説明

キーボード装置

【課題】キートップにおける照明の輝度が低下することを防止するとともに、薄型のキーボード装置を提供する。
【解決手段】接点511が形成されている上部シート51と、接点521が形成されている下部シート52と、上部シート51と下部シート52との間に積層されたスペーサ53とを有するメンブレン基板50と、接点511,521に対向する位置でキートップ10をメンブレン基板50に対して接近離隔可能に保持する保持板20と、光透過性を有すると共に、キートップ10をメンブレン基板50から離隔方向に付勢するラバードーム35と、メンブレン基板50に配設され、キートップ10を照らすための発光ダイオード54とを備えており、上部シート51又は下部シート52は、発光ダイオード54が発した光を光導入部からキートップ10に導く導光性を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノート型パソコンやデスクトップ型パソコンに用いられる照明機能付きのキーボード装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
暗闇でもキーを視認することができるキーボードとして、導光板を介してキートップに光を照射するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−260478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のキーボード装置では、導光板から拡散した光は、キートップを保持する基板やメンブレン基板を介してキートップへと導かれるため、キートップにおいて照明の輝度が低下するという問題がある。また、キーボード装置の薄型化の要請がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、キートップにおける照明の輝度の低下を防止しつつ、薄型のキーボード装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一の主面に第1の接点が形成されている第1のシートと、所定間隔を介して前記第1の接点に対向する第2の接点が形成された第2のシートと、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に積層されたスペーサと、を有する回路基板と、前記第1のシートの他の主面に積層され、前記接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離隔可能に保持する保持板と、光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離隔方向に付勢する付勢手段と、前記回路基板に配設され、前記キートップを照らすための光源と、を備えたキーボード装置であって、前記第1のシート又は前記第2のシートは、前記光源が発した光を光導入部から前記キートップに導く導光性を備えることにより上記課題を解決する。
【0007】
上記発明において、前記第1のシートは、前記光源が発した光を前記キートップに導く導光性を備える材料から構成され、前記第2のシート及び/又は前記スペーサを白色のポリエチレンテレフタレート又は白色のポリエチレンナフタレートから構成することができる。
【0008】
上記発明において、前記導光性を備える第1のシートを、1000[MPa]以下のヤング率を有する材料から構成することができる。
【0009】
上記発明において、前記導光性を備える第1のシートを、ウレタン系樹脂又はシリコーン系樹脂から構成することができる。
【0010】
上記発明において、前記付勢部材を、前記第1のシートに直接接合させる構成とすることができる。
【0011】
上記発明において、前記付勢部材の屈折率を、前記第1のシートの屈折率よりも相対的に高くすることができる。
【0012】
上記発明において、前記第2のシートは、前記光源が発した光を前記キートップに導く、導光性を備える材料から構成され、前記第1のシート及び/又は前記スペーサを透明のポリエチレンテレフタレート又は透明のポリエチレンナフタレートから構成することができる。
【0013】
なお、前記第2のシートを、ポリカーボネート又はアクリル系樹脂から構成することができる。
【0014】
上記発明において、前記保持板は、リンク機構を介して前記キートップを保持する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、接点が形成されるとともに保持板が積層される回路基板の第1のシート又は第2のシートが導光性を備えるため、キートップにおける照明の輝度を向上させつつ、キーボード装置の薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるキートップを示す平面図である。
【図3】図2に示すキートップを暗闇で照明した様子を示す平面図である。
【図4】図1のIV部を示す第1の拡大断面図である。
【図5】図1のIV部を示す第2の拡大断面図である。
【図6】図1のIV部を示す第3の拡大断面図である。
【図7】図1のIV部を示す第4の拡大断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【図10】試料1の輝度分布測定結果を示す写真である。
【図11】図10に示す輝度分布測定結果に設定したスポットを示す写真である。
【図12】試料2の輝度分布測定結果を示す写真である。
【図13】試料10の輝度分布測定結果を示す写真である。
【図14】試料11の輝度分布測定結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態におけるキーボード装置の全体構成を示す断面図、図2及び図3は本実施形態におけるキートップを示す平面図、図4〜図7は図1のIV部の各例を示す拡大断面図である。
【0019】
本実施形態におけるキーボード装置1は、ノート型パソコン等に用いられるキーボードであり、図1に示すように、キートップ10と、保持板20と、ラバードームシート30と、メンブレン基板50と、発光ダイオード54と、筐体60と、を備えている。
【0020】
キートップ10は、図2に示すように、英語や日本語等の文字12が付されたキー面11を有しており、このキー面11を入力者が指で押圧することで、その文字がノート型パソコンに入力される。なお、文字12に代えて、数字、記号或いは図形等をキー面11に付してもよい。
【0021】
本実施形態では、キー面11において、文字12の部分が透明になっているのに対して、その他の部分が不透明となっている。このため、キートップ10に下方から光を当てると文字12の部分のみから光が透過するので、図3に示すように、暗闇においてキーを視認することが可能となっている。なお、文字12の部分を不透明にし、キー面11におけるその他の部分を透明にしてもよい。
【0022】
キーボード装置1の上面にはこうしたキートップ10が多数配列されている。それぞれのキートップ10は、図4に示すように、リンク機構15を介して昇降可能に保持板20に保持されている。
【0023】
リンク機構15は、2つのアーム部材16,17から構成されるパンタグラフリンク機構である。この第1のアーム部材16と第2のアーム部材17とは、側面視においてX字状に交差している。
【0024】
第1のアーム部材16の上端は、キートップ10の下面にスライド可能に連結されており、第1のアーム部材16の下端は、保持板20に回動可能に連結されている。一方、第2のアーム部材17の上端は、キートップ10の下面に回動可能に連結されており、第2のアーム部材17の下端は、保持板20にスライド可能に連結されている。
【0025】
キートップ10が押し下げられると、第1のアーム部材16が、その下端を中心として回動して、その上端がキートップ10の下面をスライドする。これと同時に、第2のアーム部材17が、その上端を中心として回動して、その下端が保持板20上をスライドする。
【0026】
このようなリンク機構15がキートップ10と保持板20との間に介在していることで、キートップ15が同じ位置(メンブレン基板50の接点511,521に対向する位置)を維持しながら昇降可能となっていると共に、キーボード装置1からのキートップ10の脱落が防止されている。
【0027】
なお、本発明におけるリンク機構には、上述のパンタグラフ式のリンク機構15に限定されない。例えば、2つのアーム部材の端部にそれぞれ形成されたギアを相互に咬合させて当該アーム部材を逆V字状に組み合わせたギアリンク機構も含まれる。
【0028】
保持板20には、一つのキートップ10に対して一対の突起21,22が設けられている。第1の突起21は、リンク機構15の第1のアーム部材16の下端を回転可能に保持している。一方、第2の突起22には、保持板20の平面方向に沿った溝221が第1の突起21に向かって形成されており、この溝221内に第2のアーム部材17の下端がスライド可能に挿入されている。
【0029】
また、保持板20において、第1の突起21と第2の突起22との間には、開口23が形成されている。この開口23からは、ラバードームシート30のラバードーム35がキートップ10に向かって突出している。
【0030】
この保持板20はラバードームシート30の上に積層されている。ラバードームシート30は、シート本体31とラバードーム35とを有している。シート本体31は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)から構成されている。一方、ラバードーム35は、例えば、透明なシリコーン系樹脂から構成されている。このラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37でシート本体31に接合されている。
【0031】
また、ラバードーム35は、下方に向かって突出する凸部36を有している。一方、シート本体31においてラバードーム35の凸部36に対向する位置に開口32が形成されており、キートップ10の押圧時における接点511,521のオン荷重(接点511,521が接触して電気的にオンとなる荷重)の低減が図られている。
【0032】
キートップ10が押し下げられると、ラバードーム35が押圧されて脚部37が座屈変形し、ラバードーム35の凸部36が、メンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10の押圧が解除されると、脚部37が弾性力によって初期形状を復元し、接点511,521が離隔すると共に、キートップ10が押し上げられる。このラバードームシート30は、メンブレン基板50の上に積層されている。なお、図4では、構成を分かりやすく説明するため、後述する拡散部P1を誇張し、メンブレン基板50とラバードーム30のシート本体31とを離隔させて表現しているが、実際には、拡散部P1が形成されているメンブレン基板50にラバードーム30のシート本体31が積層されている(後述する図7において同じ)。
【0033】
本実施形態のメンブレン基板50は、上部シート51と、下部シート52と、スペーサ53と、を有している。上部シート51の下面には第1の接点511が形成されており、下部シート52の上面には第2の接点521が形成されている。第1の接点511及び第2の接点521は、例えば銀ペーストを上部シート51及び下部シート52にスクリーン印刷することで形成されている。また、スペーサ53には、第1及び第2の接点511,521に対応する開口531が形成されている。
【0034】
本実施形態において、上部シート51又は下部シート52は、光導入部から入射された発光ダイオード54の光をキートップ10に導く導光性を備えている。導光性を備える上部シート51と下部シート52との組み合わせ例としては、上部シート51が導光性材料、下部シート52が白色のPETで構成されるもの、下部シート52が導光性材料、上部シート51が透明のPETで構成されるもの等が挙げられる。
【0035】
上述のメンブレン基板50の端部には、キートップ10を照らすための発光ダイオード54が配設されている。
【0036】
図4に示すように、上部シート51が導光性を備える材料から構成されている場合、上部シート51の具体的な材料としては、例えば、シリコーンゴム等のシリコーン系樹脂、熱可塑性ポリウレタンや架橋ポリウレタン等のウレタン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、エチレンビニルアセテート(EVA:Ethylene-vinyl acetate)、或いは、ポリエチレンテレフタレート(PET: Polyethylene terephthalate)を例示することができる。
【0037】
また、導光性を有する上部シート51は、柔軟な材料から構成されていることが好ましい。具体的に材料のヤング率は1〜1000[MPa]が好ましく、特に1〜300[MPa]がより好ましい。このような材料の具体例としては、例えばウレタン系樹脂(ヤング率:5〜300[MPa]程度)やシリコーン系樹脂(ヤング率:1〜5[MPa]程度)等を例示することができる。
【0038】
本実施形態のキーボード装置1では、上部シート51をポリカーボネート(ヤング率:2000〜3000[MPa]程度)やアクリル系樹脂(ヤング率:3000〜3500[MPa]程度)のような硬い材料で構成すると、上部シートが押し下げられにくくなるため、接点511,521がオンしない場合がある。これに対し、上部シート51を上記した範囲のヤング率を有する柔軟な材料で構成することで、接点511,521のオン荷重を適正化できる。なお、スペーサ53に形成する開口531の内径やメンブレン基材の厚みによって、適正化を図ってもよい。
【0039】
本実施形態では、図4に示すように、上部シート51の他の主面の一部に拡散部P1を形成する。この拡散部P1は、透明又は白色インキを用いてドットパターンを印刷する手法により上部シート51の上面に形成されている。この拡散部P1で光が拡散されることで、拡散部P1周辺で上部シート51が発光する。なお、拡散部P1の形成手法は透明又は白色インキを用いてドットパターンを印刷する手法に限定されず、レーザー加工やサンドブラスト加工により上部シート51の主面に微小な凹凸を形成する手法などを用いることができる。ドットパターンとは、所定面積の単位形状が所定の密度で配列された印刷用のパターンである。白色インキとして、酸化チタン等の白色顔料を含有した樹脂インクを用いることができる。
【0040】
ドットパターンの態様は特に限定されないが、光の散乱度合いを調節する観点から、発光ダイオード54からの距離に応じて拡散部P1のドットパターンの密度(面積に対するインク塗布面積の割合)を設定できる。光源からの距離が遠いほど、キートップ10における照明の輝度が低下する傾向があるため、例えば、光源から近い拡散部P1のドットパターンの密度を低くするとともに、光源から遠い拡散部P1のドットパターンの密度を高くすることができる。このようにドットパターンの印刷密度を調節することにより、キートップ10における照明の輝度を均等に分布させることができる。
【0041】
本実施形態における拡散部P1は、キーの照光が認識できる範囲に形成されれば特に限定されないが、例えば、図4に示すように、各キートップ10に対向する領域に形成したり、ラバードーム35の凸部36に対向する領域に形成したり、スペーサ53の開口531に対向する領域に形成してもよい。
【0042】
また、図5に示すように、拡散部P1を、上部シート51の一の主面、すなわち第1の接点511が設けられた側に拡散部P1を形成してもよい。この場合において、拡散部P1は第1の接点511の周囲であって、各キートップ10に対向する位置に形成される。
【0043】
なお、図6に示すように、拡散部P1をスペーサ53の上側面に設けてもよい。
【0044】
図5、図6では、拡散部P1を誇張して図示するため、上部シート51とスペーサ53とを離隔させて表現しているが、実際には、上部シート51とスペーサ53とは接している。
【0045】
既述したように、上部シート51が導光性を備える材料から構成されている場合は、下部シート52及び/又はスペーサ53は、白色のポリエチレンテレフタレートや白色のポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などの可撓性を有する白色の樹脂製フィルムから構成することが望ましい。白色PETや白色PENは、PETやPENに白色顔料を混合したり、PETやPEN自体を発泡させることで得ることができる。導光性を備える上部シート51に直接積層されるスペーサ53を白色とすることで、スペーサ53に反射板の機能を付与できる。これにより、上部シート51とスペーサ53の間に専用の反射板を積層する場合と比較して、キーボード装置1全体の薄型化を図ることができる。なお、上部シート51の接点511が形成されている面、スペーサ53、や筐体60の内側面に白色のインクを塗布することで、スペーサ53や筐体60に反射板の機能を付与してもよい。また、スペーサ53に反射板の機能を付与する代わりに、スペーサ53を透明にして、下部シート52に反射板の機能を付与してもよい。
【0046】
メンブレン基板50を3層構造とする場合、各層の外周部分を通常接着剤を用いて貼り合わせを行うが、導光性を向上させるなどの観点から3層全てを導光板で構成する場合は、3層の全面を互いに密着させる必要がある。なぜなら、導光板の間に空気が入っていると屈折率が変化してしまい、導光性能が損なわれるからである。しかし、3層の全面を無気泡状態で密着させる作業は困難であるとともに、導光板間の屈折率などの導光性能に影響を与えない適切な接着剤を選択するのは容易ではない。ちなみに、この問題を避けるために通常のメンブレン基板のように外周部分のみを接着すると、導光性を向上させるなどの効果を得ることができない。また、一般に導光板は比較的硬高価であるため、3層ともに導光材を用いるとコストが高くなってしまう。さらに、上部シート51を導光板とし、下部シート52やスペーサ53を反射板として機能させる場合は別途反射板を設ける必要が無いが、3層全てを導光板とすると反射板を別途設ける必要が生じ、メンブレン基板50の厚さが厚くなってしまう。本実施形態では、上部シート51を、導光性を備える材料から構成しているので、上部シート51、下部シート52及びスペーサ53の全てを導光性材料から構成する場合よりも、上述した密着部分で生じる輝度のムラの問題や、接着面で生じる気泡の問題の発生を低減させることができる。導光性を備える材料は、白色PETなどよりも高価であるので、本実施形態のように、上部シート51のみを導光性材料から構成することにより、輝度の向上を図りつつコストを低減させることができる。
【0047】
他方、図7に示すように、下部シート52が導光性を備える材料から構成されている場合は、上部シート51及びスペーサ53は、透明のポリエチレンテレフタレートや透明のポリエチレンナフタレート(PEN:Polyethylene naphthalate)などの可撓性を有する透明の樹脂製フィルムから構成することが望ましい。この場合、上部シート51は導光性を備えない材質を用いることができる。
【0048】
下部シート52はスイッチングの際に押し下げられないので、下部シート52を導光性材料とする場合は、ヤング率又は柔らかさが限定されず、上記記載の材料に加え、ポリカーボネート又はアクリル系樹脂などの硬い材料も選択できる。これにより、より安価で導光性の優れた材料を選択することができる。
【0049】
このように、下部シート52が導光性を備える場合は、図7に示すように下部シート52の下面側に拡散部P1を形成することができる。もちろん、下部シート52の上面側に拡散部P1を形成してもよい。
【0050】
以上の図4〜7に示すように、本実施形態のキーボード装置1は、上部シート51と下部シート52とがスペーサ53を介して積層されており、第1の接点511と第2の接点521とが開口531を介して接近/離隔可能に対向している。
【0051】
キートップ10が押し下げられると、ラバードーム35の凸部36がメンブレン基板50の上部シート51を押圧する。これにより、上部シート51が変形するので、第1の接点511が第2の接点521と接触して接点511,521がオン状態となる。一方、キートップ10の押圧が解除されると、上部シート51は弾性力によって初期形状に復元し、接点511,521がオフ状態となる。
【0052】
図1に戻り、このメンブレン基板50には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)54が実装されている。この発光ダイオード54は、側方照射型のLEDであり、図1に示すように、その照射面541が導光性を備える上部シート51又は下部シート52の光導入部42に対向するように配置されている。
【0053】
この発光ダイオード54が発光すると、発光ダイオード54の照射面541から照射された光は、光導入部42を介して導光性を備える上部シート51又は下部シート52内に進入し、当該上部シート51又は下部シート52内を反射しながら伝播される。
【0054】
そして、光は、上部シート51又は下部シート52において拡散部P1が形成された箇所で外部に拡散し、ラバードーム35を通過してキートップ10の下面に到達する。この光は、図2に示すキートップ10に形成された文字12の部分のみを透過し、その他の部分は透過しないため、キーボード装置1を上方から見ると、文字12の部分のみが光っている状態となる。このため、暗闇であってもキーを視認できる。
【0055】
本実施形態では、図1に示すように、下側から、メンブレン基板50、ラバードームシート30、及び保持板20が積層され、これらが筐体60の収容部61内に収容されている。そして、筐体60の折り返し部62に保持板20の周縁が係合することで、ラバードームシート30、及びメンブレン基板50が、保持板20と筐体60との間に挟み込まれる。
【0056】
このように、本実施形態では、従来技術と比べて導光性を備える上部シート51又は下部シート52をキートップ10側に配置することで、上部シート51から拡散した光を、メンブレン基板50と基板20を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。
【0057】
ちなみに、従来のキーボード装置では、保持板がメンブレン基板の下に配置されるので、メンブレン基板には保持板に設けられた突起を貫通させるための貫通孔を設ける必要がある。さらに、導光板(導光性を有する板体を含む)に貫通孔を形成すると各貫通孔の端面で光が漏洩するため、一般に導光板は保持板よりも下に積層されている。
【0058】
これに対し、本実施形態では、保持板20を、導光性を備える上部シート51又は下部シート52よりも上に配置しているので、導光性を備える上部シート51又は下部シート52に保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度の低下を防止できる。
【0059】
加えて上部シート51又は下部シート52に導光性の材料を用いることにより、キーボード装置1全体の薄型化を図ることができる。
【0060】
本実施形態のキーボード装置1を製造するには、光源が発した光をキートップ10に導く導光性を有する上部シート51に、第1の接点511を含む回路パターンを形成する工程と、必要に応じて上部シート51の一の主面の一部に拡散部P1を形成する工程と、上部シート51の他の主面に、スペーサ53を介して第1の接点511に接触可能な第2の接点521が形成された下部シート52を積層する工程と、第1の接点511及び第2の接点521に対向する位置でキートップ10を上部シート51に対して接近離隔が可能なように保持する保持板20が上部シート51よりもキートップ10側に配置されるように、上部シート51、スペーサ53及び下部シート52を保持板20に挟持させる工程と、を実行する。なお、上部シート51に回路パターンを形成する工程と、上部シート51に拡散部P1を形成する工程と、スペーサ53を介して下部シート52を積層する工程と、は相前後して行うことができる。
【0061】
<<第2実施形態>>
図8は本発明の第2実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0062】
本実施形態では、第1実施形態におけるラバードームシート30のシート本体31を備えておらず、ラバードーム35がメンブレン基板50に直接接合されている点で第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。以下に、第2実施形態におけるキーボード装置1Bについて第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0063】
本実施形態では、図8に示すように、ラバードーム35は、透明な接着剤を介して脚部37で上部シート51に直接接合されている。この接着剤は、導光性を有する上部シート51の屈折率以上であり且つラバードーム35の屈折率以下の屈折率を有しており、例えばシリコーン系樹脂やウレタン系樹脂から構成される接着剤を例示することができる。
【0064】
ここで、導光性を有する上部シート51を構成するウレタン系樹脂は、1.4〜1.5程度の屈折率を有している。一方、ラバードーム35を構成するシリコーン系樹脂は、4.0〜4.5程度の屈折率を有しており、導光性を有する上部シート51の屈折率よりもラバードーム35の屈折率の方が高くなっている。
【0065】
一般的に、屈折率の異なる部材が付着している場合には、光は屈折率が低い部材から屈折率の高い部材へと進む。また、屈折率の高い部材内の光は、屈折率の低い部材との付着面において全反射、屈折するため、当該高屈折率の部材内へと進んだ光が低屈折率の部材内に戻ることはない。そのため、本実施形態では、導光性を有する上部シート51内を伝播してきた光は、ラバードーム35の脚部37が接合されている箇所を介して、ラバードーム35内へと積極的に進む。
【0066】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、従来技術と比べて、導光性を備える上部シート51をキートップ10側に配置することで、上部シート51から拡散した光を、メンブレン基板50と基板20を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、保持板20を、導光性を有する上部シート51よりもキートップ10側に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔をメンブレン基板50に形成する必要がなく、キートップ10における照明の輝度が低下することを防止できる。
【0068】
さらに、上述したように、本実施形態では、拡散部P1による発光に加えて、屈折率の差を利用して導光性を有する上部シート51からラバードーム35内に直接導光するので、キートップ10における照明の輝度を向上させることができる。また、本実施形態では、第1実施形態で説明したラバードームシート30のシート本体31が不要となるので、キーボード装置1B全体の薄型化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態ではラバードーム35を、導光性を有する上部シート51に接合する接着剤の屈折率は、上部シート51以上で且つラバードーム35以下であるので、上部シート51からラバードーム35への進む光の進行を妨害することもない。
【0070】
<<第3実施形態>>
図9は本発明の第3実施形態におけるキーボード装置を示す拡大断面図である。
【0071】
本実施形態では、キートップ及び保持板の構造が異なる点で、第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。以下に、第3実施形態におけるキーボード装置1Cについて第1実施形態と相違する点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
本実施形態におけるキーボード装置1Cは、デスクトップ型パソコンに用いられるキーボードである。
【0073】
このキーボード装置1Cのキートップ10Cの下面からは、当接リブ13と係合リブ14が下方に向かって突出している。当接リブ13は、ラバードーム35に当接している。一方、係合リブ14は、保持板20Cの台座64に係合している。
【0074】
なお、特に図示しないが、第1実施形態と同様に、本実施形態のキートップ10Cのキー面11にも文字12が付されており、キー面11における文字12の部分が透明となっているのに対し、その他の部分が不透明となっている。
【0075】
保持板20Cには、第1実施形態の第1及び第2の突起21,22に代えて、台座64が形成されている。この台座64の上部開口の周縁には、内側に向かって突出する突起641が形成されており、この突起641に係合リブ14の係合爪141が係合している。
【0076】
キートップ10が押し下げられると、ラバードーム35が変形し、凸部36がメンブレン基板50の接点511,521を押圧する。一方、キートップ10Cの押圧が解除されると、ラバードーム35が初期形状に復元してキートップ10Cを押し上げる。この際、台座64と係合リブ14とが係合することで、キーボード装置1Cからのキートップ10の脱落が防止されている。
【0077】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、従来技術と比べて、導光性を備える上部シート51又は下部シート52をキートップ10C側に配置することで、上部シート51から拡散した光を、メンブレン基板50と基板20を介さずにキートップ10へと導くことができるので、キートップ10Cにおける照明の輝度を向上させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、第1実施形態と同様に、保持板20を、導光性を有する上部シート51、下部シート52よりもキートップ10C側に配置しているので、保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を導光性の上部シート51又は下部シート52に形成する必要がなく、キートップ10Cにおける照明の輝度が低下することを防止できる。
【0079】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0080】
例えば、第3実施形態におけるキーボード装置1Cにおいて、第2実施形態で説明したように、透明なシリコーン系樹脂からなる接着剤を用いて、ラバードームをメンブレン基板50に直接接合してもよい。
【0081】
なお、本実施形態におけるメンブレン基板50が本発明における回路基板の一例に相当し、本実施形態における上部シート51が本発明における第1のシートの一例に相当し、本実施形態における下部シート52が本発明における第2のシートの一例に相当し、本実施形態におけるラバードーム35が本発明における付勢部材の一例に相当する。
【0082】
以下に、本発明をさらに具体化した試料により本発明の効果を確認した。
【0083】
<<実施例1>>
以下の試料1及び試料2を用いた実施例1は、上述した実施形態に係るキーボード装置における照明の輝度が維持される効果を確認するためのものである。
【0084】
<試料1>
試料1では、第1実施形態と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。
【0085】
この試料1のサンプルでは、ラバードームシートのシート本体として、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用い、このPETフィルム上に透明なラバードーム(信越ポリマー株式会社製)を接着剤(東亜合成株式会社製LCR0628A)で接合した。
【0086】
また、メンブレン基板の上部シートとして、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いた。さらに、このウレタンシートの上面に、白色インク(十条ケミカル株式会社製4700M白)をスクリーン印刷することで拡散部を形成した。
【0087】
また、メンブレン基板の下部シート、スペーサとして、厚さ100μmの白色PETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製FW2)、厚さ100μmのPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用いた。
【0088】
また、上部シート及び下部シート上に、銀フィラーを含有した導電性ペースト(東洋紡績株式会社製DX−351H−30)をスクリーン印刷することで、厚さ10μmの第1及び第2の接点をそれぞれ形成した。
【0089】
このメンブレン基板に、長さ2.8mm、幅1.0mm、高さ0.6mmの側面発光型LED(シチズン電子株式会社社製CL−432F)を、導電性接着剤(株式会社スリーボンド製3302B)を用いて実装した。
【0090】
なお、この試料1のサンプルでは、メンブレン基板へのLEDの実装に際して、下部シート上にLED実装用の回路を形成すると共に、下部シートに実装されたLEDを挿入するための貫通孔を上部シート及びスペーサに形成した。
【0091】
この試料1のサンプルのLEDに、低圧電流発生電源(株式会社アドバンテスト製R6142)を用いて電流100mAを通電し、LEDを点灯させた状態でのキートップにおける照明の輝度分布を二次元色彩輝度計(コニカミノルタセンシング株式会社製CA−2000)を用いて測定した。このときの輝度分布測定結果を図10に示す。また、図11に示すようなスポットをそれぞれのキーに対して設定し、全てのスポットの輝度の平均値を算出した。その算出結果を表1に示す。加えて、試料1の1として、下部シートとして試料1で上部シートとして用いた材料を用い、上部シートとして試料1で下部シートとして用いた材料を用い、スペーサとして試料1でスペーサとして用いた材料を用いた。試料1と同様にサンプルを作製し、図11に示すスポットの輝度の平均値を算出した。その算出結果を表1に示す。なお、図11において実線の枠がスポットである。
【0092】
【表1】

<試料2>
比較例となる試料2では、各部材の積層順序を変更したこと以外は、試料1と同様の構成のサンプルを作製した。すなわち、下側から、導光板、保持板、メンブレン基板、ラバードームシートの順(上述の特開2002−260478号公報記載の積層順序)で積層した。試料2において、導光板としては、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いた。さらに、このウレタンシートの下面に、白色インク(十条ケミカル株式会社製4700M白)をスクリーン印刷することで拡散部を形成した。
【0093】
なお、この積層順序の変更に伴って、厚さ100μmの白色PETフィルムから構成される反射シート(帝人デュポンフィルム株式会社製FW2)を導光板の下に追加した。また、メンブレン基板の上部シートを、下部シートやスペーサと同様の透明なPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)に変更した。さらに、ラバードームシートとメンブレン基板に、保持板の第1及び第2の突起が貫通する貫通孔を形成した。
【0094】
この試料2のサンプルに対して、試料1と同様の要領でLEDを点灯させて、キートップにおける照明の輝度分布を測定した。このときの輝度分布測定結果を図12に示す。また、試料1と同様のスポットをそれぞれのキーに設定し、全てのスポットの輝度の平均値を算出した。その算出結果を上記の表1に示す。
【0095】
<考察>
試料1及び試料1の1では、試料2と比較して各部材の積層順序を変更しただけにも関わらず、図10及び図12に示すように、キートップにおける照明の輝度が全体的に向上しており、表1に示すように輝度が約2倍程度に向上している。また、試料1及び試料1の1では、試料2において用いられた導光板(厚さ200μm)及び反射シート(厚さ100μm)が不要となるので、基板の厚さを薄くすることができる。その結果、キーボード装置全体を薄くすることができる。
【0096】
このことから、保持板を、導光性を有する上部シート又は下部シートよりもキートップ側に配置することで、キートップにおける照明の輝度を向上させつつ、キーボード装置の薄型化を図ることができる。
【0097】
<<実施例2>>
次に、上述した実施形態におけるキーボード装置のオン荷重を、以下に説明する試料3〜9によって確認した。オン荷重は、φ3mmの押下面を有する押し子を用いてラバードームを押下させ、回路が導通した時点の荷重を測定する。なお、本実施例で使用する押し子の半径はラバードームの寸法に応じて決定されている。本実施例では、ラバードーム上部の外形寸法よりも大きく、押下面が平滑なものとした。
【0098】
<試料3>
試料3では、上部シートとして、厚さ150μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いたこと以外は、試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料3の上部シートの構成を表2に示す。
【0099】
【表2】

この試料3のサンプルに対して、メンブレン基板の接点同士が接触して回路が導通した時点の荷重(オン荷重)を測定した。その測定結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

<試料4>
試料4では、上部シートとして、厚さ200μmのウレタンシート(日本マタイ株式会社製M−FILM−NY02−A)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料4の上部シートの構成を上記の表2に示す。
【0101】
この試料4のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0102】
<試料5>
試料5では、上部シートとして、厚さ150μmのシリコーンシート(富士高分子工業株式会社製Light Guide Film)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料5の上部シートの構成を上記の表2に示す。
【0103】
この試料5のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0104】
<試料6>
試料6では、上部シートとして、厚さ200μmのシリコーンシート(富士高分子工業株式会社製Light Guide Film)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料6の上部シートの構成を上記の表2に示す。
【0105】
この試料6のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0106】
<試料7>
試料7では、メンブレン基板の上部シートとして、厚さ100μmの透明なPETフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製HS)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料7の構成を上記の表2に示す。
【0107】
この試料7のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重の測定をした。その測定結果を上記の表3に示す。
【0108】
<試料8>
試料8では、上部シートとして、厚さ130μmのポリカーボネートシート(出光興産株式会社製LC1500)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料8の上部シートの構成を上記の表2に示す。
【0109】
この試料8のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0110】
<試料9>
試料9では、上部シートとして、厚さ200μmのソフトアクリルシート(有限会社シーアールディー製SA−00−R)を用いたこと以外は、上述の試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。この試料9の上部シートの構成を上記の表2に示す。
【0111】
この試料9のサンプルに対して、試料3と同様の要領でオン荷重を測定した。その測定結果を上記の表3に示す。
【0112】
<考察>
上部シートとして、導光性を有する柔軟なシート(ウレタンシート、シリコーンシート)を用いた試料3〜6は、通常の上部シートにPETを用いた試料7と同様の値となっている。また、硬いシート(ポリカーボネート、ソフトアクリル)を上部シートとして用いた試料8及び9は、試料3〜7と比較してオン荷重が大きくなっている。
【0113】
以上のことから、上部シートとして、柔軟なウレタンシートやシリコーンシートを採用することにより、オン荷重を適正な値域にすることができることが分かる。
【0114】
<<実施例3>>
以下の試料10及び試料11を用いた実施例3は、上述した実施形態に係るキーボード装置において、導光性を有する上部シート又は下部シートに貫通孔を設けないことにより照明の輝度が維持される効果を確認するためのものである。
【0115】
<試料10>
試料10では、試料1と同様の構成のキーボード装置のサンプルを作製した。実施例1と同様の手法で得られた試料10のキートップの輝度分布測定結果を図13に示す。併せて、試料10のキートップの列ごとの輝度(cd/m)を表4に示す。
【0116】
<試料11>
試料11は、試料10の比較例であり、上部シートに設けられた拡散部の四隅にφ2.7mmの孔を穿設した。拡散部は、縦14.5mm、横12.0mmの矩形の領域であり、隣接する拡散部との間隔は3.15mmである。実施例1と同様の手法で得られた試料11のキートップの輝度分布測定結果を図14に示す。併せて、試料10のキートップの列ごとの輝度(cd/m)を表4に示す。
【0117】
また、試料10及び11においては、複数の光源は最上列のキートップの上側に沿って配置されており、最上列のキートップと光源との距離は、3.15mmである。
【0118】
【表4】

<考察>
図13及び図14並びに表4に示すように、孔が穿設されている試料11に比べて、孔が無い試料10は、輝度の分布が均等である。比較例である試料11は、光源に近い最上列(列番号=1)のキートップでは高い輝度を示すが、光源から離れるにつれて輝度が大きく低下することが分かる。これは、孔の端部で光が散乱するため、光源から遠い位置に至るまでに光が減衰してしまうからである。これに対して、本実施形態に係る試料10は、保持板を導光性を有する上部シート又は下部シートよりもキートップ側に配置することにより、メンブレン基板に孔を設ける必要が無い。そのため、孔による無駄な光の拡散が無く、光源から遠い位置でも光が減衰せず、各キートップを均等に光らせることができる。
【0119】
以上のとおり、本実施形態のように、保持板を、導光性を有する上部シート又は下部シートよりもキートップ側に配置することにより、上部シート51又は下部シート52に保持板20の突起21,22を貫通させるための孔を形成する必要がない。このため、孔の端面で光が拡散して減衰することを防止でき、キートップ10における照明の輝度の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1,1B,1C…キーボード装置
10,10C…キートップ
11…キー面
12…文字
15…リンク機構
20,20C…保持板
30ラバードームシート
31…シート本体
35…ラバードーム(付勢部材)
36凸部
42…光導入部
50…メンブレン基板(回路基板)
51…上部シート(第1のシート)
511…第1の接点
52…下部シート(第2のシート)
521…第2の接点
53…スペーサ
54…発光ダイオード,LED
60…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の主面に第1の接点が形成されている第1のシートと、所定間隔を介して前記第1の接点に対向する第2の接点が形成された第2のシートと、前記第1のシートと前記第2のシートとの間に積層されたスペーサと、を有する回路基板と、
前記第1のシートの他の主面に積層され、前記接点に対向する位置でキートップを前記回路基板に対して接近離隔可能に保持する保持板と、
光透過性を有すると共に、前記キートップを前記回路基板から離隔方向に付勢する付勢手段と、
前記回路基板に配設され、キートップを照らすための光源と、を備えたキーボード装置であって、
前記第1のシート又は前記第2のシートは、前記光源が発した光を光導入部から前記キートップに導く導光性を備えることを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキーボード装置であって、
前記第1のシートは、前記光源が発した光を前記キートップに導く導光性を備える材料から構成され、前記第2のシート及び/又は前記スペーサは白色のポリエチレンテレフタレート又は白色のポリエチレンナフタレートから構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項3】
請求項2に記載のキーボード装置であって、
前記導光性を備える第1のシートは、1000[MPa]以下のヤング率を有する材料から構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項4】
請求項3に記載のキーボード装置であって、
前記導光性を備える第1のシート又は第2のシートは、ウレタン系樹脂又はシリコーン系樹脂から構成されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載のキーボード装置であって、
前記付勢部材は、前記第1のシートに直接接合されていることを特徴とするキーボード装置。
【請求項6】
請求項5に記載のキーボード装置であって、
前記付勢部材の屈折率は、前記第1のシートの屈折率よりも相対的に高いことを特徴とするキーボード装置。
【請求項7】
請求項1に記載のキーボード装置であって、
前記第2のシートは、前記光源が発した光を前記キートップに導く導光性を備える材料から構成され、前記第1のシート及び前記スペーサは透明のポリエチレンテレフタレート又は透明のポリエチレンナフタレートから構成されていることを特徴とするキーボード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−65479(P2011−65479A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216109(P2009−216109)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】