説明

キラルプロピオン酸誘導体の製造方法

本発明は、式(I)で示される化合物の新規製造方法であって、式(II)で示される化合物を、ルテニウム及びキラルジホスフィンリガンドを含むか、又はロジウム及びキラルジホスフィンリガンドを含む触媒の存在下で接触不斉水素化することを含む方法に関する(式中、R1、R2、R3及びR4は本明細書及び請求項に定義されたとおりである)。式(I)の化合物並びに対応する塩及び/又はエステルは薬学的に活性な物質である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラルプロピオン酸誘導体の新規製造方法、特に(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造に関する。(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}プロピオン酸及びその塩は、薬学的に活性な化合物である。これらの化合物は、当該技術において既知であり、例えば国際特許出願WO02/092084に記載されている。これらは、I及びII型真性糖尿病の予防及び/又は治療に特に有効である。
【0002】
本発明は、式(I):
【0003】
【化4】

【0004】
で示される化合物又はその塩の製造方法であって、式(II):
【0005】
【化5】

【0006】
で示される化合物又はその塩を、ルテニウム及びキラルジホスフィンリガンドを含むか、又はロジウム及びキラルジホスフィンリガンドを含む触媒の存在下で接触不斉水素化して、前記式(I)の化合物を得ることを含み、
ここで、
1は、アリール又はヘテロアリールであり、
2は、低級アルキルであり、
3は、低級アルキルである
方法に言及する。
【0007】
(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造方法は、WO02/092084に記載されている。しかし、これらの方法は、多くの個別の費用のかかる製造工程を含み、低い収率を示す。当該技術で既知のこれらの方法は、結果的に、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の大規模な商業的生産に不適切である。
【0008】
驚くべきことに、本発明による方法を使用して、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を、より経済的に、穏やか条件下でより少ない製造工程により、抜群の収率で調製できることが見出された。更に、粗中間生成物は、大部分、追加の精製工程の必要なしに、その大部分を続く反応工程で使用することができる。
【0009】
特に指示されない限り、下記の定義は、本明細書の発明を記載するために使用される種々の用語の意味及び範囲を説明し、明確にするために記載される。
【0010】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。用語「ハロゲン化物」は、負荷電ハロゲンアニオンを意味する。
【0011】
この明細書において、用語「低級」は炭素原子1〜7個、好ましくは1〜4個からなる基を意味するために使用される。
【0012】
用語「アルキル」は、炭素原子1〜20個、好ましくは炭素原子1〜16個の分岐鎖状又は直鎖状の一価飽和脂肪族炭化水素基を意味する。下記で定義されている低級アルキル基が、好ましいアルキル基である。
【0013】
用語「低級アルキル」は、炭素原子1〜7個、好ましくは炭素原子1〜4個の分岐鎖状又は直鎖状の一価アルキル基を意味する。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、i−ブチル、n−ブチル、t−ブチルなどの基により更に例示され、メチル及びエチルが好ましい。
【0014】
用語「アルコキシ」は、基アルキル−O−を意味し、用語「低級アルコキシ」は、基低級アルキル−O−を意味する。
【0015】
用語「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルなどの、炭素原子3〜10個、好ましくは炭素原子3〜6個の一価炭素環式基を意味する。
【0016】
用語「アリール」は、フェニル又はナフチル基、好ましくはフェニル基に関連し、これは、ハロゲン、ヒドロキシ、CN、CF3、NO2、NH2、N(H、低級アルキル)、N(低級アルキル)2、カルボキシ、アミノカルボニル、低級アルキル、低級アルコキシ、フェニル、及び/又はフェニルオキシで、場合により一置換又は多置換、特に一置換、二置換又は三置換されていることができる。好ましい置換基は、ハロゲン、低級アルキル及び/又は低級アルコキシ、特に低級アルキル及び/又は低級アルコキシである。
【0017】
用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素及び/又は硫黄から選択される1、2又は3個の原子を含むことができる芳香族の5員又は6員環、例えば、フリル、ピリジル、1,2−、1,3−及び1,4−ジアジニル、チエニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、又はピロリルなどを意味する。用語「ヘテロアリール」は、更に、2個の5員又は6員環を含む二環式芳香族基(そのうちの1個又は両方の環は、窒素、酸素又は硫黄から選択される1、2又は3個の原子を含むことができる)、例えばインドール若しくはキノリン、又は部分的に水素化された二環式芳香族基、例えばインドリニルを意味する。ヘテロアリール基は、用語「アリール」に関連して前述した置換パターンを有してもよい。好ましいヘテロアリール基は、チエニル及びフリルである。
【0018】
用語「薬学的に許容されうる塩」は、式(I)の化合物と薬学的に許容されうる塩基との塩、例えば、アルカリ塩、例としてNa−及びK−塩、アルカリ土類塩、例としてCa−及びMg−塩、並びにアンモニウム又は低級アルキル置換アンモニウム塩、例えばトリメチルアンモニウム塩などを包含する。
【0019】
詳細には、本発明は、式(I):
【0020】
【化6】

【0021】
で示される化合物又はその塩の製造方法であって、式(II):
【0022】
【化7】

【0023】
で示される化合物又はその塩を、ルテニウム及びキラルジホスフィンリガンドを含むか、又はロジウム及びキラルジホスフィンリガンドを含む触媒の存在下で接触不斉水素化して、前記式(I)の化合物を得ることを含み、
ここで、
1は、アリール又はヘテロアリールであり、
2は、低級アルキルであり、
3は、低級アルキルである
方法に言及する。
【0024】
上記の触媒は、ルテニウム又はロジウムのそれぞれとキラルジホスフィンリガンドとの錯体である。上記のルテニウム錯体において、ルテニウムは、酸化数IIにより特徴付けられる。上記のルテニウム錯体は、中性又はアニオン性の更なるリガンドを場合により含むことができる。そのような中性リガンドの例は、例えばオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、シクロオクテン、1,3−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、1,5−シクロオクタジエン、ベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメンであるか、また例えばテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン及びメタノールなどの溶媒である。上記のアニオン性リガンドの例は、CH3COO-、CF3COO-又はハロゲン化物である。ルテニウム錯体が荷電している場合、ハロゲン化物、BF4-、ClO4-、SbF6-、PF6-、B(フェニル)4-、B(3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル)4-、CF3SO3-、C65SO3-などの非配位アニオン類が存在する。ルテニウム及びキラルジホスフィンを含む好ましい触媒は、式:〔Ru(キラルジホスフィン)B2〕で示され、ここでBは、CH3COO-、CF3COO-又はハロゲン化物である。
【0025】
上記で言及されたロジウム錯体において、ロジウムは、酸化数Iにより特徴付けられる。上記のロジウム錯体は、中性又はアニオン性の更なるリガンドを場合により含むことができる。上記の中性リガンドの例は、例えばオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、シクロオクテン、1,3−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、1,5−シクロオクタジエン(COD)、ベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメンであるか、また例えばテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン及びメタノールなどの溶媒である。上記のアニオン性リガンドの例は、ハロゲン化物、CH3COO-又はCF3COO-である。ロジウム錯体が荷電している場合、ハロゲン化物、BF4-、ClO4-、SbF6-、PF6-、B(フェニル)4-、B(3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル)4-、CF3SO3-、C65SO3-などの非配位アニオン類が存在する。ロジウム及びキラルジホスフィンを含む好ましい触媒は、式:〔Rh(キラルジホスフィン)L〕Bで示され、ここで、Bは、BF4、ClO4-、SbF6-、PF6-、B(フェニル)4-、B(3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル)4-、CF3SO3-又はC65SO3であり、Lは、1,5−シクロオクタジエン、2−エチレン、2−プロピレン、2−シクロオクテン、1,3−ヘキサジエン、ノルボルナジエンである。Lが2つの二重結合を含むリガンド、例えば1,5−シクロオクタジエンである場合、そのようなLは1つしか存在しない。Lが1つの二重結合しか含まないリガンド、例えばエチレンである場合、そのようなLは2つ存在する。
【0026】
式(I)及び(II)それぞれの化合物の塩としては、アルカリ塩、例えばK又はNa、アルカリ土類塩、例えばMg又はCa、及び例えばトリメチルアンモニウム塩などのアンモニア又は低級アルキル置換アンモニウム塩が考慮される。式(I)及び(II)それぞれの化合物を言及し、塩を言及しない、上記で記載された方法が好ましい。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、キラルジホスフィンリガンドは、式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII):
【0028】
【化8】

【0029】
〔式中、
4は、低級アルキルであり;
5は、低級アルキルであり;
6は、独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル又は低級アルキルであり;
7は、N(低級アルキル)2又はピペリジニルであり;
8は、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ又は低級アルキル−C(O)O−であり;
9及びR10は、独立して、水素、低級アルキル、低級アルコキシ又はジ(低級アルキル)アミノであるか;或いは
同じフェニル基に結合しているR8及びR9、又は同じフェニル基に結合しているR9及びR10、又は両方のR8は、一緒になって、−X−(CH2n−Y−であり、ここで、Xは、−O−又は−C(O)−O−であり、Yは、−O−又は−N(低級アルキル)−であり、そしてnは、1〜6の整数であるか;或いは
8及びR9、又はR9及びR10は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、ナフチル、テトラヒドロナフチル又はジベンゾフラン環を形成し;
11は、独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ジ(低級アルキル)アミノ、モルホリノ、フェニル及びトリ(低級アルキル)シリルからなる群より独立して選択される0〜7個の置換基で置換されている、フェニル又はナフチルであり;
12は、独立して低級アルキルである〕
によって特徴付けられる。
【0030】
11がフェニルである場合、これは、0〜5個、好ましくは0〜3個の上記で記載された置換基で置換されている。
【0031】
より好ましい実施態様において、触媒は、式:〔Ru(キラルジホスフィン)B2〕で示され、ここでキラルジホスフィンは、請求項2で定義された式(VI)又は(VII)により特徴付けられ、ここでBは、CH3COO-、CF3COO-又はハロゲン化物である。
【0032】
好ましくは、キラルジホスフィンは、
(S)−MeOBIPHEP、(S)−BIPHEMP、(S)−TMBTP、(S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP、(S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP、(S)−トリMeOBIPHEP、(R,R,S,S)−マンジホス(Mandyphos)、(S)−BnOBIPHEP、(S)−ベンゾイルBIPHEP、(S)−pTol−BIPHEMP、(S)−tブチルCOOBIPHEP、(S)−iPrOBIPHEP、(S)−pフェニル−MeOBIPHEP、(S)−pAn−MeOBIPHEP、pTol−MeOBIPHEP、(S)−3,5−キシル−MeOBIPHEP、(S)−3,5−キシル−BIPHEMP、(S)−BINAP及び(S)−2−フリル−MeOBIPHEPからなる群より選択される。より好ましくは、キラルジホスフィンは、(S)−TMBTP、(S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP又は(S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEPである。これらのキラルジホスフィンは、それぞれ個別に本発明の好ましい実施態様を構成する。
【0033】
アトロプ異性ジホスフィン、特にアトロプ異性ビアリールジホスフィンが好ましい。アトロプ異性体において、光学活性は、単結合の周りの回転が妨げられているか、又は著しく遅くなっていることにより引き起こされる。(文献:J. March "Advanced Organic Chemistry", Wiley interscience, 4th edition, 1992, p. 102)。
【0034】
上記で記載された触媒において、Bは、好ましくはCH3COO-又はCF3COO-である。本発明の更に好ましい実施態様は、触媒が、〔Ru(CH3COO-2((S)−TMBTP)〕、〔Ru(CF3COO-2((S)−TMBTP)〕、〔Ru(CH3COO-2((S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕、〔Ru(CF3COO-2((S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕、〔Ru(CH3COO-2((S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕及び〔Ru(CF3COO-2((S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕からなる群より選択される、上記で記載された方法に関する。これらの触媒はそれぞれ個別に好ましい実施態様を構成する。
【0035】
上記で定義された方法は、当業者に既知の条件下で実施できる。反応圧力は、例えば1〜120barの範囲で都合よく選択される。接触水素化が20〜40barの圧力で実施される、上記で記載された方法が好ましい。反応温度は、0〜120℃の範囲で都合よく選択される。接触水素化が20〜60℃の温度で実施される、上記で定義された方法が好ましい。
【0036】
接触水素化を塩基の存在下で実施する、上記で記載された方法も好ましい。好都合には、約0.05〜1当量の塩基が使用され、好ましくは約0.2当量である。例えばNaOH、KOH、(S)−フェニルエチルアミン、Et3N又はNaHPO4などの塩基が考慮される。(S)−フェニルエチルアミンが好ましい。
【0037】
本発明の方法は、溶媒中で都合よく実施できる。接触水素化を、メタノール、ジクロロメタン、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、若しくはトルエン、又はこれらの組み合わせである溶媒中で実施する、上記で定義された方法も好ましい。より好ましくは、接触水素化を、メタノールとジクロロメタンの3:2混合物である溶媒中で実施する。
【0038】
好ましくは、上記で定義された方法は、式(I)の化合物の結晶化を追加的に含む。より好ましくは、上記で定義された方法は、第一級アミンとの塩としての式(I)の化合物の結晶化を追加的に含む。好ましくは第一級アミンは、(S)−フェニルエチルアミンである。
【0039】
(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の(S)−フェニルエチルアミン塩は、当該技術で周知の類似の方法、例えばTHF中の(S)−フェニルエチルアミンの溶液を、THF中の(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル〕−プロピオン酸の溶液に、例えば63〜65℃で滴加することにより、都合よく製造できる。続く種晶の添加によって直ぐに結晶化が開始される。
【0040】
上記で定義された好ましい方法において、式(I)の化合物は、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸である。
【0041】
所望であれば、式Iの化合物は、対応する塩、例えばナトリウム又はカリウム塩に変換できる。そのような変換は、塩基性条件下、例えばTHF中のNaOH又はKOHで実施してもよい。好ましい実施態様において、上記で定義された方法は、式(I)の化合物の薬学的に許容されうる塩への変換を追加的に含む。上記で記載された方法の一つの実施態様は、式Iの化合物の対応するナトリウム塩への変換を追加的に含む。
【0042】
1がアリール、特にフェニルである、上記で定義された方法が好ましい。別の好ましい実施態様において、R2はメチルである。更に好ましい実施態様は、R3がメチルである上記で定義された方法に関する。
【0043】
特に好ましい実施態様は、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造のための上記で定義された方法であって、
a)4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒドをメトキシ酢酸メチルエステルと反応させて、3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステルを得ること;
b)3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステルに変換すること;
c)(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステルを、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸に変換すること;
d)(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸を、上記で定義された手順を用いて水素化して、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を得ること
を含む、上記で定義された方法に関する。
【0044】
上記で定義された方法の工程a)は、アルドール反応であり、例えば、ジクロロメタンとTHFの混合物中の例えばLADなどの強塩基により例えば約−78℃の温度で実施できる。
【0045】
上記で記載された方法の工程b)は、例えばDMFなどの溶媒中、例えば約100℃の温度で硫酸により都合よく実施される。
【0046】
上記で記載された方法の工程c)は、鹸化であり、例えば、例えばKOHなどの水性強塩基とメタノールの混合物中、例えば60℃の温度で実施できる。
【0047】
さらに、本発明は、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造のための、上記で記載された方法のいずれかの使用を含む。
【0048】
本発明の更なる実施態様は、化合物(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステルを含む。この化合物は、上記で記載された方法のそれぞれの中間生成物又は抽出物である。
【0049】
スキーム1は、上記で記載された方法及び個別の反応工程の反応条件の一つの可能な実施態様の概要を示す。
【0050】
【化9】

【0051】
上記反応の反応条件は、ある程度まで変更できる。上記で記載された反応及び工程を実施する方法は、当該技術において既知であるか、又は実施例から類似のものが推定できる。出発物質は、市販されているか、又は実施例で記載されている方法と類似の方法により作成できる。
【0052】
下記の実施例は、本発明の好ましい実施態様を説明するが、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0053】
実施例
略語
DMF=ジメチルホルムアミド、LDA=リチルムジイソプロピルアミド、rt.=室温、THF=テトラヒドロフラン、TFA=トリフルオロ酢酸
【0054】
【表1】




【0055】
実施例1
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
DMF 40ml中のメチル2−メトキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)−アセテートクロリド(P. Seneci, I. Leger, M. Souchet, G. Nadler, Tetrahedron 1997,53, 17097-17114と同様にして、メチル2−クロロ−2−メトキシアセテート及びトリフェニルホスフィンから調製)6.39g(15.9mmol)、リチウムメチラート0.68g(17.0mmol)及び4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド3.89g(10.6mmol)の懸濁液を75℃で23時間加熱した。明褐色の反応溶液を0℃に冷却し、形成された白色の結晶を濾取し、メタノール40mlで洗浄し、恒量に乾燥して(20℃/1mbar/16時間)、純度97.5%(GC領域;方法:カラム:DB−1(15m0.32mm);注入器:270℃;検出器:320℃;オーブン150〜310℃(4℃/分);キャリアガス:H2(60KPa)。保持時間:出発物質(アルデヒド1)、23.8分間;E−エステル5、28.8分間;Z−エステル5、30.8分間)の標記化合物3.54g(73%)を得た。融点:165℃。MS:450.3(M+H)+
【0056】
【表2】

【0057】
実施例2
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
DMF 40ml中のメチル2−メトキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)アセテートクロリド6.57g(16.4mmol)、カリウムtert−ブチラート2.00g(17.5mmol)及び4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド4.00g(10.9mmol)の懸濁液を75℃で23時間加熱した。懸濁液を0℃に冷却し、固体を濾取し、メタノール40mlで洗浄した。フィルターケーキをジクロロメタン150mlと水150mlの混合物中で溶解し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固して、純度97.9%(GC領域)の標記化合物3.86g(78%)を白色の結晶として得た。
【0058】
実施例3
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
実施例2と同様にして、純度95%(GC領域)の標記化合物2.87g(58%)を、メチル2−メトキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)アセテートクロリド6.57g(16.4mmol)、ナトリウムメチラート0.97g(17.5mmol)及び4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド4.00g(10.9mmol)から単離した。
【0059】
実施例4
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
DMF 500ml中のメチル2−メトキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)アセテートクロリド81.5g(202.2mmol)、リチウムメチラート8.62g(215.7mmol)及び4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド50.00g(134.8mmol)の懸濁液を75℃で24時間加熱した。明褐色の反応溶液を0℃に冷却し、形成された結晶を濾取し、実施例1で記載されたように精製して、純度97.7%(GC領域)の標記化合物46.76g(76%)を得た。GC5.6領域−%E−エステル5、1.3領域−%Z−エステル5及び87.5領域−%トリフェニルホスフィンに従って含有する母液を、2−メチル−5−tert-ブチルチオフェノール3.04g(16.8mmol)及びα,α′−アゾ−イソブチロニトリル2.76g(16.8mmol)で処理した。得られた暗褐色の溶液を90℃で16時間撹拌した。追加の2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール6.08g(33.6mmol)及びα,α′−アゾ−イソブチロニトリル5.42(33.6mmol)を加え、反応溶液を90℃で更に6時間撹拌し、次に室温に冷却した。撹拌下で水200mlを加え、形成された懸濁液を0℃に冷却した。固体を濾取し、メタノール100ml中、r.t.で15分間溶解し、濾取し、2分割したメタノール100mlで洗浄した。明褐色のフィルターケーキを乾燥して、恒量の7.72gとした。DMF 30mlから結晶化して、純度99%(GC領域)の標記化合物5.62g(9.3%)を明褐色の結晶として得た。
【0060】
実施例5
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
DMF 50ml中の(ジエトキシホスホリル)−メトキシ酢酸メチルエステル(H. Gross, Justus Liebigs Ann. Chem. 1967, 707, 35-43)6.07g(20.0mmol)、リチウムメチラート0.86g(21.6mmol)及び4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド5.00g(13.5mmol)を75℃で21時間加熱した。懸濁液を0℃に冷却し、固体を濾取し、冷(−15℃)エタノール30mlで洗浄した。フィルターケーキをジクロロメタン100mlと水60mlの混合物中で溶解し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固した。それにより、純度91%(GC領域)の標記化合物3.45g(55%)を白色の結晶として得た。
【0061】
実施例6
a〕3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステル(シン/アンチ混合物)
THF 30ml中のメトキシ酢酸メチルエステル3.17ml(31.4mmol)の溶液に、LDA(THF/ヘプタン/エチルベンゼン中2M、34.2mmol)17mlを−78℃で15分以内に滴加した。更に15分間撹拌した後、ジクロロメタン70ml中の4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド5.00g(13.7mmol)の溶液を20分以内に滴加した。暗褐色の反応溶液を更に60分間撹拌し、次に150分以内に室温まで温め、再び0℃に冷却し、氷水50ml及び濃塩酸(pH3)6mlで処理した。有機層を分離し、水25mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固して、粗生成物8.81gを褐色の油状物として得た。フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン/AcOEt=9/1)により、1:4のシン/アンチ混合物として、純度98.3%(GC領域;方法;カラム:DB−1(15m0.32mm);注入器:270℃;検出器:320℃;オーブン150〜310℃(4℃/分);キャリアガス:H2(60KPa);試料をBSTFA/ピリジンでシリル化。保持時間:出発物質(アルデヒド1)、23.8分間;シン−アルコール6、28.1分間;アンチ−アルコール6、28.5分間)の標記化合物5.89g(91%)を黄色を帯びた結晶質固体として得た。
【0062】
【表3】

【0063】
b〕(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステル(5.25mmol、1:4のシン/アンチ混合物)2.50gをDMF 25mlに室温で溶解した。濃硫酸0.59ml(10.5mmol)の添加の後、褐色の溶液を100℃で15時間撹拌した。反応溶液をr.t.に冷却する間に、生成物が結晶化した。撹拌下でメタノール15mlをr.t.で加え、懸濁液を0℃で1時間撹拌した。白色の結晶を濾取し、2分割した冷(−15℃)メタノール25mlで洗浄し、恒量に乾燥して(20℃/5mbar/16時間)、純度99.5%(GC領域)の標記化合物2.13g(90%)を得た。
【0064】
実施例7
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
実施例6と同様にして、粗3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステル(シン/アンチ=1:4)8.6×gを、4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド5.00g(13.66mmol)及びメトキシ酢酸メチルエステル3.17ml(31.4mmol)から、褐色の油状物として単離した。この粗中間体をDMF 50mlに室温で溶解した。次に、濃硫酸1.20ml(10.5mmol)を加え、得られた暗褐色の溶液を100℃で15時間撹拌した。反応溶液をr.t.に冷却すると、生成物が結晶化した。エタノール50mlを加え、懸濁液を0℃で1時間撹拌した。白色の結晶を濾取し、2分割した冷(−15℃)エタノール75mlで洗浄し、恒量に乾燥して(20℃/5mbar/16時間)、純度98.3%(GC領域)の標記化合物4.812g(77%)を得た。
【0065】
実施例8
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル
THF 30ml中のメトキシ酢酸メチルエステル3.17ml(31.4mmol)の溶液に、四塩化チタン3.5ml(31.4mmol)を0℃で15分以内に滴加した。黄色の溶液を同じ温度で更に15分間撹拌した後、N−エチルジイソプロピルアミン6.0ml(34.1mmol)を5分以内で加え、黄色/橙色の溶液を更に15分間撹拌した。ジクロロメタン70ml中の4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド5.00g(13.66mmol)の溶液を20分以内に滴加し、反応混合物を更に60分間撹拌した。反応溶液をr.t.まで温め、同じ温度で90分間撹拌し、0℃に冷却し、氷水50mlで処理した。有機層を分離し、水25mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾固して、粗3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステル(シン/アンチ=6:4)8.15gを橙色の油状物として得た。この中間体をDMF 50mlにr.t.で溶解した後、濃硫酸1.20ml(10.5mmol)を加え、得られた暗褐色の溶液を100℃で17時間撹拌した。反応溶液をr.t.に冷却すると、生成物が結晶化した。エタノール50mlを加え、懸濁液を0℃で1時間撹拌した。白色の結晶を濾取し、2分割した冷(−15℃)メタノール75mlで洗浄し、恒量に乾燥して(20℃/5mbar/16時間)、純度98.6%(GC領域)の標記化合物3.82g(61%)を得た。
【0066】
実施例9
(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸
メタノール920ml中の(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル45.81g(100.9mmol)の懸濁液に、水92ml中の水酸化カリウム40.15g(615.3mmol)の溶液を5分以内に加えた。白色の懸濁液を100℃で90分間撹拌した。形成された黄色を帯びた溶液を60℃に冷却し、濃塩酸(pH3〜4)54mlを5分以内に滴加し、得られた濃厚懸濁液を0℃に冷却した。固体を濾取し、4分割した水1000mlで洗浄した。フィルターケーキをエタノール920ml中に80℃で1時間、その後0℃で2時間懸濁した。白色の結晶を濾取し、2分割した冷(−15℃)エタノール300mlで洗浄し、恒量に乾燥して(20℃/5mbar/16時間)、HPLC(実施例10で記載される方法)により純度>99.9%の標記化合物41.66g(95%)を得た。
【0067】
【表4】

【0068】
実施例10
(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}プロピオン酸
不斉水素化:グローブボックス(O2含有量≦2ppm)において、〔Ru(OAc)2((S)−TMBTP)〕6.51mg(0.00804mmol)を5mlのフラスコ中でメタノール2mlに溶解した。得られた溶液を15分間撹拌した。TMBTPは、4,4′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−2,2′,5,5′−テトラメチル−3,3′−ジチオフェンであり、(R)又は(S)鏡像異性体としてのその合成は、Italfarmaco Sud 出願WO96/01831及びT. Benincori et al, J. Org. Chem. 2000, 65, 2043 で記載されている。錯体〔Ru(OAc)2((+)−TMBTP)〕は、N. Feiken et al, Organometallics 1997, 16, 537, 31P-NMR (CDCl3): 61.4 ppm (s) で報告されている一般的手順と同様に合成した。
【0069】
185mlのステンレススチールオートクレーブを、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸7.0g(16.1mmol)、ジクロロメタン20ml、メタノール10ml、1M NaOH水溶液3.21ml(3.21mmol)及び触媒溶液と共に同じグローブボックス中に装填し、溶液を均質にした。最後に、メタノール18mlを加え、溶液は懸濁液になった。オートクレーブを密閉し、水素化を、40℃、水素30bar下で撹拌しながら実施した。6時間後、オートクレーブを開け、黄褐色の溶液をロータリーエパボレーターで乾固して(50℃/5mbar)、鏡像異性的純度93%及びHPLCによる純度97.1%の粗成生物7.27gを固体として得た。
【0070】
変換決定のHPLC法:Chromolith Performance Merckカラム、4.6×1000mm、KH2PO4 10mmol/水1リットル、pH3の緩衝液、溶媒A:水、溶媒B:アセトニトリル、溶媒C:アセトニトリル600ml中の緩衝液300ml、6分以内にA/B/C 60/30/10%から10/80/10%の勾配、60/30/10%で1分間、2.5ml/分、267nm。保持時間:Z−酸出発物質3.3分間、S−酸3.76分間。
【0071】
鏡像異性体過剰率(ee)決定のHPLC法:Chiralpak-ADカラム、25cm×300μm、1.5%トリフルオロ酢酸を有する92%ヘプタン/8%エタノール、流量5μl/分で25分間、次に8μl/分、25℃、267nm。保持時間:R−酸16.3分間、S−酸18.4分間。
【0072】
実施例11
実施例10の粗生成物を下記のように処理し、酸として単離することにより改良した:
処理手順a):
テトラヒドロフラン56ml中の粗生成物7.27g(16.1mmol)の溶液を、1N NaOH水溶液40.2ml(40.2mmol)により約2℃で処理した。得られた橙色の懸濁液を22℃で1時間撹拌し、次に脱イオン水90mlを含有する分液漏斗に移した。二相混合物をt−ブチルメチルエーテル(合計116ml)で抽出し、水相を25%塩酸8.41mlで酸性化し、得られた懸濁液をジクロロメタン250mlで抽出した。この溶液を脱色炭で処理し、濾過し、40℃で濃縮し、次に温度をゆっくりと−10℃に下げ、種晶を加えた。得られた懸濁液を−10℃で一晩撹拌し、次に濾過した。フィルターケーキを冷ジクロロメタン15mlで洗浄し、高真空下で恒量に乾燥して、98.2%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸4.98g(70.8%)を得た。母液を蒸発乾固し、上記のジクロロメタンから再び結晶化して、76.2%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸1.356gを得た。2つの結晶質画分を合わせ、還流しながら酢酸エチルで溶解した。6時間以内に室温にゆっくりと冷却し、種晶の添加により潤沢な沈殿が生じ、それは冷蔵庫中で一晩で完了した。最後に沈殿物を濾過し、上記のように恒量に乾燥して、99.0%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸5.684g(80.8%)を得た。
【0073】
【表5】

【0074】
処理手順b):
テトラヒドロフラン56ml中の粗生成物7.74g(16.1mmol)の溶液を、1N NaOH水溶液40.2ml(40.2mmol)により約2℃で処理した。得られた橙色の懸濁液を22℃で1時間撹拌し、次に脱イオン水90mlを含有する分液漏斗に移した。二相混合物をt−ブチルメチルエーテル(合計116ml)で抽出し、水相を25%塩酸8.41mlで酸性化し、得られた懸濁液を酢酸エチル252mlで抽出した。この溶液を水で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、脱色炭で処理し、濾過し、52℃で濃縮した。次に、撹拌しながら温度を2時間以内に室温にゆっくりと下げて、種晶を加えた。懸濁液を8時間以内に−10℃に冷却し、濾過し、上記のように恒量に乾燥して、97.9%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸5.643g(80.2%)を得た(画分K1)。母液を蒸発し、残渣を上記の酢酸エチルから再び結晶化して、91.6%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸0.702g(10%)を得た(画分K2)。画分K1を手順a)で記載されたように酢酸エチルから再結晶して、99.6%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸5.095g(72.5%)からなる第1の産出物を得た。画分K2も手順a)で記載されたように再結晶して、98.4%eeの(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸0.513g(7.3%)を得た。
【0075】
実施例12
実施例10の粗物質を下記のように処理し、ジアステレオマー塩として単離することにより改良した:
手順a):
テトラヒドロフラン60ml中の粗生成物11.75g(26.8mmol)の溶液に、テトラヒドロフラン7ml中の(S)−フェニルエチルアミン(Fulukaより市販されている)3.452g(28.2mmol)の溶液を、撹拌下で還流しながら(63〜65%℃)滴加した。種晶の添加により、直ぐに潤沢な結晶化が始まった。浴加熱のスイッチを切り、結晶化は、室温で一晩で完了した。白色の結晶を濾取し、冷(−20℃)テトラヒドロフラン30mlで洗浄し、恒量に乾燥して(50℃/10mbar、次に60℃/0.5mbar/8.5時間)、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸13.4g(88.9%)を、99.4%ee、純度99.6%(HPLC領域)、融点157〜158℃の(S)−フェニルエチルアミン塩として得た。
【0076】
酢酸エチル25ml中のこの(S,S)−塩2.38gの懸濁液を、2M塩酸2.1ml及び水5mlで処理した。得られた溶液を室温で45分間撹拌した。有機相の分離、水相の酢酸エチルによる洗浄、合わせた有機層の硫酸ナトリウムによる乾燥、及び溶媒の乾燥(10mbar/45℃)によって、99.5%ee、純度99.7%(HPLC領域)の(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸1.86g(99.5%)を得た。
【0077】
手順b):
テトラヒドロフラン6ml中の粗生成物(92%ee、HPLCによる純度約96%)1.0g(2.29mmol)の溶液に、テトラヒドロフラン3ml中のL−ノルエフェドリン346mg(2.29mmol)の溶液を、撹拌下、50℃で滴下した。1時間以内に、大量の結晶が形成し、結晶化は、室温で一晩で完了した。濾過の後、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸0.91g(67.6%)を、99.6%ee、純度99.0%(HPLC領域)、融点143〜144℃のL−ノルエフェドリン塩として単離した。
【0078】
手順c):
手順b)と同様にして、テトラヒドロフラン6ml中の粗生成物(92%ee、HPLCによる純度約96%)1.0g(2.29mmol)の溶液を、等モル量のキニンで処理して、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸0.90g(51.7%)を、98.6%ee、純度98.5%(HPLC領域)、融点129〜131℃のキニン塩として得た。
【0079】
手順d):
手順b)と同様にして、酢酸エチル10ml中の粗生成物(92%ee、HPLCによる純度約96%)1.0g(2.29mmol)の溶液を、等モル量のシンコニジン(cinconidine)で処理して、冷蔵庫で結晶化した後、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸1.17g(70%)を、93%ee、純度96.4%(HPLC領域)、融点121〜123℃のシンコニジン塩として得た。
【0080】
実施例13
実施例10と同様の方法ではあるが、塩基としてNaOHの代わりに(S)−フェニルエチルアミン(2.29mmol)の存在下で、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸5g(11.48mmol)を、メタノール/ジクロロメタン(3:2)37ml中、〔Ru(OAc)2((S)−TMBTP)〕(S/Cモル比10,000)0.93mgの存在下で、30barの水素下、40℃で4時間、次に60℃で2時間不斉水素化して、99.9%の変換を達成した。反応混合物のロータリー蒸発により、91.8%ee、純度99.4%(HPLC領域)の(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を定量的に得た。実施例13と同様に、表1で記載されている実験を、異なる基質対触媒比で実施した。
【0081】
【表6】

【0082】
実施例14
実施例10と同様の方法において、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸2.5g(5.74mmol)を、〔Ru(OAc)2((S)−6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕(S/Cモル比2000)3.22mgの存在下、15barの水素下で40℃で24時間不斉水素化して、99.6%の変換を達成した。反応混合物のロータリー蒸発により、75.8%ee、純度98.5%(HPLC領域)の(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を定量的に得た。
【0083】
テトラヒドロフラン33ml中の粗生成物6.50g(15.8mmol)の溶液に、テトラヒドロフラン3ml中の(S)−フェニルエチルアミン(Fulukaより市販されている)1.91g(15.6mmol)の溶液を、撹拌下で還流しながら(63〜65%℃)滴加した。種晶の添加及び浴加熱のスイッチを切ることにより、結晶化が始まった。結晶化は、室温で一晩で完了し、白色の結晶を濾取し、冷(−20℃)テトラヒドロフラン20mlで洗浄し、恒量に乾燥して(50℃/10mbar/6時間)、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸6.57g(79.2%)を、96.3%ee、純度99.9%(HPLC領域)、融点157〜159.5℃の(S)−フェニルエチルアミン塩として得た。
【0084】
実施例15
グローブボックスにおいて(O2含有量≦2ppm)、3mlのガラスインサート及び電磁撹拌棒を備えた35mlのオートクレーブに、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸50mg(0.11mmol)、〔Ru(OAc)2((S)−6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕2.6mg及びエタノール1mlを装填した。不斉水素化を60barの水素下で60℃で3時間実施して、97.5%の変換を達成した。HPLC分析は、得られた(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}プロピオン酸が純度97.5%及び71%eeを有することを示した。
【0085】
実施例16
実施例15と同様の方法において、下記の水素化は、基質として(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸を、触媒として一般式:〔Ru(OAc)2(ジホスフィン)〕のルテニウム錯体の存在下で用いて実施した。反応混合物を蒸発乾固し、残渣を酢酸エチルで溶解し、得られた溶液をシリカゲルで濾過し、実施例10で記載されたように分析して、変換及び得られた(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸のeeを決定した。得られた結果を表1で報告する。
【0086】
【表7】

【0087】
実施例17
実施例15と同様の方法において、下記の水素化は、基質として(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸を、触媒として一般式:〔Ru(OAc)2(ジホスフィン)〕のルテニウム錯体の存在下、種々の溶媒中で用いて実施した。反応混合物を実施例16で記載されているように処理及び分析した。存在する場合は、単一のジホスフィンによる第2列の結果は、1モル当量(0.11mmol)のトリエチルアミンの添加により得た。全ての場合において、変換は≧95%であった。得られたee値を表2で報告する。
【0088】
【表8】

【0089】
実施例18
グローブボックスにおいて(O2含有量≦2ppm)、電磁撹拌棒を備えた35mlのオートクレーブに、エタノール中(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸300〜436mg及び必要量の〔Ru(OAc)2((S)−TMBTP)〕を装填して、報告されているS/C比率を達成した。不斉水素化を表3で報告されている温度及び圧力で6時間実施した。反応混合物を実施例16で記載されているように処理及び分析した。
【0090】
【表9】

【0091】
実施例19
グローブボックスにおいて(O2含有量≦2ppm)、機械式撹拌機を備えた185mlのオートクレーブに、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸、溶媒、塩基及び必要量の〔Ru(OAc)2((S)−TMBTP)〕を装填して、報告されているS/C比率を達成した。ナトリウムメチラート(NaOMe)をメタノール溶液(Fluka prakt.カタログ番号71748)として加え、NaOH、KOH及びNa2HPO4を1M水溶液として加えた。不斉水素化を表4で報告されている温度及び圧力で実施した。反応混合物を実施例16で記載されているように処理及び分析した。
【0092】
【表10】



【0093】
実施例20
グローブボックスにおいて(O2含有量≦2ppm)、機械式撹拌機を備えた185mlのオートクレーブに、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸1g、溶媒としてMeOH 15ml/CH2Cl2 10ml(c=3.8%w/w)、塩基及び必要量の〔Ru(OAc)2((S)−TMBTP)〕を装填して、報告されているS/C比率を達成した。NaOHを1M水溶液として加えた。不斉水素化を表5で報告されている温度及び圧力で実施した。
【0094】
【表11】

【0095】
実施例21
グローブボックス(O2含有量≦2ppm)において、メスフラスコ中で〔Rh(シクロオクタジエン)2〕BF4 9.3mg(0.023mmol)を、テトラヒドロフラン8ml及びメタノール2mlに溶解した。電磁撹拌機を備えた2.5mlのオートクレーブのガラスインサートにおいて、〔Rh(シクロオクタジエン)2〕BF4溶液1mlを、0.0023mmolに対応する量のキラルジホスフィン及びその場で形成された触媒溶液に加え、40℃で約1時間撹拌した。次に、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸50mg(0.11mmol)を加え、オートクレーブを密閉し、水素で加圧した。不斉水素化を60barの水素下で60℃で3時間実施した。反応混合物を実施例15で記載されているように処理及び分析した。結果を表6に報告する。
【0096】
【表12】

【0097】
実施例22
実施例21と同様の方法において、下記の水素化は、基質として(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸を、〔Ru(シクロオクタジエン)2〕BF4から調製されin situで形成される触媒溶液及びキラルジホスフィンの存在下、種々の溶媒中で用いて実施した。反応混合物を実施例16で記載されているように処理及び分析した。結果を表7にまとめ、そこでは各実験におけるee値が報告され、変換は括弧内に書かれている。
【0098】
【表13】

【0099】
実施例23
a)トリブチルアンモニウムヒドロキシ−(4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル)−アセテート
機械式撹拌機、温度計、滴加漏斗、pHメータに接続しているセンサ及びアルゴン入口を備えた2Lの反応器に、アルゴン下で4−ヒドロキシベンゾチオフェン76.2g(500mmol)及び10%KOH水溶液617.1g(1100mmol)を装填した。暗色の溶液に、水中の50%グリオキシル酸溶液約85.91g(580mmol)を30分以内に0〜5℃で加えた。必要であれば、添加の終了時に溶液のpHが11.5になるように、更なるグリオキシル酸を加えた。0〜5℃で3時間撹拌した後、tert-ブチルメチルエーテル200mlを反応混合物に加え、続いて、pHが約7.0になるように、水中の25%HCl溶液約70mlを加えた。二相混合物をSpeedexで濾過し、次に、pHが約2.0になるように、水中25%HCl溶液約70mlを水相に加えた。tert-ブチルメチルエーテル400mlの添加後、有機層を室温で分離し、水相をtert-ブチルメチルエーテルで洗浄した。合わせた有機相を約300mlの容量に濃縮し、残渣をtert-ブチルメチルエーテル50ml及びアセトニトリル100mlで希釈した。得られた明澄な溶液に、tert-ブチルメチルエーテル100ml中のトリブチルアミン93.6g(500mmol)の溶液を、生成物の結晶を播種しながら、20〜30℃で1時間以内に少量ずつ加えた。得られた懸濁液を20〜30℃で一晩撹拌し、次に濾過した。フィルターケーキをtert-ブチルメチルエーテル/アセトニトリル3:1 160mlで洗浄し、結晶を60℃/10mbarで一晩乾燥して、トリブチルアンモニウムヒドロキシ−(4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル)−アセテート108.9g(53.1%)を、融点約200℃(分解)の白色の結晶として得た。
【0100】
b)4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒド
機械式撹拌機、温度計、滴加漏斗及びアルゴン入口を備えた750mlの四つ首ガラスフラスコに、アルゴン下でトリブチルアンモニウムヒドロキシ−(4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル)−アセテート41.0g(100mmol)、硫酸鉄(III)60.5g(115mmol)、及び無水エタノール60mlと0.4N硫酸水溶液300mlから調製された混合物を装填した。次に撹拌を始め、反応混合物を55〜60℃で5時間加熱した。室温に冷却した後、酢酸イソプロピル300ml及び水100mlを撹拌下で加え、次に有機相を分離し、pHメータを備えた500mlのガラスフラスコに移した。水(pHは3.0であった)150mlの添加後、2N水酸化ナトリウム水溶液約58mlを、pH12〜12.5が達成されるまで20℃で滴加した。有機相を除去し、水相に、pH4〜4.5が達成されるまで、硫酸の2N水溶液約54mlを10〜15℃で滴加した。添加の間に生成物が沈殿した。懸濁液を室温で一晩、氷浴で1.2時間撹拌し、次に濾過した。フィルターケーキを水で洗浄し、60℃/15mbarで乾燥して、4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒド17.23g(94%)を、融点204℃の白色の結晶として得た。
【0101】
c)4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒド
温度計、撹拌機及びアルゴン入口を備えた750mlガラスフラスコに、アルゴン下で4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒド9.32g(50mmol)、炭酸カリウム7.60g(55mmol)及びDMF 135mlを装填した。得られた懸濁液を撹拌しながら86℃に加熱し、次にDMF 75ml中の2−(5−メチル−2−フェニル)−4−オキサゾリル)エタノールメタンスルホニルエステル12.24g(50mmol)の溶液をこの温度で60分以内に加えた。反応混合物を同じ温度で6時間撹拌し、次にトルエン90ml、続いて水300mlを15分以内に滴加し、温度を75℃を超えるように保持した。水相を分離し、温トルエン30mlで抽出した。2つのトルエン相を合わせ、水で再抽出し、500mlのガラスフラスコに移し、最後にメタノール180mlで処理した。得られた懸濁液を室温で一晩、−13℃で2時間撹拌した。次に懸濁液を濾過し、フィルターケーキをトルエン、冷メタノールで洗浄し、最後に60℃/10mbarで乾燥して、4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒド15.19g(83%)を、融点154℃の無色の結晶として得た。
【0102】
d)4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド
機械式撹拌機、温度計、冷却器、滴加漏斗及びアルゴン入口を備えた2lの四つ首ガラスフラスコに、アルゴン下でトリブチルアンモニウムヒドロキシ−(4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル)−アセテート103.2g(250mmol)、硫酸鉄(III)151.3g(287mmol)、イソプロパノール150ml、水750mlと2N硫酸150mlの混合物を順番に装填した。反応混合物を撹拌下で63〜65℃で2時間加熱した。室温に冷却した後、酢酸イソプロピル600mlを加え、混合物を濾過した。濾液を水100mlで洗浄し、次に有機相を濃縮した(約470mlを50℃/150〜50mbarで留去した)。DMF 625mlの添加後、残りのより揮発性のある溶媒を50℃/150〜50mbarで完全に除去した。この時点の含水量は、0.4%未満であった。中間体4−ヒドロキシ−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボキシアルデヒドを含有するこの懸濁液を、DMF 660mlの助けを借りて、炭酸カリウム38.0gが装填されている4l反応器(上記の2l反応器と同様に具備されている)に移した。暗色の懸濁液に、DMF 275ml中の2−(5−メチル−2−フェニル)−4−オキサゾリル)エタノールメタンスルホニルエステル70.4g(250mmol)の溶液を、86〜90℃で60分以内に加えた。反応混合物を同じ温度で6時間撹拌し、次にトルエン450ml、続いて水950mlを加え、温度を75℃を超えるように保持した。水相を分離し、温トルエン150mlで抽出した。2つのトルエン相を合わせ、水で再抽出し、最後に65〜40℃の温度でメタノール900mlにより処理した。得られた懸濁液を40℃で1時間撹拌し、−15℃に冷却し、−15℃で3時間撹拌した。最後に懸濁液を濾過し、フィルターケーキを、冷(−15℃)トルエン/メタノール混合物100mlで洗浄し、60℃/10mbarで乾燥して、4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒド76.8g(84.5%)を、融点154℃の無色の結晶として得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】


で示される化合物又はその塩の製造方法であって、式(II):
【化2】


で示される化合物又はその塩を、ルテニウム及びキラルジホスフィンリガンドを含むか、又はロジウム及びキラルジホスフィンリガンドを含む触媒の存在下で接触不斉水素化して、前記式(I)の化合物を得ることを含み、
ここで、
1は、アリール又はヘテロアリールであり、
2は、低級アルキルであり、
3は、低級アルキルである
方法。
【請求項2】
キラルジホスフィンリガンドが、式(III)、(IV)、(V)、(VI)又は(VII):
【化3】


〔式中、
4は、低級アルキルであり;
5は、低級アルキルであり;
6は、独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル又は低級アルキルであり;
7は、N(低級アルキル)2又はピペリジニルであり;
8は、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ又は低級アルキル−C(O)O−であり;
9及びR10は、独立して、水素、低級アルキル、低級アルコキシ又はジ(低級アルキル)アミノであるか;或いは
同じフェニル基に結合しているR8及びR9、又は同じフェニル基に結合しているR9及びR10、又は両方のR8は、一緒になって、−X−(CH2n−Y−であり、ここで、Xは、−O−又は−C(O)−O−であり、Yは、−O−又は−N(低級アルキル)−であり、そしてnは、1〜6の整数であるか;或いは
8及びR9、又はR9及びR10は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、ナフチル、テトラヒドロナフチル又はジベンゾフラン環を形成し;
11は、独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ジ(低級アルキル)アミノ、モルホリノ、フェニル及びトリ(低級アルキル)シリルからなる群より独立して選択される0〜7個の置換基で置換されている、フェニル又はナフチルであり;
12は、独立して低級アルキルである〕
によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、式:〔Ru(キラルジホスフィン)B2〕で示され、ここでキラルジホスフィンが、請求項2で定義された式(VI)又は(VII)により特徴付けられ、ここでBが、CH3COO-、CF3COO-又はハロゲン化物である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
キラルジホスフィンが、
(S)−MeOBIPHEP、(S)−BIPHEMP、(S)−TMBTP、(S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP、(S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP、(S)−トリMeOBIPHEP、(R,R,S,S)−マンジホス、(S)−BnOBIPHEP、(S)−ベンゾイルBIPHEP、(S)−pTol−BIPHEMP、(S)−tブチルCOOBIPHEP、(S)−iPrOBIPHEP、(S)−pフェニル−MeOBIPHEP、(S)−pAn−MeOBIPHEP、pTol−MeOBIPHEP、(S)−3,5−キシル−MeOBIPHEP、(S)−3,5−キシル−BIPHEMP、(S)−BINAP及び(S)−2−フリル−MeOBIPHEPからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
キラルジホスフィンが、(S)−TMBTP、(S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP又は(S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEPである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Bが、CH3COO-又はCF3COO-である、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、〔Ru(CH3COO-2((S)−TMBTP)〕、〔Ru(CF3COO-2((S)−TMBTP)〕、〔Ru(CH3COO-2((S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕、〔Ru(CF3COO-2((S)−(2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕、〔Ru(CH3COO-2((S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕及び〔Ru(CF3COO-2((S)−(6−MeO−2−ナフチル)−MeOBIPHEP)〕からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
接触水素化を、20〜40barの圧力で実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
接触水素化を、20〜60℃の温度で実施する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
接触水素化を、塩基の存在下で実施する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
接触水素化を、メタノール、ジクロロメタン、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル若しくはトルエン又はこれらの組み合わせである溶媒中で実施する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
接触水素化を、メタノールとジクロロメタンの3:2混合物である溶媒中で実施する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
式(I)の化合物の結晶化を追加的に含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第一級アミンとの塩としての式(I)の化合物の結晶化を追加的に含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
第一級アミンが(S)−フェニルエチルアミンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(I)の化合物が、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
式(I)の化合物の薬学的に許容されうる塩への変換を追加的に含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1がフェニルである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
2がメチルである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
3がメチルである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造方法であって、
a)4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−カルボアルデヒドを、メトキシ酢酸メチルエステルと反応させて、3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸メチルエステルを得ること;
b)3−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステルに変換すること;
c)(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステルを、(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸に変換すること;
d)(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸を、請求項1〜20のいずれか1項で定義された手順を用いて水素化して、(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸を得ること
を含む方法。
【請求項22】
(S)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−プロピオン酸の製造のための、請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法の使用。
【請求項23】
化合物(Z)−2−メトキシ−3−{4−〔2−(5−メチル−2−フェニル−オキサゾール−4−イル)−エトキシ〕−ベンゾ〔b〕チオフェン−7−イル}−アクリル酸メチルエステル。
【請求項24】
上記で定義された発明。

【公表番号】特表2007−506800(P2007−506800A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530000(P2006−530000)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010568
【国際公開番号】WO2005/030764
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】