説明

キメラベクター

本発明は、パルボウイルス(AAVを含む)キャプシドに、所望の特性を賦与する他のパルボウイルスの小さな選択領域を組み込むことができるという発見に部分的に基づくものである。本発明者らは、ある場合には、第1のパルボウイルス(例えばAAV)に由来する1個のアミノ酸を別のパルボウイルス(例えばAAV)のキャプシド構造に挿入または置換してキメラパルボウイルスを作成するだけで、得られるキメラパルボウイルスに第1のパルボウイルスの所望の特性1種以上を与えることができる、および/または第1のパルボウイルスに存在しなかったまたは低いレベルでしか存在しなかった他の特性を与えることができることを発見した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国仮出願第60/636,126号(2004年12月15日提出)に基づき優先権を主張し、この参照により全文を本開示に含むものとする。
【0002】
本発明は、新規なキメラウイルスベクター、ならびにその作製および投与方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)をベースに作製されるベクターは、筋肉への送達など、特定の遺伝子治療のベクターとして使用されるようになってきている。このような治療プロトコルでAAVベクターを使用する際には、AAVの持つ有利な特性が利用される。特性の例としては、病原性・病変が無いこと、調製・精製が容易であること、筋肉を含む多くの組織で長期間発現すること、有害な細胞性免疫応答が無いことなどが挙げられる。
【0004】
AAV単離体のうち最も研究されているのは血清2型AAV(AAV2)である。この10年で、別のAAV血清型の組織向性に関する評価も増えており、AAVの血清型に応じて好適な用途があることが示唆されている。この点に関して、骨格筋への送達に最も効果があると考えられているのが血清1、6および7型である。例えば、AAV2と比較して、少ない投与量(すなわち少ない粒子数)のAAV1で、高レベルの導入遺伝子を早期に発現することができる。
【0005】
AAV2の精製方法は仔細に解明されているが、その他のAAV血清型については精製パラメターが合理化されていない。そこで、AAV2の精製の容易性を保ちつつ、AAV1、6および7の呈する増強した筋肉向性といった利点を有するAAV2変異体をデザインすることが望ましい。使用可能なAAVベクターの種類を増やすことで、再投与と免疫応答に関する懸念も解消される。
【特許文献1】米国仮出願第60/636,126号
【特許文献2】米国特許公開公報2004−0013645−A1
【特許文献3】米国特許第4,501,729号
【特許文献4】米国特許第4,968,603号
【特許文献5】米国特許第6,156,303
【特許文献6】米国特許第5,863,541号
【特許文献7】米国特許第6,040,183号
【特許文献8】米国特許第6,093,570号
【特許文献9】米国特許第5,658,785号
【特許文献10】米国特許第5,877,022号
【特許文献11】米国特許第6,013,487号
【特許文献12】米国特許第6,083,702号
【特許文献13】米国特許第5,869,248号
【特許文献14】米国特許第5,916,563号
【特許文献15】米国特許第5,905,040号
【特許文献16】米国特許第5,882,652号
【特許文献17】米国特許第5,863,541号
【特許文献18】米国特許第5,399,346号
【特許文献19】国際特許公開公報WO00/28061
【特許文献20】国際特許公開公報WO99/61601
【特許文献21】国際特許公開公報WO98/11244
【特許文献22】国際特許公開公報WO00/28004
【特許文献23】国際特許公開公報WO01/92551
【特許文献24】国際特許公開公報WO00/17377
【特許文献25】国際特許公開公報WO90/05142
【特許文献26】国際特許公開公報WO01/92551
【特許文献27】米国特許公開公報第2003017131号
【非特許文献1】SAMBROOK他、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL第2版(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989);F.M.AUSUBEL他、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク州)
【非特許文献2】BERNARD N.FIELDS他、VIROLOGY 第2巻第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers
【非特許文献3】Gao他(2004) J.Virology 78: 6381-6388
【非特許文献4】Xiao,X.(1996) “Characterization of Adeno-associated virus (AAV) DNA replication and integration”(博士論文、ピッツバーグ大学、ペンシルバニア州ピッツバーグ)
【非特許文献5】Muzyczka (1992) Curr.Topics Microbiol.Immunol.158: 97
【非特許文献6】Chao他 (2000) Molecular Therapy 2: 619参照
【非特許文献7】Hauck他 (2003) J.Virology 77: 2768-2774
【非特許文献8】Margolski (1992) Curr.Top.Microbiol.Immun.158: 67
【非特許文献9】Palombo他 (1998) J.Virology 72: 5025
【非特許文献10】Ferrari他 (1997) Nature Med.3: 1295
【非特許文献11】Conway他 (1999) Gene Therapy 6: 986
【非特許文献12】Urabe 他 (2002) Human Gene Therapy 13: 1935-43
【非特許文献13】Zolotukhin他 (1999) Gene Therapy 6: 973
【非特許文献14】Vincent他 (1993) Nature Genetics 5: 130
【非特許文献15】Sharp他 (2000) Science 287: 2431
【非特許文献16】S.A.Rosenberg (1999) Immunity 10: 281
【非特許文献17】Kawakami他 (1994) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91: 3515;Kawakami他 (1994)
【非特許文献18】J.Exp.Med.180: 347;Kawakami他 (1994) Cancer Res.54: 3124
【非特許文献19】Wick他 (1988) J.Cutan.Pathol.4: 201
【非特許文献20】Brichard他 (1993) J.Exp.Med. 178:489
【非特許文献21】Levine (1993) Ann.Revn.Biochem. 62: 623
【非特許文献22】Rosenberg (1996) Ann.Rev.Med. 47: 481-91
【非特許文献23】Herbert B. Herscowitz, “Immunophysiology: Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation”, IMMUNOLOGY: BASIC PROCESSES 117(Joseph A. Bellanti 編、1985
【非特許文献24】Pharmaceutical Research 3: 318 (1986)
【非特許文献25】Rabinowitz他(2001) J.Virology 76: 781-801
【非特許文献26】Haberman他 (1999) “Production of recombinant adeno-associated viral vectors and use in in vitro and in vivo administration”, p.4.17.1 - 4.17.25., J.Crawley他(編)Current protocols in neuroscience第1巻, John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク
【非特許文献27】Rabinowitz (2004) J.Virology 78: 4421-4432
【非特許文献28】Hauck他 (2003) J.Virology 77: 2768-2774
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、多様なAAVベクター群を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、目的とする特性(例えば増強した組織向性)を1種以上呈するようにデザインしたキメラウイルスベクターを提供する。例えば、本発明者らは、インビボ形質導入を増強させる原因となるAAV1のアミノ酸を同定し、このアミノ酸をAAV2およびAAV3bのバックボーンに選択的に導入した。特定の実施形態において、本発明のキメラウイルスは、増強した形質導入能(例えば骨格筋、心筋、グリア細胞、星状細胞、肝臓、網膜および/または肺などへの形質導入)、増強した導入遺伝子発現レベルおよび/または、早期の導入遺伝子発現開始を呈する。本発明のキメラウイルスはまた、1種以上の細胞または組織(例えば肝臓)について、低い形質導入能を呈する。この特性は、目的とする標的組織にベクターを向けることでベクターの投与量を少なくするという点で望ましい。
【0008】
AAV2をベースに作製するキメラウイルスについては、この血清型の所望の特性(例えば精製の容易性、既知の安全性など)のうち1種以上を保持しつつ、AAV1、AAV6および/またはAAV7などの他のAAVの有する利点(例えば骨格筋への増強した形質導入)および/または他のAAVでは見られないか程度が低い、目的とする他の特性を呈するようにデザインすることができる。更に特定の実施形態において、キメラウイルスは、親ウイルスの一方または両方とは異なる免疫学的プロファイルを呈する(すなわち、親ウイルスに対する中和抗血清または抗体によって微弱に認識されるかまたは全く認識されない)。これにより、親ウイルスに対する抗体を有する対象体(subject)への投与、または別の血清型投与に続けて行う反復投与が可能になる。
【0009】
従って一態様において本発明は、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化を含むキメラAAVキャプシド;および
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター
を提供する。
【0010】
別の態様として本発明は、
(a)下記を含むキメラAAVキャプシド:
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの選択的アミノ酸置換;
(ii)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置(例えばアミノ酸位置264の直後)へのトレオニンの選択的アミノ酸挿入;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター
を提供する。
【0011】
本発明は更に、
(a)下記を含むキメラAAVキャプシド:
(i)AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの選択的アミノ酸置換;
(ii)前記AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置(例えばアミノ酸位置264の直後)へのトレオニンの選択的アミノ酸挿入;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター
を提供する。
【0012】
さらに別の態様として本発明は、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化を含むキメラAAVキャプシド;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター
を提供する。
【0013】
さらに別の態様として本発明は、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化を含むキメラAAVキャプシド;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター
を提供する。
【0014】
また、本発明のキメラウイルスベクターを含む薬剤配合物を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のキメラウイルスベクターまたは薬剤配合物を細胞に接触させるステップを含む、核酸を細胞に投与する方法を提供する。
【0016】
更なる態様として、本発明は、本発明のキメラウイルスベクターまたは薬剤配合物を対象体に投与するステップを含む、核酸を対象体へ投与する方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、疾患治療用薬物の製造における本発明のキメラウイルスベクターの使用を提供する。
【0018】
本発明の上記およびその他の態様を、以下に詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、パルボウイルス(AAVを含む)キャプシドに、所望の特性を賦与する他のパルボウイルスの小さな選択領域を組み込むことができるという発見に部分的に基づくものである。本発明者らは、ある場合には、第1のパルボウイルス(例えばAAV)に由来する1個のアミノ酸を別のパルボウイルス(例えばAAV)のキャプシド構造に挿入または置換してキメラパルボウイルスを作成するだけで、得られるキメラパルボウイルスに第1のパルボウイルスの所望の特性1種以上を与えることができる、および/または第1のパルボウイルスに存在しなかったまたは低いレベルでしか存在しなかった他の特性を与えることができることを発見した。
【0020】
本発明の好ましい実施形態を示した付属の図面を参照に、以下本発明を説明する。しかし本発明は、別の実施形態を取ることも可能であり、ここに記載する実施形態に限定されるものではない。むしろ、これらの実施形態は本開示を完全にするためのものであり、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるためのものである。
【0021】
特に定義しない限りは、ここに記載する全ての専門用語・学術用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の説明に用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、発明を限定することを企図するものではない。ここで言及する全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、この参照により全文を本開示に含むものとする。
【0022】
本発明の説明及び付属の請求項において、AAVキャプシドサブユニットのアミノ酸位置の全ての番号表記は、VP1キャプシドサブユニットの番号付けを基準とする。
【0023】
特に明記する場合を除いては、rAAV作成物、改変キャプシドタンパク質、パルボウイルスrepおよび/またはcap配列を発現するパッケージングベクター、および一時的または安定的にトランスフェクトしたパッケージング細胞の作製には、当技術分野で標準的な方法を用いることができる。これらの方法は当業者に公知である(例えばSAMBROOK他、MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL第2版(Cold Spring Harbor、ニューヨーク州、1989);F.M.AUSUBEL他、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(Green Publishing Associates, Inc.およびJohn Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク州)参照)。
【0024】
定義
本明細書と請求項において、下記の用語が用いられる。
【0025】
本明細書と請求項において、文脈によって明らかでない限りは、単数形の「a」「an」および「the」の表現は、複数形も含むものとする。
【0026】
本明細書でいう「パルボウイルス」の語は、自律的に増殖するパルボウイルス、ディペンドウイルスなどのパルボウイルス科を含む。自律的パルボウイルスには、パルボウイルス、エリスロウイルス、デンソウイルス、イテラウイルスおよびコントラウイルス属のものが含まれる。自律的パルボウイルスの例としては、マウス微小ウイルス、ウシパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、H1パルボウイルス、バリケンパルボウイルス、およびB19ウイルスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の自律的パルボウイルスは当業者に公知である(例えばBERNARD N.FIELDS他、VIROLOGY第2巻第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)参照)。
【0027】
ディペンドウイルス属はアデノ随伴ウイルス(AAV)を含む。AAVの例としては、1型AAV、2型AAV、3型AAV(3Aおよび3B型など)、4型AAV、5型AAV、6型AAV、7型AAV、8型AAV、9型AAV、10型AAV、11型AAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAVまたは現在知られるあるいはその後発見されたその他の全てのAAVが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えばBERNARD N.FIELDS他、VIROLOGY第2巻第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照可能である。近年、多くの新規なAAV血清型とクレードが同定されている(例えばGao他(2004) J.Virology 78: 6381-6388および表1参照)。
【0028】
様々な血清型のAAVおよび自律的パルボウイルスのゲノム配列、ならびにRepタンパク質およびキャプシドサブユニット末端重複(TR)配列は当技術分野で公知である。これらの配列は、文献やジェンバンク(GenBank)などの公開データベースに開示されている。例えばジェンバンク受入番号NC002077、NC001401、NC001729、NC001863、NC001829、NC001862、NC000883、NC001701、NC001510、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、NC001358、NC001540、AF513851、AF513852、AY530579、AY631965、AY631966が参照可能である(ここに参照して説明に代える)。また例えばSrivistava他 (1983) J.Virology 45: 555;Chiorini他 (1998) J.Virology 71: 6823;Chiorini他 (1999) J.Virology 73: 1309;Bantel-Schaal他 (1999) J.Virology 73: 939;Xiao他 (1999) J.Virology 73: 3994;Muramatsu他 (1996) Virology 221: 208;Shade他 (1986) J.Virol. 58: 921;Gao他 (2002) Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99: 11854;国際特許公開公報WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244;米国特許第6,156,303が参照可能である(この参照により全文を本開示に含むものとする)。また表1を参照可能である。AAV1、AAV2およびAAV3末端重複配列についての初期の発表はXiao,X.(1996) “Characterization of Adeno-associated virus (AAV) DNA replication and integration”(博士論文、ピッツバーグ大学、ペンシルバニア州ピッツバーグ)に記載がある(この参照により全文を本開示に含むものとする)。
【表1】

【0029】
本明細書でいう「向性」の語は、特定の細胞または組織タイプへのウイルスの選択的侵入を意味するか、または特定の細胞または組織タイプへの侵入を促進する細胞表面への選択的相互作用を、好ましくはさらにそれに続くウイルスゲノムに運搬される配列の細胞内発現(例えば転写と、所望により翻訳)、例えば組換えウイルスについては、異種ヌクレオチド配列の発現を意味する。ウイルスゲノム由来の異種核酸配列の転写は、例えば誘導性プロモーターのトランス活性化因子、あるいはそれ以外の調節核酸配列が存在しない場合には開始されないことが当業者には理解されよう。rAAVゲノムの場合、ウイルスゲノムからの遺伝子発現は、安定的に組み込まれたプロウイルスから発現してもよいし、組み込まれていないエピソームから発現してもよいし、その他にウイルス核酸が細胞内で取りうるどのような形態から発現してもよい。
【0030】
本明細書でいうAAVまたはキメラウイルス粒子による細胞の「形質導入」とは、AAVまたはキメラウイルス粒子内への核酸の取り込みとそれに続く細胞内への核酸の転移による、遺伝物質の細胞への導入を意味する。
【0031】
本明細書でいう「レシピエント」ウイルスまたはウイルスキャプシドとは、キメラを産生するために改変が導入される親ウイルスまたはウイルスキャプシドである。本明細書でいう「ドナー」ウイルスまたはウイルスキャプシドとは、キメラを産生するためにレシピエント内に導入される改変が取り出される親ウイルスまたはウイルスキャプシドである。
【0032】
特に述べない限りは、本発明のキメラウイルスベクターおよびキャプシドによる「増強した形質導入」または「増強した向性」または同様の表現は、キメラを産生するために改変が導入されるレシピエントとしての親ウイルスと比較して、形質導入または向性が増加したことを意味し、および/またはキメラウイルスベクターまたはキャプシドが「増強した形質導入」または「増強した向性」または同様の表現を呈した場合、ドナー親ウイルスと比較して、すなわち、キメラを産生するためにレシピエント内に導入される改変が取り出されるドナーとしての親ウイルスと比較して、形質導入または向性が増加したことを意味する。特定の実施形態において、キメラウイルスまたはキャプシドは、筋細胞(骨格筋、横隔膜筋および/または心筋など)、肝臓、眼細胞(網膜、網膜色素上皮および/または角膜など)、脳細胞(グリア細胞、星状細胞、神経細胞および/または乏突起膠細胞(oligodendricytes)など)、肺、上皮細胞(腸および/または気道上皮細胞など)、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞など)、骨細胞(骨髄幹細胞など)、造血幹細胞、脾臓細胞、角化細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、前駆細胞、または生殖細胞に対して増強した向性または形質導入を呈する。
【0033】
同様に、特に述べない限りは、本発明のキメラウイルスベクターおよびキャプシドによる「低い形質導入」または「低い向性」または同様の表現は、キメラを産生するために改変が導入されるレシピエントとしての親ウイルスと比較して、形質導入または向性が減少したことを意味し、および/またはキメラウイルスベクターまたはキャプシドが「低い形質導入」または「低い向性」または同様の表現を呈した場合、ドナー親ウイルスと比較して、すなわち、キメラを産生するためにレシピエント内に導入される改変が取り出されるドナーとしての親ウイルスと比較して、形質導入または向性が減少したことを意味する。特定の実施形態において、キメラウイルスまたはキャプシドは、筋細胞(骨格筋、横隔膜筋および/または心筋など)、肝臓、眼細胞(網膜、網膜色素上皮および/または角膜など)、脳細胞(グリア細胞、星状細胞、神経細胞および/または乏突起膠細胞など)、肺、上皮細胞(腸および/または気道上皮細胞など)、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞など)、骨細胞(骨髄幹細胞など)、造血幹細胞、脾臓細胞、角化細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、前駆細胞、または生殖細胞について低い向性または形質導入を呈する。
【0034】
本明細書でいう「ポリペプチド」の語は、特に示さない限りは、ペプチドとタンパク質の両方を含む。
【0035】
「ポリヌクレオチド」はヌクレオチド塩基の配列であり、RNA、DNAまたはDNA−RNAハイブリッド配列(天然由来のおよび非天然のヌクレオチドの両方を含む)であってもよいが、好ましくは一本鎖または二本鎖DNA配列のいずれかである。
【0036】
本明細書でいう「単離」ポリヌクレオチド(例えば「単離DNA」または「単離RNA」)とは、分離させたポリヌクレオチドを意味するか、あるいは天然由来の生物またはウイルスのその他の構成要素の少なくとも幾つかを(例えば細胞またはウイルスの構造部品あるいはポリヌクレオチドに関連して見つかる他のポリペプチドまたは核酸などを)実質的に含まないポリヌクレオチドを意味する。
【0037】
同様に、「単離」ポリペプチドとは、分離させたポリペプチドを意味するか、あるいは天然由来の生物またはウイルスのその他の構成要素の少なくとも幾つかを(例えば細胞またはウイルスの構造部品あるいはポリペプチドに関連して見つかる他のポリペプチドまたは核酸などを)実質的に含まないポリペプチドを意味する。
【0038】
「治療用ポリペプチド」は、タンパク質の非存在あるいはタンパク質の欠陥に由来する、細胞または対象体の症状を、軽減または低減巣来ることのできるポリペプチドである。あるいは「治療用ポリペプチド」は、例えば制癌効果や移植生着性の向上といった、対象体に利点を与えるポリペプチドである。
【0039】
「治療(treat)」「治療する(treating)」または「治療(treatment)」の語(あるいはそれらと文法的に同等の表現)は、対象体の疾患の重症度を低減するか、少なくとも部分的に改善または回復すること、および/または少なくとも1種の臨床症状についてある程度の軽減、緩和または低減を達成すること、および/または疾患の進行を遅延させること、および/または疾病または疾患の予防または発病を遅延させることを意味する。従って「治療(treat)」「治療する(treating)」または「治療(treatment)」の語(あるいはそれらと文法的に同等の表現)は、予防的療法と治療的療法との双方を指す。
【0040】
「異種ヌクレオチド配列」または「異種核酸」は、通常、ウイルス内で自然発生しない配列である。一般に異種核酸またはヌクレオチド配列は、ポリペプチドまたは非翻訳RNAをコードする読み枠を含む。
【0041】
本明細書でいう「ベクター」または「送達ベクター」の用語は、核酸送達媒体として機能し、かつパルボウイルス(例えばAAV)キャプシド内にパッケージングされたウイルスDNA(すなわちベクターゲノム)を含む、パルボウイルス(例えばAAV)粒子を意味する。あるいは文脈によっては、「ベクター」の用語は、キャプシドの存在しないベクターゲノム/vDNAを参照するのに用いられることもある。
【0042】
ここでいう「組換えパルボウイルスベクターゲノム」は、少なくとも1個の末端重複(例えば2個の末端重複)と1個以上の異種ヌクレオチド配列とを含むパルボウイルスゲノム(すなわちvDNA)である。「組換えパルボウイルス粒子」は、パルボウイルスキャプシド内にパッケージングされた組換えパルボウイルスベクターゲノムを含む。
【0043】
「rAAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」は、少なくとも1個の末端重複(例えば2個の末端重複)と1個以上の異種ヌクレオチド配列とを含むAAVゲノム(すなわちvDNA)である。rAAVベクターは一般に、ウイルスの産生に、シス型の145塩基の末端重複(TR)のみを必要とする。全ての他のウイルス配列は必須ではなく、トランス型で提供してもよい(Muzyczka (1992) Curr.Topics Microbiol.Immunol.158: 97)。通常、rAAVベクターゲノムは、ベクターによって効率的にパッケージングできる導入遺伝子のサイズを最大化するように、最小限のTR配列のみを保持する。構造タンパク質または非構造タンパク質をコードする配列は、(例えばプラスミドなどのベクターから、あるいは配列をパッケージング細胞内に安定的に組み込むことによって)トランス型で提供してもよい。rAAVベクターゲノムは、一般に異種ヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に位置する、2個のAAV TRを所望により含んでいてもよいが、異種ヌクレオチド配列に連続している必要はない。TRは同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0044】
「rAAV粒子」はAAVキャプシド内にパッケージングされたrAAVベクターゲノムを含む。
【0045】
「パルボウイルス末端重複」は、自律的パルボウイルスおよびAAV(全て上で定義済み)を含む、どのようなパルボウイルス由来のものであっても良い。「AAV末端重複」は、例えば血清1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11型といった、どのようなAAV由来のものであってもよい。「末端重複」の語は、例えばSamulski他の米国特許第5,478,745号(この参照により全文を本開示に含むものとする)に記載の「二重D配列」などの、AAV逆位末端重複として機能する合成配列を含む。AAV末端重複が、例えば複製、ウイルスパッケージング、組み込み、および/またはプロウイルス再生(rescue)などの所望の機能をもたらす限りは、AAV末端重複が野生型の末端重複配列を有している必要はない(例えば野生型配列を挿入、欠失、切断またはミスセンス突然変異によって改変してもよい)。
【0046】
自律的パルボウイルスとAAVのキャプシド構造の詳細は、BERNARD N.FIELDS他、VIROLOGY、第2巻、第69および70章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)に記載がある。
【0047】
本発明のキメラウイルスベクターはさらに、(例えば特異的向性を有する)「標的」ウイルスベクターおよび/または「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわち、rAAVゲノムとウイルスキャプシドとが異なるパルボウイルスに由来する)であってもよい(国際特許公開公報WO00/28004およびChao他 (2000) Molecular Therapy 2: 619参照)。特定の実施形態において、rAAVゲノムとウイルスキャプシドとは異なるAAVに由来する。
【0048】
特定の実施形態において、ウイルスキャプシドの全てのサブユニットは、同じAAVキャプシドタンパク質骨格に由来する。他の実施形態において、ウイルスキャプシドは、異なるAAV骨格に由来する複数のキャプシドタンパク質を含む。
【0049】
本発明のキメラウイルスは更に、国際特許公開公報WO01/92551に記載する二重(duplexed)パルボウイルス粒子であってもよい。
【0050】
本明細書でいう「キメラパルボウイルス」および「キメラAAV」の語は、ハイブリッド、標的および二重のウイルス粒子、並びにパルボウイルスおよびAAVの他の改変体を含む。
【0051】
キメラウイルスベクター
AAVキャプシド内の選択領域によって、他のAAVに所望の特性を与えることができる。特性の例としては、増強した形質導入能(例えば骨格筋細胞への増強した形質導入)、組換えゲノムにより導入した遺伝子の高い発現、および/または導入遺伝子発現の早期開始が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら選択領域を他のAAVキャプシドに導入または「工学する」ことによって、得られるキメラ粒子に目的とする特性を与えることができる。例えばAAV2の場合、AAV1由来の単一アミノ酸を挿入することで、AAV2が、AAV2の精製の容易性(すなわち、ヘパリンへの結合能)と既知の安全性を保持しつつ、AAV1の増強した形質導入能を獲得できることを本発明者らは発見した。さらに特定の実施形態において、得られるキメラウイルスは親ウイルスとは異なる免疫学的プロファイルを有しており(例えば親ウイルスに対する中和抗血清によって微弱にしか認識されない、あるいは全く認識されない)、これによって親ウイルスに対する抗体を獲得した対象体への反復投与が可能になる。例えば本明細書に記載するキメラ2.5ベクターは、AAV2に対する中和抗血清によって微弱にしか認識されない。
【0052】
本研究において発明者らは、高レベルの骨格筋形質導入性を備える2種の血清型(AAV1およびAAV7)の直鎖状アミノ酸配列を、骨格筋への形質導入が低い2種(AAV2およびAAV8)の配列と比較した。これら4種の血清型の配列類似度は全体として高かったが、異なる領域が幾つか存在し、これら4種の血清型の送達ベクターとしての特徴は異なっていた。この配列分析の結果を用いて、AAV1および/またはAAV7内に存在する多くの候補アミノ酸をrAAV2内への取り込みについて同定し、AAV1および/またはAAV7の増強した骨格筋形質導入がAAV2に与えられるか否かを調べた。まず、例えばウイルスの生態に影響を与えると思われる領域内にあるアミノ酸位置を同定するなど、AAV2の既知の結晶構造の分析に基づいて、アミノ酸位置の候補群から相当数を絞り込んだ。絞り込んだアミノ酸群から単独でまたは組み合わせてAAV2内に置換導入または挿入したところ、得られた突然変異体のうちAAV1の増強した骨格筋形質導入を示すものもあった。これに相当する改変は、本開示に基づいて、他のAAV内に容易に導入することができる。「相当する」改変は、挿入および/または置換および/または欠失であってもよい。例えば、AAV2では挿入である改変が、別のAAVでは置換変異であってもよい。さらに他のAAVにおいて、欠失変異体は、キャプシドサブユニット内の所望の位置へアミノ酸を入れるものであってもよい。他のAAVにおける「相当する」改変は当業者に自明のものであろう。
【0053】
本発明によると、「選択的」アミノ酸変化がウイルスキャプシドに導入される。この方法は、AAV血清型間でのサブユニット全体または大きなドメインの交換を行う先行研究(例えば国際特許公開公報WO00/28004およびHauck他 (2003) J.Virology 77: 2768-2774)とは対照をなすものである。「選択的」アミノ酸変化の結果、約20、18、15、12、10、9、8、7、6、5、4または3個未満の連続したアミノ酸が、挿入されるおよび/または置換されるおよび/または欠失する。特定の実施形態において、2個の連続アミノ酸のみ、または点突然変異(すなわち1個のアミノ酸)を、キャプシドサブユニットに挿入および/または置換する、および/またはキャプシドサブユニットから欠失させる。
【0054】
1個以上の選択的アミノ酸変化をキャプシドサブユニット内の異なる位置に導入することができる。例えば特定の実施形態において、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のアミノ酸変化をAAVキャプシドサブユニットに導入することができる。
【0055】
「キメラウイルスベクター」または「キメラキャプシド」の語は、天然の状態で(例えばレシピエントウイルスにおいておよび/または野生型ウイルスにおいて)特定の位置に指定のアミノ酸を有するウイルスベクターまたはキャプシドを含まないということは理解されよう。
【0056】
本発明では、現在公知のまたはその後発見された全てのAAVのキャプシドを改変することで本発明のキメラウイルスを産生することを企図している。更に、改変されるレシピエント親AAVは、特徴が解明されているAAV、例えばAAV2、AAV3aまたは3b、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11(表1参照)のいずれであってもよい。あるいはレシピエント親ウイルスは、天然由来ウイルスと比較して既に改変/変更を含んでいるものであってもよい(すなわち、例えばAAV2、AAV3a、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10および/またはAAV11または現在公知のまたはその後発見された他の全てのAAVなどの、野生型AAVに由来するものであってもよい)。これらウイルスも本発明の範囲に含まれる。例えばレシピエントウイルスは、AAV8に由来し、かつ(例えばAAV2キャプシド由来の)ヘパラン硫酸結合領域を組み込んだAAVであってもよいし、精製を促進するためにポリHis配列を含むように改変したAAVであってもよい。他の例として、AAVは全ての公知の血清型またはクレードに由来し、かつペプチドターゲティング配列を組み込んだものであってもよい。さらに別の可能性として、AAVキャプシドは、異なる血清型に由来する複数のキャプシドサブユニットを含んでいてもよい。従って特定の実施形態において、レシピエントウイルスは、あるAAV血清型またはクレードに由来するキャプシドであって、その血清型またはクレードに由来しない(例えば野生型ウイルスにとって外因性の)配列を含むように改変したキャプシドを含む。さらに、レシピエントに導入する改変の由来するドナー親AAVは、特徴が解明されているAAVのいずれか、例えばAAV2、AAV3aまたは3b、AAV4、AAV5、AAV8、AAV9、AAV10またはAAV11であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
代表的な実施形態において本発明は、(a)1個以上のAAV2キャプシドサブユニットの、アミノ酸位置260、261、262、263、264、265、266、267および/または268のいずれかに続く位置(例えばアミノ酸位置264に続く位置)(VP1を基準とする番号付け)への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来の1種以上のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化を含むキメラAAVキャプシド;および(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクターを提供する。特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、レシピエント親rAAVベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入または向性、改変した免疫学的プロファイル、増強した導入遺伝子発現、および/または導入遺伝子発現の早期開始を呈する。「アミノ酸位置Xに続く(位置)」とは、指定したアミノ酸位置の直後への挿入を企図する(例えば「アミノ酸位置264に続く位置」とは、アミノ酸位置265における1アミノ酸またはそれより大きなアミノ酸(例えばアミノ酸位置265〜268など)の挿入を企図する)か、あるいは指定したアミノ酸位置の2または3アミノ酸内への挿入を企図する。
【0058】
(0022)
本発明の説明および付属の請求項において、アミノ酸位置の全ての番号表記は、VP1の番号付けを基準とする。本明細書に記載する改変を、VP1、VP2およびVP3キャプシドサブユニット全てに適用可能であることは当業者には理解されよう。特定の実施形態において、本発明の改変はAAVキャプシドの1、2または3種のサブユニット内に適用される。
【0059】
対応するアミノ酸位置が部分的にまたは完全な形でウイルス内に存在するか全く存在しないかに応じて、AAVにおける上記改変に相当する改変が、挿入であったり置換であったりすることが当業者には理解されよう。同様に、AAV2以外のAAVを改変する場合、特異的アミノ酸位置はAAV2におけるアミノ酸位置と異なりうる。対応するアミノ酸位置は、公知の配列アラインメント法を用いることによって当業者には容易に明らかとなるであろう(例えば図7参照)。
【0060】
特定の実施形態において、AAV1、AAV6および/またはAAV7キャプシドサブユニット、または改変の由来する他の全てのAAVの、目的とするアミノ酸位置に相当する位置で、本明細書に記載の改変をキャプシドサブユニットに導入することができる。ある場合には、結晶構造分析を基に、1、2、3、4、5、あるいはそれ以上のアミノ酸位置だけ挿入/置換をいずれかの方向に動かしても、所望の特性が与えられることは明らかであろう。多くの改変がループ構造内に作られるため、特定のアミノ酸位置よりもむしろビリオン表面の物理的な提示によって、改変による結果が引き起こされることが当業者には明らかであろう。
【0061】
本発明による置換および/または挿入されるアミノ酸は、どのような天然由来のアミノ酸であってもよく、その改変体または合成アミノ酸であってもよい。
【0062】
代表的な実施形態において、キャプシドサブユニット内で挿入および/または置換および/または欠失が起こると、その領域で親水性ループ構造を保持するアミノ酸および/またはループ構造の形態を変えるアミノ酸、荷電アミノ酸、あるいはリン酸化、硫酸化または翻訳後修飾によって荷電した(例えばグリコシル化した)アミノ酸の、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置260、261、262、263、264、265、266、267および/または268のいずれかに続く位置(例えばアミノ酸位置264に続く位置)における、挿入、置換および/または並び替えが起こるか、あるいは別のAAVのキャプシドサブユニットにおけるそれらに相当する変化が起こる。特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、レシピエント親rAAVベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、1種以上の細胞型に対して増強した形質導入を呈する。好適なアミノ酸の例として、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、トレオニン、セリン、チロシン、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギンまたはグルタミンが挙げられる。特定の実施形態において、トレオニンをキャプシドサブユニットに挿入するか、置換導入する。
【0063】
本発明のこの態様によれば、特定の実施形態において、キメラウイルスベクターはAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への、あるいは非AAV2、非AAV3aまたは非AAV3b配列を含むようにそれぞれ改変したAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシド(すなわち、AAV2、AAV3aまたはAAV3bに由来するキャプシド)における対応する位置へのアミノ酸挿入を含む、キメラAAVキャプシドを含んでいる。AAV2(あるいはAAV3aまたはAAV3b)キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に相当するアミノ酸は、AAV2(あるいはAAV3aまたはAAV3b)由来の出発ウイルス(本発明に従ってさらに改変可能である)内で容易に同定することができる。
【0064】
特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、AAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのアミノ酸挿入を含むキメラAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドを含んでいる。好適なアミノ酸挿入は上述の通りである。他のAAVにおける上記変異に相当する変異の例を表2(位置2)に示す。アミノ酸置換および挿入は上述の通りである。特定の実施形態において、トレオニンを挿入または置換導入する(AAV1、AAV6、およびこの位置にトレオニンを有する他のAAVを除く)。
【表2】

【0065】
本発明は更に、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置260、261、262、263、264、265、266、267および/または268のいずれかに続く位置(例えばアミノ酸位置264に続く位置)への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化;
(b)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置260〜266(例えばアミノ酸位置263)における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(c)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(d)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(e)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(f)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置447〜453(例えばアミノ酸位置450)における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および
(g)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置454〜460(例えばアミノ酸位置457)における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化、
からなる群より選ばれる1種以上の選択的アミノ酸挿入および/または置換を含むキメラAAVキャプシドを含むキメラウイルスベクターを提供する。
【0066】
これらの改変は単独で用いても組み合わせて用いてもよいし、本明細書に記載する他の改変と組み合わせて用いてもよい。
【0067】
特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、レシピエント親rAAVベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入、増強した導入遺伝子発現、導入遺伝子発現の早期開始および/または改変した免疫学的プロファイルを呈する。
【0068】
代表的な実施形態において、キメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含む。あるいは、キメラウイルスベクターは、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263における、または非AAV3b配列を含むように改変したAAV3bキャプシドの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV3bキャプシドを含んでいていもよい。
【0069】
上記改変に相当する改変は、他のAAVにおいて作製することもできる。例えば更に他の実施形態において、置換は、AAV1のアミノ酸位置263におけるもの、AAV3aまたはAAV3bのアミノ酸位置263におけるもの、または外因性配列を含むように改変した上述の血清型のいずれかに由来するAAVキャプシドの対応する位置におけるものであってもよい。上記変異に相当する変異の例を表2(位置1)に示すが、これらに限定されるものではない。好適なアミノ酸置換は下記に述べる。特定の実施形態において、アラニンをキャプシドサブユニット内の指定位置に置換導入する(AAV1、AAV6およびこの位置にアラニンを有する他のAAVを除く)。
【0070】
好適なアミノ酸置換の例としては、アラニン、グリシン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンなどの小さい非極性アミノ酸、あるいはさらにはプロリン、アスパラギン、セリンまたはトレオニンなどの、キャプシドサブユニットへの置換導入(例えばAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからのこれらアミノ酸への置換)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態において、アラニンをキャプシドサブユニットに置換導入する。
【0071】
本発明の別のキメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドサブユニットの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含む。
【0072】
上記変化に相当する変化を他のAAVに導入してもよい。例えば他の実施形態において、本発明は、AAV1キャプシドサブユニットのアミノ酸位置706におけるアミノ酸置換、AAV3aキャプシドサブユニットのアミノ酸位置706における置換、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置706における置換、AAV7キャプシドサブユニットのアミノ酸位置707における置換、AAV8キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708における置換、またはAAV9キャプシドサブユニットのアミノ酸位置706における置換;あるいは外因性配列を含むように改変した前記した全ての血清型由来のAAVキャプシドの対応する位置における、または他の全てのAAVの対応する位置における置換を有するキメラウイルスベクターを提供する。
【0073】
上記2パラグラフに記載した本発明の代表的な実施形態において、好適なアミノ酸置換の例としては、セリン、トレオニン、チロシン、プロリン、グルタミン、アラニン、グリシン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンへの置換(例えばAAV2キャプシドサブユニットのこの位置におけるアスパラギンからの置換)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態において、アラニンをキャプシドサブユニットに置換導入する。
【0074】
本発明による更なるキメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドサブユニットの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含む。
【0075】
上記改変に相当する改変を他のAAV内に作ってもよい。ある実施形態において、本発明は、AAV1キャプシドサブユニットのアミノ酸位置709におけるアミノ酸置換、AAV3aキャプシドサブユニットのアミノ酸位置709におけるアミノ酸置換、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置709におけるアミノ酸置換、AAV7キャプシドサブユニットのアミノ酸位置710におけるアミノ酸置換、AAV8キャプシドサブユニットのアミノ酸位置711におけるアミノ酸置換、またはAAV9キャプシドサブユニットのアミノ酸位置709におけるアミノ酸置換;あるいは、外因性配列を含むように改変した前記した全てのAAV由来のAAVキャプシドサブユニットの対応する位置における、または他の全てのAAVの対応する位置における置換を有するキメラウイルスベクターを提供する。
【0076】
上記2パラグラフに記載した本発明の代表的な実施形態において、置換の結果、キャプシドサブユニット内へセリン、トレオニン、チロシン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アラニン、グリシン、ロイシンまたはイソロイシンが(例えばAAV2キャプシドサブユニットのこの位置におけるバリンから)置換導入される。置換の一例として、アラニンのキャプシドサブユニット内への置換導入が挙げられる。
【0077】
本発明はまた、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むキメラウイルスベクターを提供する。
【0078】
上記改変に相当する改変を他のAAV内に作ってもよい。特定の実施形態において、本発明は、AAV1キャプシドサブユニットのアミノ酸位置717におけるアミノ酸置換、AAV3aキャプシドサブユニットのアミノ酸位置717におけるアミノ酸置換、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置717におけるアミノ酸置換、AAV7キャプシドサブユニットのアミノ酸位置718におけるアミノ酸置換、AAV8キャプシドサブユニットのアミノ酸位置719におけるアミノ酸置換、またはAAV9キャプシドサブユニットのアミノ酸位置717におけるアミノ酸置換;あるいは、外因性配列を含むように改変した前記全てのAAV由来のAAVキャプシドサブユニットの対応する位置における、または他の全てのAAVの対応する位置における置換を有するキメラウイルスベクターを提供する。
【0079】
上記2パラグラフに記載した実施形態の特定の態様において、前記置換は、リン酸化可能なアミノ酸(例えばトレオニン)からリン酸化不可能なアミノ酸への置換である。あるいは前記置換は、セリン、チロシン、グリシン、アラニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンまたはグルタミンのキャプシドサブユニット内への置換導入(例えばAAV2のこの位置におけるトレオニンの置換)であってもよい。ある特定のキメラウイルスは、キャプシドサブユニットのこの位置におけるアスパラギンの置換導入を含む。
【0080】
本発明による更なるキメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置447、448、449、450、451、452および/または453のいずれか(例えばアミノ酸位置450)における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドサブユニットの対応する位置における、または他の全てのAAVの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むキメラウイルスベクターである。特定の実施形態において、前記置換は、リン酸化可能なアミノ酸(例えばトレオニン)からリン酸化不可能なアミノ酸への置換である。あるいは前記置換は、セリン、チロシン、グリシン、アラニン、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギンまたはグルタミンのキャプシドサブユニット内への置換導入(例えばAAV2のアミノ酸位置450におけるトレオニンの置換)であってもよい。ある特定のキメラウイルスは、キャプシドサブユニットのこの位置におけるアスパラギンの置換導入を含む。
【0081】
また、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置454、455、456、457、458、459および/または460のいずれか(例えばアミノ酸位置457)における、または非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドサブユニットの対応する位置における、または他の全てのAAVの対応する位置における、アミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むキメラウイルスベクターを提供する。
【0082】
好適なアミノ酸置換の例としては、グリシン、アラニン、バリン、リジン、イソロイシン、プロリン、セリン、トレオニンまたはアスパラギンのキャプシドサブユニット内への置換導入が挙げられる。代表的な実施形態において、アスパラギンをキャプシドサブユニット内に置換導入する(例えばアスパラギンを、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457にあるグルタミンと置換する)。
【0083】
本発明のキメラウイルスベクターの例として、(a)下記を含むキメラAAVキャプシド(例えばAAV2キャプシド):(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化;および(ii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;ならびに(b)AAV TR配列および異種核酸配列を含む核酸;を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされていることを特徴とするものが挙げられるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態において、キメラウイルスは、レシピエント親rAAVベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入、増強した導入遺伝子発現、導入遺伝子の早期発現および/または改変した免疫学的プロファイルを呈する。例えばキメラウイルスベクターは、トレオニンをAAV2またはAAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へ挿入し、アラニンをAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263のグルタミンと置換した、キメラAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドを含むことができる。これらの変化は、非AAV2、非AAV3aまたは非AAV3b配列を含むようにそれぞれ改変したAAV2、AAV3aまたはAAV3bキャプシドの対応する位置において、または他の全てのAAVの対応する位置において、導入することができる。本明細書に記載する263,265変異体の配列をAAV2(図9)およびAAV3b(図10)をバックグラウンドとして示し、レシピエント親ウイルスの配列と比較した。
【0084】
本発明のキメラウイルスベクターの別の例は、(a)下記を含むキメラAAVキャプシド(例えばAAV2キャプシド):(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264における選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化;および(ii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;(iii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;(iv)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および(v)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;ならびに(b)AAV TR配列および異種核酸配列を含む核酸;を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされていることを特徴とする。特定の実施形態において、キメラウイルスは、レシピエントrAAVベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入、増強した導入遺伝子発現、導入遺伝子の早期発現および/または改変した免疫学的プロファイルを呈する。
【0085】
この実施形態によると、キメラウイルスベクターは、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのトレオニン挿入;
(b)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの置換;
(c)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705におけるアスパラギンからアラニンへの置換;
(d)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708におけるバリンからアラニンへの置換;および
(e)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716におけるトレオニンからアスパラギンへの置換;を含むキメラAAVキャプシド(例えばAAV2キャプシド)を含むことができる。またはこれらの変化は、非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドにおける対応する位置、または他のAAVにおける対応する位置に導入することができる。
【0086】
特定の実施形態において、前記キメラウイルスベクターは、本明細書に開示するキメラ2.5変異体であってもよい。AAV2と比較した2.5変異体の配列を図11に示す。
【0087】
本発明はさらに、
(a)下記を含むキメラAAVキャプシド(例えばAAV2キャプシド):
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450における選択的アミノ酸置換、または他のAAVのキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および
(ii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457における選択的アミノ酸置換、または他のAAVのキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;ならびに
(b)AAV TR配列および異種核酸配列を含む核酸;を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクターを提供する。
【0088】
特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、レシピエント親ウイルスベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入、増強した導入遺伝子発現、導入遺伝子の早期発現および/または改変した免疫学的プロファイルを呈する。
【0089】
特定の実施形態によると、キメラAAV2キャプシドは、
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450におけるトレオニンからアスパラギンへの置換;および
(ii)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457におけるグルタミンからアスパラギンへの置換;を含む。またはこれらの変化は、非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドサブユニットにおける対応する位置、または他の全てのAAVにおける対応する位置に導入することができる。
【0090】
本発明のキメラウイルスベクターの別の例は、
(a)下記を含むキメラAAVキャプシド(例えばAAV2キャプシド):
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入、または他のAAVのキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化;
(ii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450における選択的アミノ酸置換、または他のAAVのキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および
(iii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457における選択的アミノ酸置換、または他のAAVのキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;ならびに
(b)AAV TR配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含み、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされていることを特徴とする。
【0091】
特定の実施形態において、キメラウイルスベクターは、レシピエント親ウイルスベクターおよび/またはドナー親rAAVベクターと比較して、増強した形質導入、増強した導入遺伝子発現、導入遺伝子の早期発現および/または改変した免疫学的プロファイルを呈する。
【0092】
本発明の本実施形態の特定の実施形態によると、キメラウイルスベクターは、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのトレオニン挿入;
(b)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450におけるトレオニンからアスパラギンへの置換;および
(c)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457におけるグルタミンからアスパラギンへの置換;を含むキメラAAV2キャプシドを含む。またはこれらの変化は、非AAV2配列を含むように改変したAAV2キャプシドにおける対応する位置、または他の全てのAAVにおける対応する位置に導入することができる。
【0093】
本発明のキメラウイルスベクターは一般にrAAVベクターゲノム、すなわちポリペプチドまたは非翻訳RNAをコードする1種以上の異種核酸を含むAAVベクターゲノムを含む。異種核酸の詳細は下記に述べる。
【0094】
キメラキャプシド
本発明はさらに、本質的に上記した、すなわち、rAAVベクターゲノムの存在しない、キメラウイルスキャプシドを含む。
【0095】
キメラウイルスキャプシドは、米国特許第5,863,541号に記載するように、「キャプシド媒体」として用いることができる(この参照により全文を本開示に含むものとする)。キメラウイルスキャプシドによりパッケージングされ細胞内に導入することのできる分子の例としては、異種DNA、RNA、ポリペプチド、有機小分子またはこれらの組み合わせが挙げられる。異種分子は、AAV感染には生来みられないもの、すなわち、野生型AAVゲノムによってコードされないものと定義される。更に、宿主標的細胞へ分子を導入する目的で、治療上有用な分子をキメラウイルスキャプシドの外側に結合させることができる。このような結合分子の例としてはDNA、RNA、有機小分子、炭水化物、脂質および/またはポリペプチドが挙げられる。本発明の一実施形態において、治療上有用な分子をキャプシドタンパク質に共有結合(すなわち、共役結合または化学結合)させる。分子を共有結合する方法は、当業者に公知である。
【0096】
本発明のキメラウイルスキャプシドは、新規なキャプシド構造に対する抗体の産生に用いることもできる。さらにあるいは、細胞に抗原を提示するために(例えば対象体に投与して外因性アミノ酸配列に対する免疫応答を得るために)外因性アミノ酸配列をパルボウイルスキャプシドに挿入してもよい。
【0097】
ある実施形態によれば、キメラウイルスキャプシドを、本発明によるAAVベクターまたはキメラウイルスベクターと同時に(例えば数分以内または数時間以内に)対象体に投与することができる。さらに本発明は、本発明のキメラウイルスキャプシドおよび本発明のAAVベクターまたはキメラウイルスベクターを含む組成物および薬剤配合物を提供する。
【0098】
本発明はまた、本発明のキメラウイルスキャプシドおよびキャプシドサブユニットをコードする核酸(あるいは単離核酸)を提供する。本発明はさらに、上記核酸を含むベクター、ならびに本発明の核酸および/またはベクターを含む(生体内または培養内の)細胞を提供する。このような核酸、ベクターおよび細胞は、例えば本明細書に記載するキメラウイルスキャプシドまたはベクター作製の反応物(例えばヘルパーパッケージング作成物またはパッケージング細胞)として用いることができる。
【0099】
キメラウイルスベクターの作製方法
本発明はさらに、本発明のキメラウイルスベクターを作製する方法を提供する。
【0100】
特定の一実施形態において本発明は、(a)下記を含む鋳型rAAV:(i)1種以上の異種ヌクレオチド配列、および(ii)鋳型AAVをキメラウイルス粒子内にキャプシド封入するのに十分なパッケージングシグナル配列、ならびに(b)鋳型rAAVをキメラウイルス粒子内で複製するまたはキャプシド封入するのに十分なAAV配列(例えば他のAAV由来の1種以上の選択的挿入、欠失および/または置換を含むAAVrepおよびキメラcap配列);を細胞に提供するステップを含む組換えキメラウイルスベクターを作製する方法を提供する。鋳型rAAV、AAV複製物およびキャプシド配列は、鋳型rAAVをキメラキャプシド内にパッケージングした組換えキメラウイルス粒子が細胞内で産生される条件下で提供される。本方法はさらに、細胞からウイルス粒子を回収するステップを含む。ウイルス粒子は培地から回収してもよいし、細胞を溶解して回収してもよい。
【0101】
前記細胞は通常、AAVウイルスの複製を許容する細胞である。当技術分野で公知の細胞で好適なものであればどのような細胞を用いてもよいが、哺乳類細胞が好ましい。また、複製欠損ヘルパーウイルスから欠失した機能を賦与する、トランス補足(trans-complementing)パッケージング細胞系、例えば293細胞または他のE1aトランス補足細胞も好ましい。
【0102】
AAV複製物およびキャプシド配列は、当技術分野で公知のどのような方法を用いて提供してもよい。現在一般に用いられているプロトコルは、単一プラスミド上のAAVrep/cap遺伝子を発現するものである。AAV複製物およびパッケージング配列は一緒に提供される必要は無いが、一緒に提供されると都合がよい。AAVrepおよび/またはcap配列は、どのようなウイルスまたは非ウイルスベクターによって提供してもよい。例えば、rep/cap配列は、ハイブリッドアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターによって提供することができる(例えば欠失アデノウイルスベクターのE1aまたはE3領域に挿入する)。またEBVベクターを用いてAAVcapおよびrep遺伝子を発現してもよい。EBVベクターはエピソーム性のものでありながら、その後の細胞分裂を通じて高いコピー数を維持する(すなわち「EBV由来核エピソーム」という呼称で染色体外要素として細胞内に安定的に組み込まれる(Margolski (1992) Curr.Top.Microbiol.Immun.158: 67参照))という理由から、この方法が有利である。
【0103】
あるいは更に、rep/cap配列を安定的に(エピソーム性または組み込みいずれかの形態で)細胞内に保持することができる。
【0104】
一般に、そして好ましくは、配列の再生(rescue)および/またはパッケージングを避けるために、AAVrep/cap配列はAAVパッケージング配列(例えばAAV ITR)によって挟まれていない。
【0105】
鋳型rAAVは、当技術分野で公知のどのような方法を用いて細胞に提供してもよい。例えば鋳型rAAVは非ウイルス(例えばプラスミド)ベクターによって提供してもよいし、またはウイルスベクターによって提供してもよい。特定の実施形態において、鋳型rAAVは、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスベクターによって提供される(例えば欠失アデノウイルスのE1aまたはE3領域に挿入する)。別の例としては、Palombo他 (1998) J.Virology 72: 5025に、AAV ITRによって挟まれるレポーター遺伝子を有するバキュロウイルスベクターの記載がある。rep/cap遺伝子について上記したように、EBVベクターを用いて鋳型rAAVを送達することもできる。
【0106】
別の代表的な実施形態において、鋳型rAAVはrAAVウイルスの複製によって提供される。さらに他の実施形態において、AAVプロウイルスは細胞の染色体に安定的に組み込まれる。
【0107】
最大のウイルス力価を得るために、一般には、増殖性AAV感染に必須であるヘルパーウイルス機能(例えばアデノウイルスまたはヘルペスウイルス)が細胞に賦与される。AAV複製に必要なヘルパーウイルス配列は当技術分野で公知である。一般に、これらの配列はヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスベクターによって提供される。あるいは、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス配列は、別の非ウイルスまたはウイルスベクター、例えば効率的なAAV産生に必要な全てのヘルパー遺伝子を有する非感染性アデノウイルスミニプラスミド(Ferrari他 (1997) Nature Med.3: 1295、および米国特許第6,040,183号および第6,093,570号参照)によって提供することができる。
【0108】
さらに、ヘルパーウイルス機能は、染色体に組み込まれたまたは安定的な染色体外要素として保持されたヘルパー遺伝子を有する、パッケージング細胞によって賦与することができる。これらのヘルパーウイルス配列はAAVビリオン内にパッケージングされないこと、例えばAAV ITRによって挟まれていないことが好ましい。
【0109】
AAV複製物、キャプシド配列およびヘルパーウイルス配列(例えばアデノウイルス配列)を単一のヘルパー作成物上に提供するのが有利であることが、当業者には明らかであろう。このヘルパー作成物は非ウイルス作成物であってもウイルス作成物であってもよいが、好ましくはAAVrep/cap遺伝子を含むハイブリッドアデノウイルスまたはハイブリッドヘルペスウイルスである。
【0110】
特定の好ましい一実施形態において、AAVrep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列を、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって提供する。このベクターは更に鋳型rAAVを含む。AAVrep/cap配列および/または鋳型rAAVは、アデノウイルスの欠失領域(例えばE1aまたはE3領域)に挿入することができる。
【0111】
更なる実施形態において、AAVrep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列を、単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって提供する。鋳型rAAVは鋳型プラスミドとして提供される。
【0112】
別の実施形態において、AAVrep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列を単一のアデノウイルスヘルパーベクターによって提供し、鋳型rAAVをプロウイルスとして細胞内に組み込む。あるいは鋳型rAAVは、染色体外要素として(例えばEBV由来核エピソームとして)細胞内に保持されているEBVベクターによって提供される。
【0113】
更なる実施形態において、AAVrep/cap配列およびアデノウイルスヘルパー配列を単一のアデノウイルスヘルパーによって提供する。鋳型rAAVは別の複製ウイルスベクターとして提供される。例えば鋳型rAAVを、rAAV粒子または第2の組換えアデノウイルス粒子によって提供してもよい。
【0114】
上記の方法によると、ハイブリッドアデノウイルスベクターは通常、アデノウイルス複製およびパッケージングに十分なアデノウイルス5’および3’シス配列(すなわち、アデノウイルス末端重複およびPAC配列)を含む。AAV rep/cap配列、そして存在する場合にはさらに鋳型rAAVが、アデノウイルスキャプシド内にパッケージングされるように、アデノウイルスバックボーンに組み込まれて5’および3’シス配列に挟まれる。上記したように、アデノウイルスヘルパー配列およびAAV rep/cap配列が、AAVビリオン内にパッケージングされないように、AAVパッケージング配列(例えばAAV ITR)によって挟まれていないことが好ましい。
【0115】
ヘルペスウイルスは、AAVパッケージング法においてヘルパーウイルスとして用いることができる。AAV Repタンパク質をコードするハイブリッドヘルペスウイルスを用いることで、測定可能なAAVベクター産生スキームをより容易に行うことができる。AAV−2repおよびcap遺伝子を発現するハイブリッド単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)ベクターについてはConway他 (1999) Gene Therapy 6: 986およびWO00/17377に記載がある(この参照により全文を本開示に含むものとする)。
【0116】
さらにあるいは、本発明のウイルスベクターは、rep/cap遺伝子および鋳型rAAVを送達するバキュロウイルスベクターを用いて昆虫細胞内で産生することができる(Urabe 他 (2002) Human Gene Therapy 13: 1935-43参照)。
【0117】
AAVを産生する他の方法には、安定的に形質転換したパッケージング細胞を用いるものがある(例えば米国特許第5,658,785号参照)。
【0118】
ヘルパーウイルスの混入していないAAVベクター系統は、当技術分野で公知のどのような方法を用いて得てもよい。例えば、AAVとヘルパーウイルスとを、サイズに基づいて容易に分離することができる。ヘパリン基質に対する親和性に基づいて、AAVをヘルパーウイルスから分離することもできる(Zolotukhin他 (1999) Gene Therapy 6: 973)。好ましくは、混入したヘルパーウイルスが複製の構成要素となることを完全に防ぐように、欠失した複製欠損ヘルパーウイルスを用いる。あるいはさらに、アデノウイルス初期遺伝子発現のみがAAVウイルスのパッケージングの媒介に必要なので、後期遺伝子発現を呈さないアデノウイルスヘルパーを用いてもよい。後期遺伝子発現を欠損するアデノウイルス変異体(例えばts100Kおよびts149アデノウイルス変異体)は当技術分野で公知である。
【0119】
本発明のパッケージング方法を用いて、高力価系統のキメラウイルス粒子を産生することができる。ウイルス系統は、好ましくは少なくとも約10の形質導入ユニット(tu)/ml、より好ましくは少なくとも約10tu/ml、より好ましくは少なくとも約10tu/ml、さらにより好ましくは少なくとも約10tu/ml、さらにより好ましくは少なくとも約10tu/ml、さらにより好ましくは少なくとも約1010tu/mlの力価を呈する。
【0120】
組換えパルボウイルスベクター
本発明のパルボウイルスベクターは、試験管内、生体外および生体内の細胞への核酸の送達に有用である。パルボウイルスベクターは特に、動物細胞、より好ましくは哺乳類細胞へ核酸を送達または導入するのに有利に用いることができる。
【0121】
(上で定義したように)どのような異種ヌクレオチド配列を用いて本発明のキメラウイルスベクターを送達してもよい。目的とする核酸の例としては、ポリペプチド、好ましくは(例えば医学または獣医学に用いる)治療効果のある、あるいは(例えばワクチンに用いる)免疫原性ポリペプチドをコードする核酸が挙げられる。
【0122】
治療用ポリペプチドの例としては、嚢胞性線維症膜調節タンパク質(CFTR)、ジストロフィン(ジストロフィンミニ遺伝子のタンパク質産生物など。例えばVincent他 (1993) Nature Genetics 5: 130;米国特許公開公報第2003017131号参照。この参照により全文を本開示に含むものとする)、ユートロフィン(Tinsley他 (1996) Nature 384: 349)、凝固因子(第VIII因子、第IX因子、第X因子など)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、LDL受容体、ネプリライシン、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β−グロビン、α−グロビン、スペクトリン、α−抗トリプシン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼA、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、RP65タンパク質、サイトカイン(α−インターフェロン、β−インターフェロン、インターフェロン−γ、インターロイキン1〜14、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、リンフォトキシンなど)、ペプチド成長因子、神経栄養因子およびホルモン(ソマトトロピン、インスリン、IGF−1およびIGF−2などのインスリン様成長因子、血小板由来成長因子、表皮成長因子、繊維芽細胞成長因子、神経成長因子、神経栄養因子3および4、脳由来神経栄養因子、グリア由来成長因子、形質転換成長因子αおよびβなど)、骨形態形成タンパク質(RANKLおよびVEGFなど)、リソソームタンパク質、抗アポトーシス遺伝子産物、グルタミン酸受容体、リンフォカイン、可溶性CD4、Fc受容体、T細胞受容体、アポE、アポC、タンパク質ホスファターゼ阻害剤1(I−1)、ホスホランバン、serca2a、リソソーム酸α−グルコシダーゼ、α−ガラクトシダーゼA、barkct、β2−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3キナーゼ)、カルサルチン(calsarcin)、サルコグリカン(a、β、γなど)、受容体(腫瘍壊死因子−α可溶性受容体など)、IRAPなどの抗炎症因子、モノクローナル抗体(単鎖モノクローナル抗体など。Mabの例としてハーセプチンMabなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の異種ヌクレオチド配列の例として、自殺遺伝子産物(例えばチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、およびTNF−αなどの腫瘍壊死因子)、癌治療に用いる薬剤に耐性を賦与するタンパク質、腫瘍抑制遺伝子産物(p53、Rb、Wt−1など)、TRAIL、FAS−リガンド、および治療を必要とする対象体において治療効果を有するその他のあらゆるポリペプチドをコードする配列が挙げられる。
【0123】
ポリペプチドをコードする異種ヌクレオチド配列としては、レポーターポリペプチド(例えば酵素)をコードする配列が挙げられる。レポーターポリペプチドは当技術分野で知られており、例えば緑色蛍光タンパク質、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0124】
あるいは異種核酸は、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば米国特許第5,877,022号に記載のもの)、スプライソソーム媒介トランス−スプライシングをもたらすRNA(Puttaraju他 (1999) Nature Biotech.17: 246;米国特許第6,013,487号;米国特許第6,083,702号)、遺伝子サイレンシングを媒介する低分子干渉RNA(siRNA)などの干渉RNA(RNAi)(Sharp他 (2000) Science 287: 2431)または「ガイド」RNA(Gorman他 (1998) Proc.Nat.Acad.Sci.USA95: 4929;Yuan他による米国特許第5,869,248号)などの他の非翻訳RNAなどをコードするものであってもよい。非翻訳RNAの例としては、多剤耐性(MDR)遺伝子産物に対するRNAi(例えば腫瘍の治療用および/または化学療法による損傷を防ぐことを目的とする心臓投与用)、ミオスタチンに対するRNAi(デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療用)、VEGFに対するRNAi(例えば腫瘍の治療用)が挙げられる。
【0125】
パルボウイルスベクターは、宿主染色体上の遺伝子座と相同性を有して組換えられる異種ヌクレオチド配列をさらに含んでいてもよい。この方法は宿主細胞における遺伝的欠陥の補正に用いることができる。
【0126】
本発明はまた、免疫原性ポリペプチドを発現するパルボウイルスベクター、例えばワクチン投与用のパルボウイルスベクターを提供する。核酸は、目的とする当技術分野で公知の免疫原であればどのようなものをコードしても良く、例えばヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス由来の免疫原、gagタンパク質、腫瘍抗原、癌抗原、細菌性抗原、ウイルス抗原などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
ワクチンとしてのパルボウイルスの使用は当技術分野で公知である(例えばMiyamura他 (1994) Proc.Nat.Acad.Sci USA 91: 8507;Young他による米国特許第5,916,563号、Mazzara他による第5,905,040号、米国特許第5,882,652号、Samulski他による米国特許第5,863,541号参照。この参照により全文を本開示に含むものとする)。抗原はパルボウイルスキャプシド内に提示してもよい。あるいは抗原は、組換えベクターゲノムに導入した異種核酸から発現するものであってもよい。
【0128】
免疫原性ポリペプチドまたは免疫原は、疾患から対象体を保護するのに好適なものであればどのようなポリペプチドであってもよく、疾患としては例えば微生物病、細菌性疾患、原虫症、寄生虫症、真菌病およびウイルス性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば免疫原は、オルソミクソウイルス免疫原(例えばインフルエンザウイルス血球凝集素(HA)表面タンパク質またはインフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子、またはウマインフルエンザウイルス免疫原などのインフルエンザウイルス免疫原)、またはレンチウイルス免疫原(例えば、HIVまたはSIVエンベロープGP160タンパク質、HIVまたはSIVマトリックス/キャプシドタンパク質、HIVまたはSIVのgag、polおよびenv遺伝子産物などの、ウマ伝染性貧血ウイルス免疫原、サル免疫不全ウイルス(SIV)免疫原、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)免疫原)であってもよい。免疫原は、アレナウイルス免疫原(例えばラッサ熱ウイルスヌクレオキャプシドタンパク質遺伝子およびラッサ熱エンベロープ糖タンパク質遺伝子などのラッサ熱ウイルス免疫原)、ポックスウイルス免疫原(例えばワクシニアL1またはL8などのワクシニア遺伝子)、フラビウイルス免疫原(例えば黄熱病ウイルス免疫原または日本脳炎ウイルス免疫原)、フィロウイルス免疫原(例えばNPおよびGP遺伝子などのエボラウイルス免疫原、またはマールブルク病ウイルス免疫原)、ブニアウイルス免疫現(例えばRVFV、CCHFおよびSFSウイルス)、またはコロナウイルス免疫原(例えばヒトコロナウイルスエンベロープ糖タンパク質遺伝子などの感染性ヒトコロナウイルス免疫原、またはブタ感染性胃腸炎ウイルス免疫原、またはトリ感染性気管支炎ウイルス免疫原)であってもよい。免疫原はさらにポリオ免疫原、疱疹免疫原(例えばCMV、EBV、HSV免疫原)、ムンプス免疫原、麻疹免疫原、風疹免疫原、ジフテリア毒素または他のジフテリア免疫原、百日咳抗原、肝炎(例えばA型肝炎、B型肝炎またはC型肝炎)免疫原、あるいは当技術分野で知られる他のどのようなワクチン免疫原であってもよい。
【0129】
あるいは、免疫原はどのような腫瘍または癌細胞抗原であってもよい。好ましくは腫瘍または癌抗原は、癌細胞表面に発現される。癌および腫瘍細胞抗原の例については、S.A.Rosenberg (1999) Immunity 10: 281)に記載がある。他の癌および腫瘍抗原の例としては、BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE−1/2、BAGE、RAGE、NY−ESO−1、CDK−4、β−カテニン、MUM−1、カスパーゼ−8、KIAA0205、HPVE、SART−1、PRAME、p15、MART−1(Coulie他 (1991) J.Exp.Med.180: 35)などの黒色腫瘍抗原(Kawakami他 (1994) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91: 3515;Kawakami他 (1994) J.Exp.Med.180: 347;Kawakami他 (1994) Cancer Res.54: 3124)、gp100(Wick他 (1988) J.Cutan.Pathol.4: 201)およびMAGE−1、MAGE−2およびMAGE−3などのMAGE抗原(Van der Bruggen他 (1991) Science 254: 1643);CEA、TRP−1、TRP−2、P−15およびチロシナーゼ(Brichard他 (1993) J.Exp.Med. 178:489);HER−2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG72、AFP、CA19−9、NSE、DU−PAN−2、CA50、SPan−1、CA72−4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c−erbB−2タンパク質、PSA、L−CanAg、エストロゲン受容体、乳脂肪グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine (1993) Ann.Revn.Biochem. 62: 623);ムチン抗原(国際特許公開公報WO90/05142);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;パピローマウイルス抗原;および以下の癌に関連する抗原:黒色腫、腺癌、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝癌、結腸癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌
、膀胱癌、腎癌、膵癌など(例えばRosenberg (1996) Ann.Rev.Med. 47: 481-91)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
あるいは異種ヌクレオチド配列は、試験管内、生体外または生体内の細胞において所望に応じて産生されるどのようなポリペプチドをコードするものであってもよい。例えばパルボウイルスベクターは、培養細胞やそこから単離された発現遺伝子産物に導入することができる。
【0131】
目的とする異種ヌクレオチド配列を、適当な制御配列に操作可能に結合可能であることが当業者には理解されよう。例えば、異種核酸を、転写/翻訳調節シグナル、複製開始点、ポリアデニル化信号、配列内リボソーム進入部位(IRES)、プロモーター、エンハンサーなどの発現調節領域に、操作可能に結合させてもよい。
【0132】
所望の発現レベル、所望の組織特異的発現に応じて、様々なプロモーター/エンハンサーエレメントを使用可能であることが当業者には理解されよう。プロモーター/エンハンサーは、所望の発現パターンに応じて、常時発現性のものであっても誘導性のものであってもよい。プロモーター/エンハンサーは固有のものであっても外来性のものであってもよく、天然配列であっても合成配列であってもよい。転写開始領域を持たない野生型宿主に転写開始領域を導入する場合に、外来性のものを用いる。
【0133】
治療を受ける標的細胞または対象体に固有のプロモーター/エンハンサーエレメントが最も好ましい。異種核酸配列に固有のプロモーター/エンハンサーエレメントも好ましい。プロモーター/エンハンサーエレメントは、目的とする標的細胞内で機能するように選択する。哺乳類のプロモーター/エンハンサーエレメントも好ましい。プロモーター/エンハンサーエレメントは常時発現性であっても誘導性のものであってもよい。
【0134】
誘導性発現調節領域は、異種核酸配列の発現制御が望まれる用途において好ましい。遺伝子送達の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントは好ましくは組織特異的プロモーター/エンハンサーエレメントであり、例えば筋肉特異的(心臓、骨格および/または平滑筋特異的など)、神経系組織特異的(脳特異的など)、眼特異的(網膜特異的および角膜特異的など)、肝臓特異的、骨髄特異的、膵臓特異的、脾臓特異的、および肺特異的なプロモーター/エンハンサーエレメントが挙げられる。他の誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントとしてはホルモン誘導性および金属誘導性エレメントが挙げられる。誘導性プロモーター/エンハンサーエレメントの例としては、Tet on/offエレメント、RU486誘導性プロモーター、エクジソン誘導性プロモーター、ラパマイシン誘導性プロモーター、およびメタロチオネインプロモーターが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
異種核酸配列が標的細胞内で転写され翻訳される実施形態において、挿入されたタンパク質コード配列の効率的な翻訳には一般に、特定の開始シグナルが必要である。ATG開始コドンとそれに隣接する配列とを含むこれらの外因性翻訳制御シグナルは、天然由来のものであっても合成したものであってもよい。
【0136】
遺伝子導入技術
本発明によるパルボウイルスベクターはまた、分裂細胞および非分裂細胞を含む幅広い種類の細胞へ異種ヌクレオチド配列を送達する手段を提供する。例えば試験管内でポリペプチドを産生するために、または生体外遺伝子治療を目的として、パルボウイルスベクターを用いて目的とするヌクレオチド配列を試験管内細胞へ送達することができる。更にこのベクターを用いると、例えば免疫原性または治療用ポリペプチドの発現を目的とした、ヌクレオチド配列を必要とする対象体へヌクレオチド配列を送達する方法に有用である。このように、ポリペプチドを対象体の生体内で産生してもよい。対象体にはポリペプチドが欠損しているという理由から、あるいは対象体におけるポリペプチドの産生が治療方法としてまたは他の方法として何らかの治療効果を与えるという理由から、また下記に詳述する理由から、対象体はポリペプチドを必要としている可能性がある。
【0137】
一般に、本発明のパルボウイルスベクターを用いて、遺伝子発現に関わる疾患に伴う症状を治療または緩和する生物学的効果を有する外因性核酸を送達することができる。あるいは本発明は、治療用ポリペプチドの送達が有益となる病状の治療に使用可能である。病状の例としては、嚢胞性線維症(嚢胞性線維症膜調節タンパク質)およびその他の肺疾患、血友病A(第VIII因子)、血友病B(第IX因子)、サラセミア(β−グロビン)、貧血症(エリスロポエチン)およびその他の血液疾患、アルツハイマー病(GDF;ネプリライシン)、多発性硬化症(β−インターフェロン)、パーキンソン病(グリア細胞由来神経栄養因子[GDNF])、ハンチントン病(反復配列を除去するRNAi)、筋萎縮性側索硬化症、てんかん(ガラニン、神経栄養因子)およびその他の神経疾患、癌(エンドスタチン、アンジオスタチン、TRAIL、FAS−リガンド、インターフェロンなどのサイトカイン;VEGFまたは多剤耐性遺伝子産物に対するRNAiなどのRNAi)、糖尿病(インスリン)、デュシェンヌ型(ジストロフィン、ミニジストロフィン、インスリン様成長因子I、サルコグリカン[例えばa、β、γ]、ミオスタチンに対するRNAi)およびベッカー型を含む筋ジストロフィー、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ)、ハーラー病(α−L−イズロニダーゼ)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(アデノシンデアミナーゼ)、糖原病(例えばファブリー病[α−ガラクトシダーゼ]およびポンペ病[リソソーム酸α−グルコシダーゼ])およびその他の代謝疾患、先天性肺気腫(α1−抗トリプシン)、レッシュ・ナイハン症候群(ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ)、ニーマン・ピック病(スフィンゴミエリナーゼ)、テイ・ザックス病(リソソームヘキソサミニダーゼA)、メープルシロップ尿症(分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ)、網膜変性疾患(および眼、網膜のその他の疾患;例えば黄斑変性用PDGF)、脳(パーキンソン病[GDNF]、星細胞腫[エンドスタチン、アンジオスタチンおよび/またはVEGFに対するRNAi]、膠芽腫[エンドスタチン、アンジオスタチンおよび/またはVEGFに対するRNAi]など)、肝臓、腎臓、うっ血性心不全または抹消動脈障害(PAD)を含む心臓などの実質臓器の疾患(例えばタンパク質ホスファターゼ阻害剤I(I−1)、ホスホランバン、serca2a、ホスホランバン遺伝子を調節する亜鉛フィンガータンパク質、Barkct、β2−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体キナーゼ(BARK)、ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3キナーゼ)、カルサルチンなどの送達)、関節炎(インスリン様成長因子)、関節障害(インスリン様成長因子)、内膜過形成(例えばeNOS、iNOSの送達)、心臓移植の生着性向上(スーパーオキシドジスムターゼ)、AIDS(可溶性CD4)、筋肉疲労(インスリン様成長因子I)、腎臓疾患(エリスロポエチン)、貧血症(エリスロポエチン)、関節炎(IRAPなどの抗炎症因子およびTNFα可溶性受容体)、肝炎(α−インターフェロン)、LDL受容体欠損症(LDL受容体)、高アンモニア血症(オルニチントランスカルバミラーゼ)、クラッベ病(ガラクトセレブロシダーゼ)、バッテン病、SCA1、SCA2およびSCA3などの脊髄小脳失調症、フェニルケトン尿症(フェニルアラニンヒドロキシラーゼ)、自己免疫疾患などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明は臓器移植の成功率を高めるため、および/または臓器移植または補助的療法の負の副作用を低減するために、臓器移植に続いて用いることができる(例えば免疫抑制剤または抑制性核酸を投与してサイトカイン産生を阻害する)。別の例として、切断(break)と外科切除に続いて行う同種骨移植(bone allograph)と同時に、骨形成タンパク質(RANKLおよび/またはVEGFなど)を癌患者に投与することができる。
【0138】
あるいは、その他のどのような治療用ポリペプチドをコードする遺伝子導入ベクターを投与してもよい。
【0139】
特定の実施形態において、本発明による263および/または265位置変異を含むAAV2由来および/またはAAV3b由来のベクターを用いて、本明細書に記載する目的とする核酸を腫瘍または骨格筋、心筋、星状細胞および/またはグリア細胞に送達することができる。例えば、パーキンソン病、星細胞腫、膠芽腫、筋ジストロフィー、心疾患(PADおよびうっ血性心不全など)などの上記細胞または組織に関連する疾患を治療することができる。
【0140】
遺伝子導入を用いることで、病状を理解しそれに対する治療を提供することが可能になると考えられる。多くの遺伝性疾患において、欠陥遺伝子は既知でありクローンされている。上記した病状は一般に、欠損状態(一般的には劣性として遺伝する、大抵は酵素に関するもの)と不均衡状態(調節タンパク質または構造タンパク質を必要としうる、一般的には優性として遺伝するもの)との2つのカテゴリに分けられる。欠損状態の疾患については、遺伝子導入を用いることで、代償療法として正常遺伝子を患部組織へ運んだり、アンチセンス変異による疾患の動物モデルを作成することができる。不均衡状態の疾患については、遺伝子導入を用いることで、モデル系において病状を作り出したり、さらにそれを用いて病状を中和することができる。従って本発明の方法により作製したパルボウイルスベクターによって、遺伝疾患の治療が可能となる。ここでいう病状の治療とは、疾患を引き起こすまたは悪化させる欠損または平衡失調を部分的に又は完全に治療することをいう。異変を起こしたり欠損を修正する、核配列の部位特異的組み換えを用いることも可能である。
【0141】
本発明によるパルボウイルスベクターを用いて、試験管内または生体内の細胞にアンチセンス核酸またはRNAiを提供することもできる。標的細胞においてアンチセンス核酸またはRNAiを発現すると、細胞による特定のタンパク質の発現が減少する。従って、アンチセンス核酸またはRNAiを投与して、特定のタンパク質発現の減少を必要とする対象体において、そのような発現を減少させることができる。アンチセンス核酸またはRNAiを試験管内細胞に投与して、細胞の生理機能を調節することができる。例えば細胞培養系または組織培養系を最適化することができる。
【0142】
さらに、本発明によるパルボウイルスベクターを診断およびスクリーニング法に用いることができる。これにより細胞培養系において、あるいは形質転換動物モデルにおいて、目的とする遺伝子が一時的にまたは安定的に発現される。本発明を実施することで、タンパク質産生用に、例えば実験用、工業用、商業用に、核酸を送達することができる。
【0143】
免疫原性ポリペプチドの送達
更なる態様として、本発明のパルボウイルスベクターを用いて、対象体において免疫応答を得ることができる。本実施形態によると、免疫原をコードするヌクレオチド配列を含むパルボウイルスベクターを対象体に投与して、免疫原に対する能動免疫応答を対象体に賦与することができる。免疫原は上述の通りである。好ましくは防御免疫応答を誘導する。
【0144】
あるいは、パルボウイルスベクターを生体外細胞に投与して変質させた細胞を対象体に投与することができる。異種ヌクレオチド配列を細胞内に導入し、細胞を対象体に投与する。その結果、好ましくは免疫原をコードする異種ヌクレオチド配列が発現されて免疫原に対する対象体の免疫応答が誘発される。特定の実施形態において、細胞は抗原提示細胞(例えば樹状細胞)である。
【0145】
「能動免疫応答」または「能動免疫」は下記によって特徴付けられる。「免疫原に遭遇した後に起こる宿主組織及び細胞の関与。リンパ細網組織における免疫担当細胞の分化と増殖を必要とし、抗体の合成、細胞媒介反応性の発達、またはその両方が誘導される」(Herbert B. Herscowitz, “Immunophysiology: Cell Function and Cellular Interactions in Antibody Formation”, IMMUNOLOGY: BASIC PROCESSES 117(Joseph A. Bellanti 編、1985)参照)。あるいはまた、能動免疫応答とは、感染または予防接種によって免疫原に宿主を接触させた後に誘導されるもの、とも定義されている。能動免疫は、「能動的に免疫を与えた宿主から免疫性の無い宿主へ、予め形成した物質(抗体、転移因子、胸腺移植片、インターロイキン−2)を移す」(同上)ことで獲得される、受動免疫と対照を成すものである。
【0146】
ここでいう「防御」免疫応答または「防御」免疫とは、疾患の発病を予防または発症率を下げるという点で、対象体に利点を与える免疫応答を意味する。あるいは、防御免疫応答または防御免疫は、疾患、特に癌または腫瘍の治療に有用である(例えば癌または腫瘍については退行を引き起こし、転移については予防し、転移性結節の成長については予防する)。防御的な効果は、治療の利点が不利益より重要である限りは、完全なものであっても部分的なものであってもよい。
【0147】
これまでに述べてきた、対象体において免疫応答を誘導する方法では、異種ヌクレオチド配列を有するパルボウイルスベクターを、本明細書に記載するように免疫原的に有効な量で投与することが好ましい。
【0148】
本発明のパルボウイルスベクターは、癌免疫療法を目的として投与することができる。この場合、癌細胞抗原(または免疫学的類似分子)あるいは癌細胞に対する免疫応答を生じる他のあらゆる免疫原を発現するパルボウイルスベクターを投与する。例えば癌患者を治療することを目的として、癌細胞抗原をコードする異種ヌクレオチド配列を含むパルボウイルスベクターを対象体に投与することで、癌細胞抗原に対する免疫応答を引き起こすことができる。パルボウイルスベクターは、対象体の生体内にまたは本明細書に記載のエキソビボ法によって、対象体に投与することができる。ここでいう「癌」の語は、腫瘍形成癌を含む。
【0149】
同様に、「癌組織」の語は腫瘍を含む。「癌細胞抗原」は腫瘍抗原を含む。
【0150】
「癌」の語は当技術分野で理解されている意味を持つものであり、例えば体の離れた部位へ広がる(すなわち転移する)可能性を持つ、制御されていない組織成長を意味する。癌の例としては、白血病、リンパ腫、結腸癌、腎癌、肝臓癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、黒色腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい方法の例としては、腫瘍形成癌の治療および予防方法が挙げられる。
【0151】
「腫瘍」の語も当技術分野で理解されている意味を持つものであり、例えば、多細胞生物内の未分化細胞の異常塊として理解されている。腫瘍は悪性であっても良性であってもよい。好ましくは、本明細書に開示する方法を用いて悪性腫瘍を予防および治療する。
【0152】
本発明による癌細胞抗原をここまでに記載した。「癌を治療する」または「癌の治療」の表現は、癌の重症度が低減したこと、あるいは癌が予防されたかまたは少なくとも部分的に除去されたことを意味する。これらの用語は好ましくは、癌の転移が予防されたか減少したこと、あるいは少なくとも部分的に除去されたことを意味する。これらの用語はさらに好ましくは、(例えば原発腫瘍の外科切除後に)転移性結節の成長が予防されたまたは減少したこと、あるいは少なくとも部分的に除去されたことを意味する。「癌の予防」または「癌を予防する」の語は、その方法が癌の発生率または発病を少なくとも部分的に除去したこと、あるいは低減したことを企図する。あるいは、対象体における癌の発病を緩慢にする、調節する、可能性または確立を低減する、あるいは遅延させるものである。
【0153】
特定の実施形態において、癌を持つ対象体から細胞を取り出し、本発明によるパルボウイルス粒子に接触させる。次いで改変細胞を対象体に投与し、これによって癌細胞抗原に対する免疫応答を誘発する。本方法の使用は、生体内で十分な免疫応答を得ることのできない(すなわち十分な量の促進抗体を産生することができない)免疫不全者に対して、特に利点がある。
【0154】
免疫応答は、免疫調節サイトカイン(例えばα−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、ω−インターフェロン、τ−インターフェロン、インターロイキン−1α、インターロイキン−1β、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターロイキン−8、インターロイキン−9、インターロイキン−10、インターロイキン−11、インターロイキン−12、インターロイキン−13、インターロイキン−14、インターロイキン−18、B細胞成長因子、CD40リガンド、腫瘍壊死因子−α、腫瘍壊死因子−β、単球走化性タンパク質−1、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子およびリンフォトキシン)によって増強できることはよく知られている。従って、免疫調節サイトカイン(好ましくはCTL誘導性サイトカイン)をパルボウイルスベクターと併せて対象体に投与してもよい。
【0155】
サイトカインは当技術分野で公知のどのような方法を用いて投与してもよい。外因性サイトカインを対象体に投与してもよいし、あるいは好適なベクターを用いて、サイトカインをコードするヌクレオチド配列を対象体に送達し、生体内でサイトカインを産生してもよい。
【0156】
対象体、薬剤配合物、および投与方法
本発明によるパルボウイルスベクターは、動物用および医療用の両方に用いることができる。好適な対象体の例としては鳥類および哺乳類の両方が挙げられる。ここでいう「鳥類」の語は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、オウム、インコを含むが、これらに限定されるものではない。ここでいう「哺乳類」の語は、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギなどを含むが、これらに限定されるものではない。ヒト対象体は、新生児、乳幼児、児童および成人を含む。特定の実施形態において、対象体は一種以上のAAV(例えばAAV1および/またはAAV2などのAAV血清型)に対する抗体を獲得している。他の実施形態においては、対象体は、別のAAV(例えば免疫学的に異なるAAV)ベクターの投与を受けている。あるいは、例えば対象体が本明細書に記載したものを含む疾病を患っているまたは疾患の危険があると考えられるという理由から、あるいは本明細書に記載したものを含む核酸の送達によって利益を得るという理由から、対象体が本発明の方法を「必要として」いることもある。
【0157】
特定の実施形態において、本発明は、薬剤として許容される担体、および所望により他の薬剤、医薬品、安定化剤、緩衝液、担体、アジュバント、希釈液などに含ませた、本発明のウイルス粒子またはウイルスキャプシドを含む薬剤組成物を提供する。注射用としては、担体は通常、液体である。他の投与法に用いるものとしては、担体は固体であっても液体であってもよい。吸入投与用としては、担体は呼吸に適したものであり、好ましくは固体粒子状または液体粒子状である。
【0158】
「薬剤として許容される」の表現は、その材料に毒性またはそれ以外の望ましくない特性がないということ、すなわち、その材料が望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく対象体に投与可能であることを意味する。
【0159】
本発明の一態様は、試験管内細胞へのヌクレオチド配列の導入方法を提供する。ウイルス粒子を、特定の標的細胞に適した標準的な形質導入法によって、適当な感染効率で細胞に導入することができる。投与するウイルスの力価は、標的細胞の型および数、およびウイルスベクターの種類に応じて異なっており、過度の実験を行うことなく当業者が決定できる。好ましくは、少なくとも約10感染単位、より好ましくは少なくとも約10感染単位を細胞に導入する。
【0160】
パルボウイルスベクターを導入する細胞はどのような種類であってもよく、例えば神経系細胞(抹消神経系、中枢神経系の細胞など、特に、神経細胞、乏突起膠細胞、グリア細胞、星状細胞などの脳細胞)、肺細胞、眼細胞(網膜細胞、網膜色素上皮、角膜細胞など)、上皮細胞(腸および気道上皮細胞など)、筋細胞、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞など)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(骨髄幹細胞など)、造血幹細胞、脾臓細胞、角化細胞、繊維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。あるいは細胞は、どのような前駆細胞であってもよい。更にあるいは、細胞は幹細胞(神経幹細胞、肝幹細胞など)であってもよい。さらにあるいは、癌細細胞であっても腫瘍細胞であってもよい。さらに細胞は、上述したようにどのような種(species)由来のものであってもよい。
【0161】
パルボウイルスベクターは、改変細胞を対象体に投与する目的で、試験管内の細胞に導入してもよい。特定の実施形態において、細胞を対象体から取り出し、パルボウイルスベクターを細胞内に導入し、そして細胞を対象体内に戻す。生体外治療をうける対象体から細胞を取り出し、次いで対象体内に戻す方法は当技術分野で公知である(例えば米国特許第5,399,346号参照。この参照により全文を本開示に含むものとする)。あるいは、組換えパルボウイルスベクターを別の対象体に由来する細胞内、培養細胞内、または他の全ての好適なソース内に導入し、必要とする対象体に細胞を投与する。
【0162】
生体外遺伝子治療に好適な細胞は上述した通りである。対象体への細胞の投与量は、対象体の年齢、疾患および種、細胞型、細胞によって発現される核酸、投与方法などに応じて異なる。通常、一回につき、少なくとも約10〜約10または約10〜約10個の細胞を薬剤として許容される担体中に含ませて投与する。特定の実施形態において、パルボウイルスベクターで形質導入した細胞を、治療効果のある量で、医薬品用担体と組み合わせて対象体に投与する。
【0163】
ここでいう「治療効果のある」量とは、対象体に何らかの改善または利点を与えるのに十分な量をいう。あるいは「治療効果のある」量とは、対象体において少なくとも1種の臨床症状についてある程度の軽減、緩和または低減を達成する量をいう。対象体に利点が与えられる限りは、治療効果が必ずしも完全であるまたは治癒するものである必要はないことは当業者には理解されよう。
【0164】
ある実施形態において、パルボウイルスベクターで形質導入した細胞を投与して、送達されたポリペプチド(例えば導入遺伝子として発現されるか、キャプシド内で発現される)に対する免疫原性応答を誘発することができる。通常、免疫原的に有効な量のポリペプチドを発現する量の細胞を、薬剤として許容される担体と組み合わせて投与する。「免疫原的に有効な量」とは、薬剤配合物を投与した対象体において能動免疫応答を引き起こすのに十分な量をいう。好ましい投与量は、防御免疫応答(上で定義済み)を引き起こすのに十分な量である。免疫原性ポリペプチドを投与する利点が不利益より重要である限りは、防御のレベルが完全または永久に続くものである必要はない。
【0165】
本発明の更なる態様は、本発明のパルボウイルス粒子またはキャプシドを対象体に投与する方法である。投与を必要とする対象体(ヒトまたは動物)への本発明のパルボウイルス粒子またはキャプシドの投与には、当技術分野でウイルスベクターを投与する方法として知られるどのような手段を用いてもよい。好ましくはパルボウイルスベクターは、薬剤として許容される担体中に含ませて、治療効果のある投与量で送達される。
【0166】
さらに、本発明のパルボウイルスベクターを(例えばワクチンとして)投与して、免疫原性応答を誘発することができる。通常、本発明のワクチンは、薬剤として許容される担体と組み合わせた、免疫原として有効な量のウイルスを含む。好ましい投与量は、防御免疫応答(上で定義済み)を引き起こすのに十分な量である。免疫原性ポリペプチドを投与する利点が不利益より重要である限りは、防御のレベルが完全または永久に続くものである必要はない。対象体および免疫原については上述した通りである。
【0167】
対象体に投与するパルボウイルス粒子の量は、投与方法、治療する疾病または疾患、対象体個々の疾患、ウイルスベクターの種類、送達される核酸によって異なり、一般的な方法で調べることができる。治療効果を得る投与量の例としては、少なくとも約10、10、10、10、10、1010、1011、1012、10、1014、1015以上の形質導入単位(transducing units)、好ましくは約10〜1013の形質導入単位、より好ましくは1012の形質導入単位のウイルス力価が挙げられる。
【0168】
特定の実施形態において、1回より多い投与(例えば2、3、4回以上の投与)を用いて、様々な間隔(例えば日ごと、週ごと、月ごと、年ごとなど)にわたって所望のレベルの遺伝子発現を達成することができる。
【0169】
投与方法の例としては、経口、直腸、経粘膜、局所、鼻腔内、吸入(例えばエアロゾルを介して)、口腔(例えば舌下)、経膣、髄腔内、眼内、経皮、子宮内(または卵内)、非経口(例えば静脈内、皮下、皮内、筋肉内[骨格筋、横隔膜筋および/または心筋への投与など]、皮内、胸膜内、脳内および関節内)、局所(例えば皮膚および気道表面などの粘膜表面の両方)、経皮投与、組織または臓器(例えば肝臓、骨格筋、心筋、横隔膜筋または脳)への直接注射が挙げられる。投与は腫瘍(例えば腫瘍またはリンパ節の内部または近傍)に対するものであってもよい。いずれの場合においても、最も好適な経路は、治療対象である疾患の性質および重症度、ならびに用いられる特定のベクターの性質によって異なる。
【0170】
特定の実施形態において、AAV2またはAAV3bバックボーンに263および/または265位置変異を含む本発明によるキメラベクターを、骨格筋、心筋および/または脳(例えば筋ジストロフィー、心疾患(例えばPADまたはうっ血性心不全)、パーキンソン病、星細胞腫、膠芽腫の治療を目的とする)に、あるいは腫瘍に投与する。
【0171】
注射剤は、溶液または懸濁液、注射前に溶液または懸濁液とするのに好適な固形状、あるいはエマルジョンのうちいずれかの、従来の形態で調製することができる。あるいはウイルスを、例えばデポー剤または徐放性調剤の形態で、全身ではなく局所に投与することもできる。さらにウイルス粒子は、骨移植代替物、縫合糸、ステントなどの手術移植可能なマトリックス上に、乾いた形態として送達できる(例えば米国特許公開公報2004−0013645−A1参照)。
【0172】
経口投与に好適な薬剤組成物は、それぞれ本発明の組成物を所定量含む、カプセル、カシェ剤、ロゼンジ、またはテーブルとして;粉末または顆粒として;水性または非水性液中の溶液あるいは懸濁液として;あるいは水中油型または油中水型乳剤として、個別の単位で提供することができる。経口送達は、本発明の組成物と、動物の腸管内で消化酵素による分解に耐えうる担体との複合体を作製して行うことができる。このような担体の例としては、当技術分野で知られるように、プラスチックカプセルまたはタブレットが挙げられる。このような調剤は、上記組成物と(上記した一種以上の補助成分を含みうる)好適な担体とを結合させる工程を含む、薬学における好適な方法によって調製される。一般に、本発明の実施形態による薬剤組成物は、組成物と液体のまたは微細化した固体の担体あるいは両方とを均一かつ密接に混合することで、また所望によりさらに、得られた混合物を成形することで、調製される。例えばタブレットは、組成物および所望により1種以上の補助成分を含む、粉末または顆粒を圧縮または成形することで調製される。圧縮タブレットは、好適な機械を用いて、所望により結合剤、潤滑剤、不活性希釈液、および/または界面活性剤/分散剤を混合した、例えば粉末または顆粒などの易流動形状の組成物を圧縮することで調製される。成形タブレットは、好適な機械を用いて、不活性液体結合剤で湿らせた粉末状化合物を成形することで作製される。
【0173】
口腔(舌下)投与に好適な薬剤組成物の例としては、一般にスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴムなどの風味を付けたベースに本発明の組成物を含ませてなるトローチ剤;および、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴムなどの不活性ベースに組成物を含ませてなる錠剤などが挙げられる。
【0174】
非経口投与に好適な本発明の薬剤組成物としては、本発明の組成物を用いた無菌の水性および非水性系射液が挙げられ、好ましくは予定されるレシピエントの血液と等張となるように調製する。これらの調製剤は、組成物と予定されるレシピエントの血液とを等張にする抗酸化剤、緩衝液、細菌発育防止剤および溶質を含んでいてもよい。水性および非水系の無菌の懸濁液、溶液およびエマルジョンは、沈殿防止剤および増粘剤を含んでいてもよい。非水溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体の例としては、水、アルコール性/水性の溶液、エマルジョンまたは食塩水、緩衝媒体などの懸濁液が挙げられる。非経口賦形剤の例としては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または不揮発性油が挙げられる。静脈内賦形剤の例としては、流体および栄養補充液、電解液補充液(リンゲルデキストロースをベースとするものなど)が挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスなどの、防腐剤および他の添加剤を含んでいてもよい。
【0175】
組成物は、1回用量容器または複数回用量容器、例えば密閉したアンプルおよびバイアルに入れて提供することができ、またフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができ、直前に無菌の液体担体、例えば、食塩水または注射用水を添加するだけで使用することができる。
【0176】
即席注射液および懸濁液は、上述した種類の無菌の粉末、顆粒およびタブレットから調製することができる。例えば、密封した容器に入れた1回用量分の本発明の注射可能で安定した無菌の組成物を提供することができる。組成物は凍結乾燥の状態で提供することができ、これに薬剤として許容される好適な担体を加えて、対象体への注射に好適な液体組成物を得ることができる。1回用量の形態は、約1μg〜約10グラムの本発明の組成物から得るこおとができる。組成物が実質的に水不溶性の場合、生理的に許容される乳化剤を、水性担体中で組成物を乳化させるのに十分な量で含ませることができる。このような有用な乳化として、ホスファチジルコリンが挙げられる。
【0177】
直腸投与に好適な薬剤組成物は、好ましくは1回用量の座薬として提供される。これらは、組成物と例えばカカオ脂などの1種以上の従来の固体担体とを混合し、得られた混合物を成形して調製することができる。
【0178】
皮膚の局所投与に好適な本発明の薬剤組成物としては、好ましくは軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、アエロゾルまたは油の形状とすることができる。使用可能な担体の例としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮エンハンサー、およびこれらのうち2種類以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ある実施形態において、例えば、本発明の薬剤組成物と皮膚を通過可能な親油性試薬(例えばDMSO)とを混合したものを用いて、局所送達することができる。
【0179】
経皮投与に好適な薬剤組成物は、対象体の表皮に長時間密接した状態を維持するのに適した、個別のパッチ形状とすることができる。経皮投与に好適な組成はイオン導入法(例えばPharmaceutical Research 3: 318 (1986)参照)によって送達することができ、通常は、本発明の組成物の(所望により緩衝した)水溶液の形態とすることができる。このような調剤はクエン酸塩またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含むことができ、0.1〜0.2Mの活性成分を含んでいてもよい。
【0180】
本明細書に記載したパルボウイルスベクターは、対象体の肺に、好適な手段であればどのようなものを用いても投与してもよいが、好ましくはパルボウイルスベクターからなる呼吸に適した粒子のエーロゾル懸濁液を対象体が吸入することで投与する。呼吸に適した粒子は液体であっても固体であってもよい。パルボウイルスベクターを含む液体粒子のエーロゾルは好適な手段であればどのような手段によって作製してもよく、例えば当業者に知られるように圧力駆動エーロゾルネブライザーまたは超音波ネブライザーを用いることができる(例えば米国特許第4,501,729号参照)。パルボウイルスベクターを含む固体粒子のエーロゾルも同様に、固体粒子薬物エーロゾル発生器を用いて、医薬品の分野で公知の方法で得ることができる。
【0181】
ここまで本発明を説明してきたが、下記の実施例においても本発明を更に詳細に説明する。実施例は単に本発明を例証することが目的であり、本発明を限定することを企図するものではない。
【実施例1】
【0182】
トリアージ法
材料および方法
プラスミドおよびDNA突然変異誘発
これらの実験の出発となるプラスミドはpxr1、pxr2、prx3(Rabinowitz他(2001) J.Virology 76: 781-801)である。全てのプラスミド突然変異誘発は、早替え複数部位突然変異誘発キット(Quik Change Multi Site Mutagenesis kit)または早替え部位定方向突然変異誘発キット(Quik Change Site Directed Mutagenesis kit)のいずれかを用いて行った(いずれもStratagene社)。ヌクレオチド変化の精度をDNA配列分析によって確認し、次いでDNAサブクローニングによって突然変異誘発法で生じた不要な人工産物を全て除去した。ある特定の場合には、新たに得た突然変異体を用いてサブクローニングを行い、別の突然変異体を得た。
【0183】
組換えウイルス産生
全ての組換えAAV(rAAV)ウイルスは、標準的な三重トランスフェクション法を用いて作製した(Haberman他 (1999) “Production of recombinant adeno-associated viral vectors and use in in vitro and in vivo administration”, p.4.17.1 - 4.17.25., J.Crawley他(編)Current protocols in neuroscience第1巻, John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク)。本研究においては、標準的な塩化セシウム勾配法またはヘパリンカラムクロマトグラフィー(同上)を用いてrAAVを精製した。ウイルス精製に用いる方法は、対応する図面に示した。様々なウイルス調製物の物理的力価は、ドットブロットハイブリダイゼーションを用いて評価した。同一実験で比較する調整物は、異なるドットブロット間でのバラつきを照査するために、同じドットブロット上で評価した。
【0184】
動物撮像
1×1010ウイルスゲノム含有粒子(vg)を生後6週間のオスBALB/cマウスの腓腹筋に注射した。計6本の肢に対して、各ウイルス型につき25μlのウイルスを注射した。Roper Scientific Imaging(Princeton Instruments社)を用いて、様々な注射後経過日数でマウスを撮像した。以下簡単に述べると、マウスに麻酔をかけ、IPとルシフェリン基質とを注射した。注射から10分後に、マウスをチャンバーに入れて発光を調べた。関心領域あたりの総画素数の平均値をCMIR_Imageソフトウェア(Center for Molecular Imaging Research、マサチューセッツ総合病院)によって調べ、時間に対してプロットした。
【0185】
ヘパリン結合実験
文献に記載の方法で、rAAVのヘパリンアガロースに対するバッチ結合を行った(Rabinowitz (2004) J.Virology 78: 4421-4432)。以下簡単に述べると、等価粒子のrAAVビリオンを1×PBS中の1型ヘパリンアガロース(H−6508、Sigma社、ミズーリ州セントルイス)に載せ、室温で1時間結合させ、低速で2分間遠心分離し、上澄液(貫流)を取り出した。5総容積分のPBS 1mM MgClで6回洗浄し、次いで0.5M NaCl(段階1)、1.0M NaCl(段階2)、または1.5M NaCl(段階3)を含む5総容積分のPBS 1mM MgClで3段階溶出した。洗浄液中と3段階溶出中のrAAV粒子数は、ドットブロットハイブリダイゼーションによって調べた。
【0186】
結果
トリアージ法の原理
異なる血清型のAAVは、異なる組織を形質導入する能力について異なることが文献から分かっている。文献に十分裏付けられている例としては、骨格筋を優先的に形質導入するAAV1の能力が挙げられる。AAV1とAAV2のアミノ酸配列は83%の同一性を有する。ある研究では、AAV2キャプシドの大きな領域をAAV1の対応するアミノ酸と入れ替え、得られたベクターについて、骨格筋を形質導入する能力の有無を調べている(Hauck他 (2003) J.Virology 77: 2768-2774)。その研究では、AAV1と同等のレベルまではいかないが、AAV2によって増強した骨格筋形質導入を与えると思われる2個のアミノ酸が同定されている。本研究では同じ現象についてより詳細に調べた。生物情報学分析および構造機能分析に基づいて、多数のAAV2キャプシドの配列関係の中で、増強したAAV1形質導入を説明するAAVキャプシドタンパク質に含まれる鍵となるアミノ酸残基を同定した。この方法を用いると、血清2型間でのアミノ酸変化の異なる組み合わせ全て、および置換順序を変えたものすべてを作製する必要がなくなる。さらにこの方法では、AAV2の結晶構造、アミノ酸配列アラインメント、および様々なAAV血清型の公知の特性を利用した。アラインメントは、異なる血清型に由来する、非常に似たキャプシドタンパク質のものを作製した。AAV1およびAAV7キャプシドタンパク質間で共通のアミノ酸、ならびにAAV2およびAAV8キャプシドタンパク質間で異なるアミノ酸を同定した。このトリアージ法によって36個のアミノ酸候補を同定した(図1A)。筋肉への増強した形質導入について調べるために、結晶構造モデルに基づいて12個の有力候補を選択した(図1B)。
【0187】
AAV変異体には、AAV2との差異を呈さないもの、AAV2より良好な能力を呈するものがあった。
【0188】
BALB/cマウスの腓腹筋に1×1010ゲノム含有ウイルス粒子を注射した後、幾つかの異なるAAV変異体の骨格筋形質導入能について評価した。あるウイルス変異体は、骨格筋形質導入能について全く差異を呈さなかった(図2aおよびb)。324、328アミノ酸位置は、キャプシド表面に来ると予想されるループ上に位置するが、これらのアミノ酸をAAV1の対応するアミノ酸に変化させても、このウイルスの骨格筋形質導入能を改善しなかった(図2Aおよび2B)。
【0189】
変異体の1種(2.5)はAAV2と比較して、かなり高い筋肉への形質導入を呈した(図3A)。この変異体は、2回対称軸に位置する5アミノ酸変化を有していた(図3B)。これらの5アミノ酸は同じサブユニットの異なる部分に位置するように見えるが(2個が片側、3個が別側)、2個のサブユニットが組み合わさると、互いに非常に近接した位置に来る(図3C)。
【0190】
5アミノ酸全てがこの増強した筋肉向性に必要であるか否かを調べるために、263,265変異体、そして709,712,720変異体を作製した。これらの変異体について、同様の撮像実験を行って調べた(図4)。709,712,720変異体はAAV2と似た筋肉への形質導入を呈し、263,265変異体は、5アミノ酸全ての変化を含む2.5変異体について観察された結果と似た、増強した筋肉への形質導入を呈した。263変異体および265変異体を別々に作成し、同様の実験を行った(図5)。これらの実験の結果、増強したAAV1形質導入の主な原因となるアミノ酸は、265アミノ酸位置にあることが判明した。これは実質的には、AAV2キャプシド配列におけるトレオニンの挿入である。
【0191】
AAV3bバックボーンのアミノ酸位置263および265へ、同じ挿入を行った(図10)。
【0192】
興味深いことに、263、265領域は異なる血清型間で様々に異なっていた(図7の四角で囲んだ領域)。AAV2と比較して、この領域には付加的なアミノ酸挿入が存在する。
【0193】
その他にAAV2より高い筋肉への形質導入を呈した変異体は、454,461変異体であった(図6)。265変化と454,461変化との様々な組み合わせを査定し、これらの変異体の組み合わせによってさらなる向上が認められるか否かを調べた。
【0194】
最後に様々な変異体について、ヘパリンによって精製される能力の有無を調べた(図8)。調べた変異体はいずれも、AAV2と同様のヘパリン結合プロファイルを呈した。
【実施例2】
【0195】
免疫学的プロファイル
他の非エンベロープウイルスと同様に、多量のAAVを投与したことで、繰り返し投与を妨げる中和抗体が産生された。新たに血清型を得たことで、反復投与が可能となる。AAV2に対する既存の免疫応答を避ける能力を調べるために、予め異なるAAV血清型(1、2および2.5)に接触させた動物由来の血清に接触させた後の、導入遺伝子の試験管内発現について、キメラ2.5ベクターを試験した。
【0196】
AAVビリオン殻に対して確実な免疫応答を呈する動物を得るために、4×1010粒子のAAV血清1、2および2.5型ベクターをそれぞれC57blk6マウスに筋肉内注射した。注射から4週間後に、血液を単離して血清を回収した。これらのマウスに由来する血清を用いて、293細胞とレポーター遺伝子としてGFPを発現するAAV特異的血清型ベクターとを使用する中和抗体解析を行った。この解析において、既知量の血清型特異的ベクター(1×10粒子)で血清を4℃にて2時間かけて希釈、混合した。この血清とベクターとの混合物を、感染効率5のアデノウイルスヘルパーウイルスを含む24ウェルプレートに容れた293細胞に添加した。これらの条件下において、緑色蛍光タンパク質(GFP)の発現は、中和抗体の存在下で細胞に感染する、血清型特異的ベクターの能力の目安となる。次いで、対照ベクター(血清型特異的血清と予混合せず)に比べてGFP発現が50%以下となる、最も高い希釈の中和抗体価を計算した。
【0197】
表3からわかるように、AAV1に予め接触したマウスは、AAV1のGFP形質導入を1:1000の希釈まで中和した。しかしこの血清1型特異的中和抗体は、AAVキメラ2.5を中和するためには、より多くのマウス血清を必要とした(1:100希釈)。より重要なことには、この観察結果は、AAV血清2型ビリオン殻に予め接触したマウスから得たマウス血清にもあてはまった。この解析では、対照AAV2と比較して50%のGFP形質導入が初めて観察されたのは、1:10000の希釈度以降の血清であった。しかしキメラ2.5については、50%GFP形質導入は、1:100希釈度のマウス血清にのみ観察された。このキメラベクターはAAV2とアミノ酸が0.6%のみ異なっているので、上記改変によって、先在するAAV2中和抗体のAAV2.5キャプシド殻認識能に、重大な影響が与えられている。2.5に予め接触した動物をAAV1、2、および2.5に対する中和活性について解析したしたところ、予想通りの結果が得られ(表3参照)、2.5ベクターは最も高い希釈(1:8000)を、次いでAAV2は1:1000、AAV血清1型は1:100を必要とした。キメラ2.5における5アミノ酸改変は数としては少ない(総アミノ酸の0.6%)が、AAV2に特異的な中和抗体と接触した場合、このビリオンについての免疫プロファイルに重大な影響を与えるのに十分であったということが、これらの研究から結論付けられる。
【0198】
これらの研究によると、2.5ベクターはAAV1、AAV2またはその両方に予め接触させた個人を形質導入するのに好適であり、利用可能なベクターに顕著な多用途性が賦与されると考えられる。例えば、このキメラベクターによって、AAV2に予め接触させた動物及び患者への再投与が可能になる。またこのキメラベクターは、AAV2アミノ酸キャプシド配列中の選択されたアミノ酸を変化させることで、免疫応答を著しく改変できることを実証している。これらの結果から、他のAAV血清型について同様のキャプシドコード領域において同様に改変すれば、新たな血清型キャプシドに毎回変化させる必要なく、反復投与用の多数の代替AAV変異体を容易に得ることのできる独特の免疫プロファイルが得られると考えられる。
【表3】

【実施例3】
【0199】
AAV3bバックボーン(SASTG)における263、265位置変異は増強した骨格筋形質導入を与える
AAV1由来のこれらのアミノ酸(263、265)を、AAV2に密接に関与する血清型であり、骨格筋を十分に形質導入しなかった血清型であるAAV3bキャプシドの対応する位置へ組み込んで、SASTGと呼ばれるベクターを作製した。マウスに等量のAAV1、AAV2、AAV3bまたはSASTGのゲノム含有粒子(1×1010)を注射し、インビボ生態動物撮像によって、経時的な(3、7、14および21日目)ルシフェラーゼ活性を評価した(図12)。
【0200】
予想した通り、AAV2とAAV3との両方が、AAV1ほど効率的には骨格筋を形質導入しなかった。AAV2およびAAV3bを注射したマウスでの発現は3日目には検出されなかった。一方、AAV1の発現と、重要なことにSASTGの発現は、3日目に検出された。注射後のどの時点においても、SASTGの発現パターンは、その親であるAAV3bよりむしろAAV1の発現に類似していた。
【実施例4】
【0201】
脳および肝臓の形質導入
6〜8週齢のオスC57bl/6マウスを用いて、肝臓におけるAAV2および2.5ベクターの形質導入効率を調べた。300μLの2.5%アバーティンでマウスに麻酔をかけ、ヒト第IX因子(hFIX)導入遺伝子ウイルスを保持する1×1011粒子のAAV2および2.5ベクターを250μLのPBSに溶解し、門脈から緩徐に注射した。ベクターとして国際特許公開公報WO01/92551に記載の二本鎖ウイルス粒子を用いた。1〜6週間後、各マウスの尾静脈からヘパリン被覆毛細ガラス管を用いて100μLの血液を採取した。血液試料を4℃、8000rpmで20分間遠心分離して血清を採取した。試験時まで血清を−80℃で保存した。血清中のhFIXの発現を、標準的なELISA法によって調べた。段階希釈のうち、hFIXレベルが5μg/mLの正常ヒト血清を標準とした。この解析を用いた結果、2.5ベクターが肝臓を形質導入する能力は、親であるAAV2ウイルスより低いことが分かった(図13)。この実験は、2.5ベクターが筋肉向性を獲得したこと加えて、AAV2の特徴である肝臓特異的向性を失ったことを示している。
【0202】
別の実験において、緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター導入遺伝子カセットを用いて、AAV2について記載した条件下で、二本鎖2.5ベクターをマウス脳の皮質領域に注射し(図14)、神経特異的形質導入を解析した。AAV1およびAAV2は神経細胞形質導入に特異的であることは既定の事実である。図14に示すように、2.5ベクターは神経細胞(左側の矢印)、非神経細胞(右側の矢印)を形質導入した。形態から判断するに、これらの細胞は星状細胞であると考えられる。
【0203】
生体内の組織特異的形質導入について2.5ベクターを試験するこれらの実験結果は、組織特異的向性(例えばAAV血清1型親に由来する、筋肉、骨格または心臓特異的向性)の獲得と、細胞型特異的形質導入(例えばレシピエントAAV2の肝臓−肝細胞特異的形質導入)の喪失に加え、これらのベクターがドナー親(AAV1)またはレシピエント親キャプシド(AAV2)のいずれにも存在しない、キメラ2.5ベクターに完全に独特な新規な向性(非神経/星状細胞に対する)を獲得したことを実証している。
【0204】
上記記載は本発明を例証するものであって、本発明を制限するものと解釈されてはならない。本発明は以下の請求項によって定義されるものであり、それら請求項と均等であるすべてを含む。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1A−1B】トリアージ法の原理。4種のAAV血清型(AAV1、AAV2、AAV7およびAAV8)について、ベクターNTIソフトウェアパッケージの整列プログラムを用いて、複数アミノ酸のアラインメントを行った。AAV1(配列番号1)およびAAV7(配列番号2)間で類似しておりAAV2(配列番号3)およびAAV8(配列番号4)とは異なるアミノ酸、あるいは4種の血清型間で異なるアミノ酸を含む位置を、有力候補として特定することとした。その結果、36個の有力候補をAAV2に組み込んだ。結晶構造上にモデル化できなかったアミノ酸を排除し、候補をキャプシド表面上に配置した分子モデルを作製した結果、図1Cに示すアミノ酸が識別された。
【図1C】ベクターNTIソフトウェアパッケージの整列プログラムを用いた、AAV1(配列番号1)とAAV2(配列番号3)とのアラインメント。トリアージ法で選別したアミノ酸は矢印で示した。丸で囲んだアミノ酸は、Hauck他 (2003) J.Virology 77: 2768-2774)で同定されているアミノ酸に対応する。
【図2A】324、328位置におけるAAV2アミノ酸の変化は筋肉への形質導入を増強しなかった。AAV2のアミノ酸位置324、328をAAV1のものに変えた。1×1010ウイルスゲノム含有粒子を、オスBalb/cマウスの腓腹筋に注射した。注射後7、14、28および42日にマウスを撮像した。本実験で用いたウイルスを、塩化セシウム勾配により精製した。
【図2B】AAV2ウイルス324,328変異体の、筋肉での発光量計測。CMIR_imageソフトウェアを用いて、図2Aに示した実験での発光量を計算した。各肢の関心領域(ROI)を定義して、総放出光子の計算に用いた。データは6肢全ての平均を表す。
【図3A】AAV2のアミノ酸を変化させて2.5変異体を作製したところ、この変異体の筋肉向性が顕著に増強した。オスBalb/cマウスの腓腹筋に1×1010ウイルスゲノム含有粒子を注射した。注射後7、14、28、42および95日にマウスを撮像した。本実験で用いたウイルスを、ヘパリンHPLCにより精製した。CMIR_imageソフトウェアを用いて、マウスでの発光量を計算した。各肢の関心領域(ROI)を定義して、総放出光子の計算に用いた。データは6肢全ての平均を表す。
【図3B】AAV2キャプシド単量体のアミノ酸位置。AAV2キャプシド単量体の3Dリボン構造を示す。2.5変異体における変化位置を矢印で示した。上部の矢印は263、265領域を示しており、下部の3個の矢印は709、712、720アミノ酸を示している。
【図3C】AAV2五量体における2.5アミノ酸の位置。2.5変異体アミノ酸の位置を丸で囲んで示した。1個のサブユニットの中で、アミノ酸のうち2個が同じ部分に位置し、さらに同じサブユニットの中で他の3個のアミノ酸が同じ部分に位置する。2個のサブユニットが組み合わさってAAVキャプシドを形成すると、これら5個のアミノ酸は2回対称軸において互いに非常に近接した位置に来る。
【図4】263、265アミノ酸は増強した筋肉向性を与える。2.5変異体のサブセット(263、265;709、712、720)を作製した。オスBalb/cマウスの腓腹筋に1×1010ウイルスゲノム含有粒子を注射した。注射後7、14、28および42日にマウスを撮像した。本実験で用いたウイルスを、塩化セシウム勾配により精製した。263,265変異体は2.5変異体と同様の増強した筋肉向性を呈し、709,712,720変異体はAAV2と同様の筋肉向性プロファイルを呈した。
【図5】アミノ酸位置265へのトレオニン挿入は、2.5での増強した筋肉向性の主要な原因となる。263,265変異体のサブセット(263または265)を作製した。オスBalb/cマウスの腓腹筋に1×1010ウイルスゲノム含有粒子を注射した。注射後7、14、28、42および100日にマウスを撮像した。本実験で用いたウイルスを、塩化セシウム勾配により精製した。265変異体は263,265変異体と同様の増強した筋肉向性を呈し、263変異体は増強した筋肉向性を呈さなかった。
【図6】注射後時間が経ってから、454,461変異体は増強した筋肉向性を呈した。AAV2または454,461変異体の1×1010ウイルスゲノム含有粒子を、オスBalb/cマウスの腓腹筋に注射した。注射後7、14、21、28および42日にマウスを撮像した。本実験で用いたウイルスを、塩化セシウム勾配により精製した。454,461変異体の筋肉への形質導入は、早い時期(第7日および第14日)ではAAV2のものと同様であったが、遅い時期(第21日〜第42日)ではAAV2の発現より良好であった。
【図7】天然の挿入位置としての他のAAV血清型の263、265領域の同定。AAV血清1型のキャプシド配列(配列番号5)、2型のキャプシド配列(配列番号6)、3a型のキャプシド配列(配列番号7)、3b型のキャプシド配列(配列番号7)、4型のキャプシド配列(配列番号8)、5型のキャプシド配列(配列番号9)、6型のキャプシド配列(配列番号5)、7型のキャプシド配列(配列番号10)、8型のキャプシド配列(配列番号11)および9型のキャプシド配列(配列番号12)について、ベクターNTIソフトウェアパッケージの整列プログラムを用いて、複数配列アラインメントを行った。四角で囲んだのは、増強した筋肉向性の原因であることが同定されているAAV1のアミノ酸に相当する、他の血清型のアミノ酸である。
【図8】AAV変異体のヘパリン結合プロファイル。各AAV変異体について等量の粒子をヘパリンアガロース1型に導入し、結合させた。カラムをPBSで洗浄し、次いで塩化ナトリウムで溶出した。貫流、洗浄液、溶出中に存在する粒子数をドットブロットハイブリダイゼーションで調べた。データは未結合粒子(洗浄液および貫流)と結合粒子(溶出)のパーセントで示した。
【図9】AAV2をバックグラウンドとする263,265変異体のキャプシド配列(配列番号13)とAAV2のキャプシド配列(配列番号3)とのアミノ酸アラインメント。アミノ酸1は、VP1配列を基準に番号付けした。
【図10】AAV3bをバックグラウンドとする263,265変異体のキャプシド配列(配列番号14)とAAV3bのキャプシド配列(配列番号15)とのアミノ酸アラインメント。アミノ酸1は、VP1配列を基準に番号付けした。
【図11】AAV2をバックグラウンドとする2.5変異体のキャプシド配列(配列番号16)とAAV2キャプシド配列(配列番号3)とのアミノ酸アラインメント。アミノ酸1は、VP1配列を基準に番号付けした。
【図12】等量のAAV1、AAV2、AAV3bまたはSASTGゲノム含有粒子(1×1010)を投与したマウスにおける、インビボ動物撮像によって調べた、経時的(3、7、14および21日目の)ルシフェラーゼ活性。
【図13】hFIX導入遺伝子を有するAAV2またはキメラ2.5ベクターで処理したマウス由来の血清について、ELISAにより検出したヒト第IX因子(hFIX)レベル。
【図14】GFP導入遺伝子を保持するキメラ2.5ベクターを投与した後の、マウス脳皮質の神経細胞(左側の矢印)および非神経細胞(右側の矢印)における緑色蛍光タンパク質(GFP)導入遺伝子の発現。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(c)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;および
(d)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項2】
前記キメラウイルスベクターは、前記レシピエント親AAVベクターと比較して、標的細胞への形質導入が増強していることを特徴とする請求項1に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項3】
前記キメラウイルスベクターは骨格筋への形質導入が増強していることを特徴とする請求項2に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項4】
前記キメラウイルスベクターは心筋への形質導入が増強していることを特徴とする請求項2に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項5】
前記キメラウイルスベクターは星状細胞および/またはグリア細胞への形質導入が増強していることを特徴とする請求項2に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項6】
前記挿入が前記キャプシドサブユニットへのトレオニンの挿入であることを特徴とする請求項1に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項7】
前記キメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのアミノ酸挿入を含むキメラAAV2キャプシドを含むことを特徴とする請求項1に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項8】
前記挿入がトレオニンの挿入であることを特徴とする請求項7に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項9】
前記キメラウイルスベクターは、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのアミノ酸挿入を含むキメラAAV3bキャプシドを含むことを特徴とする請求項1に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項10】
前記挿入がトレオニンの挿入であることを特徴とする請求項9に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項11】
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるアミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(b)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450におけるアミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(c)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457におけるアミノ置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および
(d)上記(a)〜(c)の組み合わせ
からなる群から選択される選択的アミノ酸置換を更に含む請求項1に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項12】
前記キメラウイルスベクターは、前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるアミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むことを特徴とする請求項11に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項13】
前記置換は、グルタミンからアラニンへの置換であることを特徴とする請求項12に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項14】
前記キメラウイルスベクターは、前記AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるアミノ酸置換を含むキメラAAV3bキャプシドを含むことを特徴とする請求項11に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項15】
前記置換は、グルタミンからアラニンへの置換であることを特徴とする請求項14に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項16】
前記キメラウイルスベクターは、前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450におけるアミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むことを特徴とする請求項11に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項17】
前記置換は、トレオニンからアスパラギンへの置換であることを特徴とする請求項16に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項18】
前記キメラウイルスベクターは、前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457におけるアミノ酸置換を含むキメラAAV2キャプシドを含むことを特徴とする請求項11に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項19】
前記置換は、グルタミンからアスパラギンへの置換であることを特徴とする請求項18に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項20】
(a)下記を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド:
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの選択的アミノ酸置換;
(ii)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのトレオニンの選択的アミノ酸挿入;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項21】
(a)下記を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド:
(i)AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの選択的アミノ酸置換;
(ii)前記AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのトレオニンの選択的アミノ酸挿入;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項22】
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項23】
前記置換は、トレオニンからアスパラギンへの置換であることを特徴とする請求項22に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項24】
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置457における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV)キャプシド;
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項25】
前記置換は、グルタミンからアスパラギンへの置換であることを特徴とする請求項24に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項26】
前記キメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置450における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化を更に含むことを特徴とする請求項24に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項27】
(a)下記を含むキメラアデノ随伴ウイルス(AAV):
(i)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記挿入に相当する変化;
(ii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(iii)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;
(iv)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;および
(v)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716における選択的アミノ酸置換、または他のAAV由来のキャプシドサブユニットにおける上記置換に相当する変化;ならびに
(b)AAV末端重複配列および異種核酸配列を含む核酸;
を含むキメラウイルスベクターであって、前記核酸が前記キメラAAVキャプシド内にパッケージングされているキメラウイルスベクター。
【請求項28】
前記キメラAAVキャプシドは、
(a)AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置へのトレオニン挿入;
(b)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置263におけるグルタミンからアラニンへの置換;
(c)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置705におけるアスパラギンからアラニンへの置換
(d)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置708におけるバリンからアラニンへの置換;および
(e)前記AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置716におけるトレオニンからアスパラギンへの置換;
を含むことを特徴とする請求項27に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項29】
前記アミノ酸位置264に続く位置への挿入またはそれに相当する変化が、前記AAVキャプシドの全てのサブユニットに存在することを特徴とする請求項1〜28のいずれか1項に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項30】
前記異種核酸配列はポリペプチドをコードすることを特徴とする請求項1〜29のいずれか1項に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項31】
前記ポリペプチドは治療用ポリペプチドであることを特徴とする請求項30に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項32】
前記治療用ポリペプチドは、ジストロフィン、ミニジストロフィン、ユートロフィン、凝固因子(第VIII因子、第IX因子を含む)、成長因子(インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子II、血小板由来成長因子、表皮由来成長因子、繊維芽細胞由来成長因子、神経由来成長因子、グリア由来成長因子、形質転換成長因子α、形質転換成長因子βを含む)、神経栄養因子、抗炎症因子(形質転換成長因子α可溶性受容体、IRAPを含む)、α1−抗トリプシン、リソソーム酸−αグルコシダーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、α−ガラクトシダーゼA、サイトカイン、インターフェロン(β−インターフェロンを含む)、TRAIL、FAS−リガンド、エンドスタチン、アンジオスタチン、嚢胞性線維症膜調節タンパク質、エリスロポエチン、LDL受容体、リポタンパク質リパーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、β−グロビン、α−グロビン、スペクトリン、アデノシンデアミナーゼ、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、スフィンゴミエリナーゼ、リソソームヘキソサミニダーゼ、分枝鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ、骨形態形成タンパク質(VEGF、RANKLを含む)、タンパク質ホスファターゼ阻害剤I、ホスホランバン、serca2a、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、RP65タンパク質、ガラニン、α−L−イズロニダーゼ、ホルモン(インスリン、ソマトトロピンを含む)、ガラクトセレブロシダーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、LDL受容体、可溶性CD4、抗アポトーシス遺伝子産物、グルタミン酸受容体、リンフォカイン、barkct、β2−アドレナリン受容体、カルサルチン、eNOS、iNOS、サルコグリカン、Fc受容体、T細胞受容体、アポE、アポC、自殺遺伝子産物、腫瘍抑制遺伝子産物、およびこれらのあらゆる組み合わせからなる群より選ばれることを特徴とする請求項31に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項33】
前記異種核酸配列が非翻訳RNAをコードすることを特徴とする請求項1〜29のいずれか1項に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項34】
前記非翻訳RNAがアンチセンスRNAであるかまたは干渉RNA(RNAi)であることを特徴とする請求項33に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項35】
前記非翻訳RNAがVEGF、前記多剤耐性遺伝子産物、ミオスタチン、または前記ハンチントン病遺伝子産物の反復配列に対するものであることを特徴とする請求項33または34に記載のキメラウイルスベクター。
【請求項36】
薬剤として許容される担体中に含ませた請求項1〜35のいずれか1項に記載の前記キメラウイルスベクターを含む薬剤配合物。
【請求項37】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の前記キメラウイルスベクターまたは請求項36に記載の前記薬剤配合物を、前記細胞に接触させることを含む、核酸を細胞に投与する方法。
【請求項38】
請求項1〜35のいずれか1項に記載の前記キメラウイルスベクターまたは請求項36に記載の前記薬剤配合物を対象体に投与することを含む、核酸を対象体へ送達する方法。
【請求項39】
前記対象体がヒトであることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象体が、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型筋ジストロフィーを含む)、血友病A、血友病B、多発性硬化症、糖尿病、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、癌、関節炎、筋肉疲労、心疾患(先天性心不全、抹消動脈障害を含む)、内膜過形成、神経疾患(てんかん、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病を含む)、自己免疫疾患、嚢胞性線維症、サラセミア、ハーラー病、クラッベ病、フェニルケトン尿症、バッテン病、脊髄小脳失調症、LDL受容体欠損症、高アンモニア血症、貧血症、関節炎、網膜変性疾患(黄斑変性を含む)、アデノシンデアミナーゼ欠損症、および癌(腫瘍形成癌を含む)からなる群より選ばれる疾患を患っているか、その危険性があることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記キメラウイルスベクターまたは薬剤配合物を骨格筋に投与することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記対象体が筋ジストロフィーを患っているか、その危険性があることを特徴とする請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記キメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入を含むキメラAAVキャプシドを含むことを特徴とする請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記キメラウイルスベクターは、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入を含むキメラAAVキャプシドを含むことを特徴とする請求項41または42に記載の方法。
【請求項45】
前記キメラウイルスベクターまたは薬剤配合物を心筋に投与することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記対象体が心疾患を患っているか、その危険性があることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記対象体がうっ血性心不全または抹消動脈障害を患っているか、その危険性があることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記キメラウイルスベクターは、AAV3bキャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入を含むキメラAAVキャプシドを含むことを特徴とする請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
前記キメラウイルスベクターまたは薬剤配合物をグリア細胞および/または星状細胞に投与することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記対象体がパーキンソン病、星細胞腫または膠芽腫を患っているか、その危険性があることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記キメラウイルスベクターは、AAV2キャプシドサブユニットのアミノ酸位置264に続く位置への選択的アミノ酸挿入を含むキメラAAVキャプシドを含むことを特徴とする請求項49または50に記載の方法。

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公表番号】特表2008−523813(P2008−523813A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546926(P2007−546926)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045552
【国際公開番号】WO2006/066066
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(500459410)ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (16)
【出願人】(500360769)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド (16)
【Fターム(参考)】