説明

ガンマ線強度分布測定方法および測定装置

【課題】燃料集合体のガンマ線強度分布の測定時間を短縮する。
【解決手段】燃料集合体11をある測定角に回転させる回転工程と、平面34からの距離が異なる複数のコリメータ14を通過するガンマ線強度をガンマ線検出器15で測定する測定工程とを繰り返す。次に、平面34とコリメータ14との最も大きい距離を半径とし回転軸33を中心とする円よりも外側に位置する燃料棒のガンマ線強度の分布を、それらの燃料棒の本数以上の測定角で測定したガンマ線強度に基づいて算出する。その後、平面34とコリメータ14との2番目に大きい距離を半径とする円の外側でガンマ線強度を算出していない燃料棒のガンマ線強度の分布を、それらの燃料棒12の本数以上の測定角で測定したガンマ線強度と、既に算出したガンマ線強度とに基づいて算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉に装荷される燃料集合体のガンマ線強度分布の測定方法および測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉燃料の運転中の出力分布を非破壊測定するため、燃料から放出されるガンマ線を測定する装置がある。たとえば、特許文献1には、燃料集合体を回転させながらコリメータを介してガンマ線を測定し、燃料棒ごとのガンマ線強度分布を測定する装置が記載されている。この測定装置は、測定結果と原子炉管理用計算機による計算結果との比較を行うことによって、管理用計算結果の妥当性を立証するために利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第1596020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された測定装置では、単一のコリメータによるガンマ線測定を行ったとき、少なくとも燃料棒本数より多いガンマ線測定値を得る必要がある。すなわち、測定回数は燃料棒本数よりも多く必要である。さらに測定点数を多くすると測定精度を向上させることができる。しかし、単に測定点数を多くすると、測定に要する時間が長くなることになる。
【0005】
また、燃料集合体は軸方向に約4mの長さを持ち、原子炉での照射途中で微小に変形している場合がある。このため、堅固にこれを支持し、かつ、回転駆動部で正確な回転角度情報が得られたとしても、実際の測定部位の回転角度と正確に一致しない可能性がある。このため、ガンマ線強度分布の算出に用いる応答の正確さが損なわれ、測定精度を劣化させる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、燃料集合体のガンマ線強度分布の測定時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の中心軸に垂直な面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定方法において、前記燃料集合体を前記中心軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる回転工程と、この回転工程の後に前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さであり前記平面に平行な第1コリメータを通過するガンマ線強度および前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さよりも小さい第2長さであり前記平面に平行な第2コリメータを通過するガンマ線強度を測定する測定工程とを、前記測定角の数が前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒ではないものの本数の少なくない方以上となるように繰り返す回転測定工程と、前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上の前記測定角で前記第1コリメータを通過したガンマ線強度に基づいて算出する第1演算工程と、前記第1演算工程の後に、前記第2コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第2コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒以外の本数以上の前記測定角で前記第2コリメータを通過したガンマ線強度および前記第1演算工程で求めたに前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布に基づいて算出する第2演算工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の中心軸に垂直な面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定装置において、前記燃料集合体を支持して前記軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる支持回転機と、前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さであり前記平面に平行なガンマ線を通過させる第1コリメータと、前記第1コリメータ通過するガンマ線の強度を測定する第1ガンマ線検出器と、前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さよりも小さい第2長さであり前記平面に平行なガンマ線を通過させる第2コリメータと、前記第2コリメータを通過するガンマ線の強度を測定する第2ガンマ線検出器と、を備えたガンマ線測定器集合体と、前記測定角の数が前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出するガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出するガンマ線を放出する前記燃料棒ではないものの本数以上となるように繰り返し前記支持回転機に前記燃料集合体を前記回転軸の周りに回転させて前記第1ガンマ線検出器および前記第2ガンマ線検出器にガンマ線の強度を測定させる測定制御器と、前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度に基づいて算出し、前記第2ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第2ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度および前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布に基づいて算出する分布演算器と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、複数の燃料棒を束ねて角筒状のチャンネルボックスを装着された燃料集合体の中心軸に垂直な平面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定方法において、前記燃料集合体を前記回転軸の周りの測定角に回転させる回転工程と、この回転工程の後に前記中心軸に平行な平面に平行なコリメータを通過するガンマ線強度を測定する測定工程と、前記コリメータに垂直な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第1および第2距離測定工程と、前記コリメータおよび前記回転軸に平行な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第3および第4距離測定工程と、前記第1および第2距離測定工程で測定した距離および前記第3および第4距離測定工程で測定した距離に基づいて前記コリメータに対する前記燃料集合体の中心軸の位置および前記燃料集合体の前記回転軸の周りの回転角を算出する角度算出工程とを、前記測定角の数が前記コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上となるように繰り返す回転測定工程と、前記コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上の前記測定角で前記コリメータを通過したガンマ線強度に基づいて算出する演算工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の軸に垂直な平面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定装置において、前記燃料集合体を支持して前記燃料集合体の軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる支持回転機と、前記回転軸を含む平面に平行なガンマ線を通過させるコリメータと、前記コリメータを通過するガンマ線の強度を測定するガンマ線検出器と、前記コリメータに垂直な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第1および第2距離測定器と、前記コリメータおよび前記回転軸に平行な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第3および第4距離測定器と、を備えたガンマ線測定器集合体と、前記第1および第2距離測定器で測定した距離および前記第3および第4距離測定器で測定した距離に基づいて前記コリメータに対する前記燃料集合体の中心軸の位置および前記燃料集合体の前記回転軸の周りの回転角を算出し、前記測定角の数が前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数の少なくない方以上となるように繰り返し前記支持回転機に前記燃料集合体を前記回転軸の周りに回転させて前記ガンマ線検出器にガンマ線の強度を測定させる測定制御器と、前記ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を前記ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度に基づいて算出する分布演算器と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料集合体のガンマ線強度分布の測定時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の横断面およびガンマ線検出器集合体の横断面とともに示すブロック図である。
【図2】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の側面およびガンマ線検出器集合体の立断面とともに示すブロック図である。
【図3】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態において測定角が0度の場合の燃料集合体とガンマ線測定器集合体との位置関係を示す拡大横断面図である。
【図4】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態において測定角が45度の場合の燃料集合体とガンマ線測定器集合体との位置関係を示す拡大横断面図である。
【図5】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態において測定角の設定方法を示す図であって、(a)は燃料集合体の横断面図であり、(b)は(a)でA、B、Cの符号をつけた燃料棒の測定角が0度から90度での応答Rの計算値のグラフである。
【図6】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の横断面およびガンマ線検出器集合体の横断面とともに示すブロック図である。
【図7】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の側面およびガンマ線検出器集合体の立断面とともに示すブロック図である。
【図8】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の測定状況を示す模式的横断面図である。
【図9】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の他の測定状況を示す模式的横断面図である。
【図10】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離と回転角度の関係を示す模式的横断面図である。
【図11】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の測定状況の他の例を示す模式的横断面図である。
【図12】本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第3の実施の形態に用いるガンマ線測定器集合体の図13および図14のXII−XII矢視断面図である。
【図13】図12および図14のXIII−XIII矢視断面図である。
【図14】図12および図13のXIV−XIV矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第1の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の横断面およびガンマ線検出器集合体の横断面とともに示すブロック図である。図2は、本発実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の側面およびガンマ線検出器集合体の立断面とともに示すブロック図である。
【0015】
ガンマ線強度分布測定装置は、複数の燃料棒12を束ねた燃料集合体11の軸に垂直な平面内でのそれぞれの燃料棒12が放出するガンマ線強度の分布を測定する。本実施の形態において、燃料集合体11は、中央付近に2本のウォータロッド39を設けて非沸騰水領域を確保し、その周りに74本の燃料棒12を9行9列に束ねたものであるが、他の形状であってもよい。また、燃料集合体11には、チャンネルボックス19が装着されている。
【0016】
ガンマ線強度分布測定装置は、支持回転機13、ガンマ線測定器集合体16、測定制御器17および分布演算器18を有している。支持回転機13は、ガンマ線強度分布の測定対象である燃料集合体11を支持し、燃料集合体11の軸に平行な回転軸33の周りに回転させる。回転軸33は、たとえば燃料集合体11の中心軸と同じである。
【0017】
支持回転機13は、たとえば台座21と駆動機構22とを備えている。台座21は、軸を鉛直方向に向けて載置される燃料集合体11を支持する。駆動機構22は、燃料集合体11の軸を中心として台座21を駆動モータなどで回転させる。支持回転機13は、保持部23を備えていてもよい。保持部23は、たとえば燃料集合体11の軸方向の中央部より高い位置に設けられ、燃料集合体11が鉛直に起立するように保持する。また、保持部23は、燃料集合体11の位置を正確に規定する機能も有する。保持部23は、台座21と同期して回転する機構、あるいは、自由に回転する機構が設けられている。
【0018】
支持回転機13による燃料集合体11の回転角は、測定制御器17によって制御される。また、支持回転機13による燃料集合体11の回転角度は支持回転機13によって測定され、その回転角度情報は測定制御器17に伝達される。支持回転機13による燃料集合体11の回転角度は、たとえば駆動機構22の駆動モータにパルス駆動式モータを採用することによって正確に知ることができる。あるいは、台座21の回転軸に、回転量をディジタルパルスに変換するエンコーダ装置をとりつけることによっても、正確に知ることができる。
【0019】
ガンマ線測定器集合体16は、複数のコリメータ14と複数のガンマ線検出器15とを備えている。ガンマ線測定器集合体16は、燃料集合体11の側面にコリメータ14の一方の端部が向かうように配置される。それぞれのコリメータ14は、回転軸33を含む平面34に平行なガンマ線を通過させる。また、それぞれのコリメータ14は、回転軸33を含む平面34からの距離が互いに異なる位置に設けられている。それぞれのガンマ線検出器15は、それぞれのコリメータ14を通過したガンマ線の強度を測定する。
【0020】
本実施の形態では、ガンマ線測定器集合体16は3つのコリメータ14およびそれらに対応するガンマ線検出器15を備えている。1つのコリメータ14は、その延長線が燃料集合体11の中心を通るように配置されている。また、他の2つのコリメータ14は、燃料集合体11の中心からコリメータに平行な直線への法線の長さが異なる。
【0021】
それぞれのコリメータ14のスリット幅は、燃料棒12の幅よりも狭いことが望ましい。現在の軽水炉用燃料集合体の燃料棒12の外径はおよそ1cm程度であるから、このような燃料集合体11の場合、コリメータ14のスリット幅は1mmから5mmが適切である。ガンマ線計数率は、それぞれの燃料棒12のガンマ線の強度、および、ガンマ線検出器15のガンマ線検出効率に依存する。コリメータ14の長さ、燃料集合体11からコリメータ14までの距離は、ガンマ線計数率が適切になるように設計される。コリメータ14の長さは、燃料棒12を見込む立体角の広がりを防ぐよう20cm以上とすることが望ましい。
【0022】
運転中の出力分布を測定する場合には、核分裂生成物のバリウム140が崩壊して生じたランタン140が放出する1.6MeVのガンマ線を測定する方法が有効である。バリウム140は半減期が約13日であり、その分布は原子炉停止の前2週間程度の出力分布を良く反映する。このような目的の場合、ガンマ線検出器15は、1.6MeVのガンマ線を識別して測定する必要がある。そこで、このような目的の場合には、ガンマ線検出器15として、ガンマ線スペクトル測定ができるNaIシンチレーション検出器、BGOシンチレーション検出器、Ge半導体検出器、CdTeまたはCdZnTe半導体検出器などを用いることができる。
【0023】
燃料集合体11の軸方向の異なる位置のガンマ線強度分布を測定する場合には、ガンマ線測定器集合体16を、燃料集合体11の軸方向に、燃料集合体11に対して相対的に移動させる。この場合、ガンマ線測定器集合体16を移動させてもよいし、燃料集合体11を移動させてもよい。
【0024】
このガンマ線強度分布測定装置を用いたガンマ線強度分布測定方法では、回転測定工程と、演算工程とを行う。回転測定工程は、回転工程と、測定工程とを含む。
【0025】
回転工程では、燃料集合体11を回転軸33の周りの所定の測定角に回転させる。回転工程の後に行われる測定工程では、それぞれのコリメータ14を通過するガンマ線強度をそれぞれに対応するガンマ線検出器15で測定する。回転工程および測定工程は、それぞれのコリメータ14を通過するガンマ線を放出する燃料棒12の本数の最小値以上の回数繰り返す。
【0026】
演算工程は、コリメータ14の数だけ行われる。第1演算工程では、回転軸33を通る平面34からの距離が最も大きいコリメータ14を通過して測定された燃料棒12のガンマ線強度分布を算出する。第1演算工程の後に行われる第2演算工程では、回転軸33を通る平面34からの距離が2番目に大きいコリメータ14を通過して測定された燃料棒12のガンマ線強度分布を算出する。第2演算工程の後に行われる第3演算工程では、回転軸33を通る平面34からの距離が最も小さいコリメータ14を通過して測定された燃料棒12のガンマ線強度分布を算出する。
【0027】
図3は、本実施の形態において測定角が0度の場合の燃料集合体とガンマ線測定器集合体との位置関係を示す拡大横断面図である。図4は、本実施の形態において測定角が45度の場合の燃料集合体とガンマ線測定器集合体との位置関係を示す拡大横断面図である。
【0028】
回転軸33を含む平面34からの距離が最も大きく第1長さD1であるコリメータを、第1コリメータ41と呼ぶこととする。回転軸33を含む平面34からの距離が2番目に大きく第2長さD2であるコリメータを、第2コリメータ42と呼ぶこととする。回転軸33を含む平面34からの距離が0であるコリメータを、第3コリメータ43と呼ぶこととする。また、測定角θとは、第3コリメータ43を延長した直線に対する角度とする。
【0029】
第1コリメータ41を通過したガンマ線を検出するガンマ線検出器を、第1ガンマ線検出器51と呼ぶこととする。第2コリメータ42を通過したガンマ線を検出するガンマ線検出器を、第2ガンマ線検出器52と呼ぶこととする。第3コリメータ43を通過したガンマ線を検出するガンマ線検出器を、第3ガンマ線検出器53と呼ぶこととする。
【0030】
測定角θが0度の場合は、図3に示すように、燃料集合体11の外辺は第1コリメータ41の延長線と水平および直角となっている。この状態では、第1コリメータ41は、1本も燃料棒12を見込んでおらず、第1ガンマ線検出器51はガンマ線を検出しない。また、測定角θが45度の場合には、図4に示すように、第1コリメータ41は、2本の燃料棒12を見込んでいて、これらの燃料棒12から放出されるガンマ線は、第1ガンマ線検出器51で測定される。
【0031】
つまり、第1コリメータ41を通過して第1ガンマ線検出器51で検出されるガンマ線は、図3および図4に実線で示した、回転軸33を中心とし半径が回転軸を通る平面から第1コリメータ41までの距離D1である円31よりも外側にある燃料棒12が放出するガンマ線に限られる。本実施の形態では、第1コリメータ41を通過して測定されるガンマ線を放出する燃料棒12には、燃料集合体11の4箇所の角にそれぞれ存在する3本ずつ合計12本の燃料棒12が該当する。
【0032】
第2コリメータ42を通過して第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線は、図3および図4に破線で示した、回転軸33を中心とし半径が回転軸を通る平面から第2コリメータ42までの距離D2である円32よりも外側にある燃料棒12が放出するガンマ線に限られる。本実施の形態では、第2コリメータ42を通過して測定されるガンマ線を放出する燃料棒12には、44本の燃料棒12が該当する。このうち、第1コリメータ41を通過せず、すなわち第1ガンマ線検出器51で検出されないガンマ線を放出する燃料棒12には、32本が該当する。
【0033】
第3コリメータ43を通過して第3ガンマ線検出器53で検出されるガンマ線は、燃料集合体11の全て、すなわち74本の燃料棒12である。このうち、他のコリメータ41,42を通過せず、すなわち、他のガンマ線検出器51,52で検出されないガンマ線を放出する燃料棒12には、30本が該当する。
【0034】
それぞれのコリメータ14を通過してそのコリメータ14に対応するガンマ線検出器15で測定されるガンマ線を放出する燃料棒12のガンマ線強度の分布は、それらの燃料棒12の本数以上の測定角で測定されたガンマ線の強度に基づいて算出できる。本実施の形態では、第1ガンマ線検出器51で検出されるガンマ線を放出する12本の燃料棒12のガンマ線強度は、12の測定角で測定されたガンマ線の強度に基づいて算出できる。
【0035】
また、第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線には、第1ガンマ線検出器51で検出されるガンマ線を放出する燃料棒12から放出されるものが含まれる場合がある。しかし、第1ガンマ線検出器51で検出されるガンマ線を放出する12本の燃料棒12のガンマ線強度を算出しておけば、第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線を放出する燃料棒12のうち第1ガンマ線検出器51で検出されないガンマ線を放出する32本の燃料棒12は、32の測定角で測定されたガンマ線の強度に基づいて算出できる。
【0036】
第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線を放出する燃料棒12のうち第1ガンマ線検出器51で検出されないガンマ線を放出する32本の燃料棒12のガンマ線強度の算出に必要な44の測定角でのガンマ線強度のうち、少なくとも一部は、第1ガンマ線検出器51で検出されるガンマ線を放出する12本の燃料棒12のガンマ線強度と同一の測定角で測定できる。
【0037】
同様に、第3ガンマ線検出器53で検出されるガンマ線を放出する燃料棒12のうち第1ガンマ線検出器51および第2ガンマ線検出器52で検出されないガンマ線を放出する30本の燃料棒12のガンマ線強度の算出に必要な18の測定角でのガンマ線強度のうち、少なくとも一部は、第1ガンマ線検出器51および第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線を放出する44本の燃料棒12のガンマ線強度と同一の測定角で測定できる。
【0038】
測定角が同一であれば、同時に測定することが可能である。よって、本実施の形態では、1つのガンマ線検出器で燃料棒12のガンマ線強度分布を測定する場合に比べて、測定時間を短縮することができる。また、測定時間が短縮できるため、限定された作業時間の中で1つの測定角での測定時間を長くしてガンマ線の計数を大きくすることができ、その結果、ガンマ線強度の測定精度を向上させることができる。さらに、燃料棒ごとのガンマ線強度分布を効率的に精度のよく測定し、炉心管理用計算の妥当性をより高い精度で立証することができる。
【0039】
次に、ガンマ線強度分布の算出方法について説明する。ガンマ線強度を測定される燃料棒12の本数をNとすると、ガンマ線測定値Cは、ガンマ線強度Gと応答Rとにより、
【数1】

と表される。ここで、Cはj番目の測定角θでのガンマ線強度の測定値、Ri,jはj番目の測定角θに対するi番目の燃料棒12の応答、Gはi番目の燃料棒12のガンマ線強度である。燃料棒12の応答Ri,jとは、燃料集合体11のうち1本の燃料棒12だけがガンマ線を放出した場合の、燃料集合体11から外部に放出されてコリメータ14を通過してガンマ線検出器15でj番目の測定角θで測定されたガンマ線強度の、その燃料棒12のガンマ線強度に対する比である。
【0040】
燃料棒12の応答Ri,jは、測定する全ての測定角で計算あるいは標準線源の測定によって求める。燃料棒12の応答Ri,jの導出は、たとえばガンマ線強度の測定の前に予め行っておく。燃料棒12の応答Ri,jを計算で求める場合は、ガンマ線輸送計算あるいはモンテカルロ計算を用いることができる。
【0041】
測定される燃料棒12の本数N以上のM回の測定を行うことにより、
【数2】

という連立方程式が得られる。N個の未知数G、…、Gは、
【数3】

の最小二乗解として得られる。
【0042】
(3)式を行列式で表すと、
【数4】

となる。ここで、行列A、C、Gを
【数5】

【数6】

【数7】

と定義すると、
A×G=C (8)
が得られる。よって、
G=A−1×C (9)
を解くことにより、解Gが得られる。ここで、A−1はAの逆行列である。
【0043】
このようにして、第1コリメータ41を通過して測定されたガンマ線を放出した燃料棒12のそれぞれのガンマ線強度の分布は、それらの燃料棒12の本数以上の測定角において第1ガンマ線検出器51で測定されたガンマ線強度に基づいて算出することができる。つまり、第1ガンマ線検出器51で測定されるガンマ線を放出する12(=N)本の燃料棒12のガンマ線強度G、…、G12は、12以上のM個の測定角で測定されたガンマ線の強度に基づいて算出される。
【0044】
第2コリメータ42を通過して第2ガンマ線検出器52で測定されたガンマ線を放出した燃料棒12のそれぞれのガンマ線強度は、次のようにして算出される。第2ガンマ線検出器52で測定されたガンマ線強度は、回転軸33からの距離がD2の円32よりも外側にある44本の燃料棒から放出されたものである。このうち、回転軸33からの距離がD1の円31よりも外側にある12本の燃料棒12のガンマ線強度分布は得られている。したがって、残りの32本の燃料棒12のそれぞれのガンマ線強度が未知数として残っている。
【0045】
また、第1ガンマ線検出器51と第2ガンマ線検出器52のガンマ線検出効率が異なる場合には、この検出効率の比率が未知数として残ることとなる。第1ガンマ線検出器51と第2ガンマ線検出器52のガンマ線検出効率が同じとみなすことできる場合、あるいは、ガンマ線検出効率の比率が予備測定などによって決定されている場合には、検出効率の比率を未知数として取り扱う必要はない。
【0046】
検出効率の比率kを未知数とすると、第2ガンマ線検出器52で検出されるガンマ線を放出する燃料棒12の本数は44(=N2)であり、このうち第1ガンマ線検出器51で検出されたガンマ線を放出する燃料棒12の本数は12(=N1)本であり、第1ガンマ線検出器51で検出されないガンマ線を放出する燃料棒12の本数は32本であるから、(2)式に相当する式として、
【数8】

すなわち、
【数9】

と書くことができる。ここで、G〜G12は、第1ガンマ線検出器51で測定されたガンマ線を放出した燃料棒12のガンマ線強度であり、既知量である。また、G13〜G44は、第2ガンマ線検出器52で測定されたガンマ線を放出した燃料棒12ののうち第1ガンマ線検出器51で検出されないガンマ線を放出する燃料棒12のガンマ線強度である。
【0047】
(10)式では、右辺の最終項のカッコ内の値が既知であるから、G13〜G42とkを合わせた(N2−N1+1)個の未知数について、(3)式から(9)式に準ずる一連の演算を行う。これにより、第2ガンマ線検出器52で測定されたガンマ線を放出した燃料棒12のガンマ線強度が求められる。
【0048】
第3ガンマ線検出器53で測定されるガンマ線は、燃料集合体11の全ての燃料棒12から放出されたものである。既に44本の燃料棒12についてガンマ線強度分布が得られているので、第2ガンマ線検出器52で測定されたガンマ線を放出した燃料棒12のガンマ線強度と同様に、未知数である残り30本のガンマ線強度分布と検出効率の比を解く。このようにして、燃料集合体11の全ての燃料棒12のガンマ線強度分布が得られる。
【0049】
本実施の形態では、回転軸33を通る平面34からの距離に応じて燃料棒12をグループ分けして、外側のグループから順次ガンマ線強度分布を求める。また、ガンマ線測定器集合体16を構成するそれぞれのコリメータ14とガンマ線の検出効率を含めて演算を行う。
【0050】
コリメータ14とガンマ線検出器15の組の数は3に限られない。この組の数をを多くしてゆけば、ひとつの回転角度のときに複数の検出器で重複して測定できるので、結果として測定値の数が増えることになる。その結果、全体として測定回数を減らせる、すなわち、測定時間を減少させて効率的に測定が可能となる。コリメータ14とガンマ線検出器15の組の数は、ガンマ線検出器15の寸法による配置の制約と、装置全体の価格などを勘案して決定する。
【0051】
測定角は、たとえば5度など所定の角度ごととしてもよい。しかし、測定角の設定の仕方によっては、測定誤差が大きくなる可能性があり、それを補うために測定角の数を多くしてしまうと測定時間の増大につながってしまう。
【0052】
図5は、本実施の形態において測定角の設定方法を示す図であって、(a)は燃料集合体の横断面図であり、(b)は(a)でA、B、Cの符号をつけた燃料棒の測定角が0度から90度での応答Rの計算値のグラフである。A、B、Cの符号をつけた燃料棒12の応答Rは、モンテカルロ計算によって算出した。コリメータ14のスリット幅は2mm、コリメータ14の長さは40cm、燃料集合体11の中心(回転軸33)からコリメータまでの距離を30cmとした。
【0053】
この応答Rに基づいて、A、B、Cの符号をつけた燃料棒12のガンマ線強度分布をある値に仮定した場合のガンマ線強度の測定値を算出した。ガンマ線検出器15の測定値に誤差が含まれないならば、仮定したガンマ線強度分布が上述の方法で得られるはずである。しかし、実際には、ガンマ線検出器15の測定値に誤差が含まれる。測定誤差は、ガンマ線測定値の統計誤差、燃料集合体11の回転角度や燃料棒12の位置の微小な設定誤差に起因する。
【0054】
そこで、計算機のランダム関数を利用して、これらに起因するガンマ線測定値の誤差を一定の範囲内で無作為に作成し、それが測定結果に与える影響を調べた。この結果、測定を行う燃料集合体の回転角度(測定角)は、たとえば1度毎などの等間隔とした場合よりも、むしろ、図5(b)に○印で図示したように、各燃料棒の応答の極大値付近の角度を選択した場合の方が、ガンマ線強度分布が正確に求められることがわかった。
【0055】
次の表は、測定角を1度ないし6度毎の等間隔のステップで変化させたときと、図5(b)の○印のように選択したときについて、測定誤差の平均値および標準偏差を示す表である。ここで、燃料集合体11の回転角度の設定誤差は1度、ガンマ線計数の誤差を1%の範囲内でランダムに設定した。また、測定誤差の平均値および標準偏差は、1000回計算したときの値である。
【表1】

【0056】
この結果から、測定角として応答の極大値付近を選択したときは、測定点が少ない32点であっても、1度ごとに測定したときと同等かそれ以上の測定精度が得られることが分かった。つまり、測定角として応答の極大値から所定の範囲内の角度を選択することにより、測定精度を向上させることができる。したがって、測定角は、少なくともそれぞれの燃料棒12の応答が極大となる角度から所定の範囲内の角度を含むようにすることが好ましい。
【0057】
なお、図5(b)に示した測定角で測定できるのは、3本の燃料棒12についてであるが、コーナ部の他の9本はこれら3本の対称位置にあるので、応答Rについてはこれら3本の結果で代用できる。
【0058】
このように、燃料棒12ごとのガンマ線強度分布を測定する際に、各燃料棒12の応答が極大となる回転角度を選択して測定および演算することによって、より精度の高いガンマ線強度分布が測定できる。また、複数のガンマ線検出器15による測定値に基づいて外側から順に演算していくとき、ガンマ線検出器15ごとに測定対象となる燃料棒12の応答の極大値にあたる角度が異なる。そこで、各ステップの演算ごとに、選ぶ角度を変えることで、演算精度を向上することができる。
【0059】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第2の実施の形態に用いるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の横断面およびガンマ線検出器集合体の横断面とともに示すブロック図である。図7は、本実施の形態に用におけるガンマ線強度分布測定装置の燃料集合体の側面およびガンマ線検出器集合体の立断面とともに示すブロック図である。
【0060】
本実施の形態のガンマ線強度分布測定装置は、距離測定器10を備えている。距離測定器10は、距離測定器支持板60に固定されている。距離測定器支持板60は、ガンマ線測定器集合体16に固定されている。したがって、距離測定器10は、ガンマ線測定器集合体16との相対的な位置関係が変化しないようになっている。距離測定器10としては、たとえばレーザ光の反射を利用した距離計が指向性の高さや高精度かつ非接触測定の点で好適である。
【0061】
距離測定器10は、燃料集合体11に装着されたチャンネルボックス19までの距離を測定する。距離測定器10は、4つ設けられている。2つの距離測定器10は、コリメータ14が延びる方向に平行な距離を測定する。他の2つの距離測定器10は、コリメータ14が延びる方向に垂直な距離を測定する。
【0062】
距離測定器10が測定した距離の情報は、測定制御器17に伝達される。測定制御器17は、距離測定器10が測定した距離に基づいて、燃料集合体11が回転軸33の周りにどれだけ回転したかを算出する。さらに、測定制御器17は、距離測定器10が測定した距離に基づいて、回転軸33がガンマ線測定器集合体16に対してどれだけ平行移動したかを算出してもよい。
【0063】
燃料棒12(図3参照)ごとのガンマ線強度分布を測定するとき、分布演算器で使用する応答Rを正確に用いるためには、燃料集合体11の回転角度や、位置を正確に把握することが測定精度を向上のために重要である。燃料集合体11の回転角度は、燃料集合体支持回転機13に備えられた駆動モータの制御パルスあるいは回転軸に取り付けられたエンコーダ装置によって得られる回転角度に関する情報から知ることができる。
【0064】
燃料集合体11は軸方向の長さが約4mの長さであり、さらに、原子炉での照射途中で微小に変形している場合がある。このため、堅固に燃料集合体11を支持し、かつ、回転駆動部で正確な回転角度情報を得たとしても、実際の測定部位の回転角度と正確には一致しない可能性がある。燃料集合体支持回転機において、燃料集合体11を保持しこれを回転する機構と測定部位との距離を近接させると、実際の測定部位の回転角度の誤差は小さくなると考えられる。
【0065】
しかし、種々の制約からそのような手段が講じえない場合も現実には考えられる。本実施の形態における測定は、主として原子力発電所で原子炉に付設される燃料プール内で行われる。沸騰水型原子炉の燃料プールには、燃料集合体11のチャンネルボックス19の着脱を目的としたチャネル着脱装置が設置されている。たとえば、本実施の形態における測定を、既設のチャンネルボックス着脱装置を燃料集合体支持回転機として用いる場合などには、燃料集合体11の回転角度や位置の情報を正確に制御することは困難である。このような場合、ガンマ線強度分布の測定精度が低下する可能性がある。
【0066】
そこで本実施の形態では、燃料集合体支持回転機13から伝達される回転角度に関する情報に加えて、あるいは、この回転角度に関する情報に代えて、距離測定器10によって測定された距離情報に基づいて燃料集合体11の回転角度を算出する。
【0067】
図8は、本実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の測定状況を示す模式的横断面図である。図9は、本実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の他の測定状況を示す模式的横断面図である。
【0068】
図8および図9に示すように、4つの距離測定器10からの燃料集合体11に装着されたチャンネルボックス19までの距離L1、L2、L3、L4が測定される。燃料集合体11が回転軸33の周りに回転することにより、これらの距離は変化する。また、燃料集合体11の回転軸33が距離測定器10に対して平行移動した場合にも、これらの距離が変化する。
【0069】
図10は、本実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離と回転角度の関係を示す模式的横断面図である。なお、図10において燃料集合体11に装着されたチャンネルボックス19のコーナ部の丸みは無視し、チャンネルボックス19の横断面は正方形とした。図10中のA、B、C、Dは、チャンネルボックス19の4つのコーナ部を示している。
【0070】
図10において、ガンマ線測定器集合体16に対する相対的位置が固定された基準となる仮想的な点を原点(0,0)とした。コリメータ14が延びる直線に沿って原点からガンマ線測定器集合体16に近づく方向をx軸とした。図10には、回転軸33が原点(0,0)からx軸についてdxだけ、y軸についてdyだけ変位し、コーナAとコーナCとを結ぶ対角線とx軸との角度がθである場合を図示している。
【0071】
コーナA−コーナBの辺とy軸との角度をαとすると、
α=45°−θ (11)
である。
【0072】
2つの距離測定器10は、x軸に平行な方向の距離L1および距離L2を測定する。また、他の2つの距離測定器10は、y軸に平行な方向の距離L3および距離L4を測定する。これらの4つの距離測定値のうち、2つの距離測定値を用いることにより、コーナA−コーナBの辺とy軸との角度αを算出することができる。
【0073】
たとえば、x軸に平行な方向の距離L1および距離L2に基づいて、距離測定器10を通りx軸に平行な直線とコーナA−コーナBの辺との2つの交点の座標(X1,Y1)および(X2,Y2)が求められる。これらの座標から、αは、
【数10】

と求められる。角度αが得られると、(11)式により角度θが求められる。
【0074】
コーナA−コーナBの辺を通る直線は、正方形の対角線の半分の長さLと角度θ、変位dx、dyを用いて、
【数11】

と表される。同様に、コーナB−コーナCの辺を通る直線は、
【数12】

と表される。
【0075】
したがって、4つの距離測定器10で測定された4つの距離測定値L1,L2,L3,L4から求められたチャンネルボックスとの4つの交点座標のうち、3つの交点座標(X1,Y1)、(X2,Y2)および(X3,Y3)を(13)式および(14)式に代入することによって、dxとdyが算出される。
【0076】
このようにして、測定体系中の燃料集合体11の回転角度θと回転軸33の変位dxおよびdyを測定し、これらを元にした正確な応答Rを用いて、より精度のよいガンマ線強度分布を算出することができる。
【0077】
チャンネルボックス19のコーナは、丸みを帯びている。このため、コーナの弧状部では、距離測定値から角度や位置を算出する操作が煩雑となり、また測定誤差が大きくなる。そこで、距離測定点は弧状部を避ける程度だけコーナ部から離れた点であることが好ましい。本実施の形態では、4つの距離測定器10を備えているため、4つのうちの少なくとも3つの距離測定器10はチャンネルボックス19のコーナの弧状部をできるだけ避けて距離を測定することができる。よって、チャンネルボックス19のコーナに形成された丸みに伴う、距離測定値から角度や位置の演算の煩雑さおよび測定誤差の増大が抑制される。
【0078】
図11は、本実施の形態において燃料集合体とガンマ線測定器集合体との間の距離の測定状況の他の例を示す模式的横断面図である。
【0079】
この例では、上述の4つの距離測定器10に加えて、それらの距離測定器10とは異なる方向の距離を測定する5つ目の距離測定器10を設けている。図9のL1、図11のL1、L4のように、測定方向に対する測定面の角度が直角から離れると、距離測定値の誤差が大きくなる可能性がある。そこで、上述の4つの距離測定器10とは異なる距離測定器10を設けることにより、測定方向に対する測定面の角度が直角に近く、誤差が小さい距離測定値を得ることができる。これにより、距離測定値から算出される角度や位置の誤差を小さくすることができる。
【0080】
[第3の実施の形態]
図12は、本発明に係るガンマ線強度分布測定方法の第3の実施の形態に用いるガンマ線測定器集合体の図13および図14のXII−XII矢視断面図である。図13は、図12および図14のXIII−XIII矢視断面図である。図14は、図12および図13のXIV−XIV矢視断面図である。
【0081】
本実施の形態のガンマ線測定器集合体16は、5つのコリメータ14および5つのガンマ線検出器15を備えている。これらのコリメータ14およびガンマ線検出器15は、隣り合うもの同士の燃料集合体11(図2参照)の軸方向の位置が互いに異なるように配置されている。
【0082】
ガンマ線検出器15の大きさの制約から、燃料集合体の軸に垂直な平面内にガンマ線検出器15を配置すると、コリメータ14の間隔をガンマ線検出器15の大きさよりも密にできない。しかし、本実施の形態のように、コリメータ14とガンマ線検出器15の複数の組を、燃料集合体11の軸方向の位置が互いに異なるように配置することによって、コリメータ14の間隔をより密にすることができる。
【0083】
コリメータ14が見込む燃料集合体11の軸方向の位置が変わると、ガンマ線強度の軸方向での違いによって、ガンマ線強度の値には差が生じる可能性はある。しかし、軸方向位置の差が数cm程度であれば、軸方向の位置の違いによるガンマ線強度分布に大きな差異はない。このため、最終的に得られる燃料集合体全体のガンマ線強度分布は、精度を損なうことなく測定することができる。
【0084】
このように、本実施の形態では、コリメータ14を密に配置することによって、ガンマ線検出器15の数を増加させることができる。その結果、より効率的なガンマ線強度分布測定が可能となる。
【0085】
[その他の実施の形態]
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の各実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0086】
10…距離測定器、11…燃料集合体、12…燃料棒、13…支持回転機、14…コリメータ、15…ガンマ線検出器、16…ガンマ線測定器集合体、17…測定制御器、18…分布演算器、19…チャンネルボックス、21…台座、22…駆動機構、23…保持部、33…回転軸、39…ウォータロッド、41…第1コリメータ、42…第2コリメータ、43…第3コリメータ、51…第1ガンマ線検出器、52…第2ガンマ線検出器、53…第3ガンマ線検出器、60…距離測定器支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の中心軸に垂直な面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定方法において、
前記燃料集合体を前記中心軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる回転工程と、この回転工程の後に前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さであり前記平面に平行な第1コリメータを通過するガンマ線強度および前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さよりも小さい第2長さであり前記平面に平行な第2コリメータを通過するガンマ線強度を測定する測定工程とを、前記測定角の数が前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒ではないものの本数の少なくない方以上となるように繰り返す回転測定工程と、
前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第1コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上の前記測定角で前記第1コリメータを通過したガンマ線強度に基づいて算出する第1演算工程と、
前記第1演算工程の後に、前記第2コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第2コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒以外の本数以上の前記測定角で前記第2コリメータを通過したガンマ線強度および前記第1演算工程で求めたに前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布に基づいて算出する第2演算工程と、
を有することを特徴とするガンマ線強度分布測定方法。
【請求項2】
前記測定角のそれぞれに対して、前記燃料集合体のうち1本の前記燃料棒だけがガンマ線を放出した場合のその燃料棒のガンマ線強度に対する前記平面に平行で前記第1コリメータに近づく方向に前記燃料集合体から外部に放出されたガンマ線強度の比をj番目の前記測定角でのその燃料棒の応答Rijとして求める応答予測工程、をさらに有し、
前記第1コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒の本数はN1、前記第2コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒の本数はN2、前記測定角の数はMであって、i番目の前記燃料棒が放出するガンマ線強度をG、前記第1コリメータを通過するガンマ線の検出効率に対する前記第2コリメータを通過するガンマ線の検出効率の比をkとしたときに、
前記第1演算工程は、
【数13】

を最小二乗法を用いて解いて求める工程であり、
前記第2演算工程は、
【数14】

を最小二乗法を用いて解いて求める工程であることを特徴とする請求項1に記載のガンマ線強度分布測定方法。
【請求項3】
前記測定角は、それぞれの前記燃料棒の応答が極大となる角度から所定の範囲内の角度を含むことを特徴とする請求項1に記載のガンマ線強度分布測定方法。
【請求項4】
前記燃料集合体は角筒状のチャンネルボックスを装着されていて、
前記回転測定工程は、前記第1コリメータに垂直な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第1および第2距離測定工程と、前記第1コリメータおよび前記回転軸に平行な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第3および第4距離測定工程と、前記第1および第2距離測定工程で測定した距離および前記第3および第4距離測定工程で測定した距離に基づいて前記第1コリメータおよび前記第2コリメータに対する前記中心軸の位置および前記燃料集合体の前記回転軸の周りの回転角を算出する角度算出工程と、を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガンマ線強度分布測定方法。
【請求項5】
複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の中心軸に垂直な面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定装置において、
前記燃料集合体を支持して前記軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる支持回転機と、
前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さであり前記平面に平行なガンマ線を通過させる第1コリメータと、前記第1コリメータ通過するガンマ線の強度を測定する第1ガンマ線検出器と、前記回転軸を含む平面からの距離が第1長さよりも小さい第2長さであり前記平面に平行なガンマ線を通過させる第2コリメータと、前記第2コリメータを通過するガンマ線の強度を測定する第2ガンマ線検出器と、を備えたガンマ線測定器集合体と、
前記測定角の数が前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出するガンマ線を放出する前記燃料棒であって前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出するガンマ線を放出する前記燃料棒ではないものの本数以上となるように繰り返し前記支持回転機に前記燃料集合体を前記回転軸の周りに回転させて前記第1ガンマ線検出器および前記第2ガンマ線検出器にガンマ線の強度を測定させる測定制御器と、
前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度に基づいて算出し、前記第2ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記第2ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度および前記第1ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布に基づいて算出する分布演算器と、
を有することを特徴とするガンマ線強度分布測定装置。
【請求項6】
複数の燃料棒を束ねて角筒状のチャンネルボックスを装着された燃料集合体の中心軸に垂直な平面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定方法において、
前記燃料集合体を前記回転軸の周りの測定角に回転させる回転工程と、この回転工程の後に前記中心軸に平行な平面に平行なコリメータを通過するガンマ線強度を測定する測定工程と、前記コリメータに垂直な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第1および第2距離測定工程と、前記コリメータおよび前記回転軸に平行な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第3および第4距離測定工程と、前記第1および第2距離測定工程で測定した距離および前記第3および第4距離測定工程で測定した距離に基づいて前記コリメータに対する前記燃料集合体の中心軸の位置および前記燃料集合体の前記回転軸の周りの回転角を算出する角度算出工程とを、前記測定角の数が前記コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上となるように繰り返す回転測定工程と、
前記コリメータを通過して測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を、前記コリメータを通過して測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数以上の前記測定角で前記コリメータを通過したガンマ線強度に基づいて算出する演算工程と、
を有することを特徴とするガンマ線強度分布測定方法。
【請求項7】
複数の燃料棒を束ねた燃料集合体の軸に垂直な平面内でのそれぞれの前記燃料棒が放出するガンマ線強度の分布を測定するガンマ線強度分布測定装置において、
前記燃料集合体を支持して前記燃料集合体の軸に平行な回転軸の周りの測定角に回転させる支持回転機と、
前記回転軸を含む平面に平行なガンマ線を通過させるコリメータと、前記コリメータを通過するガンマ線の強度を測定するガンマ線検出器と、
前記コリメータに垂直な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第1および第2距離測定器と、前記コリメータおよび前記回転軸に平行な平面内の2点から前記チャンネルボックスの側面までの距離を測定する第3および第4距離測定器と、を備えたガンマ線測定器集合体と、
前記第1および第2距離測定器で測定した距離および前記第3および第4距離測定器で測定した距離に基づいて前記コリメータに対する前記燃料集合体の中心軸の位置および前記燃料集合体の前記回転軸の周りの回転角を算出し、前記測定角の数が前記第1ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数および前記第2ガンマ線検出器で測定されるガンマ線を放出する前記燃料棒の本数の少なくない方以上となるように繰り返し前記支持回転機に前記燃料集合体を前記回転軸の周りに回転させて前記ガンマ線検出器にガンマ線の強度を測定させる測定制御器と、
前記ガンマ線検出器で測定されたガンマ線を放出した前記燃料棒のそれぞれのガンマ線強度の分布を前記ガンマ線検出器で測定されたガンマ線強度に基づいて算出する分布演算器と、
を有することを特徴とするガンマ線強度分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−2406(P2011−2406A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147308(P2009−147308)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】