説明

キー及びキーシート

【課題】本発明の目的は、キーの色の表現に幅を持たせることが出来る構造を有するキー及びキーシートを提供することにある。
【解決手段】本発明に係るキーは、キー本体を加飾する加飾層を有するキーにおいて、前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備えることを特徴とするキーである。また、本発明に係るキーシートは、キー本体を加飾する加飾層を有するキーを有するキーシートであって、前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備えることを特徴とするキーシートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話機、PHS(Personal Handy-phone System)、携帯情報端末(例えば、PDA(Personal Digital Assistant)等)、携帯オーディオ、家電製品用リモートコントローラ等の電子機器に使用可能なキー及びキーシートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のキーシートとして、例えば特許文献1には金属薄膜によって形成されたハーフミラー膜を、加飾層に含むキーを備えるキーシートが開示されている。また、特許文献2には、金属色の明色膜を加飾層に含むキーを備えるキーシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−242302号公報
【特許文献2】特開平11−027362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1及び2に開示されたキーでは、キーの色が金属薄膜又は明色膜の材料に依存してしまうため、キーの色の表現に限界があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、キーの色の表現に幅を持たせることが出来る構造を有するキー及びキーシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の観点に係るキーは、
キー本体を加飾する加飾層を有するキーにおいて、
前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備える。
【0007】
前記複数の層の少なくとも一部の層は、誘電体層であってもよい。
【0008】
前記誘電体層は、金属酸化膜からなってもよい。
【0009】
前記加飾層は、前記積層体の裏面側に位置し、前記キーの表示要素を表現した表示層をさらに備えてもよい。
【0010】
前記表示層は前記積層体の裏面に接し、前記積層体の層のうちの前記表示層に接する層は二酸化シリコンの金属酸化膜で形成してもよい。
【0011】
前記積層体は、6層以上の層を積層したものであってもよい。
【0012】
前記加飾層の色は、金属調であってもよい。
【0013】
前記キー本体は、
前記キー本体の本体となる本体部と、
本体部を保護する保護層を備えてもよい。
【0014】
本発明の第二の観点に係るキーシートは、
キー本体を加飾する加飾層を有するキーを有するキーシートであって、
前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備える。
【0015】
また、前記キーシートは、
キーベースをさらに備え、
前記キーベースは、誘電体及び又は絶縁体で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るキー及びキーシートは、キーの色の表現に幅を持たせることが出来る構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一実施形態に係るキーシートを表面から見た図である。
【図2】第一実施形態に係るキーシートを裏面から見た図である。
【図3】第一実施形態に係るキーシートの分解斜視図である。
【図4】第一実施形態に係るキーシートと、このキーシートを配置した基板と、の拡大断面図である。
【図5】第一実施形態に係るキーが備えるキー本体の拡大断面図である。
【図6】第一実施形態に係るキーが備える積層体の層の構成を説明するための説明図である。
【図7】第一実施形態に係るキーシートを携帯電話機の筐体に組み込んだ場合の、非照光時の携帯電話機を表面から見た要部図である。
【図8】第一実施形態に係るキーシートを携帯電話機の筐体に組み込んだ場合の、照光時の携帯電話機を表面から見た要部図である。
【図9】第二実施形態に係るキーシートと、このキーシートを配置した基板と、の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態例(下記の第一実施形態、第二実施形態、及び、その他)について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で下記の実施形態及び図面で説明される構成に変更を加えることが出来るのはもちろんである。なお、図面において、同様の要素(部材や層等)は同じ符号を付して説明する。また、同様の要素が複数ある場合には、その一部の要素にのみ符号を付した場合がある。下記の実施形態に係るキー及びキーシートは、携帯電話機に使用するものであるが、下記の説明は他の通信機器や他の電子機器に使用するキー及びキーシートの説明に適宜拡張できる。
【0019】
なお、本発明において、「表面」とは、キーの天面側の面をいい、「裏面」とは、キーの天面側の面と反対側の面をいう。
【0020】
なお、本発明において、「透明」とは、無色透明及び有色透明を含む概念である。
【0021】
なお、本発明において、「光」とは、主に、可視光のうちの少なくとも一つの波長(特定の色を構成する波長域又はレーザー光のような単波長)の光を含むものをいう。
【0022】
なお、本発明において、「金属酸化膜」とは、実質的に、一種類又は複数種類の金属酸化物で形成される膜であればよく、不純物を含んでも良い。
【0023】
なお、本発明において、「表示要素」とは、キーの機能等を表すものであり、文字、数字、記号、又は、図形等で構成されるものである。
【0024】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係るキー及びキーシートを、図1乃至8を参照して説明する。なお、図3乃至図6の各要素は、第一キー30、キーシート10及び基板90の構成を理解し易いように、誇張して及び概略的に描かれている。
【0025】
キーシート10は、複数の第一キー30と、第二キー40と、第三キー50と、キーベース70と、を備える。また、キーシート10は、このキーシート10を携帯電話機に組み込んだ場合に、この携帯電話機の基板90上に配置される。
【0026】
(キー)
第一キー30は、それぞれ、数字の入力、記号の入力、又は、メニューの呼び出し等に使用される、テンキー又は機能キー等である。第二キー40は、メニューの中の項目の選択等に使用される、方向キーである。第三キー50は、選択した項目の決定等に使用される、確定(又は決定)キーである。
【0027】
本実施形態では、各第一キー30と、第二キー40と、第三キー50と、は、形状が異なるが、全て本実施形態に係るキーとして共通し、略同様の構造を有する。但し、本実施形態における第二キー40と、第三キー50と、は、後述の表示層37がない。第二キー40及び又は第三キー50を照光したとき(詳しくは後述する。)に、第二キー40及び又は第三キー50が後述の表示要素を表示する場合には、第一キー30と同様に第二キー40及び又は第三キー50に表示層37に対応する表示層を形成してもよい。なお、以下では、第一キー30を例にとって、本実施形態に係るキーを説明するが、以下の説明は本実施形態に係るキーの説明に適宜拡張できる。
【0028】
第一キー30は、キー本体31と、キー本体31の裏面に形成した加飾層35と、を備える。
【0029】
キー本体31は、キー本体31の本体となる本体部31aと、この本体部31aを保護する保護層31bと、を備える(図5参照)。この保護層31bにより、キー本体31に傷が付きにくくなる。なお、本実施形態においてはキー本体31に保護層31bが設けられている構造を一例として示したが、この保護層31bは必ずしも必要なものではなく、本体部31aを形成する合成樹脂の硬度との関係で適宜設けるようにすれば良い。
【0030】
本体部31aは、各種合成樹脂(例えば硬質樹脂)、又は、各種ガラス等の適宜の材料によりそれぞれ形成される。本体部31aは、射出成形等の適宜の方法で形成される。硬質樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネイト系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、電磁波硬化樹脂等がある。電磁波硬化樹脂の例としては、UV(Ultra Violet)硬化樹脂等がある。
【0031】
保護層31bは、各種合成樹脂(例えば硬質樹脂)等の適宜の材料によりそれぞれ形成される。保護層31bは、例えば、アクリルウレタンを主成分とするUV硬化樹脂等によって形成される。保護層31bは、塗装又は印刷等の適宜の方法で形成される。
【0032】
なお、塗装又は印刷には、UV硬化樹脂等の電磁波硬化樹脂を材料とする場合、電磁波(例えばUV)を照射して電磁波硬化樹脂を硬化させるステップも含まれる(本発明について同じ。)。
【0033】
キー本体31(本体部31a及び保護層31b)は、透光性を有する。特に、キー本体31は、全体として透明であることが望ましい。
【0034】
加飾層35は、第一キー30を加飾する。加飾層35は、キー本体31の裏面に形成した積層体36と、積層体36の裏面に形成した表示層37と、を備える。
【0035】
積層体36は、キー本体31の裏面に形成される。積層体36は、図6に示すように、複数の層36a乃至36lを、層36aから順に蒸着又はスパッタ等の適宜の方法により積層したものである。積層体36を構成する複数の層36a乃至36lは、基本的に透明であることが望ましい。また、積層体36を構成する複数の層36a乃至36lのうちの少なくとも一部の層は、例えば、誘電体層である。また、誘電体層は、例えば、金属酸化膜である。なお、積層体36は、キー本体31の裏面全面に形成されているが、キー本体31の裏面の一部に形成してもよい。
【0036】
層36a乃至36lは、全て、誘電体層であり、金属酸化膜である。例えば、層36a、36c、36e、36g、36i、及び、36kは、二酸化チタン(TiO)と、二酸化ジルコニウム(ZrO)の混合物(商品名:OS−50、オプトロン社製)を材料とする高誘電体層である。また、層36b、36d、36f、36h、36j、及び、36lは、二酸化ケイ素.(SiO)を材料とする低誘電体層(層53a等に比べて誘電率が低い層)である。
【0037】
積層体36は、2種類の層を交互に積層した構造となっており、また、2種類の層は、互いに異なる屈折率を有する。このため、積層体36は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層36a乃至36lを積層したものとなる。
【0038】
なお、各層の厚さは、例えば以下のようにできる。単位はÅ(オングストローム)である。
層36a:900
層36b:1255
層36c:814
層36d:936
層36e:964
層36f:441
層36g:641
層36h:819
層36i:660
層36j:605
層36k:230
層36l:250
【0039】
表示層37は、一液型インク又は二液型インク等の材料で、積層体36の裏面に印刷又は塗装等の適宜の方法によって形成される。表示層37は、第一キー30の一以上の表示要素を表現するものである。表示層37は、デザインに応じて、一液型インク又は二液型インク等の材料で、複数の層を裏面に印刷又は塗装等の適宜の方法によって積層したものであってもよい。また、表示層37によって表現される表示要素は、第一キー30それぞれで違う。表示要素は、光を透過(所定の波長の光のみを透過させて、所定の色を表現する場合もある。)させる部分と、光を遮光(吸収も含まれる)する部分と、により表現される。例えば、表示要素が文字の場合、光を透過させる部分又は光を遮光する部分で文字が表現される。光を透過させる部分で表現された文字は、所謂抜き文字である。図4では、表示層37は、キー本体31の裏面全面を覆うように、すなわち、積層体36の裏面全面に形成されているように描かれているが、抜き文字等によって表示要素を表現する場合、表示層37が存在しない部分があることもある。この場合、この存在しない部分の少なくとも一部に固着層60が入りこむことがある。
【0040】
(キーベース)
キーベース70は、補強板71と、複数の第一変形部73と、第二変形部75と、を備える。補強板71と、複数の第一変形部73と、第二変形部75と、は透光性(例えば透明)を有する。
【0041】
補強板71は、板状に形成されたものであり、キーシート10全体に剛性を加えるものである。補強板71は、補強板71面内に形成した、複数の第一貫通孔71aと、第二貫通孔71bと、有底孔71cと、を備える。また、補強板71は、補強板71の端部に形成した凸部71dを備える。
【0042】
補強板71は、各種合成樹脂(例えば硬質樹脂)等の適宜の材料によりそれぞれ形成される。補強板71は、射出成形等の適宜の方法で形成される。硬質樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリカーボネイト系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、UV(Ultra Violet)硬化樹脂等がある。
【0043】
各第一貫通孔71aには、第一変形部73がそれぞれ形成される。第一変形部73は、薄肉部73aと、押し子73bと、側部73cと、台座73dと、を備え、これらは例えば同じ材料で一体的に形成されている。薄肉部73aは、側部73cに繋がる。押し子73bは、薄肉部73aの裏面中央に形成される。台座73dは、押し子73bに対応して薄肉部73aの表面に形成される。台座73dの表面には、第一キー30が固着層60を介して固着される。固着層60は、接着材、粘着材等の固着材料により構成され、透光性(例えば透明)を有する。また、固着層60は、図4では、表示層37の裏面全面を覆うように、すなわち、キー本体31の裏面全面を覆うように、形成されているが、台座73dと第一キー30とを固着できるように、表示層37の裏面の一部を覆うように形成してもよい。
【0044】
第二貫通孔71bには、第二変形部75が形成される。第二変形部75は、薄肉部75aと、複数の押し子75bと、側部75cと、複数の台座75dと、台座75eと、を備え、これらは例えば同じ材料で一体的に形成されている。薄肉部75aは、側部75cに繋がる。押し子75bは、薄肉部75aの裏面中央及び裏面中央から補強板71の表面に平行する方向における上下左右方向にそれぞれ形成される。複数の台座75dは、それぞれ、薄肉部75aの上下左右方向に形成した複数の押し子75bにそれぞれ対応して薄肉部75aの表面上下左右方向に形成される。台座75eは、薄肉部75aの裏面中央に形成した押し子75bに対応して薄肉部75aの表面中央に形成される。各台座75dの表面には、第二キー40が固着層(固着層60と同様のもの)を介して固着される。台座75eの表面には、第三キー50が固着層(固着層60と同様のもの)を介して固着される。
【0045】
有底孔71cは、キーシート10を基板90上に配置した時に、基板90が備える後述の発光体93を収納するためのものである。凸部71dは、通信機器の筐体95に嵌まり、キーシート10を通信機器の筐体に固定するためのものである。
【0046】
各第一変形部73と、第二変形部75と、は、形状が異なるが、略同様の構造で、両者とも、変形可能で、特に弾性を有する。各第一変形部73と、第二変形部75と、は、シリコーンゴム等のゴム材又は熱可塑性エラストマー、各種合成樹脂等を用いて形成する。各第一変形部73と、第二変形部75と、は、補強板71を金型にインサートするインサート成形等によって補強板71と一体的に形成される。これにより、各第一変形部73と、第二変形部75とは、それぞれ、各第一貫通孔71aの内壁と、第二貫通孔71bの内壁と、に固着される。なお、インサート成形等によって、各第一変形部73と、第二変形部75と、を補強板71に形成する場合、補強板71の表面及び又は裏面の少なくとも一部を覆い、隣り合う第一変形部73同士を繋げる、及び又は、隣り合う第一変形部73と第二変形部75とを繋げる図示しない薄肉部が形成されることもある。また、補強板71は、発光体93から入射した光を補強板71内部で効率的に導光する切欠き等を有する。
【0047】
(基板)
基板90は、図示しない回路及び電子部品等が実装された基板本体91と、基板本体91上に、押し子73b及び75bにそれぞれ、対応して形成したスイッチ部92(押し子75bに対応するスイッチ部は図示せず。)と、基板本体92上に配置した発光体93と、を備える。キーシート10は、基板90に当接する。
【0048】
各スイッチ部92は、同様の構造を有する。第一キー30及び押し子73bに対応して形成されたスイッチ部92を例にとって説明すると、スイッチ部92は、例えば、基板90上に形成された図示しない接点と、この接点を覆うように形成し弾性変形する、メタルドーム等の導電性の皿92aと、この皿92aを基板90に固定するフィルムシートからなる。また、スイッチ部92は、押し子75bに当接する。
【0049】
発光体93は、例えば、LED等の光源素子によって構成される。発光体93は、キーシート10を基板90上に配置した場合に、有底孔71cに収納される。
【0050】
(キーシート等の動作等)
第一キー30が押圧操作されると、第一キー30は下方(裏面側の方向)への移動に伴って薄肉部73aは変形する。また、押し子73bも下方に移動し、後述のスイッチ部92を押圧する。スイッチ部92が押圧されると、皿92aは弾性変形して、基板の接点を導通させ、第一キー30にクリック感を伝える。また、第一キー30の押圧操作を解除されると、皿92aの復元力及び又は第一変形部73の復元力によって、第一キー30は元の位置に戻る。
【0051】
なお、このような要素の動きは第二キー40についても略同様である。第三キー50については、第三キー50の例えば図1における向かって右方向を押圧操作すると、第三キー50は右方向が基板側に近づくように傾く。そして、右方向に対応する押し子75b(図2において、中央の押し子75bから見て左側の押し子75b)が下方に移動し、下方に移動する押し子75bがこの押し子75bに対応するスイッチ部を押圧する。後の要素の動きは、第一キー30の場合と略同じである。
【0052】
発光体93は、第一キー30等が操作等された際に発光し、第一キー30等を第一キー30等の裏面側から照光する。このとき、発光体93が発光する光は、キーベース70内で導光される。
【0053】
(キー及びキーシートの外観及び機能等)
各第一キー30と、第二キー40と、第三キー50と、は略同様の構造を有するので、キーの色は、略同様のものとなるが、各第一キー30の表示要素は異なる。また、第二キー40と、第三キー50と、は、表示層がないため、表示要素が表示されない。また、第二キー40及び又は第三キー50に表示層を形成する場合には、第二キー40及び又は第三キー50は、第一キー30と略同様に表示要素を表示する。
【0054】
以下、本実施形態に係るキーの例を第一キー30として、本実施形態に係るキー及びキーシートの外観(特に、キーの色及び表示要素)及び機能等について説明するが、以下の説明は、本実施形態に係るキー及びキーシートの説明に適宜拡張できる。
【0055】
キー本体31の表面から入射し前記積層体36に入射する光は、複数の層36a乃至36lそれぞれの他の層に接する界面及び積層体33とキー本体31との界面で適宜反射される。また、反射された光はキー本体31から出射する。なお、前記の界面で反射した光は互いに干渉することもある。キー本体31から出射した光は、キー本体31を通過し、人間の目に入る。これにより、第一キー30を見た人間は、第一キー30を所定の色として視認する。すなわち、第一キー30は、所定の色となる。なお、主に、複数の層36a乃至36lそれぞれの他の層に接する界面で反射される光が、第一キー30の色に影響すると考えられる。
【0056】
なお、第一キー30に第一キー30の裏面から光が当たらない限り(照光されない限り)、第一キー30に表示要素が表示されない(図1及び図7参照)。これは、第一キー30の裏面(表示層37の裏面)から入射し、第一キー30の表面から出射する光が無いか、殆ど無く、前記所定の色が目立つからである。
【0057】
また、第一キー30に第一キー30の裏面から光が当たる場合(照光される場合)、第一キー30に一以上の表示要素(例えば”1”又は”@”等)が表示される(図8の文字、数字、記号、又は、図形等参照)。これは、第一キー30の裏面(表示層37の裏面)から入射する光の一部が表示層37の光を透過させる部分、積層体36、及び、キー本体31を透過して人間の目に届くからである。このように、キー本体31が透光性を有し、積層体36と積層体36の裏面に形成した表示層37とを備えるこの第一キー30及びこれを備えるキーシート10は、新たな印象を与える。なお、表示層37は、積層体36の裏面側に位置すればよく、両者の間に透光性を有する何らかの層を備える第一キー30及びこれを備えるキーシート10も、新たな印象を与える。
【0058】
複数の層36a乃至36lの厚さ、すなわち、積層体36を構成する各層の厚さを変化させることにより、キー本体31から出射する光の特性を変化させることができる。また、積層体36を構成する複数の層の数(積層数)を変えることによっても、キー本体31から出射する光の特性を変化させることが出来る。すなわち、積層体36を構成する層の厚さ及び又は層の数を変化させることによって、第一キー30の色を変化させることが出来る。このようにして、積層体36の膜厚及び又は層の数を変えさえすれば、様々なキーの色(従来から表現される色も含む。)を容易に表現できる。このように、本実施形態に係る第一キー30及びキーシート10は、キーの色の表現に幅を持たせることが出来る構造を有する。キーシート10が備える、複数の第一キー30と、第二キー40と、第三キー50と、は同じ色でなくてもよい。すなわち、一以上のキーからなるキー群毎に、積層体36の層の厚さ及び又は層の数を変化させて、キーの色を変化させてもよい。例えば、第一キー30の縦一列毎にキーの色を変化させても良い。また、第二キー40又は第三キー50についてのみ、キーの色を変化させてもよい。また、複数の第一キー30について、格子状にキーの色を変化させてもよい。
【0059】
また、層36a乃至36lの厚さを変化させることによって、第一キー30の色を金属調やその他の色にできる。また、第一キー30を視認する角度(例えば、第一キー30の表面に対して垂直の方向からの角度)を変化させると、所定角度において、又は、視認する角度に応じて、第一キー30の色が変化する。つまり、キーの表面と垂直な方向から見たキーの色と、所定の角度(キーの表面と垂直な方向からの角度)から見たキーの色が異なる。このように、積層体36によって、新たな印象を与える第一キー30及びキーシート10を提供することができる。
【0060】
なお、層36a乃至36lの材料及び膜厚を上記のようにした場合、第一キー30を、この第一キー30の表面に垂直な方向から見ると、この第一キー30の色は銀色(金属調)になる。また、第一キー30をこの第一キー30の表面に垂直な方向から所定の角度(例えば70度)の方向から見ると、この第一キー30の色は青みがかった銀色(金属調)になる。
【0061】
第一キー30の色を金属調とする場合、従来では、加飾層の少なくとも一部に金属膜を使用していた。この場合、この金属が原因で、携帯電話機が発する電波について電波障害が生じる恐れがあった。しかし、積層体36を構成する複数の層、すなわち、層36a乃至36lが全て誘電体層である場合、特に、表示層37も絶縁体又は誘電体であって、加飾層35が全体として絶縁体又は誘電体である場合で、かつ、キー本体31が絶縁体又は誘電体である場合、電波障害が第一キー30で発生することを防止又は軽減できる。さらに、キーベース70が上記の材料(合成樹脂等の絶縁体又は誘電体)で形成されることによって、絶縁体又は誘電体となる場合、電波障害がキーシート10で発生することを防止又は軽減できる。また、従来のように、金属膜を使用する場合、ホットスタンプ等の形成方法によって、金属膜を形成するため、この金属膜の膜厚のコントロールがしづらく、第一キー30の製品としての歩留まりも悪かった。金属膜の替わりに積層体36を採用することにより、積層体36は複数の膜を蒸着又はスパッタリング等によって積層すればよいので、膜厚のコントロールが比較的し易く、第一キー30の製品としての歩留まりも比較的よくなる。なお、膜厚のコントロールが比較的し易いということは、金属調を含む様々な色(従来の色も含む)を容易に表現できるということである。そして、第一キー30の色が金属調でなくても、第一キー30の製品としての歩留まりが比較的よくなる場合があるということである。
【0062】
また、上記のように、表示層37は積層体36の裏面に接し、積層体36の層のうちの表示層37に接する層36lは二酸化シリコンで形成された場合、積層体36と表示層37の密着度は高くなる。特に、表示層37のうち、積層体36に接する部分を一液型インクで形成した場合にこのことが言える。
【0063】
(キーの製造方法)
次にキーの製造方法について説明する。キーの製造方法は、下記の3種類がある。なお、ここでは、第一キー30の製造方法を例にとって説明するが、下記の説明は、第二キー40及び第三キー50の製造方法に適宜適用できる。
【0064】
(第一の製造方法)
まず、キー本体31の本体部31aを形成する。次に、本体部31aの裏面をマスキング用の要素(例えば、マスキングフィルム)でマスキングし、本体部31aの表面に(必要に応じて側面にも)保護層31bを塗装又は印刷等の適宜の方法で形成する。その後、前記マスキング用の要素を除去して、本体部31aの裏面に積層体36を形成する。
【0065】
保護層31bがアクリルウレタンを主成分とするUV硬化樹脂等を材料として形成され、積層体36の複数の層36a乃至36lのうちのキー本体31の裏面に接触する層36aが上記のOS−50等を材料として形成された場合、保護層31bの材料と積層体36の材料との相性によって、両者の固着強度が弱い場合がある。第一の製造方法では、保護層31bを形成するときに、積層体36を形成する、キー本体31の裏面をマスキングする。このため、保護層31bを形成するときに、積層体36の裏面に、保護層31bの材料が付着することを防ぐことが出来る。このため、第一の製造方法は、積層体36とキー本体31との固着強度の低下を防止又は軽減できる。また、保護層31bを塗装又は印刷で形成すれば、保護層31bの膜厚のコントロールも容易になる。
【0066】
(第二の製造方法)
まず、キー本体31の本体部31aを形成する。次に、本体部31aの裏面に積層体36を形成する。そして、本体部31aの表面に(必要に応じて側面にも)保護層31bを塗装又は印刷等の適宜の方法で形成する。
【0067】
この場合、第一の製造方法のようなマスキングが不要になる。上記のような固着強度の問題を考慮する必要が無いからである。特に積層体36を蒸着又はスパッタで形成すれば、層36aがキー本体31の表面に付着することが無い又は殆ど無いからである。また、保護層31bを塗装又は印刷で形成すれば、保護層31bの膜厚のコントロールも容易になる。
【0068】
(第三の製造方法)
まず、キー本体31の本体部31aを形成する。次に、本体部31aの表面、裏面、及び、側面に、保護層31bを形成する。この保護層31bは、塗装又は印刷等によって形成される他、例えば、液体の電磁波硬化樹脂の中に本体部31aを浸からせて、その後に電磁波を照射して電磁波硬化樹脂を硬化させることによって形成される。次にキー本体31の裏面(保護層31b)に積層体36を形成する。
【0069】
保護層31bを液体の電磁波硬化樹脂の中に本体部31aを浸からせて、その後に電磁波を照射して電磁波硬化樹脂を硬化させて形成する場合、保護層31bの膜厚を薄くできるが、膜厚のコントロールが難しくなる場合がある。
【0070】
(第二実施形態)
第二実施形態について、図9を参照して説明する。なお、図9において、図4と図9とで対応する要素には、同一の符号を付している。また、図9の各要素は、第一キー30、キーシート10及び基板90の構成を理解し易いように、誇張して及び概略的に描かれている。第二実施形態に係るキーシート110は、キーシート110が有する複数のキーのうちの一部のキー(例えば、一つのキー)のみが積層体36備えている(図9参照)。図9では、第一キー130は、積層体36を備えていない。つまり、加飾層135は、表示層37を備え、積層体36を備えない。積層体36を備えるキー又は備えないキーは、確定キー及び又は方向キーとして機能するキー(第一実施形態における第三キー50又は第二キー40)であってもよい。積層体36を備えないキーは、一以上の第一キー130であってもよい。
【0071】
このように、キーシート110が有する複数のキーのうちの一部のキー(例えば、一つのキー)のみが積層体36を備えている場合、積層体36を備えるキーをキーシート110のデザインのアクセント等に用いることができる。
【0072】
第二実施形態のその他の説明については、第一実施形態に準じるため、説明を省略する。
【0073】
(その他)
キーは、積層体を備える加飾層を備えればよいため、加飾層をキー本体の表面側に形成しても良い。この場合、加飾層をキー本体の表面に形成するか、加飾層をキー本体の表面に何らかの要素を介して、すなわち、キー本体の表面に間接的に、形成する。この場合、加飾層を覆うように(加飾層の表面を直接覆う他、加飾層の表面に形成した他の層を介して、すなわち、加飾層の表面を間接的に覆う場合も含む)、保護層を設けても良い。
【0074】
補強板は、ステンレス鋼(SUS)板などの板状に形成された各種金属で形成してもよい。この場合、補強板を比較的薄く形成できる。また、この場合、上記有底孔71cは設けられないが、他の部分の基本構造は、厚みを除いて略同様である。補強板を金属で形成したときには、金属板が不透明であるので有底孔71cを設ける代わりに発光体からの光をキーに効率良く出射するための導光板等の導光部をキーシート10に適宜形成する。この導光板を使用した場合の各部の構造については公知なので説明を省略する。
【0075】
また、積層体を構成する層の数は、6層以上であればよい。積層体を構成する層の数が6層以上であれば、各層の厚さを変化させることで、加飾層の色の表現に幅を持たせることが出来る。また、積層体を構成する層の数が6層以上であれば、この積層体を有するキーは、キーの表面と垂直な方向から見たキーの色と、所定の角度(キーの表面と垂直な方向からの角度)から見たキーの色が異なるキーとなる。
【0076】
また、上記実施形態では、キーが独立しているが、複数のキーを一枚のシートで構成しても良い。この場合、シートの中の、表示要素及び又は押し子に対応する領域をキーとする。
【符号の説明】
【0077】
10、110 キーシート
30、130 第一キー
31 キー本体
31a 本体部
31b 保護層
35、135 加飾層
36 積層体
36a乃至36l 層
37 表示層
40 第二キー
50 第三キー
60 固着層
70 キーベース
71 補強板
71a 第一貫通孔
71b 第二貫通孔
71c 有底孔
71d 凸部
73 第一変形部
73a 薄肉部
73b 押し子
73c 側部
73d 台座
75 第二変形部
75a 薄肉部
75b 押し子
75c 側部
75d 台座
75e 台座
90 基板
91 基板本体
92 スイッチ部
92a 皿
93 発光体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キー本体を加飾する加飾層を有するキーにおいて、
前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備えることを特徴とするキー。
【請求項2】
前記複数の層の少なくとも一部の層は、誘電体層であることを特徴とする請求項1に記載のキー。
【請求項3】
前記誘電体層は、金属酸化膜からなることを特徴とする請求項2に記載のキー。
【請求項4】
前記加飾層は、前記積層体の裏面側に位置し、前記キーの表示要素を表現した表示層をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載されたキー。
【請求項5】
前記表示層は前記積層体の裏面に接し、前記積層体の層のうちの前記表示層に接する層は二酸化シリコンの金属酸化膜で形成したことを特徴とする請求項4に記載のキー。
【請求項6】
前記積層体は、6層以上の層を積層したものであることを特徴とする請求項1に記載されたキー。
【請求項7】
前記加飾層の色は、金属調であることを特徴とする請求項1に記載されたキー。
【請求項8】
前記キー本体は、
前記キー本体の本体となる本体部と、
本体部を保護する保護層を備えることを特徴とする請求項1に記載されたキー。
【請求項9】
キー本体を加飾する加飾層を有するキーを有するキーシートであって、
前記加飾層は、光の屈折率が隣り合うもの同士で異なる複数の層を積層した積層体を備えることを特徴とするキーシート。
【請求項10】
キーベースをさらに備え、
前記キーベースは、誘電体及び又は絶縁体で構成されることを特徴とする請求項9記載のキーシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−205564(P2010−205564A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49965(P2009−49965)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】