キャビティリングダウン分光装置、吸光分析装置及びキャビティリングダウン分光方法
【課題】多くのリングダウンパルスを高精度に得る。
【解決手段】キャビティリングダウン分光装置1は、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系20と、光循環系20を循環する光の光強度を検出する光強度検出部21と、光循環系20内に設けられ、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光循環系20内で発生したノイズの光強度を低減させる負帰還光増幅器10とを有する。
【解決手段】キャビティリングダウン分光装置1は、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系20と、光循環系20を循環する光の光強度を検出する光強度検出部21と、光循環系20内に設けられ、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光循環系20内で発生したノイズの光強度を低減させる負帰還光増幅器10とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光装置、吸光分析装置及びキャビティリングダウン分光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物質の成分濃度の測定や物質の同定等を行う方法として、レーザーパルスを測定対象物に照射し、測定対象物により光強度を減衰されたレーザーパルスを再び測定対象物に照射するという操作を繰り返すことによって、順次に減衰するレーザーパルスの光強度を検出してリングダウンパルスを得るキャビティリングダウン分光方法が知られている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−93529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、レーザーパルスの出力が小さかったり、測定対象物による光強度の減衰量が大きい場合、光強度が早期に検出限界未満にまで減少し、リングダウンパルスの検出数が不十分になり易いという問題がある。そこで、光強度を増幅することにより微弱な光強度も検出可能にする方法が考えられるが、この場合には、光増幅器とリング内で発生する光がノイズ成分として大きく影響するため、微弱な光強度に対応するリングダウンパルスを高精度に得ることができない。
【0005】
本発明の目的は、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができるキャビティリングダウン分光装置、吸光分析装置及びキャビティリングダウン分光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャビティリングダウン分光装置は、所定波長の光を出力する光出力部と、前記光出力部から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系と、前記光循環系を循環する前記光の光強度を検出する光強度検出部と、前記光循環系内に設けられ、該光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生する光ノイズを低減させる負帰還光増幅器とを有する。
【0007】
上記の構成によれば、光出力部から出力された光が光循環系において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、測定対象物による光強度の減衰が加重された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0008】
この際、光循環系内に設けられた負帰還光増幅器は、光循環系を進行する光の光強度を増幅させている。従って、光強度が負帰還光増幅器により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0009】
さらに、負帰還光増幅器は、光循環系を進行する光のノイズ強度を低減させている。即ち、負帰還光増幅器は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0010】
また、前記光循環系は、前記測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、前記光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材を配置すると共に、他端部において前記負帰還光増幅器を配置しており、
前記負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器よりも前記光循環系の他端側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、光循環系を光の往復する線状に形成することができると共に、第1反射部材が設けられた光循環系の一端部を自由端にすることができるため、光循環系や測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【0012】
また、前記光循環系は、前記一端部が光ファイバプローブにより形成されており、
前記光ファイバプローブは、コアとクラッドとを備え、一端側から前記光が導入される光ファイバと、前記光ファイバの他端をプローブ先端として含み、該プローブ先端から前記測定対象物に挿入されるプローブ部と、前記プローブ部に形成され、少なくとも前記クラッド内部に前記測定対象物を導入する導入部と、前記プローブ先端に設けられ、前記導入部よりも前記プローブ先端側に配置された前記第1反射部材とを有していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、光循環系の一端部に設けられた光ファイバプローブを測定対象物に差し込むだけで、測定対象物のセット作業及び光循環系のセット作業が完了するため、セット時における作業性を一層向上させることができる。
【0014】
また、前記光循環系は、前記測定対象物の配置位置を挟んだ両端部において、前記負帰還光増幅器をそれぞれ配置しており、
前記各負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器よりも前記光循環系の端部側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、光循環系の両端部に負帰還光増幅器が配置されることによって、光循環系の両端部で光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、一層多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0016】
また、前記光循環系は、前記光を一方向に進行させる環状に形成されており、
前記各負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器から出力された前記周囲光を、前記出力光から分離し、前記光増幅器に帰還及び入力させる光帰還手段とを有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、光循環系が環状に形成された構成であっても、負帰還光増幅器が配置されることによって、光循環系の光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0018】
また、前記負帰還光増幅器は、負帰還半導体光増幅器であってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、負帰還光増幅器を半導体で構成して小型化することが容易であるため、装置全体を小型化することができると共に、取り扱いが容易になる。
【0020】
また、本発明の吸光分析装置は、上記のキャビティリングダウン分光装置を備えている。
【0021】
上記の構成によれば、キャビティリングダウン分光装置により得られたノイズ成分の少ない多くのリングダウンパルスに基づいて、測定対象物の物性等を高精度に分析することができる。
【0022】
本発明は、測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、前記光循環系内に配置された負帰還光増幅器により、前記光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系で発生する光ノイズ強度を低減させる。
【0023】
上記の構成によれば、光が光循環系において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、光の循環による光路長に基づいた光強度の減衰と、測定対象物による光強度の減衰とが加重された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0024】
この際、光循環系内に配置された負帰還光増幅器により光循環系を進行する光の光強度が増幅されている。従って、光強度が負帰還光増幅器により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0025】
さらに、負帰還光増幅器により光循環系を進行する光ノイズ強度が低減されている。即ち、負帰還光増幅器は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0026】
また、本発明は、測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ前記光循環系の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、
前記光循環系の他端部において、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、前記光循環系の他端側に出力させ、
前記光循環系の他端側に出力された前記出力光と周囲光とを該光循環系の一端側に反射させる。
【0027】
上記の構成によれば、光循環系を光の往復する線状に形成することができると共に、光循環系の一端部を自由端にすることができるため、測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、負帰還光増幅器により多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図2】負帰還半導体光増幅器の回路図である。
【図3】負帰還半導体光増幅器の斜視図である。
【図4】負帰還半導体光増幅器の動作状態を示す説明図である。
【図5】周囲光と入力信号光と出力信号光との光強度および利得の関係を示す説明図である。
【図6】光ファイバプローブの断面図である。
【図7】光ファイバプローブの加工装置の説明図である。
【図8】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図9】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図10】負帰還半導体光増幅器の回路図である。
【図11】吸光分析装置のブロック図である。
【図12】監視制御ルーチンのフローチャートである。
【図13】RSOA増幅実験回路のブロック図である。
【図14】RSOAによるパルス増幅波形のグラフである。
【図15】SOA増幅実験回路のブロック図である。
【図16】SOAによるパルス増幅波形のグラフである。
【図17】RSOAのリングダウンパルスの波形図である。
【図18】増幅しない場合のリングダウンパルスの波形図である。
【図19】SOAのリングダウンパルスの波形図である。
【図20】EDFAのリングダウンパルスの波形図である。
【図21】導入部が形成された状態を示す説明図である。
【図22】空気のリングダウンパルスの波形図である。
【図23】水のリングダウンパルスの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態を図1乃至図12に基づいて説明する。
(キャビティリングダウン分光装置)
図1に示すように、本実施形態のキャビティリングダウン分光装置1は、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12の出力側に配置された光分岐結合器13と、光分岐結合器13に光結合された光循環系20と、光分岐結合器13の出力側に配置された光強度検出部21とを有している。キャビティリングダウン分光装置1は、光に対して透過率が高い石英ガラスやプラスチック等により形成された光ファイバ53により光路が形成されている。尚、キャビティリングダウン分光装置1は、光を空間で取り扱うバルク部品が一部に用いられていてもよい。ここで、『所定波長』は、特に限定されるものではないが、例えば1551nm等の波長を挙げることができる。また、『所定波長』は、各種の測定対象物に応じて最適な吸収性能を発揮させる波長に設定されていてもよい。
【0031】
光出力部12は、所定波長を中心波長とするレーザー光を出力する半導体レーザー等の光源と、この光源を駆動制御する駆動部とを有しており、パルス状のレーザー光等の光を出力可能になっている。尚、光出力部12の光源は、半導体レーザーに限定されるものではなく、その他の光源であってもよい。例えば、光出力部12は、光源をスペクトル範囲の広い太陽光等の自然光としていてもよく、自然光から所定波長を中心波長とする光を抽出すると共に、光路を間欠的に遮蔽することによりパルス状の光を形成するように構成されていてもよい。
【0032】
上記の光出力部12から光が入力される光分岐結合器13は、光カプラや光サーキュレータ等により形成されている。光分岐結合器13は、光出力部12から入力された光を光循環系20に分光する機能と、光循環系20を循環する光を光強度検出部21に分光する機能とを有している。また、光強度検出部21は、波長フィルタ14と光強度検出部15とオシロスコープ16とを備えている。尚、光分岐結合器13は、9:1及び99:1の何れの分岐比であってもキャビティリングダウン分光装置1に適用できるが、9:1の分岐比が好ましい。
【0033】
(光循環系20)
光循環系20は、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能に形成されている。ここで、『循環』とは、光が測定対象物を繰り返して通過することを意味し、線状の光路を往復移動する循環態様と、環状の光路を一方向に移動する循環態様とを含む。『測定対象物』は、トマトやレタス、ハーブ、芋、西瓜、蜜柑、リンゴ、イチゴ等の植物、貝や鳥等の動物、樹木、水耕栽培の苗床、養殖池、生簀、ビニールハウスであってもよい。即ち、『測定対象物』は、液体やガスが経時変化する全ての種類の物を含むと共に、物質の種別や同じ物質の状態変化を検出する用途に適用され得る全ての種類のものを含む。
【0034】
光循環系20は、上述の光分岐結合器13の一部を含み、測定対象物を光路中に位置可能に形成された導入部17と、第1反射部材18及び光分岐結合器13を挟んだ一端部と他端部とを有した線状の光路により形成されている。線状の光路は、光ファイバ53により形成されている。光循環系20の一端部には、光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材18を含む光ファイバプローブ5が配置されている。光ファイバプローブ5の詳細については後述する。一方、光循環系20の他端部には、負帰還光増幅器10が配置されている。
【0035】
(負帰還光増幅器10)
負帰還光増幅器10は、図2に示すように、光を増幅する光増幅器11と、光増幅器11から出力された光の全部または一部を出力元の光増幅器11に反射する第2反射部材19とを有している。光増幅器11は、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、この入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、この出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する相互利得変調作用を起こす機能を有している。
【0036】
具体的には、負帰還光増幅器10は、負帰還半導体光増幅器となるように、光増幅素子11が半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)により形成されている。半導体光増幅器である光増幅器11は、図3に示すように、化合物半導体、例えばインジウム燐(InP)から構成される半導体基板111を有している。半導体基板111上には、光導波路112が形成されている。光導波路112は、半導体基板111上にエピタキシャル成長されたIII−V族混晶半導体の多層膜であり、例えばホトリソグラフィーを用いて所定幅のテープ状突起となるように形成されている。
【0037】
光導波路112は、半導体基板111よりも屈折率が高い物質で構成されており、光を厚み方向に閉じ込めつつ伝播させる機能を備えている。光導波路112内の多層膜は、pn接合により構成された活性層113やキャップ層等を有している。光導波路112の上面には、上部電極114が固着されている。そして、活性層113は、半導体基板111の下面に固着された下部電極115と上部電極114との間に電圧が印加され、且つ上記pn接合に電流が流されることによって、電子正孔対が形成され、その活性層113を通過する光が誘導放射作用により増幅されるようになっている。
【0038】
活性層113は、バルク、多重量子井戸、歪み超格子、或いは量子ドットから構成されている。多重量子井戸である場合は、例えば、InP半導体基板111からエピタキシャル成長されることにより格子整合されたInGaAs(100Åの厚み)とInGaAsP(100Åの厚み)との6対により構成されている。活性層113上には、組成(屈折率)が段階的に変化されたグリン(GRIN)構造のガイド層(2000Å)が順次設けられている。
【0039】
上記の活性層113のデバイス長(光路長さ)は、600μmである。活性層113は、例えば250mAの電流値でエネルギ注入された電子が、光子による誘導放射により価電子帯へ移動させられるときに、光エネルギを放出して通過光を増幅させると考えられている。活性層113は、250mAの電流値によるエネルギ注入により、例えば波長1550nmにおいて単体で20dB程度の利得が得られるものである。
【0040】
上記の光増幅器11は、例えば所定波長のレーザー光が入射されたときに、そのレーザー光を増幅して出力すると同時に、その所定波長を中心とする周囲波長を有し、そのレーザー光の強度変調に反比例して強度が増減する自然光をも出力する所謂相互利得変調作用を起こす機能を備えている。
【0041】
光増幅器11には、第2反射部材19が接合されている。第2反射部材19は、光導波路112におけるレーザー光及び自然光の出力側の端面に密着状態で形成されている。具体的には、第2反射部材19は、アルミや銀等の金属膜を蒸着することにより形成されていたり、誘電体膜等をコーティングすることにより形成されている。負帰還光増幅器10の動作の詳細については、図4及び図5を用いて後述する。
【0042】
尚、本実施形態において、負帰還光増幅器10が負帰還半導体光増幅器である場合について説明したが、光増幅器11として半導体光増幅器(SOA)を用いる代わりに、エルビウムドープファイバー増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)を用いてもよい。即ち、負帰還光増幅器10は、光増幅器11であるEDFAの光ファイバの端面に上述の第2反射部材19が蒸着やコーティングにより形成されていてもよい。
【0043】
(第1反射部材18)
上記の負帰還光増幅器10の第2反射部材19は、図1に示すように、光循環系20の光ファイバ53を介して第1反射部材18に対向されている。これにより、光循環系20は、光を第1反射部材18と第2反射部材19とで往復移動させるようになっている。第1反射部材18は、光ファイバ53の一端部の端面に配置されており、光の全部を入力方向とは逆方向に反射するように形成されている。
【0044】
尚、第1反射部材18は、光ファイバ53に形成されたファイバグレーティングであってもよい。例えば、ファイバグレーティングは、中心波長が1550nm、反射率が99.99%(40dB)に設定されている。この理由は、製造上作れる限界が99.99%であるからであるが、この反射率以上のファイバグレーティングであれば、さらに好ましい。
【0045】
第1反射部材18は、光ファイバプローブ5の一部の構成とされている。これにより、第1反射部材18は、光ファイバプローブ5のセット作業と同時に光循環系20へのセット作業が完了するようにされている。尚、第1反射部材18は、光ファイバプローブ5とは別に、光ファイバ53の端面に蒸着やコーティングにより形成されていてもよいし、反射鏡が密接されていてもよい。
【0046】
(光ファイバプローブ5)
上記の第1反射部材18を備えた光ファイバプローブ5は、図6に示すように、測定対象物4に挿入されるプローブ本体51を備えている。プローブ本体51は、光ファイバ53により形成されている。光ファイバ53は、内周側のコア531と外周側のクラッド532とを有している。尚、光ファイバ53は、必要に応じてクラッド532に被覆した図示しない被覆部材を、後述のプローブ部54以外の部分に有していてもよい。また、プローブ本体51は、幅方向に支持する鞘部材に装着及び抜脱可能にされていてもよい。
【0047】
プローブ本体51は、光ファイバ53の他端を含み、この他端から測定対象物4に挿入されるプローブ部54を有している。プローブ部54は、光ファイバ53の先端面に第1反射部材18が形成されていると共に、第1反射部材18に接近した中部位置に導入部17が形成されている。プローブ部54は、第1反射部材18と導入部17とが接近した状態で一体化されることによって、測定対象物4に差し込む等の導入作業を容易に行うことを可能にしている。導入部17は、測定対象物4を光路中に位置させることによって、光の強度を測定対象物4の光吸収物質により減衰させるように構成されている。尚、『光吸収物質』は、光を吸収する性質を有した気体や液体である。
【0048】
導入部17は、少なくともクラッド532の一部を除去、即ち、クラッド532の一部だけを除去したり、クラッド532とコア531との一部、クラッド532の一部とコア531の全部とを除去することにより除去面が外部に露出状態にされている。具体的には、導入部17は、コア531と、コア531を中心として両側に位置したクラッド532とを直径5μmの丸穴で貫通する貫通穴により形成されている。
【0049】
尚、導入部17は、コア531と、コア531の一方側のクラッド532を直径5μmの丸穴で貫通し、コア531の他方側のクラッド532の途中を穴底とする凹状穴により形成されていてもよい。また、貫通穴や凹状穴は、複数個が光ファイバプローブ5の長手方向に沿って直線状や並列状に配置されていてもよい。また、クラッド532の一部だけを除去する導入部17としては、テーパー形状等の構成を例示することができる。
【0050】
貫通穴や凹状穴等の導入部17は、光ファイバ53を切削したり、穴空け加工することにより形成されている。貫通穴や凹状穴の形成方法としては、レーザー光により光ファイバ53を掘穿する方法が例示される。この形成方法は、図7に示すように、加工光学装置300により実施される。加工光学装置300は、YAGレーザーをレーザー光として出力する波長が266nmである高調波YAGレーザー発振器301と、レーザー光の光路上に配置され、レーザー光を所定の方向に反射するミラー302a・302bと、加工対象となる光ファイバ53を保持するファイバホルダ305と、光ファイバ53を3次元方向に位置決めするXYZステージ306と、XYZステージ306の上方に配置された筐体309とを有している。
【0051】
上記の筐体309の内部には、ミラー302bからのレーザー光を光ファイバ53方向に反射するダイクロイックミラー303と、レーザー光を集光する対物レンズ304と、光ファイバ53を撮像するCCDカメラ307と、光ファイバ53を照明する照明装置308とが設けられている。
【0052】
これにより、加工光学装置300は、高調波YAGレーザー発振器301からレーザー光を出力させる処理と、レーザー光をミラー302a・302bにより筐体309内に導入させる処理と、レーザー光を筐体309内のダイクロイックミラー303により90°の角度で対物レンズ304方向に反射させる処理と、レーザー光を対物レンズ304により集光させる処理と、レーザー光の集光点をファイバホルダ305に保持されるファイバ1の掘穿箇所に一致するように調整する処理とを実行することによって、光ファイバ53に貫通穴や凹状穴等の導入部17を形成するようになっている。
【0053】
また、テーパー形状等の導入部17は、光ファイバ53をバーナー等の熱源を用いて溶融延伸することにより形成することができる。具体的には、溶融延伸部分の最小の径が光ファイバ53の元の径の80%(例えば125μm×0.8=100μm)程度の箇所で溶融延伸を停止することによって、光ファイバプローブ5として使用することができる。
【0054】
(キャビティリングダウン分光装置1の概要)
以上のように、キャビティリングダウン分光装置1は、図1に示すように、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系20と、光循環系20を循環する光の光強度を検出する光強度検出部21と、光循環系20内に設けられ、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光ノイズ強度を低減させる負帰還光増幅器10とを有した構成にされている。
【0055】
そして、このように構成されたキャビティリングダウン分光装置1は、測定対象物を配置可能にされた光循環系20に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出する際に、光循環系20内に配置された負帰還光増幅器10により、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光ノイズ強度を低減させるキャビティリングダウン分光方法を実行するようになっている。
【0056】
より詳細には、キャビティリングダウン分光装置1は、測定対象物を配置可能にされた光循環系20に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出する際に、測定対象物の配置位置を挟んだ光循環系20の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、光循環系20の他端部において、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、この入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、この出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、光循環系20の他端側に出力させ、光循環系20の他端側に出力された出力光と周囲光とを光循環系20の一端側に反射させるキャビティリングダウン分光方法を実行するようになっている。
【0057】
上記の構成や方法によれば、光出力部12から出力された光が光循環系20において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、測定対象物による光強度の減衰された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0058】
この際、光循環系20内に設けられた負帰還光増幅器10は、光循環系20を進行する光の光強度を増幅させている。従って、光強度が負帰還光増幅器10により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部21の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0059】
さらに、負帰還光増幅器10は、光循環系20を進行する光ノイズ強度を低減させている。即ち、負帰還光増幅器10は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器10によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0060】
また、光循環系20は、少なくとも測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材18を配置すると共に、他端部において負帰還光増幅器10を配置しており、負帰還光増幅器10は、図2にも示すように、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、光増幅器よりも光循環系20の他端側に配置され、光増幅器から出力された出力光と周囲光とを光増幅器に反射する第2反射部材19とを有した構成にされている。
【0061】
上記の構成によれば、光循環系20を光の往復する線状に形成することができると共に、第1反射部材18が設けられた光循環系20の一端部を自由端にすることができるため、光循環系20や測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【0062】
また、光循環系20は、一端部が光ファイバプローブ5により形成されており、図6に示すように、光ファイバプローブ5は、コア531とクラッド532とを備え、一端側から光が導入される光ファイバ53と、光ファイバ53の他端をプローブ先端として含み、プローブ先端から測定対象物に挿入されるプローブ部54と、プローブ部54に形成され、少なくともクラッド532内部に測定対象物を導入する導入部17と、プローブ先端に設けられ、導入部17よりもプローブ先端側に配置された第1反射部材18とを有した構成にされている。
【0063】
上記の構成によれば、光循環系20の一端部に設けられた光ファイバプローブ5を測定対象物に差し込むだけで、測定対象物のセット作業及び光循環系20のセット作業が完了するため、セット時における作業性を一層向上させることができる。
【0064】
(変形例)
尚、本実施形態においては、負帰還光増幅器10を光循環系20の一端部に備えた場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、光循環系20の両端部に負帰還光増幅器10を備えた構成にされていてもよい。或いは、負帰還光増幅器10は、光循環系20の他端部に配置されていてもよい。換言すれば、キャビティリングダウン分光装置1は、負帰還光増幅器10を光循環系20の一端部及び他端部の少なくとも一方に備え、この負帰還光増幅器10の対向側において負帰還光増幅器10又は第1反射部材18を備えていてもよい。
【0065】
上記の構成によれば、光循環系20の両端部に負帰還光増幅器10が配置された場合、光循環系20の両端部で光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、一層多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になる。
【0066】
また、本実施形態においては、光循環系20が線状に形成された場合について説明しているが、これに限定されるものでもない。即ち、図9に示すように、光循環系20は、光を一方向に進行させる環状に形成されていてもよい。そして、光循環系20の各負帰還光増幅器10は、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する後述する光増幅器11と、光増幅器11から出力された周囲光を、出力光から分離し、光増幅器11に帰還及び入力させる光帰還手段とを有した構成にされていてもよい。
【0067】
具体的には、図10に示すように、上記の光帰還手段は、光増幅器11の出力側に配置された波長選択素子61を有している。波長選択素子61は、光増幅器11からの出力光中の例えば1550nmの所定波長の出力信号光とそれ以外の波長に周囲光とを分離するためのものであり、所定の波長の全部または1部の光を反射させるものである。この波長選択素子61は、例えば前記所定の波長、例えば1545〜1555nmの光を透過させるが、それ以外の波長の全部の光を反射させて光ファイバから成る帰還光路63へ出力する光アド・ドロップフィルタから構成されてもよいが、屈折率が異なる一対の層が多数組積層された多層膜フィルタ、或いは光伝播方向において屈折率が周期的に変化させられたグレーティングフィルタ、フォトニッククリスタルフィルタのいずれかから構成されてもよい。
【0068】
光カプラ62は、入力信号光を光増幅器11へ入力させるための信号光入力手段として機能するものであり、図示しないレーザー光源からのレーザー光が変調されて信号伝送路から搬送される所定波長の入力信号光を光増幅器11に入力させる。光カプラ62は、例えば、光ファイバにより構成された結合器或いは分波器、或いはハーフミラーによって構成される。光カプラ62は、所定波長の入力信号光を波長選択的に反射させ且つそれ以外の波長の光を透過させる光アド・ドロップフィルタに置き換えてもよい。また、波長選択素子61、光増幅器11、光カプラ62の相互間の光の伝送路は、例えば、光を厚み方向に閉じ込めつつ伝送する光導波路、或いは光を径方向に閉じ込めつつ伝送する光ファイバ等により構成される。
【0069】
上記の構成によれば、光循環系20が環状に形成された構成であっても、負帰還光増幅器10が配置されることによって、光循環系20の光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができる。
【0070】
(吸光分析装置200)
次に、キャビティリングダウン分光装置1を備えた吸光分析装置200について図11及び図12に基づいて説明する。尚、以下の吸光分析装置200の説明においては、トマト等の植物を測定対象物4として説明しているが、これに限定されるものではない。
【0071】
図11に示すように、吸光分析装置200は、測定対象物4の状態をキャビティリングダウン分光法によりリアルタイムで高精度に求めるように構成されている。尚、測定対象物4が植物の測定以外の用途に使用される場合には、後述の記憶部211のデータテーブルにおける状態データの内容を変更することによって、植物以外に適用される吸光分析装置となる。
【0072】
吸光分析装置200は、測定対象物4である植物に挿入される一つ以上の光ファイバプローブ5と、各光ファイバプローブ5に対してレーザー光を入出力させ、各光ファイバプローブ5からの反射光に基づいて複数の測定対象物4の状態を監視可能な監視装置本体201とを有している。光ファイバプローブ5は、最低一つあればよく、監視装置本体201が光ファイバセレクタ203を備えることによって、複数の光ファイバプローブを使用することができる。
【0073】
光ファイバプローブ5は、監視装置本体201に接続されている。監視装置本体201は、各光ファイバプローブ5の一端に接続された光ファイバセレクタ203と、光ファイバセレクタ203の単数の共通端子203bに接続された光カプラ204とを有している。尚、光カプラ204は光サーキュレータであってもよい。光ファイバセレクタ203は、複数の入出力端子203aと、単数の共通端子203bと、選択端子203cとを有していると共に、各入出力端子203a及び共通端子203b間の接続状態(チャンネル)を選択端子203cに入力された選択データにより切り替える図示しない切替部とを有している。
【0074】
光ファイバセレクタ203の共通端子203bには、光カプラ204の共通端子204aが接続されている。光カプラ204は、共通端子204aと、共通端子204aに接続された出力端子204b、入力端子204c、及び入出力端子204dを有している。光カプラ204の入力端子204cには、パルス状のレーザー光を出力可能なレーザー光出力装置205が接続されている。レーザー光出力装置205は、例えば、光出力部素子がInGaAsPのファブリペロー型レーザーダイオードであり、中心波長が1550nm、スペクトル範囲が1530〜1560nm、平均出力が100μW(パルス幅500ns、繰返周波数5kHz)、ピーク出力が40mWのものが使用される。一方、光カプラ204の出力端子204bには、光強度検出部209が接続されている。
【0075】
また、光ファイバセレクタ203の選択端子203cには、選択データを出力する選択部206が接続されている。選択部206は、コントローラ207からの選択指令に基づいて定期的に測定対象を切り替えるように、各光ファイバプローブ5を特定する選択データを切替出力するようになっている。例えば、各光ファイバプローブ5に固有の識別番号が設定されていれば、この識別番号に対応した選択データを切替出力するようになっている。これにより、光ファイバセレクタ203は、光カプラ204を介して入力されたパルス状のレーザー光を各光ファイバプローブ5に順番に出力し、光ファイバプローブ5からの反射光を光カプラ204を介して光強度検出部209に順番に出力することが可能になっている。
【0076】
また、光ファイバセレクタ203の入出力端子204dには、負帰還光増幅器10が接続されている。そして、負帰還光増幅器10と光カプラ204と光ファイバセレクタ203と光ファイバプローブ5とが光循環系20を構成している。
【0077】
光強度検出部209は、出力光の光強度を測定し、アナログ形態の光強度信号として出力するようになっている。光強度検出部209は、例えば、検出素子がInGaAs APD(アバランシェフォトダイオード)であり、検出波長が1000〜1600nmのものが使用される。光強度検出部209は、吸収係数算出部210に接続されている。吸収係数算出部210は、アナログ形態の光強度信号をデジタル形態の光強度データに変換する機能と、光強度データを用いたキャビティリングダウン分光法による処理として吸収係数を算出する機能とを有している。これにより、光強度検出部209及び吸収係数算出部210は、出力光をキャビティリングダウン分光法により処理する測定装置としての機能を備えている。尚、光強度検出部209及び吸収係数算出部210は、オシロスコープにより少なくとも一部の機能を実現することができる。
【0078】
ここで、キャビティリングダウン分光法について概略すると、2枚の高反射率ミラーで構成された光学キャビティの片側のミラー外部から、パルス化されたレーザー光を注入し、キャビティ内に進入した光を片側のミラーにおいて僅かに外部に漏洩させながら反射させる。反射光は、ミラー間で何度も反射及び漏洩が繰り返され、反射の回数を重ねる毎に、指数的に光強度を減少させる。そして、光学キャビティ内に光損失を起こす分子等の光吸収物質が存在すれば、光強度減衰率が増加することを利用し、レーザー光をキャビティ中で何度も往復させ、長い実効光路長を得ることによって、光強減衰率を高精度に算出することにより光吸収物質の状態を求める。
【0079】
吸収係数算出部210は、キャビティリングダウン分光法による処理結果である光強度減衰率を吸収係数データとして記憶部211に出力する。記憶部211は、ハードディスク等の大容量の記憶装置からなっており、管理テーブルと測定対象物同定テーブルとをデータテーブルとして有している。管理テーブルは、光ファイバプローブ5の識別番号と、各識別番号に対応付けられた光強度、吸収係数及び測定日時とを測定対象物4である植物の状態データとして有している。
【0080】
これにより、管理テーブルは、測定日時に基づいた各光ファイバプローブ5がセットされた測定対象物4の光強度及び吸収係数などが保存され、経時変化を求めるデータベース等に用いることが可能になっている。また、測定対象物同定テーブルは、測定対象物4の状態と、各状態に応じた吸収係数とを測定対象物の種類毎に記憶している。これにより、測定対象物同定テーブルは、各種の測定対象物4である植物の状態を吸収係数に基づいて同定するデータベースとして用いることが可能になっている。
【0081】
上記の記憶部211は、コントローラ207によりアクセス可能にされている。コントローラ207は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置からなり、キャビティリングダウン分光法による処理結果を測定対象物4の状態データとして情報処理する機能を有するように、少なくとも図12の監視制御ルーチンを実行可能にされている。尚、コントローラ207は、処理能力に余力があれば、吸収係数算出部210における吸収係数の算出処理に用いられてもよい。
【0082】
コントローラ207は、上述のレーザー光出力装置205と、選択部206と、吸収係数算出部210とに接続されていると共に、キーボードやマウス等の操作部212と、液晶表示装置等の表示部213とに接続されている。コントローラ207は、レーザー光出力装置205に対して出力開始や出力停止の出力指令信号を出力すると共に、レーザー光の出力状態(パルス幅や光強度等)を設定する設定指令信号を出力する機能と、選択部206に対して切替間隔や選択対象となる識別番号の設定指令信号を出力する機能と、吸収係数算出部210に対して測定対象物の種類に応じた演算情報を出力する機能とを有している。
【0083】
さらに、コントローラ207は、操作部212からの操作データを受け付ける機能と、操作データに基づいて各種の処理を実行する機能と、表示部213に対して操作の内容を表示させる機能と、表示部213に対して記憶部211に記憶された各種のデータをグラフや数値により表示させる機能と、吸収係数に基づいて測定対象物の状態を画像や数値で表示する機能とを有している。
【0084】
(吸光分析装置200の動作)
監視装置本体201の作動が開始されると、図12の監視制御ルーチンが実行され、先ず、操作部212のキー操作等による操作データの入力が受け付けられる(S1)。続いて、受け付けた操作データが測定感度の調整であるか否かが判定される(S2)。測定感度の調整である場合には(S2,YES)、調整内容に応じた測定感度調整処理が実行され、例えば、レーザー光出力装置205に対してレーザー光の出力状態(パルス幅や光強度等)が設定されたり、吸収係数算出部210に対して測定対象物4の種類に応じた演算情報が出力される(S3)。この後、S1から再実行される。
【0085】
一方、測定感度の調整でない場合には(S2,NO)、続いて、操作データが表示の切り替えであるか否かが判定される(S4)。表示の切り替えである場合には(S4,YES)、表示切替処理が実行され、例えば、記憶部211に記憶された吸収係数の表示や測定対象物4の状態の表示等が行われる(S5)。この後、S1から再実行される。
【0086】
一方、表示の切り替えでない場合には(S4,NO)、続いて、操作データが測定の開始であるか否かが判定される(S6)。測定の開始でない場合には(S6,NO)、S1から再実行される。測定の開始である場合には(S6,YES)、キャビティリングダウン分光法による測定が開始される。
【0087】
具体的には、レーザー光出力装置205からパルス状のレーザー光が出力される(S7)。そして、所定の切り替えタイミングで光ファイバセレクタ203におけるチャンネルの切り替えが行われる。これにより、各光ファイバプローブ5に対して順番にレーザー光が出力されることになる(S8)。尚、チャンネルの切り替え後にレーザー光の出力が行われてもよい。
【0088】
ここで、図6に示すように、光ファイバプローブ5にレーザー光が導入されると、レーザー光は、コア531内をプローブ部54方向に向かって進行する。そして、プローブ部54に到達したレーザー光は、導入部17を通過してプローブ先端に配置された第1反射部材18で反射光として反射される。反射光は、図11に示すように、導入部17を通過した後、光ファイバセレクタ203、光カプラ204、及び負帰還光増幅器10に進行し、負帰還光増幅器10において増幅されると共に、ノイズ光が低減される。
【0089】
詳細に説明すると、負帰還光増幅器10は、図4に示すように、所定波長の入力信号光が入射されると、所定波長の出力信号光と、その所定波長とは異なる周囲波長の周囲光(自然放出光)とを含む光を出力する。このような入力信号光と出力信号光と周囲光(自然放出光)とは、図5に示す光強度の関係を有している。即ち、出力信号光と周囲光とは強度について位相が反転されている。これにより、負帰還光増幅器10は、出力信号光と周囲光とを含む光が光増幅器11から出力された後、第2反射部材19により光増幅器11に反射されると、周囲光は光増幅器の利得を変調する。この変調された利得の中を入力信号光が進行すると基線の上昇を抑制し、ノイズが低減された状態となる。
【0090】
この結果、エレクトロニクスで言うところの負帰還作用と同様の作用により、所定波長の入力信号光に対する非線形歪みが低減された出力信号光が出力される。従って、光信号のみによる負帰還増幅的な作用が得られるので、出力信号光のゲイン(利得)、波形、基線が広範な周波数範囲において安定し、低ノイズ化が可能となる。
【0091】
図11に示すように、負帰還光増幅器10と光ファイバプローブ5とを含む光循環系20をレーザー光が往復(循環)する。そして、導入部17に存在する測定対象物4の光吸収物質により光強度が減衰されながら、光カプラ204において一部が光強度検出部209に漏洩される。漏洩したレーザー光が光強度検出部209で受光され、光強度信号とされる。光強度信号は、吸収係数算出部210において、デジタル形態の光強度データに変換された後、キャビティリングダウン分光法により吸収係数が算出される。そして、この吸収係数が記憶部211の管理テーブルに測定日時等と共に記憶されることによって、測定データ(測定対象物4の状態データ)として取得されることになる(S9)。
【0092】
次に、測定が終了したか否かが判定され(S10)、測定が終了していない場合には(S10,NO)、S7から再実行されることによって、キャビティリングダウン分光法による測定データの取得が繰り返される。一方、測定の終了である場合には(S10,YES)、レーザー光の出力が停止され(S11)、測定データの取得が停止された後(S12)、S1から再実行される。
【0093】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。
【実施例】
【0094】
本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1(実施例1)の増幅状態を測定すると共に、比較例として、半導体光増幅器(SOA)だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例1)の増幅度を測定した。
【0095】
(実施例1・比較例1)
先ず、図13に示す構成を、下記の部材を用いて組み上げた。即ち、光出力部12として半導体レーザー(Anritsu GB5AO16)、減衰器171としてANDO製 AQ−3105A)、光分岐結合器13としてサーキュレータ(FDK製 YC−1100−ZJ1−155)、負帰還光増幅器10としてRSOA(kamelian製 10−TO−C−FA39−07−0301279897)、波長フィルタ14としてU−CONN製 Add drop filter 1551nm、光強度検出部15としてディテクター受光センサ(Newport製 IR DC−125MHz Low Noise Photoreceiver 1811)、オシロスコープ16としてHEWLETT PACKARD製 infinium Oscilloscope 500MHz 2GSa/sを用いた。
【0096】
そして、半導体レーザーでパルス信号を作りそれを減衰器でディテクター変換電圧100mVに調整し、波形増幅の状態を測定した。この測定結果を図14に示す。
【0097】
次に、図15に示す構成、即ち、図13の構成において、光分岐結合器13と負帰還光増幅器10との代わりに、光増幅器11(SOA:InPhenix製 IPSAI1501)を用いた構成を組み上げた。そして、同一条件で、パルス信号を作りそれを減衰器171でディテクター返還電圧100mVに調整し、波形増幅の状態を測定した。この測定結果を図16に示す。
【0098】
(実施例2・比較例2・3・4)
次に、本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1(実施例2)のリングダウンパルスを測定すると共に、比較例として、増幅器を備えないキャビティリングダウン分光装置(比較例2)と、半導体光増幅器(SOA)だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例3)と、EDFAの光増幅器だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例4)とのリングダウンパルスを測定した。
【0099】
実施例2の負帰還半導体光増幅器(RSOA)は、光ファイバプローブ5を除いて図1に示す構成とした。各部材の機器として下記の部材を用いた。即ち、光分岐結合器13として9:1カプラ(タツタ電線製)を用いた。その他の各部材の機器は、実施例1と同一のものを用いた。また、比較例2・3・4においても、実施例2と同一部材には同一の機器を用いた。そして、パルス信号を循環させることによって、リングダウンパルスをそれぞれ測定した。この測定結果を図17〜図20に示す。
【0100】
(実施例3・4)
次に、本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1を図1に示す構成で組み上げ、測定対象物として空気と水とを用いた場合のリングダウンパルスをそれぞれ測定した(実施例3・4)。尚、機器は、実施例1と同一のものを用いた。また、図21に示すように、導入部17は、一対の光ファイバ23・23の端面をフェルール25により所定間隔を隔てて対向させることにより形成した。測定結果を図22及び図23に示す。
【0101】
(実施例1と比較例1の測定結果の検討)
図14及び図16に示した測定結果によると、RSOA及びSOAの何れを増幅実験回路に用いた場合であっても、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が2500mV程度のように、ほぼ同一であるのに対し、ベース電圧がRSOAとSOAとで異なっている。即ち、RSOAのベース電圧が100mV程度である一方、SOAのベース電圧が250mV程度となっている。従って、RSOAを用いた場合は、ピーク電圧を維持しつつ、SOAを用いた場合よりもベース電圧を2倍以上低減できることが判明した。この結果、RSOAを用いた場合は、ベース電圧がリングダウンパルスのノイズとして作用し難くできることが判明した。
【0102】
(実施例2・比較例2・3・4の測定結果の検討)
図17の測定結果によると、実施例2は、リングダウンパルスとなるピーク電圧が多数検出されると共に、これらのピーク電圧が指数関数的に減衰している。即ち、実施例2のRSOAを用いたCRDSは、RSOAの負帰還効果によって発振現象を抑制した増幅が得られることにより、忠実な波形増幅が可能であることが分かった。これは、上述の図14及び図16に示した信号増幅波形において、実施例1のRSOAについてはベースライン信号増幅が比較例1よりも抑制されていることからも認められる。また、負帰還増幅効果は増幅器内部で発生する雑音を抑制し、非線形歪みを低減することができると考えられる。
【0103】
これに対し、図18の増幅しない比較例2は、光増幅されていないので初期段階のピーク電圧が小さいものであることが確認された。さらに、検出可能なピーク電圧の個数も実施例1よりも少ないことが確認された。
【0104】
また、図19及び図20の測定結果によると、キャビティリングダウン分光法(CRDS)においてSOA(比較例3)やEDFA(比較例3)は、増幅波形が指数関数による減衰とはならないことが確認された。また、SOAを用いた場合、波形のベースライン(基線)が上昇している。この原因は、CRDSループ回路が正帰還増幅回路となって発振現象が生じるからであると推測される。尚、測定においては、CRDSループ回路自体は時間的に信号が重ならないよう十分なループ長を取ることにより信号光による発振現象を生じないように配慮した。しかし、ループ回路内で増幅を繰り返すことにより発振現象を引き起こしCRDS波形が振動を持った波形の上に存在することにより波形が変形するものと考えられる。
【0105】
このことから、RSOAを用いたCRDSは、指数関数に近似した減衰波形が得られるため、吸収係数の精度が上がり、結果的に測定対象物の検出精度及び同定精度が向上することが確認された。
【0106】
また、負帰還光増幅器の光増幅器11として、SOAを用いた場合と、EDFAを用いた場合とを比較すると、図19及び図20に示すようにほぼ同程度のリングダウンパルスが検出されていると共に、EDFAが増幅波長帯域に制限があることから、負帰還光増幅器の光増幅器11としてSOAを用いた方が、EDFAを用いるよりも、幅広い波長帯域をカバーできる点で有利であると考えられる。
【0107】
(実施例3・4の測定結果の検討)
図22の測定結果によると、測定対象物が空気である実施例3は、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が250mVであり、以後に連続して検出されるピーク電圧が指数関数的に減衰し、合計9個のピーク電圧を検出することが可能であることが確認された。
【0108】
また、図23の測定結果によると、測定対象物が水である実施例4は、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が290mVであり、以後に連続して検出されるピーク電圧が指数関数的に減衰し、合計18個のピーク電圧を検出することが可能であることが確認された。
【0109】
これにより、RSOAを用いたキャビティリングダウン分光装置によれば、空気及び水の何れの測定対象物においても、多くのリングダウンパルスを理論通りの波形で得ることができることが判明した。この結果、測定対象物が空気と水とで相違すると、リングダウンパルスの波形が明確に相違することから、相違する各種の測定対象物に対応したリングダウンパルスの波形を高精度に得られることができ、結果として測定対象物の同定を高精度に行うことが可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0110】
1 キャビティリングダウン分光装置
4 測定対象物
5 光ファイバプローブ
11 光増幅器
12 光出力部
13 光分岐結合器
14 波長フィルタ
15 光強度検出部
16 オシロスコープ
17 導入部
18 第1反射部材
19 第2反射部材
20 光循環系
21 光強度検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光装置、吸光分析装置及びキャビティリングダウン分光方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物質の成分濃度の測定や物質の同定等を行う方法として、レーザーパルスを測定対象物に照射し、測定対象物により光強度を減衰されたレーザーパルスを再び測定対象物に照射するという操作を繰り返すことによって、順次に減衰するレーザーパルスの光強度を検出してリングダウンパルスを得るキャビティリングダウン分光方法が知られている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−93529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構成では、レーザーパルスの出力が小さかったり、測定対象物による光強度の減衰量が大きい場合、光強度が早期に検出限界未満にまで減少し、リングダウンパルスの検出数が不十分になり易いという問題がある。そこで、光強度を増幅することにより微弱な光強度も検出可能にする方法が考えられるが、この場合には、光増幅器とリング内で発生する光がノイズ成分として大きく影響するため、微弱な光強度に対応するリングダウンパルスを高精度に得ることができない。
【0005】
本発明の目的は、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができるキャビティリングダウン分光装置、吸光分析装置及びキャビティリングダウン分光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキャビティリングダウン分光装置は、所定波長の光を出力する光出力部と、前記光出力部から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系と、前記光循環系を循環する前記光の光強度を検出する光強度検出部と、前記光循環系内に設けられ、該光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生する光ノイズを低減させる負帰還光増幅器とを有する。
【0007】
上記の構成によれば、光出力部から出力された光が光循環系において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、測定対象物による光強度の減衰が加重された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0008】
この際、光循環系内に設けられた負帰還光増幅器は、光循環系を進行する光の光強度を増幅させている。従って、光強度が負帰還光増幅器により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0009】
さらに、負帰還光増幅器は、光循環系を進行する光のノイズ強度を低減させている。即ち、負帰還光増幅器は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0010】
また、前記光循環系は、前記測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、前記光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材を配置すると共に、他端部において前記負帰還光増幅器を配置しており、
前記負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器よりも前記光循環系の他端側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していてもよい。
【0011】
上記の構成によれば、光循環系を光の往復する線状に形成することができると共に、第1反射部材が設けられた光循環系の一端部を自由端にすることができるため、光循環系や測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【0012】
また、前記光循環系は、前記一端部が光ファイバプローブにより形成されており、
前記光ファイバプローブは、コアとクラッドとを備え、一端側から前記光が導入される光ファイバと、前記光ファイバの他端をプローブ先端として含み、該プローブ先端から前記測定対象物に挿入されるプローブ部と、前記プローブ部に形成され、少なくとも前記クラッド内部に前記測定対象物を導入する導入部と、前記プローブ先端に設けられ、前記導入部よりも前記プローブ先端側に配置された前記第1反射部材とを有していてもよい。
【0013】
上記の構成によれば、光循環系の一端部に設けられた光ファイバプローブを測定対象物に差し込むだけで、測定対象物のセット作業及び光循環系のセット作業が完了するため、セット時における作業性を一層向上させることができる。
【0014】
また、前記光循環系は、前記測定対象物の配置位置を挟んだ両端部において、前記負帰還光増幅器をそれぞれ配置しており、
前記各負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器よりも前記光循環系の端部側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、光循環系の両端部に負帰還光増幅器が配置されることによって、光循環系の両端部で光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、一層多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0016】
また、前記光循環系は、前記光を一方向に進行させる環状に形成されており、
前記各負帰還光増幅器は、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、前記光増幅器から出力された前記周囲光を、前記出力光から分離し、前記光増幅器に帰還及び入力させる光帰還手段とを有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、光循環系が環状に形成された構成であっても、負帰還光増幅器が配置されることによって、光循環系の光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0018】
また、前記負帰還光増幅器は、負帰還半導体光増幅器であってもよい。
【0019】
上記の構成によれば、負帰還光増幅器を半導体で構成して小型化することが容易であるため、装置全体を小型化することができると共に、取り扱いが容易になる。
【0020】
また、本発明の吸光分析装置は、上記のキャビティリングダウン分光装置を備えている。
【0021】
上記の構成によれば、キャビティリングダウン分光装置により得られたノイズ成分の少ない多くのリングダウンパルスに基づいて、測定対象物の物性等を高精度に分析することができる。
【0022】
本発明は、測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、前記光循環系内に配置された負帰還光増幅器により、前記光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系で発生する光ノイズ強度を低減させる。
【0023】
上記の構成によれば、光が光循環系において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、光の循環による光路長に基づいた光強度の減衰と、測定対象物による光強度の減衰とが加重された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0024】
この際、光循環系内に配置された負帰還光増幅器により光循環系を進行する光の光強度が増幅されている。従って、光強度が負帰還光増幅器により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0025】
さらに、負帰還光増幅器により光循環系を進行する光ノイズ強度が低減されている。即ち、負帰還光増幅器は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0026】
また、本発明は、測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ前記光循環系の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、
前記光循環系の他端部において、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、前記光循環系の他端側に出力させ、
前記光循環系の他端側に出力された前記出力光と周囲光とを該光循環系の一端側に反射させる。
【0027】
上記の構成によれば、光循環系を光の往復する線状に形成することができると共に、光循環系の一端部を自由端にすることができるため、測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、負帰還光増幅器により多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図2】負帰還半導体光増幅器の回路図である。
【図3】負帰還半導体光増幅器の斜視図である。
【図4】負帰還半導体光増幅器の動作状態を示す説明図である。
【図5】周囲光と入力信号光と出力信号光との光強度および利得の関係を示す説明図である。
【図6】光ファイバプローブの断面図である。
【図7】光ファイバプローブの加工装置の説明図である。
【図8】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図9】キャビティリングダウン分光装置のブロック図である。
【図10】負帰還半導体光増幅器の回路図である。
【図11】吸光分析装置のブロック図である。
【図12】監視制御ルーチンのフローチャートである。
【図13】RSOA増幅実験回路のブロック図である。
【図14】RSOAによるパルス増幅波形のグラフである。
【図15】SOA増幅実験回路のブロック図である。
【図16】SOAによるパルス増幅波形のグラフである。
【図17】RSOAのリングダウンパルスの波形図である。
【図18】増幅しない場合のリングダウンパルスの波形図である。
【図19】SOAのリングダウンパルスの波形図である。
【図20】EDFAのリングダウンパルスの波形図である。
【図21】導入部が形成された状態を示す説明図である。
【図22】空気のリングダウンパルスの波形図である。
【図23】水のリングダウンパルスの波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態を図1乃至図12に基づいて説明する。
(キャビティリングダウン分光装置)
図1に示すように、本実施形態のキャビティリングダウン分光装置1は、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12の出力側に配置された光分岐結合器13と、光分岐結合器13に光結合された光循環系20と、光分岐結合器13の出力側に配置された光強度検出部21とを有している。キャビティリングダウン分光装置1は、光に対して透過率が高い石英ガラスやプラスチック等により形成された光ファイバ53により光路が形成されている。尚、キャビティリングダウン分光装置1は、光を空間で取り扱うバルク部品が一部に用いられていてもよい。ここで、『所定波長』は、特に限定されるものではないが、例えば1551nm等の波長を挙げることができる。また、『所定波長』は、各種の測定対象物に応じて最適な吸収性能を発揮させる波長に設定されていてもよい。
【0031】
光出力部12は、所定波長を中心波長とするレーザー光を出力する半導体レーザー等の光源と、この光源を駆動制御する駆動部とを有しており、パルス状のレーザー光等の光を出力可能になっている。尚、光出力部12の光源は、半導体レーザーに限定されるものではなく、その他の光源であってもよい。例えば、光出力部12は、光源をスペクトル範囲の広い太陽光等の自然光としていてもよく、自然光から所定波長を中心波長とする光を抽出すると共に、光路を間欠的に遮蔽することによりパルス状の光を形成するように構成されていてもよい。
【0032】
上記の光出力部12から光が入力される光分岐結合器13は、光カプラや光サーキュレータ等により形成されている。光分岐結合器13は、光出力部12から入力された光を光循環系20に分光する機能と、光循環系20を循環する光を光強度検出部21に分光する機能とを有している。また、光強度検出部21は、波長フィルタ14と光強度検出部15とオシロスコープ16とを備えている。尚、光分岐結合器13は、9:1及び99:1の何れの分岐比であってもキャビティリングダウン分光装置1に適用できるが、9:1の分岐比が好ましい。
【0033】
(光循環系20)
光循環系20は、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能に形成されている。ここで、『循環』とは、光が測定対象物を繰り返して通過することを意味し、線状の光路を往復移動する循環態様と、環状の光路を一方向に移動する循環態様とを含む。『測定対象物』は、トマトやレタス、ハーブ、芋、西瓜、蜜柑、リンゴ、イチゴ等の植物、貝や鳥等の動物、樹木、水耕栽培の苗床、養殖池、生簀、ビニールハウスであってもよい。即ち、『測定対象物』は、液体やガスが経時変化する全ての種類の物を含むと共に、物質の種別や同じ物質の状態変化を検出する用途に適用され得る全ての種類のものを含む。
【0034】
光循環系20は、上述の光分岐結合器13の一部を含み、測定対象物を光路中に位置可能に形成された導入部17と、第1反射部材18及び光分岐結合器13を挟んだ一端部と他端部とを有した線状の光路により形成されている。線状の光路は、光ファイバ53により形成されている。光循環系20の一端部には、光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材18を含む光ファイバプローブ5が配置されている。光ファイバプローブ5の詳細については後述する。一方、光循環系20の他端部には、負帰還光増幅器10が配置されている。
【0035】
(負帰還光増幅器10)
負帰還光増幅器10は、図2に示すように、光を増幅する光増幅器11と、光増幅器11から出力された光の全部または一部を出力元の光増幅器11に反射する第2反射部材19とを有している。光増幅器11は、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、この入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、この出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する相互利得変調作用を起こす機能を有している。
【0036】
具体的には、負帰還光増幅器10は、負帰還半導体光増幅器となるように、光増幅素子11が半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)により形成されている。半導体光増幅器である光増幅器11は、図3に示すように、化合物半導体、例えばインジウム燐(InP)から構成される半導体基板111を有している。半導体基板111上には、光導波路112が形成されている。光導波路112は、半導体基板111上にエピタキシャル成長されたIII−V族混晶半導体の多層膜であり、例えばホトリソグラフィーを用いて所定幅のテープ状突起となるように形成されている。
【0037】
光導波路112は、半導体基板111よりも屈折率が高い物質で構成されており、光を厚み方向に閉じ込めつつ伝播させる機能を備えている。光導波路112内の多層膜は、pn接合により構成された活性層113やキャップ層等を有している。光導波路112の上面には、上部電極114が固着されている。そして、活性層113は、半導体基板111の下面に固着された下部電極115と上部電極114との間に電圧が印加され、且つ上記pn接合に電流が流されることによって、電子正孔対が形成され、その活性層113を通過する光が誘導放射作用により増幅されるようになっている。
【0038】
活性層113は、バルク、多重量子井戸、歪み超格子、或いは量子ドットから構成されている。多重量子井戸である場合は、例えば、InP半導体基板111からエピタキシャル成長されることにより格子整合されたInGaAs(100Åの厚み)とInGaAsP(100Åの厚み)との6対により構成されている。活性層113上には、組成(屈折率)が段階的に変化されたグリン(GRIN)構造のガイド層(2000Å)が順次設けられている。
【0039】
上記の活性層113のデバイス長(光路長さ)は、600μmである。活性層113は、例えば250mAの電流値でエネルギ注入された電子が、光子による誘導放射により価電子帯へ移動させられるときに、光エネルギを放出して通過光を増幅させると考えられている。活性層113は、250mAの電流値によるエネルギ注入により、例えば波長1550nmにおいて単体で20dB程度の利得が得られるものである。
【0040】
上記の光増幅器11は、例えば所定波長のレーザー光が入射されたときに、そのレーザー光を増幅して出力すると同時に、その所定波長を中心とする周囲波長を有し、そのレーザー光の強度変調に反比例して強度が増減する自然光をも出力する所謂相互利得変調作用を起こす機能を備えている。
【0041】
光増幅器11には、第2反射部材19が接合されている。第2反射部材19は、光導波路112におけるレーザー光及び自然光の出力側の端面に密着状態で形成されている。具体的には、第2反射部材19は、アルミや銀等の金属膜を蒸着することにより形成されていたり、誘電体膜等をコーティングすることにより形成されている。負帰還光増幅器10の動作の詳細については、図4及び図5を用いて後述する。
【0042】
尚、本実施形態において、負帰還光増幅器10が負帰還半導体光増幅器である場合について説明したが、光増幅器11として半導体光増幅器(SOA)を用いる代わりに、エルビウムドープファイバー増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)を用いてもよい。即ち、負帰還光増幅器10は、光増幅器11であるEDFAの光ファイバの端面に上述の第2反射部材19が蒸着やコーティングにより形成されていてもよい。
【0043】
(第1反射部材18)
上記の負帰還光増幅器10の第2反射部材19は、図1に示すように、光循環系20の光ファイバ53を介して第1反射部材18に対向されている。これにより、光循環系20は、光を第1反射部材18と第2反射部材19とで往復移動させるようになっている。第1反射部材18は、光ファイバ53の一端部の端面に配置されており、光の全部を入力方向とは逆方向に反射するように形成されている。
【0044】
尚、第1反射部材18は、光ファイバ53に形成されたファイバグレーティングであってもよい。例えば、ファイバグレーティングは、中心波長が1550nm、反射率が99.99%(40dB)に設定されている。この理由は、製造上作れる限界が99.99%であるからであるが、この反射率以上のファイバグレーティングであれば、さらに好ましい。
【0045】
第1反射部材18は、光ファイバプローブ5の一部の構成とされている。これにより、第1反射部材18は、光ファイバプローブ5のセット作業と同時に光循環系20へのセット作業が完了するようにされている。尚、第1反射部材18は、光ファイバプローブ5とは別に、光ファイバ53の端面に蒸着やコーティングにより形成されていてもよいし、反射鏡が密接されていてもよい。
【0046】
(光ファイバプローブ5)
上記の第1反射部材18を備えた光ファイバプローブ5は、図6に示すように、測定対象物4に挿入されるプローブ本体51を備えている。プローブ本体51は、光ファイバ53により形成されている。光ファイバ53は、内周側のコア531と外周側のクラッド532とを有している。尚、光ファイバ53は、必要に応じてクラッド532に被覆した図示しない被覆部材を、後述のプローブ部54以外の部分に有していてもよい。また、プローブ本体51は、幅方向に支持する鞘部材に装着及び抜脱可能にされていてもよい。
【0047】
プローブ本体51は、光ファイバ53の他端を含み、この他端から測定対象物4に挿入されるプローブ部54を有している。プローブ部54は、光ファイバ53の先端面に第1反射部材18が形成されていると共に、第1反射部材18に接近した中部位置に導入部17が形成されている。プローブ部54は、第1反射部材18と導入部17とが接近した状態で一体化されることによって、測定対象物4に差し込む等の導入作業を容易に行うことを可能にしている。導入部17は、測定対象物4を光路中に位置させることによって、光の強度を測定対象物4の光吸収物質により減衰させるように構成されている。尚、『光吸収物質』は、光を吸収する性質を有した気体や液体である。
【0048】
導入部17は、少なくともクラッド532の一部を除去、即ち、クラッド532の一部だけを除去したり、クラッド532とコア531との一部、クラッド532の一部とコア531の全部とを除去することにより除去面が外部に露出状態にされている。具体的には、導入部17は、コア531と、コア531を中心として両側に位置したクラッド532とを直径5μmの丸穴で貫通する貫通穴により形成されている。
【0049】
尚、導入部17は、コア531と、コア531の一方側のクラッド532を直径5μmの丸穴で貫通し、コア531の他方側のクラッド532の途中を穴底とする凹状穴により形成されていてもよい。また、貫通穴や凹状穴は、複数個が光ファイバプローブ5の長手方向に沿って直線状や並列状に配置されていてもよい。また、クラッド532の一部だけを除去する導入部17としては、テーパー形状等の構成を例示することができる。
【0050】
貫通穴や凹状穴等の導入部17は、光ファイバ53を切削したり、穴空け加工することにより形成されている。貫通穴や凹状穴の形成方法としては、レーザー光により光ファイバ53を掘穿する方法が例示される。この形成方法は、図7に示すように、加工光学装置300により実施される。加工光学装置300は、YAGレーザーをレーザー光として出力する波長が266nmである高調波YAGレーザー発振器301と、レーザー光の光路上に配置され、レーザー光を所定の方向に反射するミラー302a・302bと、加工対象となる光ファイバ53を保持するファイバホルダ305と、光ファイバ53を3次元方向に位置決めするXYZステージ306と、XYZステージ306の上方に配置された筐体309とを有している。
【0051】
上記の筐体309の内部には、ミラー302bからのレーザー光を光ファイバ53方向に反射するダイクロイックミラー303と、レーザー光を集光する対物レンズ304と、光ファイバ53を撮像するCCDカメラ307と、光ファイバ53を照明する照明装置308とが設けられている。
【0052】
これにより、加工光学装置300は、高調波YAGレーザー発振器301からレーザー光を出力させる処理と、レーザー光をミラー302a・302bにより筐体309内に導入させる処理と、レーザー光を筐体309内のダイクロイックミラー303により90°の角度で対物レンズ304方向に反射させる処理と、レーザー光を対物レンズ304により集光させる処理と、レーザー光の集光点をファイバホルダ305に保持されるファイバ1の掘穿箇所に一致するように調整する処理とを実行することによって、光ファイバ53に貫通穴や凹状穴等の導入部17を形成するようになっている。
【0053】
また、テーパー形状等の導入部17は、光ファイバ53をバーナー等の熱源を用いて溶融延伸することにより形成することができる。具体的には、溶融延伸部分の最小の径が光ファイバ53の元の径の80%(例えば125μm×0.8=100μm)程度の箇所で溶融延伸を停止することによって、光ファイバプローブ5として使用することができる。
【0054】
(キャビティリングダウン分光装置1の概要)
以上のように、キャビティリングダウン分光装置1は、図1に示すように、所定波長の光を出力する光出力部12と、光出力部12から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系20と、光循環系20を循環する光の光強度を検出する光強度検出部21と、光循環系20内に設けられ、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光ノイズ強度を低減させる負帰還光増幅器10とを有した構成にされている。
【0055】
そして、このように構成されたキャビティリングダウン分光装置1は、測定対象物を配置可能にされた光循環系20に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出する際に、光循環系20内に配置された負帰還光増幅器10により、光循環系20を進行する光を増幅すると共に、光ノイズ強度を低減させるキャビティリングダウン分光方法を実行するようになっている。
【0056】
より詳細には、キャビティリングダウン分光装置1は、測定対象物を配置可能にされた光循環系20に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出する際に、測定対象物の配置位置を挟んだ光循環系20の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、光循環系20の他端部において、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、この入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、この出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、光循環系20の他端側に出力させ、光循環系20の他端側に出力された出力光と周囲光とを光循環系20の一端側に反射させるキャビティリングダウン分光方法を実行するようになっている。
【0057】
上記の構成や方法によれば、光出力部12から出力された光が光循環系20において循環すると、光が測定対象物を透過や通過するときに、測定対象物により光強度が減衰される。そして、光の循環により測定対象物に対する光の通過や透過が繰り返されることによって、測定対象物による光強度の減衰された光強度の変化を伴う光が形成される。
【0058】
この際、光循環系20内に設けられた負帰還光増幅器10は、光循環系20を進行する光の光強度を増幅させている。従って、光強度が負帰還光増幅器10により増幅されていない場合と比較して、光強度が光強度検出部21の検出限界に減衰されるまでの期間、即ち、測定対象物に対する光の通過や透過の繰り返し回数を増大させることができる。この結果、多くのリングダウンパルスを得ることが可能になる。
【0059】
さらに、負帰還光増幅器10は、光循環系20を進行する光ノイズ強度を低減させている。即ち、負帰還光増幅器10は、リングダウンパルスを得る際のノイズ成分を低減する役割を果たしている。従って、負帰還光増幅器10によりノイズ成分が低減されていない場合と比較して、光強度が大きく減衰された場合であっても、ノイズ成分に影響され難い状態にすることができる。これにより、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になっている。
【0060】
また、光循環系20は、少なくとも測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材18を配置すると共に、他端部において負帰還光増幅器10を配置しており、負帰還光増幅器10は、図2にも示すように、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、光増幅器よりも光循環系20の他端側に配置され、光増幅器から出力された出力光と周囲光とを光増幅器に反射する第2反射部材19とを有した構成にされている。
【0061】
上記の構成によれば、光循環系20を光の往復する線状に形成することができると共に、第1反射部材18が設けられた光循環系20の一端部を自由端にすることができるため、光循環系20や測定対象物をセットするときの作業性を向上させることができる。
【0062】
また、光循環系20は、一端部が光ファイバプローブ5により形成されており、図6に示すように、光ファイバプローブ5は、コア531とクラッド532とを備え、一端側から光が導入される光ファイバ53と、光ファイバ53の他端をプローブ先端として含み、プローブ先端から測定対象物に挿入されるプローブ部54と、プローブ部54に形成され、少なくともクラッド532内部に測定対象物を導入する導入部17と、プローブ先端に設けられ、導入部17よりもプローブ先端側に配置された第1反射部材18とを有した構成にされている。
【0063】
上記の構成によれば、光循環系20の一端部に設けられた光ファイバプローブ5を測定対象物に差し込むだけで、測定対象物のセット作業及び光循環系20のセット作業が完了するため、セット時における作業性を一層向上させることができる。
【0064】
(変形例)
尚、本実施形態においては、負帰還光増幅器10を光循環系20の一端部に備えた場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、光循環系20の両端部に負帰還光増幅器10を備えた構成にされていてもよい。或いは、負帰還光増幅器10は、光循環系20の他端部に配置されていてもよい。換言すれば、キャビティリングダウン分光装置1は、負帰還光増幅器10を光循環系20の一端部及び他端部の少なくとも一方に備え、この負帰還光増幅器10の対向側において負帰還光増幅器10又は第1反射部材18を備えていてもよい。
【0065】
上記の構成によれば、光循環系20の両端部に負帰還光増幅器10が配置された場合、光循環系20の両端部で光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、一層多くのリングダウンパルスを高精度に得ることが可能になる。
【0066】
また、本実施形態においては、光循環系20が線状に形成された場合について説明しているが、これに限定されるものでもない。即ち、図9に示すように、光循環系20は、光を一方向に進行させる環状に形成されていてもよい。そして、光循環系20の各負帰還光増幅器10は、光循環系20を循環する光が入力光として入力された場合、入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、出力光とは異なる周囲波長であって出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する後述する光増幅器11と、光増幅器11から出力された周囲光を、出力光から分離し、光増幅器11に帰還及び入力させる光帰還手段とを有した構成にされていてもよい。
【0067】
具体的には、図10に示すように、上記の光帰還手段は、光増幅器11の出力側に配置された波長選択素子61を有している。波長選択素子61は、光増幅器11からの出力光中の例えば1550nmの所定波長の出力信号光とそれ以外の波長に周囲光とを分離するためのものであり、所定の波長の全部または1部の光を反射させるものである。この波長選択素子61は、例えば前記所定の波長、例えば1545〜1555nmの光を透過させるが、それ以外の波長の全部の光を反射させて光ファイバから成る帰還光路63へ出力する光アド・ドロップフィルタから構成されてもよいが、屈折率が異なる一対の層が多数組積層された多層膜フィルタ、或いは光伝播方向において屈折率が周期的に変化させられたグレーティングフィルタ、フォトニッククリスタルフィルタのいずれかから構成されてもよい。
【0068】
光カプラ62は、入力信号光を光増幅器11へ入力させるための信号光入力手段として機能するものであり、図示しないレーザー光源からのレーザー光が変調されて信号伝送路から搬送される所定波長の入力信号光を光増幅器11に入力させる。光カプラ62は、例えば、光ファイバにより構成された結合器或いは分波器、或いはハーフミラーによって構成される。光カプラ62は、所定波長の入力信号光を波長選択的に反射させ且つそれ以外の波長の光を透過させる光アド・ドロップフィルタに置き換えてもよい。また、波長選択素子61、光増幅器11、光カプラ62の相互間の光の伝送路は、例えば、光を厚み方向に閉じ込めつつ伝送する光導波路、或いは光を径方向に閉じ込めつつ伝送する光ファイバ等により構成される。
【0069】
上記の構成によれば、光循環系20が環状に形成された構成であっても、負帰還光増幅器10が配置されることによって、光循環系20の光強度の増幅を行うことが可能であると共に、ノイズ成分を低減することが可能であるため、多くのリングダウンパルスを高精度に得ることができる。
【0070】
(吸光分析装置200)
次に、キャビティリングダウン分光装置1を備えた吸光分析装置200について図11及び図12に基づいて説明する。尚、以下の吸光分析装置200の説明においては、トマト等の植物を測定対象物4として説明しているが、これに限定されるものではない。
【0071】
図11に示すように、吸光分析装置200は、測定対象物4の状態をキャビティリングダウン分光法によりリアルタイムで高精度に求めるように構成されている。尚、測定対象物4が植物の測定以外の用途に使用される場合には、後述の記憶部211のデータテーブルにおける状態データの内容を変更することによって、植物以外に適用される吸光分析装置となる。
【0072】
吸光分析装置200は、測定対象物4である植物に挿入される一つ以上の光ファイバプローブ5と、各光ファイバプローブ5に対してレーザー光を入出力させ、各光ファイバプローブ5からの反射光に基づいて複数の測定対象物4の状態を監視可能な監視装置本体201とを有している。光ファイバプローブ5は、最低一つあればよく、監視装置本体201が光ファイバセレクタ203を備えることによって、複数の光ファイバプローブを使用することができる。
【0073】
光ファイバプローブ5は、監視装置本体201に接続されている。監視装置本体201は、各光ファイバプローブ5の一端に接続された光ファイバセレクタ203と、光ファイバセレクタ203の単数の共通端子203bに接続された光カプラ204とを有している。尚、光カプラ204は光サーキュレータであってもよい。光ファイバセレクタ203は、複数の入出力端子203aと、単数の共通端子203bと、選択端子203cとを有していると共に、各入出力端子203a及び共通端子203b間の接続状態(チャンネル)を選択端子203cに入力された選択データにより切り替える図示しない切替部とを有している。
【0074】
光ファイバセレクタ203の共通端子203bには、光カプラ204の共通端子204aが接続されている。光カプラ204は、共通端子204aと、共通端子204aに接続された出力端子204b、入力端子204c、及び入出力端子204dを有している。光カプラ204の入力端子204cには、パルス状のレーザー光を出力可能なレーザー光出力装置205が接続されている。レーザー光出力装置205は、例えば、光出力部素子がInGaAsPのファブリペロー型レーザーダイオードであり、中心波長が1550nm、スペクトル範囲が1530〜1560nm、平均出力が100μW(パルス幅500ns、繰返周波数5kHz)、ピーク出力が40mWのものが使用される。一方、光カプラ204の出力端子204bには、光強度検出部209が接続されている。
【0075】
また、光ファイバセレクタ203の選択端子203cには、選択データを出力する選択部206が接続されている。選択部206は、コントローラ207からの選択指令に基づいて定期的に測定対象を切り替えるように、各光ファイバプローブ5を特定する選択データを切替出力するようになっている。例えば、各光ファイバプローブ5に固有の識別番号が設定されていれば、この識別番号に対応した選択データを切替出力するようになっている。これにより、光ファイバセレクタ203は、光カプラ204を介して入力されたパルス状のレーザー光を各光ファイバプローブ5に順番に出力し、光ファイバプローブ5からの反射光を光カプラ204を介して光強度検出部209に順番に出力することが可能になっている。
【0076】
また、光ファイバセレクタ203の入出力端子204dには、負帰還光増幅器10が接続されている。そして、負帰還光増幅器10と光カプラ204と光ファイバセレクタ203と光ファイバプローブ5とが光循環系20を構成している。
【0077】
光強度検出部209は、出力光の光強度を測定し、アナログ形態の光強度信号として出力するようになっている。光強度検出部209は、例えば、検出素子がInGaAs APD(アバランシェフォトダイオード)であり、検出波長が1000〜1600nmのものが使用される。光強度検出部209は、吸収係数算出部210に接続されている。吸収係数算出部210は、アナログ形態の光強度信号をデジタル形態の光強度データに変換する機能と、光強度データを用いたキャビティリングダウン分光法による処理として吸収係数を算出する機能とを有している。これにより、光強度検出部209及び吸収係数算出部210は、出力光をキャビティリングダウン分光法により処理する測定装置としての機能を備えている。尚、光強度検出部209及び吸収係数算出部210は、オシロスコープにより少なくとも一部の機能を実現することができる。
【0078】
ここで、キャビティリングダウン分光法について概略すると、2枚の高反射率ミラーで構成された光学キャビティの片側のミラー外部から、パルス化されたレーザー光を注入し、キャビティ内に進入した光を片側のミラーにおいて僅かに外部に漏洩させながら反射させる。反射光は、ミラー間で何度も反射及び漏洩が繰り返され、反射の回数を重ねる毎に、指数的に光強度を減少させる。そして、光学キャビティ内に光損失を起こす分子等の光吸収物質が存在すれば、光強度減衰率が増加することを利用し、レーザー光をキャビティ中で何度も往復させ、長い実効光路長を得ることによって、光強減衰率を高精度に算出することにより光吸収物質の状態を求める。
【0079】
吸収係数算出部210は、キャビティリングダウン分光法による処理結果である光強度減衰率を吸収係数データとして記憶部211に出力する。記憶部211は、ハードディスク等の大容量の記憶装置からなっており、管理テーブルと測定対象物同定テーブルとをデータテーブルとして有している。管理テーブルは、光ファイバプローブ5の識別番号と、各識別番号に対応付けられた光強度、吸収係数及び測定日時とを測定対象物4である植物の状態データとして有している。
【0080】
これにより、管理テーブルは、測定日時に基づいた各光ファイバプローブ5がセットされた測定対象物4の光強度及び吸収係数などが保存され、経時変化を求めるデータベース等に用いることが可能になっている。また、測定対象物同定テーブルは、測定対象物4の状態と、各状態に応じた吸収係数とを測定対象物の種類毎に記憶している。これにより、測定対象物同定テーブルは、各種の測定対象物4である植物の状態を吸収係数に基づいて同定するデータベースとして用いることが可能になっている。
【0081】
上記の記憶部211は、コントローラ207によりアクセス可能にされている。コントローラ207は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置からなり、キャビティリングダウン分光法による処理結果を測定対象物4の状態データとして情報処理する機能を有するように、少なくとも図12の監視制御ルーチンを実行可能にされている。尚、コントローラ207は、処理能力に余力があれば、吸収係数算出部210における吸収係数の算出処理に用いられてもよい。
【0082】
コントローラ207は、上述のレーザー光出力装置205と、選択部206と、吸収係数算出部210とに接続されていると共に、キーボードやマウス等の操作部212と、液晶表示装置等の表示部213とに接続されている。コントローラ207は、レーザー光出力装置205に対して出力開始や出力停止の出力指令信号を出力すると共に、レーザー光の出力状態(パルス幅や光強度等)を設定する設定指令信号を出力する機能と、選択部206に対して切替間隔や選択対象となる識別番号の設定指令信号を出力する機能と、吸収係数算出部210に対して測定対象物の種類に応じた演算情報を出力する機能とを有している。
【0083】
さらに、コントローラ207は、操作部212からの操作データを受け付ける機能と、操作データに基づいて各種の処理を実行する機能と、表示部213に対して操作の内容を表示させる機能と、表示部213に対して記憶部211に記憶された各種のデータをグラフや数値により表示させる機能と、吸収係数に基づいて測定対象物の状態を画像や数値で表示する機能とを有している。
【0084】
(吸光分析装置200の動作)
監視装置本体201の作動が開始されると、図12の監視制御ルーチンが実行され、先ず、操作部212のキー操作等による操作データの入力が受け付けられる(S1)。続いて、受け付けた操作データが測定感度の調整であるか否かが判定される(S2)。測定感度の調整である場合には(S2,YES)、調整内容に応じた測定感度調整処理が実行され、例えば、レーザー光出力装置205に対してレーザー光の出力状態(パルス幅や光強度等)が設定されたり、吸収係数算出部210に対して測定対象物4の種類に応じた演算情報が出力される(S3)。この後、S1から再実行される。
【0085】
一方、測定感度の調整でない場合には(S2,NO)、続いて、操作データが表示の切り替えであるか否かが判定される(S4)。表示の切り替えである場合には(S4,YES)、表示切替処理が実行され、例えば、記憶部211に記憶された吸収係数の表示や測定対象物4の状態の表示等が行われる(S5)。この後、S1から再実行される。
【0086】
一方、表示の切り替えでない場合には(S4,NO)、続いて、操作データが測定の開始であるか否かが判定される(S6)。測定の開始でない場合には(S6,NO)、S1から再実行される。測定の開始である場合には(S6,YES)、キャビティリングダウン分光法による測定が開始される。
【0087】
具体的には、レーザー光出力装置205からパルス状のレーザー光が出力される(S7)。そして、所定の切り替えタイミングで光ファイバセレクタ203におけるチャンネルの切り替えが行われる。これにより、各光ファイバプローブ5に対して順番にレーザー光が出力されることになる(S8)。尚、チャンネルの切り替え後にレーザー光の出力が行われてもよい。
【0088】
ここで、図6に示すように、光ファイバプローブ5にレーザー光が導入されると、レーザー光は、コア531内をプローブ部54方向に向かって進行する。そして、プローブ部54に到達したレーザー光は、導入部17を通過してプローブ先端に配置された第1反射部材18で反射光として反射される。反射光は、図11に示すように、導入部17を通過した後、光ファイバセレクタ203、光カプラ204、及び負帰還光増幅器10に進行し、負帰還光増幅器10において増幅されると共に、ノイズ光が低減される。
【0089】
詳細に説明すると、負帰還光増幅器10は、図4に示すように、所定波長の入力信号光が入射されると、所定波長の出力信号光と、その所定波長とは異なる周囲波長の周囲光(自然放出光)とを含む光を出力する。このような入力信号光と出力信号光と周囲光(自然放出光)とは、図5に示す光強度の関係を有している。即ち、出力信号光と周囲光とは強度について位相が反転されている。これにより、負帰還光増幅器10は、出力信号光と周囲光とを含む光が光増幅器11から出力された後、第2反射部材19により光増幅器11に反射されると、周囲光は光増幅器の利得を変調する。この変調された利得の中を入力信号光が進行すると基線の上昇を抑制し、ノイズが低減された状態となる。
【0090】
この結果、エレクトロニクスで言うところの負帰還作用と同様の作用により、所定波長の入力信号光に対する非線形歪みが低減された出力信号光が出力される。従って、光信号のみによる負帰還増幅的な作用が得られるので、出力信号光のゲイン(利得)、波形、基線が広範な周波数範囲において安定し、低ノイズ化が可能となる。
【0091】
図11に示すように、負帰還光増幅器10と光ファイバプローブ5とを含む光循環系20をレーザー光が往復(循環)する。そして、導入部17に存在する測定対象物4の光吸収物質により光強度が減衰されながら、光カプラ204において一部が光強度検出部209に漏洩される。漏洩したレーザー光が光強度検出部209で受光され、光強度信号とされる。光強度信号は、吸収係数算出部210において、デジタル形態の光強度データに変換された後、キャビティリングダウン分光法により吸収係数が算出される。そして、この吸収係数が記憶部211の管理テーブルに測定日時等と共に記憶されることによって、測定データ(測定対象物4の状態データ)として取得されることになる(S9)。
【0092】
次に、測定が終了したか否かが判定され(S10)、測定が終了していない場合には(S10,NO)、S7から再実行されることによって、キャビティリングダウン分光法による測定データの取得が繰り返される。一方、測定の終了である場合には(S10,YES)、レーザー光の出力が停止され(S11)、測定データの取得が停止された後(S12)、S1から再実行される。
【0093】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。
【実施例】
【0094】
本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1(実施例1)の増幅状態を測定すると共に、比較例として、半導体光増幅器(SOA)だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例1)の増幅度を測定した。
【0095】
(実施例1・比較例1)
先ず、図13に示す構成を、下記の部材を用いて組み上げた。即ち、光出力部12として半導体レーザー(Anritsu GB5AO16)、減衰器171としてANDO製 AQ−3105A)、光分岐結合器13としてサーキュレータ(FDK製 YC−1100−ZJ1−155)、負帰還光増幅器10としてRSOA(kamelian製 10−TO−C−FA39−07−0301279897)、波長フィルタ14としてU−CONN製 Add drop filter 1551nm、光強度検出部15としてディテクター受光センサ(Newport製 IR DC−125MHz Low Noise Photoreceiver 1811)、オシロスコープ16としてHEWLETT PACKARD製 infinium Oscilloscope 500MHz 2GSa/sを用いた。
【0096】
そして、半導体レーザーでパルス信号を作りそれを減衰器でディテクター変換電圧100mVに調整し、波形増幅の状態を測定した。この測定結果を図14に示す。
【0097】
次に、図15に示す構成、即ち、図13の構成において、光分岐結合器13と負帰還光増幅器10との代わりに、光増幅器11(SOA:InPhenix製 IPSAI1501)を用いた構成を組み上げた。そして、同一条件で、パルス信号を作りそれを減衰器171でディテクター返還電圧100mVに調整し、波形増幅の状態を測定した。この測定結果を図16に示す。
【0098】
(実施例2・比較例2・3・4)
次に、本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1(実施例2)のリングダウンパルスを測定すると共に、比較例として、増幅器を備えないキャビティリングダウン分光装置(比較例2)と、半導体光増幅器(SOA)だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例3)と、EDFAの光増幅器だけを備えたキャビティリングダウン分光装置(比較例4)とのリングダウンパルスを測定した。
【0099】
実施例2の負帰還半導体光増幅器(RSOA)は、光ファイバプローブ5を除いて図1に示す構成とした。各部材の機器として下記の部材を用いた。即ち、光分岐結合器13として9:1カプラ(タツタ電線製)を用いた。その他の各部材の機器は、実施例1と同一のものを用いた。また、比較例2・3・4においても、実施例2と同一部材には同一の機器を用いた。そして、パルス信号を循環させることによって、リングダウンパルスをそれぞれ測定した。この測定結果を図17〜図20に示す。
【0100】
(実施例3・4)
次に、本実施形態の負帰還光増幅器10として負帰還半導体光増幅器(RSOA)を備えたキャビティリングダウン分光装置1を図1に示す構成で組み上げ、測定対象物として空気と水とを用いた場合のリングダウンパルスをそれぞれ測定した(実施例3・4)。尚、機器は、実施例1と同一のものを用いた。また、図21に示すように、導入部17は、一対の光ファイバ23・23の端面をフェルール25により所定間隔を隔てて対向させることにより形成した。測定結果を図22及び図23に示す。
【0101】
(実施例1と比較例1の測定結果の検討)
図14及び図16に示した測定結果によると、RSOA及びSOAの何れを増幅実験回路に用いた場合であっても、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が2500mV程度のように、ほぼ同一であるのに対し、ベース電圧がRSOAとSOAとで異なっている。即ち、RSOAのベース電圧が100mV程度である一方、SOAのベース電圧が250mV程度となっている。従って、RSOAを用いた場合は、ピーク電圧を維持しつつ、SOAを用いた場合よりもベース電圧を2倍以上低減できることが判明した。この結果、RSOAを用いた場合は、ベース電圧がリングダウンパルスのノイズとして作用し難くできることが判明した。
【0102】
(実施例2・比較例2・3・4の測定結果の検討)
図17の測定結果によると、実施例2は、リングダウンパルスとなるピーク電圧が多数検出されると共に、これらのピーク電圧が指数関数的に減衰している。即ち、実施例2のRSOAを用いたCRDSは、RSOAの負帰還効果によって発振現象を抑制した増幅が得られることにより、忠実な波形増幅が可能であることが分かった。これは、上述の図14及び図16に示した信号増幅波形において、実施例1のRSOAについてはベースライン信号増幅が比較例1よりも抑制されていることからも認められる。また、負帰還増幅効果は増幅器内部で発生する雑音を抑制し、非線形歪みを低減することができると考えられる。
【0103】
これに対し、図18の増幅しない比較例2は、光増幅されていないので初期段階のピーク電圧が小さいものであることが確認された。さらに、検出可能なピーク電圧の個数も実施例1よりも少ないことが確認された。
【0104】
また、図19及び図20の測定結果によると、キャビティリングダウン分光法(CRDS)においてSOA(比較例3)やEDFA(比較例3)は、増幅波形が指数関数による減衰とはならないことが確認された。また、SOAを用いた場合、波形のベースライン(基線)が上昇している。この原因は、CRDSループ回路が正帰還増幅回路となって発振現象が生じるからであると推測される。尚、測定においては、CRDSループ回路自体は時間的に信号が重ならないよう十分なループ長を取ることにより信号光による発振現象を生じないように配慮した。しかし、ループ回路内で増幅を繰り返すことにより発振現象を引き起こしCRDS波形が振動を持った波形の上に存在することにより波形が変形するものと考えられる。
【0105】
このことから、RSOAを用いたCRDSは、指数関数に近似した減衰波形が得られるため、吸収係数の精度が上がり、結果的に測定対象物の検出精度及び同定精度が向上することが確認された。
【0106】
また、負帰還光増幅器の光増幅器11として、SOAを用いた場合と、EDFAを用いた場合とを比較すると、図19及び図20に示すようにほぼ同程度のリングダウンパルスが検出されていると共に、EDFAが増幅波長帯域に制限があることから、負帰還光増幅器の光増幅器11としてSOAを用いた方が、EDFAを用いるよりも、幅広い波長帯域をカバーできる点で有利であると考えられる。
【0107】
(実施例3・4の測定結果の検討)
図22の測定結果によると、測定対象物が空気である実施例3は、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が250mVであり、以後に連続して検出されるピーク電圧が指数関数的に減衰し、合計9個のピーク電圧を検出することが可能であることが確認された。
【0108】
また、図23の測定結果によると、測定対象物が水である実施例4は、リングダウンパルスとなるピーク電圧の初期値が290mVであり、以後に連続して検出されるピーク電圧が指数関数的に減衰し、合計18個のピーク電圧を検出することが可能であることが確認された。
【0109】
これにより、RSOAを用いたキャビティリングダウン分光装置によれば、空気及び水の何れの測定対象物においても、多くのリングダウンパルスを理論通りの波形で得ることができることが判明した。この結果、測定対象物が空気と水とで相違すると、リングダウンパルスの波形が明確に相違することから、相違する各種の測定対象物に対応したリングダウンパルスの波形を高精度に得られることができ、結果として測定対象物の同定を高精度に行うことが可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0110】
1 キャビティリングダウン分光装置
4 測定対象物
5 光ファイバプローブ
11 光増幅器
12 光出力部
13 光分岐結合器
14 波長フィルタ
15 光強度検出部
16 オシロスコープ
17 導入部
18 第1反射部材
19 第2反射部材
20 光循環系
21 光強度検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の光を出力する光出力部と、
前記光出力部から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系と、
前記光循環系を循環する前記光の光強度を検出する光強度検出部と、
前記光循環系内に設けられ、該光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生したノイズの光強度を低減させる負帰還光増幅器と
を有することを特徴とするキャビティリングダウン分光装置。
【請求項2】
前記光循環系は、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、前記光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材を配置すると共に、他端部において前記負帰還光増幅器を配置しており、
前記負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器よりも前記光循環系の他端側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項3】
前記光循環系は、
前記一端部が光ファイバプローブにより形成されており、
前記光ファイバプローブは、
コアとクラッドとを備え、一端側から前記光が導入される光ファイバと、
前記光ファイバの他端をプローブ先端として含み、該プローブ先端から前記測定対象物に挿入されるプローブ部と、
前記プローブ部に形成され、少なくとも前記クラッド内部に前記測定対象物を導入する導入部と、
前記プローブ先端に設けられ、前記導入部よりも前記プローブ先端側に配置された前記第1反射部材と
を有することを特徴とする請求項2に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項4】
前記光循環系は、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ両端部において、前記負帰還光増幅器をそれぞれ配置しており、
前記各負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器よりも前記光循環系の端部側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していることを特徴とする請求項2に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項5】
前記光循環系は、前記光を一方向に進行させる環状に形成されており、
前記各負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器から出力された前記周囲光を、前記出力光から分離し、前記光増幅器に帰還及び入力させる光帰還手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項6】
前記負帰還光増幅器は、負帰還半導体光増幅器であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のキャビティリングダウン分光装置を備えたことを特徴とする吸光分析装置。
【請求項8】
測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記光循環系内に配置された負帰還光増幅器により、前記光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生したノイズの光強度を低減させることを特徴とするキャビティリングダウン分光方法。
【請求項9】
測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ前記光循環系の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、
前記光循環系の他端部において、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、前記光循環系の他端側に出力させ、
前記光循環系の他端側に出力された前記出力光と周囲光とを該光循環系の一端側に反射させることを特徴とするキャビティリングダウン分光方法。
【請求項1】
所定波長の光を出力する光出力部と、
前記光出力部から出力された光を循環させ、光路中に測定対象物を配置可能にされた光循環系と、
前記光循環系を循環する前記光の光強度を検出する光強度検出部と、
前記光循環系内に設けられ、該光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生したノイズの光強度を低減させる負帰還光増幅器と
を有することを特徴とするキャビティリングダウン分光装置。
【請求項2】
前記光循環系は、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ一端部において、前記光の全部を入力方向とは逆方向に反射する第1反射部材を配置すると共に、他端部において前記負帰還光増幅器を配置しており、
前記負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器よりも前記光循環系の他端側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していることを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項3】
前記光循環系は、
前記一端部が光ファイバプローブにより形成されており、
前記光ファイバプローブは、
コアとクラッドとを備え、一端側から前記光が導入される光ファイバと、
前記光ファイバの他端をプローブ先端として含み、該プローブ先端から前記測定対象物に挿入されるプローブ部と、
前記プローブ部に形成され、少なくとも前記クラッド内部に前記測定対象物を導入する導入部と、
前記プローブ先端に設けられ、前記導入部よりも前記プローブ先端側に配置された前記第1反射部材と
を有することを特徴とする請求項2に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項4】
前記光循環系は、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ両端部において、前記負帰還光増幅器をそれぞれ配置しており、
前記各負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器よりも前記光循環系の端部側に配置され、前記光増幅器から出力された出力光と周囲光とを該光増幅器に反射する第2反射部材とを有していることを特徴とする請求項2に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項5】
前記光循環系は、前記光を一方向に進行させる環状に形成されており、
前記各負帰還光増幅器は、
前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを出力する光増幅器と、
前記光増幅器から出力された前記周囲光を、前記出力光から分離し、前記光増幅器に帰還及び入力させる光帰還手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項6】
前記負帰還光増幅器は、負帰還半導体光増幅器であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のキャビティリングダウン分光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のキャビティリングダウン分光装置を備えたことを特徴とする吸光分析装置。
【請求項8】
測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記光循環系内に配置された負帰還光増幅器により、前記光循環系を進行する光を増幅すると共に、該光循環系内で発生したノイズの光強度を低減させることを特徴とするキャビティリングダウン分光方法。
【請求項9】
測定対象物を配置可能にされた光循環系に、所定波長の光を循環させながら光強度を検出するキャビティリングダウン分光方法であって、
前記測定対象物の配置位置を挟んだ前記光循環系の一端部において、光の全部を入力方向とは逆方向に反射させ、
前記光循環系の他端部において、前記光循環系を循環する光が入力光として入力された場合、該入力光と同じ所定波長であって同じ位相の強度を有する出力光と、該出力光とは異なる周囲波長であって該出力光とは反転した位相で強度変化する周囲光とを、前記光循環系の他端側に出力させ、
前記光循環系の他端側に出力された前記出力光と周囲光とを該光循環系の一端側に反射させることを特徴とするキャビティリングダウン分光方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図21】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−163767(P2011−163767A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23020(P2010−23020)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【出願人】(000108742)タツタ電線株式会社 (76)
【Fターム(参考)】
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