説明

クッション体及びその製造方法

【課題】良好な通気性を確保でき、大きな接着強度を得ることが可能なクッション体提供する。
【解決手段】網状体からなるメインパッド3と、メインパッド3に積層されるサブパッド5と、メインパッド3及びサブパッド5の少なくとも着座側を被覆する表皮7とを備える。サブパッド5が不織布からなり、メインパッド3、サブパッド5及び表皮7がホットメルト接着剤4,6によって接着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートや家具用シート、その他のシートに用いられるクッション体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シート等に用いられるクッション体は、パッドが発泡ウレタンによって形成され、このパッドを表皮が被覆した構造となっている。表皮はスプレー状又はシート状のホットメルト接着剤を用いてパッドに接着されることによりパッドを覆うものである。特許文献1には、着座時のクッション性を向上させた従来のクッション体が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されているクッション体は、メインパッドと、サブパッドと、これらを被覆する表皮とによって形成されるものである。サブパッドはメインパッドの着座部分に重ねられて使用される。メインパッド及びサブパッドがいずれも発泡ウレタンによって形成されるが、メインパッドの硬度に対しサブパッドが低硬度に成形されている。このクッション体は、メインパッドとサブパッドとの間にホットメルト接着剤を挟み込むと共に、メインパッド及びサブパッドと、これらを覆う表皮との間にホットメルト接着剤を挟み込み、全体を加熱してホットメルト接着剤を溶融することによりメインパッド、サブパッド及び表皮を一体化させることにより製造されている。
【0004】
このようなクッション体はメインパッドに対しサブパッドが低硬度となっているため、着座時のクッション性を向上させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−122494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたクッション体は、クッション性を向上させることができるが、メインパッド及びサブパッドが発泡ウレタンによって形成されるため、通気性に劣る問題を有している。この通気性に対し、メインパッド及びサブパッドとして網状体を用いることが考えられる。網状体はループ状の繊維を絡め合わせた状態で圧縮することより形成されるため、この網状体をメインパッド及びサブパッドとして用いることにより通気性を向上させることが期待できる。
【0007】
しかしながら、網状体はカール状の繊維を絡めた集合体であり、共に網状体からなるメインパッドとサブパッドとを接着する場合、これらが点付けになるため、大きな接着強度を得ることができない。このため振動や衝撃等が作用すると、メインパッドとサブパッドとが分離し易く、信頼性に劣る問題を有している。
【0008】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、良好な通気性を確保でき、しかも大きな接着強度を得ることが可能なクッション体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクッション体は、網状体からなるメインパッドと、メインパッドに積層されるサブパッドと、前記メインパッド及びサブパッドの少なくとも着座側を被覆する表皮とを備え、前記サブパッドが不織布からなり、前記メインパッド、サブパッド及び表皮がホットメルト接着剤によって接着されていることを特徴とする。
【0010】
上記クッション体において、前記ホットメルト接着剤はウェブ状の形態又は不織布状の形態であることが好ましい。
【0011】
本発明のクッション体の製造方法は、網状体からなるメインパッドにホットメルト接着剤を挟んで不織布からなるサブパッドを積層し、前記メインパッド及びサブパッドの少なくとも着座側にホットメルト接着剤を挟んで表皮を重ねて覆った後、加熱によってホットメルト接着剤を溶融することにより前記メインパッド、サブパッド及び表皮を同時に接着することを特徴とする。
【0012】
上記クッション体の製造方法において、前記ホットメルト接着剤をウェブ状の形態又は不織布状の形態で用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクッション体によれば、メインパッドを形成する網状体及びサブパッドを形成する不織布の双方が通気性を有した材質であるため、クッション体全体で良好な通気性を確保することができる。又、サブパッドが不織布のため、繊維からなるメインパッドの網状体と大きな接着面積を確保することができ、メインパッドとサブパッドとが大きな接着強度で接着される。このためメインパッドとサブパッドとの分離がなくなり、信頼性を向上させることができる。
本発明のクッション体の製造方法によれば、網状体からなるメインパッドにホットメルト接着剤を挟んで不織布からなるサブパッドを積層し、ホットメルト接着剤を溶融してメインパッドとサブパッドとを接着するため、メインパッドとサブパッドとを簡単に接着することができ、クッション体を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のクッション体の分解断面図である。
【図2】本発明の一実施形態のクッション体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2は本発明の一実施形態のクッション体1を示し、図1は分解断面図、図2は断面図である。クッション体1は図2に示すようにメインパッド3と、サブパッド5と、表皮7とを備えている。
【0016】
メインパッド3はクッション体1の本体部を形成するものであり、図示する平板形状だけでなく、クッション体1の使用部位に応じて適宜形状が設定される。例えば、クッション体1を車両用シートのシートクッションに用いる場合、クッション体1は着座者の尻部が当接するメイン部及びメイン部の左右両側で上方に盛り上がるように設けられて尻部を左右で支えるサイド部とを有する形状に形成され、クッション体1を車両用シートのシートバックに用いる場合、クッション体1は着座者の背中が当接する背当たり部及び背当たり部の左右両側で前方に盛り上がるように設けられた左右の支持部とを有する形状に形成される。
【0017】
メインパッド3は全体が網状体によって形成されている。網状体は、樹脂からなる細い多数本の繊維をループ状に曲げた状態で相互に絡み合わせ、この絡み合ったループ状の繊維を加熱して熱変形させながら圧縮させることにより形成された構造体であり、着座者を支承できる機械的強度を有している。この網状体としては、特開平8−61414号公報に記載された網状構造体を用いることができる。メインパッド3をこのような網状体とすることにより、着座者の荷重を受けることができるだけなく、良好な通気性を有したものとすることができる。メインパッド3が通気性を有するため、0.05〜0.3g/cm程度の密度を有した網状体を用いることが良好である。
【0018】
サブパッド5はメインパッド3の少なくとも片面に積層されるものであり、この実施形態ではメインパッド3の上面に積層されている。サブパッド5は不織布によって形成される。不織布は繊維を織ることなく絡み合わせてシート状とすることにより形成された材料である。このように繊維の集合体によって不織布が形成されることにより不織布は良好な通気性及び適当に撓むことが可能な可撓性を有している。
【0019】
又、不織布は布状となっており、相手部材と面接触で接触することができる。従って、不織布からなるサブパッド5を網状体からなるメインパッド3に積層した状態では、サブパッド5がメインパッド3に面接触するため、メインパッド3と良好な接触状態となる。このため、サブパッド5をメインパッド3に接着する際には、サブパッド5とメインパッド3とが大きな接着面積を確保することができ、大きな接着強度で相互に接着された状態となる。かかるサブパッド5としては、100〜300g/m程度の目付けを有した不織布を使用することができる。
【0020】
表皮7はメインパッド3及びサブパッド5の少なくとも着座側を被覆するように設けられる。この実施形態では、サブパッド5の上面5aがクッション体1の着座側となっており、表皮7はサブパッド5の上面5aを被覆するように設けられる。この場合、表皮7は着座側を覆う大きさであれば良く、サブパッド5よりも大きな面積を有したものを使用することができる。このようにサブパッド5よりも大きな面積を有した表皮7は、サブパッド5の上面5aを覆うだけなく、サブパッド5の外周よりも外側に延びるため、表皮7の外周部分7bがサブパッド5の外周縁及びメインパッド3の外周縁を覆った状態となる。このように表皮7がサブパッド5の上面5aだけなくサブパッド5やメインパッド3の外周縁を覆うことにより、クッション体1の外観を向上させることができる。7aは着座側であるサブパッド5の上面5aを被覆する表皮7の着座部分である。
【0021】
表皮7は通常の自動車用シート等に用いられている表皮を用いることができる。例えば、表皮7としては、400〜600g/m程度の目付けを有した布材や皮材を使用することができる。
【0022】
以上のメインパッド3、サブパッド5及び表皮7は、ホットメルト接着剤4,6によって接着される。ホットメルト接着剤4はメインパッド3とサブパッド5とを接着するものであり、メインパッド3とサブパッド5との間に配置される。ホットメルト接着剤6はサブパッド5と表皮7とを接着するものであり、サブパッド5と表皮7との間に配置される。
【0023】
ホットメルト接着剤4,6は、ウェブ状又は不織布状の形態で用いられる。ウェブ状又は不織布状のホットメルト接着剤4,6は、空気流通が良好であり、ホットメルト接着剤4,6の加熱溶融を確実且つ容易に行うことができる。ウェブ状又は不織布状のホットメルト接着剤4,6は、薄いシート状となっており、メインパッド3、サブパッド5及び表皮7の間に挟み込みが容易となっている。又、接着前において、ホットメルト接着剤4,6は接着力が失活しており、メインパッド3、サブパッド5及び表皮7の間への挟み込みが容易となっている。ホットメルト接着剤4及び6は、80〜160℃の熱風を供給したり、プレス型を同程度に加熱することにより溶融し、この溶融によって接着力が発現される。
【0024】
次に、この実施形態のクッション体1の製造を図1を参照して説明する。網状体からなるメインパッド3上にホットメルト接着剤4を載置し、ホットメルト接着剤4上に不織布からなるサブパッド5を載置して積層する。又、着座側となるサブパッド5の上面5aにホットメルト接着剤6を載置し、ホットメルト接着剤6を挟むように表皮7を同接着剤6に重ねて積層する。ホットメルト接着剤6は表皮7と略同様な面積を有したものが用いられ、これによりホットメルト接着剤6は表皮7の全面に対応して設けられ、表皮7の外周部分7bをサブパッド5やメインパッド3の外周縁に接着することが可能となる。
【0025】
以上のようにメインパッド3上にホットメルト接着剤4を載置し、ホットメルト接着剤4上にサブパッド5を載置し、サブパッド5上にホットメルト接着剤6を載置し、ホットメルト接着剤6上に表皮7を載置した構造の積層体は、クリップ等によって部材の相互位置ずれを防止される。そして、この状態でプレス型(図示省略)内にセットされ、プレス型でのプレス状態で蒸気等の熱媒体により加熱される。加熱によりホットメルト接着剤4及び6が溶融する。ホットメルト接着剤4及び6が溶融することにより、メインパッド3上にサブパッド5が接着され、この接着と同時にサブパッド5の上面5aとサブパッド5及びメインパッド3の外周縁とに対して表皮7が接着される。
【0026】
このような接着では、ホットメルト接着剤4,6の同時溶融による同時接着がなされるため、接着時に不用意な力が作用することがなく、シワが発生することなく表皮7を接着することができる。又、ホットメルト接着剤4,6を1回の加熱で同時に溶融するため、製造工程が簡単となると共に製造時間を短縮することができる。
【0027】
接着後のクッション体1は図1に示すように、網状体からなるメインパッド3に不織布からなるサブパッド5が接着され、メインパッド3、サブパッド5の着座側を表皮が被覆状に接着された構造となっている。このような構造では、メインパッド3及びサブパッド5が通気性を有しているため、クッション体1の全体が良好な通気性を有したものとなる。又、良好な通気度を有しているため、水濡れしても乾きが早い特性を有したクッション体1とすることができる。さらに、サブパッド5が不織布によって形成されているため、メインパッド3の網状体と大きな接着面積を確保することができる。このためメインパッド3とサブパッド5とを大きな接着強度で接着することができ、メインパッド3とサブパッド5との不用意な分離がなくなって信頼性を向上させることができる。
【0028】
次に、この実施形態によって得られるクッション体1の通気性の具体的な数値を説明する。通気度試験は、JIS L1096に準じたフラジール式により測定したものである。
【0029】
0.111g/cmの密度の網状体を厚さ15mmに切断して平板状のメインパッド3を作製した。このメインパッド3単品の通気度は、上記通気度試験から638cc/cm・secであった。又、199g/mの目付けとなっている不織布を厚さ8mmに切断して薄板状のサブパッド5を作製した。このサブパッド5単品の通気度は、通気度試験から359cc/cm・secであった。さらに468g/mの目付けとなっている織物を厚さ2mmに切断して薄皮状の表皮7を作製した。この表皮7単品の通気度は289cc/cm・secであった。なお、比較例として不織布からなるサブパッド5に代えて、スラブウレタンからなるスラブパッドを用いた。このスラブウレタンは密度が0.073g/cmであり、厚さ8mmに切断してスラブパッドとして用いた。
【0030】
次に、メインパッド3とサブパッド5との間にホットメルト接着剤4を挟み込み、サブパッド5と表皮7との間にホットメルト接着剤6を挟み込み、プレス型内で100℃に加熱してホットメルト接着剤4及び6を溶融してメインパッド3,サブパッド5、表皮7を接着してクッション体1を作製した。又、スラブウレタンをサブパッドに用いた比較例のクッション体を同様にして作製した。この実施形態のクッション体1及び比較例のクッション体に対して通気度試験を行った。通気度試験の結果、この実施形態の通気度は、260cc/cm・secであり、比較例の通気度は、23cc/cm・secであり、この実施形態のクッション体1が良好な通気度を有していることを確認した。
【符号の説明】
【0031】
1 クッション体
3 メインパッド
4,6 ホットメルト接着剤
5 サブパッド
7 表皮

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状体からなるメインパッドと、メインパッドに積層されるサブパッドと、前記メインパッド及びサブパッドの少なくとも着座側を被覆する表皮とを備え、前記サブパッドが不織布からなり、前記メインパッド、サブパッド及び表皮がホットメルト接着剤によって接着されていることを特徴とするクッション体。
【請求項2】
前記ホットメルト接着剤はウェブ状の形態又は不織布状の形態であることを特徴とする請求項1記載のクッション体。
【請求項3】
網状体からなるメインパッドにホットメルト接着剤を挟んで不織布からなるサブパッドを積層し、前記メインパッド及びサブパッドの少なくとも着座側にホットメルト接着剤を挟んで表皮を重ねて覆った後、加熱によってホットメルト接着剤を溶融することにより前記メインパッド、サブパッド及び表皮を同時に接着することを特徴とするクッション体の製造方法。
【請求項4】
前記ホットメルト接着剤をウェブ状の形態又は不織布状の形態で用いることを特徴とする請求項3記載のクッション体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−217713(P2012−217713A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88229(P2011−88229)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】