説明

クランク・CVT・伝動装置

クランク・CVT・伝動装置は、フリーホイール装置(10)を含み、フリーホイール装置は、伝動装置の被動軸に接続される。フリーホイール装置は、該フリーホイール装置が選択的に、フリーホイール装置と被動軸との間の相対回動を可能にし、或いは阻止するように形成されている。更にクランク・CVT・伝動装置は、切り換えユニット(30)を含み、切り換えユニットは、フリーホイール装置(10)を切り換えるように形成され、かつ内側軸を含み、内側軸は、被動軸に接続可能にされ、かつ接続手段を介して差動装置に接続可能にされている。内側軸は、被動軸の軸線方向で摺動可能である。更にクランク・CVT・伝動装置は、アクチュエータ(20)を含み、アクチュエータは、切り換えユニットと相互作用していて、フリーホイール装置の切り換えを導入するように形成されている。アクチュエータ(20)は、第1の機構(100)を有している。第1の機構は、内側軸を、内側軸の遮断のために軸線方向で差動装置(2)から移動させるように形成されている。アクチュエータは、更に第2の機構(200)を有し、第2の機構は、切り換えユニットを駆動するように形成され、第2の機構は第1の機構に連結されていて、かつ時間的に第1の機構の駆動の後に駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク・CVT・伝動装置に関する。特に、本発明は、クランク・CVT・伝動装置のフリーホイールの切り換えを導入するためのアクチュエータに関する。
【0002】
クランク・CVT・伝動装置は、例えば独国特許出願公開第10243533A1号明細書により公知である。該伝動装置は、原動機若しくはエンジンに連結される駆動式の1つの軸、例えば伝動装置入力軸、並びに被動式の少なくとも1つの軸、例えば伝動装置出力軸を有しており、両方の軸は互いに動力伝達可能に接続されるようになっている。更に伝動装置は、フリーホイール装置を有している。フリーホイール装置は、被動式の軸上に軸線方向で相前後して配置された複数のフリーホイールユニットを有しており、フリーホイールユニットは切り換えられるようになっている。このことは、スプラグの係止方向が互いに回動可能な両方のリングに対して切り換え可能であることを意味している。この種のフリーホイールユニットを用いることにより、伝動装置において軸の回転方向が簡単に変えられ、ひいては後進ギヤが達成されるようになっている。追加的な方向切り換え伝動部、例えば遊星歯車式伝動部は不要になっている。
【0003】
フリーホイールの係止機能を切り換えるために、独国特許出願公開第10243533A1号明細書に切り換え装置が開示されており、該切り換え装置は、複数の切り換えユニットを有しており、該切り換えユニットはそれぞれ、隣接のスプラグ間に配置されている。切り換えユニットは同期的に作動されるようになっていて、切り換え手段を有しており、該切り換え手段は、それぞれ、ディスク状の移動可能な1つの領域、及び有利には成形されたロッドから成っている成形された1つの領域を備えている。ばねが、成形された領域とスプラグとの間に緊締されている。成形されたロッド及び、切り換え装置の作動部は、軸線方向で全てのフリーホイールユニットを通って延びており、従って、ロッドの回動により全てのフリーホイールユニットは同時に切り換えられるようになっている。
【0004】
車両の走行方向を変える目的で、クランク・CVT・伝動装置のフリーホイールを切り換えるために、クランク・CVT・伝動装置は負荷から解放されていなければならない。このために、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニットは差動装置(ディファレンシャル)から連結解除されねばならない。従来公知のクランク・CVT・伝動装置において、被動ユニットの連結解除若しくは係合解除並びに切り換え装置の作動は、複数の多板クラッチ若しくは複数のスリーブを用いて行われている。
【0005】
被動ユニットの係合解除若しくは連結解除を多板クラッチ若しくはスリーブを用いて行う場合には、欠点として、複数のフリーホイールに対して複数のアクチュエータが必要である。複数のアクチュエータは、クランク・CVT・伝動装置の大きな構成寸法を必要とし、つまり、アクチュエータの数の増大に伴って、クランク・CVT・伝動装置内におけるアクチュエータのための所要スペースが増大することになる。更に、連結解除過程が、適切な制御によって切り換え過程に時間的に適合されなければならない。
【0006】
本発明の課題は、クランク・CVT・伝動装置を改良して、ただ一つのアクチュエータによって被動ユニットの連結解除及びフリーホイールの切り換えの導入を行うことができるようにすることである。
【0007】
前記課題は、請求項1に記載の構成により解決される。本発明の有利な形態が、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明の技術思想は、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニットの連結解除及びフリーホイールの切り換えの導入をただ1つのアクチュエータにより実施することにある。このような技術思想において、被動ユニットの連結解除が第1の機構により行われ、かつフリーホイールの切り換えの導入が第2の機構により行われ、両方の機構の作動が順次に行われるようになっている。被動ユニットの連結解除のために接続手段が設けられており、該接続手段は、被動軸に連結された内側軸に配置されていて、被動ユニットと差動装置との間の接続要素を形成しており、接続要素は、係合位置からの移動に基づき、差動装置から分離(遮断)されるようになっている。
【0009】
本発明の形態によれば、クランク・CVT・伝動装置は、フリーホイール装置を含んでおり、フリーホイール装置は、伝動装置の被動軸に接続され、選択的に、フリーホイール装置と被動軸との間の相対回動を可能にするか、又は阻止するように形成されている。更に、クランク・CVT・伝動装置は、フリーホイール装置を切り換えるように形成された切り換えユニット、及び内側軸(若しくは推進軸又はプロペラシャフト)を含んでおり、内側軸は、被動軸に接続され、かつ接続手段を介して差動装置に接続されるようになっている。内側軸は、被動軸の軸線方向に移動するようになっている。クランク・CVT・伝動装置は、更に、1つのアクチュエータを含んでおり、アクチュエータは、切り換えユニットと相互作用していて、フリーホイール装置の切り換えを導入するように形成されている。本発明の形態によれば、アクチュエータは、第1の機構及び第2の機構を有しており、第1の機構は、内側軸を、差動装置からの内側軸の分離(遮断)のために軸線方向に移動させるように形成されており、第2の機構は、切り換えユニットを駆動するように形成されている。更に、第2の機構は第1の機構に連結若しくは接続されていて、かつ時間的に第1の機構の後にようやく駆動されるようになっている。
【0010】
被動ユニットの連結解除は、有利には例えば、傾斜路機構を用いて接続手段の遮断(断ち)により行われる。傾斜路機構は、球体若しくはローラの形の傾斜路転動体を有している。傾斜路機構の操作は、第1の遊星歯車組を介して行われる。フリーホイールの切り換えは第2の遊星歯車組を介して行われる。
【0011】
3つの遊星歯車組は、有利には共通の1つのアーム、ひいては共通の1つの遊星歯車キャリアを有している。遊星歯車キャリアを介して、かつ第1の機構及び第2の機構の適切な接続部を介して、フリーホイールの切り換えは、時間的に被動ユニットの連結解除に適合されている。このことは、本発明の技術思想に基づき、フリーホイールの切り換え過程が、被動ユニットの連結解除過程と関連して、該連結解除過程に適合して行われることを意味している。フリーホイールの切り換えは、接続手段の遮断過程(解離過程)が終了して、被動ユニットが負荷から解放された場合に始めて行われる。誤操作は、切り換え過程と連結解除過程との間の有利な機械的な作用接続に基づき避けられるようになっている。従って、クランク・CVT・伝動装置の確実な操作過程が、わずかな所要構成スペースで可能になっている。
【0012】
接続手段は、有利にはかさ歯車によって形成されている。切り換えユニットは、有利にはスピンドルユニット若しくはその他の切り換え機構によって形成されている。
【0013】
駆動ユニットを第1の機構により負荷軽減する場合に、駆動ユニットは、差動装置に対する連結に関して摩擦のない状態に移される。第1の機構は、有利な形態によれば、アクチュエータの駆動のための駆動部を有している。駆動部は、有利にはウォーム駆動部若しくはウォーム歯車又はウォームギアによって形成されている。
【0014】
更に、第1の機構は、有利な形態によれば、第1のリングギヤ、第1の遊星歯車組及び第1の太陽歯車を有している。アクチュエータの駆動のために、ウォーム駆動部が、第1のリングギヤの外周の、ウォーム駆動部との係合のために適切に形成された領域とかみ合うようになっている。
【0015】
遊星歯車伝動装置は、その特徴として構造がコンパクトであるという利点を有している。他の形式の伝動装置に対する遊星歯車伝動装置の利点が、同一の伝達比において遊星歯車伝動装置のコンパクトな寸法にあり、更に、構成部分を同軸に配置して方向転換若しくは切り換え(同軸式の方向転換若しくは切り換え)を行うことができることにある。
【0016】
有利な形態によれば、第1の機構は、更に傾斜路機構を有し、或いは別の形態として内側軸を軸線方向に移動させるための別の構造の機構を有している。第1の機構の傾斜路機構は、傾斜路機構用遊星歯車組、内側軸に固く結合(固着又は固定)された第1の傾斜路、及び傾斜路ケーシング内に固く結合された第2の傾斜路を有している。被動ユニットの軸線方向で互いに前後に配置される第1の傾斜路と第2の傾斜路との間には、少なくとも1つの傾斜路転動体が配置されている。傾斜路転動体は、有利には球体若しくはローラである。
【0017】
有利な形態によれば、第1の機構は、更に圧縮ばねを有しており、圧縮ばねは、第1の傾斜路と第2の傾斜路とを互いに接近する方向に押圧するように形成されかつ配置されている。このような構成によれば、圧縮ばねは、第1の傾斜路及び第2の傾斜路に力を常に加えて、第1の傾斜路と第2の傾斜路とに締め付け力を与えており、締め付け力は、第1の傾斜路と第2の傾斜路とを互いに逆向きに押圧して、連結状態において予負荷を形成している。
【0018】
被動ユニットの軸線方向に移動可能な1つの傾斜路を有する傾斜路機構の利点は、傾斜路の適切な形成により、移動可能な内側軸、ひいては傾斜路の意図的な、つまり予め正確に規定された軸線方向の移動が可能になることである。結果として、かさ歯車の制御された断ち継ぎ(接続及び遮断)が保証される。第1の傾斜路と第2の傾斜路とをばねによって、特に圧縮ばねによって相互に常に締め付けている場合には、傾斜路転動体は、運動を申し分なく規定通りに正確に行うようになっている。
【0019】
有利な形態によれば、第1の機構は、第1の太陽歯車と傾斜路機構との間に配置される別のばね、特に円弧状ばね(円弧状に曲がって延びるコイルばね)を有している。第1の太陽歯車と傾斜路機構との間に配置される円弧状ばね(円弧状の曲がりコイルばね)の利点として、フリーホイール切り換えの切り換えエネルギーが円弧状ばねに一時的に蓄えられる。このことは、かさ歯車の歯先が切り換え後の差動装置への迅速な接続若しくは噛み合いを妨げている場合に、特に有利である。円弧状ばねの使用下では、かさ歯車は、クランク・CVT・伝動装置を備える車両が緩やかに始動すると、直ちにばね力に基づき再び噛み合い(係合)を行い、つまり噛み合い位置へ移動し、第1の傾斜路が噛み合い位置をロックするようになっている。このように、ばねによって、かさ歯車と差動装置との間の接続のために必要なエネルギーが一時的に蓄えられるようになっている。
【0020】
有利な形態によれば、第2の機構は、第2のリングギヤ、第2の遊星歯車組及び第2の太陽歯車を有している。有利には、第2の機構は、更に第3のリングギヤ、第3の遊星歯車組及び第3の太陽歯車を有している。このような形態において有利には、第1の太陽歯車及び第3の太陽歯車は、被動ユニット内に回転可能に支承されており、かつ第2の太陽歯車は傾斜路ケーシングの周囲に相対回動不動に配置されている。
【0021】
コンパクトな構造が得られる利点に加えて、同軸式の方向転換は、遊星歯車伝動装置において一般的に互いに同軸に配置される3つ、若しくはそれより多い軸によって達成されて特に有利である。半径方向外側で被動ユニット、特に第1のリングギヤに作用される力は、1つ若しくは複数の遊星歯車伝動装置を用いて半径方向内側へ被動ユニットの内部に伝達される。
【0022】
有利な形態によれば、第1の機構の第1の遊星歯車組、第2の機構の第2の遊星歯車組及び第3の遊星歯車組は、共通の1つの遊星歯車キャリアを有している。遊星歯車キャリアはアーム若しくはステーによって形成されており、該アーム若しくはステーに、第1の遊星歯車組、第2の遊星歯車組及び第3の遊星歯車組が配置されている。
【0023】
共通の遊星歯車キャリアにより、切り換え過程は、連結解除過程に続いて有利に行われる。フリーホイール装置の切り換えは、時間的に、差動装置からのかさ歯車の連結解除を終えた場合に始めて行われる。このことは、フリーホイール装置の切り換えが、かさ歯車を差動装置から連結解除し、その結果、被動ユニットを負荷から解放した状態でようやく行われることを意味している。このように、クランク・CVT・伝動装置が負荷を受けていない状態でのみ、クランク・CVT・伝動装置のフリーホイール装置を切り換えることが保証されている。
【0024】
有利な形態によれば、第2のリングギヤは、第1のリングギヤに対応する面に、円弧状に延びる少なくとも1つの溝を有しており、該円弧状の溝内に、第1のリングギヤと固く結合された、つまり固着又は固定されたピンが配置されている。少なくとも1つの溝は、第2のリングギヤの半径方向に広がっており、つまり半径方向の幅若しくは寸法を有している。ピンによって、第1のリングギヤと第2のリングギヤとの間の接続が可能になっている。
【0025】
有利には、第2のリングギヤは、第1のリングギヤに対応する面に、円弧状に延びる3つの溝を有しており、該各円弧状の溝内に、第1のリングギヤと固く結合された各ピンが配置されている。3つの溝は、第2のリングギヤの半径方向に広がっており、つまり半径方向の幅若しくは寸法を有している。ピンによって、第1のリングギヤと第2のリングギヤとの間の接続が可能になっている。
【0026】
第1のリングギヤと第2のリングギヤとを、溝と該溝内を摺動するピンとによって接続若しくは連結することは、このような構成により第1のリングギヤと第2のリングギヤとの間の相対運動を意図的に制御することができるので、特に有利である。このことは、第2のリングギヤの回動若しくは回転が第1のリングギヤの位置に対応していることを意味している。第2のリングギヤに設けられた溝と、第1のリングギヤに固定結合されかつ第2のリングギヤの溝内を摺動するピンとによって、フリーホイール装置の切り換えをいつ行うかが、つまり、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニットが負荷から解放されると直ちにフリーホイール装置の切り換えを行うことが、正確に規定されるようになっている。
【0027】
有利な形態によれば、第2の機構の第2のリングギヤと第2の機構の第3のリングギヤとは、少なくとも1つの係止部を介して互いに接続されている。このような係止部を介した接続は、利点として、第1のリングギヤに対する第2のリングギヤの回動を、フリーホイールの切り換え過程中には避けて、摩擦のない切り換えを可能にしている。このように、第2のリングギヤと第3のリングギヤとは、常に接続されているのではなく、フリーホイール装置の切り換え過程中にのみ互いに連結されている。
【0028】
有利な形態によれば、切り換えユニットは、1つのスピンドルによって形成され、若しくは複数のスピンドルロッドから成るスピンドルユニットによって形成されており、各スピンドルユロッドは、被動軸の軸線方向に移動可能になっている。軸線方向の移動に基づき、フリーホイール装置は切り換えられる。このために、スピンドルユニットは、その周囲に、半径方向のフライス加工成形部若しくは切欠き又は凹部を有している。
【0029】
有利には、フリーホイール装置は、フリーホイール装置と被動軸との間の相対回動を、第1の相対回動方向若しくは第2の相対回動方向でロックし、かつフリーホイール装置と被動軸との間の相対回動を、第1の相対回動方向若しくは第2の相対回動方向と異なる方向では可能にする切り換え式のフリーホイールとして形成されている。
【0030】
切り換え可能なフリーホイールは、利点として、コンパクトで従って頑丈な構造を有し、特に摩耗しにくく、かつ負荷に対する高い耐久性を有している。
【0031】
次に、本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る、クランク・CVT・伝動装置の、1つのアクチュエータ及び、伝動装置の推進軸と差動装置との間の接続された状態のかさ歯車を有する被動ユニットの軸線に沿った断面図である。
【図2】クランク・CVT・伝動装置の、1つのアクチュエータ及び遮断された状態のかさ歯車を有する被動ユニットの断面図である。
【図3】アクチュエータの断面図である。
【図4】圧縮ばね、傾斜路機構及びかさ歯車を備える推進軸の斜視図である。
【図5】圧縮ばね、スピンドル及び傾斜路機構を備える推進軸の斜視図である。
【図6】スピンドル及び傾斜路機構を備える被動軸の斜視図である。
【図7】スピンドルを備える被動軸の斜視図である。
【図8】第1のリングギヤ、ウォーム駆動部及び第2のリングギヤを備える被動軸の斜視図である。
【図9】第1のリングギヤ、ウォーム駆動部、第2のリングギヤ及び第3のリングギヤを備える被動軸の斜視図である。
【図10】第2のリングギヤの斜視図である。
【図11】第1のリングギヤの斜視図である。
【図12】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第1切り換え段階で示す平面図である。
【図13】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第2切り換え段階で示す平面図である。
【図14】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第3切り換え段階で示す平面図である。
【図15】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第4切り換え段階で示す平面図である。
【図16】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第5切り換え段階で示す平面図である。
【図17】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第6切り換え段階で示す平面図である。
【図18】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第7切り換え段階で示す平面図である。
【図19】第2のリングギヤ及び傾斜路機構を第8切り換え段階で示す平面図である。
【0033】
図面には、本発明の1つの実施の形態に係るクランク・CVT・伝動装置が示してある。
【0034】
図1及び図2は、特に、クランク・CVT・伝動装置(クランク式CVT型伝動装置)の被動ユニット1を示している。フリーホイール装置10が、軸方向で順次に並べて配置された複数のフリーホイールの形で、伝動装置(図示省略)の駆動側との接続のために設けられている。このために、フリーホイールは、例えばそれぞれ、駆動側の偏心体ユニットへのコネクティングロッド式の接続要素のための枢着点を有している。フリーホイールは、伝動装置の被動軸500に設けられている。被動軸500には、軸線方向に複数の孔が設けられており、該孔内には、それぞれ軸線方向調節可能にスピンドルユニット30が受容されている。本実施の形態では、スピンドルユニット30は、複数のスピンドルロッド300を含んでいて、切り換え装置として用いられている。被動ユニット1は軸線方向で、差動装置2への結合部位に対応する第1の端部40と、例えばケーシングにおける被動軸500の支承のために用いられる第2の端部50とを有している。フリーホイール装置10は、第2の端部50に配置されている。第1の端部40には、アクチュエータ20が設けられており、該アクチュエータについては後で詳細に説明する。
【0035】
被動軸500には、別の1つの中央の貫通孔が設けられており、該貫通孔内には内側軸若しくは推進軸400が配置されている。内側軸若しくは推進軸400は、伝動装置の第1の端部40から第2の端部50まで延びている。第1の端部40において、推進軸400にはかさ歯車180が配置されている。推進軸400の軸線方向で見て第2の端部50に向かって、かさ歯車180に続けて傾斜路機構160が配置されている。更に圧縮ばね164が設けられており、該圧縮ばねは、推進軸400の周りに螺旋状に配置されていて、推進軸400を被動軸500に対して差動装置2に向けて押圧している。圧縮ばね164は、推進軸400の軸線方向で第2の端部50に向かって傾斜路機構160に続けて配置されている。
【0036】
被動ユニット1の図1及び図2に示された断面図において、図1は、クランク・CVT・伝動装置の、被動ユニット1が差動装置2に連結されており、かつ被動ユニット1がかさ歯車180を介して差動装置2に接続されている状態を示している。図2は、クランク・CVT・伝動装置の、被動ユニット1が差動装置2に連結されておらず、かつ被動ユニット1のかさ歯車180が差動装置2に接続されていない状態を示している。連結された状態において、かさ歯車180は、被動ユニット1の第1の端部40から最も遠くに位置決めされている。連結解除された状態を達成するために、かさ歯車180は、被動ユニット1の第2の端部50に向けて戻される。
【0037】
図3は、図2に示すアクチュエータ20を拡大して示している。次に、アクチュエータ20の構造を、図3〜図11に基づき説明する。
【0038】
アクチュエータ20は、第1の端部40に配置されている。アクチュエータ20は、差動装置2からの被動ユニット1の連結解除のための第1の機構100(図3で右側)と、スピンドルユニット30の操作のための第2の機構200(図3で左側)とを有している。第1の機構100は、被動ユニット1の第1の端部40の近傍に配置されており、第2の機構200は、被動ユニット1の軸線方向で第2の端部50に向かって第1の機構100の後に配置されている。スピンドルユニット30は、被動ユニット1の軸線方向で第2の機構200に続いていて、被動ユニット1の第2の端部50まで延びている。
【0039】
アクチュエータ20の第1の機構100は、第1のリングギヤ110、該第1のリングギヤ110とかみ合う第1の遊星歯車組120、及び第1の太陽歯車130を有しており、該太陽歯車は被動ユニット1内に支承されていてかつ前記第1の遊星歯車組120とかみ合っている。更に、第1の機構100は、傾斜路機構160を有している。傾斜路機構160は、3つの傾斜路機構用遊星歯車から成る傾斜路機構用遊星歯車組140、第1の傾斜路161、第2の傾斜路162、及び球状の3つの傾斜路転動体163(図12〜図19、参照)を含んでおり、該傾斜路転動体は、第1の傾斜路161と第2の傾斜路162との間に設けられていて円周方向に沿って深さの変化する案内溝内に配置されている。被動ユニット1の軸線方向で(第1の端部40に向かって)、傾斜路機構160の横にかさ歯車180が配置されている。傾斜路機構160は、更に傾斜路ケーシング150を有している。更に、第1の機構100は、第1の太陽歯車130と傾斜路機構160との間に、被動ユニットの軸線を中心とした仮想の円の円弧に沿って円弧状に延びる円弧状ばね170を有しており、該円弧状ばねは、切り換えエネルギーの蓄積のために用いられるものである。
【0040】
伝動装置ケーシング600の切欠き部内にウォーム駆動部105が配置されており、該ウォーム駆動部(ねじ歯車駆動部)は、伝動装置ケーシング600の切欠き部の下側に位置決めされた第1のリングギヤ110の外周に係合している。
【0041】
第2の機構200は、被動ユニット1の軸線方向で(第2の端部50に向かって)、第1の機構100に続いて配置されている。第2の機構200は、第2のリングギヤ210、第2の遊星歯車組220、及び第2の太陽歯車230を有している。第2の太陽歯車230は、傾斜路ケーシング150に固定結合されている。第2の機構200は更に、第3のリングギヤ240、第3の遊星歯車組250、及び第3の太陽歯車260を有しており、該太陽歯車は被動ユニット1内に支承されている。第3のリングギヤ240、第3の遊星歯車組250及び第3の太陽歯車260は、被動ユニット1の軸線方向で(第2の端部50に向かって)それぞれ、第2のリングギヤ210、第2の遊星歯車組220及び第2の太陽歯車230の後に配置されている。第3の太陽歯車260は、スピンドルユニット30のスピンドルロッド300とかみ合っている。推進軸400と被動軸500との間でアクチュエータ20の領域には傾斜路ケーシング150が配置されている。
【0042】
第1のリングギヤ110は、該第1のリングギヤ110の端面に固定されていて第2のリングギヤ210の端面の溝211内を移動するピン212を介して、第2のリングギヤ210に接続されるようになっている(図10及び図11、参照)。第2のリングギヤ210は、実質的に1つのコイルばね及び1つの球体から成る係止装置241を介して、伝動装置ケーシング600内に固く配置され若しくは固着された第3のリングギヤ240に接続されている。
【0043】
第1の遊星歯車組120、第2の遊星歯車組220及び第3の遊星歯車組250は、共通の1つの遊星歯車キャリア270を有し、かつそれぞれ3つの遊星歯車を含んでいる。
【0044】
図4〜図11には、クランク・CVT・伝動装置の構成部分が斜視図で示してある。
【0045】
図4及び図5は、推進軸400の斜視図であり、該推進軸には圧縮ばね164が螺旋状若しくはつる巻き線状に巻き付けて配置されている。
【0046】
更に図4は、かさ歯車180を示しており、該かさ歯車は、被動ユニット1の第1の端部40で推進軸400に配置されている。傾斜路機構160は、推進軸400上において、被動ユニット1の軸線方向で(第2の端部50に向かって)、かさ歯車180の後に配置されている。第1の傾斜路161は、第1の機構100の傾斜路機構用遊星歯車組140とかみ合う太陽歯車区分を有している。第1の傾斜路161は、被動ユニット1の軸線方向で移動可能若しくは摺動可能に支承されている。第2の傾斜路162は、被動ユニット1に固く結合されている。
【0047】
図5は、傾斜路ケーシング150を示しており、該傾斜路ケーシングは、かさ歯車180及び傾斜路機構160を取り囲んでいる。傾斜路機構用遊星歯車組140は、その3つの傾斜路機構用遊星歯車が、該傾斜路機構用遊星歯車のために傾斜路ケーシング150に設けられた各切欠き部で該傾斜路ケーシング150に突入している。
【0048】
図6〜図9は、被動軸500、スピンドルユニット30及び傾斜路ケーシング150を示しており、傾斜路ケーシング150は、傾斜路機構用遊星歯車組140の傾斜路機構用遊星歯車の受容のための3つの切欠き部を備えている。スピンドルユニット30は、軸線方向に移動可能若しくは摺動可能な個別の6つのスピンドルロッド300を有しており、該スピンドルロッドは被動軸500内に支承されている(図7)。
【0049】
図8は、第1のリングギヤ110並びにウォーム駆動部105を示しており、ウォーム駆動部105は、リングギヤ110の外周に係合している。第1のリングギヤ110は、該第1のリングギヤ110の外周にウォーム駆動部105が係合できるように形成されている。このことは、第1のリングギヤ110がその外周に、ウォーム駆動部105との係合(かみ合い)のために対応して形成された成形溝列(歯列又は歯部)を有していることを意味している。
【0050】
図9は、第1のリングギヤ110、第2のリングギヤ210及び第3のリングギヤ240を示しており、これらのリングギヤは、被動ユニット1の軸線方向で互いに前後に並べられ、かつ半径方向で被動軸を中心として配置されている。第1のリングギヤ110は、被動ユニット1の第1の端部40の近傍に配置され、第2のリングギヤ210及び第3のリングギヤ240は、第2の端部50に向かって第1のリングギヤ110の後に配置されている。
【0051】
図10は、第2のリングギヤ210を斜視図で示している。第2のリングギヤ210の、被動ユニット1の第1の端部40に向いた側には、第2のリングギヤ210の外周の近くに、円弧状の3つの溝211が設けられている。3つの各溝211内には、それぞれ1つのピン212が摺動可能に配置されている。
【0052】
図11は、第1のリングギヤ110及び、第1のリングギヤ110の、第2の端部50に向いた側で第1のリングギヤ110の外周の近くに均一に分配配置された3つのピン212を示している。ピン212は、溝211(図10)内に摺動可能に配置されるものであり、第1のリングギヤ110に固定されている。
【0053】
図12〜図19は、第2の傾斜路162の平面図である。第2の傾斜路162は、被動ユニット1の第1の端部40に向いている若しくは配設されている側又は面に、円周方向に均一に分配された円弧状の3つの傾斜路領域165を有している。円弧状の3つの各傾斜路領域165は、2つの第1の傾斜路区分166、2つの第2の傾斜路区分167及び2つの第3の傾斜路区分168を含んでいる。2つの第3の傾斜路区分168は、互いに並べて配置されている。円周方向外側で、両方の第3の傾斜路区分168に、両方の第2の傾斜路区分167が続けて配置され、かつ両方の第2の傾斜路区分167に、両方の第1の傾斜路区分166が続けて配置されており、第2の傾斜路162の平面図で見て、両方の第1の傾斜路区分166、第2の傾斜路区分167及び第3の傾斜路区分168は、隣接する両方の第1の傾斜路区分166間を延びる仮想の対称軸線に関してそれぞれ対称である。
【0054】
第1の傾斜路区分166及び第3の傾斜路区分168は、傾斜路162に沿った勾配なしに形成されていて、従って、被動ユニット1の軸線方向に対して垂直に延びる傾斜路面を有するものである。そして、第1の傾斜路面166と第3の傾斜路面168とは、互いに異なる平面を、軸線方向に対して垂直に延びるものである。第2の傾斜路区分167は、第1の傾斜路区分166を第3の傾斜路区分168につないでいて、下り勾配の傾斜路面を有している。第1の傾斜路区分166は、被動ユニット1の軸線方向(第1の端部40に向かう方向)に、傾斜路162において最も高くなっており、つまり最も浅くなっているのに対して、第3の傾斜路区分168は、被動ユニット1の軸線方向(第2の端部50に向かう方向)に、傾斜路162において最も深く沈み込んでいる。
【0055】
次に、切り換え機構及びアクチュエータの機能について述べる。
【0056】
図12〜図19は、第2のリングギヤ210及び第2の傾斜路162の平面図で、アクチュエータ20の種々の切り換え段階を示している。切り換え段階は、第2のリングギヤ210の3つの溝211内における3つのピン212の位置、並びに第2の傾斜路162内における球状の3つの傾斜路転動体163の位置に対応している。
【0057】
図12において、3つの溝211内の3つのピン212は、溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間に位置している。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ第1の傾斜路区分166に位置決めされている。このことは、図12がアクチュエータ20の第1の切り換え段階を示していることを意味する。第1の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1が差動装置2に接続され、即ち、かさ歯車180は差動装置2に連結され、かつ被動ユニット1のフリーホイール装置10は、第1の回転方向への被動ユニット1の回転運動を可能にしている。この状態で、球状の傾斜路転動体163は、第1の傾斜路区分166に配置されており、ピン212は、溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間にある。
【0058】
フリーホイールの切り換え機構20を駆動するために、ウォーム駆動部105(図示省略)が、第1のリングギヤ110(図示省略)の駆動を開始する。この状態では、第2のリングギヤ210はまだ回転しない。第1のリングギヤ110に固定されたピン212が、第2のリングギヤ210の溝211内を第1の回転方向へ移動する。図12で第1の傾斜路区分166にある球状の傾斜路転動体163が、第1の回転方向への第1の傾斜路161(図示省略)の回動により、傾斜路領域165に沿って同じく第1の回転方向へ移動し、このことは、図13に示してある。
【0059】
図13において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第1の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第2の傾斜路区分167に位置決めされている。このことは、図13が第2の切り換え段階を示していることを意味している。第2の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、もはや差動装置2に接続されておらず、つまり、かさ歯車180は、差動装置2から連結解除されている。このために、球状の傾斜路転動体163は、第1の傾斜路区分166から第3の傾斜路区分168に向かって下り勾配である第2の傾斜路区分167に位置し、従って傾斜路161,162を互いに押し離し、これによって推進軸400が被動軸500に対して相対的に移動させられる。ピン212は、第1の溝端部213で第2のリングギヤ210に当接している。
【0060】
第1のリングギヤ110が引き続き第1の回転方向へ回転すると、第2のリングギヤ210は、ピン212が第2のリングギヤ210に当接した時点から、第1のリングギヤ110によって第1の回転方向へ連行される。球状の傾斜路転動体163は、同じく引き続き第1の回転方向へ運動し、このことは図14に示してある。
【0061】
図14において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第1の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第3の傾斜路区分168に位置決めされている。このことは、図14が第3の切り換え段階を示していることを意味している。第3の切り換え段階においても、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、もはや差動装置2に接続されておらず、つまり、かさ歯車180は、同様に差動装置2から連結解除されている。ピン212は第1の溝端部213にあり、球状の傾斜路転動体163は第3の傾斜路区分168に配置されている。
【0062】
従って、第2のリングギヤ210が、第2の遊星歯車組220及び遊星歯車キャリア270を介して、第3の遊星歯車組及び第3の太陽歯車260を回転させ、該太陽歯車が、スピンドルユニット30を駆動して、フリーホイール装置10を第1の回転方向から第2の回転方向へ切り換えるようになっている。これにより、第3の切り換え段階において第1の回転方向から第2の回転方向へのフリーホイール装置10の切り換えが行われる。
【0063】
第3のリングギヤ240に対する第2のリングギヤ210の回動を、フリーホイールユニット10の切り換え中には避けるために、第2のリングギヤ210は、切り換え過程中に、係止装置241を介して、第3のリングギヤ240に対して所定の位置に保たれるようになっている。切り換え過程が終了すると、係止装置241が係止解除され、第2のリングギヤ210は、再び第3のリングギヤ240に対して回動できるようになり、このことは図15に示してある。第1の回転方向から第2の回転方向へのフリーホイール装置10の切り換えにより、被動ユニット1の回転可能な全ての構成部分は、第2の回転方向へ回転させられる。
【0064】
図15において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第2の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第2の傾斜路区分167に位置決めされている。このことは、図15が第4の切り換え段階を示していることを意味している。第4の切り換え段階においても、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、差動装置2に接続されておらず、つまり、かさ歯車180は、差動装置2から連結解除されている。3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間の位置にある。球状の傾斜路転動体163は第2の傾斜路区分167に位置している。
【0065】
ピン212は、溝211内を第1の溝端部213から第2の溝端部214に向かって第2の回転方向へ運動する。従って、第2のリングギヤ210は回転しない。球状の傾斜路転動体163も第2の回転方向へ運動し、このことは図16に示してある。
【0066】
図16において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第2の溝端部214にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第3の傾斜路区分168に位置決めされている。このことは、図16が第5の切り換え段階を示していることを意味している。第5の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、再び差動装置2に接続され、つまり、かさ歯車180は、再び差動装置2に連結されて、被動ユニット1の第2の回転方向の回転を差動装置2に伝達するようになっている。
【0067】
球状の傾斜路転動体163は引き続き第2の回転方向へ運動して、第5の切り換え段階では再び第1の傾斜路区分166にある。ピン212は、溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間を、第2の回転方向へ移動し、従って第2のリングギヤ210は回転しない。
【0068】
回転方向転換のためにフリーホイール装置10の新たな切り換えを行う場合には、被動ユニット1は、フリーホイール装置10の負荷なしの切り換えを可能にするために、差動装置2から連結解除される。このことは、図17に示してある。
【0069】
図17において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第2の溝端部214にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第2の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第2の傾斜路区分167に位置決めされている。このことは、図17が第6の切り換え段階を示していることを意味している。第6の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、もはや差動装置2に接続されておらず、つまり、かさ歯車180は差動装置2から連結解除され、ひいては被動ユニットは負荷から解放されている。
【0070】
第1のリングギヤ110が引き続き第2の回転方向へ回転すると、球状の傾斜路転動体163も、まず第2の回転方向へ運動する。ピン212も溝211内を第2の回転方向へ運動して、第2の溝端部214に当接する。この時点から、第2のリングギヤ210は、再び第1のリングギヤ110によって第2の回転方向へ連行されて、第2の回転方向へ運動し、このことは図18に示してある。
【0071】
図18において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第2の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第3の傾斜路区分168に位置決めされている。このことは、図18がアクチュエータ20の第7の切り換え段階を示していることを意味する。第7の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、引き続き差動装置2には接続されておらず、つまり、かさ歯車180は引き続き差動装置2から連結解除されたままである。ピン212は、引き続き溝端部214にあり、球状の傾斜路転動体163は、第3の傾斜路区分168にある。
【0072】
第1のリングギヤ110(図示省略)が、溝端部214にあるピン212を介して第2のリングギヤ210に接続されることにより、第2のリングギヤ210は、引き続き第2の回転方向へ連行される。これによって、第2のリングギヤは、第2の遊星歯車組220及び遊星歯車キャリア270を介して、第3の遊星歯車組及び第3の太陽歯車260を回転させ、該太陽歯車が、スピンドルユニット30を、第2の回転方向から第1の回転方向へのフリーホイール装置10の切り換えのために、駆動するようになっており、このことは図19に示してある。
【0073】
つまり、第2のリングギヤ210は、第2の遊星歯車組220及び遊星歯車キャリア270を介して、第3の遊星歯車組及び第3の太陽歯車260を回転させ、該太陽歯車が、スピンドルユニット30を駆動し、ひいてはフリーホイール装置10を第2の回転方向から第1の回転方向へ切り換えるようになっている。このように、第7の切り換え段階において第2の回転方向から第1の回転方向へのフリーホイール装置10の切り換えが行われる。
【0074】
図19において、3つのピン212は、それぞれ各溝211の第1の溝端部213と第2の溝端部214との間にある。球状の3つの傾斜路転動体163は、それぞれ、第1の回転方向への球状の傾斜路転動体163の運動に対応する第2の傾斜路区分167に位置決めされている。このことは、図19が第8の切り換え段階を示していることを意味している。第8の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニットは、引き続き差動装置2には接続されておらず、つまり、かさ歯車180は、まだ差動装置2から連結解除されている。
【0075】
ピン212は引き続き第1の回転方向へ移動させられて、溝211内で第1の溝端部213と第2の溝端部214との間の位置にある。球状の傾斜路転動体163も、同じく第1の回転方向へ運動して第2の傾斜路区分167内に配置される。
【0076】
第9の切り換え段階は、図12に示されている第1の切り換え段階に相当するものである。該第1の切り換え段階では、クランク・CVT・伝動装置の被動ユニット1は、再び差動装置2に接続され、つまり、かさ歯車180は差動装置2に連結され、かつ被動ユニット1のフリーホイール装置10は、第1の回転方向への被動ユニット1の回転可能な構成部分の運動を可能にしている。この状態で、球状の傾斜路転動体163は、第1の傾斜路区分166に配置されており、ピン212は、溝211内で第1の溝端部213と第2の溝端部214との間の位置にある。
【0077】
クランク・CVT・伝動装置1の運転時に、フリーホイール装置10の切り換えのためには、まず第1の機構100が作動される。このために、ウォーム駆動部105が第1のリングギヤ110を駆動するようになっている。第1のリングギヤ110自体は、第1の遊星歯車組120を駆動し、該遊星歯車組は第1の太陽歯車130とかみ合っていて、該第1の太陽歯車130を駆動するようになっている。第1の太陽歯車130は、傾斜路機構用遊星歯車組140とかみ合っており、該傾斜路機構用遊星歯車組は、第1の傾斜路161の太陽歯車区分に係合していて、傾斜路機構160の該第1の傾斜路161を駆動するようになっている。第1の傾斜路161の回転により、第1の傾斜路161と第2の傾斜路162との間の球状の3つの傾斜路転動体163は、傾斜路領域165に沿って移動して、第1の傾斜路161を、被動ユニットの軸線方向で被動ユニット1の第1の端部40に向けて、ばね164の締め付け力(初期負荷又は初期荷重)に抗して運動させるようになっている。第2の傾斜路162は、被動ユニットの軸線方向で移動可能になっていない。第1の傾斜路161の回転方向に対応して、球状の傾斜路転動体163は、第1の回転方向若しくは第2の回転方向へ、ひいては、第1の回転方向若しくは第2の回転方向に対応する傾斜路領域165内を運動するようになっている。
【0078】
球状の傾斜路転動体163が、傾斜路領域165の各第1の傾斜路区分166にある場合に、第1の傾斜路161は、被動ユニット1の軸線方向で最も大きな距離にわたって、第1の端部40に向けて移動させられている。この状態では、かさ歯車180は差動装置2に接続されており、即ち連結されており、これによって、被動ユニット1から差動装置2へのトルク伝達が行われるようになっている。
【0079】
球状の傾斜路転動体163が、傾斜路領域165の各第3の傾斜路区分168にある場合には、第1の傾斜路161は、被動ユニット1の軸線方向で最も大きな距離にわたって、第2の端部50に向けて移動させられている。この状態では、かさ歯車180は差動装置2に接続されておらず、即ち連結されていない。つまり、かさ歯車180は差動装置2から連結解除され、即ち遮断されており、被動ユニット1から差動装置2へのトルク伝達は行われないようになっている。
【0080】
第1の機構100がかさ歯車180の連結解除若しくは連結のために働いている間は、第2の機構200の操作は行われない。このことは、第1の機構100の第1のリングギヤ110と第2の機構200の第2のリングギヤ210とを互いに接続するためのピン212が、かさ歯車180の連結解除過程中には溝211内を走行し、従って、第2の機構200の第2のリングギヤ210が、かさ歯車180の連結解除過程中には、第1の機構100の第1のリングギヤ110と一緒に回転しないことを意味している。
【0081】
連結解除過程が終了すると、つまりかさ歯車180が差動装置2から連結解除され、これによって被動ユニットが負荷から解放されると、3つのピン212は、各溝211の第1の溝端部213に当接するようになっている。3つのピン212が溝211の第1の溝端部213に達すると、第2のリングギヤ210は、直ちに第1のリングギヤ110によって連行され、つまり駆動される。ピン212を介して、第1のリングギヤ110と第2のリングギヤ210との間の接続を行うので、第1のリングギヤ110と第2のリングギヤ210とは、互いに同じ速度で、一緒に第1の回転方向に回転するようになっている。
【0082】
第2のリングギヤ210は第2の遊星歯車組220を駆動し、該第2の遊星歯車組は第2の太陽歯車230とかみ合っている。第2の太陽歯車230は、被動ユニット1に固定されている。従って、第2の遊星歯車組220の回転により、遊星歯車キャリア270が駆動されるようになっている。
【0083】
遊星歯車キャリア270自体は、第3の遊星歯車組250を駆動するようになっており、該第3の遊星歯車組は、伝動装置ケーシング600内に固く配置された第3のリングギヤ240、及びスピンドルユニット30に結合された第3の太陽歯車260とかみ合っている。第3の太陽歯車260が、被動軸500に配置されたスピンドルユニット30を駆動するようになっている。
【0084】
スピンドルユニット30は軸線方向で移動可能である。スピンドルユニット30の軸線方向の移動により、フリーホイール装置10の切り換えは、例えばスピンドルユニット30の円錐状の区分を取り囲む巻きばねから成る巻きばね機構を介して行われる。
【0085】
かさ歯車180を差動装置2に確実に連結するために、第1の太陽歯車130と傾斜路機構160との間にばね170が配置されており、該ばねは、円弧状に延びるコイルばねによって形成されていて、フリーホイール装置10の切り換えに際してエネルギーを蓄えるようになっており、蓄えられたエネルギーは、かさ歯車180の歯先が迅速な連結(接続又はかみ合い)を妨げた場合に、かさ歯車180と差動装置2との連結を促進するようになっている。
【0086】
傾斜路機構160の摩擦のない機能は、推進軸400に巻き付けられて配置されていて、第1の傾斜路161と第2の傾斜路162とを互いに接近する方向に所定の力で常に押圧する圧縮ばねによって保証されている。
【符号の説明】
【0087】
1 被動ユニット、 2 差動装置、 10 フリーホイール装置、 20 アクチュエータ、 30 スピンドルユニット、 40 第1の端部、 50 第2の端部、 100 第1の機構、 105 駆動部、 110 第1のリングギヤ、 120 遊星歯車組、 130 太陽歯車、 140 傾斜路機構用遊星歯車組、 150 傾斜路ケーシング、 160 傾斜路機構、 161,162 傾斜路、 163 傾斜路転動体、 164 圧縮ばね、 165 傾斜路領域、 166,167,168 傾斜路区分、 170 円弧状ばね、 180 かさ歯車、 200 第2の機構、 210 第2のリングギヤ、 211 溝、 212 ピン、 220 遊星歯車組、 230 太陽歯車、 240 第3のリングギヤ、 241 係止装置、 250 遊星歯車組、 260 太陽歯車、 270 遊星歯車キャリア、 300 スピンドルロッド、 400 推進軸、 500 被動軸、 600 伝動装置ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク・CVT・伝動装置において、
フリーホイール装置(10)を含んでおり、該フリーホイール装置は、前記伝動装置の被動軸(500)に接続されて、選択的に、前記フリーホイール装置(10)と該被動軸(500)との間の相対回動を可能にするか、阻止するように形成されており、
切り換えユニット(30)を含んでおり、該切り換えユニットは、前記フリーホイール装置(10)を切り換えるように形成されており、
内側軸(400)を含んでおり、該内側軸は、前記被動軸(500)の軸線方向に移動するようになっていて、前記被動軸(500)に接続可能にされ、かつ接続手段(180)を介して差動装置(2)に接続可能にされており、
1つのアクチュエータ(20)を含んでおり、該アクチュエータは、前記切り換えユニット(30)と相互作用していて、前記フリーホイール装置(10)の切り換えを導入するように形成されており、
前記アクチュエータ(20)は、第1の機構(100)を有しており、該第1の機構は、前記内側軸(400)を、前記差動装置(2)からの該内側軸(400)の分離のために軸線方向に移動させるように形成されており、
第2の機構(200)を有しており、該第2の機構は、前記切り換えユニット(30)を駆動するように形成されており、
前記第2の機構(200)は前記第1の機構(100)に連結されていて、かつ時間的に前記第1の機構(100)の駆動の後に駆動されるようになっていることを特徴とするクランク・CVT・伝動装置。
【請求項2】
前記第1の機構(100)は駆動部(105)を有している請求項1に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項3】
前記駆動部(105)はウォーム駆動部である請求項2に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項4】
前記第1の機構(100)は、更に第1のリングギヤ(110)、第1の遊星歯車組(120)及び第1の太陽歯車(130)を有している請求項1から3のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項5】
前記第1の機構(100)は、更に傾斜路機構(160)を有しており、該傾斜路機構(160)は、傾斜路機構用遊星歯車組(140)、前記内側軸(400)に固く結合された第1の傾斜路(161)、傾斜路ケーシング(150)内に固く結合された第2の傾斜路(162)、及び、前記第1の傾斜路(161)と前記第2の傾斜路(162)との間に配置された少なくとも1つの傾斜路転動体(163)を有している請求項1から4のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項6】
前記第1の機構(100)は更に圧縮ばね(164)を有しており、該圧縮ばねは、前記第1の傾斜路(161)と前記第2の傾斜路(162)とを互いに接近する方向に押圧するように形成されて配置されている請求項5に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項7】
前記第1の機構(100)は更に、円弧状ばね(170)を有しており、該円弧状ばねは、前記第1の太陽歯車(130)と前記傾斜路機構(160)との間に配置されている請求項1から6のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項8】
前記第2の機構(200)は、第2のリングギヤ(210)、第2の遊星歯車組(220)及び第2の太陽歯車(230)を有している請求項1から7のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項9】
前記第2の機構(200)は、更に第3のリングギヤ(240)、第3の遊星歯車組(250)及び第3の太陽歯車(260)を有している請求項1から8のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項10】
前記第1の太陽歯車(130)及び前記第3の太陽歯車(260)は、回転可能に支承されており、かつ前記第2の太陽歯車(230)は前記傾斜路ケーシング(150)に固く結合されている請求項9に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項11】
前記第1の遊星歯車組(120)、前記第2の遊星歯車組(220)及び前記第3の遊星歯車組(250)は、共通の1つの遊星歯車キャリア(270)を有している請求項9又は10に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項12】
前記第2のリングギヤ(210)は、前記第1のリングギヤ(110)に配設された面に、円弧状の少なくとも1つの溝(211)を有しており、該溝内にピン(212)が配置されており、該ピンは前記第1のリングギヤ(110)に固く結合されている請求項8から11のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項13】
前記第2のリングギヤ(210)は、前記第1のリングギヤ(110)に配設された面に、円弧状の3つの溝(211)を有しており、該溝内にそれぞれ1つのピン(212)が配置されており、該ピンは前記第1のリングギヤ(110)に固く結合されている請求項12に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項14】
前記第3のリングギヤ(240)は、少なくとも1つの係止装置(241)を有しており、該係止装置は、前記第2のリングギヤ(210)を前記前記第3のリングギヤ(240)に固く接続するように形成されている請求項9から13のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項15】
前記切り換えユニット(30)はスピンドルであり、該スピンドルは前記被動軸(500)の軸線方向に移動可能に形成されている請求項1から14のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。
【請求項16】
前記フリーホイール装置(10)は、選択的に、相対回動を、該フリーホイール装置(10)と前記被動軸(500)との間の第1の相対回動方向では、若しくは該フリーホイール装置(10)と前記被動軸(500)との間の第2の相対回動方向では阻止し、かつ該フリーホイール装置(10)と前記被動軸(500)との間の相対回動を、それぞれ逆の相対回動方向では可能にするように形成されている請求項1から15のいずれか1項に記載のクランク・CVT・伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2012−504734(P2012−504734A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529444(P2011−529444)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001311
【国際公開番号】WO2010/037363
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(510068035)シェフラー テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】