説明

キャリアプレート

【課題】コンデンサーや抵抗器等のチップ部品の両端に例えば銀やパラジウム等のコーティングを施して接点を形成する際に同チップ部品を整列支持するために用いるキャリアプレートにおいて、極小のチップ部品を支持する場合の摩擦帯電による電気的付着を回避し、作業性の優れたキャリアプレートを提供する。
【解決手段】金属製の矩形プレート体1に形成された多数の貫通通路4の内壁面にシリコーンゴムからなる弾性部材2で弾性壁を設け、その中心の貫通孔5にコンデンサーや抵抗器等のチップ部品を挿入して支持する構造のキャリアプレートにおいて、弾性部材2として、制電剤を添加したシリコーンゴムを使用する。この場合、制電剤には、リチウム塩とアジピン酸の混合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサーや抵抗器等のチップ部品の両端に、例えば、銀やパラジウム等のコーティングを施して接点を形成する際に同チップ部品を整列支持するために用いるキャリアプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンデンサーや抵抗器等のチップ部品の両端に、接点を形成する際に同チップ部品を整列支持するキャリアプレートは、金属製の矩形プレート体の厚さ方向に貫通する多数の貫通通路を、プレート体の平面に並列させて貫通形成し、これらの各通路の内壁面に弾性部材をもって弾性壁を形成することにより構成されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなキャリアプレートとしては、アルミニウムなどからなるプレート体と弾性壁を形成する弾性部材からなり、弾性部材としてはシリコーンゴムが多用されている。
【0004】
従来、キャリアプレートの製造は、外周フレームと一体形成したプレート体の孔に金型に配置した通孔形成ピンを挿通して設置した後、低粘度の室温硬化型液状シリコーンゴムをプレート体の外側フレーム内に流延して室温にて硬化させるか、比較的低粘度の付加型シリコーンゴムをプレート体の外側フレーム内に流延し、150℃で30分程度加熱して成型したる後に、表面を研磨して形成していた(例えば、特許文献2および3)。
【0005】
従来のチップ部品の製造においては、セラミックコンデンサーやバリスター等のチップ部品に導電性ペーストをコーティングする際には、キャリアプレートにおける各通路の弾性壁の内径寸法よりも大きい外径寸法を有するチップ部品を先端が突出するまでキャリアプレートの貫通通路に押し込んで弾性的に把持させ、突出している先端に銀やパラジウムなどでつくられた導電性ペーストをコーティングした後、加熱硬化させることにより、接点を形成している(例えば、特許文献4および5)。
【0006】
この際、チップ部品の先端に所定の導電ペーストがコーティングされているかどうかを目視で検査する工程がある。通常、チップ部品の挿入時には、チップ部品の外寸より20%程度小さい貫通孔の内径寸法のキャリアプレートが適時使用される。すなわち、チップ外寸が1.6mm(対角線の寸法は2.26mm)の正方形断面のチップの場合には、キャリアプレートの孔径がφ1.9mmの孔にチップを押し込んで安定的に把持させ、チップ先端を0.1mm程度突出させる。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−11488号公報
【特許文献2】特公平3−76778号公報
【特許文献3】特開2004−17549号公報
【特許文献4】特公昭62−20685号公報
【特許文献5】特公昭62−29888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら近年、チップ部品の寸法が微小化する傾向にあり、極小のチップ部品である0402(0.4x0.2x0.2mm)では、チップ寸法が芥子粒のように小さいために、チップをキャリアプレートに挿入する際に摩擦帯電を生じ、キャリアプレート表面に大量に付着するため作業が極めて困難になるという不具合があった。かかるチップのキャリアプレートへの電気的な付着を回避するために、帯電防止剤の塗布や、フッ素樹脂のコーティングなどが試みられたが、十分な効果は得られなかった。
【0009】
シリコーンゴムはアセチレンブラックやケッチェンブラックのごとき導電性のカーボンブラックにより導電化でき、摩擦帯電を回避できるのであるが、カーボンブラックが使用された場合、ゴムの物理強度が低下して破壊しやすくなるとともに表面に粘着性が発生し、ゴミや埃などが付着し、極小チップに異物が混入するという不具合があった。
【0010】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、0402のような極小のチップ部品の摩擦帯電による付着を回避した極めて作業性の優れたキャリアプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために本発明は、金属製矩形プレート体の厚さ方向に貫通する多数の貫通通路を、プレート体の平面に並列させて貫通形成し、これらの各通路の内壁面にシリコーンゴムからなる弾性部材で弾性壁を形成することにより構成されているキャリアプレートにおいて、前記弾性部材として、制電剤を添加したシリコーンゴムを使用したことを特徴とするものである。ここで制電剤には、リチウム塩とアジピン酸の混合物を用いるとよい。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明のキャリアプレートは、摩擦帯電し難く、極小チップがプレートに付着しないために、極小チップを容易にキャリアプレートに装着することができ、作業性が向上する等の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、リチウム塩とアジピン酸の混合物からなる制電剤を添加したシリコーンゴムを使用することにより、チップ部品のキャリアプレートへの挿入の際に摩擦帯電が発生し難いことを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0015】
本発明で使用した制電性を添加したシリコーンゴムは、カーボンブラックなどの導電性付与剤を添加した導電性シリコーンゴムやポリエーテル化合物などの帯電防止剤を添加したシリコーンゴムとは異なり、シリコーンゴムの表面固有抵抗値として1014Ω/□以上でありながら、帯電性試験における半減期が数秒以下と極めて短いことを特徴とする。
【0016】
本発明でいう制電剤としては、例えば、サンコノール(三光化学工業株式会社製商品名)のようなリチウム塩とアジピン酸エステルの混合物を挙げることができる。
【0017】
制電剤の添加量はシリコーンゴム100重量部に対して0.005〜5重量部程度、好ましくは0.01〜0.05重量部、さらに好ましくは0.02〜0.05重量部添加させればよい。
【0018】
添加量が0.005重量部未満では帯電性試験における半減期を短縮できず、また添加部数が多くなると圧縮永久歪が悪くなるとともに、透明ゴムの場合は透明度が悪くなり二次加硫後の変色が大きくなり、ゴムのコストが高くになってしまうので好ましくない。
【0019】
図1は、本発明に係るキャリアプレートの斜視図であり、その一部を切断して示している。
【0020】
ここでキャリアプレートは、金属製の矩形プレート体1の厚さ方向に貫通する多数の貫通通路4を、プレート体1の平面に並列させて貫通形成し、これらの貫通通路4の内壁面にシリコーンゴムからなる弾性部材2で弾性壁を形成して構成されている。プレート体1の外側フレーム3の端部には位置決め孔6が形成されており、ここでキャリアプレートが位置決め固定される。そしてこのキャリアプレートでは、各貫通通路4における弾性部材2の中心の貫通孔5にコンデンサーや抵抗器等のチップ部品が挿入支持される。
【0021】
プレート体1の材質は限定されるものではないが、耐熱、価格、重量、強度などの観点からアルミニウムで形成されるのが一般的である。アルミニウムとしては、2000系合金、5000系合金、6000系合金、7000系合金などの展伸材が例示されるが、強度が高い7075や7050、7N01などの7000系合金が望ましい。また、アルミニウム合金は熱処理などの調質操作により、機械的性質が変化するので、より強度が強くなる処理を施すのが望ましく、7000系合金においては、質別としてT6、T651、T6511、T7651などが好ましく、焼きなまし処理は強度が低くなるので好ましくない。
【0022】
弾性部材2には、過酸化物加硫型シリコーンゴムもしくは、ビニル基含有のポリオルガノシロキサンとハイドロジエンポリシロキサンからなる付加型シリコーンゴムが使用されている。
【0023】
なお、シリコーンゴムのゴム硬度は機能面から設計されるもので通常25〜70度(Shore A)程度の間で任意に決定される。
【0024】
実験に用いた付加型シリコーンゴムの配合と検査結果を表1に示す。
【0025】
まず、付加型液状シリコーンゴムとしてKEG2000-50A/B(信越化学工業株式会社製商品名)をベースに、表1の配合にて、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル(化学式:(CH2)4=(COOC2H4-O-C2H4-O-C4H9)2 )とリチウム塩化合物(化学式:Li(CF3SO2)2N)の80/20(wt%)混合物(商品名:サンコノール0862-20R)を添加したシリコーンゴムにてテストピースを作成し、ハイレスタ−UP MCP-HT450(三菱化学株式会社製商品名)で電気抵抗値を測定するとともに、JIS L1094-1997(織物および編物の帯電性試験方法)に準拠して(+)10kVの印加を30秒間行ったあと初期帯電圧の1/2に減衰するまでの時間(s)を半減期として測定した。
【0026】
次に、表1の配合にて8センチx14センチx0.2センチのキャリアプレートを作成した。キャリアプレートは、孔径がφ0.20mm、孔数は1344個のものを用いた。このキャリアプレートに0.4mmx0.2mmx0.2mmの寸法のセラミックチップを専用のロードプレートを用いてキャリアプレートに挿入した後、セラミックチップの先端に導電ペーストを塗布し、200℃で10分間乾燥してペーストを固着した後、温度15℃、湿度10%の条件下に放置してチップをプレートから押し出し、チップがゴムとの摩擦帯電によりプレートに付着するかどうか判定した。
【0027】
【表1】

【0028】
表1の結果から、制電剤をシリコーンゴム100重量部に対して0.005〜5重量部、好ましくは0.01〜0.05重量部、さらに好ましくは0.02〜0.05重量部添加したシリコーンゴムを使用することにより、セラミックチップをプレートから押し出す際にゴムが摩擦帯電せずチップがプレートに付着しないことが分かった。
【0029】
本発明におけるシリコーンゴム弾性部材2に使用されるシリコーンゴムには、キャリアプレートの使用目的、設計目的等に応じて、充填剤、増量充填剤、耐熱剤等の種々の添加剤を添加することができる。
【0030】
例えば、シリコーンゴム弾性部材2に使用されるシリコーンゴムに対する充填材の配合処方は特に制限されるものではないが、通常はベースのガム100重量部に対して補強性充填材および増量充填剤が10〜300重量部程度添加される。補強性充填材としては湿式シリカや乾式シリカ(煙霧状シリカ)が一般的である。ここでいう湿式シリカとは、二酸化けい素(SiO)からなる補強性シリカのことであり、製造方法としては、けい酸ナトリウムを直接硫酸で分解する直接法や、けい酸ナトリウムを塩類と反応させてけい酸塩を生成させ、次に、硫酸または炭酸ガスで分解する間接法など種々の方法がある。代表的な湿式シリカとしては、Nipsil VN3(日本シリカ工業株式会社製商品名)、カープレックスCS−5(シオノギ製薬株式会社製商品名)、スターシルS(神島化学工業株式会社製商品名)、トクシールUS(株式会社トクヤマ製商品名)、シルトンR−2(水沢化学工業株式会社製商品名)、Nipsil 223 (PPG社(米国)製商品名)、Ultrasil VN3(デグッザ社(ドイツ)製商品名)、VulkasilS(バイエル社(ドイツ)製商品名)などが例示され、平均粒径が30μm以下、好ましくは5μm以下のグレードが使用される。乾式シリカは、ハロゲン化けい素の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOの空気酸化法、有機けい素化合物の熱分解法等により製造される二酸化けい素からなる補強性シリカで、アエロジル200やアエロジルR972(日本アエロジル株式会社製商品名)、Cab−O−Sil MS−5(キャボット社(米国)製商品名)、レオロシールQS102(株式会社トクヤマ製商品名)が例示される。本発明においては必要に応じて湿式シリカと乾式シリカとを適時併用して使用してもよい。さらに、シリカ表面の活性による二次結合の防止を目的として、潤滑剤(ウエッタ)を添加してもよく、潤滑剤としては、シリコーンレジン類、アルコキシシランおよびシロキサン類、ヒドロキシシランおよびシロキサン類、シラザン類、有機酸エステル類、多価アルコール類などが例示される。
【0031】
また、増量充填剤は、ゴムの機械特性、すなわち物理強度、ゴム硬度、圧縮永久歪み、研削性など弾性部材2として機能上欠くべからざる特性を保持するために必要な成分であり、炭酸カルシウム、石英粉、けいそう土、けい酸ジルコニウム、クレー(けい酸アルミニウム)、タルク(含水けい酸マグネシウム)、ウォラストナイト(メタけい酸カルシウム)、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、アルミナ(酸化アルミニウム)、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、マイカ(雲母粉)などが例示される。
【0032】
また、酸化セリウムのような耐熱剤をシリコーンゴムに添加してもよい。
【0033】
本発明におけるアルミニウムからなるプレート体とシリコーンゴムとの接着は、過酸化物加硫型シリコーンゴムであれば、例えばケムロック608(ロード・ファー・イースト株式会社製商品名)のようなシリコーンゴム用接着剤が適用できる。また、付加型シリコーンゴムには、例えば、DY39−051A/B、DY39−067、DY39−115(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製商品名)やプライマーNo.4、プライマーNo.101A/B(以上、信越化学工業株式会社製商品名)のような付加型シリコーンゴム用の接着剤を使用することにより、より強固な接着を得ることができ、このときプレート体1は、炭化水素系洗浄剤や臭化プロピル等で脱脂した後、接着剤が塗布され、必要に応じて100℃で30分程度、焼成して使用される。
【0034】
このように本発明のキャリアプレートは、摩擦帯電し難く、極小チップがプレートに付着しない等の効果を奏する。
【0035】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係るキャリアプレートの1実施形態を示す一部を切断した斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
1 プレート体
2 弾性部材
3 外側フレーム
4 貫通通路
5 貫通孔
6 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製矩形プレート体の厚さ方向に貫通する多数の貫通通路を、プレート体の平面に並列させて貫通形成し、これらの各通路の内壁面にシリコーンゴムからなる弾性部材で弾性壁を形成することにより構成されているキャリアプレートにおいて、前記弾性部材として、制電剤を添加したシリコーンゴムを使用したことを特徴とするキャリアプレート。
【請求項2】
前記制電剤は、リチウム塩とアジピン酸の混合物であることを特徴とする請求項1に記載のキャリアプレート。

【図1】
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