説明

ギヤードモータ

【課題】ケースを軽量化する。
【解決手段】樹脂製のケース本体10,ケースカバー11と、電動モータ14に連結されたウォーム15と、該ウォーム15と噛み合うウォームギヤ18と、該ウォームギヤ18と一体の偏心軸部19aに支持された外歯歯車20と、出力軸12と一体形成され外歯歯車20と噛み合う内歯歯車21と、ケースカバー11に形成された第1ガイド凹部11aと、該第1ガイド凹部11aに挿入された第1ガイド突出部22aと、該第1ガイド突出部22aの間に形成された第2ガイド凹部22bと、該第2ガイド凹部22bに挿入され外歯歯車20と一体のギヤプレート20aに突出形成された第2ガイド突出部20bと、ケースカバー11に形成した嵌合凸部11bと、該嵌合凸部11bが嵌合されケース本体10に形成した嵌合凹部10aと、ケース本体10,ケースカバー11を結合する取付孔10e,11eに挿入されるカラー23とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイポサイクロイド型の減速機を有するギヤードモータに関し、ケースを樹脂により形成したものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のシートリフタ装置の駆動手段として、電動モータに減速機を設けたギヤードモータが用いられている。
【0003】
従来のギヤードモータとしては、例えば特許文献1,2に記載のものが知られている。特許文献1に記載のアクチュエータは、FIG3に示すように、駆動モータ1の出力軸に設けられたウォーム31により平歯車36を回転させると、該平歯車36の偏心した位置に一体形成された偏心軸受ピン21がウォップル板4の軸受開口部22に挿入されており、かつウォップル板4のスイベルアーム12が中板32のラジアル溝14に遊嵌されているので、ウォップル板4および歯車28は自転することなくその場で円を描く公転を繰り返し、自転しない歯車28は従動輪6の内歯部39に噛み合って公転するので、歯車28が1回公転すると、歯車28と内歯部39との噛み合い部が1回転し、歯車28と内歯部39との歯数の差分だけ従動輪6が回転することになり、平歯車36の回転に対して従動輪6の回転が減速される。
【0004】
特許文献2に記載のギヤードモータは、電動モータの出力軸に設けられたウォーム24によりウォームギヤ22を回転させると、該ウォームギヤ22には偏心した中空軸を有する回転部材が一体に設けられていることから、該偏心した中空軸が挿通されている偏心ギヤ30は、自転することなくその場で円を描く公転を繰り返し、自転しない偏心ギヤ30と出力軸40の内歯部36との噛み合い部が1回転すると、該出力軸40の内歯部36と偏心ギヤ30との歯数の差分だけ、出力軸40が回転することになり、ウォームギヤ22の回転に対してして出力軸40が減速される。偏心ギヤ30の自転はカップリング要素54によって規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007−533282号公報
【特許文献2】US2007/0161451A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従動輪6(出力側)から大きな外力が作用した場合、特許文献1に記載のアクチュエータでは、従動輪6から歯車28に回転力が作用し、更に歯車28からスイベルアーム12を介して中板32に回転力が作用することから、該中板32を座席のフレーム等に直接に固定している。一方、特許文献2に記載のギヤードモータは出力軸40に回転力が作用し、該出力軸40から偏心ギヤ30に回転力が作用し、該偏心ギヤ30の突出部を介してカップリング要素54に回転力が作用することから、該カップリング要素54を座席のフレーム等に直接に固定している。
【0007】
いずれの場合も、中板32,カップリング要素54として強度の大きい鋼板を用いるので、樹脂を用いる場合と比較して、重量が大きくなって部品点数が多くなり、コストが高い。
【0008】
そこで本発明は、上記の課題を解決したギヤードモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、樹脂で形成されたケース本体と、樹脂で形成され前記ケース本体とでケースを構成するケースカバーと、該ケースカバーと前記ケース本体とにより回転自在に支持され少なくとも一端が前記ケースの外部に突出する出力軸と、
前記ケース本体に取り付けられた電動モータと、該電動モータの回転軸に連結されたウォームと、該ウォームが噛み合うと共に前記出力軸の一方側に回転自在に支持されたウォームギヤと、該ウォームギヤと一体に形成され前記出力軸に対して偏心する偏心軸部と、該偏心軸部に回転自在に支持されると共に該偏心軸部と同心の外歯歯車を一体に設けたギヤプレートと、前記出力軸と一体に形成され前記外歯歯車の歯数よりも多い歯数を有し前記外歯歯車と噛み合う内歯歯車と、前記ギヤプレートと前記ウォームギヤとの間に配置され前記ギヤプレートを公転可能かつ自転不可能に案内するガイドプレートとを備えたギヤードモータにおいて、
前記ケースには前記ガイドプレートを前記出力軸の半径方向へ摺動自在に案内する一対の第1ガイド凹部を円周方向の相互に180度を成す位置に設け、前記ガイドプレートには前記夫々の第1ガイド凹部に摺動自在に挿入された一対の第1ガイド突出部と、該一対の第1ガイド突出部に対しての円周方向の90度をなす位置に半径方向に沿って形成された一対の第2ガイド凹部とを設け、該夫々の第2ガイド凹部に摺動自在に挿入される一対の第2ガイド突出部を前記ギヤプレートに設け、
前記ケース本体または前記ケースカバーの一方の対向面の円周方向の相互に180度を成す位置に半径方向に沿って一対の嵌合凸部を形成し、該一対の嵌合凸部が嵌合される嵌合凹部を他方の対向面に形成し、
前記一対の第1ガイド凹部は、前記一対の嵌合凸部における円周方向の中央部を凹ませて形成されており、
前記ケース本体および前記ケースカバーには、前記ケースを被取付部材に結合するためのボルトを挿通する取付孔を、前記出力軸の回りの少なくとも3箇所に夫々配置し、同一軸心上に形成した前記ケース本体の取付孔と前記ケースカバーの取付孔とに亘って略円筒形のカラーを挿入したことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、出力軸から外部負荷が逆入力されると、該外部負荷は、ガイドプレートの第1ガイド突出部から嵌合凸部に伝達され、更に該嵌合凸部が嵌合されている嵌合凹部に伝達されるため、外部負荷はケース本体とケースカバーとに分散され、更にケース本体,ケースカバーの夫々から、個別にカラーおよびボルトを介して被取付部材に伝達される。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のギヤードモータにおいて、
前記ケース本体および前記ケースカバーに形成され同一軸心上に配置された3箇所の前記取付孔の少なくとも1箇所を、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌合する一対の凹凸嵌合部に対して、円周方向へ外部負荷が作用した場合に前記ガイドプレートが回動する方向である特定方向側に、隣接して配置したことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、出力軸から外部負荷が逆入力されると、外部負荷はガイドプレートの第1ガイド突出部から一対の凹凸嵌合部に伝達され、該一対の凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側に隣接して配置されているカラーおよびボルトから被取付部材に伝達される。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のギヤードモータにおいて、
同一軸心上に形成した前記ケース本体の取付孔と前記ケースカバーの取付孔とに亘って挿入されているカラーは、前記ケース本体の取付孔または前記ケースカバーの取付孔のうちの前記嵌合凸部を設けた一方の取付孔には遊嵌され、他方の取付孔には圧入されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ケース本体の取付孔またはケースカバーの取付孔のうちの嵌合凸部を設けた一方の取付孔にカラーが遊嵌されているので、出力軸から外部負荷が逆入力されると、ガイドプレートの第1ガイド突出部から嵌合凸部に作用した外部負荷が、初期段階から、該嵌合凸部および嵌合凹部を介してカラーおよびボルトに伝達されるため、外部負荷がケース本体とケースカバーとの両方に伝達され、ケース本体とケースカバーとの両方からカラーおよびボルトを介して被取付部材に伝達されることになり、外部負荷がバランスよく分散されて被取付部材に伝達される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係るギヤードモータによれば、出力軸から逆入力される外部負荷はケース本体とケースカバーとに分散され、個別にカラーおよびボルトを介して被取付部材に伝達されるので、ケース本体およびケースカバーが樹脂で形成されていても強度が確保でき、ガイドプレートとして従来のように被取付部材に直接に固定される鋼板等を用いる必要がなく、部品点数を削減して軽量化とコスト削減を図ることができる。
【0016】
請求項2に係るギヤードモータによれば、出力軸から逆入力される外部負荷はケース本体およびケースカバーの一対の凹凸嵌合部に伝達され、該凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側に隣接して配置されているカラーおよびボルトから被取付部材に伝達されるので、ケース本体,ケースカバーにおける凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側に隣接して配置されている取付孔との間の部分以外に伝達される外部負荷は少なく、ケース本体,ケースカバーの強度が確保できる。
【0017】
請求項3に係るギヤードモータによれば、外部負荷が直接に伝達されることになる嵌合凸部を有するケース本体またはケースカバーの一方に、カラーを遊嵌させることで、ガイドプレートの第1ガイド突出部から嵌合凸部に伝達された外部負荷が、初期段階から、該嵌合凸部および嵌合凹部に作用することになるため、外部負荷はケース本体とケースカバーとの両方を介して確実に被取付部材に伝達される。つまり、外部負荷は、ケース本体とケースカバーとにバランスよく分散されて被取付部材に伝達され、ケース本体またはケースカバーの一方に集中して負荷が伝達されることはないので、ケースの強度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ギヤードモータの分解斜視図(実施の形態)。
【図2】ギヤードモータの正面図(実施の形態)。
【図3】(a)は図2のA−A矢視図、(b)は(a)のC−C矢視図、(c)は(a)のD−D矢視図、(d)は(a)のE−E矢視図、(e)は(a)のF−F矢視図(実施の形態)。
【図4】図2のB−B矢視図(実施の形態)。
【図5】ガイドプレートとケース本体とケースカバーとの関係を示す斜視図(実施の形態)。
【図6】(a)はケース本体の対向面の正面図、(b)はケースカバーの対向面の正面図(実施の形態)。
【図7】シートリフタ装置の構成図(実施の形態)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明によるギヤードモータの実施の形態を説明する。
(構成)
まず、本発明によるギヤードモータが用いられているシートリフタ装置について、簡単に説明する。図7に示すように、シートクッション1aとシートバック1bとからなるシート1には、シート1を昇降させるシートリフタ装置2が設けられている。該シートリフタ装置2はロアレール3にスライド自在に設けられたアッパレール4にリンク5,6の下端部を回動自在に結合し、該リンク5,6の上端部をシートクッション1aに回動自在に結合し、該シートクッション1aには扇形状のセクターギヤ7を回動自在に支持し、該セクターギヤ7とリンク5をL字形に延長した延長部とを連結リンク8を介して連結し、セクターギヤ7の円弧部に形成された歯7aに、ギヤードモータ9の出力軸のピニオン9aを噛み合わせたものである。
【0020】
次に、このギヤードモータ9の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、樹脂で形成されたケース本体10と樹脂で形成されたケースカバー11とが設けられ、該ケース本体10とケースカバー11とによりケースが構成されている。該ケースカバー11には軸孔11dが形成される一方、前記ケース本体10には軸孔10dが形成され、両者により出力軸12が回転自在に支持されている。そして、該出力軸12の一端がケースカバー11からケースの外部に突出し、突出した位置にピニオン25が設けられている。このピニオン25は、図7のピニオン9aと対応する。
【0022】
ケース本体10には電動モータ14が、該電動モータ14の4つの取付孔のうちの対角線の方向の2つの取付孔と、該2つの取付孔に対向するケース本体10の2つの取付孔とに2本のボルト13を挿通させて、取り付けられている。該電動モータ14の回転軸には、ウォーム15が連結されている。即ち、ケース本体10に軸受16a,16bを介してウォーム15が回転自在に支持され、該ウォーム15の一方の端部と電動モータ14の図示しない回転軸とが、これらの軸心位置の嵌合孔に嵌め込まれた軸部材17を介して連結されている。
【0023】
前記出力軸12の一方側には、前記ウォーム15と噛み合うウォームギヤ18が回転自在に支持されている。そして、該ウォームギヤ18には、前記出力軸12に対して偏心した偏心軸部19aが一体に形成されている。即ち、以下のようになっている。出力軸12に回転自在に金属部材19が設けられ、該金属部材19には図3(a)に示すように、出力軸12が挿通される挿通孔19dが形成されている。また、挿通孔19dと同一軸心を有する大径部19b,中径部19cが形成されている。更に、挿通孔19dの中心に対して偏心した位置に軸心を有する偏心軸部19aが形成されている。そして、大径部19b,中径部19cの回りに樹脂からなるウォームギヤ18が一体にモールド形成され、偏心軸部19aは外歯歯車20の中心孔に挿通され、該外歯歯車20は偏心軸部19aに回転自在に支持されている。該外歯歯車20は、ギヤプレート20aをプレスにより半抜きして形成したものであり、該外歯歯車20には同心の前記中心孔が形成されている。このため、ウォームギヤ18が出力軸12を中心として回動すると、ウォームギヤ18と一体の偏心軸部19aに回転自在に支持された外歯歯車20は、その中心が出力軸12の軸心を中心として偏心軸部19aの軸心と出力軸12の軸心との軸心間距離を半径とする円を描いて公転する。
【0024】
出力軸12には、出力軸12と一体に内歯歯車21が形成され、該内歯歯車21は外歯歯車20の歯数よりも歯数が1歯または2歯だけ多くなっており、該外歯歯車20と円周方向の1箇所で噛み合って噛み合い部を構成している。偏心軸部19aが出力軸12の軸心を中心として公転するので、ウォームギヤ18の回転により、噛み合い部が円周方向へ移動する。
【0025】
ギヤプレート20aとウォームギヤ18との間には、ガイドプレート22が配置されている。該ガイドプレート22は、外歯歯車20を、出力軸12と直交する面内で公転可能かつ自転不可能に案内するために設けられている。該ガイドプレート22と前記ケース本体10と前記ケースカバー11との関係について説明する。ケースカバー11の対向面の円周方向の相互に180度を成す位置に、図5に示すように半径方向に沿って一対の第1ガイド凹部11aが形成される一方、ガイドプレート22には、夫々の第1ガイド凹部11aに半径方向に沿って摺動自在に挿入される一対の第1ガイド突出部22aが半径方向へ突出形成されている。そして、一対の第1ガイド突出部22aに対して円周方向の90度をなす位置にガイドプレート22の半径方向に沿って一対の第2ガイド凹部22bが形成され、夫々の第2ガイド凹部22bに半径方向へ摺動自在に挿入される第2ガイド突出部20bがギヤプレート20aの相互に180度をなす位置に軸方向へ突出させて形成されている。これにより、ケースカバー11に対してガイドプレート22が図1の左右方向へ相対移動でき、該ガイドプレート22に対してギヤプレート20aは図1の上下方向へ相対移動でき、結果としてギヤプレート20aと一体の外歯歯車20は出力軸12と直交する面内で出力軸12の回りに公転可能かつ自転不可能に保持されている。ガイドプレート22にはセンター孔22cが形成されており、該センター孔22cの内径寸法は、偏心軸部19aがセンター孔22cの内部で公転できる大きさに設定されている。
【0026】
図5に示すように、ケースカバー11の対向面の円周方向の相互に180度を成す位置に半径方向に沿って一対の嵌合凸部11bが形成されており、ケース本体10の対向面には、一対の嵌合凸部11bが嵌合される嵌合凹部10aが形成され、ケース本体10とケースカバー11との間に回転力が伝わるようになっている。図4に示すように、ガイドプレート22の前記第1ガイド突出部22aが挿入されるケースカバー11の第1ガイド凹部11aの底面の両側には、凹部の隅部での応力集中を回避するため、円弧溝11cが形成される一方、ケース本体10の嵌合凹部10aの底面中央部には、第1ガイド凹部11aへ向って入り込む一対の凸部10bが形成されている。これらの一対の凸部10bは、図5に示すようにU字形状に繋がっている。
【0027】
前記一対の第1ガイド凹部11aは、前記一対の嵌合凸部11bにおける円周方向の中央部を凹ませて形成されている。
【0028】
ケース本体10およびケースカバー11には、ケースをシートクッション1aに設けられた被取付部材としての図示しないクッション側アームに結合するため、図示しないボルトを挿通する取付孔10e,11eが形成され、該取付孔10e,11eは出力軸12回りの3箇所で同一軸心上に夫々配置されている。これらの取付孔10e,11eは、嵌合凹部10aと嵌合凸部11bとが嵌合する一対の凹凸嵌合部に対して、ケースカバー11の円周方向へ外部負荷が作用した場合にガイドプレート22が回動する方向である特定方向側に、隣接して夫々配置されている。即ち、本実施の形態では、図6(b)においてケースカバー11内のガイドプレート22が挿入される一対の嵌合凸部11bの、時計方向に角度αだけ回動した隣接位置に、取付孔11eが夫々形成されている。
【0029】
そして、同一軸心上に形成したケース本体10の取付孔10eとケースカバー11の取付孔11eとに亘って略円筒形のカラー23が挿入されている。該カラー23は、図3に示すように、軸方向に重ねられた取付孔10e,11eと略同じ軸方向寸法を有しケース本体10の取付孔10eに圧入され、前記嵌合凸部11bを設けたケースカバー11の取付孔11eには遊嵌されている。これは、ガイドプレート22の第1ガイド突出部22aが挿入される一対の嵌合凸部11bを有するケースカバー11にガイドプレート22からの外部負荷が作用し、該ケースカバー11の一対の嵌合凸部11bが嵌合される嵌合凹部10aを有するケース本体10にも外部負荷が作用し、該ケース本体10からカラー23および図示しないボルトを介して被取付部材としてのシートクッション1aに外部負荷が作用するようにして、ケース本体10だけでなくケースカバー11にも外部負荷がバランス良く作用するようにしたものである。
【0030】
図1に示すように、前記カラー23には円周方向の一箇所にスリット23aが形成され、該スリット23aとは180度反対側の両端部には切欠部23bが夫々形成されている。一方、図3に示すようにケースカバー11の取付孔11eには、半径方向中心側であって軸方向の外表面側にカラー23のスリット23aに入り込んで円周方向の位置決めをする第1位置決め突起11fが形成されている。また、ケース本体10の取付孔10eの半径方向の外周側であって軸方向の外表面側には、カラー23の両端の切欠部23bのいずれかに入り込んで軸方向の位置決めをする第2位置決め突起10fが形成されている。このため、カラー23はケース本体10とケースカバー11とを組み付けた後に、ケースカバー11側の取付孔11eから取付孔10eまで、スリット23aに第1位置決め突起11fが入り込んだ状態で、一方の切欠部23bに第2位置決め突起10fが入り込むまで挿入される。
【0031】
なお、符号24はケース本体10とケースカバー11とを仮り組みするねじ、符号26はOリングである。図1に示すように、ケースカバー11には円周方向で一対の嵌合凸部11bに対して90度をなす位置に位置決め凹部11gが形成される一方、ケース本体10には該位置決め凹部11gに嵌め込むための位置決め凸部10gが形成されている。これは、出力軸12の軸心と直角をなす面内の互いに90度をなす方向で、ケース本体10とケースカバー11との相対的な位置決めをするものである。
(作用)
次に、ギヤードモータの作用を説明する。
【0032】
まず、基本的な作用について説明する。電動モータ14が回転してウォーム15が回転すると、ウォーム15が噛み合うウォームギヤ18が出力軸12を中心として回転する。すると、ウォームギヤ18と一体の偏心軸部19aが回転し、該偏心軸部19aに回転自在に支持された外歯歯車20は、ガイドプレート22の働きにより、自転することなく出力軸12の軸心回りに公転し、これにより内歯歯車21に円周方向の一箇所で噛み合う外歯歯車20の噛合部が円周方向に1回転し、外歯歯車20よりも歯数が1歯または2歯だけ多い内歯歯車21が同じ方向へ歯2つ分だけ回転し、結果として減速される。この内歯歯車21の回転が出力軸12およびピニオン25の回転として出力される。これにより、図7に示すシート1が上昇または下降する。
【0033】
この発明によれば、出力軸13から外部負荷が逆入力されると、該外部負荷は、出力軸13と一体の内歯歯車21から外歯歯車20へ伝達され、該外歯歯車20と一体のギヤプレート20aからガイドプレート22に伝達されることで、該ガイドプレート22の第1ガイド突出部22aから嵌合凸部11bに伝達され、更に該嵌合凸部11bが嵌合されている嵌合凹部10aに伝達されることになるため、外部負荷はケースカバー11とケース本体10とに分散され、更にケースカバー11,ケース本体10の夫々から、個別にカラー23および図示しないボルトを介してシートクッション1aの図示しないクッション側アームに伝達される。
【0034】
このギヤードモータによれば、出力軸13から逆入力される外部負荷はケースカバー11とケース本体10とに分散され、個別にカラー23および図示しないボルトを介してシートクッション1aの図示しないクッション側アームに伝わるので、ケースカバー11およびケース本体10が樹脂で形成されていても強度が確保でき、ガイドプレート22として従来のように図示しないクッション側アームに直接に固定される鋼板等を用いる必要がなく、部品点数を削減して軽量化とコスト削減を図ることができる。
【0035】
この発明によれば、出力軸13から外部負荷が逆入力されると、外部負荷はガイドプレート22の第1ガイド突出部22aから嵌合凹部10aと嵌合凸部11bとが嵌合する凹凸嵌合部に伝達され、該凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側(図6(b)の時計方向へ向かって角度αの位置)に隣接して配置されているカラー23および図示しないボルトから図示しないクッション側アームに伝達される。
【0036】
このギヤードモータによれば、出力軸13から逆入力される外部負荷はケース本体10およびケースカバー11の一対の凹凸嵌合部に伝達され、該一対の凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側に隣接して配置されているカラー23および図示しないボルトから図示しないクッション側アームに伝達されるので、ケース本体10,ケースカバー11における一対の凹凸嵌合部に対して円周方向の特定方向側に隣接して配置されている取付孔11eとの間の部分以外に伝達される外部負荷は少なく、ケース本体10,ケースカバー11の強度が確保できる。
【0037】
この発明によれば、嵌合凸部11bを設けたケースカバー11の取付孔11eにカラー23が遊嵌されているので、出力軸13から外部負荷が逆入力されると、ガイドプレート22の第1ガイド突出部22aから嵌合凸部11bに作用した外部負荷が、初期段階から、該嵌合凸部11bおよび嵌合凹部10aを介してカラー23および図示しないボルトに伝達されるため、外部負荷がケース本体10とケースカバー11との両方に伝達され、ケース本体10とケースカバー11との両方からカラー23および図示しないボルトを介してクッション側アームに伝達されることになり、外部負荷はバランスよく分散されてクッション側アームに伝達される。
【0038】
このギヤードモータによれば、外部負荷が直接に伝達されることになる嵌合凸部11bを有するケースカバー11に、カラー23を遊嵌させることで、ガイドプレート22の第1ガイド突出部22aから嵌合凸部11bに伝達された外部負荷が、初期段階から、該嵌合凸部11bおよび嵌合凹部10aに作用することになるため、外部負荷はケース本体10とケースカバー11との両方を介して確実に図示しないクッション側アームに伝達される。つまり、外部負荷は、ケース本体10とケースカバー11とにバランスよく分散されて図示しないクッション側アームに伝達され、ケース本体10またはケースカバー11との一方に集中して負荷が伝達されることはないので、ケースの強度の向上が図れる。
【0039】
なお、本実施の形態ではシートリフタ装置の駆動手段としてギヤードモータを用いた例を示したが、シートリフタ装置に用いるギヤードモータに限定するものではない。また、ガイドプレート22の一対の第1ガイド突出部22aが挿入される一対の第1ガイド凹部11aおよび該第1ガイド凹部11aを囲む一対の嵌合凸部11bをケースカバー11に形成し、該一対の嵌合凸部11bが入り込む嵌合凹部10aをケース本体10に形成したが、ケース本体10に第1ガイド凹部および嵌合凸部を形成し、ケースカバー11に嵌合凹部を形成するようにしても良い。この場合は、ケースカバー11の取付孔11eにカラー23を圧入することになる。更に、本実施の形態では、凹凸嵌合部に対して円周方向へ外部負荷が作用した場合に、ガイドプレート22が回動する方向である特定方向側に隣接して取付孔10e,11eを配置したが、図1において車両が追突されて乗員がシートバック1bに押し付けられると、シートクッション1aが車体後方へ移動してリンク5はシートクッション1aに対して反時計方向へ回動させられるため、ピニオン9aを時計方向に回転させる方向の負荷が作用する。そのため、凹凸嵌合部の時計方向側に取付孔10e,11eを配置することになるが、図1,2は図7の紙面とは反対側から見た図であるため、ガイドプレート22が回動する方向である特定方向は図1,2においては凹凸嵌合部の反時計方向側であり、凹凸嵌合部の反時計方向側に隣接して、取付孔10e,11eが夫々配置されている。ここで外部負荷とは、車両が衝突して乗員がシートバック1bに押し付けられた際に、セクタギヤ7からピニオン9aに衝撃が作用し、この衝撃により出力軸12を回転させる回転力が生じるが、この回転力のことをいう。
【符号の説明】
【0040】
1a…シートクッション
10…ケース本体
10a…嵌合凹部
10e,11e…取付孔
11…ケースカバー
11a…第1ガイド凹部
11b…嵌合凸部
12…出力軸
14…電動モータ
15…ウォーム
18…ウォームギヤ
19a…偏心軸部
20…外歯歯車
20a…ギヤプレート
20b…第2ガイド突出部
21…内歯歯車
22…ガイドプレート
22a…第1ガイド突出部
22b…第2ガイド凹部
23…カラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で形成されたケース本体と、樹脂で形成され前記ケース本体とでケースを構成するケースカバーと、該ケースカバーと前記ケース本体とにより回転自在に支持され少なくとも一端が前記ケースの外部に突出する出力軸と、
前記ケース本体に取り付けられた電動モータと、該電動モータの回転軸に連結されたウォームと、該ウォームが噛み合うと共に前記出力軸の一方側に回転自在に支持されたウォームギヤと、該ウォームギヤと一体に形成され前記出力軸に対して偏心する偏心軸部と、該偏心軸部に回転自在に支持されると共に該偏心軸部と同心の外歯歯車を一体に設けたギヤプレートと、前記出力軸と一体に形成され前記外歯歯車の歯数よりも多い歯数を有し前記外歯歯車と噛み合う内歯歯車と、前記ギヤプレートと前記ウォームギヤとの間に配置され前記ギヤプレートを公転可能かつ自転不可能に案内するガイドプレートとを備えたギヤードモータにおいて、
前記ケースには前記ガイドプレートを前記出力軸の半径方向へ摺動自在に案内する一対の第1ガイド凹部を円周方向の相互に180度を成す位置に設け、前記ガイドプレートには前記夫々の第1ガイド凹部に摺動自在に挿入された一対の第1ガイド突出部と、該一対の第1ガイド突出部に対しての円周方向の90度をなす位置に半径方向に沿って形成された一対の第2ガイド凹部とを設け、該夫々の第2ガイド凹部に摺動自在に挿入される一対の第2ガイド突出部を前記ギヤプレートに設け、
前記ケース本体または前記ケースカバーの一方の対向面の円周方向の相互に180度を成す位置に半径方向に沿って一対の嵌合凸部を形成し、該一対の嵌合凸部が嵌合される嵌合凹部を他方の対向面に形成し、
前記一対の第1ガイド凹部は、前記一対の嵌合凸部における円周方向の中央部を凹ませて形成されており、
前記ケース本体および前記ケースカバーには、前記ケースを被取付部材に結合するためのボルトを挿通する取付孔を、前記出力軸の回りの少なくとも3箇所に夫々配置し、同一軸心上に形成した前記ケース本体の取付孔と前記ケースカバーの取付孔とに亘って略円筒形のカラーを挿入したことを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤードモータにおいて、
前記ケース本体および前記ケースカバーに形成され同一軸心上に配置された3箇所の前記取付孔の少なくとも1箇所を、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部とが嵌合する一対の凹凸嵌合部に対して、円周方向へ外部負荷が作用した場合に前記ガイドプレートが回動する方向である特定方向側に、隣接して配置したことを特徴とするギヤードモータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のギヤードモータにおいて、
同一軸心上に形成した前記ケース本体の取付孔と前記ケースカバーの取付孔とに亘って挿入されているカラーは、前記ケース本体の取付孔または前記ケースカバーの取付孔のうちの前記嵌合凸部を設けた一方の取付孔には遊嵌され、他方の取付孔には圧入されていることを特徴とするギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99085(P2013−99085A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239136(P2011−239136)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000237307)富士機工株式会社 (392)
【Fターム(参考)】