説明

キーオペレーションシステム

【課題】本発明は、コストを低減できるキーオペレーションシステムを提供する。
【解決手段】キーオペレーションシステム10は、バッテリ70と、双方向通信部41と、非常用通信部43と、イグニッションキープレート80と、これらを収容するハウジング30とを備える。非常用通信部43は、電磁誘導によって得られる電力を動力源として駆動して車両側と通信する。イグニッションキープレート80は、車両に設置されるキーシリンダ23に挿入可能な被挿入部81を有して双方向通信部41と非常用通信部43とは別部品である。イグニッションキープレート80は、当該被挿入部81がハウジング30内に収容される第1の姿勢P1でハウジング30に支持可能であるとともに被挿入部81がハウジング30の外部に出る第2の姿勢P2でハウジング30に支持可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用イグニッションキーとしてキープレートを備えるキーオペレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯キー装置を有するだけで自動車のドアのロックの解除およびエンジンの始動などを行うことができるキーレスエントリーシステムにおいて、自動車の盗難に対するセキュリティ性を高めるためにイモビライザシステムが提案されている。
【0003】
イモビライザシステムでは、携帯キー装置と車両側との間で認証信号の送受が行われ、当該携帯キー装置が有する認証信号が正規な信号であると認証されるとエンジンが始動される。
【0004】
このイモビライザシステムで用いられる携帯キー装置であるキーオペレーションシステムは、車両側と認証信号の送受を行う双方向通信部を備える本体と、非常用イグニッションキーとを備えている。本体は、双方向通信部の動力源としてのバッテリを備えており、これら双方向通信部とバッテリとは、ハウジング内に収容されている。
【0005】
非常用イグニッションキーは、バッテリに蓄えられた電荷がなくなったときに車両側に設置されるキーシリンダ内に挿入されるメカニカルキーであって、キープレートと当該キープレートに一体的に組み付けられるトンラスポンダとから構成されている。
【0006】
車両側のキーシリンダにキープレートが挿入されると、電磁誘導によってトランスポンダ内のコンデンサに電荷が蓄電されてトランスポンダ内のICに予め設定されている認証信号が車両側に送信される。これによって、非常用イグニッションキーを用いた場合であっても、セキュリティ性が低下することはない(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11―81510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているキーオペレーションシステムでは、本体に収容される双方向通信部とは別に、非常用イグニッションキー装置のキープレートに一体的に組み付けられるトランスポンダを必要とする。さらに、トランスポンダをキープレートに樹脂モールドで一体化するなどしなければならない、非常用イグニッションキーのコストが高くなってしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的は、コストを低減できるキーオペレーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキーオペレーションシステムは、ハウジングと、バッテリと、第1の通信部と、第2の通信部と、イグニッションキープレートと、備える。前記バッテリは、前記ハウジング内に収容される。前記第1の通信部は、前記バッテリを動力源として駆動して車両側と通信する。前記第1の通信部は、前記ハウジング内に収容される。前記第2の通信部は、電磁誘導によって得られる電力を動力源として駆動して車両側と通信する。前記第2の通信部は、前記ハウジング内に収容される。前記イグニッションキープレートは、車両に設置されるキーシリンダに挿入可能な被挿入部を有して前記第1の通信部と前記第2の通信部とは別部品である。前記イグニッションキープレートは、前記被挿入部が前記ハウジング内に収容される第1の姿勢で前記ハウジングに支持可能であるとともに前記被挿入部が前記ハウジングの外部に出る第2の姿勢で前記ハウジングに支持可能である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、キーオペレーションシステムは、通信装置を備える。前記通信装置は、前記第1の通信部と前記第2の通信部とを内側に収容する1つの部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キーオペレーションシステムのコストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るキーオペレーションシステムを、図1〜7を用いて説明する。キーオペレーションシステム10は、自動車20(図5に示す)に採用される。
【0013】
図1は、キーオペレーションシステム10を示す斜視図である。図2は、キーオペレーションシステム10の内部を模式的に示すブロック図である。図1,2に示すように、キーオペレーションシステム10は、ハウジング30と、マイクロコンピュータ40と、キー側受信アンテナ50と、キー側送信アンテナ60と、バッテリ70と、イグニッションキープレート80とを備えている。
【0014】
マイクロコンピュータ40は、本発明で言う通信装置の一例であって、双方向通信部41と、受信コードコントロール42と、非常用通信部43とを備えており、ハウジング30内に収容されている。
【0015】
双方向通信部41は、本発明で言う第1の通信部である。双方向通信部41は、キー側送信アンテナ60とに電気的に接続されている。また、双方向通信部41は、後述される受信コードコントロール42を介してキー側受信アンテナ50に電気的に接続されている。双方向通信部41は、キー側受信アンテナ50とキー側送信アンテナ60とを用いて自動車20側との認証を行うために用いられるキー側認証信号を自動車20側に送信するとともに、自動車20側から車両側認証信号を受信する。
【0016】
バッテリ70は、双方向通信部41の動力源であって、双方向通信部41に電気的に接続されている。キー側受信アンテナ50とキー側送信アンテナ60とバッテリ70とは、ハウジング30内に収容されている。
【0017】
受信コードコントロール42は、キー側受信アンテナ50と双方向通信部41と非常用通信部43とに電気的に接続されている。受信コードコントロール42内には、スイッチ部44と図示しない制御部が収容されている。スイッチ部44は、制御部の指示によってキー側受信アンテナ50と双方向通信部41とを接続する第1の接続状態S1(図2に示す)と、キー側受信アンテナ50と非常用通信部43とを接続する第2の接続状態S2(図4に示す)とを切り替える。
【0018】
非常用通信部43は、本発明で言う第2の通信部である。非常用通信部43は、図示しないアンテナコイルとトランスとコンデンサとICなどを備えている。非常用通信部43では、外部からの磁気を受けることによってアンテナコイル内に発生した電流がトランスを介してコンデンサに蓄電される。そして、コンデンサに蓄電された電圧が所定値に達するとICに予め設定された情報を発信する。
【0019】
イグニッションキープレート80は、例えば金属製であって、自動車側に設置されるキーシリンダ23内に挿入される被挿入部81と、当該被挿入部81と一体に形成されるつまみ部82とを有している。
【0020】
イグニッションキープレート80は、着脱可能にハウジング30に支持される。この点について、具体的に説明する。イグニッションキープレート80は、第1の姿勢P1と第2の姿勢P2とでハウジング30に支持される。
【0021】
ハウジング30には、収容孔31と、係合部32とが設けられている。収容孔31は、外部に開口している。収容孔31は、イグニッションキープレート80のつまみ部分82の一部を収容可能であるとともに被挿入部81をハウジング30内に通す。
【0022】
図2は、イグニッションキープレート80が第1の姿勢P1にある状態を示している。図2に示すように、第1の姿勢P1とは、イグニッションキープレート80の被挿入部81がハウジング30内に収容される姿勢である。
【0023】
イグニッションキープレート80には、当該イグニッションキープレート80が第1の姿勢P1にある状態において係合部32が略嵌る係合凹部83が形成されている。係合部32が係合凹部83に嵌ることによって、お互いが係合する。
【0024】
係合部32は、図中に2点鎖線で示すように、係合凹部83との係合が解除される位置(係合部32が係合凹部83から出る位置)まで移動可能である。係合部32は、図示しない付勢機構によって係合凹部83と係合する方向に付勢されている。図1に示すように、ハウジング30の外部には、係合部32を移動する際に用いられるつまみ33が露出している。つまみ33が移動されると、係合部32も移動する。係合部32と係合凹部83との係合を解除する際には、係合部32が係合凹部83から出る位置までつまみ33を移動する。
【0025】
なお、イグニッションキープレート80のつまみ部分82には、当該つまみ部分82を貫通する貫通孔84が形成されている。イグニッションキープレート80が第1の姿勢P1にある状態では、貫通孔84は、ハウジング30の外側に出ている。
【0026】
図3は、イグニッションキープレート80が第2の姿勢P2にある状態におけるキーオペレーションシステム10を示す斜視図である。図3に示すように、第2の姿勢P2とは、被挿入部81がハウジング30の外部に出る姿勢である。
【0027】
図4は、イグニッションキープレート80が第2の姿勢P2にある状態におけるキーオペレーションシステム10の内部を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、ハウジング30において収容孔31から内側に進んだ位置には、イグニッションキープレート80のつまみ部分82に当接することによって、イグニッションキープレート80を第2の姿勢P2に位置決めする縦壁部34が形成されている。イグニッションキープレート80が第2の姿勢P2にある状態では、つまみ部分82の貫通孔84は、ハウジング30内に収容される。
【0028】
このように、イグニッションキープレート80が第2の姿勢P2である状態でハウジング30に支持されるので、第2の姿勢P2にあるイグニッションキープレート80に対する非常用通信部43の相対位置が略固定される。
【0029】
図5は、キーオペレーションシステム10をキーとして用いる自動車20の車室21の前部分を示している。図5に示すように、車室21の前部分には、インストルメントパネル27と、ステアリング装置22と、イグニッションキープレート用のキーシリンダ23と、送信機24と、受信機25とが設置されている。キーシリンダ23は、ステアリング装置22の近傍に配置されている。
【0030】
キーシリンダ23の周囲には、キーリングアンテナ26が設けられている。キーリングアンテナ26は、キーシリンダ23の周囲に線材が巻回されることによって構成されている。送信機24と受信機25とは、キーシリンダ23の近傍に配置されている。送信機24と受信機25とは、例えば車幅方向に並んで配置されている。
【0031】
つぎに、自動車20のエンジン(図示せず)を始動する際におけるキーオペレーションシステム10の動作を説明する。バッテリ70が充分に電荷を蓄えている通常状態では、乗員がキーオペレーションシステム10を携帯している状態で図示しないイグニッションノブを回すと、エンジンが始動される。通常状態では、イグニッションキープレート80を用いなくてもエンジンを始動可能であるので、イグニッションキープレート80は、第1の姿勢P1でハウジング30に支持されている。
【0032】
具体的には、乗員がイグニッションノブを回すと、送信機24から車両側認証信号が発信される。キー側受信アンテナ50が車両側認証信号を受信すると、受信コードコントロール42の制御部がスイッチ部44の接続状態を、第1の接続状態S1にする。
【0033】
スイッチ部44の接続状態がS1になることによって、キー側受信アンテナ50が受信した車両側認証信号は、双方向通信部41に伝えられる。双方向通信部41は、車両側認証信号を確認するとともに、車両側認証信号が正規な信号である確認されるとキー側送信アンテナ60を介してキー側認証信号を発信する。
【0034】
受信機25は、キー側認証信号を受信するとともにキー側認証信号を確認する。キー側認証信号が正規な信号であると確認されるとエンジンが始動する。
【0035】
バッテリ70内に電荷がなくなった状態では、双方向通信部41が駆動しなくなるので、キーオペレーションシステム10を携帯しているだけではエンジンは始動しない。
【0036】
それゆえ、乗員は、イグニッションキープレート80を用いてエンジンを始動する。具体的には、図6に示すように、つまみ33を移動することによって係合部32を係合凹部83から出して係合部32と係合凹部83との係合を解除して、第1の姿勢P1でハウジング30内に収容されているイグニッションキープレート80をハウジング30内から引き出す。ついで、イグニッションキープレート80を、つまみ部分82から収容孔31内に挿入して、イグニッションキープレート80を第2の姿勢P2にする。
【0037】
ついで、第2の姿勢P2でハウジング30に支持されているイグニッションキープレート80の被挿入部81をキーシリンダ23内に挿入する。図7は、イグニッションキープレート80の被挿入部81がキーシリンダ23内に挿入された状態を概略的に示す断面図である。なお、図7中では、送信機24は、受信機25に対して紙面奥側に配置されているので、図示されていない。図7に示すように、乗員は、ハウジング30を把持することによって、イグニッションキープレート80を容易に回したりできる。
【0038】
さらに、イグニッションキープレート80が第2の姿勢P2でハウジング30に支持されているので、送信機24と受信機25とに対するキー側受信アンテナ50と非常用通信部43の相対位置が略固定される。なお、ハウジング30内における非常用通信部43の位置は、イグニッションキープレート80がキーシリンダ23に挿入された際に、非常用通信部43が送信する信号が受信機25に到達できるように考慮されて配置されている。
【0039】
ついで、乗員がイグニッションキープレート80(ハウジング30)を回すと、キーリングアンテナ26に電流が流れる。これにともなって磁界が発生する。受信コードコントロールは、キー側受信アンテナ50がこの磁気を受けると、スイッチ部44を第2の接続状態S2にする。それゆえ、キー側受信信号50は、非常用通信部43に接続される。
【0040】
上記したように、非常用通信部43内にはコイルが収容されており、上記磁気によって発生した電流がコンデンサに蓄電されるとともにこの電荷を用いてICからキー側認証信号がキー側受信アンテナ50を介して発信される。
【0041】
受信機25が非常用通信部43から発信されたキー側認証信号を受信する。車両側認証信号が正規な信号であると、エンジンが始動される。
【0042】
このように構成されるキーオペレーションシステム10では、バッテリ70内の電荷が無くなった状態において使用される非常用通信部43は、マイクロコンピュータ40内に組み込まれており、イグニッションキープレート80とは別部品である。
【0043】
ハウジング30に対するイグニッションキープレート80の姿勢が第2の姿勢P2で略固定されることにともない、キーシリンダ23内にイグニッションキープレート80が挿入されると非常用通信部43に対する受信機25の位置が略固定される。
【0044】
非常用通信部43の出力は弱いが、受信機25に対する非常用通信部43の相対位置が略固定されるので、受信機25は、非常用通信部43が発する信号を効率よく受信することができ、通信信頼性が向上する。
【0045】
この結果、イグニッションキープレート80に別途にトランスポンダなどの通信部を組み込む必要がなく、マイクロコンピュータ40を利用できるので、キーオペレーションシステム10のコストが削減される。
【0046】
また、双方向通信部41と非常用通信部43とをマイクロコンピュータ40に組み込むことによって、これら2つの通信部を1つの部品として扱うことができる。それゆえ、キーオペレーションシステム10を比較的簡単に作成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るキーオペレーションシステムを示す斜視図。
【図2】図1に示されたキーオペレーションシステムの内部を模式的に示すブロック図。
【図3】図1に示されたイグニッションキープレートが第2の姿勢にある状態におけるキーオペレーションシステムを示す斜視図。
【図4】図1に示されたイグニッションキープレートが第2の姿勢にある状態におけるキーオペレーションシステムの内部を概略的に示すブロック図。
【図5】図1に示されたキーオペレーションシステムを備える自動車の車室の前部分を示す斜視図。
【図6】図1に示されたイグニッションキープレートがハウジングから引き出される様子を示す斜視図。
【図7】図4に示されたイグニッションキープレートの被挿入部がキーシリンダ内に挿入された状態を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0048】
10…キーオペレーションシステム、30…ハウジング、40…マイクロコンピュータ(通信装置)、41…双方向通信部(第1の通信部)、43…非常用通信部(第2の通信部)、70…バッテリ、80…イグニッションキープレート、81…被挿入部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容されるバッテリと、
前記バッテリを動力源として駆動して車両側と通信を行い、かつ、前記ハウジング内に収容される第1の通信部と、
電磁誘導によって得られる電力を動力源として駆動して車両側と通信し、かつ、前記ハウジング内に収容される第2の通信部と、
車両に設置されるキーシリンダに挿入可能な被挿入部を有して前記第1の通信部と前記第2の通信部とは別部品であり、かつ、当該被挿入部が前記ハウジング内に収容される第1の姿勢で前記ハウジングに支持可能であるとともに前記被挿入部が前記ハウジングの外部に出る第2の姿勢で前記ハウジングに支持可能なイグニッションキープレートと、
を具備することを特徴とするキーオペレーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のキーオペレーションシステムにおいて、通信装置を備え、当該通信装置は、前記第1の通信部と前記第2の通信部とを内側に収容する1つの部品であることを特徴とするキーオペレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−308026(P2007−308026A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139348(P2006−139348)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】