説明

ガーネット型単結晶、それを用いた光学部品およびその関連機器

【課題】真空紫外域における透過率が向上したガーネット型単結晶、それを用いた光学部品およびその関連機器を提供すること。
【解決手段】一般式A12(陽イオンの占めるサイトが、A、B、Cの3サイトである結晶構造を有し、AはAサイトを占める元素を示し、BはBサイトを占める元素を示し、CはCサイトを占める元素を示し、Oは酸素原子を示す。)で表されるガーネット型単結晶であって、前記酸素原子と置換するかまたは酸素欠損を埋めるかのいずれか一方または両方を行う元素としてフッ素を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式A12(陽イオンの占めるサイトが、A、B、Cの3サイトである結晶構造を有し、AはAサイトを占める元素を示し、BはBサイトを占める元素を示し、CはCサイトを占める元素を示し、Oは酸素原子を示す。)で表されるガーネット型単結晶、それを用いた光学部品およびその関連機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子デバイスの高集積化および動作速度の高速化が要求されており、これらの要求に応えるためにパターンの微細化技術の発展が目覚しいものとなっている。パターンの微細化技術には液浸露光技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載された液浸露光装置の概略構成を示す図である。
【0004】
液浸露光装置は、少なくとも、露光光源ArFエキシマレーザを含む照明光学系1と、レチクル(マスク)Rと、投影光学系PLと、液体供給装置5と、液体回収装置6とを備えている。この液浸露光装置では、レチクルRのパターン像をウェハW上に転写している間、ウェハWの表面と投影光学系PLのウェハW側の光学素子4との間は液体7で満たされている。
【0005】
光学素子4は、ArFエキシマレーザの波長193nmの光に対する屈折率が1.60〜1.66の範囲の液体と、波長193nmの光に対する屈折率が2.10〜2.30の範囲にある基材(レンズ)と、基材の液体と接する面上に形成された反射防止膜とを備えている。上記液体にはデカリン(C1018)が、上記基材にはガーネット(ルテチウムアルミニウムガーネット[LuAl12:LuAG]、ゲルマネートなど)およびスピネルセラミック(MgAlなど)が、反射防止膜には金属酸化物層とフッ化物層との積層膜が用いられる。このような構成により、ArFエキシマレーザによる光が液体と基材との間で反射することが抑制され、高解像度の液浸露光装置が達成される。
【0006】
一方、液浸露光装置の解像度は、ウェハW上に配置されるレジストの屈折率と、光学素子4の基材(レンズ)の屈折率と、液体の屈折率とのうち、屈折率の小さい材料に依存することが知られている。屈折率1.7を超えるレジスト、屈折率1.6を超える液体が開発されており、1.7以上の屈折率を有する基材が必要とされている。
【0007】
特許文献1には、屈折率2.1〜2.30の基材としてLuAGなどを用いることが記載されているが、露光光源の光(特許文献1では波長193nm)に対する透過率が十分でないため、反射率低減を抑制する反射防止膜を用いることが必要となる。このような反射防止膜の付与には公知の物理的または化学的蒸着法が採用されるため、プロセスが複雑になるとともに、コストの上昇につながる。したがって、反射防止膜を不要とする基材が望まれる。
【0008】
【特許文献1】特開2008−113004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような事情に鑑みて、本発明は、真空紫外域における透過率が向上したガーネット型単結晶、それを用いた光学部品およびその関連機器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の特徴を有している。
第1の発明は、一般式A12(陽イオンの占めるサイトが、A、B、Cの3サイトである結晶構造を有し、AはAサイトを占める元素を示し、BはBサイトを占める元素を示し、CはCサイトを占める元素を示し、Oは酸素原子を示す。)で表されるガーネット型単結晶であって、前記酸素原子と置換するかまたは酸素欠損を埋めるかのいずれか一方または両方を行う元素としてフッ素を含有していることを特徴としている。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明の特徴において、前記フッ素の含有量が5mol%以下であることを特徴としている。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明の特徴において、前記Aサイトを占める元素、前記Bサイトを占める元素、前記Cサイトを占める元素と置換するかまたは欠損を埋めるかのいずれか一方または両方を行う元素として、1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択され、かつ、電気陰性度が1.35以下である元素を含有していることを特徴としている。
【0013】
第4の発明は、上記第3の発明の特徴において、前記1価の元素はLiであることを特徴としている。
【0014】
第5の発明は、上記第3の発明の特徴において、前記2価の元素はMgまたはCaのいずれか一方または両方であることを特徴としている。
【0015】
第6の発明は、上記第1ないし第5のいずれか一つの発明の特徴において、前記ガーネット型単結晶は、YAl12、LuAl12および(Y1−xLuAl12(0<x<1)からなる群から選択される単結晶であることを特徴としている。
【0016】
第7の発明は、真空紫外域における光を透過させる光学部品であって、上記第1ないし第6のいずれか一つの発明の特徴を有するガーネット型単結晶から形成されていることを特徴としている。
【0017】
第8の発明は、真空紫外域における光を透過させる光学部品を有する半導体関連機器であって、前記光学部品が上記第7の発明の特徴を有する光学部品であることを特徴としている。
【0018】
第9の発明は、真空紫外域における光を透過させる光学部品を有する光学関連機器であって、前記光学部品が上記第7の発明の特徴を有する光学部品であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガーネット型単結晶はフッ素を含有するものであり、フッ素は、ガーネット型単結晶中の酸素原子と置換する、および/または、酸素欠損を埋める。フッ素が単結晶中の酸素原子と置換することにより、フッ素の最大電気陰性度により単結晶のバンドギャップが増大する。その結果、単結晶の吸収端が短波長側にシフトし、真空紫外域の透過率が向上する。また、フッ素が単結晶中の酸素欠損を埋めることにより、結晶中の欠陥によって生じる吸収端近傍(真空紫外域)における透過率が向上する。
【0020】
また、ガーネット型単結晶は屈折率が高いことが知られているため、液浸露光装置のレンズに加え、プリズムおよび窓材などの光学部品にも適用可能である。これらの光学部品は、液浸露光装置および干渉計などの半導体関連機器ならびにデジタルカメラを含む撮像装置および顕微鏡などの光学関連機器に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明のガーネット型単結晶、それを用いた光学部品およびその関連機器について、図面を参照しながら説明する。本発明者らは、透過スペクトルにおける吸収端のシフトおよび欠陥密度の制御を利用することによって、既存のガーネット型単結晶の透過率が向上することを見出し、本発明を完成している。
【0022】
本明細書においてガーネット型単結晶とは、一般式A12で表される結晶構造を有する化合物からなる単結晶である。ここで、AはAサイトを占める元素(以下、A元素)であり、BはBサイトを占める元素(以下、B元素)であり、CはCサイトを占める元素(以下、C元素)であり、Oは酸素原子である。つまり、ガーネット型単結晶には、陽イオンの占めるサイトが、Aサイト、BサイトおよびCサイトの3箇所あり、各サイトには複数種のイオンの固溶が許容される。このため、種々の組成を有するガーネット型単結晶が構成される。このようなガーネット型単結晶の材料設計は、たとえば、LANDOLT−BORNSTEIN Group III, 12a (Garnets and Perovskites), p.p. 22 (1.1.3 : Lattice parameters of garnets), Springer−Verlag Berlin, Heidelberg, New York, 1978に記載された組成と構造との関係式などを参照して行うことができる。
【0023】
特に、半導体関連機器である液浸露光装置のレンズ(光学部品)として用いる場合には、A元素は、La、Gd、YおよびLuからなる群から少なくとも1つを選択することができ、B元素は、Lu、Sc、GaおよびAlからなる群から少なくとも1つを選択することができ、C元素は、Gaおよび/またはAlとすることができる。当然のことであるが、AサイトとBサイトとが同じ元素であってよく、また、BサイトとCサイトとが同じ元素であってもよい。これらの元素群から選択される場合、屈折率が高い単結晶が得られる。
【0024】
中でも、合成および実用性の観点からは、A元素がYであり、B元素およびC元素がAlであるYAl12(以下、YAG)、A元素がLuであり、B元素およびC元素がAlであるLuAl12(以下、LuAG)、ならびに、A元素がYとLuとであり、B元素およびC元素がAlである(Y1−xLu)Al12(0<x<1)(以下、YLuAG)が好ましいものとして例示される。
【0025】
本発明者らは、ガーネット型単結晶の透過率、特に、真空紫外域(真空紫外域とは10nm〜200nmの範囲であり、中でも190nm〜200nmの範囲)の透過率の向上を目指し、ガーネット型単結晶の透過スペクトルの吸収端および結晶中の欠陥に注目した。
【0026】
図1は、YAGの透過スペクトルを例示した図である。
【0027】
YAGはガーネット型単結晶の代表例であり、図1は、公知の単結晶育成方法により作製されたYAGの例示的な透過スペクトルを示している。図1に示した透過スペクトルから、YAGの吸収端は、液浸露光装置の光源の波長193nm近傍にあることが分かる。また、波長193nmにおけるYAGの透過率は、約25%と低く、実用的ではないと理解される。さらに、図1図中に楕円で囲んで示したように、透過スペクトルはショルダーを示しており、このことは、単結晶の結晶構造が高い欠陥密度を有していることを示唆している。本発明者は、このような透過スペクトルから、吸収端および欠陥に注目し、透過率を改善したのである。
【0028】
(1)吸収端のシフト
図1に示した透過スペクトルにおいて、吸収端を矢印で示す短波長側にシフトさせることができれば、真空紫外域における透過率を向上させることができる。詳細には、吸収端はバンドギャップと相関しており、簡易的に式E=hc/λ(ここで、Eはバンドギャップ、hcは光子エネルギー、λは吸収端の波長)で表される。吸収端の波長λを短波長化すれば、バンドギャップは増大することになる。したがって、ガーネット型単結晶の透過率を向上させるためには、ガーネット型単結晶のバンドギャップを増大させればよく、バンドギャップを増大させるためには、ガーネット型単結晶における陽イオンと陰イオンとの電気陰性度差が増大すればよいと考えられる。
【0029】
表1にPaulingの電気陰性度を示した。表1の値は、J. E. Huheeyらの“Inorganic Chemistry −principles of structure and reactivity”, 4th ed. (Hapere Collins, New York, 1993)より抜粋したものである。
【0030】
【表1】

【0031】
本発明のガーネット型単結晶はフッ素(F)を含有するものであり、フッ素は、表1に示したように、最も大きな電気陰性度を有している。フッ素のイオン半径は、Oのイオン半径よりも小さいので、ガーネット型単結晶中のOと容易に置換し、ガーネット型単結晶における陽イオンと陰イオンとの電気陰性度差を増大させる。その結果、フッ素を含有するガーネット型単結晶の透過率が向上する。
【0032】
フッ素の含有量は、好ましくは、5mol%以下である。わずかでもFがOと置換されれば、バンドギャップが増大し、吸収端が短波長側にシフトするので、真空紫外域における透過率が向上する。フッ素の含有量が5mol%より多いと、結晶構造が維持できない恐れがあり、好ましくない。
【0033】
また、本発明のガーネット型単結晶は、好ましくは、フッ素に加えて、1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択され、かつ、電気陰性度が1.35以下である元素を含有するものである。これらの1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択される元素は、ガーネット型単結晶中の陽イオン元素(A元素、B元素およびC元素)と置換する。上記選択元素の電気陰性度は1.35以下であるので、ガーネット型単結晶における陽イオンと陰イオンとの電気陰性度差を増大させることができる。電気陰性度が1.35より大きい場合には、電気陰性度差が低下するので、好ましくない。より好ましくは、イオン半径および電気陰性度の観点から、1価の元素にはLiが、2価の元素にはCaが例示される。
【0034】
なお、上記選択元素の含有量は、好ましくは、0mol%以上5mol%以下とすることができる。ガーネット型単結晶には少なくともフッ素が含有されればよいので、ガーネット型単結晶は、上記選択元素を必ずしも含有するものではない。含有する場合には、5mol%より多いと結晶構造が維持できない恐れがあり、好ましくない。
【0035】
(2)欠陥濃度の制御
図1を参照して上記の通りに説明したように、透過スペクトルにおけるショルダーは、単結晶中の結晶構造の不完全性、すなわち、欠陥(酸素欠損および陽イオン欠陥)に起因している。欠陥濃度を低下させることによって、透過スペクトルにおけるショルダーが消失し、透過率が向上するものと考えられる。
【0036】
本発明のガーネット型単結晶は、上記の通り、フッ素(F)を含有するものであり、フッ素は、Oよりもイオン半径が小さいため、酸素欠陥を容易に埋めることができる。その結果、透過スペクトルにおけるショルダーが消失し、透過率が向上する。フッ素の含有量は、上記の通り、好ましくは5mol%以下である。
【0037】
また、本発明のガーネット型単結晶は、好ましくは、フッ素に加えて、1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択される元素を含有するものである。これらの1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択される元素は、ガーネット型単結晶の陽イオンサイト(Aサイト、BサイトおよびCサイト)の陽イオン欠陥を容易に埋めることができる。中でも、イオン半径の観点から、好ましくは、1価の元素にはLiが、2価の元素にはMgが例示される。また、選択元素は、基本的には置換可能な任意の元素が適用可能であるが、上記(1)に示した吸収端の短波長側へのシフトを考慮すれば、表1に示した電気陰性度が1.35以下の元素が好ましい。したがって、選択される1価の元素としては好ましくはLiが、2価の元素として好ましくはMgまたはCaのいずれか一方または両方が例示される。
【0038】
本発明のガーネット型単結晶は、原料融液にフッ素源、または、フッ素源および選択された元素源を含む以外は、たとえばチョクラルスキー(CZ)法などの公知の結晶成長法によって製造することができる。フッ素源は、ガーネット型単結晶を構成するA元素とフッ素との化合物、B元素とフッ素との化合物、C元素とフッ素との化合物、これらの混合物、および、フッ素を含有するガスからなる群から選択することができる。たとえば、A元素がYである場合には、フッ素源としてYFが採用される。フッ素を含有するガスとは、たとえば、ArまたはNの一部または全部を、CF、CH、CHF、CF、HF、Fなどのフッ素を含有するガスで置換したガスのことである。
【0039】
また、元素源は、選択される元素単体からなる材料、選択される元素の酸化物、ガーネット型単結晶を構成するA元素と選択される元素との化合物、B元素と選択される元素との化合物、C元素と選択される元素との化合物、これらの混合物、および、これらのフッ化物からなる群から選択することができる。
【0040】
本発明のガーネット型単結晶は、透過スペクトルの吸収端が短波長側にシフトし、かつ酸素欠損が制御されているので、真空紫外域における透過率が向上する。このようなガーネット型単結晶は、液浸露光装置のレンズ(光学部品)、高い透過率を利用したレンズ材料などに好適である。
【0041】
以上には、ガーネット型単結晶のみについて詳述したが、上記原理は、一般的な酸化物材料(たとえば、(Mg、Zn)Al、CaAl、CaBおよびLiAlに代表される立方晶スピネル型結晶、立方晶ペロブスカイト型結晶、MgO、(Mg,Zn)O、LiNbO、LiTaO、MgドープLiNbO、MgドープLiTaO、Al、TiOなど)にも適用可能である。酸化物中の酸素のフッ素置換または酸素欠損のフッ素による充填のいずれか一方または両方によって、上記一般的な酸化物材料の透過率を向上させることができることは、明らかである。
【0042】
次に、実施例を示し、本発明のガーネット型単結晶についてさらに説明する。もちろん、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
フッ素を含有するガーネット型単結晶を製造した。ガーネット型単結晶として、一般式A12においてA元素がYであり、B元素およびC元素がAlである、YAl12(YAG)を用いた。ガーネット型単結晶はチョクラルスキー法により育成した。
【0044】
純度4NのY粉末と、Al粉末と、YF粉末とをモル比で2.9:5:0.2となるように秤量・混合し、プレス成形した。プレス成形した原料混合粉末をIrるつぼに充填し、セラミック製保温材に配置した。高周波誘導加熱によりIrるつぼを原料混合粉末の融点近傍である約2000℃まで加熱し、原料混合粉末を溶解させた。このとき、融液内のFは、0.2mol%であった。
【0045】
次に、あらかじめ成型され、シードホルダーに固定されたYAG種結晶を、融液に接触させ、融液に馴染ませるとともに温度調整を行った。その後、引き上げ速度1mm/hおよび結晶回転数10rpmで回転引き上げを行い、ガーネット型単結晶を育成した。
【0046】
このようにして得られたYAG単結晶を観察した。観察結果を図2に示した。また、得られたYAG単結晶をカット・研磨し、透過スペクトルを測定した。測定用の試料の厚さは1mmであった。測定結果を図3に示した。YAG単結晶の評価は後述の通りである。
<比較例1>
【0047】
実施例1において、YF粉末を用いない以外は同様の手順によって無添加YAG単結晶を製造した。得られた無添加YAG単結晶を実施例1と同様にカット・研磨し、透過スペクトルを測定した。測定結果を図3に併せて示した。
【0048】
図2は、実施例1で作製したフッ素を有するYAG単結晶の外観を示した写真である。
【0049】
図2に示したように、フッ素を添加しても、均質かつ無色透明のYAG単結晶が得られている(実施例1)。本発明のガーネット型単結晶は、製造に際し既存の結晶育成方法を適用することができ、実用化に近く有利である。
【0050】
図3は、実施例1および比較例1で測定したYAG単結晶の透過スペクトルを示した図である。
【0051】
図3に示したように、比較例1(無添加YAG)の透過スペクトルは、図1に示したYAGの透過スペクトルと同一である。また、図3に示した透過スペクトルから、フッ素を含有することによって透過スペクトルの吸収端は短波長側にシフトしていることが分かる。詳細には、実施例1のフッ素を含有するYAG単結晶(F添加YAG)の真空紫外域(特に波長193nm)における透過率(50%)は、比較例1の無添加YAGの透過率(25%)の2倍に向上している。したがって、高解像度の液浸露光装置の光学素子の基材としてF添加YAGを適用することにより、反射防止膜を不要にすることができ、コスト削減を図ることが可能となる。
【0052】
なお、原料の純度を4Nから6Nに高純度化するなど行うことにより、透過率のさらなる向上が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】YAGの透過スペクトルを例示した図である。
【図2】実施例1で作製したフッ素を含有するYAG単結晶の外観を示した写真である。
【図3】実施例1および比較例1で測定したYAG単結晶の透過スペクトルを示した図である。
【図4】特許文献1に記載された液浸露光装置の概略構成を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式A12(陽イオンの占めるサイトが、A、B、Cの3サイトである結晶構造を有し、AはAサイトを占める元素を示し、BはBサイトを占める元素を示し、CはCサイトを占める元素を示し、Oは酸素原子を示す。)で表されるガーネット型単結晶であって、前記酸素原子と置換するかまたは酸素欠損を埋めるかのいずれか一方または両方を行う元素としてフッ素を含有していることを特徴とするガーネット型単結晶。
【請求項2】
前記フッ素の含有量が5mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のガーネット型単結晶。
【請求項3】
前記Aサイトを占める元素、前記Bサイトを占める元素、前記Cサイトを占める元素と置換するかまたは欠損を埋めるかのいずれか一方または両方を行う元素として、1価の元素、2価の元素および3価の元素からなる群から少なくとも1つ選択され、かつ、電気陰性度が1.35以下である元素を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載のガーネット型単結晶。
【請求項4】
前記1価の元素はLiであることを特徴とする請求項3に記載のガーネット型単結晶。
【請求項5】
前記2価の元素はMgまたはCaのいずれか一方または両方であることを特徴とする請求項3に記載のガーネット型単結晶。
【請求項6】
前記ガーネット型単結晶は、YAl12、LuAl12および(Y1−xLuAl12(0<x<1)からなる群から選択される単結晶であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のガーネット型単結晶。
【請求項7】
真空紫外域における光を透過させる光学部品であって、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のガーネット型単結晶から形成されていることを特徴とする光学部品。
【請求項8】
真空紫外域における光を透過させる光学部品を有する半導体関連機器であって、前記光学部品が請求項7に記載の光学部品であることを特徴とする半導体関連機器。
【請求項9】
真空紫外域における光を透過させる光学部品を有する光学関連機器であって、前記光学部品が請求項7に記載の光学部品であることを特徴とする光学関連機器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−30804(P2010−30804A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192526(P2008−192526)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000208857)第一電通株式会社 (5)
【Fターム(参考)】