説明

キーシートおよびその製造方法

【課題】キーシートを装着した筐体を傾倒させた場合に、キーシートが容易に撓んで膨らみだすことがなく、キートップを引き剥がす際に基材破壊を起こし難いシート剛性を高めた薄型で簡素なキーシートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】キーシート10は、キートップ12と、キートップ12からの押圧力をメタルドーム30へ伝達する押し子28と、キーシート10の剛性を高めるための補強用リブ34とを有する、押し子層としてのUV硬化樹脂製シート20と、を備える。また、キートップ12とUV硬化樹脂製シート20との間に、中間層としてのウレタン製シート16およびPET製シート18を設ける。このキーシート10の製造方法は、押し子28と補強用リブ34とを有するUV硬化樹脂製シート20を、液状のUV硬化樹脂を型に充填することにより一体成形するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯電話機や携帯情報端末装置(PDA:Personal Digital Assistance)を始めとする携帯用電子機器の押釦スイッチに用いられるキーシートに関し、特に、押釦スイッチの入力手段である複数のキートップが、隣り合ったキートップ間の間隔極めて狭い状態で配置された、いわゆる狭ピッチ構造の薄型のキーシートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯情報端末装置(PDA)を始めとする携帯用電子機器の押釦スイッチの部品として、キーシートが広く用いられている。このキーシートは、通常、ポリカーボネート等の樹脂材料からなるキートップと、シリコーンゴム、熱可塑性エストラマー等の弾性材料からなるキーベースとが接合されて形成されている。そして、キーベースの裏面のキートップに対応する位置には押し子が形成されており、キートップを押圧操作すると押し子が移動して、押し子に対向して配置されたプリント回路基板上のメタルドームを基板側に押し込み、メタルドームが基板上の接点に接触することでスイッチがオンし、押圧解除することによりメタルドームが接点から離れてスイッチがオフするようになっている。
【0003】
近年、携帯用電子機器の小型化に伴って、キーシートの更なる薄型化、構造の簡素化が求められている。こうしたキーシートとして、例えば、複数のキートップが互いの仕切り桟を省略して携帯用電子機器の操作面に集合配置された、いわゆる狭ピッチで薄型のキーシートが知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
このキーシートは、例えば、特許文献2に示されるように、主にシリコーンゴム等の弾性材料からなり、薄いシート状を呈しており、携帯用電子機器の筐体の操作面に設けた開口部に嵌め込まれて、その外枠部分が開口部の内枠に固定されるようになっている。このため、キーシートが装着された筐体を直立させたり傾倒させると、キーベースに載置されたキートップやキーベース自体の重量によってキーシートが撓んで、その中央部が筐体の操作面から外側に膨らみ出したような状態になることがあった。
【0005】
そして、この状態でキートップを押圧操作すると、キートップとメタルドームとの位置ずれが生じて操作不良を起こしたり、押圧操作時における感触が悪化することがあった。また、キーベースの撓みによる伸び変形量が増大することによって、キーベースが破断して筐体から脱落することがあった。
【0006】
そこで、このようなキーシートにおける撓みの発生を抑制する構造として、例えば、SUS等の金属製の薄い補強板をインサート成形によりシリコーンゴム製のキーベース内に設けることで、キーシートの全体剛性を高めた構造が知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
また、キーシートにおける撓みの発生を抑制する他の構造として、樹脂フィルム内に格子状の補強部材を設けた構成が知られている(例えば、特許文献2)。
【0008】
さらに、このような従来のキーシートでは、樹脂製のキートップは通常、シリコーンゴム製のキーベースに接着剤によって固着されるようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献1】特開2007−115633号公報
【特許文献2】特開2004−319396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記の従来のキーシートのように、SUS等の金属製の薄い補強板を設けてキーシートにおける撓み発生を抑制するようにした構造では、各キートップに対応する位置に複数の貫通孔を設けたSUS製の補強板を、シリコーンゴム製のシートに対してインサート成形により設ける構造となっている。このSUSのような金属製の補強板は一般に高価であるとともに、金属製の板に複数の貫通孔を形成して、これをインサート成形により設けるという製造手間を要することから、キーシートの製造コストを押し上げる一因となっていた。
【0011】
また、上記の他の従来のキーシートのように、樹脂フィルム内に格子状の補強部材を設けてキーシートにおける撓み発生を抑制するようにした構造では、樹脂フィルムの各キートップに対応する位置に複数の貫通孔を設けるとともに、樹脂フィルムのキートップの桟に対向する位置に対して樹脂製の補強部材を設ける構造であることから、一般に製造手間を要するものとなっている。
【0012】
また、上記の従来のシリコーンゴム製のシート上にキートップを固着させるキーシートにおいては、製造または使用段階においてキーシートを引き上げたり、キートップを引き剥がそうとする過大な力が作用する場合、さらにはリサイクル段階においてキートップをキーベースから引き剥がそうとする場合には、キートップが接着剤の部分で剥離せずに、シリコーンゴム製のシートに接合した状態で基材のシリコーンゴムが断裂してこの部分で剥離する、いわゆる基材破壊を起こすことがあった。このため、製造、使用段階において、キーシートの修復が困難となることがあった。また、リサイクル段階において、キートップとキーベースとの分離が困難となって、リサイクルが容易ではなかった。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、キーシートを実装した携帯用電子機器等の筐体を直立させたり傾倒させた場合でも、キーシートが容易に撓むことがないようにシート剛性を高めた薄型のキーシートであって、キートップが容易に剥離せず、しかもキーシートの製造段階、使用段階またはリサイクル段階等においてキートップを引き剥がす過大な力が作用した際に基材破壊を起こし難いようにした、安価で簡素な構成のキーシートおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るキーシートでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、携帯用電子機器の押釦スイッチに用いるキーシートであって、キートップと、前記キーシートの剛性を高めるための補強用リブを有し、前記キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する光硬化性樹脂からなるキーベースと、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、キーシートの剛性を高めるための補強用リブが光硬化性樹脂からなるキーベースに設けられる。
【0016】
本発明に係る他のキーシートは、上記において、前記キートップと前記キーベースとの間に、ウレタン層を含む中間層が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、キートップとキーベースとの間に、ウレタン層を含む中間層が設けられるので、キートップへの押圧力が弾性材料としてのウレタン層を含む中間層を介してキーベースに伝達される。また、ウレタン層は、押圧操作時におけるキーシートの変形に伴って中間層およびキーベースにおいて発生する音を効果的に吸収する。さらに、ウレタンの引き裂き強度はシリコーンゴムのそれよりも高いので、キーシートを引き上げようとしたりキートップを引き剥がそうとする力が作用した場合における基材破壊を起こす危険性は低くなる。
【0018】
本発明に係る他のキーシートは、上記において、前記キーベースは、前記キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子を有し、前記キーベースが一体成型により形成されることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、キーベースは、キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子を有し、キーベースが一体成形により設けられるので、キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達するための押し子と、キーシートの剛性を高めるための補強用リブといった用途および目的が異なる二つの部材を、同じキーベースに、同一工程内において同時に形成することが可能である。
【0020】
押し子および補強用リブを有するキーベースを一体成形する方法としては、例えば、金型に液状のUV硬化樹脂などの光硬化性樹脂を滴下することにより形成することができる。また、グラビア印刷方式等の印刷方式により形成することもできる。
【0021】
本発明に係る他のキーシートは、上記において、前記キーベースにおいて、前記押し子および前記補強用リブが同一の面から同じ方向に隆起した形状を有することを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、押し子および補強用リブがキーベースの同一の面から同じ方向に隆起した形状を有するので、押し子と補強用リブがこの面と平行な方向に重なり合うように配置される。このため、押し子および補強用リブが押し子層の背向する面から互いに反対方向に隆起するようにした場合に比較して、キーベースが厚くなることはなく、キーシート全体の厚さを薄い状態に保持したままシート剛性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る他のキーシートは、上記において、前記補強用リブの高さ寸法が、前記押し子の高さ寸法以内であることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、補強用リブの高さ寸法が、押し子の高さ寸法以内なので、押し子および補強用リブを備えるキーベースの厚さは押し子の高さ寸法によって規定され、補強用リブを設けることによりキーベースの厚さが増すことはなく、キーシートの厚さを薄い状態に保持したままシート剛性を高めることができる。
【0025】
本発明に係る他のキーシートは、上記において、前記補強用リブが格子状に形成されたことを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、補強用リブがキーベースに対して格子状に形成されるので、キーベースの剛性を全体的に向上させる。これにより、キーシートの全体剛性を高めることができる。
【0027】
また、本発明に係るキーシートの製造方法では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、携帯用電子機器の押釦スイッチに用いるキーシートの製造方法であって、キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子と、前記キーシートの剛性を高めるための補強用リブとを有する、キーベースを、液状の光硬化性樹脂を型に充填することにより一体成形するステップを含むことを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子と、キーシートの剛性を高めるための補強用リブとが同じキーベースに、同一製造ステップにおいて同時に形成される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡素な構成により薄型キーシートの全体剛性を高めることができ、このキーシートが実装された携帯用電子機器の筐体を直立させたり傾倒させた場合でもキーシートが容易に撓みだすことはない。また、キーシートを引き上げたり、キートップを引き剥がそうとする過大な力が作用する場合に、いわゆる基材破壊が容易に発生することはない。さらに本発明に係るキーシートは簡素な構造であることから、簡便かつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係るキーシートおよびその製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るキーシートが操作面に装着された携帯電話機の一実施形態を示す概略斜視図である。図2は、本発明に係るキーシートの一実施形態を示す断面図であり、図1の携帯電話機におけるキーシートのA−A線に沿った図である。また、図3は上側(キートップ側)から見たキーシートの分解斜視図であり、図4は下側(押し子側)から見たキーシートの分解斜視図である。
【0031】
図1に示すように、本発明に係るキーシート10は、複数の樹脂製のキートップ12が携帯電話機100の操作面2に露出するように配置される。各キートップ12にはそれぞれ携帯電話機100を操作するための機能が割り当てられ、その表面には、ここには図示しないが、その機能を示す文字、図形、記号、数字等が表示されるようになっている。各キートップ12は、例えば、0.2mm以下(これに限られるものではない)の隣り合う間隔を設けて配置される、いわゆる狭ピッチに配置されるようになっている。
【0032】
図2および図3に示すように、キーシート10は、狭ピッチに配置された複数の矩形薄板状のキートップ12と、これらキートップ12を載置する薄板状のベース部14とで構成されている。このうちベース部14は、上側から、ウレタン層としての透光性のウレタン製シート16と、中間層を構成する透光性のPET(ポリエチレンテレフタレート)製シート18と、押し子層(キーベース)としてのUV硬化樹脂製シート20とが上下方向に積層されるように構成される。
【0033】
また、図3に示すように、各シート16、18、20のそれぞれ四隅と短辺2箇所には係合孔22が設けられており、各シート16、18、20は積層されて、互いに重なり合った各係合孔22が、これらに対応して設けられた携帯電話機100の開口部4の内側6の係合ピン(不図示)に係合することにより、キーシート10は携帯電話機100に位置決めされるようになっている。
【0034】
キートップ12は、ウレタン製シート16に対して接着層24により固着され、ウレタン製シート16とPET製シート18は、透光性で微粘着性の接着層26により互いに接合されるようになっている。こうすることで、キートップ12とウレタン製シート16とPET製シート18とを一体化することができる。
【0035】
ウレタン製シート16は、比較的柔らかくて弾力性があることから、その上面に載置されるキートップ12との密着性を高め、押圧操作時における感触をより快適なものとするために用いられる。このように、キートップ12をウレタン製シート16の上面全体に接着層24により固着した構成とすることにより、キートップ12をベース部14から引き剥がそうとする力が作用しても、キートップ12は容易に剥がれない。一方、過大な引っ張り力が作用する場合には、ウレタン製シート16の引き裂き強度および引張り強度は、シリコーンゴム製のシートのそれらよりも大きくて優れることから、キートップ12はウレタン製シート16を伴って破断しにくくなると同時に接着層24の部分で剥離し易くなる。このように、キートップ12に過大な引っ張り力が作用する場合には、接着層24の部分で剥離するので、シリコーンゴム製のシートにキートップ12を固着した場合に比べていわゆる基材破壊が起こり難くするようにできる。
【0036】
また、ウレタン製シート16は、PET製シート18に接合されることで、キートップ12の押圧操作時においてPET製シート18が変形の際に発する不快な音を吸音することにより、操作者にこの音が認識されるのを防ぐように作用する。
【0037】
PET製シート18は、主にキーシート10の剛性を確保するためにウレタン製シート20とUV硬化樹脂製シート16との間に設けられるものであり、UV硬化樹脂製シート20とウレタン製シート16の各々の寸法変化に対して容易に追従できるようになっている。
【0038】
また、ベース部14がウレタンの単層で構成されている場合には、キートップ12を押圧する繰り返しの動作によって、キートップ12下面の印刷面が擦れなどの影響を受けることがある。これはウレタンが柔らかい材質であるからである。そこで、上記のようにベース部14をウレタン製シート16と硬質樹脂であるPET製シート18の積層構造とすることにより、こうした影響が及ぶのを防止するようになっている。
【0039】
そして、図2に示すように、UV硬化樹脂製シート20の下面32には、下側に向かって突出した押し子28が各キートップ12に対応する位置に設けられており、各押し子28は、UV硬化樹脂製シート20の下側に空間を挟んで配置されたプリント回路基板(不図示)上に設けられたメタルドーム30と当接している。そして、キートップ12を押圧操作することによりベース部14が下側に撓んで、キートップ12に対応する押し子28が、対応するメタルドーム30を下側に押圧変形させて基板上の固定接点(不図示)に接触させることでスイッチをオンし、押圧を解除することによりメタルドーム30がこの固定接点から離れてスイッチをオフするようになっている。
【0040】
UV硬化樹脂製シート20の押し子28が設けられる同じ下面32には、シート20の厚さ方向下側に突き出した略凸状断面を有する補強用リブ34が、各キートップ12間の狭い隙間に対応する位置に設けられる。補強用リブ34の上下方向の高さは、各押し子28の隆起高さH(図2参照)以下の高さ寸法に形成されている。ここで、補強用リブ34の上下方向の高さとは、図2に示すように、UV硬化樹脂製シート20の下面32から補強用リブ34の頂部34aまでの上下方向の距離であり、また、各押し子28の隆起高さHとは、下面32から押し子28の頂部28aまでの上下方向の距離である。
【0041】
このように、補強用リブ34を押し子28が設けられる面と同じ面に設けることで、押し子層としてのUV硬化樹脂製シート20の厚さを薄くすることができる。そして補強用リブ34の高さを押し子28の高さ寸法以下に形成することで、UV硬化樹脂製シート20の厚さの増大を抑制しつつシートの全体剛性を高めることができる。
【0042】
補強用リブ34は、図4の押し子層側(UV硬化樹脂製シート20側)から見たキーシート10の分解斜視図に示すように、各キートップ12の境界線に対応して、UV硬化樹脂製シート20の下面32に格子状に配置される。このように、凸状の断面の補強用リブ34が、平板状のUV硬化樹脂製シート20の面内で縦方向、横方向にそれぞれ延びる四角格子状に配置されるので、UV硬化樹脂製シート20の全体剛性を効果的に高めることができる。こうすることで、キーシート10全体の剛性を高め、キーシート10における撓み発生を抑制することができる。
【0043】
なお、このような構成において、キートップ12を押圧操作する場合には、UV硬化樹脂製シート20は、押し子28と補強用リブ34との間の剛性が比較的低くて薄い部分が変形して、キートップ12に対応する押し子28を下側に変位させ、メタルドーム30を押す。このように、補強用リブ34が格子状とされて各キートップ12の外周側に配置されることから、押圧操作時においては、キートップ12の外周側の補強用リブ34は支点のように機能してあまり動かない。このため、隣接するキートップ12の挙動に影響を与えずに、対応する押し子28を正常に下側に変位させ得るので、操作不良が生じることはない。
【0044】
上記構成の作用および動作を説明する。
本発明に係るキーシート10を装着した携帯電話機100を傾けて逆さまにすると、筐体8の操作面2が下側になって、キーシート10はその自重により下側に向かって伸び変形を起こそうとする。しかしながら、UV硬化樹脂製シート20の面に格子状に設けられた凸状の補強用リブ34がキーシート10の全体剛性を高めるように作用することから、キーシート10は操作面2に装着された平らな状態を維持しようとするので容易に撓みだすことはない。さらに、撓み変形量が増大することがないのでキーシート10が破断することがなく、キーシート10が筐体8から脱落することもない。
【0045】
また、通常では起こりえない極めて特殊な場合であるが、仮に、キーシート10を操作面2から引き上げたり、キートップ12を引き剥がそうとしたりする方向に過大な力が作用した場合を想定すると、キートップ12はウレタン製シート16との間の接着層24の部分において剥離することになる。これは、ウレタン製シート16は引き裂き強さおよび引張り強さが従来のシリコーンゴム製のシートに比べて大きいので、いわゆる基材破壊に対する耐性が向上することから、ウレタン製シート16における破断は生じ難いからである。
【0046】
<キーシートの製造方法の実施形態>
次に、本発明に係るキーシート10の製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図5の左側の(A)は、キーシート10の製造方法を説明する流れ図であり、右側の(B)は、(A)に示す流れに対応するキーシート10の被加工状態を示す図である。
【0047】
図5に示すように、まず、ステップS200において、PET製シート18とウレタン製シート16とを微粘着性の接着層26で貼り合わせることにより、一体化シート36を作製する(S200)。
【0048】
次にステップS202において、金型40の中に、液状のUV硬化樹脂20aを垂らして充填する(S202)。ここで、金型40の底部側の型面42には、押し子28および補強用リブ34の形状に合わせた凹凸状の面が形成されており、液状のUV硬化樹脂20aはこの型面42にも入り込むようになっている。
【0049】
そして、液状のUV硬化樹脂20aで満たされた金型40の中に、上記ステップS200にて作製して得られた一体化シート36を密着させる(S204)。この場合、一体化シート36は、PET製シート18側の面がUV硬化樹脂20aの側に密着するように配置し、ウレタン製シート16側の面が上側(キートップ12配置側)になるように配置する。なお、この場合、UV硬化樹脂20aおよび一体化シート36を厚さ方向に加圧することにより、UV硬化樹脂20aが所望の厚さとなるように調整してもよい。
【0050】
この状態で、ステップS206において、金型40に溜まった液状のUV硬化樹脂20aに対して、ウレタン製シート16側から紫外線、すなわちUV光を照射する(S206)。そうすると、この紫外線はウレタン製シート16とPET製シート18とを透過してその下面側に設けられる液状のUV硬化樹脂20aを照射して、UV硬化樹脂20aを硬化させるように作用する。このようにして、押し子28と補強用リブ34とを押し子層(キーベース)としてのUV硬化樹脂製シート20に一体成形する。なお、この場合、液状のUV硬化樹脂20aと一体化シート36は、UV硬化樹脂20aの硬化とともに接合されて一体化し、ここにベース部14が完成する。
【0051】
こうして、UV硬化樹脂製シート20とPET製シート18とウレタン製シート16とを一体化した後で、ステップS208において、キートップ12をウレタン製シート16に対して接着する(S208)。そして、ステップS210においてキーシート10を金型40から離型することにより(S210)、本発明に係るキーシート10を得ることができる(S212)。なお、ベース部14上へキートップ12を接着するタイミングは、上記のステップS208に限られるものではなく、例えば、PET製シート18とウレタン製シート16とを一体化するステップS200の後であってもよいし、UV硬化樹脂製シート20の作成前であってもよい。
【0052】
以上のように、本発明に係るキーシート10の製造方法では、押し子28と補強用リブ34の形状に適合するように形成した凹凸面を有する金型40内に対して、液状のUV硬化樹脂20aを充填しておいて、この上に一体化シート36を載置し、一体化シート36の上方からUV硬化樹脂20aに向かって紫外線を照射することで押し子層としてのUV硬化樹脂製シート20を製造する。このため、同一の工程内で押し子28と補強用リブ34とを同じ押し子層に一体形成することができる。したがって、本発明に係るキーシート10の製造方法では、押し子28を製造する工程に加えて、補強用リブ34を設けるための工程を新たに追加して設ける必要がなく、同一工程内において押し子と補強用リブという用途・機能が異なる二つの部材を同時に成形できるので製造効率が良い。このように、本発明のキーシートの製造方法によれば、簡便かつ効率的に全体剛性を高めたキーシートを得ることができる。
【0053】
上記のキーシート10の製造方法の実施形態において、押し子28および補強用リブ34は、液状のUV硬化樹脂20aを金型40に垂らすことにより設ける代わりに、塗布や印刷により設けてもよく、例えばグラビア印刷方式により設けるようにしてもよい。この場合、グラビア印刷版に、押し子28および補強用リブ34の形状に適合するように構成した凹部を形成するとともに、この凹部に液状のUV硬化樹脂20aを載せ、グラビア印刷版から一体化シート36へ転移するようにしてもよい。そして、紫外線を照射することによりUV硬化樹脂20aを硬化させて、押し子28および補強用リブ34を同時に設けるようにしてもよく、このようにしても、押し子28および補強用リブ34を押し子層に一体的に形成することができる。
【0054】
また、上記のキーシート10の製造方法の実施形態において、ウレタン製シート16の上方から紫外線を照射する代わりに、金型40の型面42を透光性部材または導光部材により構成するとともに、この部材内部または金型40の外部に紫外線用光源を設け、型面42側から紫外線を照射することでUV硬化樹脂20aを硬化するようにしてもよい。このようにしても、本発明と同一の作用効果を奏することができ、押し子28および補強用リブ34を押し子層に一体的に形成することができる。なお、この場合には、ウレタン製シート16、微粘着性接着層26およびPET製シート18としては、非透光性のものを用いることができる。
【0055】
上記の実施形態においては、補強用リブ34が四角格子状に配置される場合について示したが、これは、各キートップ12面の輪郭形状が四角形だからであり、この形状に対応するように配置したからである。したがって、各キートップ12面の輪郭形状が三角形、六角形等の多角形、円形または楕円形その他の形状である場合には、補強用リブ34の配置形状は四角格子状に限られるものではなく、各キートップ12面の輪郭に対応するように、例えば、三角格子状、六角格子状、ジグザグ形状、波形状等の形状のほか各キートップ12面の輪郭形状に適合された形状をなすように配置してもよい。このように補強用リブ34を配置するようにしても、本発明と同一の作用効果を奏することができ、キーシート10の全体剛性を高めることができる。
【0056】
また、補強用リブ34を配置しない区間を部分的に設けるようにしてもよく、例えば、シート20の面内方向中央側にのみ格子状の補強用リブ34を設けて、筐体に固定支持されるシート20の周縁側における配置を省略するようにしてもよい。このような態様で補強用リブ34を配置するようにしても、本発明と同一の作用効果を奏することができ、キーシート10の全体剛性を高めることができる。
【0057】
上記の実施形態において、ベース部14の構成シートの厚さとしては、ウレタン製シート16の厚さを略50μmとし、接着層24の厚さを略30μmとし、微粘着性の接着層26の厚さを略25μmとし、PET製シート18の厚さを略25μmとし、UV硬化樹脂製シート20の厚さを略10μmとし、押し子28の隆起高さを略250μmとしたシートを用いるようにしてもよく、このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。なお、この場合、キートップ12を除くキーシート10の総厚さ、つまりベース部14の厚さを略390μmとすることができるので、キーシート10の厚さを非常に薄くすると同時にキーシート10の全体剛性を高めることが可能となる。特に、この場合においてキートップ12の厚さを略600μm(0.6mm)とすれば、キーシート12の総厚さは略990μmとなって、厚さが1.0mmに満たない薄くて剛性の高いキーシート10とすることが可能である。
【0058】
上記の実施形態において、中間層に用いられるウレタン層としてウレタン製シート16を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、キートップ12を引き剥がす際に基材破壊を起こしにくい引き裂き強度および引張り強度を有し、しかも樹脂製のキートップ12が固着するのに好適なウレタン系材料を含んだシートであれば様々な材料からなるシートを用いてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができ、これらいずれの材料からなるシートを用いてもキーシートの全体剛性を高めることができる。
【0059】
上記の実施形態において、中間層の一部としてPET製シート18を用いる代わりに、適度な剛性と可撓性を有する材料からなるシートを用いるようにしてもよい。この場合、例えば、PET系樹脂、ポリカーボネイト(PC)系樹脂、ポリブチレンテフタレート(PBT)系樹脂、ナイロン系樹脂、プロポリプレン(PP)系樹脂、フッ素(PFA/FEP)系樹脂、ポリオリフィン系樹脂を始めとするあるゆる樹脂およびこれらの樹脂の混合材料を用いることができる。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができ、キーシートの全体剛性を高めることができる。
【0060】
上記の実施形態において、押し子層(キーベース)としてのUV硬化樹脂製シート20に用いるUV硬化樹脂としては、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂をはじめとする様々なUV硬化樹脂を用いることができる。また、上記の実施形態において、押し子層としてUV硬化樹脂製シート20を用いて説明しているが、UV硬化樹脂に限らず、他の光硬化性樹脂製のシートを用いるようにしてもよく、いずれにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0061】
上記の実施形態においては、押し子をキーベースとしてのUV硬化樹脂製シート20に設ける場合について説明しているが、プリント回路基板上に設けられるメタルドームや、メタルドームを固定するドームシートに押し子が形成される押釦スイッチに対して本発明に係るキーシートを適用する場合には、押し子をキーベースとしてのUV硬化樹脂製シート20に設けずともよく、このようにしてもキーシートの全体剛性を高めることができる。
【0062】
上記の実施形態において、キートップ12をウレタン製シート16に固着する接着層24としては、ホットメルト接着剤などの加熱型接着剤を用いてもよいし、樹脂とウレタンとの接着に適した他の接着剤を用いるようにしてもよい。この場合、例えば、クロロプレンゴム系接着剤、NBR系接着剤、天然ゴム系接着剤、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、UV接着剤、瞬間接着剤をはじめとする様々な接着剤を用いることができ、いずれにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0063】
以上のように、本発明に係るキーシート10では、剛性が比較的低くなるキートップ12の仕切り桟を省略した部位に、凸状の補強用リブ34を設けることにより、キーシート10全体の剛性を高めるようになっている。また、本発明に係るキーシート10の製造方法では、同一の工程内で押し子28と補強用リブ34とを同じ押し子層(キーベース)に一体形成することができるので、簡便かつ効率的に全体剛性を高めたキーシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るキーシート10が操作面に装着された携帯電話機の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るキーシート10の一実施形態を示す断面図であり、図1の携帯電話機100におけるキーシート10のA−A線に沿った図である。
【図3】本発明に係るキーシート10の分解斜視図であり、上側(キートップ12側)から見た図である。
【図4】本発明に係るキーシート10の分解斜視図であり、下側(UV硬化樹脂製シート20側)から見た図である。
【図5】(A)は、本発明に係るキーシート10の製造方法を説明する流れ図であり、(B)は(A)に示す流れに対応するキーシート10の被加工状態を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
2 操作面
4 開口部
6 枠の内側
8 筐体
10 キーシート
12 キートップ
14 ベース部
16 ウレタン製シート
18 PET製シート
20 UV硬化樹脂製シート(キーベース)
20a 液状のUV硬化樹脂
22 係合孔
24、26 接着層
28 押し子
30 メタルドーム
32 押し子層の下面
34 補強用リブ
36 一体化シート
40 金型
42 型面
100 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電子機器の押釦スイッチに用いるキーシートであって、
キートップと、
前記キーシートの剛性を高めるための補強用リブを有し、前記キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する光硬化性樹脂からなるキーベースと、
を備えることを特徴とするキーシート。
【請求項2】
前記キートップと前記キーベースとの間に、ウレタン層を含む中間層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキーシート。
【請求項3】
前記キーベースは、前記キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子を有し、前記キーベースが一体成型により形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキーシート。
【請求項4】
前記キーベースにおいて、前記押し子および前記補強用リブが同一の面から同じ方向に隆起した形状を有することを特徴とする請求項3に記載のキーシート。
【請求項5】
前記補強用リブの高さ寸法が、前記押し子の高さ寸法以内であることを特徴とする請求項4に記載のキーシート。
【請求項6】
前記補強用リブが格子状に形成されたことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のキーシート。
【請求項7】
携帯用電子機器の押釦スイッチに用いるキーシートの製造方法であって、
キートップからの押圧力をメタルドームへ伝達する押し子と、前記キーシートの剛性を高めるための補強用リブとを有する、キーベースを、
液状の光硬化性樹脂を型に充填することにより一体成形するステップ
を含むことを特徴とするキーシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−93869(P2009−93869A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261929(P2007−261929)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】