説明

ガードレール用ビーム材及びその連結構造

【課題】互いに隣接するビーム材につき、山部と谷部とを重ね合わせた継手部分の間隙に金属片が差し込まれるようにして付着されるのをより効果的に防止する。
【解決手段】所定の間隔をおいて立設される支柱にビーム材42が接合された道路用防護柵の、互いに隣接する2枚の波形のビーム材42がその山部61と谷部62とを重ね合わせた状態で長手方向に連結する際に、ビーム材42の左右両端は、水平方向に対して互いに同一傾斜角で斜めに、かつ直線状に切断されている状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードレール等の道路用防護柵の連結構造に関し、特に道路用防護柵に接触する走行車両から剥離した金属片の付着を防止する際に好適な道路用防護柵の連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般道路や高速道路等に設けられる道路用防護柵として、ガードレール等が従来から多数設置されている。これらの道路用防護柵は、進行方向を誤った車両が路外、対向車線または歩道等に逸脱するのを防ぐとともに、車両乗員の傷害および車両の破損を最小限にとどめて、車両を正常な進行方向に復元させることを目的とし、また、歩行者および自転車の転落もしくはみだりな横断を抑制するなどの目的を備えている。
【0003】
一般にガードレールは、所定の間隔を存して立設された支柱に金属製の波形状のビーム材が取り付けられている。例えば、図9に示すように、このビーム材113は、固定ボルト118とナット119によってブラケット51を介して支柱117に固定されている。
【0004】
ところで、このようなガードレールに対して、金属片が付着するケースが全国各地で多数確認されている。この金属片は、ガードレールに衝突した走行車両の一部が剥離して付着したものであって、例えば図10に示すように、鋭利な刃物状の金属片が車道側に突き出した状態で付着している。この金属片は、図10(a)に示すように、隣接するビーム材113を互いに長手方向へ連結するためのボルト121頭部とビーム材113との間隙に差し込まれるようにして付着されている場合もある。
【0005】
ビーム材113同士を接続するためのボルト(図10(a)に示すボルト121)頭部と、ビーム材との間に車体の表面の一部が剥離して金属片として引っ掛かるのを防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に示す開示技術では、ビーム表面の取付けボルト周りに凸形状を成型し、ボルトとビーム表面の隙間を埋没させ車輌等の車体の引っ掛かりを起し難くしている。
【0006】
上述のようにボルト121頭部とビーム材113との間隙に金属片が付着している場合に加え、さらに図10(b)に示すように、互いに隣接するビーム材113につき、山部と谷部(なお、ここでいう谷部とはビーム裏面の谷面を指す)とを重ね合わせた継手部分131の間隙に金属片が差し込まれるようにして付着されている場合もある。この図10(b)に示すような金属片の付着は下記の理由により生じるものと考えられる。
【0007】
ガードレールは、ビーム材113a、113bを接続する場合、両者を支柱117の道路側に互いに重ね合わせてブラケットを介して、ボルトとナットにより接合されて連結される。自動車の走行方向は、図10(b)中矢印Aで示されるように車道側のビーム材113aが配設されている方向から、路肩側のビーム材113bが配設されている方向となるように接続される。このため、継手部分131の間隙が一般的に自動車の走行方向Aと対面する形で形成されることはないので、通常は、上述のように自動車から剥離した金属片が、ビーム材113aとビーム材113bとの接続部に付着することはあり得ない。
【0008】
しかしながら、走行する自動車が反対側の車線に飛び出して走行したり、障害物を避けようと反対側に寄り過ぎて、ガードレールのビーム材113と接触し、接続部のビーム材113bを押し付けることによって、ビーム材113bとビーム材113aとの接触部に間隙が生じ、この生成された間隙に接触しながらB方向へと走行する自動車の車体の一部が剥離して金属片として突き刺さり、付着する状態となっている。
【0009】
このような金属片の付着を防止するべく、例えば特許文献2に示すような技術が開示されている。この特許文献2では、ビーム材とビーム材との重ね合わせ部分における路肩側のビーム表面に凸条または多数の突起を形成し、重ね合わせの間隙を覆い隠すことにより、車体の引っ掛かりの防止を図ろうとしている。
【0010】
しかしながら、このような凸条または多数の突起を各ビーム材について成型するのは、過大な労力が必要となり、ひいては製造コストを大幅に上昇させてしまうという問題点があった。
【特許文献1】実用新案登録第3114808号公報
【特許文献2】実用新案登録第3114823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、互いに隣接するビーム材につき、山部と谷部とを重ね合わせた継手部分の間隙に金属片が差し込まれるようにして付着されるのをより効果的に防止するとともに、製造に必要な労力やコストを大幅に改善することが可能な道路用防護柵の連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る道路用防護柵の連結構造は、上述した課題を解決するために、互いに隣接する2枚の波形のビーム材の左右両端は、水平方向に対して互いに同一傾斜角で斜めに、かつ直線状に切断することにより、自動車に対して点接触させる構成としている。
【0013】
即ち、本発明に係るガードレール用ビーム材は、山部と谷部が交互に形成されて波形状のビーム材の長手方向両端部に連結用ボルト孔を備えたガードレール用ビーム材であって、上記ビーム材の長手方向左右両端は、水平方向に対して互いに同一傾斜角で斜めに切断されていることを特徴とする。
【0014】
このとき、ビーム材の左右両端は、直線状に切断されているようにしてもよい。
【0015】
また、このとき、ビーム材の左右両端は、40〜75°の傾斜角をもって斜めに切断されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明を適用した連結構造においては、所定の間隔をおいて立設される支柱にビーム材を接合する際に、互いに隣接する2枚の波形のビーム材がその山部と谷部とを重ね合わせた状態で長手方向に連結させ、ビーム材の左右両端は、互いに同一傾斜角θで斜めに、かつ直線状に切断されているように構成される。これにより、自動車がこの右端に接触してきた場合においても、これに点接触するに過ぎず、間隙部分に車体が引っ掛かることもなくなるため、金属片の付着を効果的に防止することが可能となる。しかも本発明を適用した連結構造においては、ビーム材を製作する際に、斜め方向に直線状に切断していけばよいため、既存の製造設備を生かすことができ、製作に伴う労力の負担を軽減でき、ひいては製造コストを大幅に低減させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
本発明を適用した道路用防護柵の連結構造は、一般道路や高速道路等に設けられるガードレールに適用される。図1(a)は、本発明を適用した連結構造にかかるガードレールの継手部1を表す斜視図を、また図1(b)はその側面図を示している。
【0019】
ガードレール4は、所定の間隔をおいて道路に沿って立設される支柱41と、この立設された支柱41間において架設される金属性の波形のビーム材42とを備えている。支柱41は、鋼管からなり、ブラケット51がボルト44a、ナット44bで取り付けられる。このブラケット51には、ビーム材42がボルト43とナット44により螺着される。即ち、支柱41とビーム材42とは、互いにブラケット51を介して固定されることになる。
【0020】
ビーム材42は、支柱41付近において隣接する他のビーム材42と、長手方向へ向けて連結されることになる。かかる連結時においては、互いに隣接するビーム材42につき、山部と谷部とを重ね合わせ、互いのボルト用連結孔71に対してボルト48を挿通させ、さらにナット49を螺着させることにより固定することになる。
【0021】
このようにして、ブラケット51の前面に当接された隣接する2枚のビーム材42は、長手方向に沿ってほぼ連続した外観を形成する。
【0022】
次に、このような構成からなるガードレール4に適用される、本発明に係る連結構造1の構成について図1、2を用いて説明をする。
【0023】
連結構造1は、互いに隣接するビーム材42の連結部分に対して適用されるものである。各ビーム材42は、2つの山部61の間に谷部62が形成されてなり、各山部61にはそれぞれ2つのボルト用連結孔71が穿設されてなり、また谷部62においても2つのボルト用連結孔71が穿設されている。これらのボルト用連結孔71に上述したボルト43、48が挿通されることになる。また、ビーム材42の左端42a並びに右端42bは、水平方向に対して互いに同一傾斜角で斜めに、かつ直線状に切断されている。
【0024】
即ち、ビーム材42は、図3に示すように左端42aと右端42bが水平方向に対して同一傾斜角θで構成されているため、正面から見た形状としては略平行四辺形状となるように構成される。因みに、この傾斜角θは、水平方向から鉛直方向にかけての角度であり、勾配が急峻であるほど傾斜角θは大きくなり、勾配が緩やかであるほど傾斜角θは小さくなる。
【0025】
このようなビーム材42を製作する際には、鋼板を折り曲げ加工することにより、山部61と谷部62を形成し、その後、水平方向に対して傾斜角θで斜めに、かつ直線状に切断する。このようなプロセスを経ることにより、上述の如き左端42aと右端42bとからなるビーム材42を得ることが可能となる。
【0026】
なお、このビーム材42を製作する際には、最初に鋼板を上記傾斜角θで斜めにかつ直線状に切り落とし、その後折り曲げ加工することにより山部61と谷部62とを構成するようにしてもよい。この場合、成形後のビーム材は斜めに一直線とはならないが、ほぼ一直線に近い形状となるので、この方法でもよい。
【0027】
このように傾斜角θで斜めに切断された左端42a、右端42bを持つビーム材42を図2に示すようにその山部と谷部とを重ね合わせた状態で長手方向に連結されている。ビーム材42は、同一傾斜角で斜めに切断された左端42aと右端42bを有しており、しかもこの傾斜角は左斜め下に配向されている。このため、ガードレール4に対してB方向から接触してくる自動車は、上側の山部61aに最初に接触してくることになる。
【0028】
図4(a)は、上側の山部61aを正面から視認した拡大図である。この山部61aにおいて、右端42bが左斜め下に向けて形成されている結果、B方向へ走行する自動車は、この山部61aに接触する際に、右端42bの右上から左下へと図中矢印c方向に沿って擦っていくことになる。
【0029】
図4(b)は、図4(a)におけるラインaの断面構成を示している。自動車A11がこのようなラインaに接触する際には、右端42bに対して点接触してくる。これは自動車A11の側面は流線型で構成されていることにも基づく現象である。
【0030】
図4(c)は、図4(a)におけるラインaの断面構成を示している。自動車A11がこのようなラインaに接触する際には、右端42bに対しても同様に点接触してくる。即ち、山部61aに対して右端42bが左斜め下に向けて形成されている結果、これに接触してくる自動車A11は、右端42bに対してc方向に向けて常時点接触してくることになる。このため、自動車A11が右端42bに接触してきてもこれに伴って車体の点接触位置が車体下部方向へ移動し、車体が剥離するのを防止することが可能となる。
【0031】
また車体の側面は、図5に示すように、フェンダー22と前部座席用のドア23と、後部座席用のドア24により構成されている。このとき、フェンダー22とドア23の隙間25、ドア23とドア24の隙間26、或いはドア24と後部座席パネル28との隙間27は、略鉛直方向へ向けて直線状に形成されている。特にこの車体から金属片が剥離する場合には、この隙間25〜27が起点となる。
【0032】
図6(a)は、上側の山部61aを正面から視認した拡大図である。この山部61aにおいて、右端42bが左斜め下に向けて形成されている結果、B方向へ走行する自動車における隙間25〜27は、この山部61aに接触する際に、右端42bの右上から左下へと図中矢印c方向に沿って擦っていくことになる。
【0033】
隙間25〜27は、略鉛直方向へ向けて直線状に形成されているため、この左斜め下に向けて形成されている右端42bとは互いに平行になることはなく、図6(b)に示すように常に点接触の状態で擦っていくことになる。このため、この隙間25〜27から剥離が生じるのを防止することが可能となる。
【0034】
このように、本発明を適用した連結構造1においては、所定の間隔をおいて立設される支柱41にビーム材42を接合する際に、互いに隣接する2枚の波形のビーム材42がその山部61と谷部62とを重ね合わせた状態で長手方向に連結させ、ビーム材42の左右両端42a、42bは、互いに同一傾斜角θで斜めに、かつ直線状に切断されているように構成される。これにより、自動車がこの右端42bに接触してきた場合においても、これに点接触するに過ぎず、間隙部分に車体が引っ掛かることもなくなるため、金属片の付着を効果的に防止することが可能となる。しかも本発明を適用した連結構造1においては、ビーム材42を製作する際に、斜め方向に直線状に切断していけばよいため、既存の製造設備を生かすことができ、製作に伴う労力の負担を軽減でき、ひいては製造コストを大幅に低減させることが可能となる。
【0035】
なお、本発明においては、この傾斜角θを40°〜75°で構成することが望ましい。その理由として、この傾斜角θが75°を超えてしまうと、自動車に対して点接触するのではなく、線接触してしまう可能性が生じ、金属片の付着を効果的に防止することができなくなる。これに対して、傾斜角θが40°を下回ると、その分鋼材の消費量が増加することから製造コストの上昇を招くことになる。傾斜角θが小さいほど金属片の付着防止効果は改善することができるが、図7(a)に示すように右端42bの左上がボルト用連結孔71から離間した構成となってしまう。その結果、右端42bの左上部分の固定性が悪化し、隣接する他のビーム材42との間で間隙が生じやすくなってしまう。このため、この傾斜角θの下限を40°とした。なお、この傾斜角θは、金属片の付着防止、製造性や固定性の整合性を考慮した場合に70°前後で構成されていることが望ましい。
【0036】
因みに、ビーム材42におけるボルト用連結孔71は、図7(b)に示すように、右端42bの切断方向に沿って、その形成位置がシフトされていてもよい。右端42bに最も近接するボルト用連結孔71と右端42bとの間における水平方向の間隔をrとしたとき、各ボルト用連結孔71はこのrが一定となるように位置がシフトされた状態で構成されていてもよい。これにより、傾斜角θが小さくなり、勾配がより緩やかになる場合であっても、ボルト用連結孔71と離間することがなくなり、ひいては固定性を向上させることも可能となる。またボルト用連結孔71をこのように配置することによって、鋼材の消費量を軽減でき、製造コストを低減することも可能となる。
【0037】
なお、上述した実施の形態においては、あくまでビーム材42の左端42a並びに右端42bが左斜め下に配向している場合を例に挙げて説明をしたが、これに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、ビーム材42の左端42a並びに右端42bが右斜め下に配向している場合であっても、同様の効果を得ることができることは勿論である。
【0038】
また、本発明を適用したビーム材は、鋼材の歩留まりを考慮し、ビーム材42の両端を同一傾斜角にしたが、ビームを重ね合わせた際、車道側のビーム材42端部のみに傾斜をつけても同様な効果を得ることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、本発明に係る連結構造が適用されるガードレールの斜視図であり、(b)は、かかるガードレールの全体構造の側面図である。
【図2】本発明を適用した連結構造の構成について説明をするための図である。
【図3】本発明に係る連結構造に適用されるビーム材の全体構成について示す図である。
【図4】本発明を適用した連結構造の作用効果について説明するための図である。
【図5】車体の側面の例を示す図である。
【図6】本発明を適用した連結構造の作用効果について説明するための他の図である。
【図7】本発明を適用した連結構造の他の構成例を示す図である。
【図8】ビーム材の左端並びに右端が右斜め下に配向している場合につき示す図である。
【図9】一般的なガードレールの側面図である。
【図10】ガードレールに金属片が付着する事例につき説明するための図である。
【符号の説明】
【0040】
1 継手部
4 ガードレール
41 支柱
42 ビーム材
42a ビーム材の左端
42b ビーム材の右端
43 ボルト
44 ナット
48 ボルト
49 ナット
51 ブラケット
61 山部
62 谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部と谷部が交互に形成されて波形状のビーム材の長手方向両端部に連結用ボルト孔を備えたガードレール用ビーム材であって、
上記ビーム材の長手方向左右両端は、水平方向に対して互いに同一傾斜角で斜めに切断されていることを特徴とするガードレール用ビーム材。
【請求項2】
上記ビーム材の左右両端は、直線状に切断されていることを特徴とする請求項1記載のガードレール用ビーム材。
【請求項3】
上記ビーム材の左右両端は、40〜75°の傾斜角をもって斜めに切断されていることを特徴とする請求項1又は2記載のガードレール用ビーム材。
【請求項4】
上記ビーム材の端部から同一長さの間隔で長手方向に少なくとも1列からなるボルト用連結孔が左右両端部にそれぞれ穿設してなる請求項1〜3のうち何れか1項記載のガードレール用ビーム材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のガードレール用ビーム材を隣接するガードレール用ビーム材に対してビーム材の長手方向に所定の間隔を設けてその端部で2枚重ねて、ボルト接合してなるガードレール用ビーム材の連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−262723(P2007−262723A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88062(P2006−88062)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【Fターム(参考)】