説明

クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法

【課題】
香料の揮散による散逸がなく、香料が完全に包接され、香りの保存安定性が良く、また、顆粒の流動性が高く、高湿度環境下でもブロッキングを起こしにくく、さらには、フレーバーリリースが望ましいタイミングでおこるクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】
粉末香料、糖質および軟化点が55℃〜90℃である油性物質を混合し、これらの混合物を加熱して糖質を溶融または半溶融状態とした後、冷却、固化し、粉砕することを特徴とするクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、かりかりまたはさくさくとしたクリスピー感を有する食感を有し、香料の保存安定性に優れ、顆粒の流動性に優れ、ブロッキングを起こしづらく、かつ、フレーバーリリースが望ましいタイミングでおこるクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種食品に賦香の目的で粉末香料が用いられている。粉末香料は、粉末飲料、粉末調味料、粉末スープの素などの粉末食品などに利用できるほか、スナックなどの表面にふりかける素材として、また、チューインガム、キャンディーなどの乾燥した食品などに有用である。特に、チューインガムでは液体香料を用いた場合、チューインガム基材に香料が溶解・吸収されてしまい、口中へ放出されにくくなり、香味発現性が悪くなるなどの不利な面が見られるが、粉末香料を使用した場合、特にカプセル化された粉末香料を使用した場合は、粉末の外殻のカプセルの溶解に伴い、適切なタイミングでフレーバーリリースが行われ、非常に好ましい効果を発揮するなどの有利な点がある。
【0003】
カプセル化技術は、特に香料分野において、その揮発性および不安定性を解決する方法として古くから盛んに研究が行われており、糖質などの炭水化物のマトリクス中に香料を封じ込める方法としてさまざまな方法が開発されている。
【0004】
例えば、蔗糖等とDE20以下の澱粉水解物および乳化剤からなる混合物を加熱し、これに精油風味剤と食用油脂等の香味成分を混和したものを、冷たい溶媒中に押し出し、香味成分含有油脂のカプセルを成形する方法(特許文献1)、DEが5〜12である澱粉加水分解物と蔗糖の重量比が40:60〜55:45の糖質混合物を加熱溶融し、加熱溶融物に香料などを含有させた食用油を乳化剤などを用いて分散させ、加温したエクストルーダーにて溶融押出造粒することによりカプセル化する食用油脂カプセルの製造法(特許文献2)、香料の押出溶融造粒によるカプセル化において、揮発性成分の多量の揮発を阻止するのに十分な圧力下で溶融物を凝固させることを特徴とする製法(特許文献3)、モノ又はジサッカライドとポリサッカライドと水を混合した混合物に芳香油を均一に混合し、融解押出形成させ、その結果生じる粒子状芳香組成物が、室温以下のガラス転移温度を有することを特徴とする粒子状芳香組成物の製造方法(特許文献4)、香料と賦形剤を含む原材料から調製した粉末香料をローラーで圧縮することにより部分的に溶融状態の板状物を得、板状物を粉砕・造粒することを特徴とする顆粒状香料の製造方法(特許文献5)、食用油脂及びフレーバーオイルからなる群から選ばれる少なくともひとつの油脂と粉末食品をミキサーなどにて均一に混合して、油脂の含有量が0.5%〜40%の混合物を得、得られた混合物をバインダーを用いることなく乾式圧縮造粒法によって処理することを特徴とする油脂含有粉末食品の製造方法(特許文献6)、フレーバー又はフレグランスのデリバリーシステムを製造するホットメルト押出法において、ガラスを形成させるための押出生成物の急冷を−25℃未満の低温冷却剤の冷媒(例えば液体窒素)を用いて行う方法(特許文献7)などが挙げられる。
【0005】
しかしながら、香料または香料含有油脂を乳化してカプセル化する技術は、香料が直接加熱溶融した糖質と接触し、高温にさらされるため香気が飛散しやすく、また被覆が不完全となりやすいため、経時的に香料の揮散による逸脱や酸化劣化を受け易いという、避けられない欠点があった。また、糖質組成にはさまざまな配合による工夫が見られるが、いずれにおいても糖質自体が比較的吸湿性に富むため、保存性に劣り固結しやすい欠点を有している。したがって香料の安定性、粉末の吸湿によるブロッキングなどの課題を解決した香料含有顆粒状組成物の出現が強く望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開昭49−62677号公報
【特許文献2】特公昭63−24652号公報
【特許文献3】特表平7−502187号公報
【特許文献4】特表平9−507267号公報
【特許文献5】特許第3444874号公報
【特許文献6】特開平11−276144号公報
【特許文献7】特表2008−510695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、製造時において香料の揮散による散逸がなく、香料が完全に包接され、香りの保存安定性が良く、また、顆粒の流動性が高く、高湿度環境下でもブロッキングを起こしにくく、フレーバーリリースが望ましいタイミングでおこる香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供することにある。さらには、香味の発現と同時にクリスピーな感覚が得られる、独特の新しい食感の香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、糖質を溶融して香料をカプセル化する方法について鋭意研究した結果、糖質の溶融物に少量の硬化油やワックスなどの軟化点が常温よりやや高く、かつ、糖質マトリクスの融点より低い油性物質を含有させることにより、得られた香料含有顆粒状組成物が油性物質で被覆された状態となり、流動性が良く、高湿度環境下でもブロッキングを起こしにくいことを見出した。また、顆粒状組成物を調製する際に、粉砕の粒度をある程度大きくすることで、独特のクリスピー感が得られ、クリスピー感の発現と同時に香味も発現することを見出した。さらに、カプセル化に用いる香料原料として従来のような液体の香料ではなく、一旦粉末化した香料を用いることにより、香料の揮散による散逸がなく、香料が完全に包接され、得られた香料組成物の保存安定性が良い香料含有顆粒状組成物が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、香料、糖質、および、軟化点が55℃〜90℃である油性物質を混合し、これらの混合物を加熱して糖質を溶融または半溶融状態とした後、冷却、固化し、粉砕することを特徴とするクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、香料含有顆粒状組成物の粒度が、目開き寸法2mmを通過し、かつ、目開き寸法425μmを通過しない部分が70%以上であることを特徴とする前記のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、軟化点が55℃〜90℃である油性物質を、香料含有顆粒状組成物中に質量換算で0.5%〜30%含有することを特徴とする前記のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、軟化点が55℃〜90℃である油性物質が、食用硬化油脂、植物ステロール、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ、ライスワックス、ミツロウおよびシェラックから選ばれる1種以上であることを特徴とする、前記のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供するものである。
【0013】
さらにまた、本発明は、香料が粉末香料であることを特徴とする前記のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により得られたクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物は、製造時に香気の揮散による散逸が少ないため、原料とした香料の香気を良好に再現している。また、包接が完全にされているため香りの保存安定性が良い。さらに、粉体の表面が固化した油性物質で被覆された状態となっているため、顆粒としての流動性が高く、高湿度環境下でもブロッキングを起こしにくい。さらには、クリスピー感を有しているため、チューインガムなどの食品に使用した場合、かりかりまたはさくさくとしたクリスピー感が得られると共に、それと同時にフレーバーリリースがおこるため、感覚的にも新しく面白い。さらにまた、香気の持続性についても良好なチューインガムが得られるという利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いる香料としては特に制限はなく、各種天然精油、エキストラクト、オレオレジン、レジノイドなどの天然の抽出物、合成香料化合物、またはこれらを調合した調合香料のいずれであっても使用することができる。天然精油としては、例えば、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油、花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油が挙げられ、天然物の抽出物としては、例えば、コーラナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、ワニラエキストラクト、ココアエキストラクト、紅茶エキストラクト、スパイス類エキストラクトなどの油性のエキストラクト、レジノイドおよびびこれらのオレオレジン類などが挙げられ、合成香料化合物としては、例えば、”日本における食品香料化合物の使用実態調査”(平成12年度 厚生科学研究報告書;日本香料工業会 平成13年3月発行)、”合成香料 化学と商品知識”(2005年3月22日増補改訂版発行 印藤元一著 化学工業日報社)等に記載のエステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、炭化水素類、含窒素及び/又は含硫化合物類、酸類の群から選ばれる少なくとも1種以上の合成香料などが挙げられる。
【0016】
香料原料としては前記香料化合物や天然香料以外にも、各種の油溶性色素類、ビタミン類、機能性物質なども使用することもできる。油溶性色素類としては、例えば、β−カロチン、パプリカ色素、アナトー色素及びクロロフィルなどの油溶性天然色素類が挙げられ、油溶性ビタミン類としては、例えば、肝油、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンD3、ビタミンB2酪酸エステル、ビタミンE、ビタミンFなどが挙げられ、機能性物質としては、例えば、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、DHAおよび/またはEPA含有魚油、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、月見草油、ボラージ油、レシチン、オクタコサノール、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、γ−オリザノール、β−カロチン、パームカロチン、シソ油などを挙げることができる。
【0017】
本発明では、原料として用いる香料はあらかじめ噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの方法により粉末香料としたものを用いることが好ましい。粉末香料を用いることにより、糖質を溶融または半溶融状態とした時点で、軟化点が55℃〜90℃である油性物質と香料成分が混和せず、また、糖質の溶融または半溶融による加熱に伴う香料成分の揮発による散逸、劣化が抑えられる。
粉末香料の調製においては、これらの油性材料混合物を、例えば、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリド、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、化工でん粉、ソルビタン脂肪酸エステル、キラヤ抽出物、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、カラヤガム、キサンタンガム、ペクチン、アルギン酸及びその塩類、カラギーナン、ゼラチン、カゼイン、デキストリン、単糖類、二糖類、ポリオール類などの、界面活性剤や適当な賦形剤などを用いて乳化し、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの乾燥法により乾燥することにより得ることができる。本発明では、この以上のような方法により、一旦粉末化した香料を、炭水化物マトリクス中に封じ込めるための原料とする点に一つの大きな特徴がある。
【0018】
本発明で使用する粉末香料の量は、特に制限はないが、本願の発明品であるクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物中に質量換算で5%〜50%、好ましくは10%〜40%を挙げることができる。
【0019】
本発明で粉末香料を封じ込めるための外殻となる糖質マトリクスの原料として用いることのできる糖質は、特に制限はなく、単糖類、単糖類の糖アルコール、二糖類、二糖類の糖アルコール、オリゴ糖類、多糖類などいずれでも使用することができる。これらの糖質の内、好ましい糖質としてはキシリトール、ショ糖、グルコース、フラクトース、ラクトース、トレハロース、エリスリトール、マルチトールなどを挙げることができる。これらの糖質は単独でも使用できるし、2種類以上併用してもよい。
【0020】
使用する糖質の量は、粉末香料を封じ込め、マトリクスとするために十分な量であれば、いかなる量でも採用することができるが、本願の発明品であるクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物中に質量換算で30%〜90%、好ましくは40%〜85%、さらに好ましくは50%〜80%を挙げることができる。
【0021】
本発明ではマトリクスの組成中に軟化点が55℃〜90℃である油性物質を使用することを一つの大きな特徴とする。また、油性物質を使用するに当たり、粉末香料、糖質および油性物質を混合する際において乳化剤を使用しないことが好ましい。乳化剤を使用せずに溶融した糖質中に油性物質が分散することにより、油性物質は乳化されカプセル化されることなく、溶融した糖質に混練された状態となる。したがって、溶融した糖質を固化した後、粉砕を行うことにより、油性物質は粉砕された糖質マトリクスの表面に存在する状態となり、得られた顆粒が油性物質の被膜でコーティングされた状態となる。そのため、得られた顆粒は流動性が高く、吸湿しにくく、また、香料成分が殻の外に揮散しにくく、さらに、香料自体が空気に触れにくいため酸化劣化を受けにくい。
【0022】
使用する油性物質は軟化点が55℃〜90℃である油性物質である必要がある。軟化点が55℃未満の場合、糖質のマトリクスが固化後も油性物質が溶解した状態となってしまう。この場合、粉砕後の表面に流動性のある油性物質がコーティングされた状態であるため、べとべとした状態となってしまい、粉末粒子同士が結着してしまい、流動性がなくなり好ましくない。また、軟化点が90℃以上の場合、糖質が溶融または半溶融状態となったときにも油性物質が固体のままであるため、油性物質粒子が糖質で覆われた状態となり、油性物質が糖質の表面を覆う状態とはならない。
【0023】
本発明で使用できる軟化点が55℃〜90℃である油性物質としては、例えば、食用硬化油脂、植物ステロール、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ(軟化点約78℃〜86℃程度)、ライスワックス(軟化点70℃〜80℃程度)、ミツロウおよびシェラック(軟化点約72℃〜78℃程度)などを例示することができる。また、食用硬化油脂としては、例えば大豆硬化油(軟化点約60℃〜70℃程度)、パーム油硬化油(軟化点約56℃〜70℃程度)、ナタネ油硬化油(軟化点約60℃〜70℃程度)などが例示できる。植物ステロールとしては、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、フコステロールなどが例示できる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどを例示でき、脂肪酸部分がパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸であるものを例示できる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、脂肪酸部分がパルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸であるものを例示できる。これらの油性物質は単独で、あるいは、数種類を組み合わせて使用しても良い。
【0024】
使用する油性物質の量は、糖質によるマトリクスが粉砕された後、その表面を覆うことのできる量であれば、いかなる量でも採用することができるが、発明品であるクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物中に質量換算で0.5%〜30%、好ましくは1%〜20%、さらに好ましくは2%〜15%を挙げることができる。
【0025】
本発明では、以上の粉末香料、糖質および軟化点が55℃〜90℃である油性物質を混合し、これらの混合物を加熱して糖質を溶融または半溶融状態とする。この際、粉末香料、糖質および油性物質は溶融前にあらかじめ粉体で混合しておくことが好ましい。糖質のみ、あるいは、糖質と油性物質を溶融または半溶融した後に粉末香料を添加した場合、粉末香料自身の外殻の糖質部分が溶融してしまい、その結果、香料成分そのものが溶融した糖質マトリクスと直接接触する状態となり、従来の糖質マトリクスによる香料のカプセル化と大差のないものとなってしまう。また、糖質のみ、あるいは、粉末香料と糖質を溶融または半溶融とした後に油性物質を添加した場合、融解した糖質マトリクスから熱が奪われ、マトリクスの温度が低下する。それを補うためには、糖質マトリクスの融解温度を高く設定する必要があるが、その場合香料が高温にさらされることとなり、香料の安定性、揮散による軽沸点部の散逸の観点から好ましくない。したがって本発明で用いる軟化点が55℃〜90℃である油性物質は、粉末状のものを使用することが好ましく、粉末香料、糖質および油性物質はあらかじめ、攪拌釜、ニーダー、ナウターミキサー、リボンミキサー、エクストルーダーなどの粉体混合機により、粉体混合しておくことが好ましい。
【0026】
本発明では、粉末香料、糖質および油性物質の混合物を加熱して、糖質を溶融または半溶融状態とする。この際の糖質を溶融または半溶融とするための温度は80℃〜130℃で、かつ、使用する油性物質の軟化点以上の温度が好ましい。糖質を溶融または半溶融とするための温度が80℃を下回る場合、糖質が融解または半融解状態とならないため、均一なマトリクスを形成することができず好ましくない。また、糖質を溶融または半溶融とするための温度が130℃を上回ってしまう場合、香料の熱劣化が起こる可能性があり好ましくない。糖質を溶融または半溶融状態とするためには必要に応じて、水を使用する。糖質の加熱溶融温度は、糖の種類により異なり、例えば、糖質がキシリトール(融点92℃〜96℃)であれば、93℃程度で融解状態となるため、水を使用する必要は全くない。しかし、糖の種類によっては、水を使用しない場合、溶融または半溶融とするための温度が130℃を上回ってしまう可能性があるため、水をクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物中に質量換算で0%〜15%程度使用することで糖質を溶融または半溶融とするための温度を130℃より低い温度とすることができる。水の使用量、糖質を溶融または半溶融とするための温度は、使用する糖質組成、装置などの条件により適宜選択ればよい。なお、水は粉末香料、糖質および油性物質の粉体混合時に混合しておくことが好ましい。
【0027】
これらの、混合物を加熱して糖質を溶融または半溶融状態とするための装置は、粉体混合機がジャケット等の加熱装置を有している場合は、そのまま加熱しても良いし、加温したエクストルーダーに送り込んで加熱と押出を連続的に行っても良い。また、エクストルーダーを使用する場合は、粉体の混合〜加熱による溶融または半溶融〜押しだしを連続的に行うこともできる。
【0028】
加熱による溶融または半溶融物は装置から抜き出した後、例えば、トレーなどに乗せ、薄膜状またはひも状とすることで固化させることができる。またこの際、トレーなどの裏側を冷却機で冷却することにより、効率よくマトリクスを固化させることができる。また、エクストルーダーなどを用いて押出を行った場合は、冷却雰囲気下への押出、減圧雰囲気下への押出による気化熱を奪われることによる冷却などにより固化することができる。一方、冷却した溶媒(エタノール、イソプロパノールなど)への押出は本発明では、マトリクス表面の油性物質が洗い流されてしまうため、あまり好ましくない。
【0029】
本発明では得られた固化物を適当な粉砕機を用いて粉砕しクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物を得る。粉砕する装置としては、例えば、振動ミル、ボールミル、フェザーミル、ハンマーミルなどの粉砕機が挙げられる。これらの粉砕機を用いて適当なメッシュサイズまたは目開き寸法の出口を通過させることにより、目開き寸法2mmを通過し、かつ、目開き寸法425μmを通過しない部分が70%以上となるように粉砕することができる。この際の出口のメッシュサイズとしては6.5メッシュ〜10メッシュ(JIS Z−8801)程度、すなわち目開き寸法としては2.8mm〜1.7mm程度を例示することができ、好ましくは、メッシュサイズとしては6.5メッシュ〜7.5メッシュ(JIS Z−8801)程度、すなわち目開き寸法としては2.8mm〜2.36mm程度を例示することができる。また、微粉が多いときには、36メッシュ〜60メッシュ(JIS Z−8801)程度で篩い、微粉の一部を除去することにより前記範囲内に調整することも可能である。
【0030】
なお、目開き寸法2mmを通過し、かつ、目開き寸法425μmを通過しない部分が70%以上とは、目開き寸法425μmである篩を用いて粉体を篩い、その通過部をさらに目開き寸法2mmである篩を用いて篩った場合に、元の重量の内70%以上が目開き寸法425μmを通過しない部分の上に残り、目開き寸法2mm未通過の部分と目開き寸法425μmを通過した部分を合わせた量が元の重量の内30%未満であることを意味する。目開き寸法2mmとはJIS Z−8801による8.6メッシュの目開き基準寸法であり、目開き寸法425μmとはJIS Z−8801による36メッシュの目開き基準寸法である。メッシュサイズは金網の目の細かさを表す単位であり、1インチあたりの目の数を表すが、金網の太さが太ければ、同じメッシュサイズであっても目開き寸法は小さくなり単純に比較することはできないため、目開き寸法により出口の口径を特定することがより好ましい。
【0031】
以上の本発明の方法により得られたクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物は、製造時に香気の揮散による散逸が少ないため原料とした香料の香気を良好に再現しており、包接が完全にされているため香りの経時安定性が良く、さらに粉末の表面がワックスコートされた状態となっているため、顆粒としての流動性が高く、高湿度環境下でもブロッキングを起こしにくい。さらには、かりかりまたはさくさくとしたクリスピー感を有しており、その食感が味わえると供に、それと同時にフレーバーリリースがおこるため、感覚的に新しく面白い。
【0032】
本発明のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物を添加することのできる飲食品類としては、例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、粉末スープ、スナック食品、食肉水産加工品、調味料、インスタント食品、レトルト食品、調理食品、嗜好飲食品など各種飲食品およびその他の飲食品などが挙げられ、これらの飲食品に、香気香味賦与剤、調味料または調味素材であるとともにクリスピーな食感を付与するための適当量を添加することにより、加工及び保存時に香気成分の揮散、香気成分・呈味成分などの成分変化が抑えられ、飲食時に食品材料の持つ良質な香気香味が速やかに味わうことができ、さらに、香味の発現と共にクリスピーな感覚を得ることができる飲食品類を提供することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0033】
参考例1(メントール粉末香料の調製)
軟水1300gに化工デンプン300gおよびデキストリン400gを溶解した後、メントール300gを添加し、ホモミキサーにて乳化粒子経0.5μm〜2μm程度に乳化を行い、O/Wエマルジョンを得た。このエマルジョンをモービルマイナー型スプレードライヤー(ニロジャパン社製)を使用して、熱風入り口温度150℃、排風温度80℃、アトマイザー回転数20000rpmにて噴霧乾燥を行い、メントールを30%含有する粉末香料980gを得た(参考品1)。
【0034】
実施例1(本発明品)
キシリトール(融点93℃)700g、参考品1を170gおよび菜種硬化油脂粉末(軟化点67℃)130gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:92℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:81℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品1:メントール5.1%含有)。本発明品1をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0035】
比較例1(実施例1において油性物質(菜種硬化油脂粉末)を使用せずに固化したもの)
キシリトール(融点93℃)830gおよび参考品1を170gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:92℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:81℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(比較品1:メントール5.1%含有)。比較品1をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0036】
比較例2(メントールを直接マトリクスに封じ込めたもの)
化工デンプン51g、デキストリン68g、キシリトール700g、メントール51gおよび菜種硬化油脂粉末(軟化点67℃)130gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:92℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:81℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(比較品2:メントール5.1%含有)。比較品2をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0037】
比較例3(実施例1の硬化油に変えて、菜種白しめ油を使用したもの)
キシリトール(融点93℃)700g、参考品1を170gおよび菜種白しめ油(軟化点−10℃)130gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:92℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:81℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕したところ、粉砕物が結着し、スクリーンを通らず、粉砕物を得ることができなかった。
【0038】
実施例2(実施例1の押出溶融に変え、攪拌釜で溶融しトレーで固化したもの)
キシリトール(融点93℃)700g、参考品1を170gおよび菜種硬化油脂粉末(軟化点67℃)130gを混合した後、攪拌しながら加熱し、昇温したところ、60℃〜65℃で硬化油脂が溶解し始め、その後90℃〜94℃でキシリトールが半溶融の状態となったため、94℃の時点で加熱を停止し、20cm×30cmのステンレストレーに流し込み(厚さ約1.6mm)送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品2:メントール5.1%含有)。本発明品2をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0039】
実施例3(実施例1において糖質をショ糖に、菜種硬化油脂粉末をシェラックに変更したもの)
ショ糖(融点185℃)700g、参考品1を170gおよびシェラック粉末(軟化点75℃)130gおよび水49gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:118℃
ダイ面の設定温度:85℃
ダイから押し出された時の品温:104℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品3:メントール5.1%含有)。本発明品3をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0040】
実施例4(実施例1において糖質をブドウ糖に、菜種硬化油脂粉末をパーム硬化油脂に変更したもの)
ブドウ糖(一水結晶:融点83℃)700g、参考品1を170gおよびパーム硬化油脂粉末(軟化点70℃)130gおよび水70gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:81℃
ダイ面の設定温度:65℃
ダイから押し出された時の品温:70℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品4:メントール5.1%含有)。本発明品4をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0041】
実施例5(実施例1において糖質を果糖に、菜種硬化油脂粉末をカルナウバロウに変更したもの)
果糖(無水:融点104℃)700g、参考品1を170gおよびカルナウバロウ粉末(軟化点84℃)130gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:103℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:88℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品5:メントール5.1%含有)。本発明品5をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0042】
実施例6(実施例1において糖質をトレハロースに、菜種硬化油脂粉末をライスワックスに変更したもの)
トレハロース(二水結晶:融点97℃)700g、参考品1を170gおよびライスワックス粉末(軟化点75℃)130gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:97℃
ダイ面の設定温度:70℃
ダイから押し出された時の品温:85℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品6:メントール5.1%含有)。本発明品6をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0043】
実施例7(実施例1において糖質を乳糖およびエリスリトールに、菜種硬化油脂粉末を大豆硬化油脂に変更したもの)
乳糖(無水α−D−ラクトース:融点223℃)350g、エリスリトール(無水:融点119℃)350g、参考品1を170gおよび大豆硬化油脂粉末(軟化点68℃)130gおよび水70gを混合した後、2軸エクストルーダーEA−20(スエヒロEPM社製)にて加熱して溶融し、0.8mmの穴を有するダイプレートから押出を行った。
押出条件:混合物を溶融した時の温度:105℃
ダイ面の設定温度:75℃
ダイから押し出された時の品温:95℃
スクリュー回転数:60rpm
押し出された混合物は、ステンレストレーに重なり合わないようにひも状に置き、送風して室温まで冷却し、固化させた後、パワーミル(ダルトン社製)スクリーン口径2.0mmにて粉砕し、クリスピー感のある香料含有顆粒状組成物970gを得た(本発明品7:メントール5.1%含有)。本発明品7をJIS Z−8801による8.6メッシュ(目開き寸法2.0mm)にて篩ったところ、98%が通過し、通過部をさらに36メッシュ(目開き寸法425μm)にて篩ったところ、もとの質量の内85%がメッシュ上に残った。
【0044】
実施例8(吸湿安定性に関する試験)
参考品1、本発明品および比較品をシャーレに5g採取し、粉末を均一に敷き詰めた後、温度40℃、相対湿度60%にて5時間吸湿試験を行った。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示したとおり比較品1(油性物質を使用しないもの)はブロッキングを形成してしまい、比較品2(メントールを直接マトリクスにカプセル化したもの)もややブロッキングを形成してしまい共に状態は不良であった。また、参考品1(メントールの粉末香料)はブロッキングはしていないが、流動性がやや低下しており、吸湿の影響が見られた。
一方、本発明品1〜7は吸湿試験後も完全に良好な状態を維持しており、高湿度下での安定性が極めて良好であることが判明した。
【0047】
実施例9(保存安定性に関する試験)
参考品1、本発明品および比較品をそれぞれ30gづつ7cm×11cmのビニール袋に採取し、密閉し、40℃、暗所にて4週間保存試験を行った。また、それぞれのコントロールとして、冷凍(−20℃)保存したものを用意した。保存後のサンプルを0.1%水に希釈し(参考品1のみ0.017%)10名の良く訓練されたパネラーにより、冷凍保存品をコントロールとして、メントール感の強度を官能にて評価した。10人の平均的な評価結果を結果を表2に示す。
【0048】
【表2】

【0049】
表2に示したとおり、参考品1(メントールの粉末香料)は保存によりメントール感が弱くなってしまい、比較品1(油性物質を使用しないもの)もメントール感がわずかに弱くなってしまった。また、比較品2(メントールを直接マトリクスにカプセル化したもの)もメントール感がやや弱くなってしまった。
一方、本発明品1〜7は保存試験後も十分なメントール感を維持しており、保存安定性が良いことが判明した。
【0050】
実施例10(チューインガムへの賦香試験および官能評価:香味の発現試験)
下記に示すチューインガム基材に参考品1、本発明品または比較品をそれぞれ添加し、高せん断型ミキサーを用いて常法により約50℃で混合し、冷却後ロールにかけて圧展成型し、1枚3gのチューインガムを調製した。
チューインガム基材組成
原料 配合量
チューインガムベース 100部
砂糖 250
ブドウ糖 40
コーンシロップ(Bx85) 60
グリセリン 3
本発明品または比較品 4.5
(なお、参考品1のみは配合量0.765質量部とした)
このチューインガムについて10名の専門パネラーにより官能評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
表3に示したとおり、本発明品は咀嚼時に顆粒由来のかりかりとした食感を強く感じ、それと共にメントールの香味が強烈に発現し、さらにまた、メントール感が、長時間持続した。
一方、参考品1(メントールの粉末香料)はかりかり感は全くなく、香味の発現は素早く、強度があるが、香味が長時間持続せず、持続性に劣るという欠点を有していた。また、比較品1(油性物質を使用しないもの)は香味の発現の仕方は本発明品と類似していたが、本発明品ほど長時間持続しなかった。また、比較品2(メントールを直接マトリクスにカプセル化したもの)は香味の発現がゆっくりで、マイルドであるが、弱くてインパクトに欠けた。これは、香料成分が油脂で希釈されてさらに乳化されマトリクス中に分散しているためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料、糖質、および、軟化点が55℃〜90℃である油性物質を混合し、これらの混合物を加熱して糖質を溶融または半溶融状態とした後、冷却、固化し、粉砕することを特徴とするクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。
【請求項2】
香料含有顆粒状組成物の粒度が、目開き寸法2mmを通過し、かつ、目開き寸法425μmを通過しない部分が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。
【請求項3】
軟化点が55℃〜90℃である油性物質を、香料含有顆粒状組成物中に質量換算で0.5%〜30%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。
【請求項4】
軟化点が55℃〜90℃である油性物質が、食用硬化油脂、植物ステロール、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、カルナウバロウ、ライスワックス、ミツロウおよびシェラックから選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。
【請求項5】
香料が粉末香料であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のクリスピー感のある香料含有顆粒状組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−142124(P2010−142124A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319349(P2008−319349)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】