説明

ガレクチン−2の使用

T細胞、マクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞のアポトーシス障害を伴う疾病を有する患者の治療や予防のための薬剤の製造、もしくは、臓器移植、特に固形臓器移植を受けた患者における臓器拒絶の治療及び予防のための薬剤の製造における、ガレクチン−2の使用、ガレクチン−2を符号化する核酸の使用、その相補鎖の使用、もしくは当該符号化する核酸やその相補鎖にハイブリッド化する核酸の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガレクチン−2の使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高等動物の免疫系の中心的な機能は、身体を構成する自己の構成成分から感染物質、バクテリア、ウイルスなどの外来物を区別することである。免疫系は、個々の生涯を通しての学習システムであるという意味において、柔軟な挙動を示すダイナミックなシステムである。通常、免疫系は、身体の発達中に外来成分を認識する能力を発達、維持させながら、自己成分には寛容な能力を獲得する。自己寛容性の獲得は、周産期中に胸腺におけるアポトーシスによる自己反応性T細胞のクローン除去によって、およびその後の発達時期における自己反応性T細胞およびB細胞の機能抑制によって生じる。自己寛容のシステムがどのように維持されるのか、また、特定の状況下でそれがどのように障害されるかについては、現在においても完全に解明されていない。臓器が自己寛容の能力を失い、臓器の免疫系が自己抗原と非自己抗原の間の区別をしなくなり、結果的に、自己免疫反応が始まり、自己反応性リンパ球のクローン増殖と活性化、および正常身体組織の自己抗原に対して自己抗体の産生が生じる。異種動物において種々の自己免疫性疾患が存在するため、何が自己免疫反応の開始を引き起こすのか、また、多くの場合において、初期自己免疫反応後にどのように症状が進行するのかは不明である。自己免疫性疾患の多くが未だよく知られていないのである。また、起源が多因子性の自己免疫性疾患は、個々の遺伝的素因によって頻繁に発生する。また、自己免疫性疾患は、免疫調節管理の特定の脆弱化や、ある種の環境因子等によって引き起こされるかもしれない。さらに、これらの組み合わせが、最終的に免疫系に自己成分に対する攻撃を開始させるのかもしれない。
【0003】
自己免疫性疾患は、全身性疾患と臓器特異的疾患とに大別される。全身性疾患においては、皮膚の損傷や炎症が、その抗原性に関係なく、臓器の複数の部位で発生する。多くの場合、そのような全身性自己免疫疾患は、随所に存在する可溶性細胞抗原への自己抗体反応によって形成される循環性自己免疫複合体の沈着によって開始される。これらの全身性自己免疫疾患の典型的ものに、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、関節リウマチ、および強直性脊椎炎がある。一方、臓器特異的疾患は、対象となる臓器に基づいてさらに分類される。神経系の自己免疫性疾患には、多発性硬化、重症筋無力症、ギラン・バレー症候群のような自己免疫性ニューロパシーがある。胃腸系の自己免疫性疾患には、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変(症)、原発性硬化性胆管炎、スプルー症候群、自己免疫性腸疾患および自己免疫性肝炎がある。内分泌腺に影響を及ぼす自己免疫性疾患には、1型糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、および自己免疫性卵巣炎がある。
【0004】
クローン病(CD)は、口から肛門にかけての消化管のあらゆる部位に発生する自己免疫性疾患である。しかしながら、この疾患は、小腸の下部において通常発生し、小腸の内面に深刻な炎症を引き起こす。クローン病の症状は、腹痛、下痢、直腸出血、体重減少及び発熱である。クローン病の病因は未だ不明である。診断は、典型的な臨床症状の提示、血液検査、組織検査を含む結腸内視術、造影剤を用いたX線検査、磁気共鳴映像法もしくはCTの組み合わせによって通常行われる。クローン病の治療には、メサラジンやスルファサラジン、副腎皮質ステロイド、および免疫抑制剤のような抗炎症剤の使用が含まれる。免疫抑制剤には、6−メルカプトプリンやアザチオプリンが含まれる。近年、メサラジン、副腎皮質ステロイド、および/あるいは免疫抑制剤および抗生物質のような標準的な治療に反応しない中度〜重度のクローン病や瘻孔を伴うクローン病の治療用として、モノクローナル抗体(mAb)インフリキシマブが認可された。関節リウマチ(RA)やクローン病に特異的に承認された最初の薬であるインフリキシマブは、抗腫瘍壊死因子α(anti-TNFα)に対するキメラ抗体である。TNFαは、免疫系によって産生されるサイトカインであり、クローン病の病因に重大な役割を果たす。クローン病患者の治療は、腸粘膜や関節にあるマクロファージや固有層T細胞のアポトーシスを誘導する。しかしながら、インフリキシマブでの治療中に、しばしば抗TNFα抗体の作用を弱めて(New England Journal of Medicine 2003; 348:601-608)、不寛容(I型過敏症)を引き起こす他の抗体が生成される。さらに、インフリキシマブは、一般に免疫系を抑制するらしく、臓器が2次的な重複感染に曝され、結果的に敗血症、結核症および死を招く恐れもある。
【0005】
潰瘍性大腸炎は、大腸の内面に、炎症と痛み、所謂潰瘍を引き起こす疾患である。炎症は、直腸内や結腸の下部に通常発生するが、結腸全体に及ぶ場合もある。潰瘍性大腸炎は、末端領域、所謂回腸末端部を除く小腸でも稀に発生する。潰瘍性大腸炎は、結腸炎もしくは直腸炎と呼ばれている。
【0006】
炎症は、しばしば結腸を空にして、下痢を引き起こす。潰瘍は、炎症が結腸の内面にある細胞を殺した場所のあちこちに形成され、出血し、膿を産出する。
【0007】
潰瘍性大腸炎は、小腸は結腸において炎症を引き起こす疾患の一般名称である炎症性大腸炎(IBD)の1種である。潰瘍性大腸炎は、症状が他の腸疾患、例えば、クローン病に類似していることでその診断を難しくさせている。潰瘍性大腸炎は、あらゆる年齢層の人々に起こるが、多くは15歳〜30歳の間に始まり、50歳〜70歳の間にはあまり多くない。子供や青年期の人にもしばしば発症が見られる。また、潰瘍性大腸炎は、男女を問わず発生し、遺伝性を思わせる場合もある。
【0008】
潰瘍性大腸炎を引き起こす原因については、多くの説があるが、いずれも証明されていない。最も知られている説は、腸壁に進行中の炎症を引きこすことにより、身体の免疫系が、ウイルスやバクテリアに反応するというものである。
【0009】
潰瘍性大腸炎を患っている人は、免疫系に異常を有しているが、医者には、それが疾患の原因であるのか、それとも疾患の結果であるのかがわからない。潰瘍性大腸炎は、精神的苦痛や特定の食物や食製品に対する感受性によっては生じないが、これらの要因が発症の引き金になる人もいる。
【0010】
潰瘍性大腸炎の最も一般的な症状は、腹痛と出血性の下痢である。患者は、疲労感、体重減少、食欲減退、直腸出血、体液および栄養の欠乏に陥る。
【0011】
患者の約半数は、軽い症状であるが、発熱、出血性下痢、吐き気、および腹部痙攣に苦しむ者もいる。また、潰瘍性大腸炎は、関節炎、目の炎症、肝臓疾患(肝炎、肝硬変、および原発性硬化性胆管炎)、骨粗鬆症、皮膚発疹および貧血(症)のような問題を引き起こす恐れがある。結腸の外部でこれらの問題が生じる理由について確かなことは言えないが、科学者は、これらの複雑な状態は、免疫系が身体の他の部位に炎症を引き起こす時に生じると考えている。これらの問題のいくつかは、大腸炎が治癒されると解消する。
【0012】
潰瘍性大腸炎の診断には、徹底した健康診断と一連の検査が必要である。
【0013】
血液検査は、貧血のチェックに行われ、結腸や直腸内における出血を知ることができる。また、血液検査は、身体内のどこかで炎症が起こっている兆候である白血球数の増加を明確にする。また、排泄物サンプルを検査することにより、医者は、結腸や直腸における出血や感染を検出することができる。
【0014】
結腸壁における潰瘍、炎症、出血を観察するため、医者は、結腸内視鏡術やS状結腸鏡検査を行う。また、医者は結腸の内面から組織サンプルを採取して顕微鏡で観察する組織検査を必要に応じて実施する。また、結腸のバリウム注腸X線検査も必要である。この検査では、結腸がバリウムのチョークのように白い溶液で満たされる。バリウムは、X線フィルムにおいて白く写り、潰瘍やその他の異常を含む結腸の鮮明な像を医者に提供する。
【0015】
潰瘍性大腸炎の治療は、疾患の重症度に依存する。ほとんどの人は薬で治療されるが、重篤なケースでは、罹患した結腸を取り除く手術が必要になることもある。これまでは、手術が潰瘍性大腸炎の唯一の治療であった。
【0016】
特定の食品によって症状が引き起こされる人は、腸の調子を悪くさせる食物、例えば、濃く味付けした料理や、生の果物や野菜、あるいは乳糖(ラクトース)を避けることによって症状をコントロールすることができる。潰瘍性大腸炎は、人によって異なる経過をたどるので、治療は個々に調節される。情緒的かつ精神的なサポートも重要である。
【0017】
患者によっては、症状が一時的に消える回復期が数ヶ月もしくは数年続く場合がある。しかしながら、結局はその多くにおいてその症状が再発する。疾患のこのような変化パターンは、いつの治療が役立ったかを断定することをしばしば困難にする。
【0018】
潰瘍性大腸炎の患者は、状態を観察するために往診医などによる医療的ケアをしばらく受ける必要がある。
【0019】
治療のゴールは、回復に導くとともにそれを維持し、潰瘍性大腸炎患者の生活の質を向上することである。そのためには、何種類かの薬も利用される。
【0020】
アミノサリチル酸類、特に5−アミノサリチル酸(5-ASA)を含有する薬は、炎症の抑制に役立つ。スルファサラジンは、スルファピリジンと5-ASAを組み合わせたものであり、回復を導いてそれを維持するために使用される。スルファピリジン成分は、抗炎症5-ASAを腸に運ぶ。しかしながら、スルファピリジンは、吐き気、嘔吐、胸焼け、下痢、および頭痛といった副作用を招く恐れがある。オルサラジン、メサラミン、バルサラジドのような他の5-ASA剤は、異なる担体(キャリア)を有し、副作用が少なく、スルファサラジンを投与できない人に使用される。5-ASAは、結腸内の炎症の位置に応じて、経口、浣腸により、あるいは座薬によって投与される。中程度の潰瘍性大腸炎を有する人のほとんどは、まずこれらの薬剤により治療される。
【0021】
また、プレドニゾンやヒドロコルチゾンのようなコルチコステロイドは、炎症を低減する。これらは、中度〜重度の潰瘍性大腸炎を有する人や、5-ASA薬剤に反応しない人に使用される。ステロイドとして知られるコルチコステロイドは、炎症の部位に応じて、経口、静脈注射、浣腸、あるいは座薬により投与される。これらの薬剤は、体重増加、座瘡、顔ひげ、高血圧、躁鬱、感染リスクの増加のような副作用を起こす。この理由のため、長期間の使用は推奨されない。
【0022】
6−メルカプトプリン(6-MP)やアザチオプリンのような免疫調節剤は、免疫系に作用して炎症を緩和する。これらは、5-ASAやコルチコステロイドに反応しない患者や、コルチコステロイドに依存性を有する患者に使用される。しかしながら、免疫調節剤は遅効性であり、十分な効果が見られるまでに半年かかる場合もある。これらの薬剤投与を受けている患者は、膵炎や肝炎などの合併症、白血球数の減少、感染リスクの増加等のため監視が必要とされる。シクロスポリンAは、静脈コルチオステロイドに反応しない人の進行の早い、重度の潰瘍性大腸炎を治療するため、6-MPやアザチオプリンと使用される。
【0023】
患者をリラックスさせ、痛み、下痢、感染を和らげるため、他の薬剤が投与されることもある。
【0024】
関節リウマチ(RA)も自己免疫性疾患であると考えられている。関節リウマチは、関節の変形や炎症を引き起こす。また、全身にわたっての血管の炎症、リウマチ性結節の発症、骨粗鬆症などの他の問題も発生する。関節リウマチは、後天性であり、また遺伝因子も関与する自己免疫性疾患とみなされている。関節リウマチの患者の70%にHLA-DR4抗体が存在することは、この疾患への遺伝的素因を支持している。関節リウマチを有する患者の多くは、IgGへの抗体であるリウマチ因子(RF)を有しており、この疾患を有する成人の60〜80%に存在している。リウマチ因子の高い値は、より重篤で活性な関節疾患、より全身性の関与、および予後不良と通常関係する。他の自己免疫性疾患と同様に、関節リウマチも、広く免疫学的に見られる結合組織の炎症変化を伴う。自己免疫性疾患には多くの臨床的知見を共有するため、異なる診断を下すことが困難な場合が多い。疾患の患者数は一般人口の1〜2%であり、世界中に存在する。疾患の発生や発症に関しては、男性に対して3:1で女性が多い傾向がある。また、この疾患は、通常、40歳〜60歳の成人に起こりやすい。関節リウマチの病因は、依然として未知のままである。代謝や栄養因子、内分泌系、地理的、心理的、職業的データが、決定的な知見なしに広範囲に研究されている。関節リウマチには多くの病因説があり、そのいくつかは、自己免疫反応を開始する未知の抗体を仮定している。他のものは、疾病過程には種々のバクテリアやウイルスのように伝染性の原因があると疑っているが、それを支持する所見は得られていない。関節リウマチは、血液検査、特に赤血球の沈降速度の検査、貧血検査、リウマチ因子の検査などの多くの検査を含む標準化された基準に基づいて診断される(アメリカリウマチ学会、例えば、http://www.shim.org/rheumatology/1987ra.htmlを参照)。さらに、関節リウマチは、滑膜関節に影響を及ぼしやすいので、滑液が検査される。リウマチ因子の存在する滑液は、蛋白含有量の増加とともに、グルコース含有量が正常もしくは減少する。また、正常な場合よりも、白血球細胞の数が増加する。通常、関節リウマチの診断は、前記した種々の検査の肯定的な結果の組み合わせによって行われる。関節リウマチは、今日においても完全な治療法は見つかっていないが、多くの方法で治療が行われている。例えば、関節リウマチは、非ステロイド系抗炎症剤によって、あるいは、ペニシラミンやシクロオキシゲナーゼ−2抑制剤を含む抗リウマチ薬によって治療される。さらに、クローン病のように、関節リウマチも、インフリキシマブ、エタネルセプト、およびアダリムマブのようなTNFαに対する抗体によっても治療される。また、ごく最近では、IL-1受容体アンタゴニスト、アナキンラが関節リウマチの治療用として認可された。予備的研究によれば、アナキンラは、重い副作用を伴う恐れのあるメトトレキサートと組み合わせて投与することが示唆されている。しかしながら、上記した薬剤は、多かれ少なかれ重い副作用を示す。
【0025】
したがって、これまでの自己免疫性疾患の治療に取って代わる有効な治療法の需要が存在する。特に、炎症性大腸炎および関節リウマチの予防手段、および/あるいはそれらの有効な治療法の継続的需要が存在する。
【0026】
ガレクチンは、免疫細胞ホメオスタシスの重要な調節因子として益々注目されているβ−ガラクトシド結合性レクチンの保存ファミリーのメンバーである(1,2)。哺乳類のガレクチンの生物学的特性には、細胞増殖の調節、炎症、細胞粘着、細胞死が含まれる(3-5)。興味深いことに、広範な配列相同性と類似の糖鎖特異性にもかかわらず、このタンパク質ファミリーのいくつかのメンバーは、炎症カスケードを増幅するものとしてふるまうのに対し、他のメンバーは、免疫反応を防ぐホメオスタティック信号を作動させる(6)。このように、ガレクチンファミリーのあるメンバーに当てはまることは、他のメンバーに必ずしも当てはまらない。
【0027】
ガレクチン−2(Gal-2)は、ガレクチン−1のクローニング中に発見され、ヒトのガレクチン−1に43%配列相同性を有する。ガレクチン−2は、調査された他のガレクチンの中でガレクチン−1と最も高い相同性を有している。ガレクチン−2は、約14kDaのサブユニットを有する非共有結合性のニ量体(non-covalent dimer)である。また、ガレクチン−2は、ベータガラクトシド結合性レクチン、レクチンI14、LGALS2、Gal-2もしくはGAL-2としても知られている。ガレクチン−2の発現は、胃腸管に限定されるようである(8,9)。また、ガレクチン−2を発現する腸上皮細胞は、ガレクチン−1を通常発現せず、ガレクチン−1ヌル変異マウスにおいては、ガレクチン−2が高いレベルで発現されないことが知られている(10)。ガレクチン−1の特性が広く研究されている一方で、ガレクチン−2の機能はあまり研究されておらず、未だ不明である。
【0028】
細胞外マトリックス(ECM)成分への細胞の接着能力は、細胞成長、アポトーシス、血管生成、腫瘍湿潤、および炎症に関連する基本的な過程である(14,15)。ECMへのT細胞の接着は、8つの異なるβサブユニットとマトリックスリガンド特異性を決定する17のα鎖でなるヘテロダイマー受容体の大ファミリーであるインテグリンによって仲介される(16,17)。ガレクチンは、隣接する細胞上の糖鎖リガンドの架橋、細胞表面と結合するガレクチンの架橋、ECM化合物への直接結合、タンパク質−糖鎖相互作用、あるいはインテグリンとの相互作用(14,18)を含む異なるメカニズムによって細胞接着を調節する。
【0029】
細胞間接着および細胞−ECM間接着に影響を及ぼすガレクチンの多様な選択肢は、ガレクチンが、異なる細胞種において、あるいは異なるECM成分との間で、接着促進効果および抗接着効果を有する理由を説明する。循環血液のT細胞は、適量のβ1−インテグリンをその細胞表面に発現するが、これらの休止細胞はECMに接着されにくい(17)。一方、血液T細胞の活性化は、統合されたヒト粘膜免疫系(integrated human mucosal immune system, 19)におけるエフェクター部位へのホーミングおよび免疫細胞の移動に必要とされるインテグリン親和性と結合活性の向上に関連したβ1仲介接着の急激な増加を促す。ガレクチン−1が、β1インテグリンに結合し、細胞表面におけるその有効性を一時的に増加させる一方で、ガレクチン−3は、乳がん細胞におけるβ1インテグリンのダウンレグレーションとエンドサイトーシスを仲介する(18,20)。
【0030】
免疫細胞は、細胞周期を介して増加し、拡大し、抗体が除去されると最終的にアポトーシスを受けることによって効果的な応答が展開されるように、選択的でありながらもバランスよく抗体に応答しなければならない(11,12)。この特徴は、通常、細胞周期のプロモーターとインヒビターおよびアポトーシスによってしっかりとバランスが保たれているが(13)、多くの疾患は、この細胞周期の制御不能もしくはアポトーシスの機能障害のいずれかに基づいて発生し、結果的に、抑制のきかない細胞増殖、癌、および関節リウマチや炎症性大腸炎のような自己免疫性疾患にいたる。
【0031】
これらの疾患は、これまでのところ治療不能であり、既存の治療法はあまり効率的でないか、もしくは重い副作用を招く。
【発明の開示】
【0032】
したがって、本発明の目的は、免疫系の機能不良を伴った疾患の防止および効率的な治療の手段を提供することにある。本発明のさらなる目的は、現在利用可能な方法に比べ、副作用の少ない治療法を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、T細胞のアポトーシス障害を伴った疾患の予防および効果の高い治療手段を提供することにある。
【0033】
これらの目的のすべては、T細胞、マクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞のアポトーシス障害を伴う疾病を有する患者の治療や予防のための薬剤の製造、もしくは、臓器移植、特に固形臓器移植を受けた患者における臓器拒絶の治療及び予防のための薬剤の製造における、ガレクチン−2の使用、ガレクチン−2を符号化する核酸の使用、その相補鎖の使用、もしくは当該符号化する核酸やその相補鎖にハイブリッド化する核酸の使用によって達成される。
【0034】
一実施形態において、上記アポトーシス障害、特にT細胞のアポトーシス障害は、上記疾病の病原に関与もしくは関連する。
【0035】
一実施形態において、上記T細胞のアポトーシス障害を伴う疾患は、自己免疫性疾患および悪性T細胞疾患を含む群から選択される。自己免疫性疾患は、好ましくは、関節リウマチ、炎症性大腸炎、多発性硬化症、乾癬、ループスエリテマトーデス、強皮症、自己免疫性肝炎、および自己免疫性腎炎を含む群から選択される。また、炎症性大腸炎は、好ましくは、クローン病、潰瘍性大腸炎、もしくはindeterminate colitisである。
【0036】
別の実施形態において、上記自己免疫性疾患は、関節リウマチである。
【0037】
一実施形態において、上記悪性T細胞疾患は、末梢性、リンパ芽球性、節性および節外性のT細胞性非ホジキンリンパ腫を含む群から選択される。
【0038】
好ましくは、上記ガレクチン−2はヒトもしくはラットのガレクチン−2である。
【0039】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、配列識別番号1(SEQID NO:1)および2(SEQID NO:2)を含む群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0040】
一実施形態において、上記ガレクチン2は、配列識別番号1および2への配列同一性が、45%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0041】
一実施形態において、上記ガレクチン2は、好ましくは互いに共有結合する2つモノマーを含む。好ましい実施形態において、前記モノマーは、ガレクチン−2の所謂二量化ドメインにおいて互いに共有結合する。また、前記共有結合は、2個のグリシンリンカーを介するものであることが好ましい。そのような共有結合は、本技術分野に精通する者によって容易に利用可能であり、例えば、"Battiget al., 2004, Molecular Immunology 41, 9-18"において、ガレクチン−1に関して述べられており、その開示全体がここに参照される。
【0042】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、T細胞増殖の抑制剤および/あるいはT細胞アポトーシスの誘導剤と組み合わせて投与される。
【0043】
好ましくは、上記T細胞増殖の抑制剤は、ステロイド、マクロライド、サイクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、およびシクロホスファミドを含む群から選択される。
【0044】
好ましくは、上記T細胞アポトーシスの誘導剤は、抗TNFα抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、およびCDP870)、エタネルセプト、leflunamide、ナタリズマブ(抗インテグリンa4(7 mAb)、visilizumab(抗CD3mAb)を含む群から選択される。
【0045】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、カスパーゼ−8依存性経路を介してT細胞アポトーシスを誘導する薬剤と組み合わせて投与され、ここに、そのような薬剤として、前記したものの一種を利用できる。
【0046】
また、一実施形態において、上記ガレクチン2は、カスパーゼ−8依存性経路を介してT細胞アポトーシスを正常に誘導することが知られている薬剤に測定可能な応答を示すことができない患者に投与され、ここに、そのような薬剤として、前記したものの一種を利用できる。
【0047】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、5−アミノサリチル酸(5-ASA)、コルチコステロイド、メサラジン、オルサラジン、バルサラジン(balsalazin)、スルファピリジンのような抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、および/あるいは抗リウマチ薬と組み合わせて投与される。上記抗リウマチ薬は、好ましくは、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)である。また、上記疾患修飾性抗リウマチ薬は、好ましくは、アスピリン、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロシン、インドメタシン、ピロキシカム、アナキンラおよびエトドラクを含む群から選択される生物学的製剤を含む群から選択される。
【0048】
一実施形態において、上記抗リウマチ薬は、金化合物、D−ペニシラミン、クロロキンおよびスルファサラジンのような抗マラリア薬を含む群から選択される。
【0049】
好ましくは、上記ガレクチン−2は、シクロ−オキシゲナーゼ−2−阻害剤(COX-2-阻害剤)と組み合わせて投与される。また、シクロ−オキシゲナーゼ−2−阻害剤は、セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブを含む群から選択される。
【0050】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、T細胞活性剤と組み合わせて投与される。
【0051】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、β−ガラクトシドと組み合わせて投与される。また、β−ガラクトシドは、ラクトースであることが好ましい。
【0052】
一実施形態において、上記ガレクチン2は、その活性を維持するため、好ましくは、チオール還元剤(thiol-reducing reagent)もしくはシステイン変性剤(cystein-modifyingreagent)と組み合わせて、あるいはそれで前処理して投与される。
【0053】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、全身投与および/あるいは局所投与によって投与される。好ましくは、上記投与は、摂食投与、好ましくは、経口投与もしくは肛門投与、および/あるいは注射、好ましくは、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射、もしくは皮下注射、および/あるいは経鼻により行われる。
【0054】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、浣腸、および/あるいは坐薬、および/あるいは放出遅延製剤、例えば、pH依存解放性マトリックスに封入したものによって投与される。
【0055】
一実施形態において、上記ガレクチン−2は、ペグ化形態(pegylated form)、もしくは非ペグ化形態、もしくは2つの形態の混合物として投与される。
【0056】
一実施形態において、上記ガレクチン2は、一日あたり2回以上投与される、あるいは、例えば、持続点滴により連続的に投与される。
【0057】
一実施形態において、上記ガレクチン2は、1日の投与量として、50μg/kg体重〜300mg/kg体重の量で、好ましくは1mg/kg体重から100mg/kg体重の量で投与される。また、好ましい実施形態において、上記ガレクチン−2は、1回の投与量として、0.75〜1.5mg/kg体重の量で1日に2回投与される。さらに、特に好ましい実施形態において、上記ガレクチン−2は、1回の投与量として、約1mg/kg体重の量で1日に2回投与される。
【0058】
一実施形態において、上記患者が、ガレクチン−2の投与前に、患者のT細胞の一部、および/あるいは患者のマクロファージの一部、および/あるいは患者の抗原提示細胞の一部が、アポトーシス、好ましくは適切なアポトーシスを受けることができない病的状態にあるか、もしくは、患者のT細胞、および/あるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部が、正常に機能しないあるいは不完全なアポトーシスを示す病的状態にある。
【0059】
一実施形態において、上記T細胞の一部は、好ましくは、CD3経路あるいはCD2経路を介して、あるいはマイトジェン、CD28やCD40のような共刺激分子を介して、あるいは、Toll様受容体(Toll-like receptors)やインテグリンのような他の経路を介して予め活性化されたT細胞である。
【0060】
一実施形態において、上記T細胞、および/あるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、休止していない。
【0061】
一実施形態において、上記T細胞、およびあるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、細胞周期から出た細胞ではなく、もしくは細胞周期の相に停止されている細胞でない。
【0062】
好ましくは、上記T細胞、およびあるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、患者の関節、好ましくは滑膜関節、および/あるいは患者の胃腸管、好ましくは前記胃腸管の内膜、および/あるいは患者の皮膚、および/あるいは肺、および/あるいは肝臓、および/あるいは腎臓、および/あるいは炎症中の粘膜に見られる抹消血液細胞の集団に主として存在する。
【0063】
好ましくは、上記患者は、ガレクチン−2の投与前に、T細胞中のBcl-2タンパク質とBaxタンパク質の間の比が、抗アポトーシス性Bcl-2のためにバランスの壊れた病的状態にある
本発明の目的は、さらに、免疫調整剤としての、ガレクチン−2の使用、もしくはガレクチン−2を符号化する核酸の使用、もしくはその相補鎖の使用、もしくは当該符号化する核酸やその相補鎖にハイブリッド化する核酸の使用によって達成される。好ましくは、ガレクチン−2は、T細胞および/あるいはマクロファージおよび/あるいは抗原提示細胞に作用する。また、上記T細胞および/あるいはマクロファージおよび/あるいは抗原提示細胞は人間のものであることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
ここに使用される「ガレクチン−2」という用語は、配列識別番号1および2によって符号化されるようなタンパク質であって、その配列相同性が45%以上、好ましくは60%、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上であるタンパク質(すなわち、配列識別番号1および2それぞれの全長の45、60、80もしくは90%以上の配列相同性を有するタンパク質)を意味する。また、活性化T細胞におけるT細胞アポトーシスの選択的誘導を示すその機能的変異体であることを意味する。
【0065】
ここに使用される「T細胞のアポトーシス障害を伴う疾患」という用語は、T細胞のアポトーシス障害に付随して起こる、もしくはそれによって引き起こされる疾患を意味する。
【0066】
ここに使用される「前記疾患の病因に関与もしくは関連する」という用語は、アポトーシス障害が必ずしも疾患の原因である必要はなく、それに関連していればよいことを意味する。好ましくは、アポトーシス障害もしくは機能不全が唯一の原因である必要はなく、疾患の原因の1つであればよい。
【0067】
健常者の経過(病的経過でない場合)において、抗原を排除する機能を果たすT細胞は、アポトーシス、すなわち、プログラムされた自己破壊を受けるべきであるが、「T細胞のアポトーシス障害」という場合は、疾患のような病的状態において、アポトーシスを全く受けないか、もしくは健常者よりもゆっくりした速度でアポトーシスを受ける場合をいう。
【0068】
「T細胞増殖」という用語は、T細胞がG1、S、G2およびM相の細胞周期を受けて、結果的にその周期の終わりに2つの細胞に分裂されるプロセスを意味する。
【0069】
ここに使用される「ガレクチン2が・・・投与される」という用語は、タンパク質として、あるいはガレクチン−2タンパク質を符号化する核酸として、および/あるいは当該符号化する核酸に相補的な核酸鎖として、投与されることを意味する。好ましい実施形態において、ガレクチン−2は、タンパク質として投与されることを意味する。
【0070】
ここに使用される「・・・と組み合わせて投与される」という用語は、ガレクチン−が他の薬剤と併せて投与されることを意味し、投与は、同時もしくは順々に、同じ経路あるいは異なる経路を介して、同じ投薬形態あるいは別々の投薬形態で行えばよい。
【0071】
「T細胞増殖抑制剤」とは、細胞周期内のどこであってもそこにT細胞をロックするもしくは、スローダウンさせる薬剤のことである。
【0072】
「T細胞アポトーシス誘導剤」とは、細胞に、いわゆるアポトーシスと云われるプログラムされた細胞死をうけさせる薬剤であることを意味する。
【0073】
ここに使用される「T細胞活性化剤」とは、T細胞を休止状態からT細胞が細胞周期あるいはその少なくとも一部を受ける状態に入るように誘導することのできる薬剤を意味する。
【0074】
ガレクチン−2の投与は、受容者の組織へのガレクチン−2の摂取が確保されるのであれば、受容者に最適な形態で行われる。また、投与は、薬剤的に許容可能なキャリアと併用して行っても良い。また、全身投与および/あるいは局所投与であってもよい。さらに、注射、好ましくは、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射および/あるいは皮下注射によって行われる。また、浣腸、座薬、鼻腔内塗布などの他の経路を介して行っても良い。
【0075】
本発明者らは、ガレクチン−2が、ガレクチン−2のインテグリンのβサブユニットへの特異結合によって特徴づけられる独特の免疫調整特性を発揮するという驚くべき発見をした。すなわち、細胞死のミトコンドリア経路(mitochondrial death pathway)をトリガとするT細胞アポトーシスの活発な誘導と、インテグリン発現と細胞接着の変化が、ガレクチン−2を、T細胞のアポトーシス挙動が機能不全に陥っている疾患の治療にとって最適なものにする。これらの疾患は、自己免疫性疾患あるいは悪性疾患、特に悪性T細胞疾患である。すべての抹消型、およびリンパ芽球性/筋性、および筋外性のT細胞非ホジキンリンパ腫は、β1インテグリン鎖の著しい発現を示す。したがって、β1インテグリンの表面接触性(surface accessibility)の増大が悪性細胞の挙動に影響を及ぼすと推測される。そこで、ガレクチン−2は、T細胞におけるβ1接触性をダウンレギュレートし、悪性細胞の細胞外マトリックスへの付着を抑制すると考えられる。したがって、ガレクチン−2は、悪性T細胞疾患の治療に好ましい効果を発揮する可能性がある。
【0076】
ガレクチン−2、特にヒトガレクチン−2は、免疫原性がなく、したがって、薬剤としての利用に最適である。
【0077】
T細胞機能は、その活性化とその後の増殖、サイトカイン分泌、その作用のアポトーシスによる終結によって決定される。この厳格にバランスの取れた相互作用の乱れが、炎症性大腸炎を含む多くの疾患に観られる(42)。ガレクチン−1は、T細胞アポトーシスを誘導することによりマウスに実験的に誘発された大腸炎や肝炎を改善することが最近報告されているが(27,43)、ガレクチン−3は、多様な細胞集団において、抗アポトーシス特性を示した(44)。このように、一つのガレクチンファミリーにおける結論を、他のガレクチンファミリーに転用できない。
【0078】
ガレクチン−2の発現、結合および生物学的機能は明らかでなく、以下に述べる実験は、ガレクチン−2が、他のガレクチンファミリーとは明らかに異なり、ヒトT細胞における強力な免疫調整効果を有することを初めて示すものである。
【0079】
以下に、本発明に至るまでの実験結果の概略について簡潔に述べる。ガレクチン−1やガレクチン−3とは対照的に(6)、本発明者らは、ガレクチン−2が、ナイーブ末梢血T細胞や組織結合記憶T細胞のような起源とは無関係に、休止T細胞もしくは活性化T細胞には発現されないことを発見した。この発見は、腸上皮細胞のみに限定的に見られたガレクチン−2のmRNA発現に基づかれる(9)。本発明者らは、免疫組織学の手法により、クローン病や潰瘍性大腸炎の患者からの検体の結腸上皮細胞においてGal-2発現を観察した。
【0080】
ガレクチンは、β−ガラクトシド含有細胞表面複合糖質に架橋し、結果として細胞機能の調節をもたらす糖鎖結合タンパク質である(45)。本発明者らのデータは、ガレクチン−2が数時間内にT細胞に結合し、72時間以上経過した後も結合が維持されることを示している。この結合は、ラクトースによって阻害された。このことは、ガレクチン−糖鎖相互作用が、T細胞に結合しているガレクチン−2に関与することを示している。ガレクチン−1に比べ(25)、T細胞へのガレクチン−2の結合は、休止抗CD3やPMA/PHA(ホルボールミリスチン酸アセテート/フィトヘマグルチニン)刺激T細胞において同等であった。このことは、T細胞へのガレクチン−2の結合は、それらの活性化状態とは無関係であることを示している。
【0081】
T細胞に結合するガレクチン−2の能力は、T細胞表面へのガレクチン−2の結合を仲介する候補糖タンパクレセプターとしてβ1を識別するインテグリン−β1mAbsをブロックすることによって大幅に減少する。ガレクチン−1は、インテグリンのβ1サブユニットとも相互作用し(18)、ガレクチン結合におけるインテグリン−β1の重要な役割を強調する。しかしながら、ガレクチン−1とは対照的に、PBT(末梢血T細胞)へのガレクチン−2の結合は、CD3やCD7mAbによって抑制されなかった。このことは、両方のガレクチンがT細胞上において異なる結合サイトを有していることを示している(24)。ガレクチン−1およびガレクチン−2被覆電磁ビーズを使用した免疫沈降法によって、CD3、CD7およびβ1分子(18,24)とガレクチン−1との相互作用が確認された。ガレクチン−1とは対照的に、ブロッキング実験によると、CD3とCD7はいずれもガレクチン−2とは結合せず、インテグリンのβ1サブユニットがガレクチン−2と免疫共沈降した。このことは、T細胞へのガレクチン−2の結合を阻害するβ1mAbsの能力は、物理的な相互作用に基づくことを示している。
【0082】
アポトーシスは、抗原がクリアされると、細胞機能を終わらせるためのT細胞の主要な免疫調整機能であり、これにより自己免疫あるいは悪性腫瘍の発生を防いでいる。さらに、抗腫瘍壊死因子−αのようなマクロファージやT細胞のアポトーシスを誘導する薬は、関節リウマチや炎症性大腸炎のような自己免疫疾患の治療において非常に効果的である(46,47)。これまでに研究されたガレクチンは、種々の細胞種において、細胞アポトーシスを修正する顕著な能力を備えている。例えば、ガレクチン−1は、細胞死を誘導し、ガレクチン−3は、細胞死を妨げる(6)。しかしながら、この点におけるガレクチン−2の能力は未だ知られていない。本発明者らのデータは、ガレクチン−2は、ガレクチン−1によって誘導されるよりもさらに高い程度にT細胞アポトーシスを誘導することを示している。また、ガレクチン−2は、アポトーシスを誘導するために細胞の刺激を必要としており、休止状態のT細胞はガレクチン−2誘導細胞死を免れることが示されている。また、ガレクチン−2は、わずかながらネクローシスを誘導する。このことは、ガレクチン−2がプログラムされた細胞死だけではなく、ネクローシスにより細胞を殺すことを示しており、これまでガレクチンに関しては全く述べられていない特徴である。
【0083】
ガレクチン−2誘導アポトーシスを抑制するラクトースの能力は、β−ガラクトシド結合活性が、ガレクチン−2誘導細胞死において本質的に必要であることを示している。興味深いことに、T細胞へのガレクチン−2の結合は、前記したように、細胞の活性化状態には無関係であり、ガレクチン−2によるアポトーシスの導入には、追加の細胞活性が必要であるので、β−ガラクトシド結合のみに細胞死プログラムを開始する能力があるとは思えない。ガレクチン−2は、細胞表面のインテグリンβ1に結合し、β1インテグリンmAbはガレクチン−2のT細胞への結合を阻害する。しかしながら、β1インテグリンmAbのブロッキングは、ガレクチン−2誘導アポトーシスを阻害することができなかった。このことは、このレセプタは細胞死において必要とされないことを示唆している。また、シクロヘキシミドは、ガレクチン−2誘導細胞死を防ぐことができなかった。これは、ガレクチン−9とは対照的に(28)、デノボタンパク質合成が必要とされないことを示しており、ガレクチン−2を受けて6〜12時間以内にT細胞にアポトーシスが速やかに誘導されることによって実証された。また、ガレクチン−1は、CD4およびCD8陽性胸腺細胞に特徴的にアポトーシスを誘導し(38,48, 49)、CD4ヒトT細胞系は、ガレクチン−9誘導細胞死に対してより感受性が高いことが報告されている(28)。しかしながら、腎臓病ラットの脾臓T細胞が調べられた時、ガレクチン−9は、CD4T細胞ではなく、活性化CD8T細胞に選択的にアポトーシスを誘導した(50)。さらに、CD4とCD8の陽性T細胞小集団が別々に調べられた時、ガレクチン−2誘導細胞死の割合は、各細胞集団において同等であった。このことは、PBTにおいて、ガレクチン−2は、CD4やCD8T細胞の状態には無関係にアポトーシスを誘導することを示している。
【0084】
アポトーシスは、異なる経路によって実行され、異なるカスパーゼによって開始される。本発明者らの結果は、異なるガレクチンによって使用されるカスパーゼ活性に明確な差異があることを示している。ガレクチン−2の存在下においてPBTが活性化されると、カスパーゼ−8活性ではなく、カスパーゼ−3および−9活性が誘導された。また、ガレクチン−2仲介アポトーシスは、広域カスパーゼ阻害剤zVADや、カスパーゼ−3および−9の阻害剤によって妨げられ、ガレクチン−2誘導細胞死におけるカスパーゼ−3および−9活性の機能的関連を支持している。カスパーゼがアポトーシスの仲介を担う中心的な存在であるという事実にもかかわらず(29)、ガレクチン誘導アポトーシスにおけるカスパーゼの役割はあまり調べられていない。ガレクチン−1は、実験マウスモデルにカスパーゼ−8および−9活性を誘導するが(27)、コンカナバリンA誘導肝臓炎のマウスにおいては、カスパーゼ−3活性を低下させることが報告されている(43)。また、タンデムリピート型ガレクチン−9が、カルシウム−カルパインカスパーゼ−1依存経路を介してアポトーシスを誘導することから(28)、アポトーシスを誘導するガレクチンの能力はプロトタイプガレクチンに限定されない。また、ガレクチン−2とは対照的に、ガレクチン−2に匹敵するガレクチン−7誘導T細胞アポトーシスでは、全く異なるパターンのカスパーゼが関与するようである。広域カスパーゼ阻害剤zVADおよびカスパーゼ−3阻害剤zDEVDが、ガレクチン−7誘導アポトーシスを抑制する一方で、カスパーゼ−9ではなく、上流カスパーゼ−1および−8のブロッキングがT細胞死を減じた。これらの知見は、ガレクチン−2はカスパーゼの独特のカスケードを活性化させ、他のガレクチンに匹敵する細胞死を実行することを示している。
【0085】
カスパーゼ−9は、アポトーシスのミトコンドリア経路に関与し、シトクロムcおよびAPAF-1と複合体を形成するときに活性化される。シトクロムcは、ミトコンドリア内膜の電気化学的勾配の乱れに基づいてミトコンドリアから放出され、プロセスはbcl-2ファミリーによって詳細に調整される(29,51, 52)。本発明者らのデータは、ガレクチン−2がミトコンドリア膜のポテンシャルを乱し、シトクロムcの放出を開始させることを示しており、ミトコンドリア経路がT細胞死を誘導するためにガレクチン−2によって使用されることを示している。bcl-2ファミリーはミトコンドリアの表面に接触し、アポトーシス刺激に対する細胞の感受性は、アポトーシス促進ファミリーと抗アポトーシスファミリーの相対的なバランスに依存する(52)。ガレクチン−2は抗アポトーシスbcl-2を減少させ、アポトーシス促進baxレベルを増加させ、結果的に、bcl-2/bax比を低下させる。クローン病のような自己免疫性疾患においては、bcl-2/bax比はコントロールに比べて高い(53)。この比を減少させて、制御不能の増殖細胞に細胞死を誘導するガレクチン−2の能力は、そのような疾患の治療のためのガレクチン−2の使用という魅力的なアプローチを提供する。
【0086】
アポトーシスと細胞周期は、究極的にリンクしており、G0におけるT細胞は、抗原誘導細胞死から保護される(29,54)。周期に要件があることはガレクチン−2誘導細胞死にとって事実であるが、T細胞増殖を顕著に抑制するガレクチン−1とは対照的に(38)、ガレクチン−2は、PBT細胞周期を調節しなかった。細胞周期へのガレクチンの影響力を研究するこれまでのデータは、たいていにおいて細胞増殖を測定するためにチミジン結合を使用していた(38,55)。簡単で再現性のよいこの方法は、単にS相中におけるDNA合成を測定するが、他の相を介して進む細部分画の情報を提供しないし、アポトーシス細胞を評価しない。しかしながら、G2/M相(56)に至るまで細胞周期を介しての進行を定量化する高感度な手段であるサイクリンB1発現によって決定されるように、ガレクチン−2ではなく、ガレクチン−1および−7は、PBTにおける細胞周期の進行を強力に抑制する。さらに、ガレクチン−2がT細胞周期に影響を及ぼすことができないのが、細胞周期プロモーターおよびインヒビターの変動のためではないことは、T細胞の細胞周期機構がガレクチン−2によって左右されないという証拠、ガレクチン−1および−3とは明らかに異なる特徴を提供する。本発明者ら及びその他は、ガレクチン−1がT細胞レセプタ−(TCR)(24,38)に結合することを示し、Vespaおよびその共同研究者らは、抗TCRmAbsとともにガレクチン−1がアポトーシスを誘導するが、抗TCR誘導IL-2産生をアンタゴナイズすることを示した(38)。ガレクチン−2がTCRに結合しないという我々の観察は、ガレクチン−2がT細胞周期を抑制しない理由を説明し、ガレクチン−2の挙動がガレクチン−1のそれとは異なることを示している。
【0087】
T細胞は、外部抗原の探索において連続的に循環し、炎症性組織内におけるTリンパ球の補充と保存は、細胞外マトリックス(ECM)として知られるプロテオグリカン、糖タンパク質、およびタンパク質の無細胞性ネットワークへの接着に依存する(57,58)。接着は、T細胞仲介免疫反応における重要な構成要素であり、したがって厳重に調節される(59-61)。ガレクチンは、細胞表面インテグリンへの接着を立体的に防止するような直接の影響を及ぼしたり、インテグリンの一方のあるいは両方のサブユニットの細胞外ドメインに結合したり、インテグリンの取り込み(internalisation)によって細胞接着を調節する(20,39, 45)。T細胞のECM化合物への接着は、ガレクチンによって発散的に調節され、ECMタンパクと細胞種とに依存する(6,14, 62)。ECM化合物への細胞接着は、インテグリンのβ1ファミリーによって仲介され、本発明者らは、ガレクチン−2が高親和性を達成するために必要とされるインテグリンサブユニットの立体配座変化を阻害することを示した。さらに、ガレクチン−1は、コラーゲンとフィブロネクチン両方へのT細胞接着を阻害した。一方、ガレクチン−2は、コラーゲンI型へのT細胞接着を阻害したが、ガレクチン−1とは対照的に、フィブロネクチンへの細胞付着を顕著に増大させた。また、ガレクチン−1および−2とは対照的に、ガレクチン−7は、コラーゲンI型やフィブロネクチンへのT細胞接着に影響を及ぼさなかった。これらは、ガレクチン−2がアポトーシスに関してだけでなく、細胞接着にも特異な特徴を備えていることを示している。それぞれのECM化合物へのT細胞の付着は、ブロッキング実験によって示されるように、特定のコラーゲンI型やフィブロネクチンレセプターによって仲介された。ガレクチン−2が、β1インテグリン接触性を減じるという事実にもかかわらず、フィブロネクチンへの細胞接着がガレクチン−2によって促進される理由は明らかでない。しかしながら、ガレクチン−1が、メラニン細胞、奇形癌細胞や繊維芽細胞における接着促進を有するが、ラミニンやフィブロネクチン(6)へのT細胞接着を阻害することから、ガレクチンによる細胞接着の調節は複雑であると思われる。同様のことがガレクチン−3についても言える。すなわち、ガレクチン−3は、好中球の種々の基質(63)への接着を顕著に増大させるのに対し、ラミニン、フィブロネクチンやコラーゲン(64)への腫瘍細胞株の接着をブロックする。インテグリン抗体をブロックする様々な経路を使用して、発明者らは、T細胞の結合がコラーゲンやフィブロネクチンレセプターを介して仲介され、β1mAbsとT細胞のプレインキュベーションがコラーゲンへのT細胞結合をさらに阻害し、ガレクチン−2によるフィブロネクチンへの細胞接着のアップレギュレーションを妨げることを示した。これは、ガレクチン−2による細胞接着の調節が、β1インテグリン依存性を有することを示唆している。さらに、β1mAbsのブロッキングによる細胞接着の阻害は、ガレクチン−2プレインキュベーションによって妨げられた。このことは、T細胞へのガレクチン−2の結合が、細胞表面のインテグリンのβ1サブユニットを機能的に不活性化できることを示している。
【0088】
将来の臨床的応用の可能性に関しては、Gal-2処理がTh1-対Th2-由来サイトカインのバランスにどの程度に影響するかを解析することが更なる関心の的である。ネズミ感染BI-141ハイブリドーマをモニタリングすると、Gal-1は、CD3結合能力に即してIL-2分泌を阻害した。また、ネズミ感染LPS処理脾臓細胞およびヒトIL-2活性化T細胞は、炎症誘発性Th1由来サイトカインTNF-αおよびIF-γ(Rabinovicet al., 1999, Immunology, 97:100; Santucci et al., 2000, Hepatology 31:399)の分泌減少を伴ってGal-1処理に反応した。Gal-2は、図9に示すように、分泌プロファイルをTh2-由来サイトカインに明確にシフトさせた。TNF-αおよびIF-γの分泌のダウンレギュレーションは、IL5-分泌の著しい増加を伴った。これらの結果は、Gal-2依存効果における知見を広めるとともに、臨床的関連性をデータに割り当てることに貢献した。移植モデルにおいては、Th1サイトカインプロファイルが同種移植の拒絶反応とたいてい関連し、一方Th2プロファイルは耐性の取得を支持した。ガレクチン−2は、TNF-αおよびIF-γ(Th1サイトカイン)を抑制し、IL-10(Th2サイトカイン)同様にIL-5を増加させるので、ガレクチン−2は、臓器移植、特に固体臓器移植に続く臓器拒絶反応の防止/治療における単独成分として利用できる。
【0089】
要約すれば、本発明者らの研究は、ガレクチン−2が、TCR複合体ではなく、β1インテグリンサブユニットに糖鎖依存的に結合するという明確な証拠を提供する。ガレクチン2は、休止T細胞にではなく増殖T細胞において排他的に固有のミトコンドリア経路を介してT細胞アポトーシスを誘導する。活性化細胞におけるT細胞アポトーシスの誘導は、細胞周期をダウンレギュレーションすることなく、抗原接触後に十分なT細胞応答を可能にし、特定の免疫反応の過程に関係しない休止T細胞の任意のアポトーシスを防止する。さらに、ECMへの細胞接着を選択的に調節することにより、ガレクチン−2は、細胞が活性化されると、T細胞ホーミングに寄与するだろう。このように、本発明者らのデータは、ガレクチン−2が他のガレクチンとは明らかに異なるメカニズムによってヒト免疫システムを調節する明確な証拠を提供し、ガレクチンがT細胞とどのように相互作用するかという新しい見識を与えるとともに、クローン病や関節リウマチのようなT細胞アポトーシス障害を伴う疾患の治療における新規な概念を提供する。
【0090】
本発明は、以下の記述と本発明の限定を意図しない実施例とを引用しながらさらに詳細に説明される。
【0091】
(実施例)
実施例1:材料と方法
試薬と抗体
CD3mAb(OKT3; Ortho Diagnostic System Inc., Raritan, NJ)、CD2mAb (T112/T113; Dr. Ellis Reinherzの提供による, Boston MA)、PMA(Sigma-Aldrich,St. Louis, MO)、およびPHA(Gibco,Grand Island, NY)が、T細胞活性化のために使用された。広域スペクトルカスパーゼ阻害剤Z-Val-Ala-Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(zVAD-fmk)をBiomol社(PlymouthMeeting, PA)から購入した。また、カスパーゼ−1阻害剤Z-Tyr-Val-Ala-Asp(Ome)-Ch2F(Z-YVAD-fmk)、カスパーゼ−2阻害剤Z-Val-Asp-Val-Ala-Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z-VDVAD-fmk)、カスパーゼ−3阻害剤Z-Asp-Glu-Val-Asp(OMe)−フルオロメチルケトン(Z-DEVD-fmk)、カスパーゼ−8阻害剤Z-Ile-Glu-Thr-Asp(Ome)−フルオロメチルケトン(ZIETD-fmk)、カスパーゼ−9阻害剤Z-Leu-Glu(Ome)-His-Asp-(OMe)-Ch2F(Z-LEHD-fmk)をCalbiochem社(SanDiego, CA)から購入した。FITC結合抗サイクリンB1およびPEラベルが施された抗活性カスパーゼ−3をBDPharmingen社(SanDiego, CA)から購入した。また、CD3-PE、CD4-PE、CD8-FITC、CD3-PE、FITC-およびPE-ラベルが施されたポリクローナル抗マウスIgGはDAKO社(Carpenteria,CA)から得た。2次FITCラベルが施されたヤギ抗マウスをBiosource社(Camarillo,CA)から購入した。さらに、APCラベルが施されたストレプトアビジンをCaltag社(Burlingame,CA)から得た。カスパーゼ活性測定のためのカルボキシフルオレセイン(FAM)カスパーゼ検出キットをBiocarta社(SanDiego, CA)から得た。ラクトース、スクロース、シクロホスファミド、およびローダミン123をSigma-Aldrich社から購入した。プロピジウムアイオダイド(PI)をCalbiochem社(SanDiego, CA)から購入した。ウェスタンブロッティングに使用されるすべてのプロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤をSigma-Aldrich社から購入した。ヒトカスパーゼ3、DFF、PARP、網膜芽細胞腫(Rb)タンパク、サイクリンA、p21、p27およびp53をBDPharmingen社から購入した。ヒトbax、bcl-2およびサイトクロムcに対する抗体をSantaCruz Biotechnologies社(SantaCruz, CA)から得た。サイトメトリービーズアレイキットをBDPharmingen社から購入した。また、IFN-γ、IL-10、およびIL-2ELISAキットをR&D社(Minneapolis,MN)から得た。ガレクチン−2、−7およびガレクチンプライマーは、H.-J.Gabius氏(Institute of Physiological Chemistry, Faculty of Veterinary Medicine, Munich, Germany)のご好意により提供いただいた。さらに、ガレクチン−2の分離と発現は(65)に述べられている。あるいは、ガレクチン−2は、R&DSystems Inc., Minneapolis, USA, カタログNo.1153-GA-050あるいは1153-GA-050/CFで購入することができる。フローサイトメトリーおよびブロッキング実験のため、抗ヒトα1インテグリンmAb(クローンFB12)、抗ヒトインテグリンα2mAb(クローンP1E6)、抗ヒトインテグリンα3mAb(クローンP1B5)、抗ヒトインテグリンα4(クローンP1H4)、抗ヒトインテグリンα5(クローンP1D6)、抗ヒトインテグリンβ2(クローンP4C10)およびβ2(クローン3E1)が使用された(すべて、Chemicon社製、Temecula,CA)。
【0092】
ガレクチンの調製
ヒトおよびラットのガレクチン−2のcDNAが、それぞれHT-29結腸癌細胞あるいはラット十二指腸のmRNAプールからクローニングされた。NcoI制限部位の導入は、対応するタンパク配列にThr(Ser)2Ala置換をもたらした。組換え発現のため、pQE-60ベクターシステム(Qiagen,Hilden, Germany)が使用され、レクチン精製は、ラクトシレートセファロースB4(lactosylated Sepharose B4)における親和性クロマトグラフィーで実施され、重要ステップとして、ジビニルスルフォン活性化後のリガンド結合によって得られる(Gabius,1990, Anal. Biochem., 189:91 Andre et al., 1999, J.Cancer Res. Clin. Oncol.125:461)。均質性と4次構造がゲルろ過と1次元もしくは2次元ゲル電気泳動によって解明された。ガレクチン−1および−7は、前記したように調製され、ガレクチンは、最適な手順により、活性度維持条件下において、ビオチン化され、ラベルの取り込みは2次元ゲル電気泳動によって定量化され、糖鎖結合活性の維持が固相検定(solid-phase assays)によって解明された(Andreet al.2001, ChemBioChem, 2:822; Purkrabkova et al., 2003, Biol. Cell 95:535)。ポリクローナル抗体はウサギにおいて作製され、関連するガレクチンへの交差反応は、ELISA検定およびウェスタンブロッティングによって除外された(Kaltneret al., 2002, Cell Tissue Res. 307:35; Nagy et al., 2003, Cancer 97:1849)。
【0093】
Tリンパ球の調製
健常被験者から提供されたPBMC(末梢血単核球)が、Ficoll-Hypaque密度勾配を使用してヘパリン添加静脈血から分離された。抹消血Tリンパ球(PBT)の分離のため、PBMC細胞が、4℃で30分間、Bリンパ球、単球、好中球のそれぞれを対象とする磁気ラベルの施されたCD19、CD14およびCD16Abと培養された(MiltenyiBiotec Inc., Bergisch-Gladbach, Germany)。その後、T細胞を磁気細胞分離システム(MACS,Miltenyi Biotec Inc.)を使用して捕集した。粘膜固有層T細胞(LPT)は、先に述べたように(21)、大腸癌や良性ポリプを含む大腸の悪性および非悪性状態のため腸切除が認められた患者から採取した外科試料において分離された。簡単に言えば、切り取られた腸粘膜は、DTTとEDTAでの連続洗浄により、粘液および上皮細胞が除去された後、37℃で一晩かけてコラゲナーゼとデオキシリボヌクレアーゼとで消化された。Ficoll-Hypaque密度勾配に層を形成することにより、未加工の細胞懸濁液から単核球が分離された。LPT精製のため、マクロファージディプリーションされた粘膜固有層単核球が4℃で30分間、上記したように、磁気ラベルが施されたビーズと培養され、MACSシステムを使用したネガティブセレクションによって捕集された。フローサイトメトリーによって評価されるように、精製されたPBTおよびLPT集団は、>99%および>92%CD3細胞をそれぞれ含有していた。
【0094】
PCR
全RNAが、Advantage RT-PCR kit(BD Clontech, Heidelberg, Germany)を使用し、製造者の手引書に基づいて分離された。全RNAの2.5μg一定分量(two-point five μg aliquots)が、先に述べたように(8)、本質的に逆転写され、ガレクチン−2mRNAが以下のプライマーを使用して増幅された:
センス、5'-ATGACGGGGGAACTTGAGGTT-3'および
アンチセンス、5'-TTACGCTCAGGTAGCTCAGGT-3'。
熱サイクルは、94℃、4分間の高温スタートで開始され、続く36サイクルでは、各々が94℃、60秒でなり、アニーリングは60℃で60秒間、エクステンションは72℃で120秒間、そして最後の10分間を72℃とした後に終了した。生成物は、1%TAEアガロース・ゲル上において分離され、紫外光下でエチジウムブロマイド染色することにより視覚化された。
【0095】
ウェスタンブロッティング
免疫ブロット法において、細胞がPBSで洗浄され、細胞ライシスバッファー(1%Triton X-100, 0.5% NP-40, 0.1% SDS, 0.5%デオキシコール酸ナトリウム, 5mM EDTA,50mMおよび50mMプロテアーゼおよびフォスファターゼ阻害剤カクテル2,1mM PMSF, 100μg/mlトリプシン−キモトリプシン阻害剤,100μg/mlキモスタチン,PBS中)。各溶解物におけるタンパク質濃度は、Bio-Radprotein assay(Bio-Rad, Laboratories, Hercules, CA)を使用して測定された。タンパク質(10μg)の等量は、10-20%トリス-グリシンゲル上に分画され、ニトロセルロース膜(Novex,San Diego, CA)に電気的に導入された。膜は、0.1%Tween 20-PBS(Fisher Scientific, Hanover Park, IL)において5%ミルクでブロックされ、続いて所定のプライマリ抗体と室温で60分間培養された。膜は、0.1%Tween 20-PBSで6回洗浄された後、適切なHRP結合2次抗体"horseradish peroxidase -conjugated secondary antibody" (Santa Cruz Biotechnology)と1時間培養され、洗浄され、化学発光基質(Perkin-Elmer,Carlsbad, CA)で5分間培養された。その後、膜は、フィルム(Amersham,Arlington Heights, IL)に感光させた。
【0096】
ビオチン化Gal-2の結合の決定
Tリンパ球に結合するGal-2を測定するために、細胞懸濁液の一定分量が、コントロールとして保たれるか、もしくは抗CD3mAbあるいはPMAおよびPHAで1,6, 12, 24, 48, 72時間刺激され、5μg/mlビオチンラベルが施されたGal-2の存在下において培養された。その後、細胞は収穫され、洗浄され、CD3-FITCmAbおよびAPCラベルが施されたストレプトアビジン(Biosource)で染色され、続いてフローサイトフルオロメトリー分析が実施された。ビオチンのラベルが施されたGal-2のない条件下で培養され、FITCラベルが施されたマウスIgG(BDPharmingen)あるいはAPCラベルの施されたストレプトアビジンで染色された細胞がアイソタイプコントロールとされた。各分析は少なくとも20000イベントにおいて実施された。
【0097】
ガレクチン−2含有複合体の磁気分離
ガレクチン−2結合複合体の分離のため、トシル活性化スーパーマグネティックポリステレン被覆ビーズ"tosylactivated supermagnetic polysterene coated beads"(Dynalbeads, Dynal Biotech, Oslo,Norway)が、350μgBSA、ガレクチン−1、ガレクチン−2、CD7、インテグリン−β1あるいはOKT3のいずれかで一晩かけて37℃で傾斜回転を使用して被覆された。培養後、ビーズは、0.2MTris(pH 8.5 0.1% BSA含有)において洗浄され、2x106PBTで、37℃、1時間の条件で培養された。未結合細胞は洗浄によって除去され、その後細胞は均質化バッファー(20mM Tris-HCl, pH 7.6, 10 mM MgCl2, 0.05% Triton X-100, 50 mM フォスファターゼおよび50mMプロテアーゼ阻害剤カクテル)で溶解され、SDS/DTTタンパクローディングバッファーに再懸濁され、95℃に5分間加熱され、SDS-PAGE電気泳動に供された。
【0098】
接着検定
96の平底ウェルプレートが、DPBS中において12μg/ウェルのフィブロネクチン(Chemicon)、0.1M酢酸中において40μg/ウェルのコラーゲンタイプI(Sigma-Aldrich)、あるいはコントロールとしてDPBS中において3%BSA(Sigma-Aldrich)で、一晩4℃で被覆された。分離してすぐの新鮮なT細胞が、RPMI中において、5x106細胞/ml、5%CO2、37℃、30分の条件下、5μMカルセインAM(MolecularProbes, Eugene, OR)で蛍光ラベルされた。その後、細胞は、5%FCSを含有するRPMIで3回洗浄された。カルセインラベルが施されたT細胞がRPMI中に再懸濁され、5x105T細胞/ウェルが、精製ECM成分あるいはBSAを含有する96ウェルプレートに指定時間添加された。(フローサイトメトリーによって予め決定された)飽和濃度のインテグリン−ブロッキングmAbsは、T細胞を接着検定用ウェルに添加する前に、T細胞と37℃、30分間プレインキュベーションされた。未接着細胞は、バックグラウンド結合を最小限にするために開発された標準化洗浄技術によって除去された。これは、軌道運動と揺れ運動の両方を含み、RPMIで3回繰返された。接着はマルチウェル蛍光分光光度計(Tecan, Groedig, Austria)で定量化された。各実験グループに関して、結果は3つのウェルから結合T細胞の平均百分率±SDとして表された。
【0099】
アポトーシスとネクローシスの程度の決定
アポトーシスは、核DNAのフラグメンテーションおよびアネキシンVの細胞表面ホスファチジルセリン(PS)への接触をモニタリングすることにより決定された。核DNAのフラグメンテーションを検出するため、T細胞が、各ガレクチンの有無において、ブロッキング抗体の有無、もしくは48時間のさらなる活性化の有無において培養された。その後、細胞は37%ホルムアルデヒドの0.2ml中に室温で10分間固定された。次いで、細胞は、室温下で2分間、0.2%のNonidetP-40(Sigma-Aldrich)を含有するPBSの1mlで処理され、さらにPBS中において一度洗浄された。アポトーシス細胞は、核DNAの4,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Calbiochem)での染色によって検出された。DAPIは、PBSの0.2ng/mlの濃度で添加され、細胞は、この溶液中において室温で20分間培養された。細胞は、PBS中において2度洗浄され、カバースリップは、顕微鏡用スライド上において細胞側を下にして保持され、"Zeiss Axiovert 135M"顕微鏡(CarlZeiss, Oberkochen, Germany)を使用して分析した。アポトーシスの初期相を検出するため、PSへの接触が測定された。細胞は、記述のように培養され、それぞれの時点で収穫され、FITCラベルが施されたアネキシンVおよびPIで染色され、CellQuestソフトウェアプログラム(BDPharmingen)を用いてフローサイトメトリーによって分析された。最低でも15000細胞が各ケースにおいてモニタリングされた。
【0100】
ミトコンドリア膜電位の評価
ローダミン123は、内部ミトコンドリア膜と基質空間(22)の両方におけるその変化と溶解度のため、ミトコンドリア基質に蓄積する蛍光陽イオン色素である。この脂肪親和性色素の蓄積がΔΨに比例し、ミトコンドリアの不活性化がローダミン123の蛍光を減少させるという観察に基づいて、発明者は、PBTのミトコンドリア膜電位を測定した。細胞は、ガレクチン−2の有無において、24時間CD3で刺激され、収穫され、洗浄され、暗所で37℃、30分間、ローダミン123(10μg/ml,Sigma-Aldrich)の1ml中において再懸濁された。試料は、冷やしたPBSにおいて2度洗浄され、530nmにエミッションフィルタを有するアルゴンイオンレーザーを使用したフローサイトメトリーによって、蛍光分析が固定(fixation)無しに直ちに実施された(BDFacsCalibur)。刺激無しのPBTおよび未染色試料がコントロールとして使用された。
【0101】
フローサイトメトリー分析
表面染色のため、細胞はよく冷えたPBS中において2度洗浄され、1x106個の細胞が、フローバッファー(1%BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含有するHBSS)中において再懸濁された。細胞は、予め決定された飽和濃度で各mAbと、あるいはアイソタイプ適合非特異的マウスmAb(DAKO)と、4℃で30分間培養され、フローバッファーで2回洗浄され、FITC結合ヤギ抗マウスIgGと4℃で30分間培養された。細胞は、再びフローバッファーで2度洗浄され、1%パラホルムアルデヒドに固定され、CellQuestソフトウェア(BDPharimingen)を使用した単一レーザーフローサイトメーター(FacsCalibur,Beckman Coulter)によって分析された。ネガティブコントロールAbで染色された細胞は、<2%ポジティブ細胞を含むようにゲートされた。細胞間タンパク質の分析を実施するため、細胞はPBSで2度洗浄され、1試料あたり1x106個の細胞に調節され、−20℃で90%メタノールに固定された。固定後、細胞はPBSで2度洗浄され、モノクローナルマウス抗bax、Bcl-2、Rb、サイクリンA、p21、p27、もしくはp53抗体と4℃で45分間培養され、続いてヤギ抗マウスFITC結合mAb(Biosource)と4℃で45分間培養が行われた。その後、細胞は洗浄され、上記したフローサイトメトリーによって分析された。免疫蛍光のバックグラウンドレベルは、細胞をFITC結合マウスIgG(アイソタイプコントロール)と培養することにより決定された。
【0102】
カスパーゼ活性の決定
カスパーゼ活性を測定するために、5x105のPBTが50μg/mlガレクチン−2の有無において、カルボキシフルオレセインのラベルが施されたカスパーゼ−8阻害剤FAM-LETD-fmk、カスパーゼ−9阻害剤FAM-LEHD-fmk(いずれもBiocharta,Hamburg, Germany)、あるいはPEラベルが施され、アフィニティー精製された抗カスパーゼ−3Ab(BDPharmingen)の誘導体と培養された。これらは、活性化されたカスパーゼ−3、−8、−9それぞれに不可逆的に結合する。その後、細胞はフローサイトメトリー(FACS-Calibur,BD)によって解析され、カスパーゼ活性の増加が未処理細胞に相関させて適切なゲーティング後に決定された。
【0103】
T細胞周期の分析
先に述べたように(21)、フローサイトメトリーが、DNA含有量およびサイクリンB1の染色後に実施された。簡単に言うと、細胞は、PBSで2度洗浄され、1x106細胞/試料に調整され、−20℃で90%メタノールに固定された。固定後、細胞はPBSで2度洗浄され、サイクリンB1-FITC結合モノクローナル抗体と4℃、45分間培養された。最終洗浄後、細胞は、PBSおよびリボヌクレアーゼの5μl(0.6μg/ml、30-60Kunits Units, Sigma)に再懸濁され、37℃で15分間培養され、冷蔵庫で冷やした。125マイクロリッターのPI(200μg/ml)がフローサイトメトリーによる分析に先立って添加された。各分析は、少なくとも25000イベントにおいて実施された。
【0104】
サイトカイン分泌の測定
サイトカイン分泌を決定するため、抗CD3mAbの有無において、PBTが48時間培養され、0,10あるいは50μg/mlGal-2の有無において培養された。その後、上澄みが捕集され、操作手引き書(BDPharmingen)に基づいて、サイトメトリービーズアレイを実施することでサイトカイン分泌を求めた。簡単に言うと、TNF-α、IFN-γ、IL-10、IL-5、IL-4およびIL-2タンパクに特異的な捕捉抗体で被覆され、個々の蛍光強度を有する6つのビーズ集団が、PE結合検出抗体と混合され、組換え標準(recombinant standard)もしくはテスト試料と培養されてサンドイッチ複合体が形成された。フローサイトメトリーを使用したサンプルデータの収集に続いて、サイトカイン濃度がBDCBAソフトウェアを使用して算出された。
【0105】
統計的分析
paired student's t testを使用して統計的解析が実施された。結果は、平均±SEMとして表され、優位性はP値<0.05で推測された。
【0106】
実施例2:ガレクチン−2の免疫学的効果
T細胞におけるガレクチン−2の発現
ガレクチン−1および−3が種々の哺乳類組織に広く分布する一方で、ガレクチン−4や−6のような他のガレクチン類は、より組織限定的に発現される(6-8)。ガレクチン−2の発現は、他のガレクチンとは異なり、GI領域(GI tract)に限定されるようである。GI領域内では、十二指腸、空腸、より少ない量では、盲腸、大腸、直腸においてガレクチンmRNA発現が検出された。しかしながら、ヒト組織におけるタンパク質発現はまだ調査されていない。ガレクチン類は、強力な免疫学的効果を発揮するので、発明者らは、まず、ガレクチン−2が休止中のおよび活性化された抹消および腸T細胞において発現されるかどうかについて知る必要があった。PCR解析は、ガレクチン−1とは対照的に、ガレクチン−2mRNAは、休止中のあるいは活性化されたPBTにおいて発現されない(図1(A))ことを示した。結果として、ウェスタンブロット解析では、休止中のあるいは刺激されたPBTあるいはLPTにおいて、ガレクチン−2のタンパク質発現を検出することができなかった(図1(B))。ポジティブコントロールとして、ラットの非形質転換腸上皮細胞株IEC-6が使用された。これらの細胞株におけるガレクチン−2発現を示す(図1(B))。
【0107】
T細胞へのGal-2の糖鎖依存性結合
この目的のため、本発明者らは、活性保持条件下でレクチンをビオチン化し、固相検定により糖鎖結合特異性の維持を検証した。パンガレクチン阻害剤(pan-galectin inhibitor)として50mMラクトースの存在は、70%以上によって結合を減少させたので、ラベルされたGal-2は、βガラクトシド特異的に未刺激T細胞に結合した(図2)。同じ濃度でテストしたスクロースは、非特異的効果(図示せず)を除いて、フローサイトメトリーにおける染色強度に影響を及ぼさなかった。T細胞の刺激が、Gal-2の反応性を変化させるかどうか、またどのように変化させるかについて解明するため、本発明者らは、PMA/PHAまたは抗CD3抗体のいずれかを使用した。両方のケースにおいて、細胞染色における増加が認められた。これより、Tリンパ球において発現されないGal-2が、T細胞表面における糖鎖リガンドに結合できることは明らかである。結合の程度は、細胞刺激によって増加する。Gal-1に比較して、Gal-2の結合は、僅かに強いようである。Gal-2の細胞表面ターゲットの生化学的性質への洞察力を得るため、本発明者らは、特定の細胞表面糖タンパク質を標的とする抗体ブロッキングアプローチを採用し、内部コントロールとしてGal-1を使用した。
【0108】
Gal-2は、CD3やCD7ではなく、β1インテグリンと結合する
刺激T細胞へのガレクチン結合におけるエピトープ特異的抗体の存在による妨害が、フローサイトメトリーによって定量された。Gal-1の細胞表面結合は、CD3、CD7、およびβ1インテグリンそれぞれに対する抗体によって予想通り減少した。このことは、関連する抗原との相互作用や周辺の決定基との相互作用を暗示している(図示せず)。しかしながら、Gal-2結合は、CD3およびCD7に特異的な試薬の存在によって大きな影響を受けない(図3A)。高い配列アライメントスコアにもかかわらず、ガレクチン−1および−2は、現実にリガンドとして糖タンパクにはっきりした選択性を有している。対照的に、β1−インテグリンに対する抗体は、細胞染色を目に見えて減少させる強力な阻害剤であった(図3A)。コントロールとして、β2−インテグリンに対する抗体は、T細胞へのガレクチン−2結合を阻害できなかった(図示せず)。ラクトースの存在に関して、2つのプロファイルの比較は、β1−インテグリンが、すべてのリガンドパネルに感知できるほどに寄与することを示唆している。このように、これらの実験は、発現プロファイルにおける差異にリガンド選択における明確な差異を付け加える。ブロッキングアプローチに加えて、本発明者らは、ガレクチンのリガンドキャパシティーを有する抽出糖タンパクの分画において、ウェスタンブロッティングを行った。Gal-1の場合において、CD3、CD7およびβ1インテグリンの存在は、サイトフルオロメトリーの結果によって予測された。実際に、これらの糖タンパクは、固定化したGal-1を有する抽出物のアフィニティー分画後に検出できた(図3B)。サイトフルオロメトリーと生化学の結果の完全な相関関係が、Gal-2においても見られた:CD3やCD7の痕跡はないが、β1―インテグリンの存在は、Gal-2結合糖タンパクの分画においてウェスタンブロット法によって視覚化できる(図3B)。BSAコントロールは、非特異的タンパク−タンパク相互作用(図示せず)の欠如を解明した。それらの明白な構造関係にもかかわらず、2つのガレクチンは、異なる糖タンパクに結合し、Gal-2は、主要な標的として、β1−インテグリンあるいは強固に結合した糖タンパク質めがけて進む。ここでは、Gal-2の細胞結合キャパシティーについて述べた、また、2つの独立したアプローチによりCD3およびCD7への反応性の欠如を検出した。次に、発明者は、細胞結合がアポトーシスを誘導するかという点を問題にする。
【0109】
ガレクチン−2によるアポトーシスの誘導
ガレクチンは、T細胞において種々の調節作用を有し、T細胞アポトーシスを誘導するだけでなく阻害することができる(25,26)。ガレクチン−2がT細胞アポトーシスを調節するかどうかは知られていないので、発明者らは、まずガレクチン−2が、活性化あるいは非活性化PBTにおいて、アネキシンV染色によって測定されるように、ホスファチジルセリンの表面露出を誘導するかどうかを評価した。Gal-2の存在下におけるアネキシンV染色の時間経過は、72時間にわたって緩やかな増加をたどった(図4(B))。PBTが、0,10, 25, 50および100μg/mlガレクチン−2の存在下において、細胞刺激無しで培養された時、ガレクチン−2はT細胞アポトーシスを誘導できなかった(図4(A))。対照的に、PBTが抗CD3mAbsで活性化された場合、ガレクチン−2は投与量依存性アポトーシスを誘導するとともに、非常に少ない程度ではあるけれども、T細胞のネクローシスも誘導した(図4(A))。対照的に、腎臓および肝臓の同種移植に続く臓器拒絶反応を防ぎ、特定の患者における難治性の炎症性腸疾患の治療に広く利用されている免疫抑制剤タクロリムス(FK506)は、刺激T細胞と未刺激T細胞との間に差異はなく、主としてネクローシスを誘導し(図13)、おそらくは、septic(敗血性)効果を引き起こす。ガレクチン−2によって誘導されたT細胞のパーセンテージは、ガレクチン−1によって誘導されたそれよりも高く(図4(A))、また、それは、CD4およびCD8ポジティブT細胞集団に匹敵した(データは示されない)。また、ガレクチン−2誘導細胞死のデノボタンパク合成の必要性を調査するため、細胞は、ガレクチン−2の有無において、0,10および1000nMのシクロホスファミド、タンパク合成阻害剤に曝された(Kashio,Y., K. Nakamura, M.J. Abedin, M. Seki, N. Nishi, N. Yoshida, T. Nakamura, およびM.Hirashima,2003. Galectin-9 induces apoptosis through the calcium-calpain-caspase-1pathway. J. Immunol. 170:3631)。さらに、発明者はアポトーシスを誘導するガレクチン−2の能力におけるラクトースの効果を考察した。シクロホスファミドが、ガレクチン−2誘導T細胞死を調節できないのに対し(データは示されない)、スクロースではなく、50mMラクトースによってアポトーシスはたいてい阻害された。
【0110】
ガレクチン−2仲介アポトーシスはカスパーゼ−3および−9依存性である
ガレクチン−2がT細胞アポトーシスを誘導することを確認したところで、発明者らの関心は、ガレクチン−2に使用されるアポトーシス経路の評価に向けられた。発明者そこで、発明者らは、蛍光基質検定(fluorogenic substrate assay)を用いて、ガレクチン−2処理された抗CD3活性PBTにおけるカスパーゼ活性を測定した。PBTがCD3経路によって活性化された場合、ガレクチン−2はカスパーゼ−8活性にではなく、カスパーゼ−3および−9活性に有意な増加を誘導した(図5A)。この発見の機能的な関連を調べるため、発明者らは、ガレクチン−2誘導T細胞アポトーシスにおけるカスパーゼ阻害効果を評価した。特異的および広域スペクトルカスパーゼ阻害剤の両方がテストされ、すべてが、阻害効果を回復不能にさせるフルオロメチルケトン(fmk)を含有していた(すべて50μMで使用した)。カスパーゼ−1(zYVAD)、−8(zIETD)阻害は、ガレクチン−2誘導T細胞アポトーシスに効果はなかった。対照的に、カスパーゼ−3(zDEVD)、−9(zLEHD)および広域スペクトルカスパーゼ阻害剤(zVAD)は、ガレクチン−2誘導細胞死を有意に阻害した(図5B)。モノマーガレクチン−1がカスパーゼ−8および−9活性の両方を増加し(27)、タンデムリピート型(tandem-repeat-type)ガレクチン−9は、カスパーゼ−8および−9ではなくカスパーゼ−1を介してアポトーシスを誘導することが示されているので(28)、発明者らはさらにガレクチン−2のように、モノマープロトタイプガレクチン、ガレクチン−7のT細胞アポトーシスへの効果を評価した(2)。ガレクチン−7は、ガレクチン−2に匹敵するPBTアポトーシスを誘導したが、zLEHDではなく、zVAD、zDEVDおよびzIETDとのプレインキュベーションが、ガレクチン−7仲介細胞死を阻害した。これは、ガレクチン−7がカスパーゼ−9ではなく、カスパーゼ−3および−8を介してT細胞アポトーシスを仲介することを示している。Gal-2によるカスパーゼ活性のパターンについて記載したところで、発明者らは、比較として、それらの細胞調製物の一定量にGal-1を含有させた。Gal-1誘導細胞死を減少させるzVADの能力は、カスパーゼがGal-1仲介アポトーシスに関与する証拠を提供した(図5B)。明白な差は、カスパーゼ−8阻害剤の著しい効果にあった。このように、Gal-1誘導アポトーシスは、カスパーゼ−3、−8および−9の関与を特徴とする固有のプロファイルを有している。別のホモダイマープロトタイプガレクチン、Gal-7での検定は、同様に、刺激T細胞のアポトーシス促進活性を示した。カスパーゼ−9の阻害ではなく、カスパーゼ−1、−3および−8の阻害は、その程度を低下させた(上記参照)。明らかに、カスパーゼの関与は、ガレクチンのプロトタイプサブグループ間で異なり、さらなる研究を必要とする。そこで、本発明者らは、Gal-2のアポトーシス誘導経路に注目した。カスパーゼ−9は、Gal-2露出への応答のメディエイターであり、Gal-2は固有経路を使用するようである。この示唆は、ミトコンドリア膜電位を観察することによりテスト可能である。このように、発明者らは、次に、ローダミン123の再分布を利用してこのパラメーターの解析を進めた。
【0111】
ガレクチン−2は、カスパーゼ−8活性ではなく、カスパーゼ−3および−9活性を誘導する。細胞は、50μg/mlガレクチンの有無において24時間培養され、カスパーゼ活性が、材料および方法において述べたフローサイトメトリーによって評価された。図示したプロットは、同等の結果が得られた4つの独立した実験の代表である。パンカスパーゼ阻害剤zVADおよびカスパーゼ−3阻害剤(zDEVD)は、ガレクチン−2、−7および−1活性を弱めて細胞死を誘導する。カスパーゼ−1阻害剤zYVADは、gal-7誘導細胞死のみをブロックし、カスパーゼ−9阻害剤zLEHDは、gal-1およびgal-2誘導アポトーシスをブロックした。カスパーゼ−8阻害剤zIETDは、ガレクチン-7および-1誘導細胞死(B)をブロックした。データは、4つの独立した実験系の平均±SEMを提供する。*p<0.05(増加vs.ガレクチン無し);+p<0.05(減少vs.ガレクチン)。
【0112】
ガレクチン−2は、bax/bcl比を調節し、ミトコンドリア膜電位を乱す
アポトーシスの重要な過程は、ミトコンドリア膜電位の低下を含み、結果的にシトクロムcの放出およびカスパーゼ−9開裂を引き起こす(29)。ガレクチン−2がカスパーゼ−9を介してT細胞アポトーシスを誘導することを明らかにしたところで、発明者らは、次にガレクチン−2がミトコンドリア膜電位を乱し、シトクロムcを放出させ、そして固有のアポトーシス経路を使用するかどうかを調べることにした。この可能性を研究するため、発明者らは、ミトコンドリア膜中に蓄積する脂肪親和性の陽イオン、色素ローダミン123の再分布(redistribution)を採用した。PBTが、50μg/mlガレクチン−2の存在下においてCD3経路を介して活性化された場合、ガレクチン−2なしで培養された細胞に比較して、ミトコンドリア分極電位の明らかな低下が見られた(図6(A))。さらに、ガレクチン−2は、休止T細胞ではなく、活性化T細胞において、シトクロムc放出を投与量依存的に増加させた。アポトーシスと生存(survival)とは、アポトーシス促進性および抗アポトーシス性Bcl-2ファミリーメンバーの相対的バランスによって調節される。また、baxタンパク質は、ミトコンドリアの脂質二重層においてイオン導入チャネルを形成し、アポトーシスのミトコンドリア経路に重要な役割を担うので、発明者らは、ガレクチン−2が、T細胞における抗アポトーシス性bcl-2およびアポトーシス促進性baxタンパク質のタンパク発現を調節するかどうかを調べた。免疫ブロッティングおよびフローサイトメトリーは、ガレクチン−2が、bcl-2を大幅に減少させる一方で、baxタンパク質発現を増加させ、結果的にbcl-2/bax比を低下させることを示した(図6(B)および図6(C))。近年、ガレクチン−1が、アポトーシスを誘導することなく、ホスファチジルセリンの表面露出を誘導することが公表された(31)。しかしながら、他の研究グループは、別の細胞種においてこの発見を確認できなかった(32,33)。ガレクシン−2およびPBTに関してこの不一致を検証するため、発明者らは、T細胞におけるカスパーゼ−3開裂のダウンストリーム経路(downstream pathway)を分析した。免疫ブロッティングは、ガレクチン−2が、カスパーゼ−3によってタンパク質分解的に開裂され、不可逆的にDNA断片化、そして細胞死(34)を誘導するDNA断片化因子(DFF)を投与量依存的にアップレギュレートすることを示した(図6(C))。これらのデータは、DAPI染色によって確認され、25および50μgガレクチン−2が核断片化(データを表示せず)を誘導し、アポトーシスがガレクチン−2によって実行されることを示している。
【0113】
ガレクチン−2はPBT細胞周期を調節しない
休止T細胞は、抗原誘導細胞死から保護され、アポトーシスと細胞周期とは、互いに密接に関係している(35-37)。ガレクチン−1が、マウスT細胞ハイブリドーマおよび胸腺細胞の増加を阻害することは知られている。ガレクチン−2が、T細胞周期を調節するかどうかという問題に取り組むため、発明者らは、DNA染色を用いて、ガレクチン−2に応答するPBT周期プロファイルの解析を実施した。生体細胞分画においてゲートされた時、細胞周期相分布は、25,50および100μg/mlガレクチン−2の有無において培養された抗CD3活性化PBTにおいて同等であった(図7(A))。発明者らは、次に、ガレクチン−2が、細胞周期の各相を開始、前進させる役割を担う主要なレギュレータ分子のレベルを調節するかどうかを調べた。ウェスタンブロット解析によって決定されるように、ガレクチン−2は、細胞周期プロモーターサイクリンD2、網膜芽(細胞)腫タンパク(Rb)、あるいはサイクリンA、細胞周期インヒビター21、p27およびp53のいずれのタンパク質レベルも変化させなかった(図7(B))。この効果がガレクチン−2に独特なものであるかどうかを決定するため、発明者らは、G2/M相への細胞周期進行を正確に定量するため、PI染色と併せてフローサイトメトリーによってサイクリンB1発現におけるガレクチン−1、−2および−7の効果を調べた。PBTが抗CD3mAbで活性化され、ガレクチン−1あるいは−7の存在下において培養された時、サイクリンB1発現は、投与量依存的に8%から1%に、および7%から1%にそれぞれ大幅に減少した(図8)。対照的に、未変化サイクリンB1レベルによって示されるように(図8)、ガレクチン−2は、PBT細胞周期進行を阻害しなかった。
【0114】
Gal-2はサイトカイン分泌を特徴的に調節する
終わりに向けて、本発明者らは、フローサイトメトリーに引き続き、サイトカイン捕獲ビーズを用いたサイトメトリービーズアレイを実施した。Gal-2は、休止T細胞のサイトカイン産生を調節できなかった。抗CD3mAbでのT細胞の活性化はIFN-γ、TNF-α、IL-10、IL-5およびIL-2産生を大幅にアップレギュレートした(図9)。活性化T細胞において、Gal-2は、IFN-γおよびTNF-α産生を有意に且つ投与量依存的にダウンレギュレートし、一方、IL-5およびIL-10分泌を増加させた(図9)。IL-4分泌は、T細胞活性化に基づいて変化せず、Gal-2の存在によって変化しなかった。対照的に、IL-2分泌は、細胞活性化によってアップレギュレートされたが、Gal-2の存在によって影響されなかった。細胞周期とサイトカインパラメーターについて考察したところで、発明者らは、最後に、処理細胞のキャパシティーのGal-2依存効果を分析することとし、外部から内部への情報伝達と接着のメディエイターとしてインテグリンを採用する。
【0115】
ガレクチン−2はインテグリン接触性および細胞接着を調節する
ガレクチンは、細胞表面において、あるいは細胞外マトリックス(ECM)内において、適切なグリコシル化タンパク質との相互作用によって、細胞接着のモジュレイターとして振舞う(39)。この相互作用は、インテグリンによって仲介される。ガレクチン−2がインテグリンβ1に結合されることは上に示したとおりであるので、発明者らは、ガレクチン−2がT細胞におけるインテグリン接触性(integrin accessibility)を変化させるかどうかを決定することにした。活性化T細胞の処理は、抗体へのインテグリン反応性、接触性の測定に影響を与える。PBTがCD3経路を介して活性化された場合、ガレクチン−1、および−2は、インテグリンβ1およびα5接触性をダウンレギュレートした(図10)。対照的に、ガレクチン−1とガレクチン−2はいずれも、腸の粘膜固有層へのT細胞ホーミングを引き起こすβ4インテグリン接触性を変化させず、インテグリンa5接触性をわずかにアップレギュレートした。このことは、ガレクチンはインテグリン接触性を個別に調整することを示唆している。興味深いことに、記憶T細胞源として腸T細胞を調べた場合、ガレクチン−2は、インテグリンβ1接触性を調節できなかった。このことは、インテグリン接触性に作用するガレクチン−2の能力は、個々のインテグリンに対してだけでなく、細胞分化においても独特であることを示している(図10)。
【0116】
ガレクチンが細胞外マトリックスへのT細胞接着を個別に調節し、ガレクチン−1の存在は、ECM糖タンパク質へのT細胞接着を阻害する(40,41)。ガレクチン−2がT細胞のインテグリン接触性を変化させることを示したところで、発明者らは、ガレクチン−2は、ECM化合物へのT細胞接着性を修正するだろうとの仮説を立てた。PBTがCD3経路を介して活性化された場合、細胞の22.1±3.5%および26.3±5.6%が、コラーゲンI型およびフィブロネクチンそれぞれに付着した(図11A)。T細胞接着におけるガレクチン−1の既知の効果を確認すると、ガレクチン−1は、コラーゲンI型(9.2±3.5%)およびフィブロネクチン(14.0±4.6%)へのT細胞付着を実質的に減少させた(図11A)。対照的に、コラーゲンI型への接着は、ガレクチン−2によって有意に減少され(15.1±5.6%;p<0.05)、フィブロネクチンへの接着は、ガレクチン−2によって大幅に増加した(39.8±4.9%;p<0.05)(図11A)。ここで再び、発明者らは、この特徴がガレクチン−2に特異的であるかどうかを検証するため、ガレクチン−7を分析した。図11Aに示されるように、ガレクチン−7は、コラーゲンやフィブロネクチンへのPBT接着を有意に変化させることはできなかった。上記したように、CD3によるインテグリンβ1アップレギュレーションは、LPTではなく、PBTにおいてガレクチン−2によって阻害される。しかしながら、T細胞接着におけるガレクチン−2の効果がLPTにおいて分析された場合、PBTに比較して、ガレクチン−2はコラーゲンへの細胞接着を阻害しつつ、フィブロネクチンへの付着を増加させた(p<0.05;図11A)。これらの効果がコラーゲンやフィブロネクチンレセプターによって仲介されることを確認するため、細胞は、特異的ブロッキングインテグリンmAbsと1時間プレインキュベートされた。プレインキュベート後、25μg/mlガレクチン−2が添加され、細胞がBSA−、コラーゲン−、フィブロネクチン−被覆ウェル上に置かれた。コラーゲンへの細胞接着は、β1、α1およびα2mAbsによって有意に阻害され、一方でフィブロネクチンへの細胞接着は、β1、α3、α4およびα5mAbsによってブロックされた(図11B)。このことは、これらそれぞれの細胞外マトリックスへの細胞接着が、コラーゲンおよびフィブロネクチンレセプターのそれぞれによって仲介されることを示している。上記したように、ガレクチン−2はβ1に結合する(図3A、図3B)。この結合が細胞表面におけるβ1インテグリンに関与し、結果としてECMへのPBT接着を変化させるかどうかを決定するため、発明者らは、細胞をガレクチン−2と1時間培養し、インテグリンβ1mAbsを添加した。次いで、細胞をECM化合物に接着させた。興味深いことに、インテグリンβ1mAb添加前のガレクチン−2とのプレインキュベーションは、インテグリンβ1mAbの阻害効果を逆転させた。このことは、それらが最初に添加された時、少なくとも一部において、インテグリン接触性サイトが、ガレクチン−2によって無効にされたことを示している(図11B)。
【0117】
ガレクチン−2は、関節リウマチ(RA)やクローン病(CD)の患者からのT細胞にアポトーシスを誘導する
CDやRAの患者および健常コントロール群からのPBTが、0,10, 25および50μg/mlのヒトガレクチン−2の存在下において、架橋された抗CD3mAb抗体で48時間刺激された。アポトーシスは、アネキシンV染色によって決定された(図12)。
【0118】
実施例3:大腸炎の予防
1mg/kg(体重)での予防
5%DSS(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO:デキストラン硫酸ナトリウム)を飲料水に添加し、それを8〜10週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に任意に摂取させることにより大腸炎を誘発させた。DSS投与前に、1mg/kg(体重)のガレクチン−2の腹腔内投与またはPBSのいずれかでマウスグループを2時間治療した。マウスの体重を測定し、ダイアリーアおよび直腸出血が検査された。DSSによる大腸炎の誘発後7日間でマウスが殺され、その全大腸が切除され、切除した大腸の長さと重さが測定された。疾病活動指数(DAI;すなわち、体重損失と出血の総合点数)が確立された標準的な得点システムに基づいて決定された。
疾病活動指数:
体重損失:0=損失なし、1=5〜10%、2=10〜15%、3=15〜20%、4=>20%
潜血:0=出血なし、2=ポジティブ、4=肉眼的出血(grossblood)
この実験において、DAIは0〜8の範囲である。DAIスコアが高いほど、動物は大腸炎によってより深刻な影響を受けている。
結果:
DAI:コントロールグループ: 6.3±2.30(平均±SD),n=24
ガレクチングループ: 4.5±2.1,n=10; p=0.04
結果は、ガレクチン−2で治療された動物において、大腸炎の重症度が大幅に軽減されることを示しており、ガレクチン−2が炎症性大腸炎の予防および治療において最適であることを証明した。
【0119】
2mg/kg(体重)での予防
5%DSS(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO:デキストラン硫酸ナトリウム)を飲料水に添加し、それを8〜10週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に任意に摂取させることにより大腸炎を誘発させた。DSS投与前に、ガレクチン−2の皮下投与(s.c.)または腹腔内投与(i.p.)のいずれかでマウスグループを2時間治療した。10匹のマウスでなるあるグループにおいては、ガレクチン−2の腹腔内投与(i.p.)による投与量が2倍にされ、比較として、腹腔内投与(i.p.)による同濃度のタクロリムス(FK506)で10匹のマウスを治療した。また、コントロールとして、ガレクチン−2の代わりに0.9%の塩化ナトリウムで10匹のマウスグループを治療した。マウスの体重を測定し、ダイアリーアおよび直腸出血が検査された。DSSによる大腸炎の誘発後10日間でマウスが殺され、その全大腸が切除され、切除した大腸の長さと重さが測定された。疾病活動指数(DAI;すなわち、体重損失と出血の総合点数)が確立された標準的な得点システムに基づいて決定された。
疾病活動指数:
体重損失:0=損失なし、1=5〜10%、2=10〜15%、3=15〜20%、4=>20%
潜血:0=出血なし、2=ポジティブ、4=肉眼的出血(grossblood)
結果(図14にも示される):
DAI:コントロールグループ: 6.5±0.3(平均±SD),n=10
ガレクチングループ1mg/kg皮下投与: 5.8±0.7,n=10; p<0.05
ガレクチングループ1mg/kg腹腔内投与: 5.0±0.7,n=10; p<0.05
ガレクチングループ2mg/kg腹腔内投与: 2.6±0.6,n=10; p<0.05
タクロリムスグループ2mg/kg腹腔内投与: 2.4±0.5, n=10; p<0.05
結果は、腹腔内投与によるガレクチン−2で治療した動物が、皮下投与で治療された動物より経過が良好であることを示している。また、2mg/kgで治療された動物は、大腸炎の重症度の大幅な軽減を示し、FK506での治療結果と同程度の結果をもたらした。このように、ガレクチン−2が炎症性大腸炎の予防および治療において最適であることが証明された。
【0120】
実施例4:慢性大腸炎の治療
5%DSS(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO:デキストラン硫酸ナトリウム)を7日間にわたって飲料水に添加し、それを8〜10週齢の30匹のメスのBalb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に任意に摂取させることにより大腸炎を誘発させた。8日目に、DSS投与を中止して、さらに7日間経過させた。7日間のDSS投与とそれに続く7日間の純水投与でなる計画が、図15(B)に示すように繰返された。29日目に、20匹のマウスが、DSS投与に並行して、ガレクチン−2の腹腔内投与(i.p.)で治療された。この治療においては、10匹のマウスでなるあるグループが、1日1回、2mg/kgガレクチン−2で治療され、10匹のマウスでなる別のグループにおいては、合計投与量を同じとして、1日2回の投与に分けて治療された。すなわち、10匹のマウスが1日2回、1mg/kgガレクチン−2で治療された。また、コントロールとして、ガレクチン−2の代わりに0.9%の塩化ナトリウムで10匹のマウスグループを治療した。8日目に、ガレクチン−2治療を中止した。治療に並行して、マウスの体重を測定し、ダイアリーアおよび直腸出血が検査された。治療を中止した後にマウスが殺され、その全大腸が切除され、切除した大腸の長さと重さが測定された。疾病活動指数(DAI;すなわち、体重損失と出血の総合点数)が確立された標準的な得点システムに基づいて決定された。
疾病活動指数:
体重損失:0=損失なし、1=5〜10%、2=10〜15%、3=15〜20%、4=>20%
潜血:0=出血なし、2=ポジティブ、4=肉眼的出血(grossblood)
結果(図15(A)にも示される):
DAI:コントロールグループ: 5.3±0.7(平均±SD),n=10
ガレクチングループ1x2mg/kg: 4.5±0.6,n=10; p<0.05
ガレクチングループ2x1mg/kg: 2.8±0.3,n=10; p<0.05
1日2回のガレクチン−2の腹腔内投与で治療した動物において、合計投与量が同じの1日1回の投与で治療した動物より大幅に良好な結果が得られ、1日2回の1mg/kgガレクチン−2で治療された動物において、大腸炎の重症度が大幅に軽減された。このように、ガレクチン−2が炎症性大腸炎の予防および治療において最適であることが証明された。
【0121】
実施例5:投与量の調査研究
7日間にわたって飲料水に5%DSSを添加することにより、BALB/cマウスに急性大腸炎が導入された。また、7日間にわたるDSS添加と続く7日間のDSS添加なしの期間とでなる3サイクルによってBALB/cマウスに慢性大腸炎が導入された(SiegmundB, Lehr HA, Fantuzzi G. Leptin: a pivotal mediator for intestinal inflammationin mice. Gastroenterology 2002; 122:2011-2025)。急性および慢性大腸炎の動物は、コントロールとしての生理的食塩水、またはGal-2のいずれかを使用し、1日1回(od)、1日2回(bid)、1日3回(tid)の腹腔内投与(i.p.)で10日間の治療が施された。Gal-2の投与量は、個々のケースにおいて、0.5〜2mg/kg(体重)の範囲であり、1日の合計投与量は3mg/kg(体重)とし、異なる投与計画において評価が行われた。また、タクロリムス(1mg/kg(体重))、インフリキシマブ(10mg/kg(体重))、プレドニゾロン(1mg/kg(体重))がポジティブコントロールとして使用された。これらはすべて実験的大腸炎やヒト炎症性腸疾患のモジュレイターとしてよく知られているものである。
【0122】
PBTが分離され、3日間CD3で刺激され、サイトカイン分泌を上記したサイトメトリービーズアレイ(CBA)分析によって決定した(SturmA, Rilling K, Baumgart DC, Gargas K, Abou-Ghazale T, Raupach B, Eckert J,Schumann RP, Enders C, Sonnenborn, U, Wiedenmann B, Dignass AU. Escherichiacoli Nissle 1917 distinctively modulates T-cell cycling and expansion viatoll-like receptor 2 signaling. Infect. Immun. 2005; 73:1452-1465.)。顆粒球の粘膜補充(mucosal recruitment)は、ミエロペルオキシターゼ活性によって評価された(RathHC, Herfarth HH, Ikeda JS, Grenther WB, Hamm TE, Jr., Balish E, Taurog JD,Hammer RE, Wilson KH, Sartor RB. Normal Luminal Bacteria, EspeciallyBacteroides Species, Mediate Chronic Colitis, Gastritis, and Arthritis inHLA-B27/Human beta 2 Microglobulin Transgenic Rats. Journal of ClinicalInvestigation 1996;98:945-953)。
【0123】
Gal-2による急性および慢性DSS大腸炎のマウスの治療は、異なる投与間隔と投与量を採用したマウスの急性および慢性DSS大腸炎の両方において、(上記した疾病活動指数(DAI)によって測定されるように)疾病活動を大幅に低減した(図16および図17)。最適な応答は、1日2回(bid)の投与で観察され、1日3回(tid)の投与で更なる改善は見られなかった。Gal-2の皮下投与は効果が小さく、疾病活動指数の大幅な改善はなかった(図16)。1日あたりの合計投与量についてみると、1日あたりガレクチン−2の1.5〜3mg/kg(体重)の投与量が、疾病活動指数の改善に関して高い効果をもたらし、最大の効果は、1日あたりの合計投与量が2mg/kg(体重)であり、1mg/kg(体重)の投与を1日2回行う場合において得られた。ヒトおよびラットのGal-2の投与量と投与計画を比較した場合に有意な差異は認められなかった。Gal-2の効果は、強力な免疫調節剤タクロリムスに匹敵し、インフリキシマブやプレドニゾロンで観察される効果よりもさらに強力であった。2x1mg/kg(体重)の最適投与量では、疾病活動指数は平均して250%以上改善された。組織学的分析は、コントロールの動物に比較して、Gal-2治療が施されたマウスにおいて、腸の損傷や炎症が大幅に軽減されたことを示した(図18)。また、ミエロペルオキシターゼ測定によって、Gal-2治療マウスにおいて粘膜顆粒球湿潤の大幅な軽減が示された(データ表示せず)。
【0124】
ガレクチン−2の安全性と毒性が、上記した慢性および急性DSS大腸炎モデルにおける投与量の条件下において評価されたが、異常性は検地されなかった。また、これらの実験において、1〜3mg/kg(体重)の範囲のガレクチン−2の投与量で治療されたDSS誘導慢性および急性マウスに死は観察されなかった。
【0125】
また、Balb/cマウス(DSS処理されていない)が、100mg/kg(体重)のガレクチン−2で治療された。この投与量は、DSS治療マウス(最適治療投与量は1日あたり1.5〜3mg/kg(体重)の範囲である)において最適な抗炎症性効果が得られたガレクチン−2の投与量の50倍以上高い数値である。この毒性試験においては、体重が平均して20gのBalb/cマウス(n=5)が、100mg/kg(体重)のガレクチン−2の1日1回の腹腔内投与で5日間治療された。5日間の治療中、マウスには約7±1.7%の体重増加がみられたが、これらのうち死んだものはなかった。マウスは5日間の治療後に殺され、臓器が熟練した病理学者による病理学的評価のために収集された。図19〜22に示されるように、心臓、腎臓、肺、肝臓には、病理学的評価における微視的および巨視的損傷は認められなかった。
【0126】
以上より、毒性を規定する投与量は、ガレクチン−2の広い投与量範囲において認められなかった。評価したガレクチン−2の最大の投与量は100mg/kg(体重)であり、DSS誘導大腸炎の治療において最適なガレクチン−2の投与量、2x1mg/kg(体重)の約50倍以上であった。
【0127】
したがって、Gal-2の治療効果が、ネズミ大腸炎(DSS大腸炎)の実験モードにおいて、その強力な抗炎症性および再生効果によって立証された。一方、明白な毒性は、Gal-2の治療的投与量および過剰投与量において認められなかった。これらの発見は、Gal-2が、T細胞アポトーシスの障害をともなう疾患、例えば、炎症性大腸炎の治療に新たなアプローチを提供することを示唆している。
【0128】
明細書、特許請求の範囲、および添付図面に記載された本発明の特徴は、個別に、あるいはそれらの組み合わせにおいて、発明を種々の形態において理解するための材料となる。
【0129】
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【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】T細胞におけるガレクチン−1および−2の発現の異なるパターンを示す。Gal-1は、mRNA(A)およびタンパク質(B)のレベルにおいて、休止および活性化PBTに一貫して検出されるが、Gal-2発現はPBTもしくはLPT(A、B)において検出できなかった。細胞は、架橋抗CD3mAbの有無において72時間培養された。mRNA発現はPCR解析により、タンパク質の存在はウェスタンブロット法によりそれぞれ決定された。非形質転換腸上皮細胞株IEC-6がポジティブコントロールとして使用された。グラフは、3つの個々の実験系における代表例である。
【図2】刺激の有無におけるT細胞へのGal-2の結合を示す。PBTは、架橋抗CD3mAbあるいはPMA/PHAの存在下において24時間培養され、ビチオン化Gal-1がリガンド提示をモニターするために使用された。アイソタイプコントロールが非特異的トリガを排除するために添加され、ハプテン糖ラクトースが糖鎖依存性結合を検証するために添加された。Gal-2のT細胞への結合は、マーカーとしてストレプトアビジンラベルされたAPCを使用した2色フローサイトメトリーによって決定された。
【図3A】ガレクチン−2がCD3やCD7ではなく、β1インテグリンに結合することを示す。細胞は、室温下で1時間、CD3、CD7およびβ1mAb(1:100希釈)とプレインキュベートされ、次いでビオチンに結合したガレクチン−2の5μg/mlの存在下でさらに24時間培養された。その後、細胞が収穫され、ガレクチン−2のT細胞への結合が、ビオチン化部位を検出するためにストレプトアビジンラベルが施されたAPCを使用した2色フローサイトメトリーによって決定された。
【図3B】ガレクチン−2がCD3やCD7ではなく、β1インテグリンに結合することを示す。ガレクチン−1は、CD3、CD7およびβ1インテグリンと免疫共沈降する。一方、ガレクチン−2は、β1インテグリンとのみ免疫共沈降する。細胞は、ガレクチン−1もしくは−2被覆トシル活性化ビーズと培養され、その後溶解された。ビーズ結合細胞断片が磁気分離され、CD3、CD7あるいはβ1に関して免疫ブロット法が行われた。両グラフは、同様の結果を生じる異なる4つの実験の代表例である。
【図4】ガレクチン−2によるT細胞アポトーシスの誘導と、ガレクチン−1のそれぞれの活性に対する比較を示す。(A)アネキシンVおよびPI(プロピジウムアイオダイド)レベルの解析(アネキシンVはホスファチジルセリン(PS)に結合する。PSは、初期アポトーシス中に細胞膜の内側から外側にフリップされる。アネキシンVは、細胞外PSを検出し、このようにアポトーシス細胞の数を決定する)は、ガレクチン−2がGal-1よりもよりT細胞アポトーシスを誘導すること、および細胞活性化がガレクチン−2仲介細胞死を誘導するために必要であることを表している。さらに、Gal-2は、高濃度においてわずかではあるがネクローシス効果を示す。細胞は、架橋抗CD3mAbの有無において、0,10, 25, 50あるいは100μg/mlのガレクチン−1あるいはガレクチン−2と24時間培養された。アポトーシスとネクローシスは、アネキシンVおよびPI染色によってそれぞれ評価された。データは、6〜7の独立した実験の平均±SEMを表す。*p<0.05(増加vs.0μg/mlガレクチン);**p<0.05(ガレクチン−2vs.ガレクチン−1)。(B)細胞は、架橋抗CD3mAbの存在下において、50μg/mlのGal-2と所定時間培養された。アポトーシスとネクローシスの程度は、アネキシンVおよびPI染色によってそれぞれ評価された。データは、6〜7の独立した実験の平均±SEMを表す。*p=0.05(増加vs.コントロール(ガレクチン無し));+p<0.05(Gal-2の効果vs.Gal-1の効果)。
【図5A】ガレクチン−2仲介アポトーシスがカスパーゼ−3および9依存性であることを示す。Gal-2は、カスパーゼ−8ではなく、カスパーゼ−3および−9の活性を誘導する(A)。細胞は、50μg/mlのGal-2の有無において24時間培養された。カスパーゼ活性は、材料と方法において述べるように、フローサイトフルオロメトリーによって評価された。図示したプロットは、非常に類似した結果を生じた4つの独立した実験の代表例である。
【図5B】ガレクチン−2仲介アポトーシスがカスパーゼ−3および9依存性であることを示す。パン−カスパーゼ阻害剤zVADとカスパーゼ−3阻害剤(zDEVD)は、細胞死を誘導するためのガレクチン−2、−7および−1の活性を阻害した。カスパーゼ−1阻害剤zYVADは、Gal-7誘導細胞死のみをブロックした。一方、カスパーゼ−9阻害剤zLEHDは、Gal-2およびGal-1誘導アポトーシスをブロックした。カスパーゼ−8阻害剤zIETDは、Gal-7およびGal-1誘導細胞死をブロックした(B)。データは、4つの独立した実験系の平均±SEMを表す。*p<0.05(増加vs.ガレクチンなし);+p<0.05(減少vs.ガレクチン)。
【図6】ガレクチン−2がミトコンドリア膜電位を乱し、bcl-2を減少させるが、baxタンパク質レベルを増加させ、DNAフラグメンテーション因子(DNA fragmentation factor)の開裂を誘導することを示す。細胞は、0,25もしくは50μg/mlガレクチン−2の存在下において48時間培養された。(A)ローダミン123染色は、ガレクチン−2によるミトコンドリア膜電位の低下示す。(B)フローサイトメトリーおよび(C)ウェスタンブロットは、ガレクチン−2が大幅に抗アポトーシスbcl-2を減少させる一方で、アポトーシス促進baxレベルを増加させ、DFF開裂(DNAフラグメンテーション因子)を誘導することを示している。ゲルローディングは、house-keeping gene product (GAPDH)をモニタリングすることにより制御された。すべてのパネルは、3つの異なる実験の代表例である。
【図7】ガレクチン−2がT細胞周期を変えないことを示す。(A)S相もしくはG2/M相における細胞周期の回数は、ガレクチン−2の有無において同等である。細胞は、0,25もしくは50μg/mlガレクチン−2と培養され、抗CD3モノクローナル抗体で72時間活性化された。細胞周期相は、PI染色、続いてフローサイトメトリーによるDNA含有量を測定することに評価された。各パネルは、5つの異なる実験の代表例である。(B)細胞周期レギュレータ発現は、ガレクチン−2によって変更されない。細胞は、0,25もしくは50μg/mlガレクチン−2と培養され、抗CD3mAbで72時間活性化され、その後タンパク質発現がウェスタンブロット法によって評価された。各パネルは、少なくとも4つの異なる実験の代表例である。
【図8】ガレクチン−2ではなく、ガレクチン−1および−7が、G2/M細胞周期相過程を阻害することを示す。ガレクチン−2に比較して、フローサイトメトリー解析は、ガレクチン−1および−7が、活性化PBTのG2/M相におけるサイクリンB1発現を減少させることを示した。細胞は、抗CD3mAbの存在下で72時間活性化され、その後、サイクリンB1発現とDNA含有量がフローサイトメトリーにより評価された。図は、4つの異なる実験の代表例である。
【図9】ガレクチン−2が活性化T細胞によるサイトカイン分泌のプロファイルを調節することを示す。休止および刺激T細胞のサイトカイン分泌におけるGal-2の効果が、γ−インターフェロン(IFN-γ)、腫瘍壊死(ネクローシス)因子-α(TNF-α)、およびインターロイキン(IL)-10、-5、-4および-2に関して、スタンダードを使用する市販のサイトフルオロメトリービーズアレイによって決定された。データは、3つの独立した実験の平均±SEMを表す。+p<0.05(50μg/mlのGal-2で処理された刺激T細胞vs.休止T細胞);*p<0.05(刺激T細胞におけるGal-2処理vs.CD3で処理されたT細胞)。
【図10】ガレクチンの存在がインテグリンの細胞表面提示を調節することを示す。ガレクチン−1および−2(太線)の存在は、インテグリンサブユニットβ1とa5の細胞表面提示を同等に低下させ、β4には作用せず、PBTにおけるa1細胞表面提示をわずかに増加させる。LPTにおいて、ガレクチン−1および−2は、β1−インテグリンの細胞表面提示を調節することができない。点線は、コントロールとしてのアイソタイプ抗体による染色を示す。細胞は、50μg/mlのガレクチン−1あるいは−2の有無において培養され、インテグリンの細胞表面提示は、フローサイトメトリーによって評価された。ネガティブコントロール細胞は3%未満のポジティブ細胞を含有するようにゲートされた。3つの個々の実験系における代表的なヒストグラムを示す。
【図11A】ガレクチン−2が、コラーゲンIおよびフィブロネクチンへのT細胞接着を特徴的に調節することを示す。ガレクチン−1は、コラーゲンIおよびフィブロネクチンへの細胞接着を阻害する。一方、ガレクチン−2はコラーゲンへのPBTおよびLPT接着を阻害し、フィブロネクチンへの細胞付着を増加させる。ガレクチン−7は、コラーゲンIおよびフィブロネクチンへのT細胞接着を有意なほどに変更しない。
【図11B】ガレクチン−2が、コラーゲンIおよびフィブロネクチンへのT細胞接着を特徴的に調節することを示す。インテグリンmAbの特異的ブロッキングは、コラーゲンIおよびフィブロネクチンへの細胞接着のガレクチン−2仲介調節を阻害する。インテグリンβ1mAbの添加前におけるT細胞のガレクチン−2とのプレインキュベーションは、インテグリンβ1mAbの阻害効果を逆転させた。PBTおよびLPTはカルセインでラベルされ、5x105細胞/ウェルをコントロールとしてのBSA被覆プラスチック、コラーゲンタイプ1、あるいはフィブロネクチンに2時間接着させた。非接着細胞は洗浄により除去された。接着T細胞の蛍光は、蛍光分光分析器を使用して定量化された。データは、5つの独立した実験の平均±SEMを表す。*p<0.05(vs.0μg/mlGal-2);+p<0.05(vs.25μg/mlGal-2)。
【図12】RAあるいはクローン病を有する患者およびコントロール群からのT細胞におけるガレクチン−2の濃度変化の効果を示す。詳しくは、CDおよびRAの患者および健常コントロールからのPBTが、ヒトガレクチン−2の所定濃度の有無において48時間かけて架橋抗CD3mAb抗体で刺激された。アポトーシスは、アネキシンV染色によって決定された。
【図13】刺激および未刺激PBTのアポトーシスおよびネクローシスにおけるタクロリムス(Prograf(登録商標)およびFK506)の効果を示す。細胞は、架橋抗CD3mAbの有無において24時間、0,50, あるいは100μg/mlのタクロリムスと培養された。タクロリムスは、最も効能の高い免疫抑制剤の一つであり、今日では固体臓器移植に続く臓器拒絶反応の防止と特定の患者における炎症性腸疾患の治療に使用されている。主としてネクローシスを誘導するが、抗CD3刺激PBTと同様に未刺激のPBTのアポトーシスを誘導しない。これとは対照的に、図4(A)に示すように、ガレクチン−2は、主としてPBTにおけるアポトーシスを誘導するという固有の特徴を有し、炎症性腸疾患の治療にとってガレクチン−2がより適切であることを示している。
【図14】ガレクチン−2がマウスにおけるデキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎の進行を妨げることを示す。8〜10週齢のメス、Balb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に、5%DSS(デキストラン硫酸ナトリウム:Sigma Chemical Co., St.Louis, MO)をマウスの飲料水に添加し、それを任意に飲ませることで大腸炎を誘発させた。マウス群は、DSS投与前にガレクチン−2の皮下投与(s.c.)もしくは腹腔内投与(i.p.)のいずれかで2時間治療された。1つのグループにおいては、ガレクチン−2の投与量が2倍にされ、等濃度のFK506(i.p.)による治療と比較された。マウスの体重を測定し、ダイアリーアおよび直腸出血が検査された。DSSによる大腸炎の誘発後10日間でマウスが殺され、切除した全大腸の長さと重さが測定された。疾病活動指数(DAI;すなわち、体重損失と出血の総合点数)が確立された標準的な得点システムに基づいて決定された。
【図15】(A)は、ガレクチン−2が、マウスにおける慢性大腸炎の炎症を軽減することを示す。30匹の8〜10週齢のメス、Balb/cマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, ME)に、5%DSS(デキストラン硫酸ナトリウム:Sigma Chemical Co., St.Louis, MO)をマウスの飲料水に添加して7日間任意に飲ませることで、大腸炎を誘発させた。8日後にDSS投与を中止し、さらなる7日間は純水を飲ませた。このように、DSS投与の7日間とそれに続く純水投与の7日間のスケジュールが繰返された。29日後に、20匹のマウスが、DSS投与に平行して、腹腔内投与(i.p.)によるガレクチン−2で治療された。この治療において、10匹でなるマウス群が1日1回2mg/kgのガレクチン−2で治療された。また、別の10匹のマウス群においては、総投与量を同じとして、2回に分けて投与が行われた。たとえば、10匹のマウスは1日に2回1mg/kgのガレクチン−2で治療された。平行して、10匹のマウスが、コントロールとして、ガレクチン−2の代わりに、0.9%塩化ナトリウムで治療された。8日後にガレクチン−2治療を中止した。治療に平行して、マウスの体重を測定するとともに、ダイアリーアおよび直腸出血が検査された。治療中止後にマウスは殺され、切除された全大腸の長さと重さが測定された。疾病活動指数(DAI;すなわち、体重損失と出血の総合点数)が確立された標準的な得点システムに基づいて決定された。(B)は、(A)に使用された治療試験計画を示す。
【図16】急性DSS大腸炎のマウスにおいて、ガレクチン−2と重度IBD(炎症性大腸炎)の患者に一般に使用される他の薬剤を用いた種々の治療における疾病活動指数(DAI)の依存性を示す。疾病活動指数は、種々の治療、投与量および投薬計画に関連して得点が記録される。ガレクチン−2(ヒトあるいはラット)薬剤は、1回の投与あたり、0.5〜2mg/kg(体重)の量で、皮下投与あるいは腹腔内投与により1日に1回、2回あるいは3回投与された。
【図17】慢性DSS大腸炎のマウスにおいて、ヒトガレクチン−2を用いた種々の治療における疾病活動指数(DAI)の依存性を示す。疾病活動指数は、種々の治療、投与量および投薬計画に関連して得点が記録される。ガレクチン−2(ヒト)薬剤は、1回の投与あたり1〜2mg/kg(体重)の量で、腹腔内投与により1日に1回もしくは2回投与された。
【図18】ガレクチン−2が、コントロールとして生理食塩水を与えた動物に比較して、マウスにおける腸疾患と炎症の大幅な軽減をもたらすことを示す大腸の組織断面である。コントロール群の動物においては、上皮表面の重篤な損傷と粘膜の重篤な炎症性湿潤が観察された。一方、ガレクチン−2で治療した動物は、粘膜表面のわずかな変化と粘膜内に少量の炎症性細胞が確認されたに過ぎない。
【図19】ガレクチン−2の過剰投与量による毒性効果を明らかにするため、ガレクチン2の高投与量で治療された健康マウスの腎臓の組織断面を示す。組織学的評価や肉眼検査によって、明らかな毒性効果は観察されなかった。
【図20】ガレクチン−2の過剰投与量による毒性効果を明らかにするため、ガレクチン2の高投与量で治療された健康マウスの心臓の組織断面を示す。組織学的評価や肉眼検査によって、明らかな毒性効果は観察されなかった。
【図21】ガレクチン−2の過剰投与量による毒性効果を明らかにするため、ガレクチン2の高投与量で治療された健康マウスの肺の組織断面を示す。組織学的評価や肉眼検査によって、明らかな毒性効果は観察されなかった。
【図22】ガレクチン−2の過剰投与量による毒性効果を明らかにするため、ガレクチン2の高投与量で治療された健康マウスの肝臓の組織断面を示す。組織学的評価や肉眼検査によって、明らかな毒性効果は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞、マクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞のアポトーシス障害を伴う疾病を有する患者の治療や予防のための薬剤の製造、もしくは、臓器移植、特に固形臓器移植を受けた患者における臓器拒絶の治療及び予防のための薬剤の製造における、ガレクチン−2の使用、ガレクチン−2を符号化する核酸の使用、その相補鎖の使用、もしくは当該符号化する核酸やその相補鎖にハイブリッド化する核酸の使用。
【請求項2】
上記アポトーシス障害、特にT細胞のアポトーシス障害は、上記疾病の病原に関与もしくは関連することを特徴とする請求項1にかかる使用。
【請求項3】
上記T細胞のアポトーシス障害を伴う疾患は、自己免疫性疾患および悪性T細胞疾患を含む群から選択されることを特徴とする請求項1もしくは2にかかる使用。
【請求項4】
上記自己免疫性疾患は、関節リウマチ、炎症性大腸炎、多発性硬化症、乾癬、ループスエリテマトーデス、強皮症、自己免疫性肝炎、および自己免疫性腎炎を含む群から選択されることを特徴とする請求項3にかかる使用。
【請求項5】
上記悪性T細胞疾患は、末梢性、リンパ芽球性、節性および節外性のT細胞性非ホジキンリンパ腫を含む群から選択されることを特徴とする請求項3にかかる使用。
【請求項6】
上記炎症性大腸炎は、クローン病、潰瘍性大腸炎、もしくはindeterminate colitisであることを特徴とする請求項4にかかる使用。
【請求項7】
上記自己免疫性疾患は、関節リウマチであることを特徴とする請求項4にかかる使用。
【請求項8】
上記ガレクチン−2は、人もしくはラットのガレクチン−2であることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項9】
上記ガレクチン−2は、配列識別番号1および2を含む群から選択されるアミノ酸配列を有することを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項10】
上記ガレクチン−2は、T細胞増殖の抑制剤および/あるいはT細胞アポトーシスの誘導剤と組み合わせて投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項11】
上記T細胞増殖の抑制剤は、ステロイド、マクロライド、サイクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、およびシクロホスファミドを含む群から選択されることを特徴とする請求項10にかかる使用。
【請求項12】
上記T細胞アポトーシスの誘導剤は、抗TNFα抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、およびCDP870)、エタネルセプト、leflunamide、ナタリズマブ(抗インテグリンa4(7 mAb)、visilizumab(抗CD3mAb)を含む群から選択されることを特徴とする請求項10にかかる使用。
【請求項13】
上記ガレクチン−2は、カスパーゼ−8依存性経路を介してT細胞アポトーシスを誘導する薬剤と組み合わせて投与されるか、もしくは、カスパーゼ−8依存性経路を介してT細胞アポトーシスを正常に誘導することが知られている薬剤に測定可能な応答を示すことができない患者に投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項14】
上記ガレクチン−2は、5−アミノサリチル酸(5-ASA)、コルチコステロイド、メサラジン、オルサラジン、バルサラジン(balsalazin)、スルファピリジンのような抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、および/あるいは抗リウマチ薬と組み合わせて投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項15】
上記抗リウマチ薬は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)であることを特徴とする請求項14にかかる使用。
【請求項16】
上記疾患修飾性抗リウマチ薬は、アスピリン、ナプロキセン、ジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロシン、インドメタシン、ピロキシカム、アナキンラおよびエトドラクを含む群から選択される生物学的製剤を含む群から選択されることを特徴とする請求項15にかかる使用。
【請求項17】
上記抗リウマチ薬は、金化合物、D−ペニシラミン、クロロキンおよびスルファサラジンのような抗マラリア薬を含む群から選択されることを特徴とする請求項14にかかる使用。
【請求項18】
上記ガレクチン−2は、シクロ−オキシゲナーゼ−2−阻害剤(COX-2-阻害剤)と組み合わせて投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項19】
上記シクロ−オキシゲナーゼ−2−阻害剤は、セレコキシブ、ロフェコキシブおよびバルデコキシブを含む群から選択されることを特徴とする請求項18にかかる使用。
【請求項20】
上記ガレクチン−2は、T細胞活性剤と組み合わせて投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項21】
上記ガレクチン−2は、β−ガラクトシドと組み合わせて投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項22】
上記β−ガラクトシドは、ラクトースであることを特徴とする請求項21にかかる使用。
【請求項23】
上記ガレクチン−2は、全身投与および/あるいは局所投与によって投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項24】
上記ガレクチン−2は、1回の投与量として、0.75〜1.5mg/kg体重の量で、好ましくは約1mg/kg体重の量で1日に2回投与されることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項25】
上記投与は、摂食投与、好ましくは、経口投与もしくは肛門投与、および/あるいは注射、好ましくは、静脈注射、筋肉注射、腹腔内注射、もしくは皮下注射、および/あるいは経鼻によることを特徴とする請求項23もしくは24にかかる使用。
【請求項26】
上記ガレクチン−2は、浣腸、および/あるいは坐薬、および/あるいは放出遅延製剤、例えば、pH依存解放性マトリックスに封入したものによって投与されることを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1項にかかる使用。
【請求項27】
上記ガレクチン−2は、ペグ化形態(pegylated form)、もしくは非ペグ化形態、もしくは2つの形態の混合物として投与されることを特徴とする請求項23乃至26のいずれか1項にかかる使用。
【請求項28】
上記患者が、ガレクチン−2の投与前に、患者のT細胞の一部、および/あるいは患者のマクロファージの一部、および/あるいは患者の抗原提示細胞の一部が、アポトーシス、好ましくは適切なアポトーシスを受けることができない病的状態にあるか、もしくは、患者のT細胞、および/あるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部が、正常に機能しないあるいは不完全なアポトーシスを示すことを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項29】
上記T細胞の一部は、好ましくは、CD3経路あるいはCD2経路を介して、あるいはマイトジェン、CD28やCD40のような共刺激分子を介して、あるいは、Toll様受容体(Toll-like receptors)やインテグリンのような他の経路を介して予め活性化されたT細胞であることを特徴とする請求項28にかかる使用。
【請求項30】
上記T細胞、および/あるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、休止していないことを特徴とする請求項28もしくは29にかかる使用。
【請求項31】
上記T細胞、およびあるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、細胞周期から出た細胞ではなく、もしくは細胞周期の相に停止されている細胞でないことを特徴とする請求項30にかかる使用。
【請求項32】
上記T細胞、およびあるいはマクロファージ、および/あるいは抗原提示細胞の一部は、患者の関節、好ましくは滑膜関節、および/あるいは患者の胃腸管、好ましくは前記胃腸管の内膜、および/あるいは患者の皮膚、および/あるいは肺、および/あるいは肝臓、および/あるいは腎臓、および/あるいは炎症中の粘膜に見られる抹消血液細胞の集団に主として存在することを特徴とする請求項28乃至31のいずれか1項にかかる使用。
【請求項33】
上記患者は、ガレクチン−2の投与前に、T細胞中のBcl-2タンパク質とBaxタンパク質の間の比が、抗アポトーシス性Bcl-2のためにバランスの壊れた病的状態にあることを特徴とする上位請求項のいずれか1項にかかる使用。
【請求項34】
免疫調整剤としての、ガレクチン−2の使用、もしくはガレクチン−2を符号化する核酸の使用、もしくはその相補鎖の使用、もしくは当該符号化する核酸やその相補鎖にハイブリッド化する核酸の使用。
【請求項35】
免疫調整剤が、T細胞および/あるいはマクロファージおよび/あるいは抗原提示細胞に作用するものであることを特徴とする請求項34にかかる使用。
【請求項36】
上記T細胞および/あるいはマクロファージおよび/あるいは抗原提示細胞は人間のものであることを特徴とする請求項35にかかる使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−530490(P2007−530490A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504362(P2007−504362)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003161
【国際公開番号】WO2005/092368
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506324552)シャリテー−ウニベルジテーツメディツン ベルリン (1)
【Fターム(参考)】