説明

キノリノン誘導体を有効成分とする医薬組成物、及びその製造方法

【課題】 本発明の課題は、製剤化した際、有効成分であるキノリノン誘導体(I)の生体吸収性に優れ、しかも吸収性の経時的な変化の少ない医薬組成物を得る為に、製剤化した際のキノリノン誘導体(I)の溶出性が良好で、かつ溶出性の経時的低下が抑制された医薬組成物、その製造法及び該医薬組成物からなる製剤を提供する。
【解決手段】 本発明は、一般式(I)で表されるキノリノン誘導体とトレハロースを含有してなる医薬組成物、該医薬組成物からなる製剤、該キノリノン誘導体とトレハロースを含む粉体を流動化し、結合液を噴霧し、造粒する工程を含む医薬組成物の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
で表されるキノリノン誘導体(以下、単に「キノリノン誘導体(I)」ということがある。)とトレハロースを有効成分とする医薬組成物、特に抗アレルギー剤、慢性閉塞性肺疾患に対して有効な医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
前記キノリノン誘導体(I)は副作用が少なく、即時型及び遅延型アレルギー疾患に優れた効果を有することが知られている(特許文献1)。また、慢性閉塞性肺疾患に対して、極めて優れた効果を有することも知られている(特許文献2)。
【0005】
また、本発明者らは、該キノリノン誘導体(I)に、α形結晶、β形結晶、γ形結晶、δ形結晶である四種の結晶形が存在し、その四種の結晶形においては各々生体への吸収性や、安定性が異なることを明らかにした(非特許文献1)。更に詳細な検討の結果、四種の結晶形のうち、β形結晶、及びγ形結晶が、生体吸収性及び安定性が共に優れた結晶形であることを明らかにして、β形結晶及び/又はγ形結晶のキノリノン誘導体(I)を、遮光性を有するカプセル、コーティング顆粒、コーティング錠剤、又は糖衣錠から選ばれる剤形に製剤化することにより、生体吸収性、安定性に優れたキノリノン誘導体(I)製剤が得られることを明らかにした(特許文献3)。そしてその後、該製剤に酸化防止剤及び/又は滑沢剤を含有させることで、より生体吸収性、安定性に優れた製剤を提供した(特許文献4)。
【0006】
しかしながら、該キノリノン誘導体(I)は難溶性薬物である結果、経口投与時の消化管内での溶出性が低くなることから、平均0.5〜10μmの平均粒子径を有し、粒径15μm以下の粒子の割合が90%以上を占める粒径分布を有し、且つ、融解エンタルピーが30J/g以上である粒子の表面を水溶性高分子を含有する水溶性組成物によって被覆したキノリノン誘導体(I)医薬組成物を提供することで、安定性を保持しつつ、さらに生体吸収性を向上させることができることを明らかにした(特許文献5)。
【0007】
【特許文献1】特許2943725号
【特許文献2】特開2005−60365号
【特許文献3】特開平11−255649号
【特許文献4】特開2001−72593号
【特許文献5】特開2003−73274号
【非特許文献1】木村信之、福井啓之、高垣秀次、寺田勝英、「新規キノリノン誘導体TA−270の物理化学的性質−結晶と非結晶の性質比較−」、日本薬剤学会予稿集、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記一般式(I)で表されるキノリノン誘導体を用いた製剤化において、医薬品製剤に求められる、有効成分の生体への吸収性がより高く、且つ安定性の長期化を図るための有効成分の溶出性の経時的低下の抑制といった効果にまだ改善の余地があった。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、製剤化した際、有効成分であるキノリノン誘導体(I)の生体吸収性に優れ、しかも吸収性の経時的な変化の少ない医薬組成物を得る為に、製剤化した際のキノリノン誘導体(I)の溶出性が良好で、かつ溶出性の経時的低下が抑制された医薬組成物、その製造法及び該医薬組成物からなる製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意努力した結果、種々の添加剤を含有する一般式(I)で表されるキノリノン誘導体の医薬組成物を作製し、該医薬組成物の溶出性につき詳細なる検討を行った結果、医薬組成物がトレハロースを含有する場合に、製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出性がより高く、かつ特異的に溶出性の経時的な低下が著しく抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、医薬組成物の製造工程において流動層造粒法を用いて造粒した場合に、製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は一般式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含有してなる医薬組成物を提供する。また本発明は、前記医薬組成物からなる製剤を提供する。
さらに、本発明は、一般式(I)
【0013】
【化3】

【0014】
で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含む粉体を流動化し、これに結合液を噴霧し、造粒する工程を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製剤からの有効成分の溶出性が良好で、かつ、該溶出性の経時的低下が抑制された、安定性に優れた医薬組成物、その製造法及び該医薬組成物からなる製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の医薬組成物は、下記一般式(I)
【0017】
【化4】

【0018】
で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含有する。
【0019】
(キノリノン誘導体)
本発明で用いるキノリノン誘導体(I)は、毒性が低く、即時型及び遅延型アレルギー疾患、及び慢性閉塞性肺疾患の両者に有効で、極めて有用な化合物であることが、本発明者らによって見出されている(特許文献1、及び2)。本発明に用いるキノリノン誘導体(I)の結晶形の制限は特にないが、生体吸収性及び安定性を考慮すると、β形結晶、又はγ形結晶が好ましい。なお、好ましい結晶形の特定は、通常公知の方法により、粉末X線回折測定及び示差走査熱量分析(DSC)により行うことができる。
【0020】
本発明のキノリノン誘導体(I)とトレハロースとを含有してなる医薬組成物(以下、単に「本発明の医薬組成物」という。)を作製する場合、通常、キノリノン誘導体(I)は粉砕され粒子状のものを用いることが好ましい。
【0021】
粉砕は、圧縮、摩擦等の機械的な外力を加えることにより、粒子径を小さくする操作であり、粒子径を小さくすることにより、溶解速度を大きくする、経口吸収性を改善する、混合状態を均一にする等の効果が期待できる。
【0022】
用いられる粉砕機は、特に制限がなく、ジェット粉砕機の他に、例えば、衝撃式粉砕機、ボールミル、湿式粉砕機等の通常用いられる粉砕機類を挙げることができる。
破砕後のキノリノン誘導体(I)の粒径及びその分布は、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されるものではないが、1〜200μmが好ましく、さらに3〜50μmがより好ましい。
【0023】
(トレハロース)
次に、本発明の医薬組成物に含まれるトレハロースについて説明する。
本発明で用いられるトレハロースは、分子量が342.30を示す二糖類の一つで、2分子のD−グルコースがその還元性基どうしで結合した構造を有し、その結合様式は、α,α−結合として存在する。本発明に使用することができるトレハロースは、天然に存在するトレハロースでも、人工的に製造されたトレハロースでもどちらでも良いか、安価であり、且つ容易に入手可能であることから人工的に製造されたトレハロースを用いることが好ましい。
【0024】
本発明におけるトレハロースの含量は、好ましくは、キノリノン誘導体(I)1質量部に対して、トレハロースを0.1〜100質量部であり、より好ましくは0.2〜10質量部であり、最も好ましくは0.3〜1質量部である。
【0025】
(各種添加剤)
また、本発明の医薬組成物は、キノリノン誘導体(I)とトレハロース以外に、さらに結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、分散剤及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上の添加剤を含んでいてもよい。
【0026】
本発明における前記添加剤は、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定することなく含有することができるが、好ましくは、キノリノン誘導体(I)1質量部に対して、各添加剤を各々0.1〜100質量部の割合で含有していてもよい。
【0027】
結合剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0028】
滑沢剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、コロイドシリカ、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸マグネシウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0029】
崩壊剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的には乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
【0030】
賦形剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的には乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、デキストリン、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0031】
分散剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的にはアラビアゴム、トラガンド、ステアリン酸ポリエステル、セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸アルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリソルベート、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0032】
界面活性剤としては、本発明の効果を損なうものでなければ従来公知のものを特に限定することなく用いることができるが、具体的にはアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩などが挙げられる。
【0033】
(製造法)
本発明の医薬組成物を製造する方法は、本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されるものではないが、攪拌造粒法、流動層造粒法など各種造粒法で製造することが好ましい。
【0034】
該攪拌造粒法は、高速回転の攪拌翼によりキノリノン誘導体(I)とトレハロース、および必要に応じて各種添加剤を混合・練合する方法である。該攪拌造粒法としては、本発明の効果を損なうことがなければ従来公知の方法を用いることができる。この方法は、せん断力が大きいため造粒時間が短くてすみ、単位時間当たりの処理能力が高い。
【0035】
しかしながら、本発明の医薬組成物を製造する方法において、さらに、製剤の溶出性が飛躍的に向上し吸収性にも優れた製剤を得る場合には、流動層造粒法を用いて製造することが前記攪拌造流法よりも好ましい。
【0036】
すなわち、本発明の医薬組成物の製造方法は、一般式(I)
【0037】
【化5】

【0038】
で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含む粉体を流動化し、これに結合剤を含む溶液を噴霧し、造粒する工程を含むことを特徴とする。
【0039】
すなわち、本発明の製造方法はキノリノン誘導体(I)とトレハロース、および必要に応じて各種添加剤を加熱した気流により流動化し、これに結合剤を含む溶液を噴霧し、造粒し、必要に応じて乾燥することにより造粒物を作製する方法であり、混合、造粒、乾燥の各工程が同一機器内の一連の操作で可能となる。以下詳細に説明する。
【0040】
先ず、キノリノン誘導体(I)とトレハロース、及び必要に応じて各種添加剤を混合して粉体を作製する。その際、これらを一時に添加し混合しても良いが、添加する順序を決めて順次添加を行い、混合しても良い。
【0041】
次に、造粒を行う。造粒は前記結合剤を含む溶液を前記粉体に噴霧し、造粒する。造粒における、エアー流量、温度、スプレー圧等の設定条件については特に制限がないが、使用される添加剤等の特性により適宜範囲を設定することができる。例えば、エアー流量は、0.2〜1.0m/min.、温度は40〜80℃、スプレー圧は0.02〜0.1MPaの範囲を挙げることができる。
【0042】
次に必要に応じて乾燥を行う。乾燥は、熱を加えることにより、物質から水分を除去する工程であり、本工程におけるエアー流量、温度等の設定について特に制限がなく行うことが可能で、使用される添加剤等の特性により適宜変更することができる。
【0043】
また、これらの一連の混合、造粒、乾燥の工程を単一器内にて行うことも可能であり、操作が省略されることから、製造上の利点を有する。工程を段階的に進行させるか、或いは同一機内で連続して工程を行うかは、適宜選択して行うことができる。
次に得られた造粒物の整粒を行う。整粒は、得られた造粒物の形の不揃いを整える工程であり、通常用いられる、例えば、フィッツミルやマルメライザー(商標名)等の整粒機を用いることができる。
【0044】
(医薬組成物、製剤)
本発明の医薬組成物の形状は本発明の効果を損なうものでなければ特に限定されないが、通常は、粒状であることが好ましい。
また、本発明の医薬組成物は、キノリノン誘導体(I)が有効性を発現する各種製剤の形で使用する。例えば、抗アレルギー剤、慢性閉塞性肺疾患治療剤用の経口用薬剤として用いることができ、経口用薬剤とは、例えば、カプセル剤、錠剤、散剤等をいい、これらは通常公知の製造法で製造することができる。
【実施例】
【0045】
本発明の内容を更に具体的に説明するため、以下の実施例を示すが、もとより本実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
なお、実施例では本発明の医薬組成物の消化管での吸収性を評価するため、溶出試験を行った。溶出試験は、薬物が体内に吸収される際、消化管内の液に溶けることが必要であることに基づき、そのときの製剤に含まれる有効成分の溶出性(濃度・速度)を理化学的に評価する方法である。固形製剤の品質を一定水準に確保するとともに、製剤法が異なった場合の著しい生物学的非同等性を試験検査し、防ぐことを目的として行った。なお、一般に、本溶出試験により溶出性が良好であると評価された場合、吸収性に優れた製剤であると評価される。
また、本実施例においてキノリノン誘導体(I)の平均粒径は、レーザ回折散乱粒度分布測定装置(「LS100Q」ベックマン・コールター社製)を用いてレーザ回折散乱法にて測定した値を用いた。
【0046】
(参考例1)乳糖/攪拌造粒法による錠剤の作製
キノリノン誘導体(I)75gを用いて、以下の処方にて顆粒を作製した。
即ち、キノリノン誘導体(I)、乳糖、結晶セルロース(商標名「アビセル」)及びアスコルビン酸を下記表1に記載の組成比で乳鉢中で混合した。この組成物に、適量の水で溶解したヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を添加、攪拌造粒機にて錬合した後、乾燥し、顆粒を得た。得られた顆粒に下記表1に記載の組成比でステアリン酸マグネシウムを配合し、配合末200mgを直径8mm−2段Rの杵臼を用い、ロータリー式打錠機にて打錠して、錠剤を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
(参考例2)乳糖/流動層造粒法による錠剤の作製
(参考例1)における攪拌造粒機の替わりに流動層造粒機を用いて、錠剤を得た。
即ち、キノリノン誘導体(I)(平均粒径5μm)、乳糖、アビセル及びアスコルビン酸を上記表1に記載の組成比で乳鉢中で混合した。この組成物に、適量の水で溶解したヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を添加、錬合して粉体を作製した後、流動層造粒機(ダルトン社製ニューマルメライザー「NQ−125型」)を用いて以下の条件にて造粒した。その後得られた造粒物を乾燥し、顆粒を得た。得られた顆粒に上記表1に記載の組成比でステアリン酸マグネシウムを配合し、配合末200mgを直径8mm−2段Rの杵臼を用い、ロータリー式打錠機にて打錠して、錠剤を得た。
【0049】
流動層造粒機運転条件
エアー流量 :0.4m/min
温度 :60℃
スプレー圧 :0.04MPa
【0050】
(実施例1)トレハロース/攪拌造粒法による錠剤の作製
(参考例1)における乳糖とアスコルビン酸の替わりに、トレハロースを用いて、以下の処方にした以外は参考例1と同様にして錠剤を得た。
【0051】
【表2】

【0052】
(実施例2)トレハロース/流動層造粒法による錠剤の作製
(実施例1)における攪拌造粒機の替わりに、流動層造粒機を用いて、参考例2と同条件にて錠剤を得た。
【0053】
(試験例1)溶出性の比較試験−1
(参考例1)、(参考例2)、(実施例1)及び(実施例2)にて作製した錠剤を用いて、一定時間経過後、日本薬局方パドル法(第2法)に基づき試験液中における製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出率を測定し、溶出量の変化を確認した。
すなわち、各錠剤を、アルミラミネート袋に包装し、温度60±2℃、湿度75±5%に調整された恒温恒湿に入れ、0、2、4週間後に試料を採取後、以下の条件で溶出試験及び溶出量の測定を行った。
【0054】
1)試験方法
試験液:1%Tween(商標名)80局法2液
試験液量:900mL
パドル回転数:100rpm
試験溶液:2週間、4週間経過後の錠剤1錠を試験液に加え、その60分後の溶出液を採取し、ADVANTEC(商標名) DISM−13HPPTFE(0.45μm)でろ過し、試料溶液とした。
【0055】
2)溶出量の測定
キノリノン誘導体(I)標準品約0.05gを精密に測り、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて溶解し、正確に50mLとした。この液5mLを正確に量り、N,N−ジメチルホルムアミドを加えて50mLとし、標準溶液とした。
試料溶液及び標準溶液25μLにつき、以下の条件で試験を行い、各溶液のキノリノン誘導体(I)のピーク面積から、溶出量を算出した。
3)分析条件
測定波長 :352 nm
カラム :Inertsil(商標名) ODS−2 4.6 mmID×250 mm
カラム温度:40℃付近の一定温度
移動相 :0.1 mol/L酢酸/アセトニトリル混液 = 45/55
流量 :TA−270の保持時間が約9分になるように調整(1.6mL/min.)
【0056】
0週時(試験開始時)、2週間経過時、4週間経過時の溶出率を測定し、0週時における溶出率を100%としたときの、各々のキノリノン誘導体(I)の溶出率を算出した結果を図1に示す。
【0057】
本実施例により、本発明の医薬組成物である(実施例1)及び(実施例2)において、キノリノン誘導体(I)の溶出率の低下が見られず、溶出性の経時的低下が抑制されたことが明かとなった。
【0058】
(試験例2)溶出性の比較試験−2
(参考例1)、(実施例1)及び(実施例2)にて作製した錠剤を用いて、フロースルーセル法に基づき以下の試験方法に従って溶出試験を行った。
すなわち、後述する試験液を試験器の下部の入口から試験器内に注入し、錠剤1錠を入れたセル内全体に試験液を満たし、さらにセル上部より流出した試験液を送液チューブを通して受器に集め試料溶液とし、その試料溶液1mL中のキノリノン誘導体(I)の濃度を測定することにより製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出率を算出し、溶出時間の変化による溶出量を確認した。図2に結果を示す。
【0059】
1)試験方法
試験液:0.1%Tween(商標名)80局法第2液
試験液流速:7mL/min.
試料溶液:10分、20分、30分、40分、50分及び60分後に溶出液1mLを採取し、試料溶液とした。
2)溶出量の測定
(試験例1)と同様にして測定した。
【0060】
本実施例より、攪拌造粒法と流動層造粒法の場合では、流動層造粒法により造粒を行った場合が、溶出性の優れた医薬組成物であることが明らかとなった。
【0061】
(実施例3)平均粒径15μm錠剤の作製
用いるキノリノン誘導体(I)の平均粒径が15μmである他は、実施例2と同様にして錠剤を得た。
【0062】
(実施例4)平均粒径32μm錠剤の作製
用いるキノリノン誘導体(I)の平均粒径が32μmである他は、実施例2と同等にして錠剤を得た。
【0063】
(試験例3)平均粒径の異なるキノリノン誘導体(I)を用いた錠剤の溶出試験
本実施例では、平均粒径の異なるキノリノン誘導体(I)を用いた錠剤の吸収性の相違を明らかにするために、(実施例3)、(実施例4)の錠剤の溶出試験を行った。溶出試験及び溶出量の測定は、(試験例2)と同様の方法で行った。図3に結果を示す。
【0064】
本実施例より、流動層造粒法により作製した組成物は、従来技術である攪拌造粒法により作製した組成物(参考例1)に比較し、溶出性の優れた医薬組成物であることが明らかであった。
【0065】
以上の実施例より、以下のことが明かとなった。
1.(試験例1)では、添加剤として、トレハロース、又は乳糖を用い、造粒法として、流動層造粒法、又は攪拌造粒法にて作製した錠剤の一定時間経過後における溶出試験を行った。その結果、トレハロースを含有する錠剤では、一定時間経過後であっても、溶出性の低下が著しく抑えられ、トレハロースを含有する本発明の医薬組成物の優位性が明らかとなった。
2.(試験例2)では、溶出時間の変化による溶出量を比較した。その結果、流動層造粒法では、攪拌造粒法に比較し、優れた溶出性を示した。
3.(試験例3)では、平均粒径の異なる組成物を用いた錠剤の溶出性について試験を行った。即ち、従来技術である、乳糖を含有し、攪拌造粒を行った組成物(平均粒径:5μm)に対して、トレハロースを含有し、流動層造粒を行った組成物(平均粒径:5、15、32μm)では、平均粒径が大きくても、いずれも良好な溶出性が確認され、流動層造粒法の優位性が確認された。
【0066】
以上のように、本発明の医薬組成物は、製剤化した際の溶出試験の結果から、従来法と比べて、製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出性が優れていることが明かとなり、消化管内における吸収性が向上した組成物であるといえる。また製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出性の経時的低下が抑制された、安定性に優れた医薬組成物であることが明かとなった。
さらに、本発明の製剤は、キノリノン誘導体(I)の溶出性が優れており、消化管内における吸収性が向上した製剤であるといえる。またキノリノン誘導体(I)の溶出性の経時的低下が抑制された、安定性に優れた製剤であることが明かとなった。
また、本発明の流動層造粒法を用いた医薬組成物の製造方法は、製剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出性がさらに優れていることが明かとなり、消化管内における吸収性がさらに向上した組成物を製造できることが明かとなった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、トレハロースを含有することを特徴とするキノリノン誘導体(I)を有効成分とする医薬組成物、及びその製造方法を提供するものであり、当該医薬組成物は、吸収性に優れた医薬品として、例えば、アレルギー疾患、慢性閉塞性肺疾患等の治療剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】試験例1における、各錠剤からのキノリノン誘導体(I)の溶出率を表したグラフである。
【図2】試験例2における、各錠剤からのキノリノン誘導体の(I)の溶出時間の変化による溶出量の関係を表したグラフである。
【図3】試験例3における、各錠剤からのキノリノン誘導体の(I)の溶出時間の変化による溶出量の関係を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含有してなることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
一般式(I)で表されるキノリノン誘導体1質量部に対して、トレハロースを0.1〜100質量部含有する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
さらに、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、分散剤及び界面活性剤からなる群から選ばれる一種以上を含む請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
流動層造粒法で得られたものである請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の医薬組成物からなる製剤。
【請求項6】
一般式(I)
【化2】

で表されるキノリノン誘導体とトレハロースとを含む粉体を流動化し、これに結合剤を含む溶液を噴霧し、造粒する工程を含む医薬組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−131587(P2007−131587A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327328(P2005−327328)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(306048269)株式会社アクティバスファーマ (1)
【Fターム(参考)】