説明

ガラス管とその製造方法、およびそれを用いた蛍光ランプ

【課題】ガラス管を用いた各種製品の製造工程全体にわたって表面傷を生じにくくすることによって、表面傷に起因するガラス管の強度低下や品質低下等を再現性よく抑制する。
【解決手段】ガラス管本体と、前記ガラス管本体の外周面に形成されたシリカ系付着物とを具備するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガラス管とその製造方法、およびそれを用いた蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の光源としては、一般的にバックライト用蛍光ランプが使用されている。バックライト用蛍光ランプに用いられるガラス管は、照明用蛍光ランプのガラス管と比較して管径が非常に細く、また肉厚も薄い。そのため、製造工程、搬送工程、輸送工程等において、ガラス管表面に僅かな傷がつくだけで、ガラス管の機械的強度が著しく低下し、後工程でガラス管が割れる等の問題が生じやすい。
【0003】
ガラス管の細径化や薄肉化はバックライト用蛍光ランプに限らず、電球型蛍光ランプ用ガラス管やネオン管等においても進められている。また、蛍光ランプの製造時に用いられる排気管やダイオードを封入する封入管等にも、細径で薄肉のガラス管が用いられている。また、内部に封入された放電ガスで内面に形成された蛍光体を励起して発光するガラス管を一方向に複数配列し、ガラス管の背面に配置した電極にて発光を制御することで、任意の画像を表示する表示装置が知られており、このガラス管にも細径で薄肉のガラス管が用いられている。特に、電球型蛍光ランプは白熱電球とほぼ同じ外径寸法まで小型化が進められており、小型でも従来とほぼ同じ明るさを保つために、限られた内部空間にできるだけ長い蛍光管を納めることで発光面積を増やす等の工夫がなされている。これらに対応するため、電球型蛍光ランプに用いられるガラス管には外径の細径化が要求されている。
【0004】
ガラス管は、成形直後においては表面に傷等が存在しないものの、製造工程における搬送、保管、輸送中にガラス管同士が接触したり、また他の部材と接触することで表面に傷が付くことがある。このようなガラス管に曲げ応力等が作用すると、傷を起点にして割れることがある。特に、管径の細いガラス管は肉厚も薄いため、僅かな傷により強度が著しく低下し、製造工程等でガラス管が割れる等の問題が生じるおそれがある。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1には蛍光灯用管ガラスの表面に適切な量の水溶性物質の塗膜を形成することによって、傷の発生を抑制することが記載されている。ここには何も塗布していないガラス管に比べ、表面に水溶性物質の塗膜を形成したガラス管はベルトコンベアによる搬送時のすべり性が向上すると記載されている。また、特許文献2には表面に水溶性の保護膜が塗布形成されたガラス製品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−14545号公報
【特許文献2】特開2000−211947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水溶性物質からなる保護膜は水洗工程で容易に除去できるという利点があるものの、保護膜が除去された水洗工程以降の工程ではガラス管表面の傷を抑制することはできない。例えば、蛍光ランプの製造工程においてはガラス管の水洗工程後に、蛍光体の塗布工程、焼成工程、電極の形成工程、組み立て工程等の多くの工程が実施される。これら各工程や工程間の搬送時においては、ガラス管の表面には保護膜が存在しておらず、傷が入りやすい状態となっている。
【0008】
本発明の目的は、ガラス管を使用した各種製品の製造工程全体にわたって傷が生じにくく、表面傷に起因する強度低下等を抑制することを可能にしたガラス管とその製造方法、さらにはそのようなガラス管を適用した蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るガラス管は、ガラス管本体と、前記ガラス管本体の外周面に形成されたシリカ系付着物とを具備することを特徴としている。
【0010】
本発明の一態様に係るガラス管の製造方法は、ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程と、前記シリコーン樹脂を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備することを特徴としている。
【0011】
本発明の他の態様に係るガラス管の製造方法は、ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程と、前記非晶質シリカ粒子を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備することを特徴としている。
【0012】
本発明の一態様に係る蛍光ランプは、本発明の態様に係るガラス管と、前記ガラス管の内壁面に設けられた蛍光膜と、前記ガラス管の両端に設けられた一対の電極と、前記ガラス管内に封入された放電媒体とを具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の態様に係るガラス管とその製造方法によれば、ガラス管の焼成工程前のみならず、焼成工程後においても表面傷の発生を抑制することができる。従って、表面傷に起因する強度低下、さらには強度低下に起因する割れの発生等を抑制したガラス管を再現性よく提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例4においてシリカ系付着物を形成したガラス管の外周面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一態様に係るガラス管の製造方法について説明する。
この実施形態によるガラス管の製造方法は、ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程と、前記シリコーン樹脂を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備する。
ガラス管を成形する工程は、公知の成形法を適用してガラス管を成形する。例えば、ダンナー法やベロー法等で管引きされたガラス管は、成形工程の最後に切断され、所定の長さのガラス管が作製される。このような成形工程において、管引きされたガラス管の冷却後から切断工程までの間、また場合によっては切断工程後に、ガラス管の外周面(外周側の表面部)にシリコーン樹脂を含む層を形成する。
【0016】
ガラス管の材質は特に限定されるものではなく、ガラス管の用途に応じて各種のガラスを使用することができる。例えば、硼珪酸ガラスやソーダガラス等の珪酸塩ガラスで作製したガラス管が適用される。ガラス管の形状も特に限定されるものではなく、使用用途に応じて各種形状のガラス管を適用することができる。例えば、蛍光ランプ用ガラス管であって、管径が6mm以下、肉厚が2mm以下というような細径で薄肉のガラス管に対しては特に有効である。
【0017】
ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程は、塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションを含む塗布液をガラス管の外周面に塗工した後、前記塗布液を加熱乾燥させてシリコーン樹脂を含む層を形成する方法、剥離紙用シリコーンエマルションを含む塗布液をガラス管の外周面に塗工した後、前記塗布液を加熱硬化させてシリコーン樹脂を含む層を形成する方法が好ましく用いられる。
前記エマルションを含む塗布液を用いることで、塗布液をガラス管の外周面に塗工した際の塗布ムラが起こりにくく、均一な厚さのシリコーン樹脂を含む層を形成することが可能である。そのため、塗布後のガラス管の外観が塗布ムラに起因する曇り(光の透過性が低くなる現象)が発生することがない。また、シリコーン樹脂は、加熱乾燥もしくは加熱硬化することで、ガラス管の外周面に滑性を付与することができるため、ガラス管を焼成する前もガラス管の表面を保護する機能を有し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制することができる。
【0018】
ガラス管の外周面に対する塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションの塗工方法は特に限定されるものではなく、各種公知の塗工方法を適用することができる。例えば、ガラス管をエマルション中に浸漬する方法、ガラス管の外周面にエマルションをスプレーする方法、ガラス管の外周面にエマルションをしみ込ませた部材を接触させる方法、ガラス管の外周面にエマルションを刷毛塗りする方法等が適用される。
【0019】
前記塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションは、一般に使用されている建築、土木用の弾性コーティング材等を用いることができる。
具体的には、KM9717、X−52−8005、X−51−1302M、Polon−MF−28、X−52−8148(いずれも信越シリコーン株式会社製)等が挙げられる。
【0020】
前記剥離紙用シリコーンエマルションは、シリコーンの中でも、特に離型性に優れる直鎖状のジメチルポリシロキサンを分子内に含むシリコーンを主剤とする。剥離紙用シリコーンエマルションは、上記した主剤と、架橋剤と、を含み、触媒を用いて硬化させることによってガラス管の表面に固定する。剥離紙用シリコーンエマルションから形成されるシリコーン樹脂を含む層は、優れた離型性を有している。従って、特に焼成前において、ガラス管の表面に著しい滑性を付与し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
前記剥離紙用シリコーンエマルションは、その硬化機構により縮合反応型のシリコーンエマルション、付加反応型のシリコーンエマルション、紫外線硬化型のシリコーンエマルション、電子線硬化型のシリコーンエマルションに分類される。本発明では、これらのいずれも使用することができる。これらの中でも硬化反応のし易さ、硬化皮膜を形成した際に滑性を有するシリコーン樹脂を含む層を形成しやすい観点から付加反応型のシリコーンエマルションが最も好ましい。
【0022】
前記付加反応型のシリコーンエマルションは、両末端および/または側鎖中にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなる主剤と、分子内にハイドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンからなる架橋剤とを含み、白金系触媒の存在下で加熱硬化反応させるものである。
両末端および/または側鎖中にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンは、下記[化1]および[化2]で表される化合物である。[化1]式中のm,nは整数を表し、0であってもよい。mが0の場合、両末端にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとなる。mが1以上の整数の場合、両末端および側鎖中にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとなる。また、[化2]式中のmは2以上の整数、nは整数を表し、0であってもよい。この場合、側鎖中にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとなる。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
分子内にハイドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンは、下記[化3]式で表される化合物であり、式中のaは整数を表し、bは1以上の整数を表す。なお、メチルハイドロジェンポリシロキサンの末端のメチル基の一部は水素原子や水酸基であってもよい。
【0026】
【化3】

【0027】
本発明において、好適な付加反応型のシリコーンエマルションとしては、具体的には、KM3951、KM−768(いずれも信越シリコーン株式会社製)、SM3200(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、シリコリース902(荒川化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
ガラス管の外周面に形成されるシリコーン樹脂を含む層は、1種類の塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションのみで形成されていてもよいが、2種以上の塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションを用いて形成されていてもよい。2種以上の塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションを用いて形成されている場合、2種以上の塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションが互いに積層された多層構造のシリコーン樹脂層となっていてもよいし、1層中に2種以上の塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションを含んだ混合シリコーン樹脂層となっていてもよい。
【0029】
ガラス管の外周面への塗工方法としてスプレーコート法を選択した場合には、塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルション中の固体成分の濃度は0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。固体成分の濃度が0.1質量%未満であると、焼成後のガラス管の外周面に形成されるシリカ系付着物の形成量が十分でなく、ガラス管の表面を保護する機能が得られないおそれがある。固体成分の濃度が10質量%を超えると、焼成後のガラス管の外周面に形成されるシリカ系付着物の形成量が過剰となり、後に詳述するようにガラス管の外観が低下するおそれがある。なお、これら塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションは、適量の水に分散することで塗工方法に適した濃度に調整することが可能である。
【0030】
シリコーン樹脂を含む層を有するガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程は、外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成したガラス管を焼成することで、ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成するものである。
ガラス管の外周面のシリカ系付着物は、外周面に形成されたシリコーン樹脂を焼成によりシリカ化することで形成されるものであり、構成成分としてシリカを備えるものである。ガラス管の外周面に形成されたシリコーン樹脂を含む層は、ガラス管の焼成によって大気中で高温雰囲気に急激に晒されるため、シリコーン樹脂が酸化されシリカ化してガラス管表面に残留するものと考えられる。ガラス管の外周面に形成されたシリカ系付着物は、焼成後のガラス管の表面を保護する機能を有し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制する。
外周面にシリコーン樹脂を含む層を有するガラス管全体を焼成する際の焼成温度は、550℃以上700℃以下の範囲であることが好ましい。焼成温度が550℃未満であると、ガラス管とシリカ系付着物との付着性が劣るおそれがある。また、焼成温度の上限温度は、ガラス管が形状を維持できる温度との観点から700℃以下であることが好ましい。
【0031】
上述したように、焼成によるシリカ系付着物の形成を実施する以前のガラス管の外周面にはシリコーン樹脂を含む層が形成されている。さらに、焼成後のガラス管の外周面には、シリコーン樹脂の焼成残渣に基づくと考えられるシリカ系付着物が形成されている。従って、ガラス管を用いた蛍光ランプの各種製造工程や搬送工程等において、ガラス管表面を保護する構成が消失することがないため、ガラス管の製造後から焼成前および焼成後のいずれにおいても、ガラス管の表面に傷が生じにくく、表面傷に基づくガラス管の割れ不良や品質の低下等を抑制することが可能となる。
【0032】
シリコーン樹脂を含む層を有するガラス管を焼成する工程は、この目的のためだけに実施してもよいが、この実施形態のガラス管を使用した各種製品の焼成工程、例えば蛍光ランプの製造工程における蛍光膜の形成工程と兼ねて実施してもよい。すなわち、蛍光ランプの製造工程においては、ガラス管の内壁面に蛍光体スラリーを塗布した後、ガラス管全体を焼成して蛍光膜を形成する。このような蛍光膜の形成工程において、ガラス管の内壁面に塗布された蛍光体スラリーの焼成(定着)と同時に、ガラス管の外周面に形成されたシリコーン樹脂を含む層を焼成することによって、上記したようなガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成することができる。
【0033】
本発明の他の態様に係るガラス管の製造方法について説明する。
この実施形態によるガラス管の製造方法は、ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程と、前記非晶質シリカ粒子を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備する。
ガラス管を成形する工程は、公知の成形法を適用してガラス管を成形する。例えば、ダンナー法等で管引きされたガラス管は、成形工程の最後に切断され、所定の長さのガラス管が作製される。このような成形工程において、管引きされたガラス管の冷却後から切断工程までの間、また場合によっては切断工程後に、ガラス管の外周面(外周側の表面部)に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する。
【0034】
ガラス管の材質は特に限定されるものではなく、ガラス管の用途に応じて各種のガラスを使用することができる。例えば、硼珪酸ガラスやソーダライムガラス等の珪酸塩ガラスで作製したガラス管が適用される。ガラス管の形状も特に限定されるものではなく、使用用途に応じて各種形状のガラス管を適用することができる。例えば、蛍光ランプ用ガラス管であって、管径が6mm以下、肉厚が2mm以下というような細径で薄肉のガラス管に対しては特に有効である。
【0035】
ガラス管の外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程は、非晶質シリカ粒子を含む塗布液、もしくは加熱により非晶質シリカ粒子を形成しうるケイ素化合物を含む塗布液をガラス管の外周面に塗工した後、加熱乾燥させて非晶質シリカ粒子を含む層を形成する方法が用いられる。
前記非晶質シリカ粒子を含む塗布液もしくは加熱により非晶質シリカ粒子を形成しうるケイ素化合物を含む塗布液を用いることで、塗布された状態(焼成前)や焼成後のガラス管の外観状態(光の透過性)に影響を与えることがない。これは、非晶質シリカ粒子は焼成前後での寸法変化がほとんどなく、平均粒子径が非常に小さい(本願では、5nm以上200nm以下のものを用いることが好ましい)ため、ガラス管の外周面に分散して形成された場合、光の透過を阻害することがないためである。
上記の方法で形成された非晶質シリカ粒子を含む層は、焼成前までガラス管の表面を保護する機能を有し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制する。
【0036】
ガラス管の外周面に対する塗布液の塗工方法は特に限定されるものではなく、各種公知の塗工方法を適用することができる。例えば、ガラス管を塗布液中に浸漬する方法、ガラス管の外周面に塗布液をスプレーする方法、ガラス管の外周面に塗布液をしみ込ませた部材を接触させる方法、ガラス管の外周面に塗布液を刷毛塗りする方法等が適用される。
【0037】
非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程で用いる塗布液は、水などの分散媒に非晶質シリカ粒子を分散させた分散液や、加熱により非晶質シリカとなり得るケイ素化合物、例えばシリコンアルコキシドなどを溶媒に溶解させてできる溶液を用いることができる。材料の入手のしやすさや安全性、価格面などを考慮すると、特に水性のコロイダルシリカを含む塗布液が好ましく用いられる。
【0038】
コロイダルシリカは、水ガラスを出発物質として酸で中和、もしくはイオン交換によって製造されるコロイダルシリカや、シリコンアルコキシドなどを出発物質としてその加水分解・縮合によって製造されるコロイダルシリカなどがあるが、価格面などから水ガラス由来のコロイダルシリカが好適に用いられる。
【0039】
コロイダルシリカは、平均粒子径が5nm以上200nm以下であることが好ましく、さらには10nm以上100nm以下であることがより好ましい。平均粒子径が5nm未満であると、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制する効果が低くなる。平均粒子径が200nmを超えると、焼成後のガラス管の外観が低下したり、ガラス管とコロイダルシリカとの付着性が劣るおそれがある。
【0040】
塗布液は、コロイダルシリカの他に非晶質シリカ粒子の分散を阻害しない範囲で種々の成分を添加することができる。
塗布液に添加できる成分は、例えばガラス管の外周面に塗布液を用いて非晶質シリカ粒子を含む層を形成することでガラス管表面に滑り性を付与し、さらにガラス管表面の保護機能を高めることを目的とした界面活性剤やワックス成分のエマルション、シリコーン樹脂エマルションなどが好適に用いられる。
【0041】
界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン型界面活性剤、高級脂肪酸のアルカリ塩などのアニオン型界面活性剤を用いることができる。界面活性剤は、ガラス管の外周面に塗工することで高い滑り性を付与することができ、これによりガラス管を焼成する前までガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制することができる。
なお、塗布液中の界面活性剤とコロイダルシリカとの有効成分含有量比(質量換算)は、0/100ないし200/100(界面活性剤/コロイダルシリカ)であることが好ましい。
【0042】
ワックス成分のエマルションは、ポリエチレンを主鎖とし末端もしくは分子内にカルボン酸基やスルホン酸基、アミド基などの官能基を有するワックス成分を乳化懸濁させたものを用いることができる。
ワックス成分のエマルションは、ガラス管の外周面に塗工することで高い滑り性を付与することができる。また、ガラス管を焼成することにより、ワックス成分のエマルションの固体成分の焼成残渣がカーボン系付着物もしくは炭酸塩系付着物のかたちでガラス管の外周面に微量残ることが考えられ、これら付着物により焼成後のガラス管表面に滑り性を付与することができる。これによりガラス管を焼成する前のみならず、焼成後もシリカ系付着物と協働してガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制することができる。
なお、塗布液中のワックス成分のエマルジョンとコロイダルシリカとの有効成分含有量比(質量換算)は、0/100ないし200/100(ワックス成分のエマルジョン/コロイダルシリカ)であることが好ましい。
【0043】
シリコーン樹脂エマルションは、塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションもしくは剥離紙用シリコーンエマルションを用いることができる。
シリコーン樹脂エマルションは、ガラス管を焼成することで外周面に形成されたシリコーン樹脂が酸化されシリカ化してガラス管表面に残留するものと考えられる。シリコーン樹脂エマルションに由来するシリカ系付着物は、非晶質シリカ粒子に由来するシリカ系付着物と協働し、焼成後のガラス管の表面を保護する機能を有し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生を抑制する。
なお、塗布液中のシリコーン樹脂エマルジョンとコロイダルシリカとの有効成分含有量比(質量換算)は、0/100ないし200/100(シリコーン樹脂エマルジョン/コロイダルシリカ)であることが好ましい。
【0044】
非晶質シリカ粒子を含む層を形成する際に用いる塗布液中のシリカ成分の濃度(固形分)は、0.1〜10質量%の範囲であることが好ましい。塗布液中のシリカ成分の濃度が0.1質量%未満であると、焼成後のガラス管の外周面に形成されるシリカ系付着物の形成量が不十分となり、ガラス管を保護する機能が得られないおそれがある。塗布液中のシリカ成分の濃度が10質量%を超えると、焼成後のガラス管の外周面に形成されるシリカ系付着物の形成量が過剰となり、ガラス管の外観が低下するおそれがある。
【0045】
非晶質シリカ粒子を含む層を有するガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程は、外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成したガラス管を焼成することで、ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成するものである。
ガラス管の焼成において、非晶質シリカ粒子を含む層の非晶質シリカ粒子以外に加えられた成分は消失してしまうものもあるが、非晶質シリカ粒子は焼成後もほとんど変化することなくガラス管表面にシリカ系付着物として残る。このガラス管の外周面に形成されたシリカ系付着物は、焼成後のガラス管の表面を保護する機能を有し、ガラス管同士の接触やこすれ、またガラス管と他部材との接触等による傷の発生が抑制する。
外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を有するガラス管を焼成する際の焼成温度は、550℃以上700℃以下の範囲であることが好ましい。焼成温度が550℃未満であると、ガラス管とシリカ系付着物との付着性が劣るおそれがある。また、焼成温度の上限温度は、ガラス管が形状を維持できる温度との観点から700℃以下であることが好ましい。
【0046】
上述したように、焼成によるシリカ系付着物の形成を実施する以前のガラス管の外周面には非晶質シリカ粒子を含む層が形成されている。さらに、焼成後のガラス管の外周面には、非晶質シリカ粒子がシリカ系付着物として形成されている。従って、ガラス管を用いた蛍光ランプの各種製造工程や搬送工程等においても、ガラス管表面を保護する構成が消失することがないため、ガラス管の製造後から焼成工程前および焼成工程後のいずれにおいても、ガラス管の表面に傷が生じにくく、表面傷に基づくガラス管の割れ不良や品質の低下等を抑制することが可能となる。
【0047】
非晶質シリカ粒子を含む層を有するガラス管を焼成する工程は、この目的のためだけに実施してもよいが、この実施形態のガラス管を使用した各種製品の焼成工程、例えば蛍光ランプの製造工程における蛍光膜の形成工程と兼ねて実施してもよい。すなわち、蛍光ランプの製造工程においては、ガラス管の内壁面に蛍光体スラリーを塗布した後、ガラス管全体を焼成して蛍光膜を形成する。このような蛍光膜の形成工程において、ガラス管の内壁面に塗布された蛍光体スラリーの焼成(定着)と同時に、ガラス管の外周面に形成された非晶質シリカ粒子を含む層を焼成することによって、シリカ系付着物を形成することができる。
【0048】
次に、本発明の一態様に係るガラス管について説明する。本発明のガラス管は、ガラス管本体と前記ガラス管本体の外周面に形成されたシリカ系付着物とを具備している。このシリカ系付着物は、ガラス管の外周面を保護する機能を有し、これによりガラス管の製造後から各種用途の製造工程、組立工程のいずれにおいても、ガラス管の表面に傷が生じにくく、表面傷に基づくガラス管の割れ不良や品質の低下等を抑制することが可能となる。
【0049】
シリカ系付着物は、ガラス管の外周面に点状に存在していることが好ましい。これは、シリカ系付着物の存在によりガラス管の外観や光透過量等に悪影響を及ぼさないようにするためである。例えば、ガラス管を蛍光ランプに使用する場合、ガラス管の外周面が被膜状の付着物で覆われていると光量が低下する。これに対して、付着物を点状に存在させることによって、例えば蛍光ランプの光量の低下を抑制することができる。
【0050】
シリカ系付着物は、5nm以上200nm以下の範囲の大きさを有することが好ましい。このような大きさのシリカ系付着物がガラス管の外周面に形成されていることで、ガラス管の外観や光透過量等に悪影響を及ぼすことなく、ガラス管に対して良好なキズ耐性を付与することができる。シリカ系付着物の大きさが200nmを超えると、ガラス管の光の透過量等が低下するおそれがある。一方、付着物の大きさが5nm未満の場合にはその量にもよるが、ガラス管に対して十分な保護機能を付与することができないおそれがあり、表面傷の抑制効果が低下する。なお、本明細書において、シリカ系付着物の大きさは、走査型電子顕微鏡にて観察した点(粒子)について、ガラス管の外周面(管軸方向や円周方向等)に平行な方向の平均距離寸法をいうものとする。
【0051】
シリカ系付着物は、ガラス管の外周面に550℃以上700℃以下の範囲の温度で焼成されていてもよい。これにより、シリカ系付着物がガラス管に強固に付着し、ガラス管の外周面に外力が作用する状況においてもシリカ系付着物はガラス管から剥離し難く、ガラス管の外周面を保護する機能を確実に維持することができる。
以下はあくまで推測ではあるが、ガラス管がSi成分を含む珪酸塩ガラスである場合、ガラス管の焼成によりシリカ系付着物とガラス管のSi成分とが化学的に結合することで、シリカ系付着物とガラス管との強固な付着に寄与していると考えられる。また、上記焼成時の温度は、ガラス管の軟化点近傍(ガラスの軟化点から50℃〜200℃程度低い温度)であるため、ガラス成分自体がシリカ系付着物と結合しやすい状態になっているものと考えられる。
また、ガラス管を焼成する前、外周面にはシリコーン樹脂を含む層もしくは非晶質シリカ粒子を含む層を形成されているが、これらがガラス管の外周面に形成されることで、ガラス管が製造されてから焼成されるまで間、ガラス管の表面に傷が生じにくく、表面傷に基づくガラス管の割れ不良や品質の低下等を抑制することが可能となる。
【0052】
上述したガラス管は、例えば蛍光ランプの放電空間を形成するガラスバルブとして使用される。特に、ガラス管(ガラスバルブ)の細径化や薄肉化が進められているバックライト用蛍光ランプに適用されるガラス管に好適である。また、電球型蛍光ランプにおいても、ガラス管の細径化や薄肉化が求められていることから、この実施形態のガラス管は有効である。なお、この実施形態のガラス管は蛍光ランプのガラス管以外にも適用可能であり、例えばネオン管用のガラス管、蛍光ランプの製造時に用いられる排気管(ガラス管)、ダイオードを封入する封入管(ガラス管)、表示装置用ガラス管(プラズマチューブ)等が挙げられる。
【0053】
次に、本発明の一態様に係る蛍光ランプについて説明する。蛍光ランプの構成は、本発明の実施形態のガラス管、すなわち外周面にシリカ系付着物層が形成されたガラス管を使用することを除いて、各種公知の構成を適用することができる。すなわち、この実施形態の蛍光ランプは、放電空間を形成するガラス管と、ガラス管の内壁面に設けられた蛍光膜と、ガラス管の両端に設けられた一対の電極と、ガラス管内に封入された放電媒体とを具備している。
【0054】
放電空間を形成するガラス管は、例えば管径が6mm以下、肉厚が2mm以下というような形状を有し、その外周面にシリカ系付着物層が設けられている。本発明の実施形態のガラス管を用いることで、蛍光ランプの製造工程、搬送工程等のいずれにおいても、ガラス管の表面に傷が生じにくく、表面傷に基づくガラス管の割れ不良や品質の低下等を抑制することが可能となる。
このような構成を有する蛍光ランプは、バックライト用蛍光ランプに好適である。また、それ以外の蛍光ランプ、例えば電球型蛍光ランプとしても有効である。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の実施例および比較例とその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変は可能である。
【0056】
実施例および比較例に用いたガラス管は、以下の方法に基づき製造した。
ガラス管は、バックライト用蛍光ランプとして用いられているガラス管(AGCテクノグラス株式会社製、ホウケイ酸ガラス、外径4mm、肉厚0.5mm)を使用した。
ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層もしくは非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程は、前記ガラス管がダンナー法にて管引き成形されたのち、切断される前のタイミングで実施例等に記載の塗布液をスプレー法にて塗工することで行った。なお、塗布液を塗工する時点でのガラス管の温度は200℃前後であり、この状態でガラス管の外周面に塗布液を塗工することで、塗布液は加熱され、乾燥もしくは硬化する。なお、各実施例および比較例は、塗布液の構成のみが相違するものである。
【0057】
シリコーン樹脂を含む層もしくは非晶質シリカ粒子を含む層を有するガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程は、外周面にシリコーン樹脂を含む層もしくは非晶質シリカ粒子を含む層を形成したガラス管を焼成炉を用いて加熱処理した。
焼成炉は、略水平に保持された石英ガラスからなる円筒体に、焼成対象であるシリコーン樹脂を含む層もしくは非晶質シリカ粒子を含む層を有するガラス管を略水平に挿入して円筒体内面に載置し、円筒体を軸心周りに回転させながら加熱エリアを通過することで、ガラス管を焼成するものである。ガラス管は、回転する円筒体に従動して自転しながら、室温から所定温度まで昇温されて一定時間その所定温度に維持された後、再び室温まで自然冷却される。焼成炉は、ガラス管の表面における温度が650℃を3分程度保持できるように設定して行った。
以上により、外周面にシリカ系付着物を有するガラス管を作成した。
【0058】
(実施例1)
シリコーン樹脂エマルションを含む層を形成する塗布液として、塗膜形成用シリコーン樹脂エマルション(信越シリコーン株式会社製、X−52−8005、固形物含有量60質量%)を有効成分含有量(シリコーン樹脂濃度)が1質量%となるように水で希釈して用いた。
【0059】
(実施例2)
シリコーン樹脂エマルションを含む層を形成する塗布液として、剥離紙用シリコーンエマルション(荒川化学工業株式会社製、シリコリース902 固形含有量40質量%、100質量部と白金系触媒(荒川化学工業株式会社製 シリコリース909 固形含有量40質量%、)2質量部の混合物)を有効成分含有量(シリコーン樹脂濃度)が1質量%となるように水で希釈して用いた。
【0060】
(実施例3)
非晶質シリカ粒子を含む層を形成する塗布液として、平均粒子径80nmのコロイダルシリカ(日揮触媒化成株式会社製、SI−80P、固形分濃度40質量%)と界面活性剤として、ポリ(オキシエチレン)アルキルエーテルを30質量%含有する弱酸性水溶液とを用い、有効成分含有量(シリカ濃度/界面活性剤濃度)が1質量%/0.5質量%となるように水で希釈して用いた。
【0061】
(実施例4)
非晶質シリカ粒子を含む層を形成する塗布液として、平均粒子径80nmのコロイダルシリカ(日揮触媒化成株式会社製、SI−80P、固形分濃度40質量%)とワックス成分のエマルションとして、変性ポリエチレンワックスを23.5質量%含む水性懸濁液とを用い、有効成分含有量(シリカ濃度/ポリエチレンワックス濃度)が1質量%/0.5質量%となるように水で希釈して用いた。
【0062】
(実施例5)
非晶質シリカ粒子を含む層を形成する塗布液として、平均粒子径80nmのコロイダルシリカ(日揮触媒化成株式会社製、SI−80P、固形分濃度40質量%)とシリコーン樹脂エマルションとして、剥離紙用シリコーンエマルション(荒川化学工業株式会社製、シリコリース902 固形含有量40質量%、100質量部と白金系触媒(荒川化学工業株式会社製 シリコリース909 固形含有量40質量%、)2質量部の混合物)とを有効成分含有量(シリカ濃度/シリコーン樹脂濃度)が1質量%/1質量%となるように水で希釈して用いた。
【0063】
(比較例1)
界面活性剤を用いた塗布液として、ポリ(オキシエチレン)−アルキルエーテルを30質量%含有する弱酸性水溶液を、有効成分含有量(界面活性剤濃度)が0.5質量%となるように水で希釈して用いた。
【0064】
各実施例および比較例のガラス管について、強度評価、外観評価、シリカ系付着物状態の観察を行った。
【0065】
強度評価として、実施例1ないし実施例4および比較例の焼成後のガラス管について、3点曲げ強度試験(破壊試験)を行った。
3点曲げ強度試験は、300mmスパンに配置したVブロックにてガラス管の両端を支持し、ガラス管の中央部を圧子にて集中荷重を与え、ガラス管に曲げ荷重を与える方法である。そして、ガラス管が破壊した時(割れた時)の荷重値を曲げ強度(破壊強度)として記録した。表1に強度試験結果を示す。なお、曲げ強度試験は、各実施例および比較例で30本ずつ行った。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から明らかなように、各実施例のガラス管は、比較例のガラス管に比べて曲げ強度が高いことが分かる。曲げ強度においては、強度試験値のばらつきの中の最小値が、実際の製品に用いられた場合のガラス管の強度の信頼性を裏付ける上で重要であり、これについて、有意差が見られるため、比較例に比べ各実施例のガラス管の強度が高いと判断される。
【0068】
外観評価として、各実施例のガラス管(焼成前および焼成後)について、外観状態を観察した。方法としては、ガラス管に対し、透過光ないし反射光を用いて色見を確認し、外観状態の色限度見本と対比して規格外のものがあるかを確認した。結果として、いずれの実施例のガラス管(焼成前および焼成後)についても規格外のものはなく、外観上の問題は認められなかった。
【0069】
シリカ系付着物状態の観察として、各実施例のガラス管について外周面を走査型電子顕微鏡で観察した。実施例3のガラス管(焼成後)の観察結果(5万倍)を図1に示す。図1から明らかなように、ベース部であるガラス管の外周面には微小付着物(コロイダルシリカ)が点状に存在しており、大きさは5〜200nmの範囲であることが確認された。また、各実施例のガラス管の外周面に付着している微小付着物をオージェ電子分光法で測定したところ、全ての実施例においてSi成分の含有量が多いことが確認され、この付着物はシリカ系付着物であることが確認された。
【0070】
上述した各実施例および比較例の各ガラス管を用いて、それぞれバックライト用蛍光ランプを作製した。なお、ガラス管の焼成は蛍光膜の定着工程(焼成工程)と同時に実施した。各蛍光ランプの製造工程において、ガラス管の割れ不良の発生率は比較例のガラス管に比べて実施例のガラス管の方が明らかに少ないことが確認された。さらに、各実施例の蛍光ランプにおいて、いずれも光量の低下等は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、ガラス管を使用した各種製品の製造工程全体にわたって傷が生じにくく、表面傷に起因する強度低下等を抑制することを可能にしたガラス管とその製造方法、さらにはそのようなガラス管を適用した蛍光ランプを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管本体と、
前記ガラス管本体の外周面に形成されたシリカ系付着物とを具備することを特徴とするガラス管。
【請求項2】
前記シリカ系付着物は、前記ガラス管本体の外周面に点状に存在していることを特徴とする請求項1記載のガラス管。
【請求項3】
前記シリカ系付着物は、5nm以上200nm以下の大きさを有することを特徴とする請求項2記載のガラス管。
【請求項4】
前記シリカ系付着物は、550℃以上700℃以下の範囲の温度での焼成により形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項記載のガラス管。
【請求項5】
蛍光ランプに用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のガラス管。
【請求項6】
前記蛍光ランプはバックライト用蛍光ランプであることを特徴とする請求項5記載のガラス管。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のガラス管と、前記ガラス管の内壁面に設けられた蛍光膜と、前記ガラス管の両端に設けられた一対の電極と、前記ガラス管内に封入された放電媒体とを具備することを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項8】
バックライト用蛍光ランプであることを特徴とする請求項7記載の蛍光ランプ。
【請求項9】
ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程と、前記シリコーン樹脂を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備することを特徴とするガラス管の製造方法。
【請求項10】
前記ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程は、塗膜形成用シリコーン樹脂エマルションを含む塗布液を前記ガラス管の外周面に塗工した後、前記塗布液を加熱乾燥させてシリコーン樹脂を含む層を形成することを特徴とする請求項9記載のガラス管の製造方法。
【請求項11】
前記ガラス管の外周面にシリコーン樹脂を含む層を形成する工程は、剥離紙用シリコーンエマルションを含む塗布液を前記ガラス管の外周面に塗工した後、前記塗布液を加熱硬化させてシリコーン樹脂を含む層を形成することを特徴とする請求項9記載のガラス管の製造方法。
【請求項12】
前記剥離紙用シリコーンエマルションは、付加反応型のシリコーンエマルションであることを特徴とする請求項11記載のガラス管の製造方法。
【請求項13】
前記付加反応型のシリコーンエマルションは、両末端及び/又は側鎖中にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンと、分子内にハイドロシリル基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサンとを含有することを特徴とする請求項12記載のガラス管の製造方法。
【請求項14】
前記シリコーン樹脂を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程は、前記シリコーン樹脂を含む層を有する前記ガラス管を550℃以上700℃以下の範囲の温度で焼成することを特徴とする請求項9ないし請求項13のいずれか1項記載のガラス管の製造方法。
【請求項15】
ガラス管を成形する工程と、前記ガラス管の外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程と、前記非晶質シリカ粒子を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程とを具備することを特徴とするガラス管の製造方法。
【請求項16】
前記ガラス管の外周面に非晶質シリカ粒子を含む層を形成する工程は、コロイダルシリカを含む塗布液を前記ガラス管の外周面に塗工した後、前記塗布液を加熱乾燥させて非晶質シリカ粒子を含む層を形成することを特徴とする請求項15記載のガラス管の製造方法。
【請求項17】
前記コロイダルシリカを含む塗布液は、ノニオン型の界面活性剤もしくはアニオン型の界面活性剤をさらに含むことを特徴とする請求項16記載のガラス管の製造方法。
【請求項18】
前記コロイダルシリカを含む塗布液は、ワックス成分のエマルションをさらに含むことを特徴とする請求項16もしくは請求項17記載のガラス管の製造方法。
【請求項19】
前記コロイダルシリカを含む塗布液は、シリコーン樹脂エマルションをさらに含むことを特徴とする請求項16ないし請求項18のいずれか1項記載のガラス管の製造方法。
【請求項20】
前記コロイダルシリカは、平均粒子径が5nm以上200nm以下であること特徴とする請求項16ないし請求項19のいずれか1項記載のガラス管の製造方法。
【請求項21】
前記非晶質シリカ粒子を含む層を有する前記ガラス管を焼成し、前記ガラス管の外周面にシリカ系付着物を形成する工程は、前記非晶質シリカ粒子を含む層を有する前記ガラス管を550℃以上700℃以下の範囲の温度で焼成することを特徴とする請求項15ないし請求項20のいずれか1項記載のガラス管の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219340(P2011−219340A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93379(P2010−93379)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】