説明

クアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置

【課題】クアドラチャー・コイルの一方のRFコイルからのみRFパルスを送信した時に他方のRFコイルの共振回路がRFパルスのエネルギーを消耗してしまうことを防止する。
【解決手段】フォトカプラ(4)でスイッチ素子(3)を駆動し、MR信号の受信時は第2RFコイル(2a)と第2キャパシタ(2b)とで第2共振回路が形成される状態にし、RFパルスの送信時は第2共振回路が形成されない状態に切り換える。
【効果】QD分配器を省略でき、構成を簡単化でき且つコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置に関し、さらに詳しくは、構成を簡単化でき且つコストを低減できるクアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFパルスの送信時にはQD分配器を介してクアドラチャー・コイルの直交する各RFコイルに高周波電力を分配供給し、MR信号の受信時にはQD結合器を介してクアドラチャー・コイルの直交する各RFコイルで得たMR信号を加算するMRI用RFコイル装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−90922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のMRI用RFコイル装置では、クアドラチャー・コイルの直交するRFコイルの両方を使ってRFパルスを送信できる利点があった。
しかし、QD分配器が必要になるため、構成が複雑で高コストとなる問題点があった。
そこで、本発明の目的は、構成を簡単化でき且つコストを低減できるクアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の観点では、本発明は、被測定物を励起するためのRFパルスを送信すると共に被測定物からのMR信号を受信するための第1RFコイル(1a)と、前記第1RFコイル(1a)と共に前記MR信号に対する第1共振回路を形成する第1キャパシタ(1b)と、前記第1RFコイル(1a)と90°異なる角度でMR信号を受信するための第2RFコイル(2a)と、前記第2RFコイル(2a)と共に前記MR信号に対する第2共振回路を形成する第2キャパシタ(2b)と、前記第2共振回路が形成される状態と形成されない状態とを切り換えるためのスイッチ素子(3)と、前記スイッチ素子(3)を駆動するためのフォトカプラ(4)とを具備したことを特徴とするクアドラチャー・コイル装置(10)を提供する。
クアドラチャー・コイルの直交するRFコイルの一方だけを使ってRFパルスを送信するようにすれば、QD分配器を省略できる。しかしながら、他方のRFコイルの共振回路がRFパルス(MR信号と周波数帯域が重なる)に共振して負荷になり、RFパルスのエネルギーを消耗してしまう。
そこで、上記第1の観点によるクアドラチャー・コイル装置(10)では、送信時には第2共振回路が形成されない状態に切り換え可能とした。これにより、第2共振回路がRFパルスのエネルギーを消耗してしまうことを防止できるので、第1RFコイル(1a)だけを使ってRFパルスを送信できるようになる。従って、QD分配器を省略でき、構成を簡単化でき且つコストを低減できる。
また、フォトカプラ(4)を用いてスイッチ素子(3)を能動的に駆動するので、第2共振回路とフォトカプラ駆動回路とを電気的に分離できると共に第2共振回路が形成される状態と形成されない状態とを自由なタイミングで切り換えることが出来る。
なお、受信時には第2共振回路が形成される状態に切り換え可能なので、第1RFコイル(2a)と第2RFコイル(2b)の両方でMR信号を受信できる。
【0006】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるクアドラチャー・コイル装置(10)と、前記第1RFコイル(1a)からRFパルスを送信するためのRFパルス信号を出力すると共に前記RFパルスが送信される時に前記第2共振回路が形成されない状態となり前記MR信号を受信する時に前記第2共振回路が形成される状態となるように前記フォトカプラ(4)に駆動信号を出力するフォトカプラ駆動信号出力部(30)とを具備したことを特徴とする磁気共鳴分析装置(100)を提供する。
上記第2の観点による磁気共鳴分析装置(100)では、送信時には第2共振回路が形成されない状態に切り換えるので、第2共振回路がRFパルスのエネルギーを消耗してしまうことを防止でき、第1RFコイル(1a)だけを使ってRFパルスを送信できるようになる。従って、QD分配器を省略でき、構成を簡単化でき且つコストを低減できる。
また、フォトカプラ(4)を用いてスイッチ素子(3)を能動的に駆動するので、第2共振回路とフォトカプラ駆動回路とを電気的に分離できると共に第2共振回路が形成される状態と形成されない状態とを自由なタイミングで切り換えることが出来る。
なお、受信時には第2共振回路が形成される状態に切り換えるので、第1RFコイル(2a)と第2RFコイル(2b)の両方でMR信号を受信できる。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置によれば、構成を簡単化できると共にコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係るクアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置を示す回路図である。
【図2】実施例1に係るフォトカプラ駆動信号の出力タイミングを示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
−実施例1−
図1は、磁気共鳴分析装置100の要部を示す回路図である。
この磁石型磁気共鳴分析装置100は、クアドラチャー・コイル装置10と、インターフェース装置20と、制御分析装置30とを具備している。なお、静磁場形成手段および勾配磁場形成手段も具備しているが、本発明の説明に必要ないので、省略する。
【0011】
クアドラチャー・コイル装置10は、被測定物を励起するためのRFパルスを送信すると共に被測定物からのMR信号を受信するための第1RFコイル1aと、第1RFコイル1aと共にMR信号に対する第1共振回路を形成する第1キャパシタ1bと、第1RFコイル1aと90°異なる角度でMR信号を受信するための第2RFコイル2aと、第2RFコイル2aと共にMR信号に対する第2共振回路を形成する第2キャパシタ2bと、第2共振回路が形成される状態(第2RFコイル2aの両端間を高インピーダンスで接続した状態)と第2共振回路が形成されない状態(第2RFコイル2aの両端を低インピーダンスで接続した状態)とを切り換えるためのスイッチ素子3と、制御分析装置30のフォトカプラ駆動信号出力から出力されたフォトカプラ駆動信号に応じてスイッチ素子3を駆動するためのフォトカプラ4とを具備している。
【0012】
インターフェース装置20は、制御分析装置30のRFパルス信号出力から出力されたRFパルス信号を電力増幅するパワーアンプ21と、電力増幅されたRFパルス信号が入力されたときに該RFパルス信号をクアドラチャー・コイル装置10の第1RFコイル1aへのみ送出すると共に第1RFコイル1aで受信したMR信号が入力されたときに該MR信号をを低雑音アンプ23へのみ送出する信号分岐部22と、信号分岐部22から出力されたMR信号を低雑音増幅する低雑音アンプ23と、低雑音アンプ23から出力されたMR信号の位相を90°シフトする位相シフター24と、位相シフトされたMR信号の大きさを調整するための減衰器25と、クアドラチャー・コイル装置10の第2共振回路から出力されたMR信号を低雑音増幅する低雑音アンプ26と、減衰器25から出力されたMR信号と低雑音アンプ27から出力されたMR信号とを加算して制御分析装置20のMR信号入力へと出力するミキサー27とを具備している。
【0013】
制御分析装置30は、予め設定されたパルスシーケンスに基づいてRFパルス信号およびフォトカプラ駆動信号を出力すると共にミキサー27から入力されるMR信号を読み込んで分析しMR画像の生成等を行う。なお、勾配磁場信号も出力するが、本発明の説明に必要ないので、省略する。
【0014】
図2は、SE法のパルスシーケンスにおけるフォトカプラ駆動信号の出力タイミングを示すタイミング図である。
90°パルスのためのRFパルス信号を出力する送信期間と180°パルスのためのRFパルス信号を出力する送信期間は第2共振回路が形成されない状態にするためのフォトカプラ駆動信号を連続的に出力し、それ以外の期間は第2共振回路が形成される状態にするためのフォトカプラ駆動信号を連続的に出力する。
【0015】
実施例1のクアドラチャー・コイル装置10および磁気共鳴分析装置100によれば次の効果が得られる。
(1)RFパルスの送信時には第2共振回路が形成されない状態に切り換えるので、第2共振回路がRFパルスのエネルギーを消耗してしまうことを防止でき、第1RFコイル1aだけを使ってRFパルスを送信できる。従って、QD分配器を省略でき、構成を簡単化でき且つコストを低減できる。
(2)フォトカプラ4を用いてスイッチ素子)を能動的に駆動するので、第2共振回路とフォトカプラ駆動回路とを電気的に分離できると共に、第2共振回路が形成される状態と形成されない状態とを自由なタイミングで切り換えることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明のクアドラチャー・コイル装置および磁気共鳴分析装置は、例えば果実や魚の成熟度の検査に利用できる。
【符号の説明】
【0017】
1a 第1RFコイル
1b 第1キャパシタ
2a 第2RFコイル
2b 第2キャパシタ
3 スイッチ素子
4 フォトカプラ
10 クアドラチャー・コイル装置
20 インターフェース装置
30 制御分析装置
100 磁気共鳴分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を励起するためのRFパルスを送信すると共に被測定物からのMR信号を受信するための第1RFコイル(1a)と、前記第1RFコイル(1a)と共に前記MR信号に対する第1共振回路を形成する第1キャパシタ(1b)と、前記第1RFコイル(1a)と90°異なる角度でMR信号を受信するための第2RFコイル(2a)と、前記第2RFコイル(2a)と共に前記MR信号に対する第2共振回路を形成する第2キャパシタ(2b)と、前記第2共振回路が形成される状態と形成されない状態とを切り換えるためのスイッチ素子(3)と、前記スイッチ素子(3)を駆動するためのフォトカプラ(4)とを具備したことを特徴とするクアドラチャー・コイル装置(10)。
【請求項2】
前記第1の観点によるクアドラチャー・コイル装置(10)と、前記第1RFコイル(1a)からRFパルスを送信するためのRFパルス信号を出力すると共に前記RFパルスが送信される時に前記第2共振回路が形成されない状態となり前記MR信号を受信する時に前記第2共振回路が形成される状態となるように前記フォトカプラ(4)に駆動信号を出力するフォトカプラ駆動信号出力部(30)とを具備したことを特徴とする磁気共鳴分析装置(100)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−3006(P2013−3006A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135435(P2011−135435)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】