説明

クエン酸カルシウム微粒子および乳酸カルシウムを含んでいる粒子状組成物

【課題】高い量のカルシウムを含有する粒子状組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、平均直径0.1μm〜20μmを有するクエン酸カルシウム微粒子および乳酸カルシウムを含んでいる粒子状組成物であって、該組成物が平均直径25μm〜1mmを有する粒子の形態をしており、乾燥重量当たりの乳酸カルシウムとクエン酸カルシウムとの重量比が80:20〜30:70であり、かつ、乳酸カルシウムがクエン酸カルシウム微粒子のためのポリマー性でない凝集剤である、粒子状組成物に関する。本発明はさらに、クエン酸カルシウム微粒子を含んでいる乳酸カルシウムの水性溶液が、スプレー乾燥されて粒子状組成物にされるところの粒子状組成物を製造する方法、該粒子状組成物をカルシウム強化剤として使用する方法、および栄養物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クエン酸カルシウム微粒子および乳酸カルシウムを含んでいる粒子状組成物に関する。本発明は、このような粒子状組成物を製造する方法、当該組成物を食品および飲料に使用する方法、ならびに栄養物にも関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウムを含有する組成物は、食品および飲料中にそのカルシウム含有量を高めるために普通に使用されている。
【0003】
Nestle社の特許文献1は、アルカリ性カルシウム源、たとえば水酸化カルシウム、酸化カルシウム、または炭酸カルシウムと、乳酸およびクエン酸の混合物との相互作用によって形成された準安定乳酸−クエン酸カルシウム錯体を記載している。該混合物は飲料を強化するために使用される。実施例において該錯体は清澄な溶液の形で調製されている。
【0004】
特許文献2は、準安定クエン酸リンゴ酸カルシウム塩である粒子状組成物を記載している。クエン酸とリンゴ酸との水性組成物にカルシウム塩を添加し、そして反応混合物を乾燥し、任意的にそれに続いて1ミクロン未満の粒子サイズまで磨砕することによって、該組成物は得られることができる。
【0005】
特許文献3は、クエン酸をカルシウム化合物と混合し、該混合物に乳酸を添加し、その混合物をブレンドして水和物を準備し、そして該水和物を乾燥することによって製造されるクエン酸−乳酸2カルシウム錯体を記載している。これらの組成物はカルシウム栄養補助食品として使用されるが、食品および飲料中への使用には適していない。
【0006】
特許文献4は、濃縮されたクエン酸リンゴ酸カルシウムを含んでいる清澄な液状甘味料組成物を記載している。さらなるカルシウムが、乳酸カルシウムを使用して系に添加されることができる。
【0007】
特許文献5は、アルカリ性カルシウム源、たとえば水酸化カルシウム、酸化カルシウム、または炭酸カルシウムと、乳酸およびクエン酸の混合物との相互作用によって形成された準安定乳酸−クエン酸カルシウム錯体を記載している。該混合物は飲料を強化するために使用される。実施例において該錯体は清澄な溶液の形で調製されている。
【0008】
特許文献6は、可溶性濃厚な冷凍または冷蔵クエン酸リンゴ酸カルシウム調製物を記載している。乳酸がカルシウム源として使用されることができる。
【0009】
特許文献7は、カルシウム源を含有していてもよい体重管理飲料を記載しており、該カルシウム源は乳酸クエン酸カルシウムであることができる。該飲料組成物は乾燥形態で調製されることができる。
【0010】
特許文献8は、可溶性カルシウム塩、好ましくは乳酸カルシウムと、クエン酸アルカリ金属塩、好ましくはクエン酸カリウムとから形成された錯体を記載している。生成物は乳酸−クエン酸カルシウム錯体またはクエン酸−乳酸カルシウム錯体であると考えられている。該錯体は清澄な溶液の形をしている。
【0011】
特許文献9は、魚肉すり身の品質を改良するための、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、および乳酸カルシウムを含んでいる組成物を記載している。
【0012】
非特許文献1は、粒子の形態をした乳酸カルシウムまたはクエン酸カルシウムの組成物を記載している。ポリマーの助けを借りて乳酸カルシウム溶液およびクエン酸カルシウム溶液をスプレー乾燥することによって、該粒子は形成される。しかし、この方法は非常に効率的であるというわけではない。何故ならば、クエン酸カルシウムは低い濃度においてのみスプレー乾燥されることができ、これは経済的に望ましくなく、また乳酸カルシウムは本質的に低いカルシウム含有量を有するからである。さらにその上、この方法はポリマーをカプセル化剤として必要とし、これは原価を増加させ、また多くの場合食料品中には望まれておらず、さらに低濃度のクエン酸カルシウムを含有する供給原料は、スプレー乾燥方法を経済的に関心を引かないものにする。
【0013】
特許文献10は、乳酸カルシウムとクエン酸カルシウムとの混合物を得るための間接的な方法を記載している。クエン酸ナトリウムが乳酸カルシウムに添加され、これが処理されてその水性溶液となる。この溶液が塩化カルシウムのような凝固剤とともに用いられ、豆乳に添加される。この方法は粒子状物質を生成せず、したがって最終需要者、すなわち食品または飲料の製造者においてのみ採用されることができる。言うまでもなく、この方法はそのまま飲食に供される製品を販売する場合には不適当であり、また大規模な使用にも不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第01/22838号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,186,965号明細書
【特許文献3】米国特許第5,075,499号明細書
【特許文献4】国際公開第94/08471号パンフレット
【特許文献5】国際公開第99/51114号パンフレット
【特許文献6】欧州特許第781756号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0121158号明細書
【特許文献8】欧州特許第875153号明細書
【特許文献9】欧州特許第394453号明細書
【特許文献10】特開昭60−87753号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】F.Onedaら、Powder Technology、2003年、第130巻、377〜384ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術に表された方法および製品には、様々な問題が付随している。従来技術においては、高い量のカルシウムを含有する粒子状組成物への必要性が存在する。これらの組成物は、良好な処理特性、たとえば良好な流動特性および配量特性を示すような粒子サイズを有さなければならない。他方において、該組成物は良好な分散挙動および溶解挙動も有さなければならない。さらに、経済的に許容されるような様式で、組成物を製造することが可能でなければならない。組成物は、飲料および食品中への工業的規模での容易な施与に適していなければならず、また優れた風味および口当たりを提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
平均直径0.1μm〜20μmを有するクエン酸カルシウム微粒子、および乳酸カルシウムを含んでいる粒子状組成物であって、該組成物が平均直径25μm〜1mmを有する粒子の形態をしており、乾燥重量当たりの乳酸カルシウムとクエン酸カルシウムとの重量比が80:20〜30:70であり、かつ、乳酸カルシウムがクエン酸カルシウム微粒子のためのポリマー性でない凝集剤である、粒子状組成物を提供することによって、上記の問題が解決されることができることが発見された。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粒子状組成物は数多くの利点を有する。第一に、組成物の粒子サイズは、それが良好な粉体特性、たとえば良好な流動性を有すること、配量の不都合がないこと、および粉塵発生の不都合がないことを有するようなものである。他方において、微粒子の形態をしたクエン酸カルシウムの存在の故に、該製品の口当たりは非常に良好である。さらに、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムの双方とも食品中への使用を認可されており、したがってこれらの化合物の物理的混合物の使用は法規制上の問題を生じさせない。カルシウム、乳酸塩、およびクエン酸塩を含有する他の組成物、たとえば乳酸クエン酸カルシウム錯体の場合にはそうでない可能性がある。本発明の組成物は高いカルシウム含有量を示す。さらに、本発明に従う組成物を食品および飲料中に使用することは、追加のカルシウムの供給と良好な風味および良好な口当たりとを兼ね備えることが発見された。1の実施態様では、本発明の組成物はフルーツに基づいた飲料(フルーツジュース等)に使用され、その場合に特に良好な風味をもたらすことが発見された。何らかの理論に縛られることを望むわけではないが、本発明に従う製品によって与えられる良好な風味および良好な口当たりは、飲料中の水性環境と接触すると、乳酸カルシウムが溶解してクエン酸カルシウムの微粒子を残し、これは非常に小さいので、より大きい粒子が使用されたときに生じうるザラザラした口当たりを有さないという事実によってもたらされると考えられる。これは他の食品についても当てはまる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好まれる実施態様では、本発明の組成物は平均直径50μm〜150μmを有する粒子から成る。
【0020】
粒子状組成物は、平均直径0.1μm〜20μm、好ましくは1〜10μmを有するクエン酸カルシウム微粒子を含んでいる。
【0021】
組成物の粒子は、任意の形態、たとえば非晶質および/または結晶質の粒子の形態をしていることができる。好適な結晶形態はクエン酸カルシウム四水和物(Ca(C・4HO)および乳酸カルシウム一水和物(Ca(C・HO)を含む。
【0022】
1の実施態様では、本発明に従う組成物はリンゴ酸塩10重量%未満、特にリンゴ酸塩5重量%未満、さらにより特にはリンゴ酸塩2重量%未満を含有する。一層より特には、組成物はリンゴ酸塩を実質的に含まない、すなわち、リンゴ酸塩が存在するとしても、その存在が普通の処理では排除されることができないところの量の汚染物質として存在する。リンゴ酸塩の存在は、クエン酸カルシウム微粒子の形成に有害な影響を与えることがあると考えられる。
【0023】
1の実施態様では、本発明の粒子状組成物は、乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムから実質的に成る。この文脈において「実質的に成る」の文言は、該組成物が、製品の特性または性能に実質的に影響を及ぼす量において他の成分を含有していないことを意味する。1の実施態様では、本発明に従う組成物は、クエン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムから本質的に成る。すなわち、この実施態様では、組成物は、その存在が普通の処理では排除されることができないところの量の汚染物質としてのみ他の成分を含有する。当業者には明らかであるように、「本質的に成る」または「実質的に成る」の文言によって、水の存在は排除されない。本発明に従う粒子状組成物は、水含有量を一般に2〜13%、特に5〜10%有し、該水含有量は重量減少が終了してしまうまでの115℃におけるハロゲンランプの加熱によって測定される。
【0024】
本発明は、本発明の粒子状組成物を使用して得られることができる栄養物にも関する。したがって、本発明は、本発明の粒子状組成物を含んでいる栄養物に関する。栄養物が水を含有する場合には、たとえば含水食品または飲料の場合には、乳酸カルシウムの少なくとも一部は組成物中に存在する水の中に溶解することになる。したがって、本発明は、平均直径0.1ミクロン〜20ミクロンを有するクエン酸カルシウム微粒子および溶解された乳酸カルシウムを含んでいる栄養物にも関する。上で説明された選択物はこの実施態様にも当てはまる。
【0025】
本発明の他の面は、当該組成物をつくる方法に関する。粒子状組成物をつくるための任意の適当な方法が使用されることができるけれども、経済的性能および手順の容易さの観点から、スプレー乾燥方法が非常に適していることが発見された。
【0026】
したがって、好適な方法は、クエン酸カルシウム微粒子を含んでいる乳酸カルシウムの水性溶液が、スプレー乾燥されて粒子としての組成物にされるところの粒子状組成物を製造する方法を含む。温度、酸性度、および加えられる高エネルギー混合についての最適条件を選択することによって、この方法は最適化されることができ、かつその製品は所望の機能を有するように微調整されることができる。かくしてこの方法を実施するための好まれる条件は、70〜100℃、最も好ましくは約85℃の温度を使用することである。最適の酸性度条件は、普通にはpH3.5〜8.0の範囲、最も好ましくはpH約5である。
【0027】
あるいは、乳酸、クエン酸、ならびに酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび/または炭酸水素カルシウムを混合することによって、出発溶液は得られることができる。乳酸溶液と、所要量の酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび/または炭酸水素カルシウムとの予混合物を調製し、それに続いてクエン酸溶液を添加することも可能である。
【0028】
好ましくは、上述の方法のうちのいずれか1における混合の間、析出するクエン酸カルシウム微粒子のサイズを最小化するためにクエン酸カルシウムの過飽和を直ちにもたらすために激しい混合が加えられる。回分様式で、あるいはインライン系によって連続的に、上述の溶液または懸濁物の混合は実施されることができる。
【0029】
驚いたことに、本発明者らは、クエン酸カルシウムの析出の間に乳酸/乳酸塩が存在すると、それが実質的により小さいクエン酸カルシウム微粒子をもたらすという意味において好ましい効果を有することを発見した。
【0030】
微粒子クエン酸カルシウムが十分に小さくない場合には、追加の処理、たとえば湿式粉砕または従来技術で知られた任意の他の粒子サイズ低減方法が使用されて所要の粒子サイズを得ることができる。
【0031】
スプレー乾燥方法では、スプレー乾燥工程の間に粒子が形成される。得られる(クエン酸カルシウム微粒子を含有する)粒子をさらに大きくすることが通常、有益である。より大きい粒子を得るための凝集方法が周知である。スプレー乾燥工程の間に、このような凝集段階を適用することが好まれる。
【0032】
本発明の方法は、クエン酸カルシウム微粒子を含んでいる乳酸カルシウムの水性溶液を使用する。クエン酸カルシウム微粒子を含有するこのような出発溶液は、乳酸とクエン酸との水性溶液を、カルシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩のうちの少なくとも1で処理することによって容易に調製されることができる。食品および飲料中への、特にミルクおよびフルーツ飲料中へのカルシウム強化剤として、本発明の組成物は適している。
【0033】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例1】
【0034】
乳酸クエン酸カルシウム液体の調製
【0035】
1リットルのビーカーに以下の成分、すなわち脱塩水409グラム、クエン酸一水和物104グラム、88%L−乳酸117グラムが添加された。これらの成分の完全な溶解後に、固形Ca(OH)約75グラムがゆっくりと添加され、その間、反応混合物は激しく撹拌された。撹拌条件は、各羽根が2.5cmである4枚羽根インペラを用いて2000RPMであった。
【0036】
Ca(OH)は5分間未満の間に連続的に添加され、混合物のpHを約5.0に調整するために最後の部分はゆっくりと添加された。Ca(OH)の添加の間にpHは1.3から5.0になった。温度が室温から約75℃まで上った。得られた液体は白色、不透明、かつわずかに粘性であった。
【実施例2】
【0037】
乳酸クエン酸カルシウム液体の調製
【0038】
Ca(OH)が水中懸濁物として添加されたことが違うほかは、実施例1に従う実験が実施された。物質の量は、脱塩水100グラム、クエン酸一水和物118グラム、88%L−乳酸139グラム、およびCa(OH)の30重量%懸濁物417グラムであった。温度が室温から約70℃まで上った。得られた液体は白色、不透明、かつわずかに粘性であった。
【実施例3】
【0039】
乳酸クエン酸カルシウム液体の調製
【0040】
2リットルのバッフル付き容器に、まずCa(OH)の40重量%懸濁物782グラムが充填された。この懸濁物に88%乳酸347グラムが水142グラムで希釈されてゆっくりと添加された。反応の後、溶解された乳酸カルシウムおよび懸濁されたCa(OH)を含有するこの混合物の温度は70℃であった。続いて、クエン酸一水和物295グラムおよび水142グラムを混合することによってつくられたクエン酸の溶液約437グラムが容器に加えられ、その間混合物は激しく撹拌された。撹拌条件は、各羽根が2cmである2式の6枚羽根インペラを用いて1250RPMであった。
【0041】
クエン酸の添加の間、pHが監視され、そしてpHが約5.0まで下がったときにクエン酸の添加が止められた。最終混合物の温度は約80℃に保たれた。得られた液体は白色、不透明、かつわずかに粘性であった。
【実施例4】
【0042】
乳酸クエン酸カルシウム液体の調製
【0043】
容器中で、以下の液体(A)が、すなわち水32kg、Ca(OH)の8kg、および88%乳酸9.8kgを添加し混合することによって調製された。この液体は、乳酸カルシウムを溶解状態に保つために80℃に保たれ、かつ過剰のCa(OH)を懸濁状態に保つために連続的に撹拌された。別の容器中で、クエン酸一水和物50kgおよび水32kgを加え混合することによって、クエン酸溶液が調製された。
【0044】
液体Aおよびクエン酸溶液の双方が蠕動ポンプによって、24,000RPMに設定された高エネルギー混合機装置(Ultraturrax UTL 25基本的インライン)を内蔵する小混合室(容積26ml)に導入された。クエン酸溶液の流量は167g/分であった。液体Aの流量は、混合室からの吐出物がpH5.0に調整されるような流量に設定された。
【0045】
混合室からの液状吐出物は清澄であり、これはすべてのCa(OH)が溶解されかつ中和されたことを表していた。混合室からの吐出物は集められ、そして数秒間以内に不透明になった。これはクエン酸カルシウムの急速な結晶化および/または析出を表していた。
【0046】
得られた液体は白色、不透明、かつわずかに粘性であった。
【実施例5】
【0047】
乳酸クエン酸カルシウム液体の調製
【0048】
実施例4におけるのと同様な実験が実施された。しかし、容器Aは、kg当たり88%乳酸144グラム、クエン酸一水和物123グラムおよび水342グラムの混合物を含んでいた。容器BはCa(OH)の30重量%スラリーを含んでいた。
【0049】
混合室からの液状吐出物は清澄であり、これはすべてのCa(OH)が溶解されかつ中和されたことを表していた。混合室からの吐出物は集められ、そして数秒間以内に不透明になった。これはクエン酸カルシウムの急速な結晶化および/または析出を表していた。
【0050】
得られた液体は白色、不透明、かつわずかに粘性であった。
【実施例6】
【0051】
乳酸クエン酸カルシウム液体のスプレー乾燥
【0052】
上述の得られたわずかに粘性の液体は、実験室スプレー乾燥機(Lab Plant Spray Drier SD−04)中で入口温度260℃および出口温度93℃を用いてか、あるいはパイロットスプレー乾燥機(Anhydro PSD52)中で並流2流体ノズル、空気圧力3バール、入口温度240℃および出口温度95℃を用いて、スプレー乾燥された。
【0053】
双方の条件下におけるスプレー乾燥は、微細な、白色の、乾燥粉体をもたらした。
【実施例7】
【0054】
粒子サイズおよび組成の分析
【0055】
粒子サイズ
Malvern Mastersizer 2000またはMalvern Mastersizer S Long Bed型式2.15を使用するレーザー回折によって、粒子サイズは測定された。両測定機は、粉体を分析するためのドライセルおよび懸濁物を分析するためのウェットセルを備えていた。
【0056】
さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)写真が乾燥粉体から撮られた。
【0057】
クエン酸カルシウム粉体の粒子サイズは、以下の様々な方法によって測定された。
【0058】
方法A. 実験1、2および3から得られた液体が0.2μm上でろ過された。フィルター上の固形残留物がエタノールですすがれ、そして室温で乾燥された。得られた粉体がドライセルレーザー回折によって測定された。固形残留物が主にクエン酸カルシウムから成り、他方、ろ液は主に乳酸カルシウムを含有することを、HPLC分析が確認した。実験1、2および3からの乾燥された残留物の平均粒子サイズ、すなわちD(v、0.5)は、5〜15μmであった。SEM写真がこれらの観察結果を裏付けた。
【0059】
方法B.実験1、2、3および4からのスプレー乾燥されたサンプルがドライセルレーザー回折によって測定された。すべてのサンプルが5〜15μmのD(v、0.5)を有していた。SEM写真がこれらの観察結果を裏付けた。これらのサンプルは乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムの双方を含有するけれども、粒子サイズはクエン酸カルシウムを表している。というのは、方法AおよびBが同じような結果を示したからである。
【0060】
方法C.実施例4として実施された実験からのスプレー乾燥されたサンプルが、水に溶解されて乳酸カルシウムの溶液およびクエン酸カルシウムの懸濁物をもたらした。クエン酸塩の粒子サイズが、クエン酸カルシウム粒子の溶解を避けるために、飽和クエン酸カルシウム溶液中でウェットセルレーザー回折によって測定された。すべてのサンプルが5〜15μmのD(v、0.5)を有していた。
【0061】
方法D.工業的試作の間に、ワイドボディー型凝集スプレー乾燥機を使用して乳酸クエン酸カルシウム液体が乾燥された。得られた凝集された粉体が篩分によって分析された。粒子の少なくとも90重量%が105〜420ミクロンの直径を有していた。これはドライセルレーザー回折によって裏付けられた。この粉体中のクエン酸カルシウム粒子のサイズが、飽和クエン酸カルシウム溶液中でウェットセルレーザー回折によって測定された。乳酸カルシウムの溶解後に、残留するクエン酸カルシウム粒子は6〜7ミクロンの平均粒子サイズD(v、0.5)を有していた。
【0062】
実験室的にスプレー乾燥されたサンプルの組成
クエン酸および乳酸がHPLCによって測定され、そして乳酸カルシウムおよびクエン酸カルシウムとして再計算された。実施例4の方法によって製造されたサンプルは、クエン酸カルシウム43.6%、乳酸カルシウム47.2%および湿分9.4%(ハロゲン乾燥機)を含有していた。カルシウムは滴定によって測定され、それは18.9%であるようであった。HPLCはクエン酸塩および乳酸塩のピークのみを示し、さらなる不純物を示さなかった。
【実施例8】
【0063】
クエン酸カルシウム粒子サイズへの高エネルギー混合の効果
【0064】
実施例2として実施された一連の実験において、Ca(OH)懸濁物の添加の間、混合の激しさが、様々な撹拌速度を使用することによって変えられた。混合エネルギーを増加することに加えて1の実験において、高エネルギー混合機(Ultra Turrax T25)が容器中に追加的に挿入された。粒子サイズへの様々な撹拌条件の効果が下の表に示されている。

【実施例9】
【0065】
クエン酸カルシウムの粒子サイズへの乳酸の効果
【0066】
実施例3として実施された実験において、乳酸が除かれて純粋なクエン酸カルシウムの製造とされた。使用された化学薬品の量は、水908g、クエン酸一水和物443gおよびCa(OH)の265gであった。得られた懸濁物をスプレー乾燥した後、粒子サイズがドライセルレーザー回折によって測定された。
【0067】
粒子サイズD(v、0.5)は14.3μmであったが、他方において、実施例3において製造されたサンプルは7.5μmという実質的により小さい粒子サイズD(v、0.5)を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均直径0.1μm〜20μmを有するクエン酸カルシウム微粒子、および乳酸カルシウムを含んでいる粒子状組成物であって、該組成物が平均直径25μm〜1mmを有する粒子の形態をしており、乾燥重量当たりの乳酸カルシウムとクエン酸カルシウムとの重量比が80:20〜30:70であり、かつ、乳酸カルシウムがクエン酸カルシウム微粒子のためのポリマー性でない凝集剤である、粒子状組成物。
【請求項2】
組成物の90%超が、平均直径50μm〜300μmを有する粒子から成っている、請求項1に従う粒子状組成物。
【請求項3】
クエン酸カルシウム微粒子が、平均直径1μm〜10μmを有する、請求項1または2に従う粒子状組成物。
【請求項4】
非晶質および/または結晶質の形態を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う粒子状組成物。
【請求項5】
クエン酸カルシウム微粒子を含んでいる乳酸カルシウムの水性溶液が、スプレー乾燥されて粒子状組成物にされる、請求項1〜4のいずれか1項に従う粒子状組成物を製造する方法。
【請求項6】
組成物の粒子が、凝集されて該組成物のより大きい粒子にされる、請求項5に従う方法。
【請求項7】
組成物粒子が、スプレー乾燥の間に凝集される、請求項6に従う方法。
【請求項8】
スプレー乾燥をするための、クエン酸カルシウム微粒子を含んでいる乳酸カルシウムの水性溶液が、乳酸およびクエン酸と、カルシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩のうちの少なくとも1とを反応させることによって製造される、請求項5〜7のいずれか1項に従う方法。
【請求項9】
引き続いてクエン酸を添加する、請求項8に従う方法。
【請求項10】
スプレー乾燥をするための溶液が、70〜100℃およびpH3.5〜8に維持される、請求項5〜9のいずれか1項に従う方法。
【請求項11】
クエン酸と、カルシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、および炭酸水素塩のうちの少なくとも1との反応が、高エネルギー混合下に実施される、請求項5〜10のいずれか1項に従う方法。
【請求項12】
食品および飲料中のカルシウム強化剤として、請求項1〜4のいずれか1項に従う粒子状組成物を使用する方法。
【請求項13】
粒子状組成物が、フルーツに基づいた飲料中のカルシウム強化剤として使用される、請求項12に従う方法。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか1項に従う粒子状組成物を含んでいる栄養物。
【請求項15】
平均直径0.1μm〜20μmを有するクエン酸カルシウム微粒子および溶解された乳酸カルシウムを含んでいる栄養物。
【請求項16】
飲料である、請求項15に従う栄養物。
【請求項17】
食品である、請求項15に従う栄養物。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれか1項に従う組成物を栄養物と一緒にすることによって得られることができる栄養物。
【請求項19】
栄養物が飲料または含水食品である、請求項18に従う栄養物。

【公表番号】特表2010−512735(P2010−512735A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540772(P2009−540772)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063865
【国際公開番号】WO2008/071757
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(306003419)ピュラック バイオケム ビー.ブイ. (40)
【Fターム(参考)】