説明

クランクプレス

【課題】駆動源に必要な容量を小さく抑えると共に工場において占有する面積を小さく抑え、かつ剛性を高く維持して、1台のクランクプレスによって、長尺状鋼板に対して2列の状態で製品を打抜くことができるクランクプレスを提供すること。
【解決手段】クランクシャフト2は、その軸方向を長尺状鋼板8の送り方向Fに向けた状態で、駆動源12による回転力を受けて回転する回転部14に対する両側に互いに平行に一対に配設してある。上型部61を配設したスライダー4及び下型部62を配設したテーブル5は、一対のクランクシャフト2に対応して一対に配設してある。送り方向Fの上流側に配設したクランクシャフト2と送り方向Fの下流側に配設したクランクシャフト2とは、横方向に互いにオフセットして配設してある。各スライダー4は、各クランクシャフト2に対する送り方向F及び横方向の四方に設けたスライドガイド3によってスライド支持してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパンチ及びダイス穴によって順次段階的な打抜き加工を行って製品を打抜くよう構成したクランクプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源による回転力をクランクシャフト及びコネクティングロッドを介して打抜き推力に変換して、成形素材に打抜き加工を行うクランクプレスがある。このクランクプレスにおいては、クランクシャフトの直下位置にパンチを配設し、パンチをダイス穴に対して進退させることにより、成形素材に打抜き加工を行っている。
例えば、特許文献1の複動プレスのスライド駆動装置においては、フレームの左右方向中心に対して対称に並列に配置した左右のクランク軸に対して、インナスライド及びアウタスライドをコネクチングロッドを介して設けることが開示されている。また、左右のクランク軸にそれぞれ設けたギヤが互いに噛合しており、一方のギヤを回転駆動し他方のギヤを従動回転させることによって、左右のクランク軸を回転させ、左右におけるインナスライド及びアウタスライドをスライドさせて種々の加工を行うことができる。また、左右のクランク軸及びギヤには、インナスライド及びアウタスライドの加振力を打ち消す方向に作用するバランスウエイトを設けている。これにより、装置の動的アンバランスを解消し、その高剛性化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−319972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、回転電機のステータコア、ロータコア等に用いる電磁鋼板の打抜き加工を行う際には、パンチ及びダイス穴によって順次段階的な打抜き加工を行って製品を打ち抜いている。そして、長尺状鋼板の長尺方向に対して順次段階的な打抜き加工を行うために、型部において複数のパンチ及びダイス穴を、長尺状鋼板を送る長尺方向に並ぶように設ける必要がある。
しかしながら、長尺状鋼板の長尺方向に直交する横方向に2列に並ぶ状態で打抜き加工を行う際に、1回の打抜き加工によって全体の打抜き加工を行うと、クランクプレスに大きな容量の駆動源が必要となる。また、この場合、大きな金型が必要となり、高精度で金型を製作することが困難になる。一方、単純に金型を2つに分け、2台のクランクプレスによって打抜き加工を行う場合には、クランクプレスの製作コストが増加し、工場におけるクランクプレスの占有面積も増加してしまう。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、駆動源に必要な容量を小さく抑えると共に工場において占有する面積を小さく抑え、かつ剛性を高く維持して、1台のクランクプレスによって、長尺状鋼板に対して2列の状態で製品を打抜くことができるクランクプレスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、駆動源による回転力をクランクシャフト及びコネクティングロッドを介してスライダーによる打抜き推力に変換し、該スライダーに配設した上型部を、該スライダーの下方に対向するテーブルに配設した下型部に対して進退させることによって、上記上型部と上記下型部とのいずれか一方に所定の形成ピッチで設けた複数のパンチと他方に所定の形成ピッチで設けた複数のダイス穴とが互いにそれぞれ合わさり、上記所定の形成ピッチと同じ送り量で上記上型部と上記下型部との間に順次送り込んだ長尺状鋼板に対して、該長尺状鋼板の送り方向の上流側に位置する上記パンチ及び上記ダイス穴から下流側に位置する上記パンチ及び上記ダイス穴まで順次段階的な打抜き加工を行って製品を打抜くよう構成したクランクプレスにおいて、
上記クランクシャフトは、その軸方向を上記長尺状鋼板の送り方向に向けた状態で、上記駆動源による回転力を受けて回転する回転部に対する両側に互いに平行に一対に配設してあり、
上記上型部を配設した上記スライダー及び上記下型部を配設した上記テーブルは、上記一対のクランクシャフトに対応して一対に配設してあり、
上記送り方向の上流側に配設した上記上型部と上記下型部とによる上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記送り方向の下流側に配設した上記上型部と上記下型部とによる下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とによって、打抜き部位が上記長尺状鋼板の幅方向に並ぶよう上記段階的な打抜き加工を行うよう構成してあり、
上記送り方向の上流側に配設した上記クランクシャフトと上記送り方向の下流側に配設した上記クランクシャフトとは、上記コネクティングロッドの上下動作を受けて上下する上記上流側型組の上記上型部における上記複数のパンチ又は上記複数のダイス穴の下死点の上方と、上記コネクティングロッドの上下動作を受けて上下する上記下流側型組の上記上型部における上記複数のパンチ又は上記複数のダイス穴の下死点の上方とにそれぞれ位置するよう、上記送り方向に直交する横方向に互いにオフセットして配設してあり、
上記上流側型組における上記複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングと、上記下流側型組における上記複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングとは、互いにずらしてあり、
上記各スライダーは、上記各クランクシャフトに対する上記送り方向及び上記横方向の四方に設けたスライドガイドによってそれぞれスライド支持してあることを特徴とするクランクプレスにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクランクプレスは、上型部を配設したスライダー及び下型部を配設したテーブルを2つ配設し、1台の装置において、段階的な打抜き加工を行う2つの上型部及び下型部によって、長尺状鋼板に対して2列の状態で製品を打ち抜くことができるものである。
具体的には、クランクプレスにおいては、軸方向を長尺状鋼板の送り方向に向けたクランクシャフトを、駆動源による回転力を受けて回転する回転部に対する両側に互いに平行に一対に配設している。また、上型部を配設したスライダー及び下型部を配設したテーブルは、一対のクランクシャフトに対応して一対に配設してある。
【0008】
一対のクランクシャフトは、送り方向に直交する横方向に互いにオフセットして配設してある。そして、送り方向の上流側に配設したクランクシャフトの下方には、上流側型組における複数のパンチ及び複数のダイス穴が並び、送り方向の下流側に配設したクランクシャフトの下方には、下流側型組における複数のパンチ及び複数のダイス穴が並ぶ。また、送り方向の上流側及び下流側にそれぞれ配設したクランクシャフトの下方には、コネクティングロッドの上下動作を受けて上下する上型部における複数のパンチ又は複数のダイス穴の下死点が位置する。
【0009】
各型組においては、長尺状鋼板が、複数のパンチ及びダイス穴を形成した所定の形成ピッチと同じ送り量で送られるごとに、クランクシャフトの回転による打抜き加工が行われ、複数のパンチ及びダイス穴の形成数と同じ数の打抜き加工が行われたときに、少なくとも送り方向における最も下流側のパンチ及びダイス穴によって最終的な製品が製造される。
【0010】
回転部の回転を受けて一対のクランクシャフトが回転するときには、上流側型組における複数のパンチ及び複数のダイス穴によって長尺状鋼板の上流側部分に複数の打抜き加工を行うと共に、下流側型組における複数のパンチ及び複数のダイス穴によって長尺状鋼板の下流側部分に複数の打抜き加工を行う。このとき、送り方向の上流側に配設したクランクシャフトの周方向に対するコネクティングロッドの係合箇所と、送り方向の下流側に配設したクランクシャフトの周方向に対するコネクティングロッドの係合箇所とを互いにずらすことにより、上流側型組における複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングと、下流側型組における複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングとが互いにずれる。
【0011】
そのため、上流側型組による打抜き加工に必要な荷重と下流側型組による打抜き加工に必要な荷重とが長尺状鋼板に加わるタイミングをずらすことができ、駆動源に必要な容量を1つの型組に必要な容量と同等の容量に抑えることができる。
また、各型組における上型部及び下型部は、長尺状鋼板に対して1列の状態で打抜き加工を行うときの大きさと同等の大きさで形成することができ、高精度で製作することができる。また、本発明においては、2台のクランクプレスの機能を1台のクランクプレスに集約させており、クランクプレスが工場において占有する面積を小さく抑えることができる。
【0012】
さらに、本発明においては、上型部を配設した各スライダーは、各クランクシャフトに対する送り方向及び横方向の四方に設けたスライドガイドによってそれぞれスライド支持してある。これにより、各クランクシャフトから、上流側型組における打抜き加工を行う際に長尺状鋼板に加わる荷重と、下流側型組における打抜き加工を行う際に長尺状鋼板に加わる荷重とを、それぞれ四方に設けたスライドガイドによって支持することができる。そのため、一対のスライダー及びテーブルを配設したクランクプレスの剛性を高く維持することができる。
【0013】
それ故、本発明のクランクプレスによれば、駆動源に必要な容量を小さく抑えると共に工場において占有する面積を小さく抑え、かつ剛性を高く維持して、1台のクランクプレスによって、長尺状鋼板に対して2列の状態で製品を打抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例における、クランクプレスを正面から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例における、クランクプレスの一部を正面から見た状態で拡大して示す説明図。
【図3】実施例における、クランクプレスを側方から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例における、クランクプレスにおける駆動源及びドライブシャフトの形成箇所を、上方から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例における、クランクプレスにおけるクランクシャフトの形成箇所を、上方から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例における、クランクプレスにおけるスライダーの形成箇所を、上方から見た状態で示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述した本発明のクランクプレスにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とは、上記長尺状鋼板の長尺方向に上記所定の形成ピッチの半分の長さ分ずれて、上記長尺状鋼板に対して千鳥状の打抜き部位を形成する位置関係で配設することが好ましい(請求項2)。
この場合には、特に打抜き部位の形状が略円形状であるときに、長尺状鋼板の歩留り性を向上させることができる。
【0016】
また、上記上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とは、回転電機に用いるステータ用鋼板とロータ用鋼板とをセットにして打抜くよう構成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上流側型組及び下流側型組によって、ステータ用鋼板及びロータ用鋼板をセットにして打ち抜き、長尺状鋼板から2列の状態で生産効率よくこれらを製造することができる。
【実施例】
【0017】
以下に、本発明のクランクプレスにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例のクランクプレス1は、図1〜図6に示すごとく、上型部61を配設したスライダー4及び下型部62を配設したテーブル5を2つ配設し、1台の装置において、段階的な打抜き加工を行う2つの上型部61及び下型部62によって、長尺状鋼板8に対して2列の状態で製品を打ち抜くことができるものである。
すなわち、本例のクランクプレス1は、駆動源12による回転力をクランクシャフト2及びコネクティングロッド21を介してスライダー4による打抜き推力に変換し、スライダー4に配設した上型部61を、スライダー4の下方に対向するテーブル5に配設した下型部62に対して進退させることによって、上型部61に所定の形成ピッチP(図6参照)で設けた複数のパンチ611と下型部62に所定の形成ピッチPで設けた複数のダイス穴621とが互いにそれぞれ合わさり、所定の形成ピッチPと同じ送り量で上型部61と下型部62との間に順次送り込んだ長尺状鋼板8に対して、長尺状鋼板8の送り方向Fの上流側に位置するパンチ611及びダイス穴621から下流側に位置するパンチ611及びダイス穴621まで順次段階的な打抜き加工を行って製品を打抜くよう構成してある。
【0018】
図1、図5、図6に示すごとく、クランクシャフト2は、その軸方向を長尺状鋼板8の送り方向Fに向けた状態で、駆動源12による回転力を受けて回転する回転部14に対する両側に互いに平行に一対に配設してある。上型部61を配設したスライダー4及び下型部62を配設したテーブル5は、一対のクランクシャフト2に対応して一対に配設してある。送り方向Fの上流側に配設した上型部61と下型部62とによる上流側型組6Aにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621と、送り方向Fの下流側に配設した上型部61と下型部62とによる下流側型組6Bにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621とによって、打抜き部位が長尺状鋼板8の幅方向Wに並ぶよう段階的な打抜き加工を行うよう構成してある。
【0019】
図3、図5に示すごとく、送り方向Fの上流側に配設したクランクシャフト2と送り方向Fの下流側に配設したクランクシャフト2とは、コネクティングロッド21の上下動作を受けて上下する上流側型組6Aの上型部61における複数のパンチ611の下死点の上方と、コネクティングロッド21の上下動作を受けて上下する下流側型組6Bの上型部61における複数のパンチ611の下死点の上方とにそれぞれ位置するよう、送り方向Fに直交する横方向Bに互いにオフセットして配設してある。上流側型組6Aにおける複数のパンチ611が打抜き加工を行うタイミングと、下流側型組6Bにおける複数のパンチ611が打抜き加工を行うタイミングとは、互いにずらしてある。
上流側型組6Aにおける上型部61を配設したスライダー4は、上流側のクランクシャフト2に対する送り方向F及び横方向Bの四方に設けたスライドガイド3によってスライド支持してあり、下流側型組6Bにおける上型部61を配設したスライダー4は、下流側のクランクシャフト2に対する送り方向F及び横方向Bの四方に設けたスライドガイド3によってスライド支持してある。
【0020】
以下に、本例のクランクプレス1につき、図1〜図6を参照して詳説する。
ここで、図1は、クランクプレスを正面から見た状態で示す図であり、図2は、正面から見た状態のクランクプレスの一部を拡大して示す図である。図3は、クランクプレスを側方から見た状態で示す図であり、図4は、クランクプレス1における駆動源12及び後述するドライブシャフト13の形成箇所を、クランクプレス1の上方から見た状態で示す図である。図5は、クランクプレス1におけるクランクシャフト2の形成箇所を、クランクプレス1の上方から見た状態で示す図であり、図6は、クランクプレス1におけるスライダー4の形成箇所を、クランクプレス1の上方から見た状態で示す図である。
【0021】
本例のクランクプレス1は、駆動源12としてのモータ12の回転力を受けて、スライダー4をスライドさせる電動式のクランクプレスである。
図1、図6に示すごとく、上型部61における複数のパンチ611と下型部62における複数のダイス穴621とは、複数回の打抜き加工を行って、回転電機に用いるステータ用鋼板81とロータ用鋼板82とをセットにして加工する。本例においては、インナーロータ式の回転電機に用いるステータ用鋼板81及びロータ用鋼板82を加工する。そして、長尺状鋼板8の送り方向Fの上流側に位置するパンチ611及びダイス穴621によって内周側に位置するロータ用鋼板82を打ち抜き、長尺状鋼板8の送り方向Fの下流側に位置するパンチ611及びダイス穴621によって外周側に位置するステータ用鋼板81を打ち抜く。
【0022】
また、ロータ用鋼板82及びステータ用鋼板81は、それぞれ複数回の打抜き加工を行って打ち抜く。例えば、上型部61及び下型部62において、送り方向Fの上流側に、ロータ用鋼板82を打ち抜く2〜10回段階のパンチ611及びダイス穴621を形成し、送り方向Fの下流側に、ステータ用鋼板81を打ち抜く2〜10回段階のパンチ611及びダイス穴621を形成することができる。
図6においては、上流側型組6Aにおける上型部61及び下型部62並びに下流側型組6Bにおける上型部61及び下型部62に7セットのパンチ611及びダイス穴621を形成し、上流側に位置する3段階(3セット)のパンチ611及びダイス穴621によってロータ用鋼板82を打抜き、下流側に位置する4段階(4セット)のパンチ611及びダイス穴621によってステータ用鋼板81を打抜く場合を示す。
【0023】
同図に示すごとく、本例のクランクプレス1においては、長尺状鋼板8に対して2列の状態で千鳥状に打抜き加工を行う。送り方向Fの上流側に位置する上流側型組6Aにおいて一方の列の打抜き加工を行い、送り方向Fの下流側に位置する下流側型組6Bにおいて他方の列の打抜き加工を行う。上流側型組6Aと下流側型組6Bとによる打抜き加工は、駆動源12によって回転する回転部14(各クランクシャフト2)が1回転するごとに、各上型部61が1ストロークして、1回の打抜き加工を行う。なお、上流側型組6A及び下流側型組6Bにおいては、上型部61の1回のストロークによってそれぞれ複数のパンチ611及びダイス穴621による打抜き加工が同時に行われる。
【0024】
図6に示すごとく、上流側型組6Aにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621と、下流側型組6Bにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621とは、長尺状鋼板8の長尺方向に所定の形成ピッチPの半分の長さ分ずれて、長尺状鋼板8に対して千鳥状の打抜き部位を形成する位置関係で配設してある。
図1、図2に示すごとく、クランクプレス1は、長尺状鋼板8の送り方向Fに対して長い長方形状の架台11に対し、駆動源12としてのモータ12を配設し、このモータ12によって回転させるドライブシャフト13と、このドライブシャフト13における中心側端部に設けた回転部14としてのドライブギヤ14とが、架台11に対して回転可能に軸支されている。各クランクシャフト2における中心側端部には、ドライブギヤ14によって駆動するドリブンギヤ22がそれぞれ設けてある。
図3、図4に示すごとく、各ドリブンギヤ22は、ドライブギヤ14の中心に対して横方向Bに対称な位置においてドライブギヤ14の下方に噛合し、かつドライブギヤ14の軸方向一方側と軸方向他方側とにオフセットして噛合している。
【0025】
図6に示すごとく、スライドガイド3は、架台11における上流側部分の送り方向F及び横方向Bの四方と、架台11における下流側部分の送り方向F及び横方向Bの四方とに設けてある。図2に示すごとく、送り方向Fの上流側に設けたスライダー4は、架台11の上流側部分の四方に固定したスライドシャフト31に対し、それぞれ摺動可能に係合するリニヤブッシュ32によって上下にスライド可能に配設されている。また、送り方向Fの下流側に設けたスライダー4は、架台11の下流側部分の四方に固定したスライドシャフト31に対し、それぞれ摺動可能に係合するリニヤブッシュ32によって上下にスライド可能に配設されている。
【0026】
図5、図6に示すごとく、クランクプレス1においては、長尺状鋼板8の送り方向Fに対して平行に、各クランクシャフト2が並び、各上流側型組6Aの上型部61及び下型部62における各パンチ611及びダイス穴621が並んでいる。
図1、図2に示すごとく、各クランクシャフト2における軸方向の2箇所にコネクティングロッド21が回転可能に連結されており、各コネクティングロッド21の下端部は、スライダー4に連結されている。テーブル5は、架台11における送り方向Fの上流側部分及び下流側部分にそれぞれ固定されている。また、上流側型組6A及び下流側型組6Bにおいて、各上型部61は、各スライダー4の下端面に固定し、各下型部62は、テーブル5の上面に固定する。そして、スライダー4と共に上型部61が下死点に達したときには、上型部61が、テーブル5に固定した下型部62との間に長尺状鋼板8を挟み込み、各パンチ611及びダイス穴621による打抜き加工が行われる。
【0027】
長尺状鋼板8は、クランクプレス1に対して送り方向Fの上流側及び下流側に配設した送り手段(図示略)によって、各型組6A、6Bにおける上型部61と下型部62との間に送られる。送り手段は、ドライブシャフト13(又は各クランクシャフト2)が1回転する間において、上流側型組6A及び下流側型組6Bによる打抜き加工が行われていない時間帯を利用して、複数のパンチ611及びダイス穴621を形成した所定の形成ピッチPと同じ送り量で、上型部61と下型部62との間に長尺状鋼板8を送る。
また、送り手段の動作により、長尺状鋼板8がクランクプレス1を通過した後には、打抜き加工後の残穴851が形成されたスクラップ85(図6参照)が送り出される。
【0028】
ドライブシャフト13が1回転する間において、上流側型組6Aによる打抜き加工と下流側型組6Bによる打抜き加工とは、スライダー4が長尺状鋼板8の厚み分のストロークを行う時間をずらして、できるだけ近接した時間内に行う。これにより、ドライブシャフト13が1回転する間であって、上流側型組6Aにおける上型部61と下型部62との間、及び下流側型組6Bにおける上型部61と下型部62との間が開いている状態において、送り手段が長尺状鋼板8を所定の送り量送るための時間を長く確保することができる。
なお、図1においては、図示の便宜上、上流側型部6Aについては、上型部61が下降して下型部62との間に長尺状鋼板8を挟み込む状態を示し、下流側型部6Aについては、上型部61が上昇した状態を示す。実際には、上記のごとく、上流側型部6Aにおける上型部61の下降動作と、下流側型部6Bにおける上型部61の下降動作とは、略同じタイミングで行われる。
【0029】
次に、本例のクランクプレス1による打抜き加工動作をについて図6を参照して説明し、その作用効果を説明する。
ドライブシャフト13が1回転する間に、長尺状鋼板8が上流側型組6Aにおける最も上流側に位置する1段目のパンチ611とダイス穴621との間に送られると、長尺状鋼板8の幅方向Wにおける一方側に1段目の打抜き加工が行われる。次いで、ドライブシャフト13がさらに1回転する間に、長尺状鋼板8が上流側型組6Aにおける2段目のパンチ611とダイス穴621との間に送られると、長尺状鋼板8の幅方向Wにおける一方側に、2段目の打抜き加工が行われると同時に、その上流側に1段目の打抜き加工も行われる。
【0030】
その後、同様にして、長尺状鋼板8の幅方向Wにおける一方側に、7段目、6段目、5段目、4段目、3段目、2段目、1段目の打抜き加工が同時に行われ、長尺状鋼板8が下流側型組6Bにおける最も上流側に位置する1段目のパンチ611とダイス穴621との間に送られると、長尺状鋼板8の幅方向Wにおける一方側において既に打抜き加工が行われた後の残穴851の斜め位置に隣接して、長尺状鋼板8の幅方向Wにおける他方側において1段目の打抜き加工が行われる。そして、上流側型組6Aにおける打抜き加工と同様に、下流側型組6Bにおいても打抜き加工が行われ、長尺状鋼板8の先端部が下流側型組6Bにおける最も下流側に位置する7段目のパンチ611とダイス穴621との間に送られた以降は、各スライダー4の1ストロークによって、上流側型組6A及び下流側型組6Bのいずれにおいても、1段目〜7段目の打抜き加工が同時に行われる。
【0031】
このように、上流側型組6A及び下流側型組6Bにおいては、長尺状鋼板8が、パンチ611及びダイス穴621を形成した所定の形成ピッチPと同じ送り量で送られるごとに、クランクシャフト2の回転による打抜き加工が行われ、3段目の打抜き加工が行われるダイス穴621から下方に最終的な製品としてのロータ用鋼板82が取り出され(落下し)、7段目の打抜き加工が行われるダイス穴621から下方に最終的な製品としてのステータ用鋼板81が取り出される(落下する)。
【0032】
また、ドライブシャフト13の回転を受けて一対のクランクシャフト2が回転するときには、上流側型組6Aにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621によって長尺状鋼板8の上流側部分に複数の打抜き加工を行うと共に、下流側型組6Bにおける複数のパンチ611及び複数のダイス穴621によって長尺状鋼板8の下流側部分に複数の打抜き加工を行う。このとき、送り方向Fの上流側に配設したクランクシャフト2の周方向に対するコネクティングロッド21の係合箇所と、送り方向Fの下流側に配設したクランクシャフト2の周方向に対するコネクティングロッド21の係合箇所とを互いに若干ずらすことにより、上流側型組6Aにおける複数のパンチ611が打抜き加工を行うタイミングと、下流側型組6Bにおける複数のパンチ611が打抜き加工を行うタイミングとを互いにずらすことができる。
【0033】
そのため、上流側型組6Aによる打抜き加工に必要な荷重と下流側型組6Bによる打抜き加工に必要な荷重とが長尺状鋼板8に加わるタイミングをずらすことができ、クランクプレス1が2つの型組6A、6Bを有していながら、駆動源12に必要な容量を1つの型組に必要な容量と同等の容量に抑えることができる。
また、各型組6A、6Bにおける上型部61及び下型部62は、長尺状鋼板8に対して1列の状態で打抜き加工を行うときの大きさと同等の大きさで形成することができ、高精度で製作することができる。また、本発明においては、2台のクランクプレス1の機能を1台のクランクプレス1に集約させており、クランクプレス1が工場において占有する面積を小さく抑えることができる。
【0034】
さらに、本例においては、上型部61を配設した各スライダー4は、各クランクシャフト2に対する送り方向F及び横方向Bの四方に設けたスライドガイド3によってそれぞれスライド支持してある。これにより、各クランクシャフト2から、上流側型組6Aにおける打抜き加工を行う際に長尺状鋼板8に加わる荷重と、下流側型組6Bにおける打抜き加工を行う際に長尺状鋼板8に加わる荷重とを、それぞれ四方に設けたスライドガイド3によって支持することができる。そのため、一対のスライダー4及びテーブル5を配設したクランクプレス1の剛性を高く維持することができる。
また、長尺状鋼板8の幅方向Wに千鳥状の2列の状態で、円形状のロータ用鋼板82及びステータ用鋼板81を打抜くことにより、長尺状鋼板8の歩留り性を向上させると共に、ロータ用鋼板82及びステータ用鋼板81の生産性を向上させることができる。
【0035】
それ故、本例のクランクプレス1によれば、駆動源12に必要な容量を小さく抑えると共に工場において占有する面積を小さく抑え、かつ剛性を高く維持して、1台のクランクプレス1によって、長尺状鋼板8に対して2列の状態で製品を打抜くことができる。
なお、本例においては、上型部61に複数のパンチ611を形成し、下型部62に複数のダイス穴621を形成した場合を示したが、これとは逆に、上型部61に複数のダイス穴を形成し、下型部62に複数のパンチを形成することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 クランクプレス
12 駆動源(モータ)
14 回転部(ドライブギヤ)
2 クランクシャフト
21 コネクティングロッド
22 ドリブンギヤ
3 スライドガイド
4 スライダー
5 テーブル
6A 上流側型組
6B 下流側型組
61 上型部
611 パンチ
62 下型部
621 ダイス穴
8 長尺状鋼板
81 ステータ用鋼板
82 ロータ用鋼板
F 送り方向
B 横方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源による回転力をクランクシャフト及びコネクティングロッドを介してスライダーによる打抜き推力に変換し、該スライダーに配設した上型部を、該スライダーの下方に対向するテーブルに配設した下型部に対して進退させることによって、上記上型部と上記下型部とのいずれか一方に所定の形成ピッチで設けた複数のパンチと他方に所定の形成ピッチで設けた複数のダイス穴とが互いにそれぞれ合わさり、上記所定の形成ピッチと同じ送り量で上記上型部と上記下型部との間に順次送り込んだ長尺状鋼板に対して、該長尺状鋼板の送り方向の上流側に位置する上記パンチ及び上記ダイス穴から下流側に位置する上記パンチ及び上記ダイス穴まで順次段階的な打抜き加工を行って製品を打抜くよう構成したクランクプレスにおいて、
上記クランクシャフトは、その軸方向を上記長尺状鋼板の送り方向に向けた状態で、上記駆動源による回転力を受けて回転する回転部に対する両側に互いに平行に一対に配設してあり、
上記上型部を配設した上記スライダー及び上記下型部を配設した上記テーブルは、上記一対のクランクシャフトに対応して一対に配設してあり、
上記送り方向の上流側に配設した上記上型部と上記下型部とによる上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記送り方向の下流側に配設した上記上型部と上記下型部とによる下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とによって、打抜き部位が上記長尺状鋼板の幅方向に並ぶよう上記段階的な打抜き加工を行うよう構成してあり、
上記送り方向の上流側に配設した上記クランクシャフトと上記送り方向の下流側に配設した上記クランクシャフトとは、上記コネクティングロッドの上下動作を受けて上下する上記上流側型組の上記上型部における上記複数のパンチ又は上記複数のダイス穴の下死点の上方と、上記コネクティングロッドの上下動作を受けて上下する上記下流側型組の上記上型部における上記複数のパンチ又は上記複数のダイス穴の下死点の上方とにそれぞれ位置するよう、上記送り方向に直交する横方向に互いにオフセットして配設してあり、
上記上流側型組における上記複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングと、上記下流側型組における上記複数のパンチが打抜き加工を行うタイミングとは、互いにずらしてあり、
上記各スライダーは、上記各クランクシャフトに対する上記送り方向及び上記横方向の四方に設けたスライドガイドによってそれぞれスライド支持してあることを特徴とするクランクプレス。
【請求項2】
請求項1に記載のクランクプレスにおいて、上記上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とは、上記長尺状鋼板の長尺方向に上記所定の形成ピッチの半分の長さ分ずれて、上記長尺状鋼板に対して千鳥状の打抜き部位を形成する位置関係で配設したことを特徴とするクランクプレス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクランクプレスにおいて、上記上流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴と、上記下流側型組における上記複数のパンチ及び上記複数のダイス穴とは、回転電機に用いるステータ用鋼板とロータ用鋼板とをセットにして打抜くよう構成したことを特徴とするクランクプレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212701(P2011−212701A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81916(P2010−81916)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(591180613)株式会社能率機械製作所 (2)
【Fターム(参考)】