説明

クラッチ装置

【課題】本発明は、クラッチディスクの摩耗に対応して調節可能なクラッチ装置を提供する。
【解決手段】クラッチハウジング(1)に収容され、クラッチディスク(12)をプレッシャプレート(11)とフライホイール(10)によって挟持するクラッチ機構(3)と、プレッシャプレート(11)をクラッチ解放方向に移動させるフォーク(17)と、フォーク(17)に結合され、クラッチハウジング(1)の外部に突設されるロッド(21)と、クラッチハウジング(1)の外部でロッド(21)に連結するアウターレバー(30)と、アウターレバー(30)を揺動させることによりロッド(21)を回転させるアクチュエータ(40)と、を備え、アウターレバー(30)は、ロッド(21)に対する取付け角度が調整可能な調整機構によって、ロッド(21)に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチディスクの摩耗に対応して調節可能なクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるクラッチ装置は、摩擦材であるクラッチディスクをフライホイールとプレッシャプレートにより挟持して、動力の伝達を断続可能とした機構である。
【0003】
プレッシャプレートに連動するロッドには、ロッドの軸を中心として回転方向に揺動させるアウターレバーが連結されている。アウターレバーには、エア等のアクチュエータによって伸張するプッシュロッドが連結されている。アクチュエータがプッシュロッドを伸張させることにより、アウターレバーを揺動させてロッドを回転させ、クラッチを解放させる。
【0004】
クラッチディスクは使用により摩耗して厚さが変化する。そのため、クラッチの遊びが変化する。なお、クラッチが摩耗してクラッチの遊び量が0になった状態でクラッチを使用し続けると、クラッチの滑りの原因となり、クラッチディスクが焼損する原因となるため、クラッチの遊び調整が必要となる。
【0005】
クラッチの遊び調整として、リターンスプリングの防振カバーに摩耗インジケータを備え、クラッチディスクの摩耗を検出するもの(特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−089502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のようなクラッチ装置において、クラッチの遊びを調整した結果、ロッドに連結されるアウターレバーの角度が、当初の位置とは変化する。
【0008】
そのため、プッシュロッドとアウターレバーとの連結部分が、ロッドを中心とした円周に沿って移動する。このとき、アクチュエータから突出するプッシュロッドが、クラッチディスクが新品状態と比較して斜め方向に突出することとなる。この状態でクラッチの解放/締結を行うと、アクチュエータの内部のピストンのこじり角度が大きくなり、アクチュエータにオイル漏れ等の不具合を生じる慮がある。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、クラッチディスクの摩耗に対応して遊び調整を繰り返したとしても、アウターレバーの角度が変化せずアクチュエータの不具合を防止するクラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クラッチハウジングに収容され、クラッチディスクをプレッシャプレートとフライホイールによって挟持するクラッチ機構と、前記プレッシャプレートをクラッチ解放方向に移動させるフォークと、前記フォークに結合され、前記クラッチハウジングの外部に突設されるロッドと、前記クラッチハウジングの外部で前記ロッドに連結するアウターレバーと、前記アウターレバーを揺動させることにより前記ロッドを回転させるアクチュエータと、を備え、前記アウターレバーは、前記ロッドに対する取付け角度が調整可能な調整機構によって、前記ロッドに連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、ロッドに対するアウターレバーの取付け角度を調整可能に構成されているので、クラッチディスクが摩耗してロッドの位置が変化したとしても、アウターレバーの位置は初期位置から変化しない。これにより、アクチュエータにおけるオイル漏れ等の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態のクラッチ装置の説明図である。
【図2】本発明の実施形態のアウターレバー及びロッドの連結部分の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態のアウターレバーの取付角度を調整した後のクラッチ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態のクラッチ装置の説明図である。
【0015】
クラッチディスク12を介して図示しないエンジンの回転を変速機2に断続するクラッチ機構3がクラッチハウジング1に収容されることによりクラッチ装置が構成される。クラッチハウジング1に収容されるクラッチ機構3は、図1において点線で示される。
【0016】
プレッシャプレート11はコイルスプリング14によって押圧され、クラッチディスク12がフライホイール10に圧接する。フライホイール10はエンジンの回転軸に連結され、プレッシャプレート11は変速機2の入力軸に連結される。プレッシャプレート11によってクラッチディスク12がフライホイール10に圧接されているときに、エンジンの回転は、フライホイール10、クラッチディスク12及びプレッシャプレート11を経由して変速機2へと伝達される。
【0017】
クラッチハウジング1から突出するロッド21は、クラッチハウジング1の外部でアウターレバー30に連結されている。ロッド21の他方は、クラッチハウジング1の内部でフォーク17に連結されている。フォーク17は、シフター16に係合され、シフター16のエンジン側の端部にはレリーズベアリング15が接続されている。
【0018】
フライホイール10にはクラッチカバー18が接合されており、クラッチカバー18にレリーズレバー13が連結されている。レリーズレバー13の一方の端部は、レリーズベアリング15に係合しており、レリーズベアリング15の移動に伴って、クラッチカバー18の連結部18aを回転軸としてレリーズレバー13が揺動する。
【0019】
レリーズレバー13が揺動することによって、プレッシャプレート11がコイルスプリング14の押圧力に抗してフライホイール10から離れる側に移動する。これによりクラッチディスク12の圧接が解かれ、フライホイール10とクラッチディスク12とが分離し、エンジンと変速機2との間で動力の伝達が解放される。
【0020】
アウターレバー30には、連結部31を介してアクチュエータ40のプッシュロッド41が連結されている。アクチュエータ40がプッシュロッド41を延伸させることによりアウターレバー30がロッド21を軸として移動する。この結果、フォーク17がプレッシャプレート11を解放する。
【0021】
アウターレバー30には、連結部32を介してステー44が連結されている。ステー44には複数のスリット44aが形成されており、このスリット44aにリターンスプリング43が係合している。リターンスプリング43は、アクチュエータ40が作動していないときにアウターレバー30を引き戻す作用をする。リターンスプリング43は、スリーブ45に収容されている。
【0022】
このように構成されたクラッチ機構3において、クラッチディスク12が使用により摩耗すると、クラッチディスク12を押圧するプレッシャプレート11の軸方向の位置が変位する。これにより、クラッチの遊びが小さくなる。なお、クラッチが摩耗してクラッチの遊び量が0になった状態で使用し続けると、クラッチ滑りの原因となり、クラッチディスク12が焼損する原因となる。
【0023】
そこで、アウターレバー30の角度やアウターレバー30に連結されるプッシュロッド41の位置等によってクラッチディスク12の摩耗を検出し、クラッチディスク12の摩耗に応じてクラッチの遊びを調節していた。
【0024】
ところで、クラッチの遊びを調節した後は、クラッチを解放するときのフォーク17の作用点が変化し、フォーク17に連動するロッド21及びアウターレバー30の角度が、クラッチが摩耗していない初期位置から変化する。そのため、プッシュロッド41の連結部31が、ロッド21の軸を中心とした円周に沿って移動するので、プッシュロッド41の取付け角度が変化して、アクチュエータ40はプッシュロッド41を斜め方向に押し出すこととなる。この場合、アクチュエータ40の内部のピストンのこじり角度が大きくなり、オイル漏れ等の不具合を生じる慮がある。
【0025】
そこで、本発明の実施形態では、次に説明するような調整機構を備えることによって、アクチュエータ40の不具合を発生させないように構成した。
【0026】
図2は、アウターレバー30及びロッド21の連結部分の拡大図である。図2(A)は初期位置を示し、図2(B)はクラッチディスク12が摩耗限界に近づいた状態を示す。なお、図2において、フォーク17が点線で示されている。
【0027】
ロッド21は、クラッチハウジング1の外側に突接されている部分の端部に、スプライン加工がされている。アウターレバー30は、ロッド21との連結孔33に同様のスプライン加工が施されており、アウターレバー30とロッド21とがスプライン嵌合する。
【0028】
アウターレバー30の連結孔33は一部が開放しており、その開放部分を締め付けるためのボルト34及びナット35が、アウターレバー30に穿設されたボルト穴に締結される。
【0029】
このボルト34及びナット35を締結することによって、アウターレバー30がロッド21に固定される。また、ボルト34及びナット35を緩めることによって、アウターレバー30がロッド21から取外し可能となる。このような構成によって、ロッド21に対するアウターレバー30の取付け角度を調整できる調整機構が構成される。
【0030】
ロッド21の端面には、マーク21aが刻印されている。マーク21aは、クラッチディスク12が摩耗していない初期位置では、マーク21aがほぼ垂直方向上方を指すように設定される。
【0031】
また、アウターレバー30側にもマーク21aに対応するマーク30a及びマーク30bが刻印されている。マーク30aは初期位置を示す「NEW」の文字が刻印されている。マーク30bには、クラッチディスク12の摩耗限界位置を示す「WEAR」の文字が刻印されている。
【0032】
図2(A)は、クラッチディスク12が摩耗していない初期位置におけるロッド21とアウターレバー30とを示す。初期位置では、ロッド21のマーク21aに対して、アウターレバー30のマーク30aが合致する取付け角度によってアウターレバー30が取付けられる。マーク30aには「NEW」の文字が刻印されており、初期位置であることが容易に目視できる。
【0033】
クラッチディスク12は、経年変化により摩耗する。この摩耗のためにコイルスプリング14により押圧されてクラッチ締結状態にあるプレッシャプレート11が、初期位置と比較してエンジン側に移動する。これにより、クラッチを解放するときの遊びが小さくなるので、クラッチの摩耗に応じて遊び調節を行う。
【0034】
クラッチの遊び調節を行った後は、レリーズベアリング15、シフター16及びフォーク17に応動するロッド21の位置が変化する。
【0035】
そこで、クラッチディスク12が摩耗した場合は、ボルト34及びナット35を緩め、アウターレバー30をロッド21から取り外し、アウターレバー30の取付け角度を変更する。
【0036】
図2(B)は、クラッチディスク12が摩耗限界付近となったときのロッド21とアウターレバー30とを示す。クラッチディスク12が摩耗限界に近づいた場合は、ロッド21のマーク21aに対して、アウターレバー30のマーク30bが近づくこととなる。マーク30bには「WEAR」の文字が刻印されているので、クラッチディスク12の摩耗限界付近となって、クラッチディスク12の交換時期であることが容易に目視できる。
【0037】
このように、ロッド21のマーク21aと、アウターレバー30のマーク30a、30bによってクラッチディスク12の摩耗度合いを表示することにより、摩耗度表示部が構成される。
【0038】
図3は、クラッチディスク12が摩耗し、アウターレバー30の取付け角度を調整したときのクラッチ装置の説明図である。
【0039】
クラッチディスク12が摩耗し、ロッド21が回転してアウターレバー30の位置が変わった場合は、アウターレバー30をロッド21から取り外し、アウターレバー30が初期位置と同じ角度となるように調整する。
【0040】
この結果、アクチュエータ40から突設するプッシュロッド41及びアウターレバー30の位置関係は初期位置と変わらない状態となる。これにより、プッシュロッド41の移動方向は変化せず、プッシュロッド41を起因とするアクチュエータの不具合を防止することができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施形態では、ロッド21に対するアウターレバー30の取付け角度を調整できる調整機構を備えることによって、クラッチディスク12が摩耗してロッド21の位置が変化して遊び調整を繰り返したとしても、アウターレバー30の取付け角度は変化することがない。これにより、アクチュエータ40がプッシュロッド41を押し出すときの角度及び押出し長さが初期位置から変化しないため、アクチュエータ40におけるオイル漏れ等の不具合を防止することができる。
【0042】
また、ロッド21とアウターレバー30との調整機構は、スプラインによって連結されているので、調節が容易であると共に、ロッド21とアウターレバー30との取付け強度も十分に確保される。
【0043】
また、ロッド21の端部の頂点にはマーク21aが刻印されており、アウターレバー30には、マーク30a及び30bが刻印されている。これらのマークによって、ロッド21に対するアウターレバー30の取付け角度が容易に目視可能に構成されているので、クラッチディスク12の摩耗度合いを容易に目視することができる。
【0044】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
1 クラッチハウジング
2 変速機
3 クラッチ機構
21 ロッド
30 アウターレバー
40 アクチュエータ
41 プッシュロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッチハウジングに収容され、クラッチディスクをプレッシャプレートとフライホイールによって挟持するクラッチ機構と、
前記プレッシャプレートをクラッチ解放方向に移動させるフォークと、
前記フォークに結合され、前記クラッチハウジングの外部に突設されるロッドと、
前記クラッチハウジングの外部で前記ロッドに連結するアウターレバーと、
前記アウターレバーを揺動させることにより前記ロッドを回転させるアクチュエータと、を備え、
前記アウターレバーは、前記ロッドに対する取付け角度が調整可能な調整機構によって、前記ロッドに連結されていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
前記調整機構は、前記アウターレバーと前記ロッドとがスプラインにより連結されることによって構成されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記ロッドの端部の端面及び前記アウターレバーには、前記ロッドに対する前記アウターレバーの取付け角度により前記クラッチディスクの摩耗度を表示する摩耗度表示部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−127445(P2012−127445A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280605(P2010−280605)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】