説明

クライミング架台の取付け装置

【課題】クライミング架台の設置に伴う鉄骨梁の補強作業に要する手間とコストを削減することができるクライミング架台の取付け装置を提供する。
【解決手段】本発明の第1の取付け装置30は、アウトリガーを鉄骨梁に連結固定する連結手段40と、鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数のジャッキ50とを備える。また、本発明の第2の取付け装置31は、上記連結手段40と、鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数の補強ユニット60とを備える。補強ユニット60は、下フランジ上に箱状鋼板を複数積み重ねて形成した高さ調整ユニット61と、高さ調整ユニット61と上フランジとの間に介装されるジャッキ65とから構成され、上下フランジ間の距離に応じて、箱状鋼板の個数を調節可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワークレーンを支持するクライミング架台を建物の鉄骨梁に取付ける装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高層、超高層建物の施工に使用されるタワークレーンとして、クレーンマストクライミング方式とフロアクライミング方式のものが知られている。クレーンマストクライミング方式のタワークレーンは、建物の外部地盤にクレーンの基礎が構築され、躯体工事の進捗に伴いクレーンマストを上方に延長してクレーン本体をクライミングさせていくものである。一方、フロアクライミング方式のタワークレーンは、建物の内部において建物の躯体に支持され、躯体工事の進捗に伴ってその全体を順次上方に盛り替えていくものである。これらのうちクレーンマストクライミング方式は、建物の全長に及ぶ長大なクレーンマストとそれを支持するための水平ステーが必要となりコストアップとなる、また、クレーン設置の地上ヤードが必要となるといったコスト・敷地形状等の制約がある。このため、超高層建物を都市部で施工するような場合には、フロアクライミング方式が採用されることが多い。
【0003】
上述したフロアクライミング方式では、建物躯体を構成する本設梁間あるいは仮設梁間にクライミング用の架台(以下、省略して「クライミング架台」という)を設置し、このクライミング架台上にタワークレーンのクレーンマスト部分を載置することによってタワークレーンを建物躯体に支持させ、これより上方の階の柱や梁部材を揚重して建物の構築を行っている(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−59180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タワークレーンの鉛直荷重は非常に大きいため、建物躯体の鉄骨梁をそのまま利用したのでは、これらの荷重を支持しきれない場合が多い。このため、通常は、タワークレーンの荷重に耐えるように、クライミング架台を設置する鉄骨梁の上下フランジ間にスチフナ等の補強材を設置することにより梁の補強を行っている。しかしながら、この場合、補強材をフランジ間に取付ける溶接等の作業や、クレーンの盛り替え後にこれら補強材を撤去する作業に時間を要する上、撤去した補強材は再利用されず鉄スクラップとなるだけであり、これらの鉄スクラップを外部に搬出する作業を行わなければならず、補強材料の設置・撤去・搬出に相当な手間とコストを要していた。
【0006】
また、構築する建物によって梁成が異なるため、クライミング架台を設置する鉄骨梁の梁成に適合した補強材をその都度用意する必要があり、汎用性に欠けるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑み、クライミング架台の設置に伴う鉄骨梁の補強作業に要する手間とコストを削減することができる躯体補強装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係るクライミング架台の取付け装置は、タワークレーンのクレーンマストを支持する基台と、該基台の両端部に突設されるアウトリガーとを備えたクライミング架台を、建物の鉄骨梁に取付ける装置であって、前記鉄骨梁と、該鉄骨梁上に載置した前記アウトリガーとを連結固定する連結手段と、前記鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、前記アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数のジャッキと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に係るクライミング架台の取付け装置は、タワークレーンのクレーンマストを支持する基台と、該基台の両端部に突設されるアウトリガーとを備えたクライミング架台を、建物の鉄骨梁に取付ける装置であって、前記鉄骨梁と、該鉄骨梁上に載置した前記アウトリガーとを連結固定する連結手段と、前記鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、前記アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数の補強ユニットと、を備え、前記補強ユニットは、前記下フランジ上に箱状鋼板を複数積み重ねて形成した高さ調整ユニットと、該高さ調整ユニットと前記上フランジとの間に介装されるジャッキとから構成され、前記上下フランジ間の距離に応じて、前記箱状鋼板の個数を調節可能としたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係るクライミング架台の取付け装置は、上記請求項2において、前記高さ調整ユニットの隣接する前記箱状鋼板同士をボルトにより連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクライミング架台の取付け装置によれば、クライミング架台のアウトリガーを支持する鉄骨梁の上下フランジ間に複数のジャッキを介装し、これらのジャッキを鉄骨梁の補強材として作用させたことで、従来のようにスチフナ等の補強材を設置する必要がなくなる。また、タワークレーンの盛り替えの際には、ジャッキを縮退させることによって鉄骨梁から簡単に取り外すことができる。その結果、鉄骨梁のフランジ間に補強材を取付ける作業及びこれらを撤去する作業に要する手間を低減させることができる。また、撤去したジャッキは再利用することが可能であるため、補強材としてスチフナ等を使用していた従来のように、クレーンの盛り替えごとに鉄スクラップが出ることもない。従って、鉄スクラップを外部に搬出する作業も不要となる。さらに、鉄骨梁の上下フランジ間の距離に応じてジャッキを伸長させて高さの調節を行うことで、上下フランジ間の距離に拘わらず鉄骨梁の補強を行うことが可能となり、従来のように鉄骨梁の梁成に適合した補強材をその都度用意する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明の第1のクライミング架台の取付け装置における好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、建築中の建物(図示を省略)における所定階の鉄骨梁1にクライミング架台20を設置し、このクライミング架台20にタワークレーン10を支持させた状態を示す図である。また、図2は、図1に示したクライミング架台20の設置部分を拡大して示した図である。図1に示すタワークレーン10は、クレーン本体11とクレーンマスト12とを備え、躯体工事の進捗に伴ってクレーン本体11に搭載したクライミング機構(図示せず)を作動させ、クレーンマスト12とクレーン本体11とを交互に上昇させることにより、クレーン全体を順次上方に盛り替えていくフロアクライミング形式のものである。また、クライミング架台20の取付け対象となる鉄骨梁1は、上下フランジとウェブとから構成されるH型鋼である。なお、本実施の形態では、鉄骨梁1として本設梁を利用している。
【0014】
クライミング架台20は、図2に示すように、クレーンマスト12の底部に固定されたクレーンベース13を支持する一対の基台21a,21bと、この基台21a,21bを連結する垂直部材22と、各基台21a,21bの両端部に突設されたアウトリガー23a,23b,23c,23dとから構成されるものである。図2に示すように、アウトリガー23a及びアウトリガー23cはN−5階の鉄骨梁1a上に載置される一方、アウトリガー23b及びアウトリガー23dは、鉄骨梁1aに対向する鉄骨梁1b上に載置されている。
【0015】
図2には明示されていないが、アウトリガー23a,23b,23c,23dは、基台21a,21bの両端部において伸縮可能に設けられたものである。すなわち、鉄骨梁1に基台21a,21bを支持させる際には、図示しないアクチュエータを駆動させることによって各基台の両端部からアウトリガーを突出させる一方、タワークレーン10のクライミングを行う際には、アクチュエータの駆動によってアウトリガーを各基台の内部に縮退させるように構成してある。また、アウトリガー23a,23b,23c,23dを基台21a,21bに対して水平面内で回転可能に構成したものを適用することもできる。このタイプの場合、鉄骨梁1に基台21a,21bを支持させる際には、アクチュエータを駆動させることによりアウトリガーを外側に開いた位置に回転させてアウトリガーを突出させる一方、タワークレーン10のクライミングを行う際には、アクチュエータの駆動により、アウトリガーを外側に突出した位置から基台に対して90°回転させて、内側に折畳んだ位置に配置させる。
【0016】
図2に示すように、鉄骨梁1上に載置されたアウトリガー23a,23b,23c,23dは、それぞれ本実施の形態であるクライミング架台の取付け装置30(以下、省略して「取付け装置」という)によって鉄骨梁1に対して連結固定してある。図3は、図2において、アウトリガー23aを鉄骨梁1aに取付けた状態を矢印A方向から見た図であり、図4は図3の側面図である。
【0017】
本実施の形態である取付け装置30は、アウトリガー23aと鉄骨梁1aとを連結固定する連結手段40と、鉄骨梁1aを構成する上フランジ2及び下フランジ4間に着脱可能に介装される複数のジャッキ50とを備えて構成してある。
【0018】
連結手段40は、上部支持部材41、下部支持部材42及びボルト43から構成されるものである。上部支持部材41は、アウトリガー23aの幅方向長さよりも大きい寸法を有する板状の金具であり、アウトリガー23aの上面に、アウトリガー13aの幅方向に沿って設置されるものである。本実施の形態では、この上部支持部材41を、所定の間隔を置いて2個設置してある。また、下部支持部材42は、鉄骨梁1aの下フランジ4の幅方向長さよりも大きい寸法を有する板状の金具であり、鉄骨梁1aの下フランジ4の下面に、鉄骨梁1aの幅方向に沿って設置されるものである。本実施の形態では、この下部支持部材42を、所定の間隔を置いて2個設置してある。なお、上部固定部材41及び下部固定部材42には図示しないボルト挿通孔が設けてある。ボルト43は、その全長がアウトリガー13aの高さと鉄骨梁1aの高さ(梁成)との和よりも長い寸法を有するアンカーボルトを適用している。
【0019】
上記構成を有する連結手段40は、上述したボルト挿通孔を介してボルト43を上部固定部材41及び下部固定部材42との間に掛け渡し、ナット44で締め付けることによって、アウトリガー13a及び鉄骨梁1を挟み込み、両者を連結・固定する。なお、この連結手段40は、アウトリガー13aを鉄骨梁1aに連結・固定するとともに、躯体工事を行う際のタワークレーンによる引き抜き力に対抗する役割も有している。
【0020】
ジャッキ50は、鉄骨梁1aの上フランジ2及び下フランジ4との間の、アウトリガー13aの下方に位置する部位に着脱可能に介装され、自身を伸長させることで上下フランジを押すものである。すなわち、このジャッキ50は、クライミング架台20にタワークレーン10を支持させた際にタワークレーン10の鉛直荷重の一部を負担することで、タワークレーン10の荷重で鉄骨梁1aが潰れるのを防止する補強材としての役割を有するものである。ジャッキ50としては、ねじ式ジャッキや油圧式ジャッキ等、鉄骨梁1aの上下フランジ間に納まる寸法を有する一般的なものを適用することができ、タワークレーン10の荷重に応じて25t仕様、50t仕様、100t仕様等を適宜選択する。本実施の形態では、図3及び図4に示すように、台座51、ジャッキ本体52、昇降ボルト53及び天板54とから構成されるねじ式ジャッキを適用しており、鉄骨梁1aのウェブ3を挟んでそれぞれ2個ずつ、合計4個のねじ式ジャッキを介装してある。鉄骨梁1aの上下フランジ2,4間の距離は建物等によって異なるが、上下フランジ間の距離に応じてジャッキ50の昇降ボルト53を昇降させて高さを調節する。
【0021】
なお、上記の説明ではアウトリガー23aを鉄骨梁1aに取付ける場合について説明したが、他のアウトリガー23b,23c,23dも同様にして、取付け装置30を用いて鉄骨梁1に取付けられる。
【0022】
次に、タワークレーン10のクライミングに伴い、上記の取付け装置30を用いてクライミング架台20を鉄骨梁1に取付ける手順及び取外す手順について説明する。
【0023】
図1に示すように、N−5階の鉄骨梁1に取付けたクライミング架台20にタワークレーン10を支持させた状態で所定階(例えばN階)までの躯体の施工を行った後、クレーン本体11を一時的に支持するためのクレーン本体受け梁(図示せず)を、N階の鉄骨梁1間に設置する。次いで、タワークレーン10のクライミング機構を操作して、クレーン本体11をクレーンマスト12に対して降下させ、クレーン本体11を上述したクレーン本体受け梁上に仮支持させる。
【0024】
クレーン本体11をN階のクレーン本体受け梁上に仮支持させた状態で、N−5階に設置されたクライミング架台20のアウトリガー23a,23b,23c,23dと鉄骨梁1とを連結する連結手段40のボルト止めを解除し、連結手段40を取り外す。そして、鉄骨梁1の上下フランジ間に介装されたジャッキ50を縮めてジャッキを取り外す。取付け装置30を撤去した後、アウトリガー23a,23b,23c,23dを基台内部に縮退させ、クライミング機構を操作してクレーンマスト12及びクライミング架台20をクレーン本体11に対して上昇させる。
【0025】
ここで、タワークレーン10を盛り替える階(例えばN−2階)の鉄骨梁1の上下フランジ間には、予めジャッキ50を介装しておく。このジャッキ50はN−5階で使用していたものを再利用することができる。クライミング架台20をN−2階まで上昇させた後、アウトリガー23a,23b,23c,23dを再び突出させて、これらをN−2階の鉄骨梁1に載置する。次いで、連結手段40を用いてアウトリガー23a,23b,23c,23dと鉄骨梁1とを連結固定する。この後、クライミング機構によりクレーン本体11をクレーンマスト12に対して上昇させ、N階のクレーン本体受け梁を撤去することにより、クライミングが完了する。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態の取付け装置30によれば、クライミング架台20のアウトリガー23a,23b,23c,23dを支持する鉄骨梁1の上下フランジ2,4間に複数のジャッキ50を介装し、ジャッキ50を鉄骨梁の補強材として作用させたことで、タワークレーン10の荷重によって鉄骨梁1が潰れることが防止されるため、従来のようにスチフナ等の補強材を設置する必要がなくなる。また、タワークレーン10の盛り替えの際には、ジャッキ50を縮めることにより鉄骨梁1から簡単に取り外すことができる。その結果、鉄骨梁1のフランジ間に補強材を取付ける作業及びこれらを撤去する作業に要する手間を低減させることができる。
【0027】
また、撤去したジャッキ50は再利用することが可能であるため、補強材としてスチフナ等を使用していた従来のように、クレーンの盛り替えごとに鉄スクラップが出ることもない。従って、鉄スクラップを外部に搬出する作業も不要となる。
【0028】
さらに、鉄骨梁1の上下フランジ2,4間の距離に応じてジャッキ50を伸長させて高さの調節を行うことで、上下フランジ2,4間の距離に拘わらず鉄骨梁1の補強を行うことが可能となる。
【0029】
次に、本発明の第2のクライミング架台の取付け装置における好適な実施の形態について説明する。なお、上述した第1の取付け装置と同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0030】
図5及び図6は、第2のクライミング架台の取付け装置31(以下、省略して「取付け装置31」という)を用いて、図2に示した基台21aのアウトリガー23aを鉄骨梁1に対して連結・固定した状態を示す側面図である。上述した第1の取付け装置30では、鉄骨梁1の上下フランジ間にジャッキ50を介装した構成としたが、本実施の形態の取付け装置31は、ジャッキ50に替えて以下に説明する補強ユニット60を上下フランジ間に介装した点が、第1の取付け装置30と異なっている。それ以外の構成は、第1の取付け装置30と同様である。
【0031】
図5及び図6に示すように、この取付け装置31は、アウトリガー23aと鉄骨梁1aとを連結固定する連結手段40と、鉄骨梁1aを構成する上フランジ2及び下フランジ4間に着脱可能に介装される複数の補強ユニット60とを備えて構成してある。
【0032】
補強ユニット60は、図5及び図6に示すように、鉄骨梁1aの上フランジ2及び下フランジ4との間の、アウトリガー13aの下方に位置する部位に介装されるものであり、下フランジ4上に載置される高さ調整ユニット61と、この高さ調整ユニット61と上フランジ4との間に設置されるジャッキ65とから構成されるものである。この補強ユニット60は、上述した第1の取付け装置30のジャッキ50と同様に、クライミング架台20にタワークレーン10を支持させた際にタワークレーン10の鉛直荷重の一部を負担し、タワークレーン10の荷重で鉄骨梁1aが潰れるのを防止する補強材としての役割を有している。本実施の形態では、この補強ユニット60を、鉄骨梁1aのウェブ3を挟んでそれぞれ2個ずつ、合計4個配置してある。
【0033】
高さ調整ユニット61は、複数の箱状鋼板62を積み重ねることにより形成したものである。この高さ調整ユニット61は、図5及び図6に示すように、鉄骨梁1の上下フランジ間の距離に応じて、下フランジ4上に積み重ねる箱状鋼板62の個数を調節可能としている。図7は、図6における補強ユニット60の設置部分を拡大して示した図、図8は箱状鋼板62の斜視図である。図8に示すように、箱状鋼板62は、上フランジ63a、ウェブ63b、下フランジ63cとからなる短尺のH型鋼材63と、このH型鋼材63の両側を覆う態様で、上下フランジ63a,63cの両端面に固着された2枚のカバープレート64とから構成されるものである。
【0034】
ジャッキ65は、高さ調整ユニット61の最上部の箱状鋼板62と鉄骨梁1の上フランジ2との間に介装され、自身を伸長させることで高さ調整ユニット61(すなわち下フランジ4)と上フランジ2を押すものである。ジャッキ65としては、上述した第1の取付け装置30で適用したジャッキ50よりも小型のねじ式ジャッキや油圧式ジャッキを適用することができ、タワークレーン10の荷重に応じて25t仕様、50t仕様、100t仕様等を適宜選択して使用する。本実施の形態では、図7に示すように、台座66、ジャッキ本体67、昇降ボルト68及び天板69とから構成されるねじ式ジャッキを適用している。なお、符号68aは、昇降ボルト68を回転させてジャッキ65を伸縮させるための回転用ロッド差込み孔である。
【0035】
上記構成を有する取付け装置31を用いてアウトリガー23a,23b,23c,23dを鉄骨梁1に取付ける場合には、予め鉄骨梁1の上下フランジ間に補強ユニット60を介装しておく。すなわち、下フランジ4上に箱状鋼板62を積み重ねて高さ調整ユニット61を形成した後、最上部の箱状鋼板62と鉄骨梁1の上フランジ4との間にジャッキ65を配置し、ジャッキ65の昇降ボルト68を昇降させることによって、補強ユニット60を上下フランジ2,4間に介装する。この後、鉄骨梁1上にアウトリガー23a,23b,23c,23dを載置し、連結手段40の上部支持部材41及び下部支持部材42によって鉄骨梁とアウトリガーを挟み込み、上部支持部材41及び下部支持部材42にボルト43を掛け渡して、両者を連結・固定する。
【0036】
一方、タワークレーン10の盛り替えのために取付け装置31を取り外す場合には、まず、連結手段40のボルト43をはずしてアウトリガー23a,23b,23c,23dと鉄骨梁1との連結を解除し、各アウトリガーを基台21a,21b内に縮退させて、基台を上昇させる。この後、鉄骨梁1の上下フランジ間に介装されたジャッキ65の昇降ボルト68を縮めて、ジャッキ65と高さ調整ユニット61を鉄骨梁1から取り外す。取り外した補強ユニット60は、盛り替える上階の鉄骨梁1の補強に再利用することができる。
【0037】
なお、必要に応じて箱状鋼板62の上下フランジ63a,63cにボルト孔を設け、図7に示すように、箱状鋼板62同士をボルト70によって連結してもよい。また、図示は省略するが、最下部の箱状鋼板62を鉄骨梁1の下フランジ4にボルト止めしてもよい。上記構成とすることで、補強ユニット60をより安定させて配置することができるようになり、箱状鋼板62が脱落するといった事態を防止することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態の取付け装置31によれば、クライミング架台20のアウトリガー23a,23b,23c,23dを支持する鉄骨梁1の上下フランジ2,4間に複数の補強ユニット60を介装し、補強ユニット60を鉄骨梁の補強材として作用させたことで、タワークレーン10の荷重によって鉄骨梁1が潰れることが防止されるため、従来のようにスチフナ等の補強材を設置する必要がなくなる。また、タワークレーン10の盛り替えの際には、補強ユニット60のジャッキ65を縮退させることにより鉄骨梁1から簡単に取り外すことができる。その結果、鉄骨梁1のフランジ間に補強材料を取付ける作業及びこれらを撤去する作業に要する手間を低減させることができる。
【0039】
また、本実施の形態の取付け装置31は、鉄骨梁の上下フランジ間の距離に応じて高さ調整ユニット61の箱状鋼板62の積み重ね個数を調節する構成とした。従って、鉄骨梁の上下フランジ間にジャッキのみを介装した第1の取付け装置30よりもさらに汎用性の高いものとなっており、あらゆる梁成の鉄骨梁に適用することが可能となる。その結果、従来のように鉄骨梁の梁成に適合した補強材をその都度用意する必要がなくなる。
【0040】
さらに、撤去した補強ユニット60(高さ調整ユニット61及びジャッキ65)は盛り替え時に再利用することが可能である。しかも、高さ調整ユニット61を複数の箱状鋼板62で構成したことで、上階への持ち運びを容易に行うことができる。
【0041】
なお、上述した実施の形態では、クライミング架台のアウトリガーを取付ける鉄骨梁として本設梁を利用したが、本設梁間に架け渡した仮設梁を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】建物の鉄骨梁に取付けられたクライミング架台にタワークレーンを支持させた状態を示す図である。
【図2】本発明の第1の取付け装置を用いて、クライミング架台のアウトリガーを鉄骨梁に対して連結・固定した状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図2に示す取付け装置を矢印A方向から見た図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】本発明の第2の取付け装置を用いて、クライミング架台のアウトリガーを鉄骨梁に対して連結・固定した状態の一例を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の取付け装置を用いて、クライミング架台のアウトリガーを鉄骨梁に対して連結・固定した状態の一例を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の取付け装置における補強ユニットを拡大して示した図である。
【図8】図7に示した補強ユニットを構成する箱状鋼板の斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 鉄骨梁
2 上フランジ
3 ウェブ
4 下フランジ
10 タワークレーン
11 クレーン本体
12 クレーンマスト
13 クレーンベース
20 クライミング架台
21a,21b 基台
22 垂直部材
23a,23b,23c,23d アウトリガー
30,31 クライミング架台の取付け装置
40 連結手段
41 上部支持部材
42 下部支持部材
43 ボルト
44 ナット
50 ジャッキ
51 台座
52 ジャッキ本体
53 昇降ボルト
54 天板
60 補強ユニット
61 高さ調整ユニット
62 箱状鋼板
63 H型鋼材
64 カバープレート
65 ジャッキ
66 台座
67 ジャッキ本体
68 昇降ボルト
69 天板
70 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タワークレーンのクレーンマストを支持する基台と、該基台の両端部に突設されるアウトリガーとを備えたクライミング架台を、建物の鉄骨梁に取付ける装置であって、
前記鉄骨梁と、該鉄骨梁上に載置した前記アウトリガーとを連結固定する連結手段と、
前記鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、前記アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数のジャッキと、
を備えたことを特徴とするクライミング架台の取付け装置。
【請求項2】
タワークレーンのクレーンマストを支持する基台と、該基台の両端部に突設されるアウトリガーとを備えたクライミング架台を、建物の鉄骨梁に取付ける装置であって、
前記鉄骨梁と、該鉄骨梁上に載置した前記アウトリガーとを連結固定する連結手段と、
前記鉄骨梁を構成する上下フランジ間の、前記アウトリガーの下方に位置する部位に着脱可能に介装される複数の補強ユニットと、を備え、
前記補強ユニットは、
前記下フランジ上に箱状鋼板を複数積み重ねて形成した高さ調整ユニットと、該高さ調整ユニットと前記上フランジとの間に介装されるジャッキとから構成され、前記上下フランジ間の距離に応じて、前記箱状鋼板の個数を調節可能としたことを特徴とするクライミング架台の取付け装置。
【請求項3】
前記高さ調整ユニットの隣接する前記箱状鋼板同士をボルトにより連結したことを特徴とする請求項2に記載のクライミング架台の取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−132474(P2009−132474A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307786(P2007−307786)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】