説明

クイックコネクタ

【課題】チューブ接続部がパイプ接続部に対して屈曲状態で形成されていながら、狭い配管スペース内でもリテーナを手際よく操作できるようにする構成を備えたクイックコネクタを提供する。
【解決手段】パイプ挿入部7の円筒状のリテーナ保持部23に、樹脂チューブ接続部9の延びる方向で径方向対称位置に対向して第1の一対の係合窓41、41を形成し、第1の一対の係合窓41、41と周方向に90度ずれた径方向対称位置に対向して第2の一対の係合窓43、43を形成しておく。第1の一対の係合窓41、41又は第2の一対の係合窓43、43を選択し、リテーナ5を、選択した係合窓に取り付けることができるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のガソリン燃料配管等の接続に用いられるクイックコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のガソリン燃料配管の接続には、例えば特許文献1に示すようなクイックコネクタが用いられる。このクイックコネクタは、軸方向一方側にチューブ接続部(樹脂チューブ接続部)を有し、軸方向他方側にリテーナ保持部が形成された筒状のパイプ接続部(パイプ挿入部)と、リテーナ保持部内に嵌め付けられたリテーナと、から構成され、パイプ接続部あるいはリテーナ保持部の軸方向他端開口からこのパイプ接続部内に相手パイプ(パイプ体)を相対的に挿入してスナップ嵌合することにより相手パイプと接続される構造になっている。
【0003】
リテーナは、断面C字状のほぼ環状体として形成され、パイプ接続部内に挿入された相手パイプの環状係合突部とスナップ係合する係合部(係合スリット)を有していて、径方向対称個所に一対設けられた保持突出部(係合爪部)を、リテーナ保持部の径方向対称個所に形成されている一対の係合窓に入り込ませて、この係合窓の軸方向他端部と係合させることにより、リテーナ保持部に抜け止め状態で保持されている。
【0004】
リテーナには、保持突出部に対応するように、一対の操作部(操作アーム)が設けられていて、この操作部を径方向外側から押圧すると、リテーナの保持突出部間の間隔が狭まるように構成されている。したがって、操作部を操作することにより、保持突出部の係合窓との係合を解除して、相手パイプをリテーナとともに、クイックコネクタから相対的に抜き出すことができる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−89765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなクイックコネクタは、例えば、各種の部品などが密集して配置され、配管スペースが狭く限られている自動車のエンジンルーム内で用いられる。したがって、配管作業にあたっては、クイックコネクタが、リテーナの操作部を操作しやすいような状態で、配管スペース内に配置されるように配慮する必要がある。すなわち、例えば、幅が狭い配管スペース箇所に、リテーナの操作部が幅方向両側に位置する状態でクイックコネクタが収容されてしまうと、クイックコネクタを相手パイプから外すときに、リテーナの操作部を操作できなくなってしまう。
【0007】
したがって、クイックコネクタのチューブ接続部をチューブ(樹脂チューブ)に嵌め付ける際には、クイックコネクタが収容される配管スペース箇所に応じて、操作部が操作しやすくなるような回転角度位置で、クイックコネクタをチューブに接続する必要がある。
【0008】
ところが、配管ラインに対応して、チューブ接続部がパイプ接続部に対して屈曲状態で形成されているクイックコネクタでは、収容される配管スペース箇所でパイプ接続部がリテーナの操作部を操作しやすいような回転角度位置となるように、クイックコネクタをチューブに接続しておくといったことはできない。
【0009】
そこで本発明は、チューブ接続部がパイプ接続部に対して屈曲状態で形成されていながら、狭い配管スペース内でもリテーナを手際よく操作できるようにする構成を備えたクイックコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するための本発明のクイックコネクタは、軸方向一方側にチューブと接続されるチューブ接続部を有し、軸方向他方側にリテーナ保持部が形成された筒状のパイプ接続部と、前記リテーナ保持部に保持されて相手パイプと係合し、この相手パイプを抜け止めするリテーナと、を備え、前記リテーナは、環状の又はほぼ環状のリテーナ本体(本体部)と、このリテーナ本体の径方向対称個所に設けられた一対の保持突出部と、この一対の保持突出部に対応して前記リテーナ本体に形成された一対の操作部と、を有し、前記一対の保持突出部が前記リテーナ保持部の径方向対称個所に形成された一対の係合窓と係合することにより前記リテーナ保持部に保持されるように形成され、かつ、前記一対の操作部を操作することにより前記係合窓と前記保持突出部との係合が解除されるように形成されている、クイックコネクタであって、前記チューブ接続部は、前記パイプ接続部に屈曲状態で接続形成され、前記一対の係合窓は、第1の一対の係合窓及び第2の一対の係合窓の2組形成され、前記第1の一対の係合窓と前記第2の一対の係合窓とは互いに周方向に90度ずれて設けられていて、前記第1の係合窓又は前記第2の係合窓のいずれか一方を選択して前記リテーナの前記保持突出部を係合させることができるように構成されているものである。
【0011】
パイプ接続部及びチューブ接続部は例えばコネクタ本体を形成する。コネクタ本体は樹脂製又は金属製とすることができ、リテーナも樹脂製又は金属製とすることができる。パイプ接続部は例えば直管状に形成される。リテーナはリテーナ保持部内に嵌め付けられるように形成でき、軸方向一端部に、相手パイプの環状係合突部が嵌り込んで係合する係合スリットを有することができる。操作部は、リテーナ本体から軸方向他方側に延びる操作アームとすることができる。第1の一対の係合窓を利用する場合と、第2の一対の係合窓を利用する場合とで、一対の操作部のパイプ接続部に対する位置が周方向に90度変化する。
【発明の効果】
【0012】
配管スペース内に配置されたクイックコネクタに取り付けられているリテーナの操作部が操作しやすい方向に位置するように、第1の一対の係合窓又は第2の一対の係合窓を選択し、選択した一対の係合窓にリテーナの保持突出部を係合させてリテーナ保持部にリテーナを取り付ければ、相手パイプからクイックコネクタを取り外す場合に、リテーナの操作部が操作しにくいといったことを回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明に係るクイックコネクタの斜視図、図2はクイックコネクタの断面図、図3はコネクタ本体の斜視図、図4はクイックコネクタに用いられるリテーナの斜視図である。
【0015】
クイックコネクタ1は、自動車のガソリン燃料配管の接続用に使用されるものであり、筒状又は円筒状のコネクタ本体3と、ほぼ環状のリテーナ5と、を備えて構成されている。コネクタ本体3はガラス繊維強化ポリアミド(PA・GF)を素材として形成され、円筒状のパイプ挿入部(パイプ接続部)7の軸方向一端部に、円筒状の樹脂チューブ接続部9が90度屈曲した状態で一体的に接続形成されることにより構成されていて、樹脂チューブ接続部9の先端からパイプ挿入部7の軸方向他端に貫通する貫通孔11を有している。樹脂チューブ接続部9は、軸方向に間隔を有して一体的に形成された複数本の抜け止め環状突出部13を外周面に有していて、外周又は外周面に樹脂チューブ15(図5参照)がきつく嵌め付けられて接続されるように構成されている。なお、樹脂チューブ接続部9の先端側外周には、比較的深い環状のシール嵌め込み溝17が形成されていて、樹脂チューブ15を嵌め付けるに際してあるいは樹脂チューブ15に圧入するに際してこのシール嵌め込み溝17内に環状シール19(図5参照)を配置しておく。また、樹脂チューブ接続部9の付根端部には、樹脂チューブ15への圧入時に樹脂チューブ15の先端部と当接して過挿入を防止する外向きフランジ状のストッパ21が形成されている。
【0016】
コネクタ本体3のパイプ挿入部7は、軸方向他方側の大径のリテーナ保持部23と、リテーナ保持部23よりも小径の中間のシール保持部25と、シール保持部25よりもさらに小径の軸方向一方側の連絡部27と、から一体的に構成されていて、樹脂チューブ接続部9はこの連絡部27に一体的に設けられている。シール保持部25の内周面の軸方向一方側には、軸方向一方側の第1のOリング29と、軸方向他方側の第2のOリング31との2本の環状シール部材がカラー33を介して、すなわち軸方向に間隔を有して並んで嵌められ、シール保持部25の内周面の軸方向他方側には、連絡部27の内径とほぼ等しい内径を有する、短い筒状又は円筒状の樹脂ブッシュ35が嵌め付けられている。樹脂ブッシュ35は、軸方向他方側の環状端面37が、リテーナ保持部23の内側の軸方向一端に形成されている、狭い幅を有して径方向内側に広がる環状当接面又は環状内端面39と同一平面上に位置するように、シール保持部25の軸方向他端部に嵌め付けられている。Oリング29、31は、シール保持部25の内側の軸方向一端に形成されている環状の段差面39と樹脂ブッシュ35とに挟まれて軸方向に位置決めされている。
【0017】
パイプ挿入部7の円筒状のリテーナ保持部23には、樹脂チューブ接続部9の延びる方向で径方向対称位置に対向して第1の一対の係合窓41、41が形成され、第1の一対の係合窓41、41と周方向に90度ずれた径方向対称位置に対向して(あるいは樹脂チューブ接続部9の延びる方向と直交する方向で径方向対称位置に対向して)第2の一対の係合窓43、43が形成されていて、それぞれの係合窓41、43は同一の形状を有している。したがって、リテーナ保持部23には、周方向に90度間隔で(周方向等間隔で)4つの係合窓又は4つの同一形状の係合窓が形成されていることとなる。係合窓41、43の軸方向一端(端面)45、47は、リテーナ保持部23の内側の環状当接面39及び樹脂ブッシュ35の軸方向他方側の環状端面37よりも軸方向他方側又は多少軸方向他方側に位置するように配置されている。
【0018】
リテーナ保持部23内にはPA製のリテーナ5が嵌め付けられていて、このリテーナ5は、比較的柔軟であり、弾性変形可能なように構成されている。リテーナ5は、軸方向他端部の径方向対称位置に、径方向外側に突出した一対の係合爪部49、49が形成されている、周方向両端部51、51間に比較的大きな変形用隙間が設けられた断面C形状又はC字状(ほぼ環状形)の本体部53を有し、この本体部53の内面は、係合爪部49と対応する周方向位置で軸方向一方側に向かって縮径する状態に形成されていて、本体部53の軸方向一端部55は、係合爪部49と対応する周方向位置で相手パイプ57(図5参照)の外径とほぼ等しい内径(相手パイプ57の環状係合突部59(図5参照)の外径よりも小さい内径)を有する円弧状箇所を備えている。そして、本体部53の変形用隙間と対向する部分の内面はほぼ円筒内面状態(相手パイプ57の環状係合突部59の外径とほぼ同一の内径を有する)に形成され、本体部53の変形用隙間と対向する部分の軸方向一端部55には切欠状凹部61が形成されている。
【0019】
リテーナ5の本体部53の軸方向他端部には、係合爪部49、49と対応した位置から軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜して延びる一対の操作アーム63、63(操作部)が一体的に設けられていて、それぞれの操作アーム63、63の軸方向他端部には径方向外側に突出した操作端部65、65が形成されている。また、本体部53の軸方向一端部55の円弧状箇所には、周方向に延びる係合スリット67、67が対向して形成されていて、このような構成のリテーナ5は、ここでは、係合爪部49、49がリテーナ保持部23の第1の一対の係合窓41、41内に入り込み、係合窓41、41の軸方向他端部と抜け止め係合するように、リテーナ保持部23内に押し込まれて嵌め付けられている。なお、それぞれの係合窓41、43の幅又は周方向長さは、係合爪部49の周方向長さと等しくなるように又はほぼ等しくなるように設定されている。
【0020】
操作アーム63、63から係合スリット67、67まで延びる、リテーナ5の対向している断面円弧状の内面69、69はそれぞれ、軸方向一方側に向かって中心又は中心軸方向にほぼテーパ状に傾斜しているが、相手パイプ57を操作アーム63、63の操作端部65、65側からリテーナ5の本体部53内に挿入すると、相手パイプ57の環状係合突部59がリテーナ5のテーパ状の内面69、69と、操作アーム63及び本体部53の境界位置で当接するように構成されている。なお、図2及び図3中符号71は、リテーナ保持部23の内周面に一体的に形成され、リテーナ5の本体部53の切欠状凹部61内に位置してリテーナ5の回り止めを行う回り止め突出部であり、この回り止め突出部71は、4つの係合窓41、43に対応して4つ設けられているが、一つの係合窓41及び一つの係合窓43に対応して2つだけ設けてもよい。また、リテーナ5は、リテーナ保持部23内で軸方向一方側に最もずれると、軸方向一端部が環状当接面39(あるいは樹脂ブッシュ35の環状端面37)と当接又はほぼ当接するように構成されている。
【0021】
図5はクイックコネクタ1を相手パイプ57に接続した状態を示す断面図である。
【0022】
操作アーム63、63の操作端部65、65側からリテーナ5の本体部53内に挿入されて、すなわちクイックコネクタ1にリテーナ保持部23の軸方向他端開口73から挿入されて嵌め付けられた相手パイプ57は例えば金属製であり、軸方向一方側の外周面に環状係合突部59が設けられることにより構成された挿入端部75を有しているが、環状係合突部59がリテーナ5の本体部53の内面を押し広げて進行し、係合スリット67、67に嵌り込んでスナップ係合するまでクイックコネクタ1あるいはコネクタ本体3(パイプ挿入部7)に押し込まれている。相手パイプ57は、環状係合突部59がリテーナ5の本体部53の係合スリット67、67に嵌り込んでスナップ係合することにより、クイックコネクタ1に対して抜け止めされ、また挿入止めされる。すなわち、軸方向に位置決めされる。相手パイプ57あるいは挿入端部75の軸方向一端は、Oリング31、29を通過して、連絡部27内に達していて、相手パイプ57(より具体的には相手パイプ57の挿入端部75の環状係合突部59よりも軸方向一方側)とクイックコネクタ1(より具体的にはシール保持部25)との間はこのOリング29、31により密封され、相手パイプ57の挿入端部75の環状係合突部59よりも軸方向一方側は、相手パイプ57の挿入端部75の外径とほぼ同一の内径を有する樹脂ブッシュ35及び連絡部27内にガタが生じないように挿入されている。
【0023】
図6はクイックコネクタ1でリテーナ5の取り付け方向を変更した場合を示す図である。
【0024】
例えば、リテーナ5を第1の一対の係合窓41を用いてリテーナ保持部23に取り付けておくと、クイックコネクタ1を用いて樹脂チューブ15と相手パイプ57とを接続したときに、クイックコネクタ1が配置される配管スペースが狭く、リテーナ5の操作アーム63を操作しにくいときには、リテーナ5を第2の一対の係合窓43を用いて、すなわち、リテーナ5の係合爪部49が係合窓43内に入り込み、この係合窓43と抜け止め係合するように、リテーナ保持部23に嵌め付けておくことができる。第2の一対の係合窓43を用いたリテーナ5のリテーナ保持部23への嵌め付けは、第1の一対の係合窓41を用いたリテーナ5のリテーナ保持部23への嵌め付けの場合と同様にして行うことができる。第2の一対の係合窓43を用いると、第1の一対の係合窓41を用いた場合と比較して、一対の操作アーム63の配置位置(例えばコネクタ本体3あるいはパイプ挿入部7に対する配置位置)を周方向で90度ずらすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明のクイックコネクタは、クイックコネクタが配置される配管スペースの状態に応じてリテーナの回転角度位置を調整できるので、自動車のエンジンルームなどでの配管接続に適したものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るクイックコネクタの斜視図である。
【図2】クイックコネクタの断面図である。
【図3】コネクタ本体の斜視図である。
【図4】クイックコネクタに用いられるリテーナの斜視図である。
【図5】クイックコネクタを相手パイプに接続した状態を示す断面図である。
【図6】リテーナの取り付け方向を変更した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 クイックコネクタ
5 リテーナ
7 パイプ挿入部(パイプ接続部)
9 樹脂チューブ接続部
15 樹脂チューブ
23 リテーナ保持部
41、43 係合窓
49 係合爪部
53 本体部(リテーナ本体)
57 相手パイプ
63 操作アーム(操作部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一方側にチューブと接続されるチューブ接続部を有し、軸方向他方側にリテーナ保持部が形成された筒状のパイプ接続部と、前記リテーナ保持部に保持されて相手パイプと係合し、この相手パイプを相対的に抜け止めするリテーナと、を備え、前記リテーナは、環状の又はほぼ環状のリテーナ本体と、このリテーナ本体の径方向対称個所に設けられた一対の保持突出部と、この一対の保持突出部に対応して前記リテーナ本体に形成された一対の操作部と、を有し、前記一対の保持突出部が前記リテーナ保持部の径方向対称個所に形成された一対の係合窓と係合することにより前記リテーナ保持部に保持されるように形成され、かつ、前記一対の操作部を操作することにより前記係合窓と前記保持突出部との係合が解除されるように形成されている、クイックコネクタであって、
前記チューブ接続部は、前記パイプ接続部に屈曲状態で接続形成され、
前記一対の係合窓は、第1の一対の係合窓及び第2の一対の係合窓の2組形成され、前記第1の一対の係合窓と前記第2の一対の係合窓とは互いに周方向に90度ずれて設けられていて、前記第1の一対の係合窓又は前記第2の一対の係合窓のいずれか一方を選択して前記リテーナの前記保持突出部を係合させることができるように構成されている、ことを特徴とするクイックコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−151159(P2008−151159A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336593(P2006−336593)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】