説明

ギアードモータ

【課題】 部品の追加を必要とせず、最小限の加工でギアボックスからのオイル漏れを防ぐギアードモータの提供。
【解決手段】 ギアボックス20は、平坦な底面21bとモータシャフト12が挿通する挿通孔21aとを有するベース部21と、モータシャフト12に嵌合しベース部21に一端が保持されたギア22と、このギア22に嵌合して外部にモータの出力を伝達し同じく一端がベース部21に保持された出力軸23と、出力軸23が突出する挿通孔24aと開口部24bを有しギア22を収容してその他端を保持するカバーケース24とからなり、ギアボックス20とモータ本体10の接続部分では、底面21bがモータ本体10の取付板11の平坦部11aに当接するとともに、カバーケース24の開口部24bがその端面を平坦部11aに当接しつつベース部21によって塞がれており、ベース部21の外周面21c全周に亘って溝状の環状空部30が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ等を用いたギアードモータに関し、特に、そのギアボックスからのオイル漏れを防ぐ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のギアードモータでは、ギアボックスを、モータ本体から突出したモータシャフトを挿入し、ギアに嵌合した上でモータ本体と接続した構成となっていることから、ギアボックス内のオイルがモータシャフトの挿通孔等から漏洩し、ギアボックスとモータ本体の接触面から外部に漏れる不具合があった。
【0003】
この不具合を解消するため、例えば特開平8−308177号公報のように、ギアボックスとモータ本体との間にOリングを介在させ、空間を密閉することでオイルの漏洩を防ぐ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開平8−308177
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構造では、オイルの漏洩防止のためOリングなどの新たな部品を追加せねばならず、コスト低減の障害となっていた。また、Oリングを収容するためのある程度の大きさの収容部を成形する必要があり、さらにOリングの組付けや劣化等も考慮する必要があった。
【0006】
そこで、上記問題に鑑み、本発明の課題は、部品の追加を必要とせず、最小限の加工でギアボックスからのオイル漏れを防ぐギアードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、平坦部を有するモータ本体と、モータ本体の平坦部に接続されたギアボックスからなるギアードモータにおいて、ギアボックスは、モータ本体の平坦部に当接してモータ本体より突出したモータシャフトが貫通しモータシャフトに嵌合するギアとギアに嵌合して外部にモータの出力を伝達する出力軸の一端を保持する底面平坦なベース部と、出力軸が突出しギアを収容してその他端を保持し開口部がその端面をモータ本体の平坦部に当接するとともにベース部によって塞がれる有底円筒状のカバーケースとを有し、ベース部とカバーケースの接触部分において、当該部分のモータ本体の平坦部側全周にオイル漏洩を防止する環状空部が成形されていることを特徴とする。
【0008】
このようなギアードモータでは、モータ本体の平坦部と底面平坦なベース部とが当接することによって発生する毛細管現象に加え、環状空部による表面張力により、モータシャフトの挿通孔等から漏洩したギアボックス内のオイルがギアボックスとモータ本体の接触面から外部に漏れるのを防ぐことができる。Oリング等の部品追加の必要がなく、また、最小限の環状空部の形成加工のみで可能となる。
【0009】
環状空部は、ベース部の外周側、若しくはカバーケースの開口部内周側に形成されていれば良い。もちろん、これら両方に形成しても良い。
【0010】
また、環状空部は、ベース部の外周側、若しくはカバーケースの開口部内周側をカットしたテーパ状としても良い。
【0011】
このようなテーパ状加工を採用した場合は、環状空部の形成を一層簡単に行うことができ、更に、ベース部外周側にテーパ状の環状空部を成形する構成においては、オイルの表面張力が向上し、より一層のオイル漏洩防止効果を期待できる。
【0012】
なお、毛細管現象によるオイルの保持効果をより顕著にするために、モータ本体の平坦部と底面平坦なベース部との当接部分において、両者の間にわざと微小な空隙が形成されるような構造を採用しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、部品の追加を必要とせず、最小限の加工でギアボックスからのオイル漏れを防ぐギアードモータの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は本発明の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のa部拡大図である。
【図2】同ギアードモータの組立斜視図である。
【図3】(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のb部拡大図である。
【図4】(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のc部拡大図である。
【図5】(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のd部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1(A)は本発明の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のa部拡大図、図2は同ギアードモータの組立斜視図である。
【0017】
本例のギアードモータは平坦部11aが形成された取付板11を有し、モータシャフト12が突出するモータ本体10と、平坦部11aに接続されたギアボックス20からなる。13はモータ本体に電力を供給する端子部である。
【0018】
ギアボックス20は、平坦な底面21bとモータシャフト12が挿通する挿通孔21aとを有するベース部21と、モータシャフト12に嵌合しベース部21に一端が保持されたギア22と、このギア22に嵌合して外部にモータの出力を伝達し同じく一端がベース部21に保持された出力軸23と、出力軸23が突出する挿通孔24aと開口部24bを有しギア22を収容してその他端を保持するカバーケース24とからなる。
【0019】
ギアボックス20とモータ本体10の接続部分では、ベース部21の平坦な底面21bがモータ本体10の取付板11の平坦部11aに当接するとともに、カバーケース24の開口部24bがその端面を平坦部11aに当接しつつベース部21によって塞がれている。
【0020】
そして、ベース部21の外周面21c全周に亘って溝状の環状空部30が形成されている。
【0021】
このようなギアードモータの構成においては、図1(B)に示すとおり、ベース部21の挿通孔21a等から漏洩したギアボックス20内のオイル40が、取付板11の平坦部11aとベース部21の底面21bとが当接することによって発生する毛細管現象に加え、環状空部30により発生するオイル40の表面張力により、オイル40が挿通孔21a方向に引き寄せられ、環状空部30より外周に漏洩するのを防ぐことができる。環状空部30は、オイル40に表面張力を発生させればよいので、Oリングを収容するほど大きな溝部を形成する必要はなく、ベース部21の外周部21cに切り欠き程度に形成されていれば良い。
【0022】
なお、本実施例では、カバーケース24の開口部24bが、ベース部21の組込みのために段部を有しているが、段部を形成せず平面状としてもよい。
【実施例2】
【0023】
図3(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のb部拡大図である。なお、実施例1と同一の部分については同一の符号を付与しその説明は省略する。
【0024】
本実施例が実施例1と異なる部分は、環状空部30’の形状のみであり、その他の構成は同一である。
【0025】
本実施例の環状空部30’は、ベース部21の外周面21cをカットし、挿通孔21a方向に近づくにつれて取付板11との距離が徐々に狭くなるテーパ面21dが形成されている。
【0026】
本実施例のギアードモータでは、環状空部の形成を一層簡単に加工することができるとともに、テーパ面21dにより環状空部30’のオイルの表面張力が向上し、より一層のオイル漏洩防止効果を期待できる。
【0027】
なお、本実施例においても、カバーケース24の開口部24bが、ベース部21の組込みのために段部を有しているが、段部を形成せず平面状としてもよい。
【実施例3】
【0028】
図4(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のc部拡大図である。
【0029】
本実施例においても実施例1と異なる部分は、環状空部31の形状のみであり、その他の構成は同一である。
【0030】
本実施例の環状空部31は、カバーケース24の開口部24b内周側に形成されている。
【0031】
本実施例のギアードモータにおいても、実施例1と同じく、ベース部21の挿通孔21a等から漏洩したギアボックス20内のオイル40が、取付板11の平坦部11aとベース部21の底面21bとが当接することによって発生する毛細管現象に加え、環状空部31により発生するオイル40の表面張力により、オイル40が挿通孔21a方向に引き寄せられ、環状空部31より外周に漏洩するのを防ぐことができる。
【0032】
環状空部31がカバーケース24に形成されている分、平坦部11aと底面21bとの当接面積を稼ぐことができ、オイル40の保持能力が向上する。
【実施例4】
【0033】
図5(A)は本発明の他の実施の形態に係るギアードモータの一部縦断面図、(B)は(A)のd部拡大図である。
【0034】
本実施例においても実施例1と異なる部分は、環状空部31’の形状のみであり、その他の構成は同一である。
【0035】
本実施例の環状空部31’は、カバーケース24の開口部24b内周側をカットし、テーパ面24cが形成されている。
【0036】
本実施例のギアードモータでは、実施例3と同等の効果が得られるとともに、環状空部の形成を一層簡単に加工することができる。
【符号の説明】
【0037】
10…モータ本体
11…取付板
11a…平坦部
12…モータシャフト
13…端子部
20…ギアボックス
21…ベース部
21a,24a…貫通孔
21b…底面
21c…外周面
21d,24c…テーパ面
22…ギア
23…出力軸
24…カバーケース
24b…開口部
30,30’,31,31’…環状空部
40…オイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦部を有するモータ本体と、前記モータ本体の前記平坦部に接続されたギアボックスからなるギアードモータにおいて、前記ギアボックスは、前記平坦部に当接して前記モータ本体より突出したモータシャフトが貫通し前記モータシャフトに嵌合するギアと前記ギアに嵌合して外部にモータの出力を伝達する出力軸の一端を保持する底面平坦なベース部と、前記出力軸が突出し前記ギアを収容してその他端を保持し開口部がその端面を前記平坦部に当接するとともに前記ベース部によって塞がれる有底円筒形のカバーケースとを有し、前記ベース部と前記カバーケースの接触部分において、当該部分の前記平坦部側全周にオイル漏洩を防止する環状空部が成形されていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のギアードモータにおいて、前記環状空部は、前記ベース部の外周側に形成されていることを特徴とする、ギアードモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のギアードモータにおいて、前記環状空部は、前記ベース部の外周側をカットしてテーパ状にしたことを特徴とする、ギアードモータ。
【請求項4】
請求項1に記載のギアードモータにおいて、前記環状空部は、前記カバーケースの前記開口部内周側に形成されていることを特徴とする、ギアードモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のギアードモータにおいて、前記環状空部は、前記カバーケースの前記開口部内周側をカットしてテーパ状にしたことを特徴とする、ギアードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5296(P2012−5296A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139500(P2010−139500)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000177151)日本電産セイミツ株式会社 (143)
【Fターム(参考)】