説明

クラッチ装置

【課題】小トルク領域では充分に細やかな制御を行うことができ、しかも最大伝達トルクは充分に大きくできるクラッチ装置を得る。
【解決手段】クラッチ装置のクラッチディスクアセンブリ20を、中央のディスクプレート21と、その外周から半径方向に距離をおいて配置されて円周方向に波形に折曲された大扇形部23を取付脚部24によりディスクプレートに連結した複数の大径クッショニングプレート22と、この大径クッショニングプレートとディスクプレートの間に配置されて円周方向に波形に折曲された小扇形部27を取付脚部28によりディスクプレートに連結した複数の小径クッショニングプレート26と、大扇形部の両側に固着した複数の大径フェーシングプレート25と、大扇形部23の両側に固着した複数の小径フェーシングプレート29により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ係合時のショックを緩和するためにクッショニングプレートの両側にフェーシングプレートを配置したクラッチディスクアセンブリを使用したクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなクッショニングプレートの両側にフェーシングプレートを配置したクラッチディスクアセンブリによれば、クラッチ係合時のショックをある程度緩和することはできる。しかしながら、クラッチ装置の最大伝達トルクを所定値より大きくするためにはクッショニングプレートのばね定数の下限が制限されるので、クラッチの小トルク領域でのクラッチディスクアセンブリへの押圧力の変化量に対する伝達トルクの変化量を充分に小さくすることができない。従って小トルク領域においては必ずしも充分に細やかな制御を行うことができないという問題がある。
【0003】
このような問題を解決する手段としては、例えば特許文献1(特開平9−287621号参照)に開示された技術がある。この技術では、クラッチディスク組立体の入力部の外周に互いに対向するように装着される1対の第1及び第2プレート部材と、第1及び第2プレート部材のそれぞれの外表面に固定された摩擦部材とを備えており、第1及び第2プレート部材の少なくとも一方には、複数段のクッション特性が得られるように波加工が施されている。この特許文献1の技術によれば、その図5に (I)及び(II)で示すような2段のクッション特性が得られるので、小トルク領域においては充分に細やかな制御を行うことができ、しかも最大伝達トルクは充分に大きいクラッチ装置を得ることができる。
【特許文献1】特開平9−287621号公報(段落〔0007〕、段落〔0019〕〜〔0020〕、図1〜図5)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1とは異なる技術的思想により複数段のクッション特性が得られるようにして、このような問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明によるクラッチ装置は、機枠に回転自在に支持され回転軸線と直交する摩擦面が形成されたクラッチハウジングと、このクラッチハウジング内に摩擦面との間に距離をおいて軸線方向移動自在に設けられた環状のプレッシャプレートと、クラッチハウジング内に同軸的に回転自在に設けられてクッショニングプレートの両側にフェーシングプレートを配置した周辺部が摩擦面とプレッシャプレートの間に位置されるクラッチディスクアセンブリと、プレッシャプレートを摩擦面に対し前進後退させてクラッチディスクアセンブリをクラッチハウジングの摩擦面に係合離脱させる係脱機構よりなるクラッチ装置において、クラッチディスクアセンブリは、中央に位置するディスクプレートと、弾性のある金属板により形成され、ディスクプレートの外周から半径方向に距離をおいて円周方向に沿って配置された複数の大扇形部と、この各大扇形部の内縁の一部より内方に延び先端部がディスクプレートに固着された取付脚部よりなり、各大扇形部は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲された大径クッショニングプレートと、弾性のある金属板により形成され、大径クッショニングプレートの大扇形部の内縁とディスクプレートの外周の間に円周方向に沿って配置されて半径方向の幅が大扇形部よりも小さい複数の小扇形部と、この各小扇形部の内縁の一部より内方に延び先端部がディスクプレートに固着された取付脚部よりなり、各小扇形部は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲された小径クッショニングプレートと、各大扇形部の両側に突出する各山部の少なくとも一部の頂面に固着された大径フェーシングプレートと、各小扇形部の両側に突出する各山部の少なくとも一部の頂面に固着されて半径方向の幅が大径フェーシングプレートよりも小さい小径フェーシングプレートよりなり、小扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数は大扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数よりも小であり、各小扇形部の両側面に固着された各小径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面は、各大扇形部の両側面に固着された各大径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面よりもそれぞれ外側に位置していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、クラッチディスクアセンブリは、各小扇形部の両側面に固着された各小径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面が各大扇形部の両側面に固着された各大径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面よりもそれぞれ外側に位置しているので、係脱機構により与える押圧力またはストロークを変化させて摩擦面に対しプレッシャプレートを前進後退させれば、クラッチハウジングとクラッチディスクアセンブリは、先ず各小径フェーシングプレートがクラッチハウジングと係合され、次いで各大径フェーシングプレートがクラッチハウジングと係合されて、クラッチ装置は連結される。小扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数は大扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数よりも小であるので、クラッチディスクアセンブリに対する係脱機構による押圧力の変化量に対するクラッチ装置に生じる伝達トルクの変化量は、小径フェーシングプレートだけがクラッチハウジングと係合されている間は小さく、大径フェーシングプレートがクラッチハウジングと係合された後は大きくなるという、2段のクッション特性が得られる。従って、小トルク領域においては充分に細やかな制御を行うことができ、しかも最大伝達トルクは充分に大きいクラッチ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図1〜図4により、本発明によるクラッチ装置の一実施形態の説明をする。この実施形態のクラッチ装置は自動車のエンジンと変速機の間に設けるクラッチ装置に適用したものであり、クラッチハウジング10と、その内部に回転自在に設けられたクラッチディスクアセンブリ20と、このクラッチディスクアセンブリ20をクラッチハウジング10に係合離脱させる係脱機構16により構成されている。クラッチハウジング10とクラッチディスクアセンブリ20は、エンジンのクランクケース及びこれに固定された変速機ケース(機枠)にそれぞれ軸受を介して互いに同軸的に支持された、エンジン出力軸13及び変速機入力軸14に連結されている。
【0008】
図3に示すように、クラッチハウジング10は、エンジン出力軸13の後端に同軸的にボルト止め固定された円盤状のフライホイール11と、その後面に回転軸線と直交するように形成された摩擦面10aの外周部にねじ止め固定された板金製のクラッチカバー12により構成され、クラッチカバー12の中央には大径の丸穴が形成されている。クラッチカバー12内には、摩擦面10aと相当な距離をおいて対向して、環状の厚板よりなるプレッシャプレート15が軸線方向移動自在に設けられている。プレッシャプレート15は、その外周に形成した複数の半径方向突出部15bが、クラッチカバー12の外周部に形成した複数の開口部12bから、円周方向に多少の隙間をおいて突出し、これによりプレッシャプレート15はクラッチカバー12とともに回転するように係合されている。一部の半径方向突出部15bとフライホイール11の間には小さいコイルスプリング(図示省略)が介装されて、プレッシャプレート15は摩擦面10aから離れる向きに付勢され、その背面に形成された突起部15aが次に述べるダイアフラムスプリング17の中間部に当接されて停止されている。
【0009】
クラッチディスクアセンブリ20をクラッチハウジング10に係合離脱させる係脱機構16は、図3に示すように、ダイアフラムスプリング17と、スラスト軸受18と、スリーブ19により構成されている。弾性のある薄い金属板よりなる環状で半径方向に延びる多数のスリット(図示省略)が内周側に形成されたダイアフラムスプリング17は、自由状態ではほゞ実線で示す形状であり、クラッチカバー12の外周部付近に円周方向に沿って形成された折曲部12aの内側に外周縁部が係合され、それより多少内側の部分がプレッシャプレート15の背面の突起部15aに当接されている。軸線方向から見てクラッチカバー12の中央の丸穴内に露出されるダイアフラムスプリング17の内周縁には、スラスト軸受18のアウタレースが抜け止め係合され、このスラスト軸受18のインナレースは変速機入力軸14の外周に軸線方向移動可能に設けたスリーブ19の先端部に取り付けられている。クラッチフォーク(図示省略)により加える押圧力を変化させてスリーブ19をクラッチディスクアセンブリ20に向けて前進後退させれば、ダイアフラムスプリング17はスラスト軸受18を介して実線で示す状態と二点鎖線17Aで示す状態の間で変形され、突起部15aを介してプレッシャプレート15は前進後退され、クラッチディスクアセンブリ20は次に詳述する周辺部の大径及び小径フェーシングプレート25,29が摩擦面10aとプレッシャプレート15の間に挟持されてクラッチディスクアセンブリ20はクラッチハウジング10に係合離脱される。
【0010】
次に、本発明の要部であるクラッチディスクアセンブリ20の説明をする。図1〜図3に示すように、このクラッチディスクアセンブリ20は、変速機入力軸14に連結される中央側のディスクプレート21と、このディスクプレート21の外周部に固着されるそれぞれ4枚の大径及び小径クッショニングプレート22,26と、この各大径及び小径クッショニングプレート22,26の両側面に固着されるそれぞれ6枚の大径及び小径フェーシングプレート25,29により構成されている。ディスクプレート21は円板状でその中心のボス部21aにより、変速機入力軸14の先端部に多少距離軸線方向移動のみ可能にスプライン係合されている。
【0011】
各クッショニングプレート22,26は弾性のある薄い金属板を打ち抜き成形して折り曲げ成形したものである。大径クッショニングプレート22は、図1においてディスクプレート21の手前側にリベット止めされる第1大径クッショニングプレート22Aと、反対側にリベット止めされる第2大径クッショニングプレート22Bよりなり、この両大径クッショニングプレート22A,22Bの違いは、形状が反対勝手である点だけなので、第1大径クッショニングプレート22Aだけにつき説明する。図1〜図3に示すように、各第1大径クッショニングプレート22Aは、大扇形部23とその内縁の一部より内方に延びる取付脚部24よりなり、大扇形部23の内縁の半径はディスクプレート21の外周の半径よりも相当大である。主として図2(a) の断面図に示すように、第1大径クッショニングプレート22Aの大扇形部23は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲され、図示の実施形態では、大扇形部23は両側に突出する各2つの台形の山部を有し、大扇形部23の両端は山部において終わっている。両端の山部は一方が長く他方が短く形成され、長い方の山部には後述するように大径フェーシングプレート25が固着されている。第1大径クッショニングプレート22Aの取付脚部24は、円周方向中間に位置しフライホイール11側に突出する山部と整列されて、大扇形部23から内方に延びている。
【0012】
各大径クッショニングプレート22には、それぞれ3個の扇形の大径フェーシングプレート25が固着されている。各大径フェーシングプレート25は、内半径が大扇形部23の内半径より多少小さく、外半径が大扇形部23の外半径より多少大きい摩擦材よりなる環状の板材を、多少の隙間を空けて円周方向に12等分したものである。3個の大径フェーシングプレート25は、大径クッショニングプレート22の取付脚部24と整列された山部と、その両側でそれと反対側に突出する各山部の平坦な頂面に、リベット25aによりそれぞれ固着されている。
【0013】
小径クッショニングプレート26は、大径クッショニングプレート22と同様、ディスクプレート21の手前側にリベット止めされる第1小径クッショニングプレート26Aと、反対側にリベット止めされる第2小径クッショニングプレート26Bよりなり、大径クッショニングプレート22の場合と同様、この両小径クッショニングプレート26A,26Bは、形状が反対勝手である点だけが異なっている。各第1小径クッショニングプレート26Aは、小扇形部27とその内縁の一部より内方に延びる取付脚部28よりなり、小扇形部27は、その外縁の半径が大扇形部23の内縁の半径より多少小さく、内縁の半径がディスクプレート21の外周の半径よりも多少大きく、半径方向の幅が大扇形部23の半径方向の幅より相当小さくなっている。主として図2(b) の断面図に示すように、第1小径クッショニングプレート26Aの小扇形部27は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲され、図示の実施形態では、小扇形部27は円周方向中央に位置して図1において手前側に突出する1つの台形の山部とそれと反対側に突出する2つの台形の山部を有し、小扇形部27の両端は各山部のほゞ中間位置で終わっている。第1小径クッショニングプレート26Aの取付脚部28は、円周方向中間に位置しフライホイール11側に突出する山部と整列されて、小扇形部27から内方に延びている。互いに反対側に突出する台形の山部の平坦な頂面の間の距離は、小径クッショニングプレート26の方が大径クッショニングプレート22よりも多少大である。また小扇形部27の波形の高さ方向におけるばね定数は、大扇形部23の波形の高さ方向におけるばね定数よりも小である。
【0014】
各小径クッショニングプレート26には、それぞれ3個の扇形の小径フェーシングプレート29が固着されている。各小径フェーシングプレート29は、内半径が小扇形部27の内半径より多少小さく、外半径が小扇形部27の外半径より多少大きく、半径方向の幅が大径フェーシングプレート25の幅より相当小さい摩擦材よりなる環状の板材を、大径フェーシングプレート25と同様、多少の隙間を空けて円周方向に12等分したものである。3個の小径フェーシングプレート29は、小径クッショニングプレート26の取付脚部28と整列された山部と、その両側でそれと反対側に突出する各山部の平坦な頂面に、リベット29aによりそれぞれ固着されている。
【0015】
それぞれ大径フェーシングプレート25が固着された各第1及び第2大径クッショニングプレート22A,22Bは、大扇形部23の内縁とディスクプレート21の外周との間に半径方向に相当な距離をおくように配置されて、各取付脚部24の内端部がそれぞれディスクプレート21の外縁部の手前側及び反対側にリベット22aにより固着される。これにより各大径クッショニングプレート22と各大径フェーシングプレート25は、それぞれ環状に整列されてディスクプレート21に固着される。この状態では、各大径クッショニングプレート22の大扇形部23の円周方向一端の長さが短い山部は、隣り合う大径クッショニングプレート22の大径フェーシングプレート25が固着された長さが長い山部の裏側に重ねて当接される。
【0016】
またそれぞれ小径フェーシングプレート29が固着された各第1及び第2小径クッショニングプレート26A,26Bは、小扇形部27が大径クッショニングプレート22の大扇形部23の内縁とディスクプレート21の外周の間に位置するように円周方向に沿って配置されて、各取付脚部28の内端部がそれぞれディスクプレート21の外縁部の手前側及び反対側にリベット26aにより固着される。これにより各小径フェーシングプレート29は、各大径フェーシングプレート25の内縁とディスクプレート21の外周の間に環状に整列されてディスクプレート21に固着される。この状態では、各小扇形部27の両端部は各大径クッショニングプレート22の取付脚部24の中間部の両面に重ねて当接されている。
【0017】
上述のように組み立てられたクラッチディスクアセンブリ20は、自由状態においては、図3に示すように、小径クッショニングプレート26の軸線方向両側に取り付けられた各小径フェーシングプレート29の軸線方向外端面は、大径クッショニングプレート22の軸線方向両側に取り付けられた各大径フェーシングプレート25の軸線方向外端面よりも多少外側に位置している。
【0018】
図3の実線で示すように、ダイアフラムスプリング17にスラスト軸受18からの押圧力が加わっていない自由状態では、小径クッショニングプレート26の軸線方向両側に固着された各小径フェーシングプレート29は、フライホイール11の摩擦面10a及びそれから離れる向きにコイルスプリング(図示省略)により付勢されたプレッシャプレート15から多少離れているので、クラッチ装置に生じる伝達トルクは0であり、エンジン出力軸13の回転は変速機入力軸14に伝達されない。
【0019】
この状態から、前述のように、係脱機構16により加える押圧力を変化させてプレッシャプレート15を摩擦面10aに対し前進させれば、クラッチハウジング10とクラッチディスクアセンブリ20は、先ず小径クッショニングプレート26の両側に固着された各小径フェーシングプレート29がクラッチハウジング10の摩擦面10aとプレッシャプレート15の間に当接して挟持されクラッチハウジング10とプレッシャプレート15の間に伝達トルクが生じ、次いで大径クッショニングプレート22の両側に固着された各大径フェーシングプレート25がクラッチハウジング10の摩擦面10aとプレッシャプレート15の間に当接して挟持されて、クラッチハウジング10とプレッシャプレート15の間にも伝達トルクが生じて、伝達トルクは増大される。
【0020】
小扇形部27の波形の高さ方向におけるばね定数は大扇形部23の波形の高さ方向におけるばね定数よりも小であるので、各小径フェーシングプレート29だけの当接によるクラッチディスクアセンブリ20に対する係脱機構16による押圧力の変化量に対するクラッチ装置に生じる伝達トルクの変化量は、図4に実線の特性Aで示すように小さい。次いで係脱機構16による押圧力が増大しストロークが増大して各大径フェーシングプレート25もクラッチハウジング10と係合されれば、大扇形部23の波形の高さ方向におけるばね定数は大きいので、各大径フェーシングプレート25の当接によるクラッチディスクアセンブリ20に対する係脱機構16による押圧力の変化量に対するクラッチ装置に生じる伝達トルクの変化量は、図4に実線の特性Bで示すように大きいものとなる。従って、小径フェーシングプレート29及び大径フェーシングプレート25の両者による、係脱機構16による押圧力の変化量に対するクラッチ装置に生じる伝達トルクの変化量は、特性Aと特性Bの和となり、図4に破線で示すように、前半部では小さく後半部では大きい2段の特性Cとなる。従って、小トルク領域においては充分に細やかな制御を行うことができ、しかも最大伝達トルクは充分に大きいクラッチ装置を得ることができる。
【0021】
なお以上においては、係脱機構16は操作部材18を介してダイアフラムスプリング17に加える押圧力を制御してクラッチ装置を作動させるものとして説明したが、このクラッチ装置は押圧力の代わりに操作部材18を介してダイアフラムスプリング17に加えるストロークを制御して作動させることもできる。
【0022】
上述した実施形態では、ノーマルオープンタイプのクラッチ装置につき説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、ノーマルクローズタイプのクラッチ装置にも適用可能である。また本発明は、デュアルクラッチタイプの自動変速機のクラッチに適用することも可能であり、さらに自動車のエンジンと変速機の間に設けるクラッチ装置以外のクラッチ装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるクラッチ装置の一実施形態に使用するクラッチディスクアセンブリの構造を示す平面図である。
【図2】図1の2a−2a線及び2b−2b線に沿って展開した断面図である。
【図3】本発明によるクラッチ装置の一実施形態の図1の3−3線に沿った断面図である。
【図4】図1に示す実施形態のクラッチディスクアセンブリにおける軸線方向押圧力に対する伝達トルクの変化特性を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10…クラッチハウジング、10a…摩擦面、15…プレッシャプレート、16…係脱機構、20…クラッチディスクアセンブリ、21…ディスクプレート、22…大径クッショニングプレート、23…大扇形部、24…取付脚部、25…大径フェーシングプレート、26…小径クッショニングプレート、27…小扇形部、28…取付脚部、29…小径フェーシングプレート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機枠に回転自在に支持され回転軸線と直交する摩擦面が形成されたクラッチハウジングと、このクラッチハウジング内に前記摩擦面との間に距離をおいて軸線方向移動自在に設けられた環状のプレッシャプレートと、前記クラッチハウジング内に同軸的に回転自在に設けられてクッショニングプレートの両側にフェーシングプレートを配置した周辺部が前記摩擦面とプレッシャプレートの間に位置されるクラッチディスクアセンブリと、前記プレッシャプレートを前記摩擦面に対し前進後退させて前記クラッチディスクアセンブリを前記クラッチハウジングの摩擦面に係合離脱させる係脱機構よりなるクラッチ装置において、
前記クラッチディスクアセンブリは、
中央に位置するディスクプレートと、
弾性のある金属板により形成され、前記ディスクプレートの外周から半径方向に距離をおいて円周方向に沿って配置された複数の大扇形部と、この各大扇形部の内縁の一部より内方に延び先端部が前記ディスクプレートに固着された取付脚部よりなり、前記各大扇形部は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲された大径クッショニングプレートと、
弾性のある金属板により形成され、前記大径クッショニングプレートの大扇形部の内縁と前記ディスクプレートの外周の間に円周方向に沿って配置されて半径方向の幅が前記大扇形部よりも小さい複数の小扇形部と、この各小扇形部の内縁の一部より内方に延び先端部が前記ディスクプレートに固着された取付脚部よりなり、前記各小扇形部は円周方向に沿って厚さ方向両側に突出する少なくとも各1つの台形の山部を有する波形に折曲された小径クッショニングプレートと、
前記各大扇形部の両側に突出する各山部の少なくとも一部の頂面に固着された大径フェーシングプレートと、
前記各小扇形部の両側に突出する各山部の少なくとも一部の頂面に固着されて半径方向の幅が前記大径フェーシングプレートよりも小さい小径フェーシングプレートよりなり、
前記小扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数は前記大扇形部の波形の高さ方向におけるばね定数よりも小であり、
前記各小扇形部の両側面に固着された前記各小径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面は、前記大扇形部の両側面に固着された前記各大径フェーシングプレートの自由状態における軸線方向の各外端面よりもそれぞれ外側に位置していることを特徴とするクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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