説明

ギヤ及び画像形成装置

【課題】 ギヤの回転速度の安定性を保持しつつ,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整可能なギヤとそれを用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 ボス部130とフランジ部110と歯元部120とからなるギヤ100において,フランジ部110に環状リブ113と径方向リブ112とを形成する。この環状リブ113と径方向リブ112とにより形成された肉ぬすみ形状111に,金属製の錘400を取り付ける。ギヤ100に取り付ける錘400の個数を変更することにより,ギヤ100の慣性モーメント及び共振周波数を調整する。この調整により,シリーズ展開する画像形成装置の異なる機種に対して共通のギヤ100を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤに関する。さらに詳細には,慣性モーメントと共振周波数とを調整可能なギヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,種々の機械装置では回転駆動の伝達のためにギヤを用いている。例えば,画像形成装置のような精密機器に用いる場合,高精度な回転速度の伝達が求められる。ギヤの回転速度の不安定性が,感光体等の回転ムラの原因となり,ひいては画像の品質の低下を引き起こすおそれがあるからである。
【0003】
このため,ギヤの変形等により生じる回転速度の不安定性を回避するために,種々の対策が講じられている。例えば,特許文献1では,はす歯ギヤにかかるスラスト方向の捩れを防止するために補強部材を取り付けている。また,補強部材を重心に対して対称形状にすることにより,補強部材をフライホイールとして機能させている。これにより,ギヤの回転が安定するとしている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−74971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,画像形成装置等の精密機器において,駆動系の共振周波数を各部の加振周波数からずらす必要がある。駆動系の共振周波数が加振周波数と等しくなった場合,駆動系に振動が発生し,トナー像担持体等の回転駆動が不安定となってしまうからである。さらに,大きな騒音が発生するおそれもある。
【0006】
このため,精密機器をシリーズ展開する場合,シリーズの個々の機種によってギヤ等の部品を異なるものとする必要があった。ゆえに,部品の種類が膨大な数となり,設計上の負担が大きかった。また,必要な在庫量が多かった。さらには,組み付け時に取付間違いを起こすおそれもあった。
【0007】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,ギヤの回転速度の安定性を保持しつつ,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整可能なギヤとそれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明のギヤは,回転軸に取り付けるためのボス部と,前記ボス部の外側に円板状に形成されたフランジ部と,前記フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,前記歯元部に形成されたギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤにおいて,前記フランジ部の側面に肉ぬすみ形状が形成されており,前記肉ぬすみ形状が,環状に複数配置されていることを特徴とするものである。かかるギヤは,肉ぬすみ形状に錘を取り付けることができる。これにより,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整することができる。
【0009】
上記に記載のギヤにおいて,前記フランジ部の側面に環状リブと径方向リブとが形成されており,前記肉ぬすみ形状が,前記環状リブと前記径方向リブとにより区切られた凹部であるとよい。ギヤに錘を取り付けることができ,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整することができることに変わりはないからである。また,環状リブと径方向リブとが形成されていることにより,ギヤの強度が上昇する。
【0010】
上記に記載のギヤにおいて,複数の前記肉ぬすみ形状がなす環状の列が,2列以上形成されているとなおよい。錘を取り付けることができる肉ぬすみ形状の箇所が増え,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整する際のバリエーションが増えるからである。
【0011】
上記に記載のギヤにおいて,前記肉ぬすみ形状が,前記フランジ部の両側面に形成されているとさらによい。錘を取り付けることができる肉ぬすみ形状の箇所が増え,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整する際のバリエーションがさらに増えるからである。
【0012】
上記に記載のギヤにおいて,前記肉ぬすみ形状のそれぞれの底部に,穴が形成されているとさらによい。錘を取り付けることができる肉ぬすみ形状の箇所が増え,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整する際のバリエーションがなおいっそう増えるからである。
【0013】
上記に記載のギヤにおいて,複数の前記肉ぬすみ形状のうち2個以上の前記肉ぬすみ形状に,錘が取り付けられているとよい。精密機器の異なる機種に対応して,共通のギヤを用いることができるからである。
【0014】
本発明の画像形成装置は,表面にトナー像の形成をうけるトナー像担持体と,前記トナー像担持体から媒体にトナー像を転写する転写部とを有し,前記トナー像担持体の駆動系にギヤを有する画像形成装置において,前記ギヤは,回転軸に取り付けるためのボス部と,前記ボス部の外側に円板状に形成されたフランジ部と,前記フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,前記フランジ部の側面に肉ぬすみ形状が形成されており,前記肉ぬすみ形状が,環状に複数配置されていることを特徴とするものである。かかる画像形成装置は,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数が調整できる。このため,駆動系の噛み合い周波数とギヤの共振周波数とが整数比とならないようにすることが可能である。これにより,異なる機種においても共通のギヤを使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,ギヤの回転速度の安定性を保持しつつ,ギヤの慣性モーメント及び共振周波数を調整可能なギヤとそれを用いた画像形成装置が提供されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1の形態]
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像形成装置の感光体の駆動系等に好適に使用できるギヤとして,本発明を具体化したものである。
【0017】
本形態のギヤは合成樹脂でできており,ある程度の柔軟性を有している。図1に示すように,ギヤ100は全体としてほぼ円板形状である。ギヤ100には,フランジ部110とボス部130と歯元部120とが形成されている。
【0018】
ボス部130は,ギヤ100の中心部分にあり,回転軸に取り付けるためのものである。これにより,ギヤ100は回転軸と共に回転することができる。ボス部130の外側には,円板状のフランジ部110が形成されており,その外縁に歯元部120が形成されている。歯元部120の外周面121には図示は省略するが,ギヤ歯が形成されている。
【0019】
また,フランジ部110の側面には,ギヤ100の中心軸を中心とする環状リブ113が形成されている。さらに,ボス部130から環状リブ113に向かって放射状に区切るように径方向リブ112が16筋形成されている。この径方向リブ112は,軸対称に形成されており,フランジ部110を等分割している。これら環状リブ113及び径方向リブ112が形成されていることにより,ギヤ100の強度が上昇している。
【0020】
ここで,歯元部120と環状リブ113の間には隙間がある。このため,径方向リブ112は歯元部120には達していない。そして,環状リブ113と径方向リブ112とで区切られた凹部として,肉ぬすみ形状111が形成されている。これは径方向リブ112の数に対応して16箇所あり,環状かつ軸対称に配置されている。このため,16箇所の肉ぬすみ形状111は全て同一形状である。
【0021】
本形態のギヤ100は,肉ぬすみ形状111に錘を取り付けることができる。この錘を取り付ける個数によってギヤ100の慣性モーメントの調整ができる。
【0022】
ここで,本形態のギヤ100の慣性モーメントの調整方法について図2により説明する。フランジ部110の肉ぬすみ形状111に錘400を取り付ける。錘400の形状は,扇形形状の平板であって,肉ぬすみ形状111とほぼ同じかやや大きい程度のものである。肉ぬすみ形状111及び錘400がそれぞれ同じ形状であるため,錘400を任意の肉ぬすみ形状111に取り付けることができる。
【0023】
また,錘400は金属製である。ギヤ100は合成樹脂製であるため,錘400は小さなものであっても,比重が大きいためギヤ100において大きな慣性モーメントを担うものである。
【0024】
ギヤ100は,合成樹脂製であり柔軟性を備えている。このため,錘400を肉ぬすみ形状111に嵌め込むことにより,環状リブ113及び径方向リブ112が適宜変形する。これにより,錘400をギヤ100の肉ぬすみ形状111に取り付けることができる。また,一旦取り付けた錘400は簡単にははずれない。
【0025】
また,錘400を一つだけ取り付けると,ギヤ100の重心が回転軸から大きくずれてしまう。このため,2個以上の錘400をギヤ100に取り付けることが望ましい。錘を2個取り付ける場合,図3に示すように軸対称の肉ぬすみ形状111の位置に錘400を取り付けるとよい。なお,ハッチングされた箇所は錘400が取り付けられた箇所を示しており,錘400がない箇所との区別のために付した。
【0026】
ここで,ギヤ100には16箇所の肉ぬすみ形状111が形成されている。このため,複数枚を取り付ける組み合わせは豊富である。さらに,錘400の厚みによっては,図4に示すように1箇所の肉ぬすみ形状111に2枚以上取り付けることも可能である。また,フランジ部110の両側面に肉ぬすみ形状111を形成することも可能である。
【0027】
以上により説明したギヤ100には,フランジ部110に環状に形成された16箇所の肉ぬすみ形状111に複数の錘400を取り付けることができる。このため,必要に応じて取り付ける錘400の個数を決めることができる。また,複数の錘400を取り付ける組み合わせのバリエーションを豊富に有しており,錘400の個数によって異なる慣性モーメントをギヤに持たせることができる。
【0028】
このように慣性モーメントを容易に調整できるため,それと共に共振周波数も同じように調整できる。このため,異なる機種に対してギヤ100を共通に用いることができる。錘400の個数によって,異なる共振周波数をギヤ100に設定できるからである。このため,シリーズ展開する場合に様々な機種に対応することができ,機種ごとにギヤを設計する負担が生じない。
【0029】
また,環状リブ113が外周面121と離れているため,錘400を嵌め込むことにより環状リブ113及び径方向リブ112が多少変形したとしても,外周面に形成されたギヤ歯には影響を与えない。つまり,ギヤ歯の精度が確保されている。また,フランジ部110に環状リブ113と径方向リブ112とが形成されていることにより,ギヤ100の強度は上昇している。
【0030】
前述したリブの補強効果に加えて,錘400がギヤ100に嵌め込まれることにより,ギヤ100の強度は上昇する。このため,錘400を肉ぬすみ形状111に取り付けることが,慣性モーメントを調整するための手段としてだけでなく,ギヤ100の強度を上昇させるための手段として用いることができる。
【0031】
画像形成装置をシリーズ展開する場合,機種によってはギヤ100にかかる力が異なる場合がある。また,1台の装置内でも,場所によって同様のことがある。ここで,ギヤにかかる負荷と必要な錘の個数との関係を図5に示す。図5に示すとおり,ギヤ100にかかる負荷が大きくなるにつれて,その負荷に耐えうる強度を維持するために必要な錘400の個数は増加する。このため,錘400の個数を調整することにより,ギヤ100に高い負荷がかかるような機種においても,同じギヤ100を共通に用いることができる。
【0032】
ここで,本形態に係るギヤ100を用いた画像形成装置について以下に説明する。図6の画像形成装置は,タンデム式のフルカラー画像形成装置である。この画像形成装置は,4色の画像形成ユニット3Y,3M,3C,3Kを有している。また,各画像形成ユニットは,感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kを有している。
【0033】
また,この画像形成装置は,各感光体ドラムからトナー像の1次転写を受けるとともに,トナー像を用紙へ2次転写する転写ベルト32を有している。この画像形成装置はさらに,各感光体ドラムに潜像を書き込む露光ユニット34や,用紙上のトナー像を定着する定着装置33,排紙ローラ35,給紙カセット31などを有している。
【0034】
かかる画像形成装置において,特に回転速度の安定が要求される回転要素として,感光体ドラム4Y,4M,4C,4Kが挙げられる。これらの回転速度にふらつきがあると,画像の品質が大きく損なわれるからである。そこで,本形態の画像形成装置では,これらの感光体ドラムへの駆動伝達系に本形態のギヤ100を用いている。
【0035】
ここで,本形態に係るギヤ100を異なる機種の画像形成装置に共通して用いる場合について説明する。この場合,感光体ドラムの駆動系の噛み合い周波数とギヤ100の共振周波数とをずらすことが好ましい。噛み合い周波数と共振周波数が近くなると,振動が発生し,高品質の画像形成を行うことができないためである。また,大きな騒音も発生する。なお,ギヤ100の共振周波数と噛み合い周波数とが整数比に近くなった場合も同様である。
【0036】
ここで例えば,ギヤ100の共振周波数が,
錘なしの場合 100Hz
錘8個の場合 80Hz
錘16個の場合 60Hz
であるとする。
【0037】
そして,機種別の噛み合い周波数(左欄)に対して,ギヤ100に付ける錘(右欄)を
噛み合い周波数50Hzの場合 錘8個程度
噛み合い周波数75Hzの場合 錘なし又は錘16個
噛み合い周波数100Hzの場合 錘8個以上
のように調整する。つまり,ギヤ100の共振周波数を,当該機種における噛み合い周波数を避けるように錘400を取り付けるのである。さらに,ギヤ100の共振周波数と当該機種における噛み合い周波数とが整数比になる場合も避けるようにギヤ100に錘400を取り付けるのである。
【0038】
これにより,個々のギヤの慣性モーメントの調整が可能である。また,回転速度の安定性を有するギヤを,シリーズ展開する異なる噛み合い周波数を有する画像形成装置に対して,共通に用いることができる。
【0039】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るギヤ100は,環状リブ113と径方向リブ112とで区切られた16箇所の肉ぬすみ形状111を設けたものである。また,肉ぬすみ形状111に錘400を取り付けるようにしたので,各々のギヤ100の慣性モーメントを調整できるようになった。これにより,共振周波数を調整できるギヤが実現されている。
【0040】
本形態に係るギヤ100を用いた画像形成装置は,各感光体ドラムを安定した回転速度で回転させることができる。また,シリーズ展開する画像形成装置において,機種ごとの駆動系の噛み合い周波数に応じてギヤ100の共振周波数を調整することができる。この際,錘の個数を変えるだけで対応できるため,機種ごとにギヤを別途設計する必要がない。なお,ギヤの強度も同様に調整可能である。
【0041】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,肉ぬすみ形状111は環状リブ113と径方向リブ112とで区切られた扇形形状に限らない。環状に複数設置されていれば奏する効果は同じだからである。
【0042】
また,肉ぬすみ形状111の個数は,16個に限る必要はない。複数形成されていれば,その奏する効果は同じだからである。ただし,12個,20個のように約数の多い数とするのが好ましい。重心がギヤの中心からずれることなく,錘をギヤに取り付けることができる組み合わせが多いからである。
【0043】
ギヤは合成樹脂製でなくともよい。仮に金属製であった場合は,錘の材質より柔軟であればよい。これにより同様の効果を奏する。また,錘は金属製でなくともよい。ただし,ギヤの材質と比較して密度の高い物質であれば,当該錘はフライホイールとしての役割を果たし,安定な回転駆動が得られるため好ましい。
【0044】
また,本形態のギヤ100は,感光体ドラムの駆動伝達系に限らず,転写ベルト32への駆動伝達系や,紙送りの駆動伝達系などにも用いることができる。これにより,設計の負担がより軽減される。また,ギヤ歯は,平歯でも斜歯でもどんな種類の歯でも構わない。
【0045】
[第2の形態]
本形態に係るギヤについて図7により説明する。本形態のギヤ200は,第1の形態のギヤ100とほぼ同様である。本形態のギヤは合成樹脂でできており,ある程度の柔軟性を有している。図7に示すように,ギヤ200は全体としてほぼ円板形状である。ギヤ200には,フランジ部110とボス部130と歯元部120とが形成されている。
【0046】
ギヤ200は,ボス部130と歯元部120とが第1の形態と同様であり,フランジ部110が第1の形態と若干異なっている。
【0047】
フランジ部110の側面には,ギヤ200の中心軸を中心とする同心円状に環状リブ113と環状リブ114とが形成されている。ボス部130からその環状リブ113に向かって,径方向リブ112が放射状に16筋形成されている。ここで,径方向リブ112は軸対称であり,フランジ部110を等分割している。
【0048】
ここで,環状リブが,第1の形態より1筋多く形成されている。このため,環状リブ113及び環状リブ114と径方向リブ112とで区切られた凹部である肉ぬすみ形状は,肉ぬすみ形状211と肉ぬすみ形状212とがなす列の2列形成されている。つまり,肉ぬすみ形状は全部で32箇所である。また,フランジ部110の両側面に肉ぬすみ形状を設けることも可能である。
【0049】
図7では,2箇所の肉ぬすみ形状211に錘401が合わせて2個,2箇所の肉ぬすみ形状212に錘402が合わせて2個取り付けられている。錘401と錘402とでは質量が異なっている。また,錘401は錘402より外側にあるため,慣性モーメントへの寄与が大きい。一方,ギヤ200の強度に関しては,錘の数が多いほうが全体として強度は上昇する。
【0050】
このため,ギヤ200の共振周波数を調整する際の錘を取り付ける組み合わせのバリエーションが第1の形態の場合よりさらに多い。そして,ギヤ200の共振周波数と強度とを別々に最適化することも可能となっている。
【0051】
なお,本形態のギヤ200も第1の形態の画像形成装置に適用することができる。第1の形態と同様に,取り付けた錘により,慣性モーメント及び共振周波数を調整する。また,このときに奏する効果は,第1の形態と同様のものである。ただし,錘を取り付けるバリエーションは第1の形態よりも多い。
【0052】
以上により説明したギヤ200は,フランジ部110にある肉ぬすみ形状211及び肉ぬすみ形状212に複数の錘401又は錘402を嵌め込むことができる。このため,必要に応じて取り付ける錘401及び錘402の個数を決めることができる。また,複数の錘を取り付けるバリエーションを豊富に有している。このため,ギヤ200はそのバリエーションに応じて異なる慣性モーメントを持つのである。
【0053】
このように共振周波数を容易に調整することができるため,精密機器の異なる機種に対してギヤ200を共通に用いることができる。このため,シリーズ展開する場合に様々な機種に対応することができ,機種ごとにギヤを別途設計する必要がない。なお,ギヤの強度も同様に調整可能である。
【0054】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るギヤ200は,環状リブ113及び環状リブ114と径方向リブ112とで区切られた肉ぬすみ形状211と肉ぬすみ形状212とを設けたものである。また,肉ぬすみ形状211又は肉ぬすみ形状212に錘401又は錘402を取り付けるようにしたので,各々のギヤ200の慣性モーメントを調整できるようになった。これにより,共振周波数を調整できるギヤが実現されている。
【0055】
本形態に係るギヤ200を用いた画像形成装置は,第1の形態と同様の効果を奏する。つまり,回転速度の安定性を有したまま,慣性モーメント及び共振周波数の調整ができる。また,シリーズ展開する画像形成装置の異なる機種に共通に用いることができる。さらに,第1の形態よりもギヤ200の共振周波数を調整する際の錘を取り付ける組み合わせのバリエーションが多い。それに加えて,ギヤ200の共振周波数と強度とを別々に最適化することも可能である。
【0056】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。上記の第1の形態と同様の変形は全て行うことができる。
【0057】
また,第1の形態とは異なり,環状に配置された肉ぬすみ形状が2列形成されている。しかし,3列以上配置されていても構わない。
【0058】
[第3の形態]
本形態に係るギヤについて図8により説明する。本形態のギヤ300は,第1の形態のギヤ100とほぼ同様である。本形態のギヤは合成樹脂でできており,ある程度の柔軟性を有している。図8に示すように,ギヤ300は全体としてほぼ円盤形状である。ギヤ300は,フランジ部110とボス部130と歯元部120とが形成されている。
【0059】
ギヤ300は,ボス部130と歯元部120とが第1の形態と同様であり,フランジ部110が第1の形態と若干異なっている。
【0060】
第1の形態と異なる点は,環状リブ112と径方向リブ113とで区切られた肉ぬすみ形状111のそれぞれの底面に,錘を取り付けるための穴301が一つずつ形成されていることである。穴301は,肉ぬすみ形状111と同様,環状かつ軸対称に配置されている。また,穴301は,フランジ部110を貫通する貫通穴であっても,貫通しない穴であってもよい。
【0061】
この穴301が形成されていることにより,穴301と肉ぬすみ形状111との双方に錘を取り付けることができる。これにより,錘をギヤ300に取り付ける組み合わせのバリエーションが増える。このため,ギヤ300の慣性モーメント及び共振周波数の微小な設定が可能である。また,フランジ部110の両側面に肉ぬすみ形状及び穴301を設けることもできる。
【0062】
また,第2の形態のギヤ200の肉ぬすみ形状211と肉ぬすみ形状212に穴301を設けることもできる。さらに,フランジ部110の両側面に肉ぬすみ形状211と肉ぬすみ形状212及び穴301を設けることもできる。
【0063】
なお,本形態のギヤ300も第1の形態の画像形成装置に適用することができる。第1の形態と同様に,取り付けた錘により,慣性モーメント及び共振周波数を調整する。また,このときに奏する効果は,第1の形態と同様のものである。ただし,錘を取り付けるバリエーションは第1の形態よりも多い。
【0064】
以上により説明したギヤ300は,フランジ部110にある多数の肉ぬすみ形状111及び穴301に複数の錘を取り付けることができる。このため,必要に応じて取り付ける錘400の個数を決めることができる。また,錘400の他に穴301に嵌め込む錘のバリエーションを有しており,そのバリエーションによりギヤに異なる慣性モーメントを持たせることができる。
【0065】
このように共振周波数を容易に調整することができるため,精密機器の異なる機種に対してギヤ300を共通に用いることができる。このため,シリーズ展開する場合に様々な機種に対応することができ,機種ごとにギヤを別途設計する必要がない。なお,ギヤの強度も同様に調整可能である。
【0066】
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係るギヤ300は,環状リブ113と径方向リブ112とで区切られた16箇所の肉ぬすみ形状111を設けたものである。また,肉ぬすみ形状111に穴301を設けたので,肉ぬすみ形状と穴301の双方に錘を取り付けることができるようになった。このため,各々のギヤ300の慣性モーメントを細かく調整できるようになった。これにより,共振周波数を細かく調整できるギヤが実現されている。
【0067】
本形態に係るギヤ300を用いた画像形成装置は,第1の形態及び第2の形態のものと同様の効果を奏する。つまり,回転速度の安定性を有したまま,慣性モーメント及び共振周波数の調整ができる。また,シリーズ展開する画像形成装置の異なる機種に共通に用いることができる。また,第1の形態よりもギヤ300の共振周波数を調整する際の錘を取り付ける組み合わせのバリエーションが多い。
【0068】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。上記の第1の形態と同様の変形は全て行うことができる。
【0069】
また,第1の形態とは別に,肉ぬすみ形状111に穴301を設けたが,この形状は円形でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の形態に係るギヤを示す斜視図である。
【図2】第1の形態に係るギヤの慣性モーメントを調整する方法を示す斜視図(その1)である。
【図3】第1の形態に係るギヤの慣性モーメントを調整する方法を示す斜視図(その2)である。
【図4】第1の形態に係るギヤの慣性モーメントを調整する方法を示す斜視図(その3)である。
【図5】ギヤにかかる負荷と必要な錘の個数の関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る画像形成装置を示す図である。
【図7】第2の形態に係るギヤを示す斜視図である。
【図8】第3の形態に係るギヤを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
3Y,3M,3C,3K…画像形成ユニット
4Y,4M,4C,4K…感光体ドラム
32…転写ベルト
100,200,300…ギヤ
110…フランジ部
111,211,212…肉ぬすみ形状
112…径方向リブ
113,114…環状リブ
120…歯元部
130…ボス部
301…穴
400,401,402…錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けるためのボス部と,
前記ボス部の外側に円板状に形成されたフランジ部と,
前記フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,
前記歯元部に形成されたギヤ歯により回転駆動の伝達を行うギヤにおいて,
前記フランジ部の側面に肉ぬすみ形状が形成されており,
前記肉ぬすみ形状が,環状に複数配置されていることを特徴とするギヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤであって,
前記フランジ部の側面に環状リブと径方向リブとが形成されており,
前記肉ぬすみ形状が,前記環状リブと前記径方向リブとにより区切られた凹部であることを特徴とするギヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のギヤであって,
複数の前記肉ぬすみ形状がなす環状の列が,2列以上形成されていることを特徴とするギヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のギヤであって,
前記肉ぬすみ形状が,前記フランジ部の両側面に形成されていることを特徴とするギヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のギヤであって,
前記肉ぬすみ形状のそれぞれの底部に,穴が形成されていることを特徴とするギヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のギヤであって,
複数の前記肉ぬすみ形状のうち2個以上の前記肉ぬすみ形状に,錘が取り付けられていることを特徴とするギヤ。
【請求項7】
表面にトナー像の形成をうけるトナー像担持体と,前記トナー像担持体から媒体にトナー像を転写する転写部とを有し,前記トナー像担持体の駆動系にギヤを有する画像形成装置において,
前記ギヤは,回転軸に取り付けるためのボス部と,
前記ボス部の外側に円板状に形成されたフランジ部と,
前記フランジ部の外縁に環状に形成された歯元部とを有し,
前記フランジ部の側面に肉ぬすみ形状が形成されており,
前記肉ぬすみ形状が,環状に複数配置されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−128824(P2009−128824A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306429(P2007−306429)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】