説明

ガラス管の外表面欠陥検査方法及び外表面欠陥検査装置

【課題】ガラス管の内表面の形状に依存することなく、ガラス管の外表面の欠陥の有無を短時間で正確に検査する。
【解決手段】ガラス管の外表面欠陥検査方法であって、外表面1aに対して垂直に光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面1bに有するガラス管1を検査対象とし、このガラス管1をその軸心回りに回転させながら、投光部3からガラス管1の軸方向に幅広の光をガラス管1の外表面1aに対して垂直に照射すると共に、その照射した光のうちガラス管1の外表面1aで垂直に反射して投光部3から照射した光の光軸L1と共通の光軸L2を有する反射光を受光部4で受光し、その受光した反射光に基づいてガラス管1の外表面1aの欠陥の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の投受光を利用して、ガラス管の外表面欠陥の有無を検査するための技術の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス管は、長尺なガラス元材を所定長さに切断することにより製作されるのが通例とされている。この長尺なガラス元材の成形には、溶融炉から引き出された溶融ガラスを長尺円筒状の耐火物(スリーブ)に巻き付けて高速に引いて管状に成形するダンナー法や、溶融炉から引き出された溶融ガラスを下方に流下させて引き伸ばして管状に成形するダウンドロー法など、溶融ガラスを引き伸ばして管状に線引き成形する手法が利用されている。
【0003】
そのため、溶融工程(清澄工程)や成形工程で発生した泡は、溶融ガラスを引き伸ばしてガラス元材を成形する過程で、ガラス元材にその軸方向(長手方向)に延伸された筋状の気泡となって形成される。そのため、このような気泡を有するガラス元材を切断して製作されるガラス管は、当該気泡が欠陥となって現れる場合がある。また、その他にも、ガラス管に異物(未溶解ブツや失透ブツ)が含まれていたり、或いは、外表面に欠けや傷が存在すれば、当該異物等がガラス管の欠陥となり得る。
【0004】
さらに、光通信用デバイスに組み込まれるキャピラリや、キャピラリを保持するスリーブ等のガラス管のように、内表面に軸方向に沿って漸次縮径又は拡径する形状変化部を有するものは、内表面の加工方法に起因して外表面に面荒れや凹みが生じやすく、これが欠陥となって現れる場合がある。詳述すると、当該形状変化部は、機械加工により形成せずに、酸等による化学反応により形成されることが多く、この際、ガラス管の内表面のみならず、外表面の一部も化学反応により侵食されて面荒れ等が生じる場合があり、欠陥の発生要因となっている。
【0005】
以上のように、ガラス管の外表面に欠陥が存在すると、製品品位を維持することが困難となり、不良品として取り扱わざるを得ないという事態が生じ得る。特に、上記の光通信用デバイスに利用されるキャピラリやスリーブにおいては、近年高い製品品位が要求されているのが実情であることから、上記のような欠陥が存在した場合に不良品とみなされる可能性が特に高くなる。したがって、高品位のガラス管を提供する上でも、製造された個々のガラス管の外表面に形成される欠陥の有無を正確に検査し、問題となる欠陥のないガラス管を正確に選別することが非常に重要となる。
【0006】
そこで、製造された個々のガラス管の外表面欠陥の有無を、光の投受光を利用して検査するのが通例とされている。具体的には、ガラス管の一方側に配置された投光部から光を照射し、その照射した光のうちガラス管を透過した透過光をガラス管の他方側で受光部により受光し、その受光した透過光に基づいてガラス管の外表面の欠陥の有無を検査することが提案されるに至っている(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−68761号公報
【特許文献2】特開平8−94329号公報
【特許文献3】特開2002−156337号公報
【特許文献4】特開2005−114645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4に開示されているように、ガラス管を透過した透過光に基づいてガラス管の外表面の欠陥の有無を検査する場合、ガラス管の内外表面の径が軸方向で一定であれば特に問題が生じることはないが、ガラス管の内表面に軸方向に沿って漸次縮径又は拡径する形状変化部が形成されている場合には問題が生じる。すなわち、後者のように、ガラス管の内表面に形状変化部が形成されている場合には、当該形状変化部において透過光の屈折方向が変化することから、受光部における受光光量が大幅に減少し、正確な欠陥検査を実現することが困難となる。特に、上記のキャピラリや、キャピラリを保持するスリーブの場合には、上述のように化学加工により形状変化部を形成する場合が多く、形状変化部に対応した外表面近傍に欠陥が形成されやすくなるので、当該部分の欠陥の有無を正確に検査することができないという欠点は大きな問題となる。
【0009】
そのため、当該形状変化部を有するガラス管の外表面の欠陥検査は、作業者による目視検査に頼っているのが実情であるが、この場合には、個々のガラス管の欠陥検査に長時間を要することになる。近年ガラス管が短時間で大量に製作されるという現状に照らせば、ガラス管の欠陥検査に長時間を要するということは、結果としてガラス管の生産効率の低下を招くことになり、実用上も問題となる。
【0010】
以上の実情に鑑み、本発明は、ガラス管の内表面の形状に依存することなく、ガラス管の外表面の欠陥の有無を短時間で正確に検査することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る方法は、ガラス管の外表面欠陥検査方法において、外表面に対して光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面に有するガラス管を検査対象とし、該ガラス管をその軸心回りに回転させながら、投光部から前記ガラス管の軸方向に幅広の光を前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、その照射した光のうち前記ガラス管の外表面で反射した反射光を受光部で受光し、その受光した反射光に基づいて前記ガラス管の外表面の欠陥の有無を検査することに特徴づけられる。
【0012】
このような方法によれば、受光部で受光される反射光は、ガラス管の外表面で反射したものであるので、ガラス管の内表面形状の影響を受けない。そのため、ガラス管の内表面に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部が形成されている場合であっても、受光部で受光される反射光は、当該形状変化部の影響を受けない。したがって、このようにガラス管の外表面で反射した反射光を受光部で受光し、その受光した反射光に基づいてガラス管の外表面の欠陥の有無を検査すれば、ガラス管の内表面の形状に依存することのない正確な欠陥検査を実現することが可能となる。しかも、投光部から照射される光は、ガラス管の軸方向に幅広の光であるので、ガラス管を回転させるだけでガラス管の軸方向の広い範囲における全周の欠陥の有無を一挙に検査することができ、ガラス管の外表面全体の欠陥検査に要する時間を確実に短縮化することができる。
【0013】
上記の方法において、頂部に開口部を有し且つ内面を反射面とするドーム状の反射板により前記ガラス管の上方を覆った状態で、前記投光部から出射された光を前記反射板で拡散させて前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、前記開口部を介して前記反射板の下方に配置された前記ガラス管の外表面で反射した反射光を前記受光部で受光することが好ましい。
【0014】
このようにすれば、投光部から出射される光が、ドーム状の反射板の反射面に当たってあらゆる方向に拡散する。そのため、ガラス管の外表面に対してはあらゆる方向から光が入射するので、ガラス管をその軸心回りに回転させた時にガラス管にガタツキ(位置ズレ)が生じたとしても、照射された光の入射方向の関係からガラス管の外表面で反射した反射光を受光部で受光することができる。したがって、ガラス管にガタツキによる位置ズレが生じても、受光部で受光される反射光の光量レベルをある程度確保できるので、ガラス管の外表面の精密な検査を維持することができ、実用上も非常に好ましいと言える。
【0015】
上記の方法において、前記投光部から光を前記ガラス管の外表面に対して垂直に照射すると共に、その照射した光のうち前記ガラス管の外表面で垂直に反射して前記投光部から照射した光と共通の光軸を有する反射光を受光部で受光することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、投光部から照射される光と、受光部で受光される反射光とのそれぞれの光軸の一部を共通化することができる。そのため、投光部から照射される光の光軸と受光部で受光される光の光軸に共通する領域がない場合に比して、光軸調整が容易となると共に、投光部から照射される光と、受光部で受光される光のそれぞれの焦点位置を簡単に調整することが可能となる。
【0017】
上記の方法において、前記投光部から照射される光の幅が、前記ガラス管の軸方向寸法以上であることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、ガラス管の軸方向全長に亘って光が照射されるので、ガラス管を一回転させるだけで、ガラス管の外表面全体の欠陥の有無を検査することが可能となる。
【0019】
上記の方法において、前記ガラス管を回転ローラ上に載置して回転させることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、ガラス管を回転させるために、ガラス管の端部を把持する必要もないので、ガラス管の外表面に光を照射することができない死角が形成されることがない。そのため、ガラス管の端部を把持した場合のように、ガラス管の全周の欠陥を検査するために端部の把持位置を変える必要もないので、ガラス管の欠陥検査を迅速に行う上でも非常に有利となる。
【0021】
上記の方法において、前記ガラス管は、外表面の径が一定であり、内表面の径が前記形状変化部で変化するものであることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、ガラス管の外表面での反射光の反射方向が一定となるので、受光部でより安定的に反射光を受光することができる。
【0023】
上記の方法において、前記形状変化部が、前記ガラス管の内表面を軸方向に沿って漸次縮径又は拡径させて形成されていることが好ましい。具体例としては、ガラス管が、光通信用デバイスに用いられ、且つ、光ファイバが挿通固定される保持孔と、軸方向に沿って漸次縮径しながら前記保持孔に連結して前記光ファイバを前記保持孔に案内する案内孔とを有するキャピラリであることが好ましい。また別の具体例としては、ガラス管が、光通信用デバイスに用いられ、且つ、光ファイバが挿通固定されたキャピラリを固定する保持孔と、軸方向に沿って漸次縮径しながら前記保持孔に連結して前記キャピラリを前記保持孔に案内する案内孔とを有するスリーブであることが好ましい。ここで、ガラス管が、上記のキャピラリやスリーブである場合には、それぞれの案内孔で透過光の屈折方向が変化するので、案内孔が形状変化部に該当する。
【0024】
上記課題を解決するために創案された本発明に係る装置は、ガラス管の外表面欠陥検査装置において、外表面に対して光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面に有するガラス管を検査対象とすると共に、該ガラス管をその軸心回りに回転させる回転ローラと、前記ガラス管の軸方向に沿って幅広の光を前記ガラス管の外表面に照射する投光部と、前記投光部から照射された光のうち前記ガラス管の外表面で反射した反射光を受光する受光部と、該受光部で受光された反射光に基づいて前記ガラス管の外表面の欠陥の有無を判断する判断部とを備えたことに特徴づけられる。
【0025】
上記の構成によれば、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【0026】
上記の構成において、頂部に開口部を有し且つ内面を反射面とするドーム状の反射板を前記ガラス管の上方を覆うように配置し、前記投光部から出射された光を前記反射板で拡散させて前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、前記開口部を介して前記反射板の下方に配置された前記ガラス管の外表面で反射した反射光を前記受光部で受光することが好ましい。
【0027】
このようにすれば、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【0028】
上記の構成において、前記投光部が、光を前記ガラス管の外表面に垂直に照射すると共に、前記受光部が、前記投光部から照射された光のうち前記ガラス管の外表面で垂直に反射して前記投光部から照射した光と共通の光軸を有する反射光を受光することが好ましい。
【0029】
このようにすれば、既に述べた作用効果を同様に享受することができる。
【0030】
なお、この場合、前記投光部から照射される光と、前記受光部で受光される光との共通の光軸上にビームスプリッターを配置し、該ビームスプリッターを介して前記投光部が前記ガラス管に光を照射し且つ前記受光部が前記ガラス管からの反射光を受光するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に係るガラス管の外表面検査方法および検査装置によれば、ガラス管の外表面での反射光に基づいてガラス管の外表面の欠陥の有無が検査されるので、ガラス管の内表面の形状に依存することなく、ガラス管の外表面の欠陥の有無を正確に検査することが可能となる。また、投光部から照射される光は、ガラス管の軸方向に幅広の光であるので、ガラス管を回転させるだけでガラス管の軸方向の広い範囲における全周の欠陥の有無を一挙に検査することができ、ガラス管の外表面全体の欠陥検査に要する時間を確実に短縮化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】検査対象となるガラス管を示す斜視図であって、(a)はキャピラリを、(b)はキャピラリを保持するスリーブをそれぞれ示している。
【図3】図1の装置で検出された検出結果の一例を示す図であって、(a)は良品となるキャピラリを、(b)は不良品となるキャピラリをそれぞれ示し、(c)は良品となる別のキャピラリを、(d)は不良品となる別のキャピラリをそれぞれ示している。
【図4】図1の装置で実行される外表面検査工程を含む検査工程の全体フローを示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置の全体構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1は、本発明の第1実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置を模式的に示す図である。同図に示すように、この外表面欠陥検査装置は、外表面に対して例えば垂直に光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面1bに有するガラス管1を検査対象とするものであり、このガラス管1をその軸心回りに回転させる一対の回転ローラ2と、ガラス管1の軸方向に沿って幅広の光をガラス管1の外表面1aに照射する投光部3と、投光部3から照射された光のうちガラス管1の外表面1aで反射した反射光を受光する受光部4と、受光部4で受光された反射光に基づいてガラス管1の外表面1aの欠陥の有無を判断する判断部5とを備えている。
【0035】
一対の回転ローラ2は、図示しないモータにより同方向に同期して回転するようになっており、この一対の回転ローラ2に、ガラス管1が載置されるようになっている。なお、一対の回転ローラ2は、両方が駆動回転されるものに限らず、例えば、一方が駆動回転され、他方が従動回転するように構成されていてもよい。
【0036】
投光部3から照射される光の光軸L1上には、ビームスプリッター(例えば、ハーフミラー)6が配置されており、このビームスプリッター6で投光部3から照射された光が反射して、回転ローラ2上に載置されたガラス管1の外表面1aに対して垂直に入射するようになっている。一方、ガラス管1の外表面1aで垂直に反射した反射光は、照射された光の光路(光軸L1を含む)と一致する光路(光軸L2を含む)上を通ってビームスプリッター6に至り、当該ビームスプリッター6を透過して受光部4で受光されるようになっている。このような投光部3と受光部4との光学配置によれば、投光部3から照射される光と、受光部4で受光される反射光との光軸L1,L2の一部を共通化することからできるので、光軸調整が容易になると共に、投光部3と受光部4の焦点距離(ピント)の調整も容易となる。なお、投光部3と受光部4との位置は、相互に入れ替えてもよい。また、図示しないが、ガラス管1に照射される光の光路(光軸L1を含む)上及びガラス管1で反射した反射光の光路(光軸L2を含む)上に、シリンドリカルレンズ等の集光用レンズを配置して、ガラス管1に照射される光、及び受光部4で受光される光を適宜集光するようにしてもよい。
【0037】
投光部3から照射される光の幅は、ガラス管1の軸方向寸法よりも大きく設定されており、投光部3から照射される光にガラス管1の全長が含まれるようになっている。なお、投光部3としては、例えば、ハロゲン照明やLED照明などが利用できる。また、受光部4は、投光部3から照射される光よって生じる反射光を受光可能な幅広な受光面を有しており、具体的には、例えば、反射光の幅方向に沿ってフォトダイオードを複数配列したラインスキャンカメラなどが利用される。
【0038】
ここで、ガラス管1としては、内表面に軸方向に沿って漸次拡径又は縮径する形状変化部を有するものが挙げられるが、具体的には、図2(a),(b)に示す光通信用デバイスに用いられるキャピラリやスリーブが挙げられる。詳述すると、同図(a)に示すように、ガラス管1としてのキャピラリは、その内表面1bで、光ファイバが挿通固定され且つ一定径をなす保持孔1b1と、一端側開口部から軸方向に沿って漸次縮径しながら保持孔1b1に連結する案内孔1b2とを形成している。案内孔1b2は、光ファイバをキャピラリの保持孔1b1に挿入する際に、光ファイバの先端部を保持孔1b1に案内する役割を果たすものであって、軸方向に沿って漸次縮径していることから上記の形状変化部に該当する。また、同図(b)に示すように、ガラス管1としてのスリーブは、その内表面1bで、上記のキャピラリが挿通固定され且つ一定径をなす保持孔1b3と、一端側開口部から軸方向に沿って漸次縮径しながら保持孔1b3に連結する案内孔1b4とを形成している。案内孔1b4は、キャピラリをスリーブの保持孔1b3に挿入する際に、キャピラリの先端部を保持孔1b3に案内する役割を果たすものであって、軸方向に沿って漸次縮径していることから上記の形状変化部に該当する。
【0039】
判断部5では、検査すべきガラス管1の外表面欠陥として、図2(a),(b)に示す気泡X1、傷X2、欠けX3、異物X4、及び面荒れや凹み(酸等の化学反応による劣化部分)X5などを検出する。具体的には、判断部5では、受光部4で受光された反射光から得られる画像を解析して、これらの外表面欠陥を検出するようになっている。
【0040】
次に、以上のように構成された装置を用いて行われるガラス管の外表面欠陥検査工程を説明する。
【0041】
図1に示すように、この外表面欠陥検査工程では、まず、内表面1bに形状変化部を有する検査対象のガラス管1を回転ローラ2の上に載置して、ガラス管1をその軸心回りに回転させる。次に、この状態で、投光部3からガラス管1の軸方向に幅広の光をガラス管1の外表面1aに対して照射すると共に、その照射した光のうちガラス管1の外表面で反射した反射光を受光部4で受光する。そして、受光部4で受光した反射光に基づいて判断部5でガラス管1の外表面の欠陥の有無を検査する。この判断部5では、周知の画像処理等を行って受光部4で受光された反射光から得られる画像を解析し、外表面欠陥の有無を検査する。なお、光の投受光の開始タイミングは、上述のようにガラス管1の回転開始後であってもよいが、ガラス管1の回転開始前又或いは回転開始と同時であってもよい。光の投受光の開始タイミングがガラス管1の回転開始前又は回転開始と同時であれば、ガラス管1の外表面欠陥の検査を開始した円周方向位置が明確となるので、検出された欠陥の位置を特定する必要がある場合などには便利である。
【0042】
このようにすれば、受光部4で受光される反射光は、ガラス管1の外表面で反射したものであるので、ガラス管1の内表面1bの形状の影響を受けない。そのため、ガラス管1の内表面1bに、透過光の屈折方向が変化する形状変化部(図2(a),(b)に示した案内孔1b2,1b4)が形成されている場合でも、受光部4で受光される反射光は、当該形状変化部の影響を受けることがない。したがって、ガラス管1の外表面1aで反射した反射光を受光部4で受光し、その受光した反射光に基づいてガラス管1の外表面1aの欠陥の有無を検査すれば、ガラス管1の内表面の形状に依存することのない正確な外表面1aの欠陥検査を実現することが可能となる。しかも、この実施形態では、投光部3から照射される光は、ガラス管1の全長よりも幅広な光であるので、回転ローラ2によりガラス管1を1回転させるだけで、ガラス管1の外表面1a全体の欠陥の有無を一挙に検査することができるので、検査時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0043】
ここで、受光部4で受光された反射光から得られる画像としては、例えば、図3(a)〜(d)に示すようなものが挙げられる。これらの画像は、ガラス管1の外表面1aを円周方向に展開して表したものである。欠陥が存在する部分では、反射光の向きや、反射光の強度が変化するので、画像中において欠陥の形成領域に対応する部分には、影が形成される。
【0044】
図3(a)〜(d)は、キャピラリを検査対象としたもので、図中の右側が案内孔1b2側の端部を示している。同図(a)及び(c)では、画像中に影が形成されておらず欠陥が確認されないのに対して、同図(b)及び(d)では、画像中に影が形成されている部分があり、当該部分が欠陥の存在を表している。なお、同図(b)中のA1で示す領域は、キャピラリの外表面の面荒れを示しており、同図(d)中のA2で示す領域は、キャピラリの外表面の欠けを示している。
【0045】
なお、ガラス管の検査工程には、上記の外表面欠陥検査工程のみならず、他の工程も含まれる。すなわち、図4に示すように、ガラス管の検査工程は、ガラス管1を供給する供給工程S1と、供給されたガラス管1の位置決めを行う位置決め工程S2と、位置決めされたガラス管1の切断された両端面を検査する端面検査工程S3と、上記のガラス管1の外表面欠陥検査工程S4と、ガラス管1の内表面検査工程S5と、工程S3〜S5で良品と判断されたガラス管1を梱包する良品梱包工程S6と、工程S3〜S5で不良品と判断されたガラス管1を排出する不良品廃棄工程S7とを含む。当該検査工程では、複数のガラス管1が1本ずつ連続的に各工程を移動すると共に、各工程を同時に並行して行うことで、一連の検査に要する時間の短縮化を図っている。以下、ガラス管1が、図2(a)に示したキャピラリである場合を例にとって、外表面欠陥検査工程S4以外の各工程について簡単に説明する。
【0046】
供給工程S1では、複数のキャピラリが収容されたパーツフィーダや、キャピラリを整列させたトレイからキャピラリを後続の位置決め工程S2に順次供給する。なお、位置決め工程S2以後の各工程間のキャピラリの移動手段としては、例えば、ベルトコンベアや、ターンテーブルなどを利用できるが、工程S3〜S5で再検査が必要になった場合に、元の検査工程にキャピラリを戻し易いという利点からターンテーブルを利用することが好ましい。
【0047】
位置決め工程S2では、工程S3〜S5で正確な検査を実現するために、キャピラリを正確に位置決めする。すなわち、工程S3〜S5においては、光の投受光を利用して、キャピラリの各種検査が行われるので、キャピラリとの焦点距離等を正確に合わせる必要があり、キャピラリの位置決めが重要となる。
【0048】
端面検査工程S3では、光の投受光を利用して、端面の欠けの有無を検査し、且つ、図2(a)に示した一端開口部における案内孔1b2の孔径を計測する。
【0049】
内表面検査工程S5では、光の投受光を利用して、キャピラリの内表面の欠陥(泡や、異物など)の有無を検査し、且つ、図2(a)に示した保持孔1b1と案内孔1b2の形状、および案内孔1b2の軸方向寸法を計測する。
【0050】
図5は、本発明の第2実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置を模式的に示す図である。同図に示すように、この第2実施形態に係る外表面欠陥検査装置が、上記の第1実施形態に係る外表面欠陥検査装置と相違するところは、投光部3からガラス管1の外表面1aに対して斜めに光を照射し、その外表面で正反射した反射光を受光部4で受光する点にある。具体的には、投光部3から照射される光は、ガラス管1の外表面に接する平面P1に対して角度θで入射し、この入射角θと同じ角度の反射角θで反射した反射光を受光部4で受光する。この角度θは、10〜80°であることが好ましく、45°±10°程度であることがより好ましい。
【0051】
この第2実施形態では、投光部3から照射される光の光軸L1と、受光部4で受光される反射光の光軸L2とに共通する部分がないため、上記の第1実施形態に比べて、光軸調整が困難となる欠点があるが、ガラス管1への光の入射角(反射角)θを自由に設定できるという利点がある。すなわち、ガラス管1に垂直に光を入射した場合に、反射光の強度が強すぎる場合などに有効である。
【0052】
図6は、本発明の第3実施形態に係るガラス管の外表面欠陥検査装置を模式的に示す図である。同図に示すように、この第3実施形態に係る外表面欠陥検査装置が、上記の第1〜2実施形態に係る外表面欠陥検査装置と相違するところは、いわゆるドーム照明7を用いてガラス管1の外表面1aに対して光を照射した点にある。
【0053】
詳細には、このドーム照明7では、ガラス管1の上方を覆うように、頂部に開口部8aを有し且つ内面を反射面8bとするドーム状の反射板8が配置されている。この反射板8の内側周縁部には、複数の投光部3が周方向に配列されている。各投光部3からは反射板8の反射面8bに向けて上方に光が出射されるとともに、その出射された光は反射面8bに当たってあらゆる方向に拡散する。拡散した光は、ドーム照明7の下方に配置されたガラス管1の外表面1aに対して照射される。そして、ガラス管1の外表面1aで反射した反射光の一部は、ドーム照明7の頂部に設けられた開口部8aを通過して上方へと至り、ドーム照明7の上方に配置された受光部4で受光される。
【0054】
このようにすれば、投光部3から出射される光が、ドーム状の反射板8の反射面8bに当たって拡散するため、ガラス管1の外表面1aにあらゆる方向から光が入射する。そのため、ガラス管1をその軸心回りに回転させた時に、ガラス管1にガタツキによる位置ズレが生じたとしても、ガラス管1の外表面1aで反射した反射光のうち,照射された光の入射方向の関係から受光部4で受光される反射光も存在する。そのため、ガラス管1にガタツキによる位置ズレが生じても、受光部4で受光される反射光の光量レベルをある程度確保できるので、ガラス管1の外表面1aの精密な検査を実行することができる。そして、回転ローラ2を精密に製作しても、ガラス管1にある程度のガタツキが生じることは避けられない場合も多いため、このような作用効果を享受し得るという事は、実情上も非常に好ましいと言える。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラス管(キャピラリ,スリーブ)
1a 外表面
1b 内表面
1b1,1b3 保持孔
1b2,1b4 案内孔(形状変化部)
2 回転ローラ
3 投光部
4 受光部
5 判断部
6 ビームスプリッター
7 ドーム照明
8 反射板
8a 反射面
8b 開口部
L1 照射される光の光軸
L2 反射光の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス管の外表面欠陥検査方法において、
外表面に対して光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面に有するガラス管を検査対象とし、該ガラス管をその軸心回りに回転させながら、投光部から前記ガラス管の軸方向に幅広の光を前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、その照射した光のうち前記ガラス管の外表面で反射した反射光を受光部で受光し、その受光した反射光に基づいて前記ガラス管の外表面の欠陥の有無を検査することを特徴とするガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項2】
頂部に開口部を有し且つ内面を反射面とするドーム状の反射板により前記ガラス管の上方を覆った状態で、前記投光部から出射された光を前記反射板で拡散させて前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、前記開口部を介して前記反射板の下方に配置された前記ガラス管の外表面で反射した反射光を前記受光部で受光することを特徴とする請求項1に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項3】
前記投光部から光を前記ガラス管の外表面に対して垂直に照射すると共に、その照射した光のうち前記ガラス管の外表面で垂直に反射して前記投光部から照射した光と共通の光軸を有する反射光を受光部で受光することを特徴とする請求項1に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項4】
前記投光部から照射される光の幅が、前記ガラス管の軸方向寸法以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項5】
前記ガラス管を回転ローラ上に載置して回転させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項6】
前記ガラス管は、外表面の径が一定であり、内表面の径が前記形状変化部で変化するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項7】
前記形状変化部が、前記ガラス管の内表面を軸方向に沿って漸次縮径又は拡径させて形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス管の外表面欠陥検査方法。
【請求項8】
前記ガラス管が、光通信用デバイスに用いられ、且つ、光ファイバが挿通固定される保持孔と、軸方向に沿って漸次縮径しながら前記保持孔に連結して前記光ファイバを前記保持孔に案内する案内孔とを有するキャピラリであることを特徴とする請求項7に記載のガラス管の表面欠陥検査方法。
【請求項9】
前記ガラス管が、光通信用デバイスに用いられ、且つ、光ファイバが挿通固定されたキャピラリを固定する保持孔と、軸方向に沿って漸次縮径しながら前記保持孔に連結して前記キャピラリを前記保持孔に案内する案内孔とを有するスリーブであることを特徴とする請求項7に記載のガラス管の表面欠陥検査方法。
【請求項10】
ガラス管の外表面欠陥検査装置において、
外表面に対して光を照射しながら軸方向に走査した場合に、透過光の屈折方向が変化する形状変化部を内表面に有するガラス管を検査対象とすると共に、該ガラス管をその軸心回りに回転させる回転ローラと、前記ガラス管の軸方向に沿って幅広の光を前記ガラス管の外表面に照射する投光部と、前記投光部から照射された光のうち前記ガラス管の外表面で反射した反射光を受光する受光部と、該受光部で受光された反射光に基づいて前記ガラス管の外表面の欠陥の有無を判断する判断部とを備えていることを特徴とするガラス管の外表面欠陥検査装置。
【請求項11】
頂部に開口部を有し且つ内面を反射面とするドーム状の反射板を前記ガラス管の上方を覆うように配置し、前記投光部から出射された光を前記反射板で拡散させて前記ガラス管の外表面に対して照射すると共に、前記開口部を介して前記反射板の下方に配置された前記ガラス管の外表面で反射した反射光を前記受光部で受光することを特徴とする請求項10に記載のガラス管の外表面欠陥検査装置。
【請求項12】
前記投光部が、光を前記ガラス管の外表面に垂直に照射すると共に、前記受光部が、前記投光部から照射された光のうち前記ガラス管の外表面で垂直に反射して前記投光部から照射した光と共通の光軸を有する反射光を受光することを特徴とする請求項10に記載のガラス管の外表面欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−53202(P2011−53202A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126970(P2010−126970)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】