説明

キーシートとその製造方法

【課題】 キートップの数字その他文字、記号等の表示の背景となる微細模様を形成した新規なキーシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の微細模様形成用樹脂膜20を用い転写その他により微細模様(線幅及び線間例えば0.1mm以下)を形成し、UV光照射により硬化させた微細模様樹脂膜22を、キートップ本体36の一方の主表面に形成する。
そして、微細模様の形成は、表面にフォトリソグラフィ技術を用いて凹部18による微細模様を形成した金型2を型として用いて行う。
【効果】 スクリーン印刷によるのではなく、UV光等の光により硬化する樹脂を用いて転写等によりフォトリソグラフィ技術により微細模様を形成するので、その微細模様を別途形成される表示の背景とする高級感のあるキートップを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器類、例えば携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等のキーユニットを構成するキーシートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等の電子機器に用いられるキーユニットは、一般に、裏面(下面)或いは天面(表面)に数字その他の文字、記号、絵柄等の表示により加飾された複数のキートップを、キーベースの表面に形成し、そのキーベースを、押し子によって押されてオンするスイッチング素子を構成するメタルドーム及び配線膜が形成された配線基板の表面に配置した構造を有する。
【0003】
そして、例えば、表示用光源として同時に点灯する一斉点灯の複数の光源を設け、使用時にはその表示用光源を一斉に点灯させ、その全キートップによる全表示が視認できるようになっていた(特許文献1:特開2007−242302号公報)。
そして、キートップの加飾、即ち、裏面或いは天面への文字、記号等の形成は、一般に、キートップ本体を成す樹脂体の表面に文字、記号等に対してネガ又はポジのパターンを有する樹脂をスクリーン印刷により形成するというスクリーン印刷技術を用いた技術により行われていた(特許文献2:特開2002−197933号公報、特許文献3:特開2002−231084号公報)。
【0004】
スクリーン印刷は、一般にスクリーンメッシュの一方の面に印刷しようとする表示や模様等のパターンに対してネガのパターンを有するマスクを形成したものを被印刷体上に載置し、そのスクリーンメッシュの上面からスキージを用いる等してインクを被印刷体上に塗布し、上記マスクのパターンに対してポジのパターンをインクにより形成するものである。
また、スクリーン印刷ではなく、スタンプにより文字等の表示、模様を形成する場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−242302号公報
【特許文献2】特開2002−197933号公報
【特許文献3】特開2002−231084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、キートップの加飾には、単に文字、記号等の表示を形成することのみならず、このような表示に微細の模様を重畳することが求められつつある。即ち、キーユニットを視たとき微細な模様を背景として文字、記号等の表示が存在することが求められるようになったのである。
最近は、携帯電話機に対しては、低価格化の要求がある一方で、ある程度高価になっても高級感のあるものを求める要求も強まり、携帯電話機メーカはその要求にも応える必要があるが、その要求に応える高級感のある携帯電話機等においては、単に、各表示がきちんと視認できるのみならず、高級感を醸す微細な模様を背景に、各表示が視認できるようにすることが不可欠となりつつある。
【0007】
ところが、スクリーン印刷によれば、数字その他の文字、記号等の表示は可能であるが、これ等の表示の背景となる模様は表示よりも顕著に微細でなければ表示を視認しにくくする。従って、表示よりも顕著に微細に形成することが表示の背景となる模様について要求される。しかし、そのような微細加工は事実上困難乃至不可能であった。
というのは、スクリーン印刷によれば、0.13mm〜0.15mm程度の微細加工は可能であるが、それ以上の微細化は難しいからである。即ち、文字等の背景となる微細模様を形成するには、0.1mm以下、例えば0.05mm程度の微細加工が必要なのである。
因みに、スタンプ(パッド印刷)によればスクリーン印刷より微細化が難しいのである。
そこで、本願発明者は、0.1mm以下、例えば0.05mm或いは0.01mmという微細な線幅、線間間隔の模様を形成できるようにするべく、鋭意模索、研究を続け、本発明を為すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、キートップの数字その他文字、記号等の表示の背景となる模様を表示よりも顕著に微細化することを可能にし、以て、微細模様を背景として表示が視認できる意匠的に豪華で高級感のあるキーシートとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のキーシートは、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂からなり微細加工により微細模様が形成され更に光照射により硬化せしめられた微細模様樹脂膜が一方の表面に形成された複数のキートップ本体と、この複数のキートップ本体間を連通する連結部を少なくとも有することを特徴とする。
【0010】
尚、微細模様を形成する微細加工は具体的には、半導体製造技術において多く用いられるフォトリソグラフィ技術を応用したものである。
この応用技術は、例えば金型等の表面にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜に、所定のパターンが形成された例えばフォトマスク等を介して選択的に露光用光を照射することにより露光処理し、その後、現像することにより上記フォトレジスト膜を上記パターンに、或いはこのパターンに対してネガのパターンにパターニングし、そのパターニングされたフォトレジスト膜をマスクとして上記金型等の表面を選択的にエッチングすることにより、微細な凹部からなる微細模様を形成し、この微細な凹部からなる微細模様を形成した金型等の型を用いて樹脂成形により微細模様樹脂膜を形成するという技術である。
このような技術によれば、0.1mm以下、例えば0.05mm或いは0.01mmという微細な線幅、線間間隔の模様を形成することは容易である。
【0011】
請求項2のキーシートは、請求項1記載のキーシートにおいて、前記各キートップ本体と前記微細模様樹脂膜との間に樹脂シートが介在し、少なくともその樹脂シートが前記複数のキートップ本体間を連通する連結部を成していることを特徴とする。
請求項3のキーシートの製造方法は、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂膜の微細加工による微細模様を形成し、光により硬化させた微細模様樹脂膜を形成する工程と、互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体を形成する工程と、上記複数のキートップ本体上に上記微細模様樹脂膜をあてがい、この微細模様樹脂膜を上記キートップ本体に固着させ、この微細模様樹脂膜を以て複数のキートップ本体間を連結する連結部の少なくとも一部を成すようにする工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4のキーシートの製造方法は、請求項3に記載のキーシートの製造方法において、前記微細模様樹脂膜の形成を、樹脂シートの一方の表面に積層されるように行い、前記複数のキートップ本体上への上記微細模様樹脂膜のあてがいを、上記樹脂シートが上記微細模様樹脂膜と上記複数のキートップ本体との間に介在するように行い、以て上記微細模様樹脂膜及び上記樹脂シートの積層体が複数のキートップ本体間を連結する連結部を成すようにすることを特徴とする。
請求項5のキーシートの製造方法は、請求項4に記載のキーシートの製造方法において、前記複数のキートップ本体を、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質を有し液状状態にある樹脂を上面に互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体形成用凹部を有する型のこの複数のキートップ本体形成用凹部に注入することにより、形成し、前記積層膜の上記複数のキートップ本体への固着を、この積層膜越しに液状状態の複数のキートップ本体へ光を照射させてこの複数のキートップ本体を硬化させることにより行うことを特徴とする。
【0013】
請求項6のキーシートの製造方法は、一方の主表面に樹脂シートを有し互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体を、上記樹脂シートが上になる向きにし、上記樹脂シートの表面に、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂からなる液状の微細模様形成用樹脂膜を形成し、表面に微細模様が形成された微細模様形成用型のその表面の微細模様を上記液状の微細模様形成用樹脂膜に当ててこの微細模様形成用樹脂膜による微細模様の転写形成をすることにより微細模様樹脂膜と成し、この上記微細模様樹脂膜をそれに光を照射することにより硬化させて上記樹脂シート及び微細模様樹脂膜を以て複数のキートップ本体間を連結する連結部とし、その後、上記微細模様形成用型を上記微細模様樹脂膜から剥離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載されたキーシートによれば、微細模様樹脂膜による微細模様を別途形成される表示の背景とする高級感のあるキートシートを得ることができると共に、複数のキートップ間を連結部により連結するので、その連結部により複数のキートップを所定の位置関係を以て一体乃至一体的に形成したキーシートを構成することができる。
請求項2に記載されたキーシートによれば、キーシート本体と微細模様樹脂膜との間に樹脂シートを介在させたので、微細模様樹脂膜を樹脂シートにより保持してキートップ本体上に載置し、上記樹脂シートを介してこの微細模様樹脂膜をキートップ本体に接着することができ、微細模様樹脂膜を樹脂シートにより補強でき、製造過程で微細模様樹脂膜が破損したり、連結部が強度不足になるおそれをなくすことができる。
【0015】
請求項3のキーシートの製造方法によれば、所定の位置関係を有する複数のキートップ本体上に微細模様樹脂膜をあてがい、この微細模様樹脂膜を上記キートップ本体に固着させ、この微細模様樹脂膜を以て複数のキートップ本体間を連結する連結部の少なくとも一部を成すようにするので、請求項1のキーシートを得ることができる。
請求項4のキーシートの製造方法によれば、請求項3のキーシートの製造方法において、微細模様樹脂膜を、自身と上記キートップ本体との間に樹脂シートを介在させてこのキーシート本体に固着するので、請求項2のキーシートを得ることができる。
【0016】
請求項5のキーシートの製造方法によれば、金型上面のキーシート本体形成用凹部に樹脂を注入することにより所定の位置関係を有する複数のキーシート本体を形成し、積層膜の複数のキートップ本体への固着を、この積層膜越しに液状状態の複数のキートップ本体へ光を照射させてこの複数のキートップ本体を硬化させることにより行うので、請求項2のキーシートを得ることができる。
請求項6のキーシートの製造方法によれば、一方の表面に樹脂シートを有するキートップ本体をその樹脂が上になる向きにし、上記樹脂シートの表面に液状の微細模様形成用樹脂膜を形成し、微細模様が形成された微細模様形成用型を用いてその微細模様形成用樹脂膜を転写成形するので、この微細模様形成用樹脂膜による微細模様を形成することができ、これを光照射により硬化して微細模様樹脂膜と成し、その後、微細模様形成用型を取り除くので、樹脂シートにキートップ本体が形成されたキーシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)〜(E)は本発明の第1の実施例に用いる微細模様樹脂膜・樹脂シートの積層膜の製造に用いる金型の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】(A)〜(D)は図1(A)〜(E)に示した方法により製造された金型を用いて微細模様樹脂膜・樹脂シートの積層膜を製造する製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】(A)〜(E)は本発明の第1の実施例のキーシートの製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】図3に示した第1の実施例のキーシートの製造方法により形成されたキートップを上から視認した数値、文字等の表示とそれに重畳された微細模様のパターンの一例を示す平面図である。
【図5】(A)〜(E)は図1の製造方法の変形例(:変形例1)を工程順に示す断面図である。
【図6】図3に示した製造方法で製造されたキーシートの変形例(:変形例2)を示す断面図である。
【図7】図3に示した製造方法で製造されたキーシートの別の変形例(:変形例3)を示す断面図である。
【図8】(A)〜(D)は本発明の第2の実施例のキーシートの製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、基本的に、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂からなり微細模様が形成され更に光照射により硬化せしめられた微細模様樹脂膜がキートップ本体の一方の主表面に形成してキートップ或いは複数のキートップが所定の位置関係を有するように連結部を通じて連結されたキーシートを構成するというものであり、上記光を受けて硬化する性質の樹脂として、UV(紫外線)硬化性樹脂(:UV樹脂)が好適である。
また、微細模様の形成は、フォトリソグラフィ技術により行う。
微細模様は、例えば放射状、同心円状、扇状、市松模様、梨地状等種々のものがあり得るのであり、特定のものに限定されない。また、キートップ全面に微細模様が形成されるようにしても良いし、キートップを複数のエリアに分け、そのうちの一部のエリアのみに微細模様が形成されるようにしても良い。更に、微細模様により回折現象による独特の色彩模様効果を得ることもできる。
【0019】
また、複数のキートップ本体を連結部により連結したキーシート本体のその連結部を、複数のキートップ本体上に形成した微細模様樹脂膜により、或いは微細模様樹脂膜と樹脂シートとの積層膜により構成するようにしても良いし、各キートップ本体を成す樹脂自身によりそのキートップ本体と一体を成す連結部を構成するようにしても良い。
尚、次の実施例の項で述べる図3、図8に示す実施例では、上記連結部を微細模様樹脂膜と樹脂シートとの積層膜により構成するようにしている。また、図5に示す実施例では、各キートップ本体を成す樹脂自身によりそのキートップ本体と一体を成す連結部を構成するようにしている。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を図示実施例に基いて詳細に説明する。
図1(A)〜(E)は上記実施例の樹脂シートの上面に微細模様が形成された微細模様形成樹脂膜を形成するのに用いる金型の製造方法の具体例を工程順に示す断面図である。
(A)図1(A)に示すように、皿状の微細模様形成用金型2を用意する。4はこの微細模様形成用金型2の内底面である。
次に、微細模様形成用金型2の内底面4が形成された側の表面にフォトレジスト膜6を塗布する。図1(A)はそのフォトレジスト膜6を塗布した後の状態を示す。
【0021】
(B)次に、このフォトレジスト膜6上方にフォトマスク8を置く。
このフォトマスク8は光を遮る遮光部分10、10、・・・と光を遮光しない光透過部分12、12、・・・とを有し、例えば遮光部分10、10、・・・が所定のパターンを有するように、或いは所定のパターンに対してネガのパターンを有するように形成され、フォトエッチングにおける原版を成す。
【0022】
このフォトレジスト膜6上にフォトマスク8を置いた状態で、このフォトレジスト膜6に対するフォトマスク8越しの露光処理を行う。図1(B)はその露光処理時の状態を示す。
14、14、・・・はフォトレジスト膜6の感光した部分、16、16、・・・は非感光部分である。
尚、フォトレジストには、露光により感光した部分が硬化し、現像されたときその部分が除去されることなく残存するネガタイプと、逆に露光により感光した部分が軟化し、現像されたときその部分が除去されるポジタイプがある。どちらのタイプであっても良い。本実施例では、ネガタイプを使用したものとする。
【0023】
(C)次に、フォトマスク8を外し、その状態でフォトレジスト膜6に対して現像する。すると、図1(C)に示すように、感光した部分14、14、・・・が残存し、非感光部分16、16、・・・が除去される。
(D)次に、残存するフォトレジスト膜6(14、14、・・・)をマスクとして金型2の内底面4をエッチングすることにより凹部18、18、・・・による微細模様を形成する。図1(D)はそのエッチング終了後の状態を示す。
【0024】
尚、このエッチングには薬液を用いてのウェットエッチングと、RIE(Reactive Ion etching)等のドライエッチングがあり、ウェットエッチングによれば、サイドエッチング現象が生じ、マスクとなる残存するフォトレジスト膜6の感光部分14、14、・・・下にも若干エッチングが横方向に進行する。本例においては、ウェットエッチングをしており、サイドエッチングが生じる。その結果、各被エッチング部分の断面形状は三角形状或いはコニーデ状になる。
本実施例においては、金型2の内底面のエッチングをウェットエッチングにより行ったが、本発明においては、ドライエッチング、例えばRIE(Reactive Ion Etching)等は異方性エッチングで在っても良い。この場合には、サイドエッチングは進行せず、マスクとなる残存するフォトレジスト膜6の感光部分16、16、・・・下はエッチングされない。
【0025】
(E)次に、図1(E)に示すように、フォトレジスト膜6を除去すると、微細模様形成用金型2が完成する。
この金型2が次に述べる微細模様樹脂膜・樹脂シートの積層膜の製造に用いられるのである。
【0026】
図2(A)〜(D)は図1(A)〜(E)に示した方法により製造された微細模様形成用金型を用いて微細模様樹脂膜・樹脂シートの積層膜を製造する方法を工程順に示す断面図である。
(A)先ず、微細模様形成用金型2の凹部18、18、・・・が形成された内底面4上に、液状のUV樹脂20、20、・・・を注入し、各凹部18、18、・・・をUV樹脂20、20、・・・で充填する状態にする。
その結果、UV樹脂20、20、・・・による微細模様が形成されることになる。図2(A)はその状態を示す。
【0027】
(B)次に、図2(B)に示すように、UV樹脂20、20、・・・が注入された表面上に別の材料からなる樹脂シート24を戴置圧着する。
(C)次に、図2(C)に示すように、樹脂シート24越しに上記UV樹脂20、20、・・・にUV光を照射することにより、微細模様を成すUV樹脂20、20、・・・を硬化させて微細模様樹脂膜22を形成すると共に、この微細模様樹脂膜22を樹脂シート24に接着させる。
【0028】
(D)その後、微細模様樹脂膜22を樹脂シート24に接着させた微細模様樹脂膜22と樹脂シート24との積層膜26を金型2から分離し、この積層膜26を微細模様樹脂膜22が上を向く向きにした状態にする。図2(D)はその状態の積層膜26を示す。この積層膜26は次に説明し、図3で図示する本発明の第1の実施例のキーシートの製造方法に供するのである。
尚、上記実施例において、微細模様樹脂膜22と樹脂シート24との積層膜26を形成するのに用いた金型2に代えて例えば半導体ウェハ等、別の材料の型を用いるようにしても良い。要するに、型からの微細模様樹脂膜22の剥離が問題なくスムーズに行える材質であれば良い。
【0029】
図3(A)〜(E)は本発明の第1の実施例のキーシートの製造方法を工程順に示す断面図である。
(A)キーシート本体形成用金型32の表面に形成されたキートップ本体形成用凹部34に樹脂、例えばUV樹脂を滴下することにより液状のキートップ本体36aを形成する。
尚、キートップ本体形成用金型32には、キートップ本体形成用凹部34、34、・・・が一つのキーシートを成すキートップ数分、各キートップ本体間が所定の位置関係を有するように形成され、一つのキーシートを成す複数の液状のキートップ本体36a、36a、・・・・を同時に形成することができるようにされている。しかし、図面には一つのキートップ分のみ現れる。
【0030】
その一方、図2に示した製造方法で製造された上記微細模様樹脂膜22と樹脂シート24との積層膜26[図2(D)参照]を用意する。
そして、各キートップ本体形成用凹部34、34、・・・に液状UV樹脂からなるキートップ本体36aが形成された上記キーシート形成用金型2上に、図3(A)に示すように、その積層膜26を臨ませる。
【0031】
(B)次に、キートップ本体6が形成された金型32上に、積層膜26を載置圧着し、その状態で、UV光照射装置46によりUV光を照射してUV樹脂からなる液状の各キートップ本体36aを硬化させて固体状の各キートップ本体36と成し、それと共に、各キートップ本体36を上記積層膜26の樹脂シート24に接着させる。図3(B)はそのUV照射時の状態を示す。尚、42はUV光を発生する光源、44は光源42の背後に配置されたリフレクタであり、その光源42及びリフレクタ44により上記UV光照射装置46が構成される。
この工程により、キーシート形成用金型32上に、樹脂シート24及び微細模様樹脂膜22からなる積層膜26により連結された複数のキートップ本体36、36、・・・からなるキーシートが構成される。但し、図3にはキーシートの一つのキートップ分のみ現れること、前述の通りである。
(C)次に、図3(C)に示すように、キーシート形成用金型32から積層膜26の樹脂シート24に接着された状態のキートップ本体36を剥離する。
【0032】
(D)次に、上記微細模様樹脂膜22上に数字その他文字、記号その他の表示を形成するための表示用光学的マスク膜50を形成し、その後、この光学的マスク膜50に例えばレーザビームの選択的照射により表示用孔52、52を形成する。この表示用孔52、52のパターンは、表示のパターンと同じであっても良いし、表示のパターンとネガのパターンであっても良い。図3(D)は表示用光学的マスク膜50に表示用孔52、52を形成した後の状態を示す。
尚、表示用光学的マスク膜50は例えば金属からなり、表示を形成するための光学的マスクとしての役割を果たすものであるが、光学的マスク機能を有するものであれば、金属以外の材料、例えば有色樹脂で形成しても良い。
また、上記微細模様樹脂膜22上または樹脂シート24の微細模様樹脂膜22が形成されていない面に、表示用光学的マスク膜50を形成する前に有色透明樹脂を薄く塗布するようにしても良い。この場合、表示用光学的マスク膜50が金属である場合は、その金属の色調に限定されるが、有色透明樹脂を塗布した場合には、様々な所謂メタリックカラーにすることが可能になる。
【0033】
(E)その後、図3(E)に示すように、表示用孔52、52を含む表示用マスク膜50上に表示色を得るための表示色樹脂膜54を形成する。
これ等一連の工程により、各キートップ本体36を視たとき上記微細模様形成膜22による微細模様に表示用孔52、52による表示が重畳されたものが視認されるキートップを得ることができる。表示のパターンは、一つのキーシートを成す複数のキートップ毎に異なっていることは言うまでもない。
尚、微細模様樹脂膜22及び樹脂シート24の各キートップから食み出た部分は各キートップ間を互いに連結する連結部を成す。
このようなキートップによれば、表示用孔52、52による表示のみが形成されたものに比較して視覚的に豪華で高級感のある表示ができる。
【0034】
図4は図1の製造方法により形成されたキートップを上から視認した数値、文字等の表示i、i、i,iとそれに重畳された微細模様j、j、・・・のパターンの一例を示す平面図である。
微細模様j、j、・・・は表示i、i、i,iの視認、認識を妨げないように形成する必要があり、それには表示i、i、i,iに比較して顕著に微細であることが必要であるが、フォトリソグラフィ等の技術を駆使すれば、視認、認識を妨げないように充分に微細化ができる。
このパターンはあくまで一例であって、種々の例があり得る。
【0035】
図5(A)〜(E)は図3に示したキーシートの製造方法の変形例(:変形例1)を示す断面図である。
本変形例は図3に示した実施例とは、キーシート形成用金型32として、互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体形成用凹部34、34、・・・の他に、各キートップ本体形成用凹部34、34、・・・間を連結する連結部を形成する連結部形成用凹部34b、34b、・・・を有するものを用いる点でのみ相違し、それ以外の点では共通する。
(A)図5(A)はそのキーシート形成用金型32を示す。
【0036】
(B)次に、キーシート形成用金型32の上記キートップ本体形成用凹部34、34、・・・及び連結部形成用凹部34b、34b、・・・にUV樹脂を注入し、その後、樹脂シート24及び微細模様樹脂膜22の積層膜26をその金型32上に載せ圧着しながら、UV光照射装置46によりUV光を照射する状態を示す。36aはキートップ本体、36bはキートップ本体6a、6a、・・・間を連結する連結部を成す部分であり、各キートップ本体6a、6a、・・・は複数あり、所定の位置関係を以て形成されるが、図には一つのキートップ分のみが現れる。
(C)〜(E)尚、図5(C)〜(E)は図3(C)〜(E)と同じ工程を示し、既に説明済みなので、その説明は省略する。
このように、複数のキーシート本体間の連結部を、各キートップ本体を成す樹脂自身により連結部を構成するようにすることもできる。
【0037】
図6は図3(A)〜(E)に示す方法でつくられたキーシートの変形例(:変形例2)を示す断面図である。
図6において、60はUV樹脂により転写等で形成された模様そのものからなるキートップ本体であり、例えばPETフィルムからなる樹脂シート62を下地として形成されている。
尚、このキートップ本体60を成す模様は、文字等の表示よりも微細であるが、後で述べる微細模様よりは大きい。
【0038】
64は微細模様樹脂膜で、UV樹脂からなり、樹脂シート66を下地として転写により形成されている。これは、例えば図1に示した方法でつくった金型2を用い、図2に示した方法で製造できる。
微細模様樹脂膜64は樹脂シート66を介して上記樹脂シート62の反キートップ本体側の面に固定されている。
68は表示用光学的マスク膜、70、70はこの光学的マスク膜68に例えばレーザビームにより選択的に形成された表示用孔、72はこの表示用孔70、70を含む光学的マスク膜68上に形成された表示色樹脂膜である。
【0039】
このようなキーシートによれば、キートップ本体60そのものによる模様と、表示用孔70、70による文字等の表示と、微細模様樹脂膜64による微細模様とが重畳したものが視認され、意匠的に、より豪華でより高級感を醸し出すことができる。
尚、このようなキーシートは図3に示した方法と同じような方法で樹脂シート62を下地とする模様を成すキートップ本体60と、樹脂シート62を下地とする微細模様樹脂膜64とを別々につくり、樹脂シート62・66どうしを接着し、その後、図3(D)、(E)に示した方法と同じ方法で表示用光学的マスク膜68、表示用孔70、70及び表示色樹脂膜72を形成することにより得ることができる。
【0040】
図7は図1(A)〜(E)に示す方法でつくられたキーシートの別の変形例(:変形例3)を示す断面図である。
図7において、74は例えばPC樹脂からなるキートップ本体、76は微細模様樹脂膜で、UV樹脂からなり、樹脂シート78を下地として転写により形成されている。そして、樹脂シート78の微細模様樹脂膜76が形成された側と反対側の面上にキートップ本体74がこの裏面にて接着されている。
80は表示用光学的マスク膜、82、82はこの光学的マスク膜80に例えばレーザビームにより選択的に形成された表示用孔、84はこの表示用孔82、82を含む表示用光学的マスク膜80上に形成された表示色樹脂膜である。
【0041】
このようなキーシートによれば、表示用孔82、82による文字等の表示と、微細模様樹脂膜76による微細模様とが重畳したものが視認され、意匠的に豪華で高級感を醸し出すことができる。
このキーシートは、樹脂シート78にそれを下地とする微細模様樹脂膜76を転写等により形成し、その樹脂シート78の微細模様樹脂膜76が形成された側と反対側の面にキートップ本体74をこの裏面にて接着し、その後、樹脂シート78上に形成された微細模様樹脂膜76上に表示用光学的マスク膜80を形成し、この光学的マスク膜80に例えばレーザビームにより表示用孔82、82を形成し、その後、表示色樹脂膜84を形成することによりつくることができる。
【0042】
図8(A)〜(D)は本発明の第2の実施例のキーシートの製造方法を工程順に示す断面図である。
(A)図8(A)に示すように、例えばUV樹脂からなるキートップ本体90を樹脂シート92上に形成したものを形成する。尚、樹脂シート92のキートップ本体90から食み出た部分が複数のキートップ本体90、90、・・・(図面には一つのキートップ90のみが現れている。)間を連結する連結部を成す。
(B)次に、上記樹脂シート92上に液状のUV樹脂からなる微細模様形成用樹脂膜94aを滴下する。
そして、滴下した微細模様形成用樹脂膜94aの上方に、転写用微細模様型100を、樹脂シート98の一方の表面に形成された微細模様からなる微細模様樹脂膜96が下側になる向きにして臨ませる。図8(B)はその臨ませた状態を示す。
【0043】
(C)次に、転写用微細模様型100を下降させ、その転写用微細模様型樹脂膜96を液状の微細模様形成用樹脂膜94aに食い込ませることにより転写用微細模様型樹脂膜96の微細模様を微細模様形成用樹脂膜94aに転写する。
そして、その状態でUV光照射装置46、46、46により微細模様形成用樹脂膜64aにUV光を照射することによりこの樹脂膜を硬化させる。その硬化によりその樹脂膜94aが微細模様樹脂膜94となる。図7(C)はその硬化処理直後の状態を示す。
【0044】
(D)その後、図8(D)に示すように、転写用微細模様型100を上記微細模様樹脂膜94から剥離する。
尚、本実施例において、転写用微細模様型100として、樹脂シート98の一方の表面に微細模様樹脂膜96を積層したものを用いているが、それに代えて、例えば、図1、図2に示すと同じような方法で微細模様を形成した金型を用いるようにしても良い。
尚、剥離後、例えば図3(D)、(E)に示す方法で表示用光学的マスク膜を形成し、この表示用光学的マスク膜にレーザビーム等により表示用孔を形成し、しかる後、表示色樹脂膜を形成すると、キートップが出来上がるが、その方法は既に具体的に図示、説明がされているので、重ねて図示、説明は省略する。
このように、本発明は種々の態様で実施することができ、種々のバリエーションがあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、電子機器類、例えば携帯電話機、PHS、携帯情報端末(PDA等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等のキーユニットを構成するキーシート及びその製造方法に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0046】
2・・・微細模様形成用金型、4・・・キートップ本体形成用凹部、
22・・・微細模様樹脂膜、24・・・樹脂シート、
36・・・キーシート本体、36b・・・連結部、
60・・・微細模様樹脂膜、74・・・キーシート本体、
76・・・微細模様樹脂膜、78・・・樹脂シート、
90・・・キーシート本体、92・・・樹脂シート、
96・・・微細模様樹脂型膜、100・・・微細模様転写用型。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂からなり微細加工により微細模様が形成され更に光照射により硬化せしめられた微細模様樹脂膜が一方の表面に形成された複数のキートップ本体と、
上記複数のキートップ本体間を連結する連結部と、
を少なくとも有することを特徴とするキーシート。
【請求項2】
前記各キートップ本体と前記微細模様樹脂膜との間に樹脂シートが介在し、
少なくともその樹脂シートが前記複数のキートップ本体間を連結する連結部を成している
ことを特徴とする請求項1記載のキーシート。
【請求項3】
常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂膜の微細加工による微細模様を形成し、光により硬化させた微細模様樹脂膜を形成する工程と、
互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体を形成する工程と、
上記複数のキートップ本体上に上記微細模様樹脂膜をあてがい、この微細模様樹脂膜を上記キートップ本体に固着させ、この微細模様樹脂膜を以て複数のキートップ本体間を連結する連結部の少なくとも一部を成すようにする工程と、
を有することを特徴とするキーシートの製造方法。
【請求項4】
前記微細模様樹脂膜の形成を、樹脂シートの一方の表面に積層されるように行い、
前記複数のキートップ本体上への上記微細模様樹脂膜のあてがいを、上記樹脂シートが上記微細模様樹脂膜と上記複数のキートップ本体との間に介在するように行い、以て上記微細模様樹脂膜及び上記樹脂シートの積層膜が複数のキートップ本体間を連結する連結部を成すようにする
ことを特徴とする請求項3に記載のキーシートの製造方法。
【請求項5】
前記複数のキートップ本体を、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質を有し液状状態にある樹脂を、上面に互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体形成用凹部を有する型のこの複数のキートップ本体形成用凹部に注入することにより形成し、
前記積層膜の上記複数のキートップ本体への固着を、この積層膜越しに液状状態の複数のキートップ本体へ光を照射させてこの複数のキートップ本体を硬化させることにより行う
ことを特徴とする請求項4に記載のキーシートの製造方法。
【請求項6】
一方の主表面に樹脂シートを有し互いに所定の位置関係を有する複数のキートップ本体を、上記樹脂シートが上になる向きにし、
上記樹脂シートの表面に、常温下で液状を保持し光を受けて硬化する性質の樹脂からなる液状の微細模様形成用樹脂膜を形成し、
微細模様が形成された微細模様形成用型を上記液状の微細模様形成用樹脂膜に当ててこの微細模様形成用樹脂膜に微細模様を転写形成することにより微細模様樹脂膜と成し、
上記微細模様樹脂膜をそれに光を照射することにより硬化させて上記樹脂シート及び微細模様樹脂膜を以て複数のキートップ本体間を連結する連結部とし、
その後、上記微細模様形成用型膜を上記微細模様樹脂膜から剥離する
ことを特徴とするキーシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267464(P2010−267464A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117249(P2009−117249)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】