説明

キラルピペリジンアルコールの分割プロセスおよびピペリジンアルコールを用いるピラゾロ−[1,5]−ピリミジン誘導体の合成プロセス

本発明は高収率、高エナンチオマー純度でピペリジン−2−イル−アルキレン−アルコールを、例えば2−ピペリジン−2−エタノールを分割する方法を提供する。キラルアルコール試薬(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールはCDK阻害剤化合物の合成に有用な重要な中間体であり、高エナンチオマー純度が求められる。2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を、アミノ酸分割剤との錯体とした後、極性非プロトン性有機溶媒および脂肪族アルコールとの混合溶媒中で再結晶またはスラリー化することにより、(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールが単離、精製され、高エナンチオマー純度かつ高収率で調製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2−ピペリジン−2−イル−エタノールのエナンチオマー混合物を分割するための新規プロセス、および(3−アルキル−5−ピペリジン−1−イル−3,3a−ジヒドロ−ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル)−アミノ誘導体の調製における上記エタノールの使用を開示する。この誘導体は、例えば、CDK2阻害活性を有する薬学活性物質としての有用性を有する。
【背景技術】
【0002】
このセクション、または本願中の任意のセクションにおいて任意の刊行物の記載は、そのような刊行物が本発明に対して先行技術であるとは容認しない。
【0003】
式Iの化合物、例えば、式IIIの化合物の調製は、2004年2月11日に出願され、公開された特許文献1に記載されている。これは本明細書中において参考として援用する。
【0004】
【化1】

ここで、Rは(−R2a−OH)という構造で表される直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキルオキシ官能基であり、R2aは直鎖状、分枝鎖上、または環状アルキレン基である。Rは直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキル基である。Rはアルキレンヘテロ環であり、例えば、式IIIの構造に示された3−メチレン−ピリジン−N−オキシド置換基である。これらの化合物は、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤(CDK阻害剤)の特性を有する化合物として薬学活性を有すると考えられている。
【0005】
特許文献1に記載されているように、式Iの化合物は以下の図1に記載されたように一般的なルートで調製し得る。
【0006】
【化2】

、R、およびRは先に定義された通りであり、RおよびRはH、またはRである。RおよびRは一緒になってアルキルヘテロ環を形成する。例えば、それはピリミジン−1−イル基であり、直鎖状、分枝状、または環状アルキル基が任意の炭素上で必要に応じて置換されている。そのアルキル基は必要に応じてヒドロキシドで置換されている。
【0007】
CDK阻害活性に対して特に興味のあるこれらの阻害物質の一つは式IIの化合物である。
【0008】
【化3】

特許文献1の334頁から343頁にある実施例500に詳細が記載されているように、式IIの化合物はスキームIIにしたがって合成し得る。
【0009】
【化4】

スキームIIの合成のステップ3の二番目のアミノ化反応では、キラルアルコール試薬(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール(化合物G1)は(5−クロロ−3−エチル−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−7−イル)−(1−オキシ−ピリジン−3−イルメチル)−アミン(化合物G)と反応し、式IIの化合物を与える。
【0010】
キラルアルコール(G1)はRおよびSの異性体の混合物として市販されている。これらの異性体の分割は、d−10−ショウノウスルホン酸(式G2aの構造を有する化合物)とアルコールとを錯体化させた後、錯体化アルコールを非特許文献1に公開されている文献の手順に従って、エタノールで再結晶化させることにより達成されている。
【0011】
【化5】

この方法による2−ピペリジン−2−イル−エタノールの分割は非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、および非特許文献5にもまた報告されている。この公開されている手順では一般的に、混合異性体の元のアルコールに基づいて17%未満の収率でこのアルコールが得られ、典型的には所望の異性体が元のアルコールに基づいて10%未満の収率で得られる。この手順を使用するとき、一般的に、95%以上の鏡像体過剰率(ee)のエナンチオマー純度を達成するためには、膨大な回数の連続的な再結晶化が必要とされる。そして、そのことは所望の異性体の収率を下げる。エナンチオマー純度は、試料中に存在する多い方の異性体の重量から少ない方の異性体の重量を引いて、その差を試料中に存在する多い方と少ない方の異性体の合計で割ることによって計算される。よって、97.5重量%のS異性体および2.5重量%のR異性体を有する試料は95%eeのエナンチオマー純度である。先に記載したCDK阻害剤化合物の合成では、およそ97%eeよりも高い純度を有するピペリジンエタノール出発物質の所望の異性体を利用することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0209878号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,1960,82,p2613〜2616
【非特許文献2】Journal of Medicinal Chemistry,45,p2432
【非特許文献3】Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters,2000,10,p1732
【非特許文献4】Chirality,1998,10,p434
【非特許文献5】Journal of the Chemistry Society,Perkin Transactions I,1994,63,p2903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記の観点において、必要とされていることは、高いエナンチオマー純度、高い化学的純度、および、およそ17%より高い収率で上記アルコールを与えるCDK阻害剤化合物の合成に有用な重要な中間体である2−ピペリジン−2−イル−エタノールを調製するための分割プロセスである。これら、および他の課題、および/または利点は本発明によって与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一つの局面において、本発明は一度の結晶化段階を経ることで少なくともおよそ95%の鏡像体過剰率(ee)で2−ピペリジン−2−イル−エタノールを与えるプロセスであり、そのプロセスは以下を包含する:
(a)N−アセチル−L−ロイシン、およびN−アセチル−L−メチオニンから選択されたアミノ酸分割試薬を含む脂肪族アルコール溶液と、極性非プロトン性溶媒および2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を含んだ溶液を混合する工程;
(b)(a)の混合溶液にさらに極性非プロトン性溶媒を加えて混ぜ合わせ、そして混合物中の任意の固形物の溶解を促進するのに十分な、混合物中の溶媒どちらかの沸点以下の温度に温める工程;
(c)塩の沈殿がそこから可能になる温度へ混合物を冷却する工程;
(d)必要に応じて、工程(c)で形成される沈殿物の塩を単離する工程;
(e)必要に応じて、工程(d)で単離された塩を再結晶化、または精製用溶媒を用いてスラリー化することにより精製する工程。
【0016】
いくつかの実施形態において、工程(a)では極性非プロトン性有機溶媒として、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、アセトン、および酢酸エチルが好ましい。より好ましくは、極性非プロトン性有機溶媒はTHFである。いくつかの実施形態においては、工程(a)での脂肪族アルコールは5個以下の炭素原子を有するアルコールから選択されることが好ましい。より好ましくは、脂肪族アルコールはメタノールである。いくつかの実施形態においては、極性非プロトン性有機溶媒(PAO溶媒)と脂肪族アルコールの体積比は、PAO溶媒:脂肪族アルコールが約20:1から、PAO溶媒:脂肪族アルコールが約2:1を使用するのが好ましい。より好ましくは、PAO溶媒:脂肪族アルコールが約19:1から約5:1である。いくつかの実施形態では、PAO溶媒:脂肪族アルコールが約19:1の比を使用することが好まれる。いくつかの実施形態では、PAO溶媒:脂肪族アルコールが約5:1の比を使用することが好まれる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、精製工程(e)は混合溶媒中で実行された再結晶である。好ましくは、その周囲の温度以上で塩を溶かし、温度が下がったとき、好ましくは周囲の温度以下で塩が析出するのに適した構成要素の比が選択されたアセトニトリル(ACN)およびメタノール(MeOH)の混合物である。いくつかの実施形態では、精製工程(e)は、所望されていない成分は溶けやすいが、所望の塩は任意の幅広い範囲で溶けにくい溶媒を使って工程(d)で与えられた沈殿をスラリー化させ、その結果、所望の塩は不溶のままであり、それにより工程(d)で共沈した所望の塩と不純物を分離することによって実施される。精製工程(e)がスラリー化を構成するとき、好ましくは、ACN:MeOHの体積比が約10:1から約20:1までを有する溶媒混合物が使われる。いくつかの実施形態では、精製工程(e)は所望のee値が得られるまで繰り返される。
【0018】
沈殿工程(d)を包含する本発明のいくつかの実施形態では、前記プロセスは、工程(d)で沈殿した塩の単離、再溶解、または溶媒中での塩の部分的な再溶解、および、前記溶液またはスラリーを塩基で処理することにより、反応にアルコールを用いる前にアルコールを含む遊離塩基が遊離することをさらに包含する。精製工程(e)を包含するいくつかの実施形態では、前記プロセスは、工程(e)で精製された塩の単離、再溶解、または塩の部分的な再溶解、および反応にアルコールを用いる前に、アルコールを含む遊離塩基が遊離することをさらに包含する。沈殿工程(d)、または精製工程(e)が後に続く沈殿工程(d)を包含する本発明のいくつかの実施形態では、前記プロセスは、直に反応中の工程(d)または工程(e)で生産された塩を利用すること、および、そこから反応混合物中というインサイチュでアルコールを含む遊離塩基が遊離することをさらに包含する。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態では、N−アセチル−L−ロイシンを分割剤として使用することが好まれる。本発明のいくつかの実施形態では、分割剤が少なくとも1Mの濃度を有するメタノール溶液を使用することが好まれる。より好ましいのは、分割剤が約3M〜約10Mであり、さらに好ましいのは分割剤が約5Mである。本発明のいくつかの実施形態では、分割プロセスの工程(a)において、2−ピペリジン−2−イル−エタノールが少なくとも約0.05Mの濃度を有するTHF溶液を使用することが好まれる。より好ましいのは約1M〜約5Mであり、さらに好ましいのは、2−ピペリジン−2−イル−エタノールが約2Mの濃度を有するときである。
【0020】
いくつかの実施形態では、工程(a)においてメタノール溶液、およびメタノールとTHFの混合溶液は約35℃〜約40℃の温度に保持されることが好ましい。いくつかの実施形態では、分割プロセスの工程(b)において、混合および希釈溶液は約50℃〜約55℃の温度に温めるのが好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、工程(c)における溶液は少なくとも15℃の温度に冷やすことが好ましい。より好ましいのは、該溶液を約10〜約15℃の温度に冷却することである。
【0021】
精製工程(e)を利用しているいくつかの実施形態では、工程(d)で沈殿した塩と、約1体積当量のメタノールと約20体積当量のアセトニトリルを含む混合溶媒との混合物を、塩が部分的に溶解するのに十分な温度、好ましくは約55℃に加熱し、そして精製された塩を沈殿させるために約15℃の温度に冷却することによって工程(d)での沈殿物をスラリー化することが好ましい。
【0022】
一つの局面において、本発明は、式IIIのCDK阻害剤の特性を有するピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル−アミノ化合物の供給のためのプロセスの一部分である:
【0023】
【化6】

ここでRは直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキル基であり、そのプロセスは以下を包含する:
(a)極性非プロトン性有機溶媒および2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を含む溶液と、N−アセチル−L−ロイシンとN−アセチル−L−メチオニンから選択されるアミノ酸分割剤を含む脂肪族アルコール溶液とを混合する工程;
(b)混合溶液にさらなる量の極性非プロトン性有機溶媒を混合し、混合物中に存在する任意の固体の溶解を促進するのに十分な、混合物中の溶媒どちらかの沸点以下の温度へ混合物を温める工程;
(c)化合物G1aの塩がそこから沈殿することが可能になる温度へ混合物を冷却する工程、
【0024】
【化7】

(d)塩をスラリー化すること、および塩を再結晶することから選択される技術により、工程(c)での塩を精製する工程;
(e)精製工程(d)で調製される塩から遊離塩基アルコールG1aを遊離させる工程;および
(f)工程(e)で遊離した遊離塩基アルコールが式Gの化合物と反応し、
【0025】
【化8】

その結果、式IIIの化合物を与える工程。
【0026】
いくつかの実施形態では、工程(a)において極性非プロトン性有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、およびアセトンから選択されることが好ましい。より好ましい極性非プロトン性有機溶媒はTHFである。いくつかの実施形態では、工程(a)での脂肪族アルコールは、5個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。より好ましい脂肪族アルコールはメタノールである。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、精製工程(d)は混合溶媒中で実行される。好ましくはTHF、ACN、およびアセトンから選択された極性非プロトン性溶媒と脂肪族アルコールを含む混合物中である。より好ましくはアセトニトリル(ACN)とメタノール(MeOH)を含む混合物中である。いくつかの実施形態では、アセトニトリルとメタノールの体積比が10:1を有する混合物を使用することが好まれる。いくつかの実施形態では、精製工程(d)は所望のee値が得られるまで繰り返される。
【0028】
いくつかの実施形態では、遊離工程(e)は、分離溶液中の塩を塩基で、好ましくは水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムから選択された塩基で処理し、それにより単離され、反応工程(f)の反応媒質へ加えられる遊離塩基を沈殿させることによって実行される。いくつかの実施形態では、遊離工程(e)は反応媒質の中でインサイチュで実行され、同時に式Gの化合物が反応を起こす。
【0029】
本発明のこれら、および他の局面は続く詳細な記載から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
前述、および’878刊行物に記載のように、式I(本明細書中で定義されている)の化合物は、CDK阻害剤の特性を有する有用な薬学的化合物として期待できる活性を有すると考えられている。これらの化合物の合成は、例えば、式IIの化合物については、特許文献1に詳細に記載されている。式IIの化合物を与えるプロセスは、2004年2月11日に出願され、公開された米国特許出願番号2004−0209878 A1(’878刊行物)の中の実施例507、508、509、1000、および1001に記載されている。これらの実施例、ならびに’878刊行物の全体は、本明細書中において参考として援用する。キラルアミノアルコールを分割するための本発明における方法は、選択されたアルコールの異性体の利用を必要とする任意の合成プロセスと関連して利用されうることは理解される。上記、および引用された文献の中で言及されているように、(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール(式G1の化合物)は、前述の文献のそれぞれに記載されている式I、式II、および式IIIの化合物調製のための合成経路の重要な中間体である。本発明者らは、一回の結晶化工程を利用する分割プロセスで約95%eeを超えるエナンチオマー純度で所望の異性体を高収率で与えるための分割方法を驚くことに発見した。さらに、さらなる再結晶工程が加えられた場合、本発明の方法は、再結晶し分割されたアルコールの元の量に基づいて95%を超える再結晶した生成物をより高い%eeの物質として与える。
【0031】
本発明を記載するために本明細書中で使用されているように、次の用語は以下の意味を有する。
【0032】
アルキル−は直鎖状、分枝鎖状、または環状炭化水素置換基であり、該置換基と、アルキル−が置換基である物質との間に単一の結合点を有する。アルキレンを指す用語、例えば、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、などが使用されるとき、それは直鎖状、分枝鎖状、環状炭化水素置換基であり、2つの結合点を有する。例えば、官能基間の橋のようにである。
【0033】
本発明の方法は、極性非プロトン性有機溶媒(PAO溶媒)に溶解した分割されるアルコール(アミノアルコール)を含む溶液と、脂肪族アルコールに溶解した分割剤を含む溶液とを別々に供給することを包含する。これらの溶液は混合され、加熱され、さらなる量のPAO溶媒、またはある量の、テトラヒドロフランとアセトニトリルから選択された溶媒、もしくはそれらの混合物と混合されたのち、分割剤と分割されつつあるアミノアルコールの所望の異性体との錯体を沈殿させるために冷却される。続いて、沈殿した錯体、必要に応じて再結晶かスラリー化によって精製されたものが、分割されたアミノアルコールの所望の異性体の遊離塩基形態を遊離させるために処理される。分割されたアミノアルコールはさらなる反応で使用され、CDK阻害剤化合物の調製に最も有用に利用される。必要に応じて、本発明の方法によって調製し分割されたアミノアルコール錯体は、沈殿したままの形態、または精製された形態のどちらかで、次の反応の反応混合物へ直接導入され、反応媒質中でインサイチュでその遊離塩基を遊離させることによって使用される。
【0034】
錯体形成/沈殿工程の次に分割剤−アルコール錯体の単離、および必要に応じて単離した錯体を再結晶、またはスラリー化技術を用いて精製する工程が続く。単離された錯体を精製するための再結晶は、それが実行される場合、アルコール−分割剤錯体が形成される溶媒系とは異なる極性の混合溶媒系を使用して実行される。驚くことに、この方法論を用いることで、先行技術の方法と比較して同じ回数の再結晶でより高いエナンチオマー純度(ee)で分割された生成物が生産される。この方法は、他の方法を利用するよりも、分割する元のアルコールに基づいた収率がより高く、高いエナンチオマー純度の生成物を与えるという利点を有する。この方法論のそれぞれの局面は次に論ぜられる。
【0035】
(分割剤)
本分割方法は、分割するアミノアルコールと錯体を形成するN−アセチル−L−ロイシン(式G2bの構造を持つ化合物)、
【0036】
【化9】

またはN−アセチル−メチオニン(式G3bの構造を持つ化合物)
【0037】
【化10】

のどちらかを分割剤として利用する。理論に縛られないが、これら二つの分割剤を用いて形成された錯体は、所望でないアミノアルコール異性体と錯体化するときよりも、所望のアミノアルコール異性体と錯体化するときに極性により大きな変化が起き、そして/または、所望でないアミノアルコール異性体とよりも所望のアミノアルコール異性体と錯体化することを選択し、所望でない異性体と比較してより高い割合の所望の異性体の錯体がそこから沈殿することが許容される一方で、混合溶媒を構成するニートな脂肪族アルコールより低い極性を有する混合溶媒でアルコール−分割剤錯体が沈殿することが許容されると考えられる。
【0038】
(分割されるアミノアルコール)
本発明の方法は、(R)および(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール異性体混合物から(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールを高収率、および高エナンチオマー純度で単離することに利用されるとき最も有益であると考えられる一方で、他の同類のピペリジンアルコールもまた本方法を使用することで分割し得る。例えば、図G4cの構造を有する化合物であり、ここでは2−エタノール置換基がピペリジン環の2,3,または4位のいずれかの炭素原子で結合し得る。ならびに、図G5cの構造を有する化合物であり、ここで、「n」は1から4の整数である。
【0039】
【化11】

本方法は、上記の(S)2−エタノール置換基に加えて、ピペリジン環の他の炭素原子上に置換基を、例えば、4個未満の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、環状アルキル基を有する置換基を有する図G4cまたは図G5cのどちらかの構造に有する2−ピペリジン−2−イル−エタノール化合物を分割するのに有用であるとも考えられる。
【0040】
(錯体形成/沈殿工程)
本発明の方法にしたがってピペリジンアルコール−分割剤錯体を調製するための混合溶媒は、脂肪族アルコールと極性非プロトン性有機溶媒(本明細書中で簡便のために「PAO」溶媒とも名付けられている)を含む。この混合溶媒は、選択された脂肪族アルコールのみと比較してより低いプロトン供与性およびより低い極性を混合溶媒に与える比で、選択された脂肪族アルコールよりも低い極性を有する。したがって、体積を基準として、極性非プロトン性有機溶媒(PAO溶媒)および脂肪族アルコールの適した混合物は、PAO溶媒:脂肪族アルコールとして約2:1〜10:1を包含する。より好ましいのは、体積比でPAO溶媒:脂肪族アルコールが5:1で含まれる混合物である。一般的に、ピペリジンアルコールおよび分割剤の混合後、PAO溶媒は反溶剤として作用し、脂肪族アルコールは塩生成物の溶媒として作用する。したがって、PAO溶媒および脂肪族アルコールの比は溶液中に保たれている塩生成物の量、および所望の異性体の塩生成物と共沈する所望でない異性体の量の妥協点を見出すように選択される。したがって、脂肪族アルコールおよびPAO溶媒のこれらの範囲外にある比もまた使用され得る。
【0041】
本発明の分割方法で使用され得る適した極性非プロトン性有機溶媒の例は、アセトニトリル(ACN,Snyder溶媒極性指標 6.2)、アセトン(Snyder溶媒極性指標 5.4)、酢酸エチル(Snyder溶媒極性指標 4.3)、テトラヒドロフラン(THF,Snyder溶媒極性指標 4.2)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。(S)−2−ピペリジン−2−イル−エタノールの分割のために、THFを極性非プロトン性有機溶媒として使用することが好まれる。
【0042】
本発明の分割方法で使用され得る脂肪族アルコールの例は、「R」が5個以下の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキル基とする、R−OHを包含する。好ましくは、メタノール(Snyder溶媒極性指標 6.6)、1−プロパノール、2−プロパノール(Snyder溶媒極性指標 4.3)、およびエタノール(Snyder溶媒極性指標 5.2)である。通常、より低いpKa値を有する脂肪族アルコールを使用することが好まれる。例えば、i−プロパノール(pKa 約16.5)のようなより酸性度の低いアルコールより、メタノール(pKa 約15.5)およびエタノール(pKa 約16)である。一般に、Snyder極性指標上でより高い極性を有するアルコールを、例えばメタノールおよびエタノールを使用することが好まれる。より好ましくは、メタノールが使用されることである。
【0043】
本発明の分割プロセスで使用される極性非プロトン性有機溶媒の量は分割するアミノアルコールを溶かすのに十分な量である。本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも約0.05Mの分割するアルコールの濃度を有する、分割プロセスの錯体形成/沈殿工程のPAO溶媒溶液を供給することが好まれる。より好ましくは約1〜約5Mであり、さらに好ましいのは分割するアミノアルコールの濃度が約2Mである。分割するアルコールが2−ピペリジン−2−イル−エタノールであるとき、錯体形成/沈殿工程に対して濃度が2Mの2−ピペリジン−2−イル−エタノールを含むTHF溶液を与えることが好まれる。これらの指針の範囲で、分割するアミノアルコールのPAO溶媒溶液は、これらの指針の範囲で溶解するように加熱され得る。
【0044】
前述のPAO:脂肪族アルコールの所望の体積比に導かれ、本発明のプロセスの錯体形成/沈殿工程に、分割剤溶液を供給するために使用される脂肪族アルコールの量は、使用される分割剤を溶かすのに少なくとも十分な量である。分割剤が少なくとも1Mの濃度を有する溶液を供給するのに十分な脂肪族アルコールを使用することが好まれる。より好ましいのは分割剤濃度が約3〜約10Mであり、さらに好ましいのは5Mである。これらの一般的な指針の範囲で、脂肪族アルコール溶液は分割剤を溶かすために加熱され得る。
【0045】
本発明の方法が(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールを分割するために使用されるとき、分割剤溶液とアミノアルコール溶液を混合する前に、少なくとも35℃の温度に2つの溶液を加熱し、これらの溶液を混合するとき約35〜約40℃の温度を保持することが好まれる。
【0046】
分割剤の脂肪族アルコール溶液と分割するアミノアルコールのPAO溶媒溶液を混合するとき、混合溶液中で混濁が起こり得る。分割するアミノアルコールおよび分割剤の混合後、溶液を混合したときに生成された固体を溶解させるためにさらなる溶媒が加えられ、その混合物は加熱される。通常、加えられる溶媒はアミノアルコールを溶かすために使用されたPAO溶媒から選択される。しかしながら、他のPAO溶媒もまた使用され得る。好ましくは、PAO溶媒はTHFとACNから選択される。より極性の低いTHFが選択されることがより好ましい。
【0047】
追加の溶媒が加えられた後、混合物は加熱される。好ましくは、少なくとも50℃の温度にであるが、選択された溶媒の沸点以下である。THFがこの工程で加えられる追加溶媒として選択されるとき、温度は約50〜約55℃に保持されることが好ましい。
【0048】
全ての固体が溶解した後、その溶液は約50〜約55℃に30分間保持される。次に、錯体が沈殿する温度付近へ冷却する。通常、混合物から沈殿する結晶の大きさを制御し、沈殿物中に取り込まれる溶媒を最小化するために徐々に冷却する。本方法が(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールを調製するために利用されるとき、この冷却工程では、混合物の温度を約50〜約55℃から約15℃への冷却が約2時間以上をかけて実行される。
【0049】
別の局面では、本発明の方法はスキームIIIに沿って実行されるピラゾロ−[1,5−a]−ピリミジン化合物の調製のための改良された合成法の一部分を形作る。
【0050】
【化12】

ここでRは直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキル基であり、Xはハロゲン、およびスルホニル型脱離基から選択される。Rは4個以下の炭素原子を有することが好ましく、エチル基(−CHCH)であることがより好ましい。Xは塩素が好ましい。
【0051】
本発明の分割方法は分割される2−ピペリジン−2−イル−エタノール中間体を供給するため、および式Gの化合物を与える公知のいずれかの方法で調製される式Gの化合物と反応させるために使用され得ると理解される。上で援用された刊行物’878に記載された反応スキームが特に好ましい。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の分割スキームは式IIIの化合物を生成する反応スキームと組み合わせることが好ましい。
【0052】
上記のスキームIIIは、使用される(5−クロロ−3−アルキル−ピラゾロ[1,5−a]ピリジン−7−イル)−(1−オキシ−ピリジン−3−イルメチル)−アミンの構造に依存するが、式I、式II、および式IIIの化合物を調製するために使用され得ることが理解される。式Gの化合物のR基がエチル基であり、Xが塩素である場合の反応が特に好ましく、そこで式G1aの化合物が供給され、上記の式IIの構造の生成物を与える。
【0053】
【化13】

式IIの化合物を調製するためのスキームで特に好ましいものを以下のスキームIVに示す。(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノールを分割する本発明の方法は、スキームIVと組み合わせて使用されるとき特に有用であると考えられる。なぜならば、ステップ3では2−ピペリジン−2−イル−エタノールの(S)異性体が使用される2回目のアミノ化反応が水酸化ナトリウム、または水酸化カリウムの存在下で実施されるからである。したがって、この工程で式G1の化合物はその再結晶された塩の形態、または手前の工程からの沈殿生成物の形態で反応混合物に供給され得る。これらは、式G1の化合物を反応に使用する前に遊離塩基を遊離させる分離工程を必要とせずに、インサイチュで遊離塩基へ変換される。
【0054】
【化14】

【実施例】
【0055】
下記の溶媒および試薬は括弧内の略語が参照され得る:
テトラヒドロフラン:THF
メタノール:MeOH
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
mole:mol.
ee:鏡像体過剰率−(回収された所望のエナンチオマーの重量)/(存在する所望のエナンチオマー重量+存在する所望でないエナンチオマーの重量)
全ての試薬はAldrich、またはAcrosから供給され、注記しない限りは受け取り時の状態のまま使用された。
【0056】
(実施例1:(S)−2−ピペリジン−2−イル−エタノールの調製)
N−アセチル−L−ロイシン(8.65g)を10mLのメタノールで溶解しフラスコへ注いだ。その溶液を加熱し、撹拌しながら35〜40℃の温度に保持した。50mlのTHFと12.9g(0.1mol)の2−ピペリジン−2−イル−エタノール(RとSの異性体混合物)から調製したテトラヒドロフラン(THF)溶液を、35℃〜40℃に混合溶液の温度を保持しながら、メタノール溶液に加えた。さらなるTHFを30mL加え、その混合物を加熱し、30分間50℃〜55℃の温度を保持した。反応混合物を2時間以上かけて15℃へ冷却後、その温度を1時間保ち、その間に塩を沈殿させた。沈殿物は吸引ろ過により回収し、周囲温度(約25℃)で真空乾燥した。回収した沈殿物を塩化ベンゾイルを用いて誘導体化した後、HPLCによりee純度を分析し、S異性体が94.5%eeであると判明した。出発原料である未分割のアルコールの重量を基にした計算収率は37.7%であった(11.4gのS異性体が単離された)。したがってS異性体の約25%を損失した。
【0057】
(沈殿物の精製)
上記のように生成された沈殿物の塩の一部(7.0g)を、50mlのアセトニトリルと2.5mlのメタノールを含む溶媒中で撹拌しながら、混合物を55℃に加熱することによって懸濁させ、30分間それを保持した。生成した懸濁液を2時間以上をかけて15℃の温度へ冷却した。生じた結晶をろ過により得て、HPLCにより純度を分析し、回収した重量に基づいて収率を計算した。沈殿物は6.7gであり(元の沈殿した錯体を基にした計算収率は95.7%)、HPLC分析に基づく異性体純度は97.7%eeであった。
【0058】
(遊離塩基への変換)
13mmolの精製したピペリジンエタノールの塩を24mlの3N水酸化ナトリウムで溶解し、その溶液を約1.5時間激しく撹拌することにより、ピペリジンエタノールの塩を遊離塩基へ変換する。1.5時間の撹拌の終わりに、7.5mlの水を溶液へ加える。その後、この混合物から塩化メチレンで3回抽出する。この塩化メチレン抽出物を濃縮すると、約13mmolの遊離ピペリジンエタノールが得られる。生成物のキラル純度は元の塩と同じであることが判明した。
【0059】
(比較実施例)
2−ピペリジン−2−イル−エタノールの立体異性体(化合物G1a)は、刊行物’878に記載されたように、準備するための実施例500にしたがって調製された。
【0060】
【化15】

こうして、Acrosから得たピペリジン−2−エタノールのRおよびSのエナンチオマー混合物を、受け取り時の状態のまま使用し(127g、980mmol)、95%エタノール(260ml)で溶解した。この脂肪族アルコール溶液へ、Acrosから得た(S)−(+)−ショウノウスルホン酸(228.7g、1.0当量)の95%エタノール溶液(150mL)を加え、結果として生じた溶液を還流するまで温めた。その温かい溶液へジエチルエーテル(600mL)を加えた後、室温へ冷却し、3日間そのままにした。生じた結晶をろ過し、真空乾燥した(25g):そして、融点173℃(文献では168℃)が測定された。塩を水酸化ナトリウム溶液(3M、100mL)で溶解し、2時間撹拌した後、その溶液を塩化メチレン(100mlにて5回)で抽出した。併せた有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥し、ろ過し、減圧濃縮し、(S)−ピペリジン−2−エタノール(7.8g)を得た。一部はエーテルから再結晶した:融点 69−70℃(文献では68−69℃);比旋光度[α]=14.09°(CHCl,c=0.2)。単離されたS異性体の総収率は、元のアルコールの最初の重量に基づいて6.1%であった。
【0061】
本発明のこれまでの記載は例示であることを意図し、限定していない。本明細書中に記載された実施形態における様々な変更、または改良は、当業者によって思い浮かび得る。これらの変更は、本発明の意図、または精神から逸脱することなしにされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−ピペリジン−2−イル−エタノールのS異性体を異性体混合物から分割する方法であって、該方法は以下:
(a)極性非プロトン性有機溶媒および2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を含む溶液と、N−アセチル−L−ロイシンとN−アセチル−L−メチオニンから選択されるアミノ酸分割剤を含む脂肪族アルコール溶液とを混合する工程;
(b)上記混合溶液にさらなる量の極性非プロトン性有機溶媒を混合し、該混合物中に存在する任意の固体の溶解を促進するのに十分な、該混合物中の溶媒どちらかの沸点以下の温度へ該混合物を温める工程;
(c)塩の沈殿がそこから可能になる温度へ該混合物を冷却する工程;
(d)必要に応じて、工程(c)で生成された沈殿した塩を単離する工程;および
(e)必要に応じて、精製用溶媒を用いて再結晶またはスラリー化により、工程(d)で単離された塩を精製する工程、
を包含する方法。
【請求項2】
前記混合工程(a)で使用される極性非プロトン性溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、アセトン、および酢酸エチル、ならびにその2種以上の混合物から選択される溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記極性非プロトン性溶媒はTHFである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記再結晶工程(e)が実行される場合、混合溶媒中で実行される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記混合溶媒は、アセトニトリル、およびTHFから選択されるPAO溶媒と5個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールとの混合物である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が体積で19のアセトニトリルおよび1のメタノールを含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記再結晶工程(e)が実行される場合、所望のエナンチオマー純度に達するまで繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)溶媒中で沈殿した塩を再溶解する工程、または懸濁させる工程を含む混合物を供給する工程;および
(b)工程(a)由来の混合物を塩基で処理し、(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール遊離塩基を与える工程、
をさらに包含する方法。
【請求項9】
沈殿した塩は塩基を含む反応混合物中へ加えられ、それにより(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール遊離塩基を反応混合物中にインサイチュで供給する、請求項1から8のいずれかに記載の分割方法。
【請求項10】
工程(a)で使用するために選ばれる分割剤はN−アセチル−L−ロイシンである、請求項1から9のいずれかに記載の分割方法。
【請求項11】
前記分割剤は、5Mの分割剤溶液を供給するのに十分な量の、工程(a)の溶液中に存在する、請求項1〜10のいずれかに記載の分割方法。
【請求項12】
混合工程である工程(a)で使用される溶媒混合物は、極性非プロトン性有機溶媒(PAO溶媒):脂肪族アルコールの体積比で約2:1のPAO溶媒:脂肪族アルコールから約10:1のPAO溶媒:脂肪族アルコールのものを包含する、請求項1〜11のいずれかに記載の分割方法。
【請求項13】
前記の使用される溶媒混合物は体積比で約5:1のPAO溶媒:脂肪族アルコールを含む、請求項12に記載の分割方法。
【請求項14】
前記PAO溶媒はTHFであり、少なくとも2Mの2−ピペリジン−2−イル−エタノール溶液を供給するのに十分な2−ピペリジン−2−イル−エタノールの量を含有する溶液を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の分割方法。
【請求項15】
工程(a)で混合されるメタノールおよびTHF溶液は約20℃〜約60℃の温度に保持される、請求項1〜14のいずれかに記載の分割方法。
【請求項16】
工程(a)で混合されるメタノールおよびTHF溶液は約35℃〜約40℃の温度に保持される、請求項1〜15のいずれかに記載の分割方法。
【請求項17】
工程(b)で混合、および希釈される溶液は約30℃から、溶媒混合物の還流する温度以下の温度までの温度に加熱される、請求項1〜16のいずれかに記載の分割方法。
【請求項18】
工程(b)で混合、および希釈される溶液は約50℃〜約55℃までの温度で加熱される、請求項1〜17のいずれかに記載の分割方法。
【請求項19】
精製工程(e)は、前記塩を溶解する1体積当量のメタノールおよび20体積当量のアセトニトリルの混合物を約55℃の温度へ加熱し、約15℃の温度へ該混合物を冷却することによる工程(d)の沈殿物を再結晶することにより実施される、請求項1〜18のいずれかに記載の分割方法。
【請求項20】
精製工程(e)は、1体積当量のメタノールおよび20体積当量のアセトニトリルの混合物中にて工程(d)での沈殿物をスラリー化し、該スラリーを約55℃の温度へ加熱し、該不純物を溶かすための時間の間温度を保持し、約15℃に該溶液を冷却することにより実行される、請求項1〜19のいずれかに記載の分割方法。
【請求項21】
式IIIのピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−7−イル−アミノ化合物
【化16】

を作製する方法であって、ここでRは直鎖状、分枝鎖状、または環状アルキル基であり、該方法は:
(a)極性非プロトン性有機溶媒および2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を含む溶液と、N−アセチル−L−ロイシンとN−アセチル−L−メチオニンから選択されるアミノ酸分割剤を含む脂肪族アルコール溶液とを混合する工程;
(b)該混合溶液にさらなる量の極性非プロトン性有機溶媒を混合し、該混合物中に存在する任意の固体の溶解を促進するのに十分な、該混合物中の溶媒どちらかの沸点以下の温度へ該混合物を温める工程;
(c)化合物G1aの塩がそこから沈殿することが可能になる温度へ該混合物を冷却する工程、
【化17】

(d)工程(c)で生じる沈殿物の塩を単離する工程;
(e)アセトニトリル(ACN)およびメタノールの体積比が10:1の混合物中で該塩をスラリー化することにより、工程(c)由来の塩を精製する工程;
(f)遊離塩基アルコールG1aを、精製工程(e)で調製される塩から遊離させる工程;および
(g)工程(e)由来の遊離塩基アルコールを、式G1の化合物と反応させる工程、
【化18】

を包含する方法。
【請求項22】
はエチル置換基であり、Xは塩素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(a)の極性非プロトン性有機溶媒はテトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(ACN)、酢酸エチル、およびアセトンから選択される、請求項21から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
工程(a)の脂肪族アルコールは5個以下の炭素原子を有する脂肪族アルコールから選択される、請求項21〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記遊離工程(e)は分割され単離された塩を、塩基存在下で反応混合物と混合し、インサイチュで遊離塩基アルコールを遊離させることにより実行される、請求項21〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記遊離工程(e)は分割され単離された塩を塩基で処理し、溶液外に遊離塩基アルコールを結晶化し、該遊離塩基結晶をろ過して単離することにより実行される、請求項21〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
2−ピペリジン−2−イル−エタノールのS異性体を異性体混合物から分割する方法であって、該方法は:
(a)2−ピペリジン−2−イル−エタノールの異性体混合物を含むテトラヒドロフラン(THF)溶液を、N−アセチル−L−ロイシンを含むメタノール溶液と混合する工程;
(b)追加のTHFを該混合溶液と混合し、該混合物中の溶媒どちらかの沸点以下の温度へ該混合物を温める工程;
(c)塩の沈殿がそこから可能になる温度へ該混合物を冷却する工程;
(d)必要に応じて、工程(c)で生成される沈殿物の塩を単離する工程;および
(e)必要に応じて、該塩を再結晶する工程、
を包含する方法。
【請求項28】
非プロトン性有機溶媒はTHFである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
工程(a)で使用される脂肪族アルコールは5個以下の炭素原子を有するアルコールである、請求項1および28に記載の方法。
【請求項30】
前記脂肪族アルコールはメタノールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記再結晶工程(e)が実行される場合、所望のエナンチオマー純度が達成されるまで繰り返される、請求項6に記載の方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、該方法は以下の工程:
(a)溶媒中で沈殿した塩を再溶解する工程または懸濁させる工程を含む混合物を供給する工程;および
(b)工程(a)由来の混合物を塩基で処理し、(S)2−ピペリジン−2−イル−エタノール遊離塩基を与える工程、
をさらに包含する方法。

【公表番号】特表2010−501487(P2010−501487A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524695(P2009−524695)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/018289
【国際公開番号】WO2008/021509
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】