説明

クランプ構造

【課題】 ワイヤーハーネスの配索方向を迅速かつ容易に変更可能とし、ワイヤーハーネスと他部品等との干渉を確実に回避する。
【解決手段】 クランプ10の可撓保持部13は、所要の可撓性を有しており、被取付面の取付孔へのクリップ部12の嵌入方向と直交する方向(図中、矢印A方向)に沿って変位可能である。クランプ10の可撓保持部13は、ワイヤーハーネスWが、例えばそのままの配索方向では他部品等と干渉する可能性がある場合に、ワイヤーハーネスWと他部品等1との位置関係に応じて矢印A方向に沿って可撓される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワイヤーハーネス等の可撓配索部材を、被取付面に保持させるためのクランプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からワイヤーハーネスを固定する様々な固定用クランプが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。図4は特許文献1で開示されているワイヤーハーネス固定用クランプを示す斜視図であり、図5は図4のクランプをワイヤーハーネスに取り付けた状態を示す側面図である。
【0003】
例えば、図4及び図5に示されるように、ワイヤーハーネス固定用クランプ20は、板状のクランプ基盤21に、凹部溝22を形成された可撓部23を設けられている。ワイヤーハーネス固定用クランプ20は、可撓部23によるクランプ基盤21の変形により、ワイヤーハーネスWの長手方向に沿って変形される。これにより、ワイヤーハーネスWの曲がり部へのクランプ基盤21の密着が図られ、ワイヤーハーネスWの接着テープ24の剥がれが防止される。
【0004】
また、図6は特許文献2で開示されているワイヤーハーネス用クランプを示す斜視図である。図6に示されるように、ワイヤーハーネス用クランプは、一対のクランプエレメント30,31を備える。一方のクランプエレメント30は、クリップ32を有するクランプ本体33をテープ34によりワイヤーハーネスWに固着される。また他方のクランプエレメント31は、クリップ35を有するクランプ本体36に設けられた筒状体37に、ワイヤーハーネスWを挿通され、ワイヤーハーネスWに対して長手方向に移動可能かつ相対回転可能に支持される。
【0005】
また、従来からワイヤーハーネスを配索する様々な配索構造も知られている(例えば、特許文献3参照)。図7は特許文献3で開示されているワイヤーハーネスの配索構造を示す斜視図である。
【0006】
図7に示されるように、ワイヤーハーネスWの配索構造において、車体係止用の一対のクリップ40には、ワイヤーハーネスWの所要区間に取り付けられた樹脂棒41の両端部が固定される。樹脂棒41の長さは、各クリップ40にそれぞれ対応して車体側に穿設されたクリップ穴(図示しない)間の直線距離よりも長くなるように設定されており、各クリップ40をそれぞれ対応するクリップ穴に嵌入させることにより、樹脂棒41を図示のようなアーチ状に湾曲させる。これにより、ワイヤーハーネスWと他部品42との干渉が防止される。
【0007】
また、従来からワイヤーハーネスを保護する様々なワイヤーハーネス用プロテクタも知られている(例えば、特許文献4参照)。図8は特許文献4で開示されているワイヤーハーネス用プロテクタを示す平面図である。
【0008】
図8に示されるように、ワイヤーハーネス用プロテクタ50は、樋形状に形成された一対の樋部51を、蛇腹形状に形成された連結部52で連結して構成されており、各樋部52にはそれぞれ、車体に固定するためのクリップ部53が設けられる。連結部52の屈曲により、各クリップ部53のそれぞれの配置を微調整可能であり、車体側の取付位置のバラツキ等に対応することができる。これにより、ワイヤーハーネス用プロテクタ50の汎用性が向上される。
【0009】
更に、上述した構成とは別のワイヤーハーネス用クランプも知られている(例えば、非特許文献1参照)。図9は非特許文献1で開示されているワイヤーハーネス用クランプを示す斜視図であり、図10は図9のクランプの取り付け状態を示す斜視図である。
【0010】
図9及び図10に示されるように、ワイヤーハーネス用クランプ60は、ワイヤーハーネスWをテープ61留めされる基板部62の略中央に、車両ボディ63のパネル孔64に嵌入されるクリップ65を突設されるとともに、基板部62におけるクリップ65の両側62aを、クリップ65の嵌入方向と反対方向(図9中、下方)に湾曲されている。基板部62の湾曲により、クリップ65が車両ボディ63のパネル孔64に嵌入された状態で、ワイヤーハーネスWが車両ボディ63から遠ざけられた位置となり、ワイヤーハーネスWと車両ボディ63との干渉が回避される。
【特許文献1】実開平7―16530号公報(第1図)
【特許文献2】実開昭63―179718号公報(第1図)
【特許文献3】特開2001―103639号公報(第3〜4頁、第1図)
【特許文献4】特開2003―87928号公報(第2〜3頁、第1図)
【非特許文献1】発明協会公開技報公技番号93−28654号(第1図及び第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来のワイヤーハーネス固定用クランプ20(図4及び図5)、ワイヤーハーネス用クランプ30,31(図6)、ワイヤーハーネスの配索構造(図7)、ワイヤーハーネス用プロテクタ50(図8)、ワイヤーハーネス用クランプ60(図9及び図10)では、いずれの場合でも、ワイヤーハーネスWの配索方向を現状に合わせて即時に変更することができないという問題があった。
【0012】
すなわち、例えば図3に示すように、ワイヤーハーネスWが、そのままの配索方向では他部品等1と干渉する場合に、ワイヤーハーネスWの配索方向を現状に合わせて即時に変更することはできず、クランプ70の各部寸法、形状を変更したり、ワイヤーハーネスWの配索全体を見直す必要があった。したがって、ワイヤーハーネスWの配索に必要な工数及び時間を増大させ、コストアップが避けられないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、可撓配索部材の配索方向を迅速かつ容易に変更することができ、これにより可撓配索部材と他部品等との干渉を確実に回避することができるクランプ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1)本発明のクランプ構造は、長尺状の可撓配索部材を、被取付面に保持させるクランプ構造であって、クランプ本体と、該クランプ本体の一方の側に一体的に設けられ、前記被取付面に穿設された取付孔に嵌入されるクリップ部と、前記クランプ本体の他方の側に一体的に設けられ、前記可撓配索部材の長手方向に沿って当該可撓配索部材を沿わせるように保持させる可撓保持部とを備え、前記可撓保持部は、前記被取付面の前記取付孔への前記クリップ部の嵌入方向と交差する方向に沿って所要の可撓性を有することを特徴とする。
【0015】
前記構成のクランプ構造では、可撓保持部が、被取付面の取付孔へのクリップ部の嵌入方向と交差する方向に沿って所要の可撓性を有することにより、可撓配索部材の配索方向が、可撓配索部材と他部品等との位置関係に応じた適切な方向に迅速かつ容易に変更され、可撓配索部材と他部品等との干渉が回避されるクランプ構造が得られる。
【0016】
2)本発明のクランプ構造は、前記1)記載のクランプ構造において、前記可撓保持部が、前記可撓配索部材を沿わせるように保持させる保持面を、前記被取付面の前記取付孔への前記クリップ部の嵌入方向に沿って形成されるとともに、当該保持面と直交する方向に沿って所要の可撓性を有することを特徴とする。
【0017】
前記構成のクランプ構造では、可撓保持部が、可撓配索部材を沿わせるように保持させる保持面を、被取付面の取付孔へのクリップ部の嵌入方向に沿って形成されるとともに、当該保持面と直交する方向に沿って所要の可撓性を有することにより、可撓配索部材の配索方向が、可撓配索部材と他部品等との位置関係に応じた適切な方向に迅速かつ容易に変更され、可撓配索部材と他部品等との干渉が回避されるクランプ構造が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のクランプ構造によれば、可撓配索部材の配索方向を迅速かつ容易に変更することができ、これにより可撓配索部材と他部品等との干渉を確実に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のクランプ構造の一実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態であるクランプ構造を適用されたクランプを示す斜視図であり、図2は図1のクランプをワイヤーハーネスの保持に適用した状態を示す概略斜視図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態のクランプ10は、クランプ本体11にクリップ部12及び可撓保持部13を備えており、ワイヤーハーネスWを被取付面(図示しない)に保持させる。
【0022】
クリップ部12は、クランプ本体11の一方の側(図1中、下側)にクランプ本体11と一体に設けられており、被取付面に穿設された取付孔(図示しない)に嵌入可能である。
【0023】
可撓保持部13は、クランプ本体11の他方の側(図1中、上側)にクランプ本体11と一体に設けられており、被取付面の取付孔へのクリップ部12の嵌入方向(図1中、下方)に沿って形成された保持面13aに、ワイヤーハーネスWの長手方向に沿ってワイヤーハーネスWを沿わせた状態で、保持面13aにワイヤーハーネスWをテープ巻き(図2中、斜線部分T)により保持させる。可撓保持部13は、保持面13aと直交する方向に沿って所要の可撓性を有しており、被取付面の取付孔へのクリップ部12の嵌入方向と直交する方向(図1中、矢印A方向)に沿って変位可能である。
【0024】
本実施形態の作用を説明する。
上述したクランプ構造では、クリップ部12が、被取付面に穿設された取付孔に嵌入され、被取付面の所定の位置に固定されるとともに、可撓保持部13が、保持面13aにワイヤーハーネスWを沿わせた状態で、ワイヤーハーネスWを保持面13aにテープ巻きTにより保持させる。
【0025】
この際、ワイヤーハーネスWが、例えばそのままの配索方向では他部品1等と干渉する可能性がある場合(図3に示す従来例参照)には、ワイヤーハーネスWと他部品1等との位置関係に応じて、可撓保持部13が、被取付面の取付孔へのクリップ部12の嵌入方向と直交する、例えば図2中の矢印B方向に可撓される。これにより、ワイヤーハーネスWの配索方向が、ワイヤーハーネスWと他部品等1との位置関係に応じて迅速かつ容易に変更され、ワイヤーハーネスWと他部品等1との干渉が回避される。
【0026】
上述したように本実施形態によれば、クランプ10の可撓保持部13は、所要の可撓性を有しており、被取付面の取付孔へのクリップ部12の嵌入方向と直交する方向(図1中、矢印A方向)に沿って変位可能である。クランプ10の可撓保持部13は、ワイヤーハーネスWが、例えばそのままの配索方向では他部品等1と干渉する可能性がある場合に、ワイヤーハーネスWと他部品等1との位置関係に応じて、例えば図2中の矢印B方向に可撓される。
【0027】
したがって、ワイヤーハーネスWの配索方向を、ワイヤーハーネスWと他部品等1との位置関係に応じて迅速かつ容易に変更することができる。これにより、ワイヤーハーネスWと他部品等1との干渉を確実に回避することができる。
【0028】
本発明により得られるクランプ構造は、例えば車両のエンジンルーム内におけるワイヤーハーネスの配索に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態であるクランプ構造を適用されたクランプを示す斜視図である。
【図2】図1のクランプをワイヤーハーネスの保持に適用した状態を示す概略斜視図である。
【図3】一般的な従来クランプをワイヤーハーネスの保持に適用した状態を示す概略斜視図である。
【図4】特許文献1で開示されているワイヤーハーネス固定用クランプを示す斜視図である。
【図5】図4のクランプをワイヤーハーネスに取り付けた状態を示す側面図である。
【図6】特許文献2で開示されているワイヤーハーネス用クランプを示す斜視図である。
【図7】特許文献3で開示されているワイヤーハーネスの配索構造を示す斜視図である。
【図8】特許文献4で開示されているワイヤーハーネス用プロテクタを示す平面図である。
【図9】非特許文献1で開示されているワイヤーハーネス用クランプを示す斜視図である。
【図10】図9のクランプの取り付け状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 クランプ
11 クランプ本体
12 クリップ部
13 可撓保持部
13a 保持面
W ワイヤーハーネス
A 被取付面の取付孔へのクリップ部の嵌入方向と交差(直交)する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の可撓配索部材を、被取付面に保持させるクランプ構造であって、
クランプ本体と、
該クランプ本体の一方の側に一体的に設けられ、前記被取付面に穿設された取付孔に嵌入されるクリップ部と、
前記クランプ本体の他方の側に一体的に設けられ、前記可撓配索部材の長手方向に沿って当該可撓配索部材を沿わせるように保持させる可撓保持部とを備え、
前記可撓保持部は、前記被取付面の前記取付孔への前記クリップ部の嵌入方向と交差する方向に沿って所要の可撓性を有することを特徴とするクランプ構造。
【請求項2】
前記可撓保持部が、前記可撓配索部材を沿わせるように保持させる保持面を、前記被取付面の前記取付孔への前記クリップ部の嵌入方向に沿って形成されるとともに、当該保持面と直交する方向に沿って所要の可撓性を有することを特徴とする請求項1記載のクランプ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109652(P2006−109652A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294939(P2004−294939)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】