20は、ワイパーブレード12の前方に洗浄液体を噴射するように、ワイパーブレード12の保持具16上に取り付けられている。ワイパーブレード12は、その掃引運動中、ブレードラバー18が弾性変形して、ワイパーブレード12の運動方向に関して、垂直面Pの後方に位置することができるように作られている。
【0025】
ブレードラバー18は、保持具16に固定されているこぶ状上部22、およびV字形状の断面を有する下部掻き取り部24を有している。下部掻き取り部24の下端24iは、ガラス板の上部外面14sに接する。
【0026】
ブレードラバー18は、さらに、こぶ状上部22と下部掻き取り部24とを連結している中間部26を有している。
【0027】
ブレードラバー18のこぶ状上部22を保持するために、保持具16は、その下部に、対向し合って、長手方向に延在する2つのかぎ状部28を有している。2つのかぎ状部28は、ブレードラバー18のこぶ状上部22が取り付けられている、下方に開口している管状のリセスを画定している。
【0028】
本発明によれば、ブレードラバー18の中間部26は弾性変形することができ、ワイパーブレード12の掃引運動中、湾曲し、その結果、下部掻き取り部24は、ワイパーブレード12の運動方向に関して、後方に位置することができる。
【0029】
上述のように、噴射装置20は、ワイパーブレード12の保持具16上に直接取り付けられている。
【0030】
好適な一実施形態によれば、噴射装置20は、保持具16の端部16a上に取り付けられている。保持具16の端部16aは、アーム10の垂直な連結軸Aの近傍に位置していることが好ましい。
【0031】
これによって、噴射装置20の洗浄液体供給導管30の長さを短くすることができる。
【0032】
さらに、本発明の構成による噴射装置20は、比較的目立たない。
【0033】
本発明の別の一態様によれば、ワイパーブレード12は、保持具16に取り付けられており、かつ噴射装置20を保持している先端部32を備えている。
【0034】
使用中のワイパーブレード12を、別の新しいワイパーブレード12に取り換える際に、先端部32の保持具16への着脱を容易にするために、この先端部32は、保持具16に取り外し可能に取り付けられている。
【0035】
これによって、同じ噴射装置20を使用し続けることができ、したがって、ワイパーブレード12の交換時に、ユーザが支払う金額を少なくすることができる。
【0036】
一代替実施形態によれば、例えば位置調整用のストッパ系(図示せず)を用いることによって、保持具16に対する、先端部32の長手方向位置が調整可能である。それによって、ブレードラバー18に対して、噴射装置20を正確に位置決めすることができる。
【0037】
先端部32の別の一代替実施形態によれば、先端部32は、実質的に長手方向にまっすぐに延在しており、かつ噴射装置20の両側面において横方向に配置されている、すなわち、横方向に噴射装置20を覆っている、空気力学的なデフレクタ(図示せず)を備えている。
【0038】
このデフレクタは、車両の移動中に引き起こされる、洗浄液体のジェット流を逸らし得る空気力学的な攪乱を制限するように作られている。
【符号の説明】
【0039】
10 アーム
10a 第1の端部
10b 第2の端部
12 ワイパーブレード
14 ガラス板
14s 上部外面
15 構造部材
16 保持具
16a 端部
18 ブレードラバー
20 噴射装置
22 こぶ状上部
24 下部掻き取り部
24i 下端
26 中間部
28 かぎ状部
30 洗浄液体供給導管
32 先端部
A 連結軸
B 横方向軸
1、F2 矢印
P 垂直面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板(14)を洗浄するための拭き取り機構(10、12)に対して洗浄液体を噴射するための噴射装置(20)であって、
前記拭き取り機構は、前記ガラス板(14)に対して、垂直掃引軸(A)を中心として掃引するように可動に取り付けられており、かつ実質的に長手方向に延在している上部保持具(16)と下部ブレードラバー(18)とを有するワイパーブレード(12)を備えており、前記噴射装置(20)は、前記ガラス板(14)に対する前記ワイパーブレード(12)の掃引運動に連係して、前記下部ブレードラバー(18)の前方に面して、実質的に長手方向の軸を有するジェット流の形態の洗浄液体を噴射するように、前記ワイパーブレード(12)に対して配置されており、かつ前記ガラス板(14)の近傍において、前記ワイパーブレード(12)を左右に二等分する、長手方向に延びる垂直面上に垂直に配置されている構成において、前記噴射装置(20)は、前記上部保持具(16)上に取り付けられていること、および前記下部ブレードラバー(18)は、前記掃引運動中に、該下部ブレードラバー(18)の一部分が前記垂直面の後方に位置するように、弾性変形できるようになっていることを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記下部ブレードラバー(18)は、前記上部保持具(16)に固定されているこぶ状上部(22)、前記ガラス板(14)に接する下部掻き取り部(24)、および該こぶ状上部(22)と該下部掻き取り部(24)との間に垂直方向に配置された中間連結部(26)を有しており、かつ前記ワイパーブレード(12)の掃引運動中に、前記下部掻き取り部(24)が前記垂直面の後方に位置するように、該下部ブレードラバー(18)の、実質的に長手方向の軸のまわりに、概ね弾性的に変形することができることを特徴とする、請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
前記噴射装置(20)は、前記ワイパーブレード(12)の垂直掃引軸(A)の近傍に位置している、前記上部保持具(16)の長手方向端(16a)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の噴射装置。
【請求項4】
前記噴射装置(20)は、前記上部保持具(16)に取り外し可能に固定されている先端部(32)を介して、前記上部保持具(16)の長手方向端(16a)に取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載の噴射装置。
【請求項5】
前記先端部(32)は、前記下部ブレードラバー(18)に対して、前記噴射装置(20)を長手方向に位置決めするための手段を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の噴射装置。
【請求項6】
前記先端部(32)は、前記噴射装置(20)の両側面において横方向に延在している空気力学的なデフレクタを備えていることを特徴とする、請求項4または5に記載の噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−527840(P2010−527840A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509771(P2010−509771)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055478
【国際公開番号】WO2008/148614
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509329213)
【Fターム(参考)】