説明

キッチンペーパー

【課題】吸油性に優れるキッチンペーパーを提供する。
【解決手段】エンボス加工を施したシートを表裏面に配し、その表裏面のシートの少なくとも一方のシートが親油性油剤を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンペーパーに関し、特に、油分の吸収性に優れるキッチンペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
台所、調理場等においては、紙や不織布等からなる、いわゆるキッチンペーパーが広く使用されている。キッチンペーパーの用途は、食品の包装、煮物の落とし蓋、鮮魚等のドリップ吸収材、水きり、油漉し、揚げ物の過剰油分の吸収用途、台所周りの拭き掃除など多岐に渡るが、液吸収性は求められる重要な機能であり、従って、キッチンペーパーは、一般的に、エンボス加工を施したクレープ紙や不織布等のシートを適宜枚数積層して形成され、シート繊維間の空隙による毛管現象を主たる吸液機構として各シートのエンボス間の空隙に水分、油分等を取り込み保持するように構成される。
【特許文献1】特開2001−146665
【特許文献2】特開2005−132710
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来製品は粘度の低い水の吸収速度については十分な場合が多いが、油、特に水と比較して粘度が高い油の吸収速度については、十分ではない場合が少なくない。例えば、揚げ物を行う際に、余分な油を吸収すべく、揚げ物の取り上げるパット等にキッチンペーパーを敷くことがあるが、その際吸油速度が足らず、揚げ物からの油がシート上に溜まることが多々見られる。
そこで、本発明の主たる課題は、シート面での油の拡散性に優れ、シートの広範囲で油分を保持でき、もって油吸収量が多く、しかも、油がシート間空隙に迅速に移動される、キッチンペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明及び作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
複数のシートを積層してなり、かつ、表裏面を構成するシートにエンボス加工がなされているキッチンペーパーであって、
表裏面を構成するシートの少なくとも一方のシートが親油性油剤を含む、ことを特徴とするキッチンペーパー。
【0005】
<請求項2記載の発明>
表面を構成するシートが親油性油剤を含み、裏面を構成するシートが親油性油剤を含まないものである、請求項1記載のキッチンペーパー。
【0006】
<請求項3記載の発明>
表裏面を構成する各シートのエンボスの天部同士が対面するようにして積層されている、請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【0007】
<請求項4記載の発明>
表面を構成するシートのエンボスの天部と裏面を構成するシートのエンボスの底部とが対面するようにして積層されている、請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【0008】
<請求項5記載の発明>
親油性油剤をシート重量に対し1〜20重量%含む、請求項1〜4の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0009】
<請求項6記載の発明>
親油性油剤が、トリグリセリド又は炭化水素の少なくとも一方である、請求項1〜5の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【0010】
<請求項7記載の発明>
トリグリセリドが、炭素数6〜12の飽和脂肪酸からなる、請求項6記載のキッチンペーパー。
【0011】
<請求項8記載の発明>
炭化水素が、流動パラフィンである、請求項6記載のキッチンペーパー。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、表裏面の少なくとも一方のシートに親油性油剤を含有せしめたので、当該シートにおける親油性が高まり、もって油の拡散性及び吸油速度が高まる。
特に、表面シートが親油性油剤を含むものとし、裏面シートが親油性油剤を含まないものとすると、表面シートにおいて、油が迅速に拡散・吸収されるとともに、この表面シートを介してシート間空隙に取り込まれた油が裏面に抜けずに効果的に空隙間に保持される。
表裏面を構成する各シートのエンボスの天部同士が対面するようにして積層し、いわゆる「Tip to Tip」の形態とすると、表裏面シート間の空隙が大きくなり、嵩高となるとともに液保持量が高まる。また、表面を構成するシートのエンボスの天部と裏面を構成するシートのエンボスの底部とが対面するようにして積層し、いわゆる「Nested」の形態としても、「Tip to Tip」ほどではないが、表裏面シート間に空隙ができ、嵩高となるとともに液保持量を高めることができる。
前記親油性油剤は、好ましくはシート重量の1〜20重量%含有されているのがよく、また好適な前記親油性油剤は、トリグリセリド又は炭化水素の少なくとも一方である。
トリグリセリドとしては特に炭素数6〜12の飽和脂肪酸が適し、炭化水素としては特に流動パラフィンが適する。
以上から明らかなとおり本発明によれば、シート面での油の拡散性に優れ、シートの広範囲で油分を保持でき、もって油吸収量が多く、しかも、油がシート間の空隙に迅速に移動する、キッチンペーパーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次いで、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に詳述する。図1は、本形態のキッチンペーパーX1の断面拡大図である。これは「Tip to Tip」の形態である。
本形態のキッチンペーパーX1は、複数のシート1,2を積層してなり、表裏面を構成するシート1,2にエンボス加工がなされているとともに、その表面を構成するシート1に親油性油剤が含有せしめられている。裏面を構成するシート2には、親油性油剤は含有されていない。
また、このキッチンペーパーX1は、揚げ物などの過剰油分の吸収、高温の油の油こし等への利用を考慮して、200℃程度の高温の油分と接触しても、溶融・変性・変質することのない素材を用いて構成されている。
前記表裏面を構成するシート1,2のシート地は、不織布シート、薄葉紙、クレープ紙等であり、従来、キッチンペーパーに用いられているシート地の中から選択される。なお、表裏面シート1,2のシート地は同種とする必要はなく、適宜、必要に応じて異なるシート地を組み合わせた構成も採り得る。
【0014】
キッチンペーパーX1全体としての米坪は、柔軟性及び強度の点から15g/m2以上160g/m2以下であることが好ましい。更に好ましくは20g/m2以上50g/m2以下である。米坪が小さすぎると、強度不足となるとともにエンボスの効果が発現し難く、液保持性が低下する。他方、米坪が大きすぎると柔軟性が低下するとともに、適宜の大きさに折り曲げたりする時に剛度が大きく取り扱いにくくなる。
各シート1,2の米坪(目付け)は、柔軟性及び強度の点から5g/m2以上45g/m2以下であることが好ましい。更に好ましくは10g/m2以上40g/m2以下である。米坪が小さすぎると、シートに皺が入り易くなり、また、エンボスe,e…を鮮明・明瞭に付与したとしても崩れやすくなり、液保持性が低下する。他方、米坪が大きすぎると柔軟性が低下したり、折り曲げたりする時に剛度が大きく取り扱いにくくなる。
【0015】
シート地として、薄葉紙、クレープ紙等の紙素材を用いるのであれば、その原料パルプは、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチドケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0016】
これらの原料パルプを、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、クレープ加工パート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、エンボス付与前のシート地とする。
抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0017】
一方、シート地として、不織布シートを用いるのであれば、その原料繊維は、例えば、パルプ、コットン、レーヨン等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとαオレフィンとからなる結晶性プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ジオールとテレフタル酸/イソフタル酸等を共重合した低融点ポリエステル、ポリエステルエラストマー等のポリエステル樹脂;フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂から構成される熱可塑性繊維、生分解性合成繊維などから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
前記熱可塑性繊維は、単一成分の繊維でもよく、複数の樹脂を適宜組み合わせて構成される複合繊維、例えば並列型、鞘芯型、偏心鞘芯型、三層以上の多層型、中空並列型、中鞘芯型、異形鞘芯型、海島型等で且つ低融点樹脂が繊維表面の少なくとも一部を形成した構造の複合繊維とすることもできる。
吸水性を良好とするにはパルプ繊維を、柔らかさを良好とするためには熱可塑性繊維を用いるのがよい。好適には、天然繊維(好ましくはパルプ繊維)と熱可塑性繊維とを、90:10〜50:50の割合で混合した繊維を用いる。
【0018】
原料繊維からの不織布の製法としては、エアスルー、ヒートロールによるサーマルボンド、ニードルパンチ、スパンボンド、スパンレース、エアレイド等の製法が採用できるが、特に、スパンボンド、エアレイド、スパンレースが適する。
スパンレース法であれば、使用する繊維の繊維長は2〜100mm程とするのが好ましい。例えば、パルプ繊維の繊維長は、2mm以上10mm以下程度のものを使用することが好ましい。また、熱可塑性繊維の繊維長は20mm以上100mm以下であることが好ましい。更に好ましくは32mm以上70mm以下である。
用いる繊維の繊維太さは、1.0〜10.0dtex、好適には1.5〜7.5dtex、特に好適には2.0〜6.5dtexとする。繊維の太さが1.0dtex未満であると、乾燥時および湿潤時の引張強度が不足する。反対に10.0dtexを超えると剛性が高くなり、柔らかさに劣るようになる。
【0019】
他方、本形態のキッチンペーパーX1では、表面シートには、親油性油剤が含有されているのが望ましい。これにより表面シート1に油の拡散性・吸収速度の向上効果が付与される。親油性油剤は、好ましくはトリグリセリド又は炭化水素の少なくとも一方である。
トリグリセリドとしては特に炭素数6〜12の飽和脂肪酸からなるもの、なかでも中鎖脂肪酸が適する。飽和であることで酸化安定性に優れ、炭素数が6〜12とすることで適度な分子量でシート地への浸透性が良好となる。なお、単純な直鎖脂肪酸よりトリグリセリドの形態のほうが油の拡散・浸透性を高める効果に優れる。なお、親油性油剤としては、脂肪酸アマイド、アクリル酸エステル共重合体、ショ糖エステル、イソステアリン酸エステルも用いることができる。
炭化水素は親油性が高く油の吸収性、特に吸収量を向上させる効果が高い点で適する。炭化水素として好適なものは流動パラフィンである。特に粘度(40℃)が10〜50mm2/sのものが適する。当該粘度であると取り扱い性に優れ、またシートへのなじみがよく油の拡散性にも優れる。
【0020】
親油性油剤の含有量としては、シート重量の1〜20重量%とするのが好適である。1重量%未満では十分な油の吸収の効果が発現されないことがあり、20重量%を超えると親和性が良好となり、シート表面で油がとどまる一方で、シート間の空隙への移動がかえって遅くなることがある。
親油性油剤をシートに含有せしめる方法は、シート地に薬剤を内添、外添する既知の方法を用いることができる。例えば、内添するのであれば、原料パルプ、又は原料パルプスラリーに親油性油剤を添加したものを抄紙する方法を採ることができる。外添であれば、シート地の形成後に、親油性油剤を、散布、塗布、塗工する方法を採ることができる。
散布するのであれば、シートに対して薬剤を散布する既知のスプレー装置を用いることができ、塗工するのであれば、既知の塗工機又は印刷機を用いることができる。
【0021】
各シートの積層接着方法は、特に限定されず、例えば、エンボス付与した後又はエンボス付与するとともにシートを接着剤で貼り合せる方法を採ることができる。不織布シートであれば、重ねて配置したシート地又はシートを、エア又は水流等で交絡させて積層する方法を採ることもできる。エア又は水流による交絡法を採るのであれば積層後に表裏面にエンボス加工を施す。図示の形態では、接着剤3で対面する表裏面シート1,2のエンボス天部同士を接着して積層接着されている。
シート間の接着の接着剤を用いるのであれば、その接着剤は、例えば、PVA(ポリビニールアルコール)、CMC(カルボキシルメチルセルロース)、デンプン等が好適である。
【0022】
ここで、本形態X1においては、両シートのエンボスの関係は、図及び先の説明から明らかなように、表裏面シート1,2のエンボスe,e…の天部t,t…同士が対面する所謂「Tip to Tip」の形態を採っているが、これに限らず、図2に示されるように表面シート1のエンボス天部t,t…と裏面シート2のエンボス底部b,b…とが接着され、表面シート1のエンボス底部b,b…と裏面シート2のエンボス天部t,t…とが接着される所謂「Nested」の形態X2を採ることも可能である。ただし、空隙を大きくすることが可能であることから「Tip to Tip」の形態のほうが望ましい。なお、天部tとは対面するシートからみて接近するように突出する凸部の頂面、底部とは対面するシートからみて離間するように凹む凹部の底面である。
【0023】
シート又はシート地に対して行うエンボス加工は、例えば、一対のエンボスロール間に被エンボス加工シート(地)を通すことにより行うことができる。一対のエンボスロールは、両方とも金属ロールとすることもできるが、一方をゴムなどからなる弾性ロールとし、他方をエンボス付与凸部を有する金属ロールとするのが好ましい。弾性ロール及び金属ロールの組み合わせが好ましいのは、ロールのクリアランス調整の問題や、ロールに紙粉等が詰まるなどの不具合が生じないためである。
【0024】
一方、エンボス付与するにあたっては、一対のエンボスロールが両方又は一方のエンボスロールを加熱した状態で行うことができる。エンボスロールが加熱されていると、エンボスがより鮮明・明瞭に付与されるようになる。
加熱されているエンボスロールは、弾性ロールであってもよいが、金属ロールである方が、好ましい。これは、金属ロールの方が、熱伝導率がよく効果的に加熱による効果が発揮されるということのほか、金属ロールが加熱されていると、エンボスの形状に対応した形で、シート又はシート地に熱が与えられることになり、付与されるエンボスが、より鮮明・明瞭になるためである。
この場合、加熱ロールの表面温度は、一対のエンボスロールが、両方とも金属ロールであるか、弾性ロールと金属ロールとの組み合わせであるか、弾性ロール及び金属ロールのいずれが加熱されているか、などに関わらず、40〜140℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは80〜100℃とされる。加熱温度が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、加熱温度が高すぎると、エネルギーロスとなるほか、シート又はシート地が焼き付くおそれや、製造されるシート又はシート地が固くなるおそれがある。
【0025】
エンボスの付与は、一対のエンボスロール間のエンボス圧が、5〜30kg/cm、好ましくは10〜25kg/cm、より好ましくは15〜20kg/cmとなるように行う。エンボス圧が低すぎると、エンボスが鮮明になるとの効果が、十分に発揮されないおそれがある。他方、エンボス圧が高すぎると、被加工原紙がちぎれてしまうおそれがある。
一対のエンボスロールを、弾性ロールと金属ロールとの組み合せとする場合、弾性ロールは、その表面のショア硬度(Shore hardness)が、40〜70であるのが好ましい。ショア硬度が低すぎると、つまり弾性ロール表面がやわらかすぎると、シート又はシート地が破断するおそれがある。他方、ショア硬度が高すぎると、つまり弾性ロール表面が硬すぎると、エンボスが入らなくなるおそれがある。
【0026】
他方、エンボスの具体的形状は、適宜の設計事項である。図示の本形態のエンボスは、天部の形状を正方形とし、隣接する天部間の凹部の形状が台形型のエンボスとしている。天部の形状は、正方形のほか、菱形、円形、楕円形、多角形などでもよい。
また、天部は、各シートを接着剤により接着するのであれば平坦とするのが好ましい。天部の面積は、0.1〜40mm2、より好ましくは0.25〜4.0mm2、特に好ましくは0.5〜2.0mm2である。天部の面積が狭すぎる、シート相互の十分な接着強度を得ることができなくなる。他方、天部の面積が広すぎると、エンボスによる吸収空間の容積が小さくなるため、十分な吸収能力を得ることができなくなる。
エンボスe,e…の深さDも適宜の設計事項であるが、概ね0.1mm以上、好適には0.5mm以上、さらに望ましくは1.3mm以上とするのがよい。
多数のエンボスe,e…により形成されるエンボスパターンもまた適宜の設計事項であり、審美性、機能性を考慮して従来既知のエンボスパターンを適宜採用できる。
【0027】
ここで、本形態のキッチンペーパーX1の強度については、横方向の湿潤引張強さを、縦方向(マシン方向)の湿潤引張強さ以下とし、かつその横方向の湿潤引張強さを120CN以上とするのが好ましく、150CN以上とするのがより好ましい。一般に、現在市販されている坪量10〜50g/m2のキッチンペーパーX1は、横方向の湿潤引張強さが、100cN程度であるものが多い。しかるに、本形態では、横方向の湿潤引張強さを高めることによって、天ぷらや揚げ物等に含まれる水分や油分を吸収した際においても、鮮明・明瞭に付与したエンボスが崩れことがなく、天ぷらや揚げ物等がべたついたり、貼り付いたりすることがなくなる。
【0028】
キッチンペーパーX1の横方向の湿潤引張強さを高めるためには、例えば、原料パルプに界面活性剤等の湿潤紙力増強剤を添加することや、原料パルプの種類を選択し、あるいは原料パルプの叩解を調整するなどして、湿潤紙力増強剤の定着を高めること、などによることができる。ただし、過度に横方向の湿潤引張強さを高めると、シートの柔軟性などの阻害要因となるため、横方向の湿潤引張強さは、500cN以下とするのが好ましく、350cN以下とするのがより好ましい。一方、縦方向の湿潤引張強さは、適宜選定できるが、通常は横の湿潤引張強さの1倍以上である。なお、上述した湿潤引張強度は、実仕様形態で測定されるもので、例えば、2層構造の製品であれば、2層構造での湿潤引張強度を測定するものである。
【0029】
以上説明の形態X1では、表面シート1のみに親油性油剤を含有せしめた例であるが、本発明においては表裏面シートの双方に親油性油剤を含有せしてもよい。ただし、両面に含有せしめても吸油速度の効果にさほどの変化はないため、油の裏抜けやコストを考慮すれば片面塗布でも十分である。
【0030】
また、上記形態は表裏面シートのみの二層構造であるが、三層以上の多層構造とすることもできる。この場合、表裏面を構成するシート間に中間層としてパルプ層を設けるのが好適である。パルプ層はパルプシートを表裏面シートの間に介在させることで形成できる。パルプ層が設けられていると、液保持性が高まる。パルプ層を設ける場合、それを構成するパルプは限定されないが、填料を含まない純パルプとするのが望ましく、特に、LBKPよりもNBKPを多く含むものを用いるのが望ましい。すなわち、NBKP:LBKPの割合を50:50〜100:0にする。好適には、70:30〜100:0とする。LBKPよりもNBKPのほうが、繊維太さが太い傾向にあるため、NBKPが多いほうが嵩高となる。そして、表裏面シートに付着した水分や油分の吸収速度が早くなるとともに、保持量も多くなる。特に、前記LBKPの繊維長を0.8〜1.8mm、繊維太さを1.0〜2.0dtexとし、かつ、前記NBKPの繊維長を2.5〜4.5mm、繊維太さを3.0〜4.0dtexとしたパルプを用いるのが好適である。NBKPの繊維長を2.5〜4.5mmとし、繊維太さを3.0〜4.0dtexとすると嵩高となるとともに吸水速度および吸油速度がより向上する。また、LBKPの繊維長を0.8〜1.8mm、繊維太さを1.0〜2.0dtexとすると、NBKP繊維と適度に交絡するとともにNBKP繊維の間隙を埋めるように配置され、柔らかさが良好なものとなるとともに水分、油分の保持力がより良好となる。
【0031】
以上詳述の本発明のキッチンペーパーは、親油性油剤を含むシート面で油が十分にかつ迅速に拡散され、シート間空隙に迅速に移動されて保持され、極めて油吸収性に優れる。
【実施例】
【0032】
本願発明の実施例、比較例、従来例(従来製品)について、油吸収量、吸油速度及び吸水量について試験した。
油吸収量は、まず、未使用乾燥状態のキッチンペーパーの重量を測定したのち、そのキッチンペーパーをバット上に敷き、その敷いたキッチンペーパー上に170℃のサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製「日清サラダ油」(内容量1500g))で5分間揚げた揚げ物(市販冷凍コロッケ;イオン株式会社販売「TOPVALU 男爵コロッケ」)を取り上げて1分間載置した。その後に揚げ物を取り除きキッチンペーパーの重量を測定し、この測定値から先の未使用乾燥状態の重量を引いた値を油吸収量とした。なお、実施例2、4、5〜7については、親油性油剤が添加されているシートが上側になるようにバット上に敷き、揚げ物は親油性油剤が添加されているシート上に取り上げた。
吸油速度は、キッチンペーパー表面に、1ccのサラダ油(日清オイリオグループ株式会社製「日清サラダ油」(内容量1500g))を滴下し、そのときの目視観察に基づいて3段階で評価した。評価基準は、滴下した油による光沢感(てかり)がシート面から消失した視識できるまでの時間が、1分以上のものを1(悪い)、30秒〜1分のものを2(普通)、30秒未満のものを3(良い)と評価した。
吸水量は、100mm四方に裁断した乾燥状態の紙試料の重量を測定したのち紙試料を純水中に十分に浸漬させ、次いで、純水中から引き上げて30秒後の重量を測定し、その測定値から乾燥状態時の重量を引いた値を吸水量とした。
なお、各例にかかるキッチンペーパーは比較例3を除き、すべて表裏シートを接着剤で貼り合わせた二層構造とし、親油性油剤の添加を表裏で異ならしめた例以外は表裏面シートの設計差はないようにした。親油性油剤の添加を表裏で異ならしめ例も、親油性油剤の添加を異ならしめたこと以外は表裏面シートの設計差はないようにした。実施例、従来例における接着剤はPVAである。また、シート地は比較例3を除き表裏ともに薄葉紙とし、エンボス形状はすべての例で方形とした。
親油性油剤は、炭素数8〜10のトリグリセリドで構成される中鎖脂肪酸又は流動パラフィンを用いた。
米坪はJIS P 8124に基づき、湿潤引張強さは、JIS P 8135に基づいて測定した。
その他、各例のキッチンペーパーの構成及び試験結果は表1に示すとおりである。なお、表中のエンボス形式の欄におけるNは「Nested」形式、Tは「Tip to Tip」形式を意味している。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果からも明らかであるように、本発明の実施例は、比較例、従来例と比較して、吸油量が多いことが認められる。特に、親油性油剤として流動パラフィンを用いた場合には吸油量が特に多い。
吸油速度についても、本発明の実施例は、比較例3を除く比較例、従来例よりも優れることが認められる。なお、比較例3については、吸油速度は早いものの、油が空隙内で保持されていないせいか表面のべたつき感が認められた。
他方、吸水量については、不織布のみからなる比較例3は別格として、比較例、従来例を比較して劣ることはなく、親油性油剤による吸水性の低下も認められない。
してみると、本願発明の実施例については、吸水性について従来例と同等又は優れる性能を有し、吸油性能については各段に優れた性能であることが示されたといえる。
【0035】
以上、詳述のとおり、本発明によれば、油吸収性に優れるキッチンペーパーが提供される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明はキッチンペーパーのほか、油分の拭き取りを目的とするシート状物に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の「Tip to Tip」形式のキッチンペーパーX1の断面拡大図である。
【図2】本発明の「Nested」形式のキッチンペーパーX2の断面拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
1…表面シート、2…裏面シート、e…エンボス、t…エンボスの天部、b…エンボスの底部、X1…キッチンペーパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートを積層してなり、かつ、表裏面を構成するシートにエンボス加工がなされているキッチンペーパーであって、
表裏面を構成するシートの少なくとも一方のシートが親油性油剤を含む、ことを特徴とするキッチンペーパー。
【請求項2】
表面を構成するシートが親油性油剤を含み、裏面を構成するシートが親油性油剤を含まないものである、請求項1記載のキッチンペーパー。
【請求項3】
表裏面を構成する各シートのエンボスの天部同士が対面するようにして積層されている、請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【請求項4】
表面を構成するシートのエンボスの天部と裏面を構成するシートのエンボスの底部とが対面するようにして積層されている、請求項1又は2記載のキッチンペーパー。
【請求項5】
親油性油剤をシート重量に対し1〜20重量%含む、請求項1〜4の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項6】
親油性油剤が、トリグリセリド又は炭化水素の少なくとも一方である、請求項1〜5の何れか1項に記載のキッチンペーパー。
【請求項7】
トリグリセリドが、炭素数6〜12の飽和脂肪酸からなる、請求項6記載のキッチンペーパー。
【請求項8】
炭化水素が、流動パラフィンである、請求項6記載のキッチンペーパー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−155003(P2008−155003A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222148(P2007−222148)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】