説明

キメラアデノウイルスの作成法およびそのようなキメラアデノウイルスの使用

所望の細胞株中で効率的に増殖しない血清型に由来し、その細胞中で増殖する能力を持つアデノウイルスを提供する方法を記載する。この方法はアデノウイルスの左および右末端を、所望の細胞中で効率的に増殖するアデノウイルス由来の対応する末端に置き換えることが関与する。少なくとも左末端は(5’)逆方向末端反復配列に広がり、左末端はE4領域および(3’)逆方向末端反復配列に広がる。生成したキメラアデノウイルスは、所望の細胞中で効率的に増殖しない血清型に由来するペントン、ヘキソンおよびファイバーをコードする遺伝子に広がる内部領域を含む。また新規サルアデノウイルスを配列から構築されたベクターおよびタンパク質、それを含有する宿主細胞、およびその使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
アデノウイルスのキャプシドタンパク質に対する体液性免疫(循環している抗体)の存在は、遺伝子治療にアデノウイルスベクターを使用することに対する障害である。遺伝子治療に開発された原型のアデノウイルスベクターは、血清型5のようなサブグループCのアデノウイルスに基づく。サブグループCのアデノウイルスに対する中和抗体の広がり(prevalence)は、これらの病原に対して頻繁にさらされる結果、一般にヒトの個体群においては高い。この事実は、Ad5のような血清型に基づく遺伝子治療ベクターの効力を一般に大きく制限するようである。
【0002】
アデノウイルスに対する防御抗体の性質の分析では、最も重要な標的が主要なキャプシドタンパク質、ヘキソンであることが示された[非特許文献1;非特許文献2]。他の血清型に由来するヘキソンを有するキメラアデノウイルスを作成することにより、抗−ヘキソン抗体を回避するように、ヘキソンを作り変える幾つかの努力がなされてきた[非特許文献3;特許文献1;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6]。しかし遠い血清型間で交換が行われる場合、これはほとんど成功しなかった。
【0003】
別法として、研究者達は、ヒトにほとんど感染しないアデノウイルスベクターを使用すること、または非ヒト起源のアデノウイルスを使用することを提案した。しかしそのようなベクターを多数生産する実践的様式が無いことが、そのようなベクターの開発に対する障害となることは明らかだった。
【参考文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,922,315号明細書
【非特許文献1】Wolfhart (1988)J.Virol.62,2321
【非特許文献2】Gall et al.(1996)J.Virol.70,2116
【非特許文献3】Roy et al.(1998)J.Virol.72,6875
【非特許文献4】Gall et al.(1998)J.Virol.72,10260
【非特許文献5】Youil et al.(2002)Hum.Gene Ther.13,311
【非特許文献6】Wu et al.(2002)J.Virol.76,12775
【発明の開示】
【0005】
発明の要約
本発明は、アデノウイルスのビリオンの生産に有用な細胞中での増殖には十分に適合しない血清型に由来するキャプシド、そして特にヘキソンを含むキャプシドを有するアデノウイルスを改変する方法を提供する。この方法は測定可能な量のアデノウイルスの生産に有用である。生成したキメラアデノウイルスゲノムは、本明細書に記載する様々な目的に有用となる。
【0006】
さらに本発明は新規な、単離されたアデノウイルスSA18核酸およびアミノ酸配列、それを含有するベクター、そのようなSA18配列および/またはベクターを含有する細胞株、およびそれらの使用を提供する。
【0007】
本発明の他の観点および利点は、以下の本発明の詳細な記述により容易に明白となるだろう。
本発明の詳細な記述
本発明は、選択した宿主細胞中で培養することができるアデノウイルスの左末端および右末端、ならびに最低でも別のアデノウイルスの血清型のキャプシドタンパク質をコードする内部領域からなるキメラアデノウイルスゲノムを提供する。特に本発明は所望する細胞型中で培養することが難しい血清型を有するアデノウイルスを生成するために特に有利である。このように本発明は、血清型が変動するキメラアデノウイルスベクターを生成することを可能にする。
【0008】
本明細書で具体的に説明する態様では、キメラアデノウイルスはヘキソンまたはファイバーだけではなくほとんどの構造タンパク質が、関連性が無い血清型のアデノウイルスに由来して構築され、これによりキャプシドのアセンブリに関与するタンパク質−タンパク質相互作用の大部分を保存する。転写調節および宿主の細胞サイクルの調節の原因となるアデノウイルスE1およびE4領域によりコードされるもののような初期遺伝子のほとんどは、Ad5 E1タンパク質をトラスンに提供するHEK293のような一般に使用される細胞型で高力価ウイルスの生成をもたらすことが知られている異なる血清型に保持されている。
【0009】
別の態様では、本発明は元々はサバンナモンキーから単離されたAdSA18に由来する新規核酸およびアミノ酸配列を提供する[ATCC VR−943]。さらに本発明は、組換えタンパク質またはフラグメントまたは他の試薬のインビトロ生産に使用するために、これらベクターを生産する新規アデノウイルスベクターおよびパッケージング細胞株を提供する。さらに本発明は治療およびワクチンの目的で、ヘテロロガスな分子の送達に使用するための組成物を提供する。そのような治療用またはワクチン組成物は、挿入されたヘテロロガス分子を担持するアデノウイルスベクターを含む。加えて本発明の新規配列は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの生産に必要な必須のヘルパー機能を提供するにも有用である。このように本発明はこれら配列をそのような生産法で使用するヘルパー構築物、方法および細胞系を提供する。
【0010】
用語「実質的な同一性」または「実質的な類似性」とは、核酸またはそのフラグメントを指す場合、適切なヌクレオチド挿入または欠損が別の核酸(またはその相補鎖)と最適に並べられた時に、並べられた配列の少なくとも約95〜99%にヌクレオチド配列の同一性があることを示す。
【0011】
用語「実質的な同一性」または「実質的な類似性」とは、アミノ酸またはそのフラグメントを指す場合、適切なアミノ酸挿入または欠損が別のアミノ酸(またはその相補鎖)と最適に並べられた時に、並べられた配列の少なくとも約95〜99%にアミノ酸配列の同一性があることを示す。好ましくは同一性は完全長の配列、またはそのタンパク質、または少なくとも8個のアミノ酸、またはより望ましくは少なくとも15個のアミノ酸長であるそのフラグメントにわたる。適当なフラグメントの例を本明細書に記載する。
【0012】
本内容において核酸配列の「同一性の割合」または「同一の」という用語は、最大の対応について並べた場合、2つの配列中で同じ残基を指す。配列同一性の比較の長さは、完全長のゲノム(例えば約36kbp)、遺伝子の完全長のオープンリーディングフレーム、タンパク質、サブユニットまたは酵素[例えばアデノウイルス コード領域を提供する表を参照にされたい]にわたることができ、あるいは少なくとも約500〜5000ヌクレオチドのフラグメントが望ましい。しかしより小さいフラグメント間、例えば少なくとも約9個のヌクレオチド、通常は少なくとも約20〜24個のヌクレオチド、少なくとも約28〜32個のヌクレオチド、少なくとも約36個以上のヌクレオチド間の同一性も望ましくなり得る。同様に「配列同一性の割合」は完全長のタンパク質またはそのフラグメントにわたるアミノ酸配列について容易に決定することができる。適当にはフラグメントは少なくとも約8個のアミノ酸長であり、そして最高700個のアミノ酸であることができる。適当なフラグメントの例を本明細書に記載する。
【0013】
同一性はデフォルト設定で本明細書に定義されるようなアルゴリズムおよびコンピュータープログラムを使用して容易に定められる。好ましくはそのような同一性は完全長のタンパク質、酵素、サブユニットにわたるか、あるいは少なくとも約8個のアミノ酸長のフラグメントにわたる。しかし同一性はより短い領域に基づいてもよく、ここで同一の遺伝子産物を使用するために適する領域が入力される。
【0014】
本明細書に記載するように、アライメントはインターネットのウェッブサーバーを通してアクセス可能な「Clustal W」のような様々に公開または市販されて利用可能なマルチプルシークエンスアライメントプログラム(Multiple Sequence Alignment Program)を使用して行う。あるいはベクター NTIユーティリティ(Vector NTI utilities)も使用する。ヌクレオチド配列の同一性を測定するために使用することができる、当該技術分野で既知の多数のアルゴリズムがあり、それらには上記のプログラムに含まれるものを含む。別の例として、ポリヌクレオチド配列はFasta、GCGバージョン6.1のプログラムを使用して比較することができる。Fastaはクエリとサーチ配列との間で最高の重複の領域のアライメントおよび配列同一性の割合を提供する。例えば核酸配列間の配列同一性の割合は、引用により本明細書に編入するGCGバージョン6.1に提供されるように、そのデフォルトパラメーター(6のワードサイズ、およびスコアリングマトリックスについてはNOPAMファクター)を用いてFastaを使用して決定することができる。同様なプログラムがアミノ酸アライメントを行うために利用可能である。一般にこれらのプログラムはデフォルト設定で使用するが、当業者は必要に応じてこれらの設定を変えることができる。あるいは当業者は参照にしたアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるように、少なくとも同一性のレベルまたはアライメントを提供する別のアルゴリズムまたはコンピュータープログラムを利用することができる。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲を通して使用するように、用語「含んでなる(comprise)」および他の変形の中でも「含んでなる(comprises)」、「含んでなる(comprising)」を含むその変形は、他の成分、要素、完全体(integers)、工程等を含むことができる。用語「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」は、他の成分、要素、完全体(integers)、工程等を含まない。
【0016】
他に特定する場合を除き、用語「ベクター」には、裸のDNA、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、エピソーム、ウイルス等を含め、細胞に標的分子を送達する当該技術分野で既知の遺伝的要素を含む。
【0017】
「ミニジーン(minigene)」は、選択したヘテロロガスな遺伝子ならびに宿主細胞中での遺伝子産物の翻訳、転写および/または発現を駆動するために必要な他の調節要素の組み合わせを意味する。
【0018】
本明細書で使用する用語「トランス相補する(transcomplement)」とは、1つのアデノウイルスの血清型の遺伝子(遺伝子産物)が、機能を失った別の血清型に由来するその遺伝子(遺伝子産物)を欠くアデノウイルスの血清型に供給される場合を指す。例えばヒトアデノウイルスの血清型5E1aおよびE1b機能は、E1−欠失チンパンジーアデノウイルスPan9をトランス相補することが知られている。同様に、本発
明者はヒトAd5E1がE1−欠失チンパンジーアデノウイルスの血清型Pan5、Pan6、Pan7およびサルアデノウイルスの血清型SV1、SV25およびSV39をトランス相補することを見いだした。トランス相補する血清型の他の例には、ヒトAd5およびヒトAd2、Ad3、Ad4、Ad5、Ad7およびAd12がある。
【0019】
用語「機能的に欠失した」または「機能的欠失」とは、例えば突然変異または改変により十分な量の遺伝子領域が除去または損傷されているので、遺伝子領域がもはや遺伝子発現の機能的産物を生産できないことを意味する。所望により、全遺伝子領域を除去することができる。遺伝子破壊または欠失に適当な他の部位は、本出願のいたるところで検討する。
【0020】
用語「機能的」とは、天然の機能を行うが、必ずしも天然産物と同じレベルである必要はない産物(例えばタンパク質もしくはペプチド)を指す。また用語「機能的」は、所望の産物をコードし、そしてそれから所望の産物を発現できる遺伝子を指すことができる。I.キメラアデノウイルスベクター
本発明の組成物は、ヘテロロガスな分子を細胞に送達するキメラアデノウイルスベクターを含む。そのようなヘテロロガスな分子を送達するために、ベクターはプラスミドまたは好ましくはキメラアデノウイルスであることができる。本発明のキメラアデノウイルスには、本明細書にさらに詳細に記載する少なくとも2つの供給源である血清型、「供与血清型(donating serotype)」および「親のアデノウイルス」に由来するアデノウイルスDNA、ならびにミニジーンを含む。
【0021】
アデノウイルスゲノムが両鎖上にオープンリーディングフレームを含むので、特異的なオープンリーディングフレームと遺伝子領域との間の混乱を回避するために、本明細書では多くの場合で種々の領域の5’および3’末端と示すようにする。すなわち本明細書でアデノウイルスゲノムの「左」および「右」末端を指す場合、これは当該技術分野で常用されている略図で現す時、約36kbのアデノウイルスゲノムの末端を指す[Horwitz、「アデノウイルスおよびその複製(Adenoviridae and Their Replication)」、VIROLOGY、第2版、p1679−1721(1990)で」。すなわち本明細書で使用するように、アデノウイルスゲノムの「左末端」は、ゲノムを線状で略図的に表した時、該略図の最も左端に位置するアデノウイルスゲノムの部分を指す。典型的にはゲノムの左末端はマップ単位0で始まり、そして右に延びて少なくとも5’逆方向末端反復配列(ITR)を含み、そして構造遺伝子をコードするゲノムの内部領域を排除するゲノムの部分を指す。本明細書で検討するように、アデノウイルスゲノムの「右末端」は、ゲノムを線状で略図的に表した場合、該略図の最も右末端に位置するアデノウイルスゲノムの部分を指す。典型的にはアデノウイルスゲノムの右末端はマップ単位36で終わり、そして左に延びて少なくとも3’ITRを含み、そして構造遺伝子をコードするゲノムの内部領域を排除するゲノムの部分を指す。
A.アデノウイルス調節配列
1.血清型
左末端および右末端を供与するアデノウイルスの血清型の選択は、所望の細胞株中で容易に培養することができる血清型の中から当業者が容易に作成することができる。供与血清型の血清型を選択するために考慮できる他の因子の中には、それらの配列がハイブリダイズする位置に内部領域を供給するアデノウイルスの血清型との適合性がある。
【0022】
左末端および右末端を供与するために適当なアデノウイルスは、米国のバージニア州、マナッサスのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、様々な学術的および商業的供給元から入手可能であるか、あるいは供与アデノウイルスの所望の領域は、文献に公開されているか、またはデータベース(例えばGenBank等)から利用可能な配列を参照にして、既知の技術を使用して合成することができる。適当な供与アデノウ
イルスの例には、限定するわけではないがヒトアデノウイルスの血清型2、3、4、5、7および12を含み、そしてさらに所望の細胞中で培養することができる、現在同定されている任意のヒトの型[例えばHorwitz、「アデノウイルスおよびその複製」、VIROLOGY、第2版、1679−1721頁(1990)を参照にされたい]を含む。同様に非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、アカゲザル、マカークおよび他のサル種)、または他の非ヒト哺乳動物に感染することが知られており、そして所望の細胞中で増殖することができる類似のアデノウイルスを、本発明のベクター構築物に使用することができる。そのような血清型には限定するわけではないが、とりわけ米国特許第6,083,716号明細書に記載されているチンパンジーアデノウイルスPan5[VR−591]、Pan6[VR−592]、Pan7[VR−593]およびC68(Pan9);ならびに限定するわけではないがSV1[VR−195];SV25[SV−201];SV35;SV15;SV−34;SV−36;SV−37を含むサルアデノウイルス、およびヒヒアデノウイルス[VR−275]を含む。Pan5(C5とも呼ばれる)、Pan6(C6とも呼ばれる)、Pan7(C7とも呼ばれる)、SV1、SV25およびSV39の配列が記載された[2003年6月5日に公開された国際公開第03/046124号パンフレット;2003年12月19日に出願された米国特許出願第10/739,096号明細書](これらは引用により本明細書に編入する)。以下の例では、ヒト293細胞およびアデノウイルス5型(Ad5)、Pan9およびAd40を都合よく使用する。しかし当業者は、他の細胞株および/または他のアデノウイルス株に由来する適合性のある領域を容易に選択し、そしてこれらの血清型の代わりに(または組み合わせて)本発明で使用できると理解するだろう。
2.配列
左末端および右末端を供与するアデノウイルスにより供給されるべき最小配列は、複製およびパッケージングに必要な5’シス−エレメントおよび3’−シス−エレメントを含む。典型的にはパッケージングおよび複製に必要な5’シス−エレメントは、5’逆方向末端反復(ITR)配列(これは複製の起点として機能する)、および天然の5’パッケージングエンハンサードメイン(これは直線状のAdゲノムをパッケージングするために必要な配列およびE1プロモーター用のエンハンサーエレメントを含む)を含む。アデノウイルスゲノムの右末端は、パッケージングおよびキャプシド形成に必要な3’シス−エレメント(ITRを含む)を含む。望ましくは、左および右末端を供与するアデノウイルスの血清型および/または供与アデノウイルスの血清型をトランス相補するアデノウイルスの血清型は、必要なアデノウイルス初期遺伝子の機能をさらに提供し、それにはE1(E1aおよびE1b)、E2(E2aおよびE2b)、およびE4(少なくともORF6領域を含む)を含む。E3は必須ではなく、そして例えばこの領域に導入遺伝子を挿入するために、または別の領域に挿入された導入遺伝子用のスペースを提供するために所望により削除されてもよい(典型的にはパッケージングには、全アデノウイルスゲノムが36kb未満になることが望ましい)。
【0023】
特定の態様では、必要なアデノウイルス初期遺伝子が、本発明のキメラ構築物中に含まれる。別の態様では、1もしくは複数の必要なアデノウイルス初期遺伝子が、宿主細胞をパッケージングすることにより、またはトランスに提供され得る。
【0024】
一般に本発明のキメラアデノウイルスは、適合性がある調節タンパク質を持つキメラアデノウイルスを提供するために、供与アデノウイルスの血清型またはトランス相補する血清型に由来する調節配列を含む。任意に1もしくは複数の必要なアデノウイルス構造遺伝子が、左末端および右末端を供与するアデノウイルスにより提供される。
【0025】
特定の態様では、キメラアデノウイルスはさらに1もしくは複数の機能的アデノウイルス遺伝子を含み、それらには左および右末端を供与するアデノウイルスの血清型に由来するエンドプロテアーゼオープンリーディングフレーム、DNA結合タンパク質、100k
Daスカフォールドタンパク質、33kDaタンパク質、タンパク質VIII、pTP、52/55kDaタンパク質、タンパク質VII、Muおよび/またはタンパク質VIを含む。これらすべての遺伝子が5’および3’ITRを供与するアデノウイルスの血清型に由来する場合、「シュードタイプ化(pseudotyped)」ウイルスが形成される。1つの態様では、キメラアデノウイルスは供与血清型に由来するアデノウイルスゲノムの左末端を、5’ITRからpol遺伝子(またはpTP)の末端まで通して含む。別の態様では、キメラアデノウイルスは供与アデノウイルスの血清型の左末端を5’ITRからペントンまで通して含む。さらに別の態様では、キメラアデノウイルスは供与アデノウイルスの血清型の左末端、例えばpTPの末端までを含むが、供与アデノウイルスの血清型に対してヘテロロガスなアデノウイルスの血清型に由来するITRを含む。さらに別の態様は、本開示から容易に明白であろう。
【0026】
任意に1もしくは複数の遺伝子は、供与アデノウイルスの血清型とキャプシドタンパク質(例えば限定する訳ではないがポリメラーゼ、末端タンパク質、IIIaタンパク質)を提供する親のアデノウイルスとの融合から形成されるハイブリッドであることができる。適当には、これら遺伝子はアデノウイルス遺伝子をキャプシドにパッケージングすることを可能とする機能的タンパク質を発現する。あるいは1もしくは複数のこれらタンパク質(ハイブリッドまたは非ハイブリッドでも)を、キメラアデノウイルスから機能的に削除することができる。所望により、キメラアデノウイルス中で機能的に欠失した任意の必要なタンパク質が、パッケージング細胞中でトランスに発現され得る。
B.親のアデノウイルス構造タンパク質
1.血清型
本発明は、キャプシドタンパク質が所望の宿主細胞中で効率的に増殖しない親のアデノウイルスに由来するキメラアデノウイルスの生成に使用するために特に良く適合している。内部領域を提供する親のアデノウイルスの血清型の選択は、本明細書に提供する情報に基づき、当業者により容易に行うことができる。
【0027】
様々な適切なアデノウイルスが、構造(すなわちキャプシドタンパク質)をコードする領域を供給する親のアデノウイルスとして役立ち得る。そのような多くのアデノウイルスは、供与アデノウイルスの血清型について上に記載したものと同じ供給源から得ることができる。適切な親のアデノウイルスの血清型の例には限定するわけではないが、とりわけヒトアデノウイルスの血清型40[例えば、Horwitz、「アデノウイルスおよびその複製」、VIROLOGY、第2版、p1679−1721(1990)を参照にされたい]、および非−ヒト霊長類(例えばチンパンジー、アカゲザル、マカークおよび他のサル種)に感染することが知られているアデノウイルス、あるいは限定するわけではないが、とりわけ米国特許第6,083,716号明細書(これは引用により本明細書に編入する)に記載されているチンパンジーアデノウイルスC1;サルアデノウイルス、およびヒヒアデノウイルスを含む他の非−ヒト哺乳動物を含む。さらに内部領域を提供する親のアデノウイルスは、当業者に知られている種々の技術を使用して生成することができるような自然には存在しないアデノウイルスの血清型に由来してもよい。
【0028】
本明細書で具体的に説明する1つの態様では、構築したキメラウイルスはチンパンジーアデノウイルスPan−5とC1との間であり、ヒト293細胞中で野生型の親ウイルスよりも高い力価を現した。しかし本発明はこれらのチンパンジーアデノウイルスの使用、あるいはサル−サル、ヒト−ヒトまたはサル−ヒトキメラアデノウイルスに限定されない。例えばウシまたはイヌのアデノウイルス、あるいはヒト細胞で自然に感染せず、かつ/または複製しない他の非ヒト哺乳動物のアデノウイルスを利用することも望ましいかもしれない。
【0029】
以下の例では、ヒトアデノウイルス40型(Ad40)およびチンパンジーアデノウイ
ルスC1、サルPan5およびAd40、ならびにPan5およびサルアデノウイルスSA18を使用する。しかし当業者は他のアデノウイルスの血清型も容易に選択し、そしてこれら血清型の代わりに(または組み合わせて)使用できることを理解するだろう。
2.配列
親のアデノウイルスは、親のアデノウイルスの望ましい特性を有するキャプシドを生成するために必要な構造タンパク質を含むその内部領域を、本発明のキメラ構築物に提供する。これらの所望する特性には限定するわけではないが、標的細胞に感染し、そしてヘテロロガスな導入遺伝子を送達する能力、他のアデノウイルスの血清型に向けられた中和抗体を回避する能力(すなわち交差−反応性によるクリアランスを回避する)、および/またはキメラアデノウイルスに対する免疫応答の不存在下で細胞に感染する能力を含む。そのような特性の利点は、アデノウイルスベクターを繰り返し送達することが関与する処方で最も迅速に明らかとなり得る。少なくとも5’ITR、E1領域、E4領域および3’ITRを含む親のアデノウイルスの左および右末端は非機能的であり、そして好ましくは完全に存在しない。場合によりこの親のアデノウイルスに由来するすべてのアデノウイルス調節タンパク質は非機能的であり、そして構造タンパク質(または選択した構造タンパク質)のみが保持される。
【0030】
最低でも、親のアデノウイルスはヘキソンタンパク質をコードするアデノウイルス後期領域を提供する。適切には、親のアデノウイルスはペントンおよびファイバーをコードする後期領域をさらに提供する。特定の態様では、L1(52/55Da、IIIaタンパク質をコードする)、L2(ペントン、VII、V、Muタンパク質をコードする)、L3(VI、ヘキソン、エンドプロテアーゼをコードする)、L4(100kD、33kD、VIIIタンパク質をコードする)、およびL5(ファイバータンパク質をコードする)を含む機能的アデノウイルス後期領域のすべてが、親のアデノウイルスにより供給される。場合により、1もしくは複数のこれら後期遺伝子機能は、ヘキソン、ペントンおよびファイバータンパク質を除いて機能的に削除することができる。任意の必要な構造タンパク質をトランスに供給してもよい。
【0031】
このように特定の態様では、キメラアデノウイルスはさらに1もしくは複数の機能的遺伝子を含み、それらには内部領域を供与する親のアデノウイルスに由来するエンドプロテアーゼオープンリーディングフレーム、DNA結合タンパク質、100kDaスカフォールドタンパク質、33kDaタンパク質、タンパク質VIII、pTP、52/55kDaタンパク質、タンパク質VII、Muおよび/またはタンパク質VIを含む。場合により1もしくは複数の遺伝子は、上記のように供与アデノウイルスの血清型とキャプシドタンパク質を提供する親のアデノウイルスの血清型の融合から形成されたハイブリッドであることができる。
C.「ミニジーン」
典型的には本発明のアデノウイルスベクターは、部分的に削除された、完全に削除された(存在しない)、または破壊されたアデノウイルス遺伝子の部位に挿入できるミニジーンを含むように設計されている。例えばミニジーンは、そのような機能的E1欠失、または機能的E3欠失の部位、あるいは他の適当な部位に位置することができる。
【0032】
導入遺伝子の選択、「ミニジーン」のクローニングおよび構築、およびそのウイルスベクターへの挿入に使用する方法は、本明細書に提供する教示を考慮すれば、当該技術分野の技術範囲内にある。
1.導入遺伝子
導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質または他の産物をコードする導入遺伝子を挟むベクター配列にヘテロロガスな核酸配列である。核酸コード配列は、宿主細胞中で導入遺伝子の転写、翻訳および/または発現を可能とする様式で調節成分に操作可能に連結される。
【0033】
導入遺伝子配列の組成は、生成するベクターに課される用途に依存するだろう。例えばアデノウイルスベクターは、組換えアデノ−随伴ウイルスの生産に、またはアデノウイルスベクターにより供給される本質的なアデノウイルス遺伝子機能を欠いた組換えアデノウイルスの生産に、または種々の生産用途にヘルパーウイルスとして使用することができる。あるいはアデノウイルスベクターは診断目的に使用することができる。
【0034】
導入遺伝子配列の1つの種類はレポーター配列を含み、これは発現により検出可能なシグナルを生産する。そのようなレポーター配列には限定するわけではないが、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、例えばCD2、CD4、CD8を含む膜結合タンパク質、インフルエンザ赤血球凝集タンパク質、および当該技術分野で周知の他のもの(これらに対する高親和性抗体が存在するか、あるいは通例の手段により生成することができる)、ならびに中でもとりわけ赤血球凝集素またはMycに由来する抗原のタグドメインに適切に融合した膜結合タンパク質を含んでなる融合タンパク質をコードするDNA配列を含む。これらのコード配列はそれらの発現を駆動する調節要素と会合した時、酵素、放射線、比色、蛍光または他の分光的アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫組織化学を含む免疫学的アッセイを含む一般的な手段により検出可能なシグナルを提供する。例えばマーカー配列がLacZ遺伝子である場合、シグナルを持つベクターの存在は、ベータガラクトシダーゼ活性に関するアッセイにより検出される。導入遺伝子がGFPまたはルシフェラーゼである場合、シグナルを持つベクターはルミノメーター中での色または光の生産により視覚的に測定することができる。
【0035】
しかし望ましくは、導入遺伝子はタンパク質、ペプチド、RNA、酵素または触媒RNAのような生物学および医学で有用な産物をコードする非−マーカー配列である。望ましいRNA分子にはtRNA、dsRNA、リボソームRNA、si RNA、小ヘアピンRNA、トランス−スプライシングRNA、触媒RNAおよびアンチセンスRNAを含む。有用なRNA配列の1例は、処置する動物中の標的核酸配列の発現を無効にする配列である。
【0036】
導入遺伝子は、例えば遺伝子欠損の処置に、癌の治療またはワクチンとして、免疫応答を誘導するために、および/または予防用ワクチンの目的に使用することができる。本明細書で使用するように免疫応答の誘導とは、分子に対するT細胞および/または体液性免疫応答を誘導する分子(例えば遺伝子産物)の能力を称する。本発明はさらに、例えば多−サブユニットタンパク質により引き起こされる状態を正すか、または改善するために多数の導入遺伝子を使用することを含む。特定の状況ではタンパク質の各サブユニットをコードするために、または異なるペプチドまたはタンパク質をコードするために種々の導入遺伝子を使用することができる。これは例えば、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい時、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子またはジストロフィンタンパク質について望ましい。細胞が多−サブユニットタンパク質を生産するためには、細胞を異なる各サブユニットを含む組換えウイルスに感染させる。あるいはタンパク質の種々のサブユニットが同じ導入遺伝子によりコードされてもよい。この場合、1つの導入遺伝子が各サブユニットをコードするDNAを含み、各サブユニットのDNAはインターナルリボザイムエントリーサイト(internal ribozyme entry site:IRES)により分けられている。これは各サブユニットをコードするDNAのサイズが小さい時、例えばサブユニットをコードするDNAおよびIRESの全サイズが5キロベース未満である時に望ましい。IRESに対する代わりとして、DNAは2Aペプチド(これは翻訳後反応(event)で自己−分解する)をコードする配列に
より分けられてもよい。例えば、M.L.Donnelly,et al.,J.Gen.Virol.78(Pt1):13−21(Jan1997);Furler,S.,et al.,Gene Ther.,8(11):864−873(June 2001);Klump H.,et al.,Gene Ther.,8(10):811−817(May 2001)を参照にされたい。この2AペプチドはIRESよりも有意に小さく、スペースが限定因子となる時の使用によく適している。しかし選択した導入遺伝子は生物学的に活性な産物または他の産物、例えば研究に望ましいいかなる産物もコードすることができる。
【0037】
適切な導入遺伝子は当業者により容易に選択され得る。導入遺伝子の選択が本発明を限定するとは考えられない。
2.ベクターおよひ導入遺伝子調節要素
ミニジーンに関して上記で確認した主要な要素に加えて、アデノウイルスベクターは、本発明により生産されたプラスミドベクターでトランスフェクトした、またはウイルスに感染した細胞での転写、翻訳および/または発現を可能とする様式で導入遺伝子に操作可能に連結された通常の制御要素も含む。本明細書で使用するように「操作可能に連結された」配列には、目的の遺伝子に連続する発現制御配列、および目的の遺伝子を制御するためにトランスに作用するか、または一定距離の発現制御配列の両方を含む。
【0038】
発現制御配列には適切な転写開始、終結、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルのような効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質mRNAを安定化する配列;翻訳効率を強化する配列(すなわちKozak共通配列);タンパク質の安定性を強化する配列;および所望により、コードされた産物の分泌を強化する配列を含む。天然の、構成的な、誘導性のおよび/または組織特異的なプロモーターを含む莫大な数の発現制御配列が当該技術分野では知られており、そして利用することができる。
【0039】
構成的プロモーターの例には限定するわけではないが、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によりRSVエンハンサーを含む)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によりCMVエンハンサーを含む)[例えばBoshart et al.,Cell,41:521−530(1985)を参照にされたい]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーターおよびEF1αプロモーター[インビトロゲン(Invitrogen)]を含む。
【0040】
誘導性プロモーターは遺伝子発現の調節を可能とし、そして外から供給される化合物、温度のような環境的因子、または特別な生理学的状態、例えば急性期、細胞の特定の分化状態の存在により、あるいは複製している細胞のみで調節され得る。誘導性プロモーターおよび誘導性系は、限定するわけではないがインビトロジェン(Invitrogen)、クロンテック(Clontech)およびアリアド(Ariad)を含む様々な商業的供給源から入手することができる。多くの他の系が記載され、そして当業者により容易に選択され得る。例えば誘導性プロモーターには亜鉛−誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーターおよびデキサメタゾン(Dex)−誘導性マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターを含む。他の誘導性の系にはT7ポリメラーゼプロモーター系[国際公開第98/10088号パンフレット];エクジソン昆虫プロモーター[No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351(1996)]、テトラサイクリン−抑制系[Gossen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551(1992)]、テトラサイクリン−誘導系[Gossen et al.,Science,268:1766−1769(1995)、またHarvey et al.,Curr,Opin.Chem
.Biol.,2:512−518(1998)を参照にされたい]を含む。他の系にはカストラジオール、ジフェノールムリスレロンを使用するFK506二量体、VP16またはp65、RU486−誘導性系[Wang et al.,Nat.Biotech.,15:239−243(1997)およびWang et al.,Gene Ther.,4:432−441(1997)]およびラパマイシン−誘導性系[Magari et al.,J.Clin.Invest.100:2865−2872(1997)]を含む。幾つかの誘導性プロモーターの効率は時間経過に伴い上昇する。そのような場合、そのような系の効率はタンデムに多くのリプレッサーを挿入すること、例えばIRESによりTetRに連結されたTetRにより強化することができる。あるいは所望の機能をスクリーニングする前に少なくとも3日間待つことができる。所望するタンパク質の発現は、この系の効率を強化するための既知の手段により強化することができる。例えばウッドチャック(Woodchuck)肝炎ウイルス転写後調節要素(WPRE)を使用すること。
【0041】
別の態様では、導入遺伝子に天然のプロモーターを使用する。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が自然な発現を模するべきであることが望まれる場合に好適となり得る。天然のプロモーターは導入遺伝子の発現が一時的にもしくは発育的に、または組織特異的様式で、あるいは特異的な転写刺激に応答して調節されなければならない場合に使用することができる。さらなる態様では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはKozak共通配列のような他の天然発現制御要素を使用して、自然な発現を模することもできる。
【0042】
導入遺伝子の別の態様には、組織−特異的プロモーターに操作可能に連結された導入遺伝子を含む。例えば骨格筋中での発現が望まれる場合、筋肉中で活性なプロモーターを使用するべきである。これらには骨格筋β−アクチン、ミオシン軽鎖2A、ジストロフィン、筋肉クレアチンキナーゼをコードする遺伝子に由来するプロモーター、ならびに自然に存在するプロモーターよりも高い活性を持つ合成の筋肉プロモーターを含む(Li et
al.,Nat.Biotech.,17:241−245(1999)を参照にされたい)。組織−特異的であるプロモーターの例は、中でも肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,J.Virol.,71:5124−32(1997);B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,Gene Ther.,3:1002−9(1996);アルファ−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,Hum.Gene.Ther.,7:1503−14(1996))、骨のオステオカルシン(Stein et al.,Mol.Biol.Rep.,24:185−96(1997));骨シアロプロテイン(Chen et al.,J.Bone Miner.Res.,11:654−64(1996)),リンパ球(CD2、Hansal et al.,J.Immunol.,161:1063−8(1998);免疫グロブリン重鎖;T細胞レセプター鎖)、ニューロン−特異的エノラーゼ(NSE)プロモーターのような神経性(Andersen et al.,Cell.Mol.Neurobiol.,13:503−15(1993))、ニューロフィラメント軽−鎖遺伝子(Piccioli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611−5(1991))、およびニューロン−特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,Neuron,15:373−84(1995))について知られている。
【0043】
場合により治療的に有用な、または免疫原性の産物をコードする導入遺伝子を持つベクターは、中でもジェネティシン、ヒグロマイシンまたはプューロマイシン(purimycin)耐性をコードする配列を含むことができる選択可能なマーカーまたはレポーター遺伝子を含んでもよい。そのような選択可能なレポーターまたはマーカー遺伝子(好ましくはウイルス粒子にパッケージングされるウイルスゲノムの外側に位置する)を使用し
て、アンピシリン耐性のような細菌細胞中でのプラスミドの存在のシグナルを出すことができる。ベクターの他の成分には、複製起点を含むことができる。これらおよび他のプロモーターおよびベクター要素の選択は通例であり、そして多くのそのような配列を利用することができる[例えばSambrook et al.、およびそこに引用されている参考文献を参照にされたい]。
【0044】
これらのベクターは、本明細書に提供する技術および配列を当業者に既知の技術と一緒に使用して作成される。そのような技術にはテキスト[Sambrook et al.、モレキュラークローニング:ア ラボラトリーマニュアル、コールドスプリングハーバー出版、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州]に記載されているような通例のcDNAのクローニング技法、アデノウイルス ゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応および所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適当な方法の使用を含む。
II.組換えウイルス粒子の生産
1つの態様では本発明は、キメラアデノウイルスのキャプシドが選択した宿主細胞中で効率的に増殖できない血清型である組換えキメラアデノウイルス粒子の生成法を提供する。組換えキメラアデノウイルス粒子の生産に適するベクターは、直接的クローニングにより生成することができる。あるいはそのような粒子はキメラアデノウイルスゲノムの左末端を含有する第1ベクターとキメラアデノウイルスゲノムの右末端を含有する第2ベクターとの間の相同的組換えにより生成することができる。しかし当業者に知られている任意の適切な方法を容易に利用して、好ましくはミニジーンを含む全キメラアデノウイルスゲノムを含有する生産ベクターを生成するために適するベクターを生成することができる。次いでこの生産ベクターは宿主細胞に導入され、そこでアデノウイルスキャプシドタンパク質が集成され、そしてキメラアデノウイルス粒子が記載のように集成される。
【0045】
本発明のキメラアデノウイルスは、1もしくは複数のアデノウイルス遺伝子が存在しないか、または非機能的にされているものを含む。失った遺伝子機能がアデノウイルス粒子の複製および感染性に必須であるならば、これらの機能は相補(またはトランス相補する)細胞株、またはキメラアデノウイルス粒子の生産中にこれらの機能を発現するヘルパーベクターにより供給される。
【0046】
そのような失ったアデノウイルス遺伝子機能を含有するキメラアデノウイルスの例には、E1aおよび/またはE1b遺伝子が部分的または完全に欠失しているものを含む。そのような場合、E1遺伝子機能は、パッケージング宿主細胞により供給されることができ、キメラ構築物のE1遺伝子機能の欠失を可能とし、そして所望により導入遺伝子をこの領域に挿入できるようにする。場合によりE1遺伝子は、さらに組換えの可能性を下げ、そして安全性を改善するために、別のアデノウイルス配列を提供する血清型をトランス相補する血清型であることができる。別の態様では、完全なE1aおよび/またはE1b領域が組換えアデノウイルスに保持されていることが望ましい。そのような完全なE1領域はアデノウイルスゲノム中で自然な位置に配置されるか、または天然のアデノウイルスゲノム中の削除された部位に配置されてもよい(例えばE3領域)。
【0047】
別の例では、アデノウイルス後初期遺伝子E3の全部または一部を、キメラアデノウイルスから排除することができる。アデノウイルスE3の機能は組換えウイルス粒子の機能および生産には無関係であると考えられている。キメラアデノウイルスベクターはE4遺伝子の少なくともORF6領域の欠失を有するように、そしてより望ましくはこの領域の機能の重複から、全E4領域の欠失を有するように構築することもできる。本発明のさらに別のベクターは、後初期遺伝子E2aに欠失を含む。同様に中期遺伝子IXおよびIVa中の欠失も幾つかの目的に有用となり得る。場合により欠失は、上記のように後期遺伝子L1からL5を通して選択した部分に作成してもよい。
【0048】
他の欠失を別の構造的または非構造的アデノウイルス遺伝子に作成することができる。上記に検討した欠失は個々に使用することができ、すなわち本発明で使用するアデノウイルス配列は単一領域にのみ削除を含むことができる。あるいはそれらの生物学的活性を破壊するために効果的な全遺伝子またはその部分の欠失を、任意に組み合わせてもよい。例えば1つの例示ベクターでは、アデノウイルス配列はE1遺伝子およびE4遺伝子の欠失、またはE1、E2aおよびE3遺伝子の欠失、またはE1およびE3遺伝子の欠失、またはE3の欠失を含むか、または含まずにE1、E2aおよびE4遺伝子の欠失等を有することができる。上記に検討したように、そのような欠失は温度−感受性突然変異のような他の突然変異と組み合わせて使用して所望の結果を達成することができる。
【0049】
適当なトランス相補する血清型の例を上に提供する。トランス相補する血清型の使用は、本発明のベクター中のAd配列と現在利用可能なパッケージング細胞に見いだされるヒトAdE1配列との間に多様性がある場合、特に有利となり得る。そのような場合、現在のヒトE1−含有細胞の使用は、複製および生産プロセス中に複製可能なアデノウイルスの生成を妨げる。しかし特定の状況下では、E1遺伝子産物を発現する細胞株を利用することが、E1−欠失サルアデノウイルスの生産に利用できることが望ましい。そのような細胞株はすでに記載されている。例えば米国特許第6,083,716号明細書を参照にされたい。
A.パッケージング宿主細胞
適当には、パッケージング宿主細胞は、キメラゲノムの左および右末端を供与するアデノウイルスの血清型が効率的に増殖できる細胞の中から選択される。宿主細胞は好ましくは哺乳動物起源であり、そして最も好ましくは非−ヒト霊長類またはヒト起源である。
【0050】
特に望ましくは、宿主細胞は限定するわけではないが、A549[ATCC寄託番号CCL185]、911細胞、WEHI、3T3、10T1/2、HEK293細胞またはPERC6(両方とも機能的アデノウイルスE1を発現する)[Fallaux,FJ et al.,(1998),Hum Gene Ther.9:1909−1917]、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、HeLa[ATCC寄託番号CCL2]、KB[CCL 17]、Detroit[例えばDetroit510、CCL72]およびWI−38[CCL75]細胞、およびヒト、モンキー、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む哺乳動物に由来する初代繊維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を含む任意の哺乳動物種の中から選択される。これらの細胞株はすべて、20110−2209、バージニア州マナッサス、10801ブルヴァール大学のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能である。他の適切な細胞株は、他の供給元から得ることができる。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定せず、そして哺乳動物細胞の型、すなわち繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞等も本発明を限定しない。
【0051】
上記のように本発明のキメラアデノウイルスは、1もしくは複数の機能的アデノウイルス調節および/または構造遺伝子を欠くことができ、これは宿主細胞により、またはトランスに供給されて、キメラアデノウイルスのウイルスキャプシドへのパッケージングが行われ、ウイルス粒子が生成される。すなわち選択した宿主細胞がアデノウイルス配列をトランス相補することを供給する能力を、所望の宿主細胞の選択で考慮することができる。
【0052】
1例では、細胞は本発明のキメラに左および右末端を供与するアデノウイルスの血清型をトランス相補する細胞株に由来するアデノウイルスE1aおよびE1b機能を発現する安定な細胞株に由来し、キメラをE1−欠失とすることができる。あるいは細胞株が末端を供与するアデノウイルスをトランス相補しない場合、E1機能はキメラにより、またはトランスに提供され得る。
【0053】
所望により、本明細書に提供する配列を利用して、選択した親細胞株中で発現用のプロモーターの転写制御下に、5’ITRを供与するアデノウイルスの血清型、またはトランス相補血清型に由来するアデノウイルスE1遺伝子を最低限発現するパッケージング細胞または細胞株を作成することができる。誘導性または構成的プロモーターをこの目的に使用することができる。そのようなプロモーターの例は、本明細書のいたるところに記載する。親細胞は例えばヒトAd5、AdPan5、Pan6、Pan7、SV1、SV25またはSV39遺伝子を含む所望のアデノウイルスまたはアデノウイルス遺伝子を発現する新規細胞株を作成するために選択される。限定するわけではないがそのような親細胞系はとりわけHeLa[ATCC寄託番号CCL2]、A549[ATCC寄託番号CCL185]、HEK293、KB[CCL17]、Detroit[例えばDetroit510、CCL72]およびWI−38[CCL75]細胞であることができる。これらの細胞株の多くは、すべてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから入手可能である。他の適当な親細胞株は他の供給元から得ることができる。
【0054】
そのようなE1発現細胞株は、キメラアデノウイルスE1欠失ベクターの生成に有用である。さらに、あるいは本発明は1もしくは複数のサルアデノウイルス遺伝子産物、例えばE1a、E1b、E2aおよび/またはE4 ORF6を発現する細胞株を提供し、これはキメラウイルスベクターの生成に使用するための手順と本質的に同じ手順を使用して構築することができる。そのような細胞株はこれらの産物をコードする本質的遺伝子が欠失しているアデノウイルスベクターをトランス相補するために、またはヘルパー依存的ウイルス(例えばアデノ随伴ウイルス)のパッケージングに必要なヘルパー機能を提供するために利用することができる。本発明による宿主細胞の調製には、選択したDNA配列の集成のような技法が関与する。この集成は通例の技法を使用して行うことができる。そのような技法には、周知であり、そして上に引用したSambrook et al.に記載されたcDNAおよびゲノムクローニング、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせたアデノウイルスゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、合成法および所望のヌクレオチド配列を提供する他の適切な方法を含む。
【0055】
さらに別の代替的な、必須アデノウイルス遺伝子産物は、アデノウイルスベクターおよび/またはヘルパーウイルスによりトランスに提供される。そのような場合では、適当な宿主細胞は原核(例えば細菌)細胞、および昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を初めとする真核細胞を含む任意の生物から選択することができる。特に望ましい宿主細胞は、限定するわけではないがA549、WEHI、3T3、10T1/2、HEK293細胞またはPERC6(両方とも機能的アデノウイルスE1を発現する)[Fallaux,FJ et al.,(1998),Hum Gene Ther.9:1909−1917]、Saos、C2C12、L細胞、HT1080、HepG2、およびヒト、モンキー、マウス、ラット、ウサギおよびハムスターを含む哺乳動物に由来する初代繊維芽細胞、肝細胞および筋芽細胞のような細胞を含む任意の哺乳動物種の中から選択される。細胞を提供する哺乳動物種の選択は本発明を限定せず、また哺乳動物細胞の型、すなわち繊維芽細胞、肝細胞、腫瘍細胞等も本発明を限定しない。
B.ヘルパーベクター
このようにアデノウイルスベクターのアデノウイルス遺伝子内容および宿主細胞から発現されるアデノウイルス遺伝子機能に依存して、ヘルパーベクターは、ミニジーンを含む感染性の組換えウイルス粒子を生産するために必要な十分なアデノウイルス遺伝子配列を提供するために必要となり得る。例えば1996年5月9日に公開された国際公開第96/13597号パンフレット(これは引用により本明細書に編入する)中の「最小」ヒトAdベクターの調製について記載された技術を参照にされたい。適切には、これらヘルパーベクターは非複製遺伝子要素、プラスミドまたはウイルスである。
【0056】
有用なヘルパーベクターは、アデノウイルスベクター構築物には存在せず、かつ/またはベクターがトランスフェクトされるパッケージング細胞系により発現されない選択したアデノウイルス 遺伝子配列を含む。1つの態様では、ヘルパーウイルスは複製−欠損であり、そして上記の配列に加えて種々のアデノウイルス遺伝子を含む。そのようなヘルパーベクターは、望ましくはE1−発現細胞系と組み合わせて使用される。
【0057】
ヘルパーベクターは、Wu et al.,J.Biol.Chem.,264:16985−16987(1989);K.J.Fisher and J.M.Wilson,Biochem.J.299:49(1994年4月1日)に記載されているようにポリ−カチオン結合物中に形成することもできる。ヘルパーベクターは場合により第2のレポーターミニジーンを含んでもよい。多数のそのようなレポーター遺伝子が当該技術分野では知られている。アデノウイルスベクター上の導入遺伝子とは異なるヘルパーウイルス上のレポーター遺伝子の存在は、Adベクターおよびヘルパーベクターの両方を独立して監視できるようにする。この第2レポーターの使用により、精製時に生成した組換えウイルスとヘルパーウイルスとの間の分離が可能となる。
C.ウイルス粒子の集合および細胞株のトランスフェクション
一般にミニジーンを含んでなるベクターをトランスフェクションにより送達する場合、ベクターは約5μg〜約100μgのDNA、そして好ましくは約10〜約50μgのDNAの量で、約1×10細胞〜約1×1013細胞、そして好ましくは約10細胞に送達される。しかし宿主細胞に対するベクターDNAの相対的量は、選択したベクター、送達法および選択した宿主細胞のような因子を考慮して調整するとができる。
【0058】
ベクターの宿主細胞への導入はトランスフェクションおよび感染を含め、当該技術分野で知られているか、または上記に開示した任意の手段により行うことができる。1もしくは複数のアデノウイルス遺伝子が宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれ、エピソームとして安定に発現されるか、または一時的に発現される。遺伝子産物はすべてエピソームで一時的に発現されるか、または安定に組み込まれるか、または遺伝子産物の幾つかが安定に発現されるが、その他は一時的に発現され得る。
【0059】
さらに各アデノウイルス遺伝子のプロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーターまたは天然のアデノウイルスプロモーターから独立して選択することができる。プロモーターは生物または細胞の特異的な生理学的状態(すなわち分化状態または複製中または静止細胞)により、あるいは例えば外から加えた因子により調節され得る。
【0060】
分子(プラスミドまたはウイルスとして)を宿主細胞へ導入することは、当業者に知られている技術を使用して、および本明細書を通して検討したように行うことができる。好適な態様では、標準的なトランスフェクション技術、例えばCaPOトランスフェクションまたはエレクトロポレーションを使用する。
【0061】
アデノウイルスの選択したDNA配列(ならびに導入遺伝子および他のベクター要素)の種々の中間プラスミドへの集成、および組換えウイルス粒子を生成するためのプラスミドおよびベクターの使用はすべて通例の技術を使用して達成される。そのような技術には記載されているような通例の直接的クローニングがある[Gao et al.,Gene Ther.2003 Oct;10(22):1926−1930;2003年5月15日に公開された米国特許出願第2003−0092161−A号明細書;国際特許出願第PCT/US03/12405号パンフレット]。テキスト[Sambrook et al.,同上]に記載されているようなcDNAの他のクローニング技法、アデノウイルス ゲノムの重複オリゴヌクレオチド配列の使用、ポリメラーゼ連鎖反応、および所望のヌクレオチド配列を提供する任意の適当な方法を使用することができる。標準的なトランスフェクションおよびコートランスフェクション技法、例えばCaPO沈殿技法を
使用する。使用する他の常法には、ウイルスゲノムの相同的組換え、寒天層中のウイルスプラークの形成、シグナル生成の測定法等を含む。
【0062】
例えば所望するミニジーンを含むウイルスベクターを構築し、そして集成した後、ベクターは任意のヘルパーベクターの存在下でパッケージング細胞株にインビトロでトランスフェクトする。プラスミド、パッケージング細胞株およびヘルパーウイルスから発現される機能は、もしあれば、ベクター中のアデノウイルス−導入遺伝子配列が複製され、そしてビリオンキャプシドにパッケージングされ、キメラウイルス粒子を生じることを可能にする。そのようなウイルス粒子を生産する現行法は、トランスフェクションに基づく。しかし本発明はそのような方法に限定されない。生成したキメラアデノウイルスは選択した導入遺伝子を選択した細胞に転移させるために有用である。
III.キメラアデノウイルスベクターの使用
本発明の組換えサルアデノウイルスベクターは、ヒトまたは獣医学上の患者(非ヒト霊長類、非−サル霊長類およびその他の哺乳動物を含む)に、インビトロ、エクスビボおよびインビボで遺伝子を転移するために有用である。
【0063】
本明細書に記載する組換えアデノウイルスベクターは、インビトロでヘテロロガスな遺伝子によりコードされる産物を生産するための発現ベクターとして使用することができる。例えばE1欠失の位置に挿入された遺伝子を含む組換えアデノウイルスは、上記のようにE1−発現細胞株にトランスフェクトすることができる。あるいは複製−可能なアデノウイルスを別の選択した細胞株で使用してもよい。次いでトランスフェクトされた細胞は通例の様式で培養され、組換えアデノウイルスがプロモーターから遺伝子産物を発現することを可能にする。次いで遺伝子産物は、タンパク質の分離および培養物からの回収の既知の常法により培養基から回収され得る。
【0064】
本発明のキメラアデノウイルスベクターは、たとえ生物が1もしくは複数のAAV血清型に対する中和抗体を有する場合でも、選択した導入遺伝子を選択した細胞にインビボまたはエクスビボで送達することができる効率的な遺伝子転移媒体を提供する。1つの態様では、rAdおよび細胞をエクスビボで混合し;感染した細胞を常法を使用して培養し;そして形質導入した細胞を患者に再注入する。このような組成物は治療目的および防御免疫を誘導することを含む免疫感作のための遺伝子送達に特によく適している。
【0065】
より一般的には、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、以下に記載するように治療用または免疫原性分子を送達するために利用される。両方の応用について、本発明の組換えアデノウイルスベクターが組換えアデノウイルスベクターの反復送達が関与する処方での使用に特によく適していることは容易に理解されるだろう。そのような処方には典型的にはウイルスキャプシドが改変されている一連のウイルスベクターの送達を含む。ウイルスキャプシドはそれぞれの後の投与に、または特定の血清型のキャプシドを予め選択した回数(例えば1、2、3、4以上)投与した後に変えることができる。このように処方には第1のキャプシドを持つrAdの送達、第2のキャプシドを持つrAdの送達、そして第3のキャプシドの送達を含むことができる。本発明のAdキャプシドを単独で、互いに組み合わせて、または他のAd血清型と組み合わせて使用する様々な他の処方は、当業者には明白であろう。場合によりそのような処方には他の非−ヒト霊長類のアデノウイルス、ヒトアデノウイルスまたは本明細書に記載するような人工(例えばキメラ)血清型のキャプシドを持つrAd投与を含んでもよい。処方の各フェイズでは、単一のAd血清型キャプシドの一連の注射(または他の送達経路)、続いて別のAd血清型キャプシドの一連の注射の投与を含んでもよい。あるいは本発明の組換えAdベクターは、他のウイルス系、非−ウイルス送達系、タンパク質、ペプチドおよび他の生物学的に活性な分子を含む他の非−アデノウイルス媒介型送達系が関与する処方に利用することができる。
【0066】
以下の章では本発明のアデノウイルスベクターを介して送達され得る例示分子に焦点をあてる。
A.治療用分子のAd−媒介型送達
1つの態様では、本明細書に記載するAdベクターは遺伝子治療に関して公開された方法に従いヒトに投与される。選択された導入遺伝子を持つ本発明のウイルスベクターは、好ましくは生物学的に適合性がある溶液または製薬学的に許容され得る送達賦形剤中に懸濁されて患者に投与することができる。適当な賦形剤には滅菌塩水を含む。製薬学的に許容され得る担体となることが知られており、そして当業者に周知な他の水性および非−水性の等張滅菌注射溶液、および水性および非−水性の滅菌懸濁液を、この目的に使用することができる。
【0067】
アデノウイルスベクターは、標的細胞を形質導入し、そして医学分野の当業者により定められ得る副作用無しで、または医学的に許容される生理学的効果で治療的利益を提供するために、十分なレベルの遺伝子転移および発現を提供するために十分な量で投与される。通例の、そして製薬学的に許容され得る投与経路には、限定するわけではないが網膜への直接送達および他の眼内送達法、肝臓への直接的送達、吸入、鼻内、静脈内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、直腸、経口および他の非経口投与経路を含む。投与経路は所望により組み合わせるか、または導入遺伝子または状態に依存して調整することができる。投与経路は主に処置する状態の性質に依存する。
【0068】
ウイルスベクターの投薬用量は、処置する状態、患者の年齢、体重および健康のような因子に主に依存し、そして患者間で変動し得る。例えばウイルスベクターの治療に効果的な成人ヒトまたは獣医学上の投薬用量は、一般に約1×10〜約1×1015粒子、約1×1011〜1×1013粒子、または約1×10〜1×1012粒子の濃度を含む約100μL〜約100mLの範囲内の担体である。投薬用量は動物のサイズおよび投与経路に依存した範囲になるだろう。例えば筋肉内注射に適するヒトまたは獣医学上の投薬用量(動物の体重約80kgあたり)は、1つの部位に1mLあたり約1×10〜約5×1012粒子の範囲である。場合により多くの投与部位で送達してもよい。別の例では、適当なヒトまたは獣医学上の投薬用量は、経口製剤について約1×1011〜約1×1015粒子の範囲でよい。当業者はこれらの用量を投与経路、および組換えベクターが使用される治療またはワクチンの応用に依存して調整することができる。導入遺伝子の発現レベル、または免疫原について循環する抗体レベルは、投薬頻度を決定するために監視することができる。投与の時期および頻度を決定するためのさらに別の方法は当業者に直ちに明らかである。
【0069】
方法の任意の工程には、ウイルスベクターの投与と同時、前、または後のいずれかに適当量の短期作用免疫調節物質を患者に同時投与することを含む。選択した免疫調節物質は、本発明の組換えベクターに対して向けられた中和抗体の形成を阻害できるか、またはベクターの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)排除を阻害できる作用物質とここでは定義する。免疫調節物質はTヘルパー物質(TH1またはTH2)とB細胞との間の相互作用を妨害して抗体形成を阻害することができる。あるいは免疫調節物質はTH1細胞とCTLsとの間の相互作用を阻害して、ベクターのCTL排除が発生することを減少させることができる。種々の有用な免疫調節物質およびそれを使用するための投薬用量が、例えばYang et al.,J.Virol.,70(9)(1996年9月);1996年5月2日に公開された国際公開第96/12406号パンフレット;および国際特許出願第PCT/US96/03035に開示され、これらはすべて引用により本明細書に編入する。典型的にはそのような免疫調節物質は、導入遺伝子が繰り返し送達を必要とする治療薬である時に選択されるだろう。
1.治療用の導入遺伝子
導入遺伝子によりコードされる有用な治療用産物には、限定するわけではないがインス
リン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、濾胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンギオポイエチン、アンギオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリスロポエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGF、アクチビン、インヒビンを含むトランスフォーミング増殖因子スーパーファミリーの任意のもの、あるいは任意の骨誘導タンパク質(BMP)のBMPs1〜15、増殖因子のヒレグリン/ニューレグリン/ARIA/neu 分化因子(NDF)ファミリーの任意のもの、神経増殖因子(NGF)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ノルチュリン(neurturin)、アグリン、セマフォリン/コラポスリンファミリーの任意のもの、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン類(ephrins)、ノギン、ソニックヘッジホッグおよびチロシンヒドロキシラーゼを含むホルモンおよび増殖および分化因子を含む。
【0070】
他の有用な導入遺伝子産物には、限定するわけではないがトロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1からIL−25(例えばIL−2、IL−4、IL−12およびIL−18を含む)、単球誘引タンパク質、白血病阻害因子、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子およびインターフェロン、および幹細胞因子、flk−2/flt3リガンドのようなサイトカインおよびリンホカインを含む免疫系を調節するタンパク質を含む。免疫系により生産される遺伝子産物も、本発明に有用である。これらには限定するわけではないが免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、単鎖抗体、T細胞レセプター、キメラT細胞レセプター、単鎖T細胞レセプター、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに作り替えられた免疫グロブリンおよびMHC分子を含む。有用な遺伝子産物には補体調節タンパク質、膜コファクタータンパク質(membrane cofactor protein:MCP)、崩壊促進因子(DAF)、CR1、CF2およびCD59のような補体調節タンパク質を含む。
【0071】
さらに他の有用な遺伝子産物には、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質および免疫系タンパク質の任意のレセプターを含む。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)レセプター、高密度リポタンパク質(HDL)レセプター、超低密度リポタンパク質(VLDL)レセプターを初めとするコレステロール調節に関するレセプター、脂質の調節に有用なタンパク質(例えばアポリポタンパク質(アポ)Aおよびそのアイソマー(例えばApoAI)、アポEおよびE2、E3およびE4を含むそのアイソフォーム)、SRB1、ABC1、およびスカベンジャーレセプターを包含する。また本発明は、グルココルチコイドレセプターおよびエストロゲンレセプター、ビタミンDレセプターおよび他の核レセプターを初めとするステロイドホルモンレセプタースーパーファミリーのメンバーのような遺伝子産物も包含する。加えて有用な遺伝子産物には、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP−2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETS−ボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAAT−ボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS−結合タンパク質、STAT、GATA−ボックス結合タンパク質、例えばGATA−3、および翼型ヘリックス(winged helix)タンパク質のフォークヘッド(forkhead)ファミリーのような転写因子を含む。
【0072】
他の有用な遺伝子産物には、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ−1アンチトリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、シスタチオンベータシンターゼ、分枝鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル−coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ−グリコシダーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性繊維症膜貫通調節(CFTR)配列、およびジストロフィンcDNA配列を含む。他の有用な遺伝子産物には、血友病Aの処置に有用な(例えば第VIII因子およびそのバリアント、場合により接合部で操作可能に連結されたヘテロ二量体の軽鎖および重鎖を含む)、およびB−ドメイン欠失第VIII因子、米国特許第6,200、560号および同第6,221,349号明細書を参照にされたい]、および血友病Bの処置に有用な(例えば第IX因子)ものを含む。
【0073】
さらに他の有用な遺伝子産物には、挿入、欠失またはアミノ酸置換を含む自然には存在しないアミノ酸配列を有するキメラまたはハイブリッドポリペプチドのような天然には存在しないポリペプチドを含む。例えば単鎖の作り変えられた免疫グロブリンは特定の免疫抑制患者に有用となり得る。他の種類の天然には存在しない遺伝子配列には、標的の過剰発現を低下させるために使用することができるアンチセンス分子およびリボザイムのような触媒核酸を含む。
【0074】
遺伝子発現の減少および/または調節は、癌および乾癬のような過増殖細胞を特徴とする過増殖状態を処置するために特に望ましい。標的とするポリペプチドには、正常細胞に比べて過増殖細胞で排他的に、または高レベルで生産されるポリペプチドを含む。標的抗原には、myb、myc、fynおよびトランスロケーション遺伝子bcr/abl、ras、src、P53、neu、trkおよびEGRFのような癌遺伝子によりコードされるポリペプチドを含む。標的抗原として癌遺伝子産物に加えて、抗−癌治療および防御的処方のための標的ポリペプチドには、B細胞リンパ腫により作られる抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞レセプターの可変領域を含み、これらは態様によっては自己免疫疾患の標的抗原としても使用される。他の腫瘍−関連ポリペプチドは、モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを含む腫瘍細胞中で高レべルで見いだされるポリペプチドのような標的ポリペプチドとして使用することができる。
【0075】
他の適切な治療用ポリペプチドおよびタンパク質には、自己免疫疾患、および細胞レセプターおよび自己に向かう抗体を生産する細胞を含む自己免疫に関連する標的に対して、広範な防御免疫応答を与えることにより、自己疾患および障害を患っている個体を処置するために有用なものを含む。T細胞性自己免疫疾患には、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、脈管炎、ヴェーゲナー肉芽腫症、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む。これらの各疾患は、内因性の抗原に結合し、そして自己免疫疾患に関係する炎症カスケードを開始するT細胞レセプター(TCRs)を特徴とする。
【0076】
本発明のキメラアデノウイルスベクターは、導入遺伝子を多数のアデノウイルスが媒介して送達することが望まれる治療的処方、例えば同じ導入遺伝子の再送達が関与する処方または他の導入遺伝子の送達が関与する併用処方に特によく適している。そのような処方
には、キメラアデノウイルスベクターの投与、続いて同じ血清型のアデノウイルスに由来するベクターの再投与を含むことができる。特に望ましい処方には、本発明のキメラアデノウイルスベクターの投与を含み、ここで初回投与で送達されるウイルスベクターの血清型は、1もしくは複数の後の投与で使用するウイルスベクターの血清型とは異なる。例えば治療的処方には、キメラベクターの投与および同じかまたは異なる血清型の1もしくは複数のアデノウイルスベクターの反復投与を含む。別の例では、治療的処方にはアデノウイルスベクターの投与、続いて最初に送達したアデノウイルスベクターとは異なる血清型の本発明のキメラベクターの反復投与、そして場合によりさらに同じか、または好ましくは前の投与工程でのベクターの血清型とは異なる別のベクターの投与を含む。これらの処方は本発明のキメラ血清型を使用して構築したアデノウイルスベクターの送達には限定されない。むしろこれらの処方は人工的、ヒトまたは非−ヒト霊長類、あるいは他の哺乳動物起源でよい他のアデノウイルス血清型のキメラまたは非−キメラベクターを、本発明の1もしくは複数のキメラベクターと組み合わせて容易に利用することができる。そのような血清型の例は、本明細書のいたるところで検討する。さらにこれらの治療的処方には、本発明のキメラアデノウイルスベクターを、非−アデノウイルスベクター、非−ウイルスベクターおよび/または種々の他の治療的に有用な化合物または分子と組み合わせて、同時または順次のいずれかで送達することを含んでもよい。本発明はこれらの治療的処方には限定されず、その多様性は当業者には容易に明らかである。
B.免疫原性導入遺伝子のAd−媒介型送達
本発明のアデノウイルスは、免疫原組成物としても使用することができる。本明細書で使用する免疫原組成物は、哺乳動物、そして好ましくは霊長類への送達後に免疫原組成物により送達された導入遺伝子産物に対する体液性(例えば抗体)または細胞性(例えば細胞傷害性T細胞)応答が高められる組成物である。本発明は所望の免疫原をコードする遺伝子をアデノウイルス配列の欠失に含むことができるAdを提供する。サルまたは他の非ヒト哺乳動物血清型に基づくキメラアデノウイルスは、ヒト起源のアデノウイルスに比べて、異なる動物種で生の組換えウイルスワクチンとして使用するためにより適していると思われるが、そのような使用に限定されない。組換えアデノウイルスは、抗原(1もしくは複数)が免疫応答の誘導に重要な任意の病原体に対する予防用または治療用ワクチンとして使用することができ、そしてすでに同定され、そしてそのcDNAを利用することができる病原体の伝播を制限することができる。
【0077】
そのようなワクチン(または他の免疫原性)組成物は、上記のように適当な送達媒体中に配合される。一般に免疫原性組成物の用量は、治療用組成物について上記に定めた範囲である。選択した遺伝子の免疫のレベルは、もしあれば追加免疫感作についての必要性を決定するために監視することができる。血清中の抗体力価の評価後、任意に追加免疫感作することが望ましいかもしれない。
【0078】
場合により本発明のワクチン組成物は、例えばアジュバント、安定化剤、pH調整剤、保存剤等を含む他の成分を含むように配合することができる。そのような成分はワクチン分野の当業者には周知である。適当なアジュバントの例は、限定するわけではないがリポソーム、ミョウバン、モノホスホリル脂質A、およびサイトカイン、インターロイキン、ケモカイン、リガンドおよび任意のそれらの組み合わせのような生物学的に活性因子を含む。これらの生物学的に活性な因子のあるものは、例えばプラスミドまたはウイルスベクターを介してインビボで発現され得る。例えばそのようなアジュバントは抗原をコードする初回感作DNAワクチンと共に投与して、抗原のみをコードするDNAワクチンでの初回感作で生じる免疫応答に比べて、抗原−特異的免疫応答を強化することができる。
【0079】
アデノウイルスは「免疫原的量」、すなわち所望の細胞をトランスフェクトし、そして免疫応答を誘導するために選択した遺伝子の十分な発現レベルを提供するための投与経路で効果的な組換えアデノウイルスの量で投与される。防御免疫が提供される場合、組換え
アデノウイルスは感染および/または疾患の再発の防止に有用なワクチン組成物になると考えられる。
【0080】
あるいは、またはさらに、本発明のベクターは選択した免疫原に対して免疫応答を誘導するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする導入遺伝子を含んでもよい。本発明の組換えアデノウイルスは、ベクターにより発現される挿入されたヘテロロガスな抗原性タンパク質に対する細胞傷害性T細胞および抗体の誘導に高度に効率的であることが予想される。
【0081】
例えば免疫原は種々のウイルス科から選択することができる。免疫応答を望む所望のウイルス科の例は、一般的な風邪の原因の約50%を占めるライノウイルス属を含むピコルナウイルス科;ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスおよびA型肝炎ウイルスのようなヒト腸内ウイルスを含む腸内ウイルス属;および主に非−ヒト動物において足および口の疾患の原因であるアフトウイルス(apthoviruses)属を含む。ウイルスのピコルナウイルス科内で、標的抗原はVP1、VP2、VP3、VP4およびVPGを含む。別のウイルス科には、流行性胃腸炎の重要な病原体であるウイルスのノーウォーク群を包含するカルシウイルス科を含む。ヒトおよび非−ヒト動物に免疫応答を誘導するための標的抗原として使用するために望ましいさらに別のウイルス科は、シンドビスウイルス、ロス川ウイルスおよびベネゼエラ、東部および西部ウマ脳髄膜炎を含むアルファウイルス属、および風疹ウイルスを含むルビウイルスを含むトガウイルス科である。フラビウイルス科にはデング、黄熱、日本脳炎、セントルイス脳炎およびダニ媒介性脳炎ウイルスを含む。他の標的抗原は、感染性気管支炎ウイルス(家禽)、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス(ブタ)、ブタ赤血球凝集脳脊髄炎ウイルス(ブタ)、ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(ネコ)、ネコ腸内コロナウイルス(ネコ)、イヌコロナウイルス(イヌ)のような多数の非−ヒトウイルス、および普通の風邪および/または非−A、BまたはC型肝炎の原因となり得るヒト呼吸コロナウイルスを含むC型肝炎またはコロナウイルス科から生成することができる。加えてヒトコロナウイルスには、重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因源と推定されるものを含む。コロナウイルス科内で、標的抗原にはE1(Mまたはマトリックスタンパク質とも呼ばれる)、E2(Sまたはスパイクタンパク質とも呼ばれる)、E3(HEまたは赤血球凝集素−エルテロース(elterose)とも呼ばれる)、糖タンパク質(すべてのコロナウイルスに存在するわけではない)、またはN(ヌクレオキャプシド)を含む。さらに別の抗原は、ベシキュロウイルス(例えば水疱性口内炎ウイルス)および一般的な狂犬病ウイルス(例えば狂犬病)を含むラブドウイルス科を標的とすることができる。ラブドウイルス科内で適当な抗原は、Gタンパク質またはNタンパク質に由来することができる。マールブルグおよびエボラウイルスのような出血性の発熱ウイルスを含むフィロウイルス科も抗原の適当な供給源となり得る。パラミクソウイルス科には、1型パラインフルエンザウイルス、3型パラインフルエンザウイルス、ウシ3型パラインフルエンザウイルス、ルブラウイルス(ムンプスウイルス)、2型パラインフルエンザウイルス、4型パラインフルエンザウイルス、ニューカッスル病ウイルス(ニワトリ)、牛疫、麻疹およびイヌジステンバーを含むモルビリウイルス、および呼吸合胞体ウイルスを含むニューモウイルスを含む。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルスの科に分類され、そして抗原の適切な供給源である(例えばHAタンパク質、N1タンパク質)。ブンヤウイルス科には、ブンヤウイルス属(カリフォルニア脳炎、ラ クロス(La Crosse))、フレホウイルス属(リフト渓谷熱)、ハンタウイルス属(プレマーラ(puremala)はヘマハギン(hemahagin)熱ウイルスである)、ナイロウイルス属(ナイロビヒツジ病)および種々の割り当てられていないブンガウイルス属(bungavirus)を含む。アレナウイルス科は、LCMおよびラッサ熱ウイルスに対する抗原の供給源を提供する。レオウイルス科には、レオウイルス属、ロタウイルス属(これは小児の急性胃腸炎の原因である)、オルビウイルス属およびカルチウイルス(cultivirus)属(コロラドダニ熱)、レボンボ(Lebombo)(
ヒト)、ウマ脳症、ブルータングを含む。
【0082】
レトロウイルス科には、ネコ白血病ウイルス、HTLV1およびHTLVII、レンチウイルス(lentivirinal)(これはヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウマ感染性貧血ウイルスおよびスプーマウイルスを含む)のようなヒトおよび獣医学上の疾患を包含するオンコリウイルス(oncorivirinal)の亜科を含む。レンチウイルスの中から多くの適当な抗原が記載され、そして容易に選択することができる。適当なHIVおよびSIV抗原の例には限定するわけではないがgag、pol、Vif、Vpx、VPR、Env、Tat、NefおよびRevタンパク質、ならびにそれらの種々のフラグメントを含む。例えばEnvタンパク質の適当なフラグメントにはgp120、gp160、gp41のようなそのサブユニット、またはそれらのより小さいフラグメント、例えば少なくとも約8個のアミノ酸長のフラグメントを含むことができる。同様にtatタンパク質のフラグメントを選択することができる。[米国特許第5,891,994号および同第6,193,981号明細書を参照にされたい。]またD.H.Barouch et al.,J.Virol.,75(5):2462−2467(March 2001)、およびR.R.Amara,et al.,Science,292:69−74(6 April 2001)に記載されたHIVおよびSIVタンパク質も参照にされたい。別の例では、HIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドを使用して、融合ペプチドまたは他の免疫原性分子を形成することができる。例えば2001年、8月2日に公開された国際公開第01/54719号パンフレット書および1999年4月8日に公開された国際公開第第99/16884号パンフレットに記載されたHIV−1 Tatおよび/またはNef融合タンパク質および免疫感作処方を参照にされたい。本発明は本明細書に記載するHIVおよび/またはSIV免疫原性タンパク質またはペプチドに限定されない。さらにこれらタンパク質に対する様々な改変が記載され、そして当業者は容易に作成することができる。例えば米国特許第5,972,596号明細書に記載されている改変gagタンパク質を参照にされたい。さらに任意の所望するHIVおよび/またはSIV免疫原を単独で、または組み合わせて送達することができる。そのような組み合わせは単一ベクターから、または多数のベクターからの発現を含むことができる。場合により別の組み合わせには1もしくは複数の発現した免疫原の送達とタンパク質状の1もしくは複数の免疫原の送達が関与する。そのような組み合わせを以下により詳細に検討する。
【0083】
パポバウイルス科にはポリオーマウイルス(BKUおよびJCUウイルス)の亜科およびパピローマウイルス(癌または乳頭腫の悪性の進行に関連する)の亜科を含む。アデノウイルス科には呼吸疾患および/または腸炎を引き起こすウイルス(EX、AD7、ARD、O.B.)を含む。パルボウイルス科にはネコパルボウイルス(ネコ腸炎)、ネコパンロイコペニアウイルス(panleucopeniavirus)、イヌパルボウイルスおよびブタパルボウイルスを含む。ヘルペスウイルス科には、シンプレックスウイルス(simplexvirus)属(HSVI、HSVII)、バリセーロウイルス属(varicellovirus)(仮性狂犬病、水痘帯状疱疹)を含むアルファヘルペスウイルス亜科、およびサイトメガロウイルス属(HCMV、ムロメガロウイルス属(muromegalovirus))を含むベータヘルペスウイルス亜科、およびリンホクリプトウイルス属(lymphocryptovirus)、EBV(バーキットリンパ腫)、感染性鼻気管支炎、マルク病ウイルスおよびラジノウイルス属(rhadinovirus)を含むガンマヘルペスウイルス亜科を含む。ポックスウイルス科にはオルソポックスウイルス(バリオーラ(Variola)(痘瘡)およびワクシニア(Vaccinia)(牛痘))、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、スイポックスウイルスを包含するポックスウイルス亜科、およびエントモポックスウイルスの亜科を含む。ヘパドナウイルス科には、B型肝炎ウイルスを含む。適当な抗原の供給源となり得る1つの分類されていないウイルスは、デルタ肝炎ウイルスである。さらに別のウイル源には、鳥類感染性嚢疾患ウイルスおよびブタ呼吸および生殖症候群ウイルスを含む。アルファウルイス科にはウマ関節炎ウイルスおよび種々の脳炎ウイルスを含む。
【0084】
本発明のウイルスは、ヒトまたは非−ヒト動物を、ヒトおよび非−ヒト動物に感染する細菌、菌類、寄生微生物もしくは多細胞寄生生物を含む他の病原体に対して免疫感作するために有用な免疫原、あるいは癌細胞または腫瘍細胞に由来する免疫原も運ぶ。細菌病原体の例には、病原性グラム−陽性球菌を含み、それらには肺炎球菌(pneumococci);ブドウ球菌(staphylococci);および連鎖球菌(streptococci)を含む。病原性のグラム−陰性球菌には髄膜炎菌(meningococcus);淋菌(gonococcus)を含む。病原性腸内グラム−陰性桿菌には、腸内細菌科(enterobacteriaceae);シュードモナス(pseudomonas)、アシネトバクテリア(acinetobacteria)およびイケネーラ属(eikenella);類鼻疽;サルモネラ属(salmonella);シゲーラ属(shigella);ヘモフィラス属(haemophilus);モラクセーラ属(moraxella);.デュクレイ(ducreyi)(軟性下疳を引き起こす);ブルセラ属(brucella);野兎病菌(Franisella tularensis)(野兎病を引き起こす);エルシニア属(yersinia)(パスツレラ属);ストレプトバシラス モニリホルミス(streptobacillus moniliformis)およびスピリウム属(spirillum)を含む;グラム陽性桿菌にはリステアリモノシトゲネシス(listeria monocytogenes);豚丹毒菌(erysipelothrix rhusiopathiae);ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria)(ジフテリア);コレラ;炭疽菌(B.anthracis);(炭疽);ドノヴァン症(鼠径肉芽腫);およびバルトネラ症を含む。病原性の嫌気性細菌により引き起こされる疾患には、破傷風;ボツリヌス中毒;他のクロストリジウム属(clostridia);結核;ハンセン病;および他のマイコバクテリア属(mycobacteria)を含む。病原性スピロヘーター疾患には梅毒;トリポネーマ症;フランベジア、ピンタおよび性行為外の梅毒;およびレプトスピラ症を含む。より高等な病原性細菌および病原性真菌により引き起こされる他の感染には、放線菌症;ノルカルジア症;クリプトコックス症、ブラストミセス症、ヒストプラズマ症およびコクシジオイデス真菌症;カンジダ症、アスペルギルス症およびムコール症;スポロトリクス症;パラコクシジオイドミコーシス症、ペトリリジオーシス(petrielldiosis)、トルロプシス症、菌腫およびクロモミコシース;および皮膚糸状菌症を含む。リケッチア感染にはチフス熱、ロッキー山熱病、Q熱およびリケッチア痘を含む。マイコプラズマおよびクラミジア感染の例には:マイコプラズマ肺炎;リンパ肉芽腫;オウム病;および周産期クラミジア感染を含む。病原性真核生物には、病原性原生成物および蠕虫を含み、そしてそれらにより引き起こされる感染には;アメーバ症;マラリア;リーシュマニア症;トリパノーマ症;トキソプラスマ症;ニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii)、トリカンス(Trichans);トキソプラズマ ゴンジ(Toxoplasma gondii);バベシア症;ジアルジア鞭毛虫症;旋毛虫症;フィラリア症;住虫吸虫症;線虫症;吸虫綱に属する吸虫類または吸虫類;および多節条虫亜綱(条虫)感染を含む。
【0085】
多くのこれら生物および/またはそれらにより生産されたトキシンが、疾病管理センター[(CDC)、米国の保健福祉省]により、生物学的攻撃に使用するための可能性を有する病原体として同定された。例えばこれら生物感染源の幾つかには、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)およびそのトキシン(ボツリヌス中毒)、ペスト菌(Yersinia pestis)(悪疫)、大痘瘡(痘瘡)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、およびウイルス性出血熱[フィロウイルス属(例えばエボラ、マールブルグ]、およびアレナウイルス属[例えばラッサ、マチュポ(Machupo])これらすべては現在、カテゴリーA源に属する;Q熱リケッチア菌(Coxiella burnetti)(Q熱);ブルセラ種(brucella)(ブルセラ症)、鼻疽菌(Burkholderia mallei)(鼻疽)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)(類鼻疽)、トウゴマ(Ricinus communis)およびそのトキシン(リシン トキシン)、ガス壊疽(Clostridium perfringens)およびそのトキシン(イプシロントキシン)、ブドウ球菌種(Staphylococcus)およびそのトキシン(エンテロトキシンB)、クラミジア シッタシ(Chlamydia psittaci)(オウム病)、水の安全性に関する脅威(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae)、クリトスポリジウム パルバム(Crytosporidium parvum)、チフス熱(発疹チフスリケッチア(Richettsia powazekii)およびウイルス性脳炎(アルファウイルス、例えばベネゼエラ ウマ 脳炎;東部ウマ脳炎;西部ウマ脳炎);このすべてが現在、カテゴリーB源に属する;および現在、カテゴリーC源に分類されるニパン(Nipan)ウイルスおよびハンタウイルスを含む。さらにそのように分類されるか、または異なって分類される他の生物を、将来、そのような目的に同定し、かつ/または使用することができる。ウイルスベクターおよび本明細書に記載する他の構築物は、感染または他の副作用を防止し、かつ/または処置するこれらの生物、ウイルス、それらのトキシンまたは副産物に由来する抗原を、これらの生物感染源を用いて送達するために有用であると理解されるであろう。
【0086】
T細胞の可変領域に対する免疫原を送達するための本発明のベクターの投与は、CTLを含む免疫応答を誘導してこれらT細胞を排除する。RAでは、疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−3、V−14、V−17およびVα−17を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、RAに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。MSでは、疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−7およびVα−10を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードする核酸配列の送達は、MSに関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。硬皮症では、この疾患に関与するTCRの幾つかの特異的可変領域が特性決定された。これらのTCRにはV−6、V−8、V−14およびVα−16、Vα−3C、Vα−7、Vα−14、Vα−15、Vα−16、Vα−28およびVα−12を含む。このようにこれらポリペプチドの少なくとも1つをコードするキメラアデノウイルスの送達は、硬皮症に関与するT細胞を標的とする免疫応答を誘導する。
C.Ad−媒介型送達法
選択した遺伝子の治療レベルまたは免疫のレベルを監視して、もしあるならば追加免疫の必要性を決定する。CD8+T細胞応答あるいは場合により血清中の抗体力価の評価後に、任意の追加免疫感作が望ましいかもしれない。場合により本発明の組換えアデノウイルスベクターを単回投与または様々な処方と組み合わせて、例えば他の有効成分が関与する処置計画または過程と組み合わせて、または初回−追加免疫感作処方(prime−boost regimen)で送達することができる。そのような様々な処方が当該技術分野で記載され、そして容易に選択することができる。
【0087】
例えば初回−追加免疫感作処方は、タンパク質またはそのような抗原をコードする配列を持つ組換えウイルスのような従来の抗原で第2、さらに追加免疫感作、投与に対して、免疫系を初回免疫感作するためのDNA(例えばプラスミド)に基づくベクターの投与を含むことができる。例えば引用により本明細書に編入する2000年3月2日に公開された国際公開第00/11140号パンフレットを参照にされたい。あるいは免疫感作処方には、抗原を持つベクター(ウイルスまたはDNAに基づくいずれか)またはタンパク質
に対する免疫応答を増強(boost)するために、本発明のキメラアデノウイルスベクターの投与を含むことができる。さらに別の選択では、免疫感作処方にはタンパク質の投与に続いて抗原をコードするベクターでの追加免疫感作を含む。
【0088】
1つの態様では、本発明は上記抗原を持つプラスミドDNAベクターを送達し、続いて本発明のアデノウイルスベクターでの追加免疫により、選択した抗原に対する免疫応答を初回そして追加免疫感作する方法を提供する。1つの態様では、初回−追加免疫感作の処方には、初回および/または追加免疫感作媒体からの複数のタンパク質の発現を含む。例えば、HIVおよびSIVに対する免疫応答を生じるために有用なタンパク質サブユニットを発現させるために、多タンパク質処方を記載するR.R.Amara,Science,292:69−74(2001年4月6日)を参照にされたい。例えばDNAの初回免疫感作は、Gag、Pol、Vif,VPXおよびVprおよびEnv、TatおよびRevを1回の転写から送達することができる。あるいはSIV Gag、PolおよびHIV−1 Envは、本発明の組換えアデノウイルス構築物で送達される。さらに別の処方が、国際公開第99/16884号および同第01/54719号パンフレットに記載されている。
【0089】
しかし初回−追加免疫感作処方はHIVの免疫感作またはこれら抗原の送達に限定されない。例えば、初回免疫感作には本発明の第1ベクターを送達し、続いて第2ベクターで、あるいは抗原自体をタンパク質形態で含む組成物で追加免疫感作することを含む。1つの態様では、初回−追加免疫感作の処方は抗原が由来するウイルス、細菌または他の生物に対する防御免疫応答を提供することができる。別の望ましい態様では、初回−追加免疫感作の処方は治療薬が投与される状態の存在を検出するための通例のアッセイを使用して測定することができる治療効果を提供する。
【0090】
初回免疫感作組成物は、身体の様々な部位に用量依存的様式で投与することができ、これは所望の免疫応答を標的とする抗原に依存する。本発明は注射(1回または複数回)の量および部位、または製薬学的担体には限定されない。むしろ処方には初回および/または追加免疫感作工程を含むことができ、その各々が単回用量、または毎時間、毎日、毎週もしくは毎月もしくは毎年投与される投薬用量を含むことができる。例として哺乳動物は約10μgから約50μgの間のプラスミドを担体中に含む1または2回の用量を受けることができる。望ましいDNA組成物の量は、約1μgから約10,000μgの間の範囲のDNAベクターである。投薬用量は患者の体重1kgあたり約1μgから約1000μgのDNAで変動し得る。送達の量または部位は、望ましくは哺乳動物の同一性および状態に基づき選択される。哺乳動物への抗原の送達に適するベクターの投薬用量単位を本明細書に記載する。ベクターは、そのような投与における当業者に明らかな等張性塩;等張性塩溶液または他の製剤のような製薬学的または生理学的に許容され得る担体に懸濁または溶解することにより調製される。適切な担体は当業者には明らかであり、そして大部分が投与経路に依存する。本発明の組成物は、生分解性の生物適合性ポリマーを使用した徐放性製剤で、あるいはミセル、ゲルおよびリポソームを使用した部位上(on−site)の送達により、上記の経路に従い哺乳動物に投与することができる。場合により本発明の初回免疫感作工程は、初回免疫感作組成物、本明細書に定めるような適当量のアジュバントを投与することも含む。
【0091】
好ましくは追加免疫感作組成物は、哺乳動物個体に初回免疫感作組成物を投与してから約2〜約27週間後に投与する。追加免疫感作組成物の投与は、初回免疫感作DNAワクチンにより投与されるものと同じ抗原を含むか、または送達できる有効量の追加免疫感作組成物を使用して行う。追加免疫感作組成物は、同じウイルス源(例えば本発明のアデノウイルス配列)または別の起源に由来する組換えウイルスベクターから成ることができる。あるいは「追加免疫感作組成物」は、初回免疫感作するDNAワクチンにコードされる抗原と同じ抗原を含む組成物であることができるが、タンパク質またはペプチドの状態であり、この組成物はその宿主に免疫応答を誘導する。別の態様では追加免疫感作組成物は、哺乳動物細胞中でのDNA配列の発現を支配する調節配列の制御下に、抗原をコードするDNA配列、例えば周知な細菌またはウイルスベクターのようなベクターを含む。追加免疫感作組成物の主な要件は、組成物の抗原が初回免疫感作組成物にコードされる抗原と同じ抗原であるか、または交差反応性の抗原であることである。
【0092】
別の態様では本発明のアデノウイルスベクターは、様々な他の免疫感作および治療的処方に使用するにも十分に適している。そのような処方には本発明のアデノウイルスベクターの送達と同時に、または順次に異なる血清型キャプシドのAdベクターの送達を含むことができ、この処方では本発明のアデノウイルスベクターが非−Adベクターと同時に、または順次に送達され、この投薬法は本発明のアデノウイルスベクターがタンパク質、ペプチドおよび/または他の生物学的に有用な治療薬または免疫原性化合物と同時に、または順次に送達される。そのような使用は当業者に明らかである。
IV.サルアデノウイルス18配列
本発明は、自然に伴う他のウイルス性物質から単離されたAd SA18の核酸配列およびアミノ酸配列を提供する。これらの配列は本明細書に記載するように、核酸配列およびアミノ酸配列、およびその領域またはフラグメントを含有するヘテロロガスな分子の調製に、構築物および組成物を含む様々な目的に有用なウイルスベクターの調製に、ならびにキメラアデノウイルスについて本明細書に記載するような方法、例えば本明細書に記載するようなヘテロロガスな分子のための送達媒体として、アデノウイルスヘルパー機能を要するウイルスを生産するための宿主細胞において有用である。またこれらの配列は、本発明のキメラアデノウイルスの生成にも有用である。
A.核酸配列
本発明のSA18核酸配列は、配列番号12のnt1〜31967のヌクレオチドを含む。引用により本明細書に包含する配列表を参照にされたい。本発明の核酸配列は、さらに配列番号12の配列に相補的な鎖、ならびにこれらの配列図の配列に対応するRNAおよびcDNA配列およびそれらの相補鎖を包含する。さらに本発明に含まれるのは、配列表に95〜98%より高く、そしてより好ましくは約99〜99.9%相同的であるか、または同一の核酸配列である。また本発明の核酸配列に含まれるのは配列番号12に提供する配列の自然なバリアントおよび作り変えられた改変形、およびそれらの相補鎖も含む。そのような改変には、例えば当該技術分野で知られている標識、メチル化および1もしくは複数の自然に存在するヌクレオチドの縮重ヌクレオチドへの置換を含む。
【0093】
本発明はさらにSA18配列のフラグメント、それらの相補鎖、それに相補的なcDNAおよびRNAを包含する。適当なフラグメントは少なくとも15ヌクレオチド長であり、そして機能的フラグメント、すなわち生物学的に興味深いフラグメントを包含する。例えば機能的フラグメントは所望するアデノウイルス産物を発現することができるか、または組換えウイルスベクターの生産に有用となり得る。そのようなフラグメントには以下の表に掲げる遺伝子配列およびフラグメントを含む。
【0094】
以下の表は本発明のサルアデノウイルス配列中の転写領域およびオープンリーディングフレームを提供する。ある遺伝子については転写領域およびオープンリーディングフレイム(ORF)は、配列番号12に提示する配列に相補的な鎖上に位置する。例えばE2b、E4およびE2aを参照にされたい。コードされるタンパク質の理論上の分子量も示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
SA18アデノウイルスの核酸配列は、治療薬および免疫製剤および種々のベクター系および宿主細胞の構築に有用である。そのようなベクターはキメラアデノウイルスについて上に記載した目的に有用である。さらにこれらSA18配列および産物は、単独で、または他のアデノウイルス配列もしくはフラグメントと組み合わせて、または他のアデノウイルもしくは非アデノウイルス配列に由来する要素と組み合わせて使用することができる。また本発明のアデノウイルス配列は、アンチセンス送達ベクター、遺伝子治療ベクターまたはワクチンベクター、およびその使用法にも有用である。このように本発明はさらに核酸分子、遺伝子送達ベクターおよび本発明のAd配列を含む宿主細胞を提供する。
【0098】
例えば本発明は、本発明はサルAd ITR配列を含む核酸分子を包含する。別の例では、本発明は所望するAd遺伝子産物をコードする本発明のサルAd配列を含む核酸分子を提供する。さらに本発明の配列を使用して構築した別の核酸分子も、本明細書に提供する情報を考慮して当業者には容易に明らかとなるだろう。
【0099】
1つの態様では、本明細書で同定したサルAd遺伝子領域は細胞にヘテロロガスな分子を送達するための様々なベクターに使用することができる。そのような分子および送達法の例は、本明細書の第III章に提供する。例えばベクターはパッケージング宿主細胞にウイルスベクターを生成する目的で、アデノウイルス キャプシドタンパク質(またはそのフラグメント)を発現するために作成される。そのようなベクターはトランスに発現されるように設計することができる。あるいはそのようなベクターは、所望するアデノウイルスの機能、例えば1もしくは複数のE1a、E1b、末端反復配列、E2a、E2b、E4、E4ORF6領域を発現する配列を安定に含む細胞を提供するために設計される。
【0100】
加えてアデノウイルス遺伝子およびそのフラグメントは、ヘルパー依存性ウイルス(例えば本質的機能が削除されたアデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AVV))の生産に必要なヘルパー機能を提供するために有用である。そのような生産方法には、本発明のサルアデノウイルス配列を、ヒトAdについて記載した方法に類似する様式でそのような方法に利用する。しかし本発明の配列の使用は本発明のサルアデノウイルス 配列とヒトAdの配列との間の配列中の差異により、rAAV生産中に感染性のアデノウイルスの混入を生じる可能性があるヒトAdE1機能を持つ宿主細胞、例えば293細胞中でのヘルパー機能との相同的組換えの可能性を本質的に排除する。
【0101】
アデノウイルスヘルパー機能を使用してrAAVを生産する方法は、ヒトアデノウイルス血清型を用いた技術文献で詳細に記載された。例えば米国特許第6,258,595号明細書およびそこに引用されている参考文献を参照にされたい。また米国特許第5,871,982号明細書;国際公開第99/14354号;同第99/15685号;同第99/47691号パンフレットも参照にされたい。これらの方法は非−ヒト霊長類AAV血清型を含む非−ヒト血清型AAVでの生産にも使用することができる。必要なヘルパー機能を提供する本発明のサルアデノウイルス遺伝子配列(例えばE1a、E1b、E2aおよび/またはE4ORF6)は、必要なアデノウイルス機能を提供するために特に有用でとなり得ると同時に、典型的にはヒト起源のrAAV−パッケージング細胞に存在する他のアデノウイルスとの組換えの可能性を最少にするか、または排除する。このように本発明のアデノウイルス配列の選択した遺伝子またはオープンリーディングフレームを、これらのrAAV生産法に利用することができる。
【0102】
あるいは本発明の組換えアデノウイルスサルベクターをこれらの方法で利用することができる。そのような組換えアデノウイルスサルベクターには、例えばハイブリッドサルAd/AAVを含むことができ、ここでサルAd配列は、例えば発現を制御する調節配列の制御下にAAV3’および/または5’ITRsおよび導入遺伝子からなるrAAV発現カセットを挟む。当業者は本発明のさらに別のサルアデノウイルスベクターおよび/または遺伝子配列が、rAAVおよびアデノウイルスヘルパーに依存性の他のウイルスの生産に有用であると認識するだろう。
【0103】
さらに別の態様では、所望する生理学的効果を達成するために、核酸分子は宿主細胞への送達および選択したアデノウイルス遺伝子産物の発現に設計される。例えば本発明のアデノウイルスE1aタンパク質をコードする配列を含む核酸分子は、癌治療薬として使用するために個体に送達され得る。場合によりそのような分子は脂質基材の担体に配合され、そして癌細胞を優先的に標的とする。そのような製剤は他の癌治療薬(例えばシスプラチン、タキソール等)と組み合わせることができる。本明細書に提供するアデノウイルス配列に関するさらに別の使用は、当業者には直ちに明らかであろう。
【0104】
加えて当業者は本発明のAd配列が、治療薬および免疫原性分子(本発明のキメラアデノウイルスを介して送達可能であると同定される任意のものを含む)のインビトロ、エクスビボまたはインビボ送達のための様々なウイルスおよび非ウイルスベクター系に使用するために容易に適合させることができると直ちに理解するだろう。例えば本発明のサルAdゲノムは、様々なrAdおよび非−rAdベクター系に利用することができる。そのようなベクター系には、例えばとりわけプラスミド、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルスおよびアデノ随伴ウイルス系を含むことができる。これらベクター系の選択は本発明を限定するものではない。
【0105】
本発明はさらに本発明のサルの、およびサルから誘導化されたタンパク質の生産に有用な分子を提供する。本発明のサルAd DNA配列を含むポリヌクレオチドを持つそのよ
うな分子は、ベクターの形態であることができる。
B.本発明のサルアデノウイルスタンパク質
本発明はさらに、本発明のアデノウイルス核酸によりコードされるタンパク質、酵素およびそれらのフラグメントのような上記アデノウイルスの遺伝子産物を提供する。本発明はさらに、他の方法により生成されたこれら核酸配列によりコードされるアミノ酸配列を有するSV18タンパク質、酵素およびそれらのフラグメントを包含する。そのようなタンパク質には上記の表に確認されるオープンリーディングフレームによりコードされるもの、およびそれらのフラグメントを含む。
【0106】
このように1つの観点では、本発明は実質的に純粋な、すなわち他のウイルス性およびタンパク質様タンパク質を含まない独特なサルアデノウイルスタンパク質を提供する。好ましくはこれらのタンパク質は少なくとも10%均一、より好ましくは60%均一、そして最も好ましくは95%均一である。
【0107】
1つの態様では、本発明は独特なサル−由来キャプシドタンパク質を提供する。本明細書で使用するようにサル−由来キャプシドタンパク質には、限定するわけではないがキメラキャプシドタンパク質、融合タンパク質、人工キャプシドタンパク質、合成キャプシドタンパク質および組換え的なキャプシドタンパク質を含め、これらのタンパク質の生成手段を限定せずに、上記定義のSV18キャプシドタンパク質またはそれらのフラグメントを含む任意のアデノウイルス キャプシドタンパク質を含む。
【0108】
適当にはこれらのサル−由来キャプシドタンパク質は、1もしくは複数のSV18領域またはそれらのフラグメント(例えばヘキソン、ペントン、ファイバーまたはそれらのフラグメント)を、異なるアデノウイルス血清型のキャプシド領域もしくはそのフラグメント、または改変されたサルキャプシドタンパク質もしくはフラグメントと本明細書に記載するように組み合わせて含む。本明細書で使用する「改変されたトロピズムに関連するキャプシドタンパク質の改変」には、特異性が改変されるように改変されたキャプシドタンパク質、すなわちペントン、ヘキソンまたはファイバータンパク質領域、またはファイバー領域の小塊ドメイン、それをコードするポリヌクレオチドのようなそれらのフラグメントを含む。サル−由来キャプシドは、1もしくは複数の本発明のサルAdまたはヒトもしくは非−ヒト起源でよい他のAd血清型で構築され得る。そのようなAdはATCC、商業用および研究用の供給元を含む様々な供給元から得ることができ、あるいはAdの配列はGenBankまたは他の適切な供給元から得ることができる。
【0109】
本発明のサルアデノウイルス のペントンタンパク質のアミノ酸配列を本明細書に提供する。AdSA18ペントンタンパク質は、配列番号13に提供する。適切にはこれら任意のペントンタンパク質またはそれらの独特なフラグメントを、様々な目的に利用することができる。適当なフラグメントの例には、上記に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150もしくは200個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有するペントンを含む。他の適当なフラグメントには、より短い内部、C−末端またはN−末端フラグメントを含む。さらにペントンタンパク質は、当業者に知られている様々な目的のために改変されることができる。
【0110】
本発明はさらに、SV18、配列番号14のヘキソンタンパク質のアミノ酸配列を提供する。適切にはこのヘキソンタンパク質またはそれらのユニーク(unique)フラグメントは、様々な目的に利用することができる。適切なフラグメントの例には、上記および配列番号14に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150、200、300、400もはくは500個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有するヘキソンを含む。他の適当なフラグメントには、より短い内部、C−末端またはN−末端フラグメントを含む。例えば1つの適切なフラグメントはDE1およびFG1と命名されたヘキソンタンパク質のループ領域(ドメイン)、またはそれらの超可変領域。そのようなフラグメントは配列番号14を参照にして、サルヘキソンタンパク質のアミノ酸残基約125〜443;約138〜441、または約残基138〜残基163に広がるもののようなより小さいフラグメント;約170〜約176;約195〜約203;約233〜約246;約253〜約264;約287〜約297;約404〜430;約430〜約550;および約545〜約650に広がるアミノ酸領域を含む。他の適当なフラグメントは当業者により容易に同定され得る。さらにヘキソンタンパク質は、当業者に知られている様々な目的に改変することができる。ヘキソンタンパク質はアデノウイルスの血清型の決定基であるので、そのような人工のヘキソンタンパク質は人工の血清型を有するアデノウイルス を生じるだろう。他の人工キャプシドタンパク質も、本発明のチンパンジーAdペントン配列および/またはファイバー配列および/またはそれらのフラグメントを使用して構築することができる。
【0111】
一例では、改変されたヘキソンタンパク質を有するアデノウイルスは、本発明のヘキソンタンパク質の配列を利用して生成することが望ましい。ヘキソンタンパク質の1つの適切な改変法が、引用により本明細書に編入する米国特許第5,922,315号明細書に記載されている。この方法では、アデノウイルスヘキソンの少なくとも1つのループ領域が別のアデノウイルス血清型の少なくとも1つのループ領域と変えられている。すなわちそのように改変されたアデノウイルスヘキソンタンパク質の少なくとも1つのループ領域は、本発明のサルAdヘキソンループ領域である。1つの態様では、SA18ヘキソンタンパク質のループ領域は別のアデノウイルス血清型に由来するループ領域に置き換えられる。別の態様では、SA18ヘキソンのループ領域を別のアデノウイルス血清型に由来するループ領域に置き換えるために使用する。適当なアデノウイルス血清型は、本明細書に記載するようにヒトおよび非−ヒト血清型の中から容易に選択することができる。SA18は具体的説明の目的のみに選択し;本発明の他のサルAdヘキソンタンパク質も同様に改変することができ、あるいは別のAdヘキソンを改変するために使用することができる。適当な血清型の選択は、本発明を限定するものではない。本発明のヘキソンタンパク質配列のさらに別の用途は、当業者には直ちに明白となるだろう。
【0112】
本発明はさらに本発明のサルアデノウイルスのファイバータンパク質を包含する。AdSA18のファイバータンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を有する。適切には、このファイバータンパク質またはそれらの独特なフラグメントを、様々な目的に利用することができる。1つの適切なフラグメントはファイバー小塊であり、これは配列番号15のアミノ酸約247〜425に広がる。他の適当なフラグメントの例には、上記および配列番号15に提供されるアミノ酸の番号付けに基づき、約50、100、150もしくは200個のアミノ酸のN−末端および/またはC−末端短縮化を有するファイバーを含む。さらに別の適当なフラグメントには内部フラグメントを含む。さらにファイバータンパク質は当業者に知られている種々の技術を使用して改変することができる。
【0113】
本発明はさらに、少なくとも8アミノ酸長である本発明のタンパク質のユニークフラグメントを包含する。しかし他の所望する長さのフラグメントを容易に利用することができる。さらに本発明は、SV18遺伝子産物の収量および/または発現を強化するために導入できるような改変、例えばSV18遺伝子産物のすべてまたはフラグメントが(直接またはリンカーを介して)、強化のために融合パートナーに融合している融合分子の構築物を包含する。他の適切な改変には限定するわけではないが、通常は分解され、そして成熟タンパク質または酵素を提供するプレ−またはプロ−タンパク質を排除するためのコード領域(例えばタンパク質または酵素)の短縮化、および/または分泌可能な遺伝子産物を提供するためのコード領域の突然変異を含む。さらに他の改変が当業者には明白であろう。本発明はさらに本明細書に提供するSV18タンパク質に少なくとも約95%〜99%の同一性を有するタンパク質を包含する。
【0114】
本明細書に記載するように、本発明のアデノウイルスキャプシドタンパク質を含有する本発明のベクターは、中和抗体が他のAd血清型に基づくベクターならびに他のウイルスベクターの効力を縮小する応用に使用するために特によく適している。本発明のrAdベクターは、反復遺伝子治療または免疫応答(ワクチン力価)の追加免疫感作のための再投与に特に有利である。
【0115】
特定の状況下では、1もしくは複数のSV18遺伝子産物(例えばキャプシドタンパク質またはそれらのフラグメント)を使用して抗体を生成することが望ましいかもしれない。本明細書で使用する用語「抗体」は、エピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子を称する。このように本発明の抗体は好ましくは特異的に、しかも交差反応性無しで、SV18エピトープに結合する。本発明では抗体は、例えば高親和性ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、合成抗体、キメラ抗体、組換え抗体およびヒト化抗体を含む種々の形態で存在する。そのような抗体は免疫グロブリンのIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEクラスから派生する。
【0116】
そのような抗体は当該技術分野で既知な多数の方法を使用して生成することができる。適当な抗体は周知の従来技術、例えばKohler and Milsteinおよびその多くの既知の変法により生成することができる。同様に望ましい高力価抗体は、これらの抗原に対して開発されたモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体に既知の組換え技術を応用することにより生成される[例えばPCT特許出願第PCT/GB85/00392号パンフレット;英国特許出願公開第2188638号明細書;Amit et al.,1986 Science,233:747−753;Queen et al.,1989 Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029−10033;PCT特許出願第PCT/WO9007861号パンフレット;およびRiechman et al.,Nature,332:323−327(1988);Huse et al.,1988a Science,246:1275−1281を参照にされたい]。あるいは抗体は本発明の抗原に対する動物またはヒト抗体の相補性決定領域を操作することにより生産することができる。例えばE.Mark and Padlin、「モノクローナル抗体のヒト化(Humanization of Monoclonal Antibodies)」、第4章、実験薬理学のハンドブック(The Handbook of Experimental Pharmacology)、第113巻、モノクローナル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)、スプリンガーファーラーク(Springer−Verlag)(1994年6月);Harlow et al.,1999、抗体を使用して:ア ラボラトリーマニュアル(Using Antibodies:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版、ニューヨーク州;Harlow et al.,1989、抗体:ア ラボラトリーマニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク;Houston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびBird et al.,1988,Science 242:423−426を参照にされたい。さらに本発明により提供されるのは、抗−イディオタイプ抗体(Ab2)および抗−抗−イディオタイプ抗体(Ab3)である。例えばM.Wettendorff et al.,「抗−イディオタイプ抗体による抗−腫瘍免疫の調節(Modulation of anti−tumor immunity by anti−idiotypic antibodies)」、イディオタイプのネットワークおよび疾患(Idiotypic Network and Diseases)で、J.Cerny and J.Hiernaux編集、1990 J.Am.Soc.Microbiol.,ワシントンD.C.第203〜229頁を参照にされたい]。これらの抗−イディオタイプおよび抗−抗−イディオタイプ抗体は、当業者に周知の技術を使用して生産される。これらの抗体は、診断および臨床的方法およびキットを含め様々な目的に使用することができる。
【0117】
特定の状況下では、検出可能な標識またはタグを本発明のSV18遺伝子産物、抗体または他の構築物に導入することが望ましい。本明細書で使用するように検出可能な標識は,単独または他の分子との相互作用で検出可能なシグナルを提供することができる分子である。最も望ましくは標識は免疫組織化学的分析または免疫蛍光顕微鏡で直ちに使用するために視覚的、例えば蛍光により検出することができる。例えば適当な標識にはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリスリン(PE)、アロフィコシアニン(APC)、コリホスフィン−O(CPO)またはタンデム色素、PE−シアニン−5(PC5)およびPE−テキサスレッド(ECD)を含む。これらすべての蛍光色素は市販されており、そしてそれらの使用は当該技術分野では知られている。他の有用な標識には金コロイド標識を含む。さらに別の有用な標識には放射性化合物または元素を含む。加えて標識にはアッセイで比色シグナルを示すように作動する様々な酵素系を含み、例えばグルコースオキシダーゼ(これは基質としてグルコースを使用する)は生成物としてペルオキシドを放出し、これはペルオキシダーゼおよびテトラメチルベンジジン(TMB)のような水素供与体の存在下で酸化TMBを生成し、これが青色として見える。他の例には西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)、およびATP、グルコースおよびNAD+と反応して生成物の中でも340nmの波長の吸収増加として検出されるNADHを生じるグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼと組み合わせたヘキソキナーゼを含む。
【0118】
本発明の方法に利用される他の標識系は他の手段、例えば着色されたラテックス微小球[バングスラボラトリーズ(Bangs Laboratories)、インディアナ]により検出可能であり、この場合、包埋された色素が酵素の代わりに使用されて標的配列と結合物を形成し、適用可能なアッセイで生じた複合体の存在を示す視覚的シグナルを提供する。
【0119】
標識を所望の分子にカップリングまたは会合させる方法は同様に通例であり、そして当業者に知られている。標識結合(attachment)の既知の方法は記載されている[例えば蛍光プローブおよび研究用化学品のハンドブック(Handbook of Fluorescent probes and Research Chemicals)、第6版、R.P.M.Haugland、モレキュラープローブ(Molecular Probes)社、ユージーン、オレゴン州、1996;ピアスカタログハンドブック(Pierce Catalog and Handbook)、ライフサイエンスおよび分析研究用製品、ピアスケミカル(Pierce Chemicals)社、ロックフォード、イリノイ州、1994/1995を参照にされたい]。このように標識およびカップリング法の選択は本発明を限定しない。
【0120】
本発明の配列、タンパク質およびフラグメントは、組換え生産、化学合成を含む任意の適当な手段、または他の合成手段により生産することができる。適当な生産技術は当業者に周知である。例えばSambrook et al.,モレキュラークローニング:ア
ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー出版(コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州)を参照にされたい。あるいはペプチドは周知の固相ペプチド合成法により合成することもできる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1962);Stewart and Young、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)(フリーマン、サンフランシスコ、1969)、第27−62頁)。これらのおよび他の適切な生産法は当業者の知識の範囲内であり、そして本発明を限定するものではない。
【0121】
さらに当業者は本発明のAd配列を、治療用および免疫原性分子のインビトロ、エクスビボまたはインビボ送達に、種々のウイルスおよび非−ウイルスベクター系で使用するために容易に適合させることができると容易に理解するだろう。例えば1つの態様では、本明細書に記載するサルAdキャプシドタンパク質および他のサルアデノウイルスタンパク質を、遺伝子、タンパク質および他の所望する診断用、治療用および免疫原性分子の非ウイルス性の、タンパク質に基づく送達に使用する。1つのそのような態様では、本発明のタンパク質を直接的または間接的にアデノウイルスのレセプターを持つ細胞を標的とする分子に連結する。好ましくは細胞表面レセプターに関するリガンドを有するヘキソン、ペントン、ファイバーまたはそれらのフラグメントのようなキャプシドタンパク質を、そのような標的化のために選択する。送達のための適当な分子は、本明細書に記載する治療用分子およびそれらの遺伝子産物の中から選択される。脂質、ポリLys等を含む様々なリンカーをリンカーとして利用することができる。例えばサルのペントンタンパク質は、Medina−Kauwe LK,et al.,Gene Ther.2001 May;8(10):795−803およびMedina−Kauwe LK,et al.,Gene Ther.2001 Dec:8(23):1753−1761に記載されている様式に準じて、サルのペントン配列を使用する融合タンパク質の生産によりそのような目的に容易に利用することができる。あるいはサルAdタンパク質IXのアミノ酸配列は、米国特許出願第20010047081号明細書に記載されているように、ベクターを細胞表面レセプターに標的化するために利用することができる。適当なリガンドにはCD40抗原、RGD−含有またはポリリシン−含有配列等を含む。さらに例えばヘキソンタンパク質および/またはファイバータンパク質を含む他のサルAdタンパク質を、これらおよび類似の目的に使用することができる。
【0122】
さらに本発明の他のアデノウイルスタンパク質を単独で、または他のアデノウイルスタンパク質と組み合わせて、当業者には容易に明白な様々な目的に使用することができる。加えて、本発明のアデノウイルスタンパク質に関するさらに他の用途は、当業者に直ちに明らかとなるであろう。
【0123】
本発明の組成物は、治療用またはワクチンのいずれかの目的でヘテロロガスな分子を細胞に送達するベクターを含む。SV18のサルアデノウイルス DNAおよびミニジーン(minigene)を含むそのようなベクターは、キメラアデノウイルスについて本明細書に記載したような技術を使用して構築することができる。あるいはSA19は本明細書に記載するキメラアデノウイルスの配列の供給源となり得る。
【0124】
以下の実施例は、Pan5/C1、hu5/Pan7およびhu5/SV25を含む数種のキメラウイルスの構築および使用を具体的に説明する。しかしこれらのキメラは具体的説明のみであり、本発明をこのような具体的態様に限定することを意図していない。
〈実施例1〉−Pan5/C1キメラサルウイルスの構築
最初にチンパンジーから単離した5種のアデノウイルス、AdC68[米国特許第6,083,716号明細書]、AdPan5、AdPan7、AdPan6およびAdC1[米国特許第6,083,716号明細書]をシークエンシングした。Pan5[配列番号1]、Pan7[配列番号3]およびPan6[配列番号2]の配列に関しては、2004年11月に出願された国際出願第PCT/US02/33645号パンフレットを参照されたい。この出願はSV1、SV25およびSV39に関する配列を提供する[それぞれ配列番号4、5、6]。キャプシドタンパク質配列の配列比較から、明らかにAdC1は他の4種のチンパンジーに由来するアデノウイルスとは異なる血清学的サブグループに属することが予想された。
【0125】
しかしHEK293細胞中でAdC1を培養する試みはその増殖特性において条件が難しく(データは示さず)、したがって現在利用可能なE1相補細胞株を使用したベクター
として使用するには適さない可能性がある。しかし他のチンパンジー由来アデノウイルス(ならびにhuAd5)由来のAdC1キャプシドタンパク質配列の明らかな配列非類似性から、AdC1のキャプシド特性を持つキメラアデノウイルスベクターを作成した。ヘキソンに変化を作ることだけに伴う上記の欠点から、2つの目的を達成するためにさらに徹底的な置換を本明細書に記載するキメラに作成し、すなわち置換がヘキソンを丁度越えるキメラを構築した。第1は延長した置換を作成することが、そうでなければレスキューされない無関係な血清型のヘキソンを含有するウイルスのレスキューを可能にするかどうかを決定することであった。第2の目的は、我々の研究室において製造目的で高力価で増殖することができることが分かったAdPan5のようなアデノウイルスベクターの成長特性が、キメラウイルスにも存在するかどうか、特にヘキソン(および他のキャプシドタンパク質)が、HEK293のような細胞株で高収量に成長することが困難なAdC1のようなウイルスに由来する場合に存在するかどうかを試験することであった。ファイバータンパク質を含む置換を延長する付加的なボーナスは、ヘキソン変化のみにより与えられるものを越えて、抗原の非類似性をさらに増すことであろう。
【0126】
シークエンシングするためのアデノウイルスDNAの供給源として、精製されたウイルスを得る代わりに、我々は感染細胞から得たウイルスDNAの制限フラグメントのクローニングに頼った(“Hirt prep”)。このようにして最初にシークエンシングしたアデノウイルスは、サルアデノウイルスである。サルアデノウイルスのEcoRI消化で、7個のフラグメントを得た。ショットガンクローニングは、5個の内部フラグメントのクローンを生じ、これをクローン化し、そしてシークエンシングした。シークエンシングの完了は、ゲノムの各末端に向かうウォーキングにより行った。ゲノムの地図を図1に示す。
A.2つのPan5/C1キメラプラスミドの構築
キメラウイルスの構築に向けた全体的な取り組みは、最初に完全なE1欠失ウイルスDNAを、制限酵素SwaIに関する認識部位により挟まれた1つのプラスミドに集成し、プラスミドDNAをSwaIで消化してウイルスのDNA末端を放出し、そしてDNAをHEK293細胞にトランスフェクトして、生きているキメラアデノウイルスをレスキューできるかどうかを決定することであった。2つのキメラウイルスプラスミド、p5C1ショートおよびp5C1ロングを構築した。
【0127】
プラスミドp5C1ショートはE1欠失Pan5ウイルスを持ち、ここで内部の15226bpセグメント(18332−33557)は、AdC1に由来する機能的に類似の14127bp(18531−32657)に置き換えられていた。これはPan5タンパク質ヘキソン、エンドプロテアーゼ、DNA結合タンパク質、100kDスカフォールドタンパク質、33kDタンパク質、タンパク質VIIIおよびファイバー、ならびに全E3領域の、AdC1に由来する相同的セグメントへの置換を生じる。AdC1フラグメントの左末端のClaI部位はヘキソン遺伝子の始まりであり、そして生じるタンパク質はC1ヘキソンに同一である。AdC1フラグメントの右末端を構成するEcoRI部位は、AdC1のE4orf7部分内である。再生されるorf7−翻訳産物がAdPan5とAdC1との間のキメラとなるように、右末端をAdPan5に由来するPCRで生成した右末端フラグメントに連結した。
【0128】
プラスミドp5C1ロングはE1欠失Pan5ウイルスを持ち、ここで内部の25603bpセグメント(7955−33557)は、AdC1に由来する機能的に類似の24712bp(7946−32657)に置き換えられていた。これはp5C1ショートで置き換えられたものに加えて、AdPan5前−末端タンパク質、52/55kDタンパク質、ペントン塩基タンパク質、タンパク質VII、Muおよびタンパク質VIの、AdC1由来のものへの置換を生じる。AdC1フラグメントの左末端のAscI部位は、DNAポリメラーゼ遺伝子の始まりであり、そしてAdPan5DNAポリメラーゼの最初の165アミノ酸が、AdC1DNAポリメラーゼ由来の167アミノ酸セグメントに置き換えられたキメラタンパク質を生じる。このN−末端領域で、AdPan5とAdC1DNAポリメラーゼタンパク質との間の相同性は81%(72%の同一性)である。
【0129】
AdPan5の左末端を含有するプラスミドpDVP5Mluは、キメラベクター構築の出発プラスミドとして使用した。
【0130】
プラスミドpDVPMluは、以下のように作成した。それぞれ制限酵素SmaI、MluI、EcoRIおよびEcoRVに関する認識部位を持つ合成DNAフラグメントは、複製起点およびベータ−ラクタマーゼ遺伝子を保持するように、EcoRIおよびNdeIで消化したpBR322に連結した。Mlu部位(15135bp)に延びるPan5の左末端を、SmaIとMlu部位の間でこのプラスミドにクローン化した。E1遺伝子は機能的に削除され、そして極めて稀な切断制限酵素部位I−CeuIおよびPI−SceIに関する認識部位を持つDNAフラグメントに置き換えた。Pan5DNAの右末端の2904塩基対は、プライマーP5L[GCG CAC GCG TCT CTA TCG ATG AAT TCC ATT GGT GAT GGA CAT GC、配列番号7]、およびP5ITR[GCG CAT TTA AAT CAT CAT CAA TAA TAT ACC TCA AAC、配列番号8]を使用して、Tgoポリメラーゼ(ロッシュ:Roche)を使用してPCR増幅した。PCR産物はMluIおよびSwaIで切断し、そしてpDVP5MluのMluIおよびEcoRVの間にクローン化して、pPan5Mlu+REを生成した。次いでPan5のMluI部位(15131)からClaI(18328)部位へ延びる3193bpフラグメントを、pPan5MluI+REの同部位間に挿入して、pPan5Cla+REを生成した。アデノウイルスC1の3671bpのClaI(18531)〜EcoRI(22202)フラグメントを、ClaI(16111)とEcoRI(16116)との間でpPan5Cla+REにクローン化して、pPan5CldelRIを生成した。アデノウイルスC1(22202−32653)の10452bpの内部EcoRIフラグメントを、pPan5CldelRIのEcoRI部位にクローン化してp5C1ショートを生成した。p5C1ロングを構築するために、AdC1置換は、p5C1ショートのAdPan5のAscI−ClaI 10379bpフラグメントを、AdC1 AscI−ClaI 10591bpフラグメントに置換することによりさらに延ばした。最後に緑色蛍光タンパク質(GFP)発現カセットをp5C1ショートおよびp5C1ロングの両方に、I−CeuIとPI−SceI部位との間に挿入して、p5C1ショートGFPおよびp5C1ロングGFPをそれぞれ生成した。
B.キメラPan5/C1組換えベクターアデノウイルスのレスキュー
プラスミドp5C1ショートGFPおよびp5C1ロングGFPを、制限酵素SwaIで消化し、そしてHEK293細胞にトランスフェクトした。典型的なアデノウイルスが誘導する細胞病理学上の効果が観察された。p5C1ロングGFPトランスフェクションから組換えキメラアデノウイルスのレスキューは、トランスフェクションからの上清を回収し、そしてGFP発現により測定されるように形質導入されたことが分かる新鮮な細胞を再感染することにより確認した。キメラ組換えウイルスに由来するウイルスDNAは、数種の制限酵素で消化し、そして予想される電気泳動のパターンを有することが分かった(データは示さず)。
【0131】
短い置換p5C1ショートを持つキメラアデノウイルス構築物は、C1タンパク質であるヘキソンおよびファイバーならびにエンドプロテアーゼ用の介在するオープンリーディングフレーム、DNA結合タンパク質、100kDaスカフォールディングタンパク質、33kDaタンパク質およびタンパク質VIIIをコードする。(E3領域もこの領域に含まれるが、キメラウイルスの生存能には影響を与えないようである)。置換がさらにAdC1タンパク質pTP(前−終結タンパク質)、52/55kDaタンパク質、ペント
ン塩基、タンパク質VII、Muおよびタンパク質VIを含むように延長された時、生きているキメラウイルスのレスキューに困難はなかった。この実験でキメラアデノウイルス構築法は、両AdPan5およびAdC1上のそれぞれDNAポリメラーゼおよびヘキソンに関する遺伝子上に存在するAscIおよびClaI制限酵素部位の存在を利用した。
【0132】
野生型AdC1ウイルスに比べてキメラウイルスの相対的に高い収量の理由は、明らかではない。293細胞中でのキメラウイルスの増殖では、E1およびE4のアデノウイルス初期領域遺伝子産物が、それぞれAd5およびAd5Pan5から誘導される。E1およびE4遺伝子産物は、数種の細胞転写複合体に結合し、調節し、そして脱抑制(de−repress)し、そしてウイルスの増殖に対するそれらの活性をコーディネートする。このように293細胞からトランスに供給されるE1遺伝子産物、およびAdPan5からのE4遺伝子産物は、均等なAdC1遺伝子産物よりもヒト293細胞のバックグラウンドでより適している可能性がある。これは活性をキャプシドタンパク質遺伝子の転写の原因である主要後期プロモーターの活性に応用することもできる。キメラウイルスでは、主要後期プロモーターおよびそれをトランス活性化(transactivate)するタンパク質IVa2がAdPan5に由来する。しかしアデノウイルスのDNA複製に必要なE2遺伝子産物、pTPおよび一本鎖DNA−結合タンパク質は、AdC1に由来する。pTPと複合体を形成するアデノウイルスDNAポリメラーゼは、Ad5C1ではキメラであるが、ほとんどがAdPan5に由来する。
〈実施例2〉−Ad5キメラサルウイルスの構築
構造タンパク質がチンパンジーアデノウイルスPan7に由来し、そしてフランキング配列がヒトAd5(通常使用されるベクター株)に由来するうプラスミドを構築した。Adhu5−Pan7キメラアデノウイルスはレスキューされ、キメラウイルスを誘導するために使用するこのキメラウイルス構築法が広く応用可能であるにとを示す。
A.Ad5−Pan7キメラアデノウイルスの構築
キメラアデノウイルスが生存可能であることを樹立し、次いでE1相補細胞株HEK293にプラスミドをトランスフェクトさせるために、完全(E1欠失)キメラゲノムを持つプラスミドを構築した。組換えウイルスはレスキューできることが分かった。構築されたキメラアデノウイルスゲノムは、ITR、導入遺伝子発現カセット、pIXおよびIVa2遺伝子およびポリメラーゼ遺伝子の954C−末端アミノ酸(これは下の鎖から、右から左方向へ転写される)を含有するE1欠失領域に寄与するAd5に由来する左末端セグメントからなる。またAd5は、E4遺伝子および右ITRを含有するキメラゲノムの右末端にも貢献する。キメラ構築物中の中央部に存在するすべての他の遺伝子は、キメラDNAポリメラーゼのN−末端235アミノ酸を含むチンパンジーアデノウイルスPan7に由来する。
【0133】
完全(E1欠失)キメラゲノムを持つプラスミドを構築するために、出発プラスミドは3つの部分:プラスミドに由来する複製起点およびアンピシリン耐性遺伝子、野生型Ad5ゲノムの塩基対番号5782に位置する左ITRからStu部位に広がるAd5由来E1欠失ベクターの左末端(E1欠失は野生型Ad5ゲノムの塩基対342〜3533に広がる)、および野生型Ad5ゲノムの塩基対番号31954のStuI部位から、右ITRの右末端に広がるAd5の右末端、からなるpBRAd5lereであった。2つのITRに隣接して位置するPacI部位を使用して、細菌プラスミド骨格に由来するAd5ゲノムを放出した。E1欠失の代わりに位置するI−CeuIおよびPI−SceI部位を含有するフラグメントを、導入遺伝子カセットを挿入するために使用する。
【0134】
合成DNAオリゴマーを、プラスミドpAd5endsAscRIの作成を可能にするAscI、XbaIおよびEcoRIに関する部位を含むStuI部位に挿入し、ここでPCRを使用する場合、Ad5ポリメラーゼ遺伝子が野生型Ad5ゲノムの塩基対#8068に延び、そして以下に示すようにポリメラーゼ遺伝子のサイレント突然変異誘発法によりこの位置に新たに生成したAscI部位を包含する(下の鎖から翻訳される)。
元の配列
GCG ACG GGC CGA[配列番号16]
CGC TGC CCG GCT
Arg Arg Ala Ser[配列番号17]
突然変異した配列(AscI認識部位に下線を付した)
GCG GCG CGC CGA[配列番号18]
CGC TGC CCG GCT
Arg Arg Ala Ser[配列番号17]
Pan7ファイバー含有領域は、PCRにより増幅し(ファイバーの停止コドンをTGAからTAAに突然変異させて、Ad5にあるものに類似するポリアデニル化シグナルを提供する)、そしてEcoRI部位に挿入してpAd5endsP7fibを得た。幾つかのクローニング工程によりpH5C7H5の構築を導き、この場合、完全なキメラアデノウイルスゲノムが集成された。GFP(緑色蛍光タンパク質)を発現する導入遺伝子カセットを、pH5C7H5のI−CeuIおよびPI−SceI部位間に挿入した。最終構築物をPacIで消化し、アデノウイルスゲノムをプラスミド骨格から分け、そしてHEK293細胞にトランスフェクトした。細胞ライゼートを2週間後に回収し、そしてキメラアデノウイルスを標準法により増幅させ、そして精製した。
B.Ad5−サルウイルス25(SV−25)キメラアデノウイルスの構築
[N.B.サルウイルス25(ATCCカタログ番号VR−201)は、チンパンジーアデノウイルスサルアデノウイルス25 ATCCカタログ番号VR−594とは異なる]
左および右末端セグメントがAd5に由来し、そして中央部分がモンキーアデノウイルスSV−25に由来するAd5に基づくキメラアデノウイルスの構築は、Ad5とチンパンジーアデノウイルスPan7との間のキメラである上記キメラアデノウイルスについて記載した上記の様式に完全に準じて行った。すなわち構築したキメラアデノウイルスゲノムは、ITR、導入遺伝子発現カセット、pIXおよびIVa2遺伝子およびポリメラーゼ遺伝子の956C−末端アミノ酸を含有するE1欠失領域に寄与するAd5に由来する左末端セグメントからなる。またAd5はE4遺伝子および右ITRを含有するキメラゲノムの右末端にも貢献する。[さらにAd5ゲノムの左末端は、pH5C7H5に存在するものよりも延長したので、Ad5左末端に454塩基対が存在した。絶対に必須ではないが、これはパッケージ効率を向上させるために行った。]キメラ構築物の中央部分に存在するすべての遺伝子は、キメラDNAポリメラーゼのN−末端230アミノ酸を含むモンキーアデノウイルスSV−25に由来する。キメラゲノムを構築するためのこの出発プラスミドは、Ad5の左および右末端の両方、ならびにAd5−SV25キメラ融合物が作成される場合(Ad5−Pan7キメラアデノウイルスについて行ったように)、ポリメラーゼ遺伝子中に(サイレント突然変異誘発法により)作成されたAscI部位を含むpAd5endsAscRIであった。最終的な構築物、pH5S25H5では、SV25ゲノムセグメントが順次のクローニング工程により包含され、ポリメラーゼコード配列内のライゲーション連結部にAscI部位の作成を含む。GFP(緑色蛍光タンパク質)を発現する導入遺伝子カセットは、pH5S25H5のI−CeuIとPI−SceI部位との間に挿入された。最終構築物をPacIで消化してアデノウイルスゲノムをプラスミド骨格から分け、そしてHEK293細胞にトランスフェクトした。細胞ライゼートを2週間後に回収し、そしてキメラアデノウイルスを標準法により増幅させ、そして精製した。
【0135】
図2は組換えAdhu5−SV25キメラウイルスの地図を提供する。Pan7に由来するDNAにより置き換えられたゲノムの一部を示す。
〈実施例3〉−免疫原性組成物の送達媒体としての本発明のPan5−C1キメラベクターエボラウイルス(ザイール)の糖タンパク質(C5C1C5−CMVGP)を発現するPan5(サルアデノウイルス22、アデノウイルスサブグループE、C5とも呼ぶ)−C1(サルアデノウイルス21、アデノウイルスサブグループB)キメラを、ワクチンとしてベクターC5C1C5−CMVGPの効力を試験するためにモデル抗原として構築した:このベクターをAdhu5基本ベクター(H5−CMVGP)と比較した。H5−CMVGPに比べて、C5C1−CMVGPベクターはわずかに減少したレベルのGP発現を形質導入したA549細胞中で生じた。
【0136】
その後、5×1010H5−CMVGPまたはC5C1−CMVGPベクターのいずれかを、筋肉内にワクチン接種されたB10BRマウスで誘導されたGP−特異的T細胞およびB細胞応答を比較した。
【0137】
C5C1C5−CMVGPベクターは、刺激物としてH−2k拘束GP特異的ペプチドを使用して細胞内サイトカイン染色により測定した時、H5−CMVGPベクターよりも遅い動力学のガンマインターフェロン生産CD8+T細胞の低い頻度を誘導したようであった。ELISAで測定した時、GPに対する全IgG応答は、C5C1C5−CMVGPまたはH5−CMVGPベクターを用いてワクチン接種したマウスに由来する血清で等しかった。しかしC5C1C5−CMVGPベクターは、より有力なTh1型応答を誘導し、一方H5−CMVGPベクターは、よりバランスのとれたTh1/Th2型応答を刺激した。生存実験では、マウスを上記のようにワクチン接種し、そして28日後に200LD/50マウス−適応(adapted)エボラザイールウイルスで攻撃した。100%の生存が両群で見られた。
〈実施例4〉−キメラPan6/Pan7ベクターの生成
GFP発現ベクターのパネルを作成した。このパネルには、Pan6とPan7との間のキメラベクターであるベクターを含み、ここで(a)Pan7のヘキソンタンパク質は、Pan6のヘキソン部分に置き換えられ(C767と呼ぶ)、(b)Pan7のファイバータンパク質はPan由来のものにより置き換えられ(C776と呼ぶ)、(c)Pan7ベクターのヘキソンおよびファイバータンパク質の両方がPan6由来のものに置き換えられている(C766と呼ぶ)。
【0138】
C767と呼ぶキメラウイルスは、本質的に実施例1のC5C1C5ウイルスについて上に記載したように構築した。しかしヘキソン配列に対してPan6とPan7の配列5’間の実質的相同性により、ペントンとpol遺伝子との間のゲノムの5’を置き換える必要はなかった。
【0139】
キメラベクターC767を、それぞれがGFPを発現するC776、C766および親のC6および親のC7と比較した。
【0140】
Balb/Cマウス(群あたり25)は、Pan6またはPan7(1010粒子)のいずれかで筋肉内に免疫感作した。再投与(1011粒子、i.v.、尾の静脈注射による)は、5種のGFP発現ベクター(C6−GFP、C7−GFP、および3種のキメラベクター)のそれぞれを使用して3週間後に試みた。3日後、肝臓の形質導入のレベルは、GFP発現の存在について肝臓切片の調査により定性的に、そしてTaqman分析によりGFP DNAのコピーを見積もることにより定量的に予測した。2つのチンパンジーアデノウイルスベクターのいずれか1つの投与は、他のベクターの形質導入効率に影響を及ぼさないが、同じベクターの再投与はかなり抑制される(compromised)。データはヘキソンおよびファイバーの両方に対する抗体が、アデノウイルスベクターの再投与の防ぐために重要であることを示した。
【0141】
本明細書に引用したすべての刊行物、優先書類、2004年3月28日に出願された米
国特許出願第60/575,429号明細書;2004年4月28日に出願された米国特許出願第60/566,212号明細書および2003年、6月20日に出願された米国特許出願第10/465,302号明細書は参考により編入する。本発明は特定の好適な態様に関して記載してきたが、本発明の精神から逸脱することなく改変を行うことができると考えるだろう。そのような改変は添付する特許請求の範囲内にあることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】上記の実施例に記載するように、ショットガンクローニングにより生成されたサルアデノウイルスのゲノムの地図を提供する。
【図2】H5S25H5と呼ぶ組換えAdhu5−SV25キメラウイルスの地図を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択した宿主細胞中でキメラアデノウイルスを効率的に培養する方法であって、該キメラアデノウイルスが該宿主細胞中で効率的に増殖できない親のアデノウイルス株に由来し、かつ、
(a)(i)選択した宿主細胞型中で増殖する第1アデノウイルスの左末端および右末端のアデノウイルス配列であって、ここで、該左末端領域は5’逆方向末端反復配列(ITR)を含み、そして該右末端領域は3’逆方向末端反復配列(ITR)を含む、アデノウイルス配列;および
(ii)天然の5’および3’末端領域を欠く親のアデノウイルスに由来する内部領域であって、かつ、ペントン、ヘキソンおよびファイバーをコードする後期遺伝子を含む内部領域;
を含んでなるキメラアデノウイルスを生成する工程、ここで生成したキメラアデノウイルスは5’から3’に第1アデノウイルスの左末端領域、親のアデノウイルスの内部領域、および第1アデノウイルスの右末端領域を含んでなり、そして
b)第1アデノウイルスまたは第1アデノウイルスをトランス相補するアデノウイルスの血清型に由来する機能的なアデノウイルスE1a、E1bおよびE4 ORF6遺伝子の存在下で、そしてさらにアデノウイルスの左末端に由来する必要なアデノウイルス構造遺伝子の存在下で、該キメラアデノウイルスを培養する工程、
を含んでなる上記方法。
【請求項2】
親のアデノウイルスの内部領域がさらに、エンドプロテアーゼオープンリーディングフレーム、DNA結合タンパク質、100kDaスカフォールドタンパク質、33kDaタンパク質、タンパク質VIII、pTP、52/55kDaタンパク質、タンパク質VII、Muおよびタンパク質VIからなる群から選択される1もしくは複数の機能的アデノウイルス遺伝子を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリメラーゼ、末端タンパク質および52/55kDaタンパク質機能が、トランスに提供される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1アデノウイルスがさらにポリメラーゼ、末端タンパク質および52/55kDaタンパク質機能をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
キメラアデノウイルスが、親のアデノウイルスのアデノウイルス後期遺伝子1、2、3、4および5を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
選択した宿主細胞がアデノウイルスE1a、E1bまたE4 ORF6機能の1もしくは複数を安定に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
キメラアデノウイルスが、第1アデノウイルスのアデノウイルスE1a、E1bまたE4 ORF6の1もしくは複数を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1アデノウイルスがヒト起源である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1アデノウイルスがサル起源である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
キメラアデノウイルスを単離する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
選択した宿主細胞中で増殖するキメラアデノウイルスの生成法であって、該キメラアデノウイルスが該宿主細胞中で効率的に増殖できない親のアデノウイルス株に由来し、かつ

選択した宿主細胞型中で増殖する第1アデノウイルスの5’および3’であって末端領域であって、該5’末端領域は5’逆方向末端反復配列(ITR)および必要なE1遺伝子機能を含むものであり、そして3’末端領域は逆方向末端反復配列(ITR)および必要なE4遺伝子機能を含むものである該5’および3’末端領域;と
天然の5’および3’末端領域を欠く親のアデノウイルスに由来する内部領域であって、該内部領域はヘキソン、ペントン塩基およびファイバーを含むものである該内部領域;を含んでなるキメラアデノウイルスを生成する工程を含んでなり、ここで生成したキメラアデノウイルスは5’から3’に第1アデノウイルスの5’末端領域、親のアデノウイルスの内部領域、および第1アデノウイルスの3’末端領域を含んでなる上記方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法により生産されるキメラアデノウイルス。
【請求項13】
選択した細胞中で効率的に増殖できない選択したアデノウイルスの血清型のヘキソンタンパク質を含んでなるキメラアデノウイルスであって、該改変されたアデノウイルスが:(a)選択した宿主細胞型中で増殖する第1アデノウイルスの左末端のアデノウイルス配列であって、該左末端領域はE1a、E1bおよび5’逆方向末端反復配列(ITR)を含むものである該左末端のアデノウイルス配列;
(b)選択した宿主細胞中で効率的に増殖できない選択したアデノウイルスの血清型の内部領域のアデノウイルス配列であって、該内部領域は選択したアデノウイルスのペントン、ヘキソンおよびファイバーをコードする遺伝子を含むものである該内部領域のアデノウイルス配列;
(c)第1アデノウイルスの右末端のアデノウイルス配列であって、該右末端領域は必要なE4遺伝子機能および3’逆方向末端反復配列(ITR)を含むものである該右末端のアデノウイルス配列;
を含んでなり、こうして感染および複製に必要なアデノウイルスの構造および調節タンパク質を含んでなる上記キメラアデノウイルス。
【請求項14】
キメラアデノウイルスがさらに選択したアデノウイルスの血清型のIIIa、52/55kDaおよび末端タンパク質(pTP)を含んでなる、請求項13に記載のキメラアデノウイルス。
【請求項15】
キメラアデノウイルスが第1アデノウイルスのポリメラーゼを含んでなる、請求項13に記載のキメラアデノウイルス。
【請求項16】
キメラアデノウイルスが第1アデノウイルスおよび選択したアデノウイルスから形成される機能的キメラタンパク質を発現し、該キメラタンパク質がポリメラーゼ、末端タンパク質、52/55kDaタンパク質およびIIIaからなる群から選択される、請求項13に記載のキメラアデノウイルス。
【請求項17】
キメラアデノウイルスが選択したアデノウイルスの末端タンパク質、52/55kDa、および/またはIIIaを含んでなる、請求項13に記載のキメラアデノウイルス。
【請求項18】
請求項12に記載のキメラアデノウイルスを含んでなる宿主細胞。
【請求項19】
上記宿主細胞がヒト細胞である請求項18に記載の宿主細胞。
【請求項20】
(a)配列番号12の核酸1〜31967の配列を有するSA18、および
(b)(a)ないし(f)の任意の配列に相補的な核酸配列、
からなる群から選択される単離されたサルアデノウイルス核酸配列。
【請求項21】
(a)5’逆方向末端反復配列(ITR);
(b)アデノウイルスE1a領域、または13S、12Sおよび9S領域の中から選択されるそのフラグメント;
(c)アデノウイルスE1b領域、またはスモールT、ラージT、IXおよびIVa2領域からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(d)E2b領域;
(e)L1領域、または28.1kDタンパク質、ポリメラーゼ、アグノプロテイン、52/55kDタンパク質およびIIIaタンパク質からなる群の中から選択されるそのフラグメント;
(f)L2領域、またはペントン、VII、VIおよびMuタンパク質からなる群から選択されるそのフラグメント;
(g)L3領域、またはVI、ヘキソンまたはエンドプロテアーゼからなる群から選択されるそのフラグメント;
(h)2aタンパク質;
(i)L4領域、または100kDタンパク質、33kD相同体およびVIIIからなる群から選択されるそのフラグメント;
(j)E3領域、またはE3 ORF1、E3 ORF2、E3 ORF3、E3 ORF4、E3 ORF5、E3 ORF6、E3 ORF7、E3 ORF8およびE3
ORF9からなる群から選択されるそのフラグメント;
(k)L5領域、またはファイバータンパク質から選択されるそのフラグメント;
(l)E4領域、またはE4 ORF7、E4 ORF6、E4 ORF4、E4 ORF3、E4 ORF2およびE4 ORF1からなる群から選択されるそのフラグメント;
(m)SA18配列番号12のいずれかの3’ITR、あるいは(a)ないし(m)のいずれかに相補的な配列、
からなる群の1もしくは複数から選択される単離されたサルアデノウイルスの血清型核酸配列。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸配列によりコードされるサルアデノウイルスタンパク質。
【請求項23】
選択した細胞に送達するために、ヘテロロガスな分子に連結された請求項22に記載のサルアデノウイルスキャプシドタンパク質を含んでなる組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物を個体に送達することを含んでなる、アデノウイルス受容体を有する細胞を標的とする方法。
【請求項25】
請求項21に記載のヘテロロガスなサルアデノウイルス配列を含んでなる核酸分子。
【請求項26】
上記サルアデノウイルス配列がアデノウイルス遺伝子産物をコードし、そして宿主細胞中でアデノウイルス遺伝子産物の発現を支配する調節制御配列に操作可能に連結されている、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
上記サルアデノウイルス配列がSA18配列番号12のE1a領域を含んでなる、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項28】
請求項27に記載の核酸分子および生理学的に許容され得る担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項29】
(a)SA18のヘキソンタンパク質、配列番号13またはそのユニークフラグメント

(b)SA18のペントンタンパク質、配列番号14またはそのユニークフラグメント;
(c)SA18のファイバータンパク質、配列番号15またはそのユニークフラグメント、からなる群から選択されるタンパク質を含んでなるキャプシドを有する組換えアデノウイルス。
【請求項30】
キャプシドが人工的血清型である、請求項29に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項31】
上記ウイルスがさらに、宿主細胞中で上記遺伝子の発現を支配する配列に操作可能に連結されているヘテロロガスが遺伝子を含んでなる、請求項29に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項32】
さらに複製およびキャプシド形成に必要な5’および3’アデノウイルスシス−エレメントを含んでなる、請求項29に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項33】
上記ベクターがE1遺伝子のすべて、または一部を欠いている、請求項29に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項34】
請求項21に記載の核酸配列を含んでなるヘテロロガスな核酸分子を含んでなる宿主細胞。
【請求項35】
上記宿主細胞が核酸分子で安定に形質転換されている、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項36】
上記宿主細胞が上記核酸分子から1もしくは複数のアデノウイルス遺伝子産物を発現し、該アデノウイルス遺伝子産物がE1a、E1b、E2aおよびE4 ORF6からなる群から選択される、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項37】
上記宿主細胞がサルアデノウイルス逆方向末端反復配列を含んでなる核酸分子で安定に形質転換されている、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項38】
製薬学的に許容され得る担体中に請求項29に記載の組換えウイルスを含んでなる組成物。
【請求項39】
哺乳動物細胞にヘテロロガスな遺伝子を送達する方法であって、該細胞に有効量の請求項29に記載の組換えウイルスを導入することを含んでなる上記方法。
【請求項40】
哺乳動物にヘテロロガスな遺伝子を繰り返し投与する方法であって:
(a)該哺乳動物に、ヘテロロガスな遺伝子を含んでなる第1ベクターを導入する工程、および
(b)該哺乳動物に、ヘテロロガスな遺伝子を含んでなる第2ベクターを導入する工程、を含んでなり、ここで少なくとも第1ウイルスまたは第2ベクターが請求項29に記載のウイルスであり、そして第1および第2組換えベクターが異なるものである、
上記方法。
【請求項41】
哺乳動物細胞を請求項29に記載の組換えウイルスで感染させ、該細胞を適切な条件下で培養し、そして該細胞培養物から発現した遺伝子産物を回収することを含んでなる、選択された遺伝子産物の生産方法。
【請求項42】
感染源に対して哺乳動物宿主に免疫応答を誘導する方法であって、該宿主に有効量の請
求項29に記載の組換えアデノウイルスを投与し、ここで該ヘテロロガスな遺伝子が感染源の抗原をコードするものである、上記方法。
【請求項43】
宿主を、組換えアデノウイルスの投与前にヘテロロガスな遺伝子を含んでなるDNAワクチンで初回免疫感作する工程を含んでなる、請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−525197(P2007−525197A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517149(P2006−517149)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/016614
【国際公開番号】WO2005/001103
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】