説明

クリップ

【課題】留め付けとその解除とを繰り返し行っても、留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態を維持させる機能が損なわれることのないようにする。
【解決手段】基部4から突き出す軸部1aとこの軸部1aに略直交する向きに突き出す分岐部1bとを備えてなる入れ込み部1を備えており、この入れ込み部1の軸部1aの受け入れ部に分岐部1bの受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物Pに形成された貫通穴Hにこの入れ込み部1を入れ込んだ後の軸部1aを中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物Pに留め付くクリップCである。基部4には、所定の前記捻回位置で貫通穴Hに入り込む回り止め突起4bが形成されていると共に、貫通穴Hから回り止め突起4bを抜き出させる向きの基部4の弾性変形操作を可能とする操作部4cが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、留め付け対象物に形成された貫通穴への入れ込み部を備えており、かかる貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
留め付け対象物に形成された細長い穴に、頭部とこの頭部の直径方向両側においてそれぞれこの頭部から側方に突き出すアーム部とを備えた差し込み部を差し込んだ後、この頭部を中心として略90度の捻回操作をなすことで、差し込み先側にある留め付け対象物の面にアーム部を引っかけて留め付け対象物に留め付く構成を備えたものとして特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1のものはアーム部に備えた突起を前記捻回位置で留め付け対象物に形成させた係止穴に係止させ前記留め付け状態を維持するようになっている。特許文献1のものの留め付けの解除は前記捻回の向きと逆向きに略90度の捻回操作を行なうこととなるが、この捻回操作にあたっては前記係止穴から突起が無理矢理抜き出されることとなるため、突起の摩耗や損耗を生じやすく、したがってまた、前記留め付けとその解除を繰り返し行うことに難を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2553833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のクリップにおいて、留め付け対象物に対する留め付けとその解除とを繰り返し行っても、留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態を維持させる機能が損なわれることのないようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、第一の観点から、クリップを、基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
基部は弾性変形可能に構成されていると共に、この基部にこの基部の弾性変形操作を可能とする操作部が備えられているものとした。
【0007】
かかる構成によれば、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませた状態から前記捻回操作をなすことにより、基部を弾性変形させながら入れ込み部の分岐部とこの基部とで留め付け対象物を挟み付けてこの留め付け対象物に対してクリップの留め付けをなすことができる。この状態から、操作部を利用して基部を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり入れ込み部や基部は損耗することがない。
【0008】
この第一の観点にかかるクリップにおいて、基部に、所定の前記捻回位置で貫通穴に入り込む回り止め突起を形成させておくこともある。このようにした場合、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませたときに、回り止め突起をこの留め付け対象物における貫通穴への入れ込み手前側の面に基部を弾性変形させながら押し当てさせることができる。この状態から前記捻回操作をなすと回り止め突起が貫通穴に入り込む位置での基部の弾性復帰によって回り止め突起は貫通穴内に入り込み、分岐部の前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。これにより留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態は安定的に維持される。この状態から、操作部を利用して回り止め突起を貫通穴から抜け出させるように基部を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり回り止め突起が貫通穴の穴縁によって傷付けられることはない。
【0009】
前記回り止め突起を、基部における入れ込み部の形成側の圧接面部に形成させておくと共に、
操作部を、基部における圧接面部と反対の側であって、回り止め突起と略背中合わせとなる位置に形成させておくこともある。
【0010】
このようにした場合、操作部を操作することで、貫通穴からスムースに回り止め突起を抜き出させることができると共に、この状態のままクリップを留め付けを解く位置まで捻回操作することができる。
【0011】
前記基部の圧接面部を、入れ込み部の軸部を吸盤中心とするように成形された吸盤状をなすように構成させておくこともある。
【0012】
このようにした場合、クリップの留め付け対象物への留め付け状態において、この留め付け対象物に形成された貫通穴を入れ込み部の入れ込み手前側において基部によって覆って塵埃や塵芥がこの側から入れ込み先側に入り込まないようにシールすることができる。
【0013】
また、前記課題を達成するために、第二の観点から、クリップを、基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
入れ込み部の分岐部に、留め付け対象物の一面側に弾性変形しながら接して、基部を留め付け対象物の他面に押しつけるバネ手段が備えられているものとした。
【0014】
かかる構成によれば、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませた状態から前記捻回操作をなすことにより、バネ手段を弾性変形させながら基部とこのバネ手段とで留め付け対象物を挟み付けてこの留め付け対象物に対してクリップの留め付けをなすことができる。この状態から、基部の留め付け対象物の他面への押しつけを解くようにバネ手段を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり入れ込み部や基部は損耗することがない。
【0015】
この第二の観点にかかるクリップにおいて、基部に、所定の前記捻回位置で貫通穴に入り込む回り止め突起を形成させておくこともある。このようにした場合、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませた後、回り止め突起をこの留め付け対象物における貫通穴への入れ込み手前側の面にバネ手段を弾性変形させて押し当てさせながら、前記捻回操作をなすことができる。この状態から回り止め突起が貫通穴に入り込む位置まで捻回操作がなされるとバネ手段の弾性復帰によって回り止め突起は貫通穴内に入り込み、分岐部の前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。これにより留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態は安定的に維持される。この状態から、回り止め突起を貫通穴から抜け出させるようにバネ手段を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり回り止め突起が貫通穴の穴縁によって傷付けられることはない。
【0016】
また、前記課題を達成するために、第三の観点から、クリップを、基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
基部に、留め付け対象物の一面に分岐部を押しつけるように、留め付け対象物の他面側に弾性変形しながら接するバネ手段が備えられているものとした。
【0017】
かかる構成によれば、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませた状態から前記捻回操作をなすことにより、バネ手段を弾性変形させながら入れ込み部の分岐部とこのバネ手段とで留め付け対象物を挟み付けてこの留め付け対象物に対してクリップの留め付けをなすことができる。この状態から、留め付け対象物の一面への分岐部の押しつけを解くようにバネ手段を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり入れ込み部や基部は損耗することがない。
【0018】
この第三の観点にかかるクリップにおいて、入れ込み部の分岐部に、所定の前記捻回位置で留め付け対象物に形成させた回り止め凹所に入り込む回り止め突起を形成させておくこともある。このようにした場合、留め付け対象物の貫通穴に入れ込み部を入れ込ませた後、回り止め突起をこの留め付け対象物における貫通穴への入れ込み先側の面にバネ手段を弾性変形させながら押し当てさせながら、前記捻回操作をなすことができる。かかる捻回操作により回り止め突起が回り止め凹所に入り込む位置に至るとバネ手段の弾性復帰によって回り止め突起は回り止め凹所に入り込み、分岐部の前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。これにより留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態は安定的に維持される。この留め付けにあたり回り止め突起が貫通穴の穴縁によって傷付けられることはない。この状態から、回り止め突起を回り止め凹所から抜け出させるようにバネ手段を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップを再び捻回操作することでクリップの留め付けは解かれる。
【発明の効果】
【0019】
この発明にかかるクリップにあっては、留め付け対象物に対する留め付けとその解除とを繰り返し行っても、回り止め突起が摩耗又は損耗することがなく、留め付け対象物に対するクリップの留め付け状態を維持させる機能は損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】クリップの第一例の斜視図
【図2】クリップの第一例の斜視図
【図3】同留め付け状態を示した斜視図
【図4】同留め付け状態を示した斜視図(図3の側と反対の側から視た図)
【図5】同側面図
【図6】クリップの第二例の側面図(留め付け状態)
【図7】クリップの第二例の側面図(留め付け状態/図6と90度異なる向きから視た図)
【図8】クリップの第三例の側面図(留め付け状態)
【図9】クリップの第三例の側面図(留め付け状態/図8と90度異なる向きから視た図)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1〜図9に基づいて、この発明を実施するための形態について説明する。ここで図1〜図5は実施の形態にかかるクリップCの一例(第一例)を、図6および図7はその他の一例(第二例)を、図8および図9はそのさらに他の一例(第三例)を示している。
【0022】
なお、以下に説明するクリップCにおける弾性変形特性を有すべき箇所へのこの特性の付与は、典型的には、かかるクリップCをプラスチックの射出成型品とすることで容易に確保できる。
【0023】
この実施の形態にかかるクリップCは、留め付け対象物Pに形成された貫通穴Hへの入れ込み部1を備えており、かかる貫通穴Hにこの入れ込み部1を入れ込んだ後の捻回操作によりこの留め付け対象物Pに留め付くものである。かかるクリップCは、典型的には、一方側にかかる入れ込み部1を備えると共に、他方側に前記留め付け対象物PにクリップCを介して取り付けられる他の留め付け対象物P’に対する留め付け部2を備えている。
【0024】
図示の例では、かかるクリップCは、軸状主体3の一端3a側に前記入れ込み部1を形成させ、この軸状主体3の他端3b側に前記留め付け部2を形成させてなる。図示の例では、留め付け部2は、軸状主体3の他端3bとの間に間隔を開けて形成されたフランジ2aと、この他端3bに一端を一体に連接させてフランジ2aの側に突き出す弾性片2bとから構成されている。弾性片2bはその他端の外側にフランジ2aの側を向いた掛合面2dを備えた掛合部2cを備えている。また、弾性片2bは掛合部2cの側に向かうに連れて軸状主体3から次第に離れるように形成されており、軸状主体3の直径方向両側にそれぞれ形成されている。そして、図示の例では、一対の弾性片2b、2bの掛合部2cの掛合面2dの外端間のピッチよりも穴径をやや小さくすると共に、前記フランジ2aを入り込ませない大きさの前記他の留め付け対象物P’に形成された貫通穴H’に、かかる留め付け部2をこの貫通穴H’にフランジ2aが引っかかる位置まで入れ込ませることにより、かかる貫通穴H’の入れ込み先側の穴縁に前記入れ込み時に撓み込まされた弾性片2bの弾発によって前記掛合部2cの掛合面2dを掛合されるように位置づけさせることができ、これによりクリップCはかかる他の留め付け対象物P’にワンタッチで留め付けられるようになっている。(図5、図6、図8)
【0025】
一方、図示の例では、前記入れ込み部1は、軸状主体3の一端3aとの間に間隔を開けて形成された、この軸状主体3から側方に突き出す基部4と、この軸状主体3の一端3aとの間に形成されている。すなわち、かかる入れ込み部1は、かかる基部4から突き出す軸状主体3の一部をなす軸部1aを備えている。また、かかる入れ込み部1は、この軸部1aからこの軸部1aに略直交する向きに突き出す分岐部1bを備えている。
【0026】
図示の例では、分岐部1bは軸部1aの直径方向両側にそれぞれ形成されており、入れ込み部1は側面視でT字状をなすように構成されている。
【0027】
そして、かかるクリップCは、入れ込み部1の軸部1aの受け入れ部Haに分岐部1bの受け入れ部Hbを連通させてなる留め付け対象物Pに形成された貫通穴Hに、この入れ込み部1を入れ込んだ後の軸部1aを中心にした捻回操作により、入れ込み部1と基部4における入れ込み部1の形成側の圧接面部4aとの間で留め付け対象物を挟み込んで、この留め付け対象物Pに留め付くように構成されている。
【0028】
図示の例では、留め付け対象物Pに形成された貫通穴Hは、入れ込み部1の外形に略倣った長穴状をなすように構成されている。貫通穴Hの長さ方向略中程の位置はやや幅広に構成されており、入れ込み部1はこの貫通穴Hの幅広部Ha’に軸部1aを位置させた状態でのみこの貫通穴Hに入れ込み可能となっている。
【0029】
留め付け対象物Pの貫通穴Hに入れ込み部1を入れ込ませた後に前記捻回操作をなすと分岐部1bが貫通穴Hへの入れ込み先側Fwにおいて留め付け対象物Pに引っかかり貫通穴Hから入れ込み部1は抜き出されない状態となり、これによりクリップCはかかる留め付け対象物Pに留め付けられるようになっている。このクリップCの留め付け状態は、前記捻回操作前の位置までクリップCを再び捻回操作することで解かれる。
【0030】
(図1〜図5に示される第一例)
図1〜図5に示されるクリップCにあっては、前記基部4には、所定の前記捻回位置で貫通穴Hに入り込む回り止め突起4bが形成されていると共に、
貫通穴Hから回り止め突起4bを抜き出させる向きの基部4の弾性変形操作を可能とする操作部4cが備えられている。
【0031】
図示の例では、基部4は軸状主体3を中心としてこの軸状主体3から張り出す円板状をなすように構成されている。回り止め突起4bはこの基部4における入れ込み部1の形成側の圧接面部4aであって、この基部4の縁部に形成されている。回り止め突起4bは基部4の直径方向両側にそれぞれ設けられていると共に、一対の回り止め突起4b、4bを通る仮想の直線に対し一対の分岐部1bの突きだし端を通る仮想の直線が交叉(図示の例では略直交)するように回り止め突起4bは形成されている。また、一対の回り止め突起4b、4bはそれぞれ、基部4の周回方向に長く延びるリブ状をなすと共に、その長さを貫通穴Hの端部Hb’側の巾と略等しくするように構成されている。
【0032】
一方、操作部4cは、基部4における圧接面部4aと反対の側であって、回り止め突起4bと略背中合わせとなる位置にそれぞれ形成されている。各操作部4cは一端を基部4に一体に連接させて軸状主体3の他端3b側に突き出す板片状をなすように構成されている。また、かかる回り止め突起4bと入れ込み部1における分岐部1bの基部4の側を向いた面間の入れ込み部1の入れ込み方向におけるピッチは、留め付け対象物Pの厚さよりやや小さくなるようにしてある。
【0033】
かかる構成によれば、留め付け対象物Pの貫通穴Hに入れ込み部1を入れ込ませきったときに、回り止め突起4bをこの留め付け対象物Pにおける貫通穴Hへの入れ込み手前側の面に基部4を弾性変形させながら押し当てさせることができる。この状態から前記捻回操作をなすと回り止め突起4bが貫通穴Hに入り込む位置での基部4の弾性復帰によって回り止め突起4bは貫通穴H内に入り込み、分岐部1bの前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。(図3〜図5)これにより留め付け対象物Pに対するクリップCの留め付け状態は安定的に維持される。この状態から、操作部4cを利用して回り止め突起4bを貫通穴Hから抜け出させるように基部4を弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップCを再び捻回操作することでクリップCの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり回り止め突起4bが貫通穴Hの穴縁によって傷付けられることはない。
【0034】
図示の例では、一対の操作部4c、4cを同時に軸状主体3の側に近づける向きに操作することで、貫通穴Hからスムースに回り止め突起4bを抜き出させることができると共に、この状態のままクリップCを留め付けを解く位置まで捻回操作できるようになっている。
【0035】
また、図示の例では、かかる基部4の圧接面部4aは、入れ込み部1の軸部1aを吸盤中心とするように成形された吸盤状をなすように構成されている。これにより図示の例では、クリップCの留め付け対象物Pへの留め付け状態において、この留め付け対象物Pに形成された貫通穴Hを入れ込み部1の入れ込み手前側Bwにおいて基部4によって覆って塵埃や塵芥がこの側から入れ込み先側Fwに入り込まないようにシールするようになっている。
【0036】
(図6及び図7に示される第二例)
図6および図7に示されるクリップCにあっては、前記基部4には、所定の前記捻回位置で貫通穴Hに入り込む回り止め突起4dが形成されていると共に、
入れ込み部1の分岐部1bには、留め付け対象物Pの一面側に弾性変形しながら接して、基部4を留め付け対象物Pの他面に押しつけるバネ手段1cが備えられている。
【0037】
図示の例では、基部4は軸状主体3を中心としてこの軸状主体3から張り出すように構成されている。回り止め突起4dはこの基部4における入れ込み部1の形成側であって、この基部4の縁部に形成されている。回り止め突起4dは基部4の直径方向両側にそれぞれ設けられていると共に、一対の回り止め突起4d、4dを通る仮想の直線に対し一対の分岐部1b、1bの突きだし端を通る仮想の直線が交叉(図示の例では略直交)するように回り止め突起4dは形成されている。
【0038】
バネ手段1cは、分岐部1bにおける基部4に向けられた側に形成されている。図示の例では、かかるバネ手段1cを、片両端をそれぞれ分岐部1bに一体に連接させ片中間部を弧状に張り出させたアーチ状をなす弾性帯状片1dとしている。かかる弾性帯状片1dの片中間部と回り止め突起4dとの間の入れ込み部1の入れ込み方向におけるピッチは、留め付け対象物Pの厚さより小さくなるようにしてある。
【0039】
かかる構成によれば、留め付け対象物Pの貫通穴Hに入れ込み部1を入れ込ませきった後、回り止め突起4dをこの留め付け対象物Pにおける貫通穴Hへの入れ込み手前側Bwの面にバネ手段1cを弾性変形させて押し当てさせながら、前記捻回操作をなすことができる。この状態から回り止め突起4dが貫通穴Hに入り込む位置まで捻回操作がなされるとバネ手段1cの弾性復帰によって回り止め突起4dは貫通穴H内に入り込み、分岐部1bの前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。これにより留め付け対象物Pに対するクリップCの留め付け状態は安定的に維持される。この状態から、回り止め突起4dを貫通穴Hから抜け出させるようにバネ手段1cを弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップCを再び捻回操作することでクリップCの留め付けは解かれる。この留め付けの解除にあたり回り止め突起4dが貫通穴Hの穴縁によって傷付けられることはない。
【0040】
(図8及び図9に示される第三例)
図8および図9に示されるクリップCにあっては、前記入れ込み部1の分岐部1bには、所定の前記捻回位置で留め付け対象物Pに形成させた回り止め凹所Hcに入り込む回り止め突起1eが形成されていると共に、
基部4には、留め付け対象物Pの一面に分岐部1bを押しつけるように、留め付け対象物Pの他面側に弾性変形しながら接するバネ手段4eが備えられている。
【0041】
図示の例では、基部4は軸状主体3を中心としてこの軸状主体3から張り出すように構成されている。バネ手段4eは、かかる基部4における軸状主体3を挟んだ両側であって入れ込み部1の形成側に形成されている。図示の例では、かかるバネ手段4eを、片両端をそれぞれ基部4に一体に連接させ片中間部を弧状に張り出させたアーチ状をなす弾性帯状片4fとしている。かかる弾性帯状片4fの片中間部と回り止め突起1eとの間の入れ込み部1の入れ込み方向におけるピッチは、留め付け対象物Pの厚さより小さくなるようにしてある。
【0042】
一方、回り止め突起1eは、一対の分岐部1b、1bにおける基部4に向けられた側にそれぞれ形成されている。
【0043】
回り止め凹所Hcは、留め付け対象物Pにおける貫通穴Hへの入れ込み部1の入れ込み先側Fwの面に形成されている。図示の例では、回り止め凹所Hcは、貫通穴Hの幅広部Ha’を挟んだ両側に形成されている。
【0044】
かかる構成によれば、留め付け対象物Pの貫通穴Hに入れ込み部1を入れ込ませきった後、回り止め突起1eをこの留め付け対象物Pにおける貫通穴Hへの入れ込み先側Fwの面にバネ手段4eを弾性変形させて押し当てさせながら、前記捻回操作をなすことができる。かかる捻回操作により回り止め突起1eが回り止め凹所Hcに入り込む位置に至るとバネ手段4eの弾性復帰によって回り止め突起1eは回り止め凹所Hcに入り込み、分岐部1bの前記引っかかりを解く向きへの回動が阻止される。これにより留め付け対象物Pに対するクリップCの留め付け状態は安定的に維持される。この留め付けにあたり回り止め突起1eが貫通穴Hの穴縁によって傷付けられることはない。この状態から、回り止め突起1eを回り止め凹所Hcから抜け出させるようにバネ手段4eを弾性変形させながら、前記捻回操作前の位置までクリップCを再び捻回操作することでクリップCの留め付けは解かれる。
【符号の説明】
【0045】
C クリップ
P 留め付け対象物
H 貫通穴
Ha 受け入れ部
Hb 受け入れ部
1 入れ込み部
1a 軸部
1b 分岐部
4 基部
4b 回り止め突起
4c 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
基部は弾性変形可能に構成されていると共に、この基部にこの基部の弾性変形操作を可能とする操作部が備えられていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
基部に、所定の捻回位置で貫通穴に入り込む回り止め突起が形成されていると共に、
操作部の操作により貫通穴から回り止め突起を抜き出させる向きの基部の弾性変形が可能となっていることを特徴とするクリップ。
【請求項3】
回り止め突起は、基部における入れ込み部の形成側の圧接面部に形成されていると共に、
操作部は、基部における圧接面部と反対の側であって、回り止め突起と略背中合わせとなる位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
基部の圧接面部が、入れ込み部の軸部を吸盤中心とするように成形された吸盤状をなすように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のクリップ。
【請求項5】
基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
入れ込み部の分岐部には、留め付け対象物の一面側に弾性変形しながら接して、基部を留め付け対象物の他面に押しつけるバネ手段が備えられていることを特徴とするクリップ。
【請求項6】
基部に、所定の捻回位置で貫通穴に入り込む回り止め突起が形成されていることを特徴とする請求項5に記載のクリップ。
【請求項7】
基部から突き出す軸部と、この軸部からこの軸部に略直交する向きに突き出す分岐部とを備えてなる入れ込み部を備えており、この入れ込み部の軸部の受け入れ部に分岐部の受け入れ部を連通させてなる留め付け対象物に形成された貫通穴にこの入れ込み部を入れ込んだ後の軸部を中心にした捻回操作によりこの留め付け対象物に留め付くクリップであって、
基部には、留め付け対象物の一面に分岐部を押しつけるように、留め付け対象物の他面側に弾性変形しながら接するバネ手段が備えられていることを特徴とするクリップ。
【請求項8】
入れ込み部の分岐部に、所定の前記捻回位置で留め付け対象物に形成させた回り止め凹所に入り込む回り止め突起が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158099(P2011−158099A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115146(P2011−115146)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【分割の表示】特願2007−287106(P2007−287106)の分割
【原出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】