説明

クリーニングブレード部材

【課題】 成形性に優れ、温度依存性が小さく、耐摩耗性に優れたクリーニングブレード部材を提供する。
【解決手段】 ポリオール、ポリイソシアネート、及びジアミノ化合物を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形してなる注型タイプのポリウレタン部材からなり、ジアミノ化合物の融点が80℃以下であり、ポリイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)とをブレンドしたものであり、ポリイソシアネート全体に対してTODIの含有比率が30〜100重量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード部材に関し、特に、電子写真法において感光体や転写
ベルトなど、トナー像が形成され且つその後当該トナー像を被転写材に転写するトナー像
担持体上のトナーを除去するクリーニングブレード部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真プロセスでは、電子写真感光体あるいは転写ベルト等を繰り返し使用するために、トナーを除去するクリーニングブレードが用いられる。クリーニングブレードは、長期間に亘って感光体に当接させるものであるため、耐摩耗性が良好であることが求められている。なお、クリーニングブレード部材にはポリウレタンが使用される。ポリウレタンは、耐摩耗性が良好で、補強剤などを添加しなくても十分な機械的強度を有し、非汚染性であるからである。しかしながら、ポリウレタンの物性には温度依存性があることが知られている。温度依存性は特に反発弾性に現れ、ポリウレタンでクリーニングブレードとした場合のクリーニング上の問題となっている。
【0003】
そこで、イソシアネート系化合物およびイミド変性イソシアネート系化合物の混合物、ポリオール、及びジアミノ化合物を備えるウレタンウレアイミド組成物を用いて形成したOA機器用ウレタンウレア部材がクリーニングブレードとして用いることができることが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、ポリイソシアネートと、ポリオールと、ジアミノ化合物(2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン)とを含有するポリウレタン組成物を硬化反応させることで高温時の耐摩耗性や耐欠け性を向上させることを目的としたクリーニングブレードが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2で用いられるジアミノ化合物(2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン)は、反応速度が速いため、シートが成形できないという問題があった。
【0006】
そこで、成形性に優れ、温度依存性が小さく、耐摩耗性に優れたものが望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−076241号公報
【特許文献2】特許第3666331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、成形性に優れ、温度依存性が小さく、耐摩耗性に優れたクリーニングブレード部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ポリオール、ポリイソシアネート、及びジアミノ化合物を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形してなる注型タイプのポリウレタン部材からなり、前記ジアミノ化合物の融点が80℃以下であり、前記ポリイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)とをブレンドしたものであり、前記ポリイソシアネート全体に対して前記TODIの含有比率が30〜100重量%であることを特徴とするクリーニングブレード部材にある。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のクリーニングブレード部材において、前記ジアミノ化合物は、分子構造に塩素原子を含まないが芳香環を有し、且つ2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを同一の硬化・成形条件で用いた場合と比較して、反応速度が遅いことを特徴とするクリーニングブレード部材にある。
【0011】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が、10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbT10及びRbT50としたとき、下記式で表されるΔRb(%)が、40以下であることを特徴とするクリーニングブレード部材にある。
【0012】
【数1】

【0013】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が、破断伸びが300%以上であることを特徴とするクリーニングブレード部材にある。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様に記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が、tanδ(1Hz)のピーク温度が10℃以下であることを特徴とするクリーニングブレード部材にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、MDIとTODIとをブレンドしたポリイソシアネートからなるポリウレタン組成物に、ジアミノ化合物を配合することにより、成形性に優れ、温度依存性が小さく、耐摩耗性に優れたクリーニングブレード部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、ポリオール、ポリイソシアネート、及びジアミノ化合物を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形してなる注型タイプのポリウレタン部材からなり、ジアミノ化合物の融点が80℃以下であり、ポリイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)をブレンドしたものであり、ポリイソシアネート全体に対してTODIの含有比率が30〜100重量%となるようにすることにより、成形性に優れ、温度依存性が小さく、耐摩耗性に優れたクリーニングブレード部材を実現したものである。
【0017】
すなわち、本発明のクリーニングブレード部材は、融点が80℃以下のジアミノ化合物を用いることにより、低温においても機械的特性を維持し、反発弾性の温度依存性を小さくすることができ、また、ポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と共に3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)を用いることにより成形性に優れたものとなる。また、ジアミノ化合物と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)とを用いることにより、高硬度で高反発弾性のクリーニングブレード部材となるという効果を奏する。
【0018】
本発明にかかるジアミノ化合物は、融点が80℃以下である。反応時にジアミノ化合物を融点以上の温度に上げる必要があり、その温度が80℃以上の場合は極端にポットライフが短くなるからである。ポットライフが短くなると、成形が行えなくなったり、寸法精度が悪化してしまう。なお、ここでいう「ポットライフ」とは、粘度が比較的低く、流動性を保持した状態の時間のことである。
【0019】
さらに、ジアミノ化合物は、分子構造に塩素原子を含まないが芳香環を有し、且つジアミノ化合物である2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを同一の硬化・成形条件で用いた場合と比較して、反応速度が遅いものが好ましい。上述したジアミノ化合物は、塩素原子を含まないために立体障害がほとんどなく、芳香環を有しているため、これを用いて硬化させたポリウレタンは、温度依存性が小さくなり、機械的強度及び耐摩耗性に優れたものになるからである。また、2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンよりも反応速度が遅いジアミノ化合物を用いてポリウレタンを製造すると、反応速度が速すぎてシートが成形できないという虞がなくなる。
【0020】
また、ジアミノ化合物は、室温においてリキッドタイプまたはソリッドタイプのものがあるが、リキッドタイプが好ましい。上述した条件を満たすジアミノ化合物としては、例えばジアミノジフェニルメタン系、フェニレンジアミン系が挙げられ、具体的には、4,4’−メチレンジアニリン(DDM)、3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)、2,4−トルエンジアミン(2,4−TDA)、2,6−トルエンジアミン(2,6−TDA)、メチレンビス(2−エチル−6−メチルアミン)、1,4−ジ−sec−ブチルアミノベンゼン、4,4−ジ−sec−ブチルアミンジフェニルメタン、1,4−ビス(2−アミノフェニル)チオメタン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート等を挙げることができる。
【0021】
ポリオールとしては、ジオールと二塩基酸との脱水縮合で得られるポリエステルポリオール、ジオールとアルキルカーボネートの反応により得られるポリカーボネートポリオール、カプロラクトン系のポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることができる。なお、ポリオールの配合割合は、ポリウレタン中に60〜80重量%であるのが好ましい。この範囲となるようにすると、機械的強度に優れるブレードとなるからである。
【0022】
本発明にかかるポリイソシアネートは、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)をブレンドしたものであり、ポリイソシアネート全体に対してTODIの含有比率が30〜100重量%となるように配合する。上述したように、ポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と共に3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)を用いることによりクリーニングブレード部材が成形性に優れたものとなるからである。また、上述したジアミノ化合物を配合する際に、全ポリイソシアネートに対して3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)の含有比率が30重量%よりも低くなると、ポリウレタン部材を製造する際に反応が速く進行しすぎて成形がうまくいかないためである。
【0023】
また、ポリイソシアネートの配合割合は、ポリウレタン中に25〜70重量%であることが好ましい。25重量%未満では引張強さが不十分になる場合があるからであり、70重量%より多いと永久伸びが大きくなりすぎるため好ましくない。
【0024】
本発明では、架橋剤としてジアミノ化合物を用いるが、さらに短鎖ジオール又は短鎖トリオールを併用するのが好ましい。短鎖ジオールは特に限定されないが、例えば、プロパンジオール(PD)、ブタンジオール(BD)等が挙げられる。また、短鎖トリオールも特に限定されないが、分子量が120〜4000のトリオールが好ましく、さらに好ましくは120〜1000のトリオールである。具体的には、トリメチロールエタン(TME)、トリメチロールプロパン(TMP)等の短鎖トリオール等を挙げることができる。なお、短鎖トリオールはクリープや応力緩和などの特性を改良するために添加されるものである。また、架橋剤中の3官能架橋剤のモル比が0〜0.6であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.4である。
【0025】
なお、ジアミノ化合物、短鎖ジオール等の2官能架橋剤も、短鎖トリオール等の3官能架橋剤もそれぞれ二種以上混合して用いてもよい。
【0026】
また、α値は0.7〜1であることが好ましい。α値とは、下記式で表される値である。α値が、1より大きいと架橋剤の水酸基やジアミノ基の官能基が残存するため当接する感光体等が汚染してしまい、0.7未満では架橋密度が少なすぎて強度が不十分となったり、残存イソシアネートの失活に時間がかかり感光体を汚染する場合がある。
【0027】
【数2】

【0028】
上述したポリオール、ポリイソシアネート、ジアミノ化合物等を配合し、反応させることによりポリウレタンを製造する。ポリイソシアネート重量部や、架橋剤の重量部及びモル比率等を調整することによって、機械的特性に優れたクリーニングブレード部材とすることができる。
【0029】
ポリウレタン部材の製造では、プレポリマー法やワンショット法など、ポリウレタンの一般的な製造方法を用いることができる。プレポリマー法は強度、耐摩耗性に優れるポリウレタンが得られるため本発明には好適であるが、製法により制限されるものではない。
【0030】
本発明にかかるポリウレタン部材は、ポリオール、ポリイソシアネート、ジアミノ化合物等の配合の割合を適宜調整することにより、10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbT10及びRbT50としたとき、下記式で表されるΔRb(%)が、40以下となるようにすることが好ましく、さらに好ましくは、25以下である。
【0031】
【数3】

【0032】
この条件を満たすことで温度依存性が小さく、環境が変化しても十分に安定したクリーニングブレード部材となるからである。
【0033】
また、ポリウレタン部材は、破断伸びが300%以上であることが好ましい。破断伸びが300%より小さくなると、ポリウレタン部材(クリーニングブレード部材)の耐摩耗性が悪く、カケが生じやすくなるためである。
【0034】
また、ポリウレタン部材はtanδ(1Hz)のピーク温度が10℃以下であることが好ましい。低温低湿環境でもゴム性を維持でき、欠けの発生しにくいクリーニングブレード部材となるからである。
【0035】
本発明にかかるポリウレタン部材は、好ましくは硬度がJIS Aで60〜95°である。この範囲の硬度であれば、十分なクリーニング性が得られるからである。
【0036】
上述した構成からなるポリウレタン部材を用いることで、本発明のクリーニングブレード部材は、比較的高硬度で、機械的特性を維持した上で、反発弾性の温度依存性が著しく小さいものとなり、低温においても安定した性能を発揮できる。
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0038】
(実施例1)
分子量2000のカプロラクトン(PCL)100重量部、3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)を35重量部配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)/トリメチロールプロパン(TMP)をα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合し、反応させてポリウレタンとした。このポリウレタンを切断して実施例1のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0039】
(実施例2)
分子量2000のカプロラクトン(PCL)100重量部、MDIとTODIを0.4:0.6の重量比率で計40重量部となるように配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.4となるように配合し反応させてポリウレタンとした。このポリウレタンを切断して実施例2のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0040】
(実施例3)
MDIとTODIを0.5:0.5の重量比率で計35重量部となるように配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例2と同様にして実施例3のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0041】
(実施例4)
MDIとTODIを0.7:0.3の重量比率で計35重量部となるように配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例2と同様にして実施例4のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0042】
(比較例1)
MDIとTODIを0.8:0.2の重量比率で計35重量部となるように配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例2と同様にして比較例1のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0043】
(比較例2)
TODIの代わりにMDIを35重量部配合し、架橋剤として3,5−ジメチルチオ−2,4−トルエンジアミン(DMTDA)/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例1と同様にして比較例2のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0044】
(比較例3)
MDIとTODIを0.5:0.5の重量比率で計50重量部となるように配合し、架橋剤としてブタンジオール(BD)/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例2と同様にして比較例3のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0045】
(比較例4)
TODIを配合せず、MDIを60重量部配合し、架橋剤としてBD/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.2となるように配合した以外は実施例1と同様にして比較例4のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0046】
(比較例5)
TODIを配合せず、MDIを40重量部配合し、架橋剤としてBD/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.3となるように配合した以外は実施例1と同様にして比較例5のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0047】
(比較例6)
TODIを配合せず、MDIを50重量部配合し、架橋剤としてBD/TMPをα値が0.95で且つ架橋剤中の3官能架橋剤のモル比率が0.4となるように配合した以外は実施例1と同様にして比較例6のテストサンプル及びクリーニングブレードを得た。
【0048】
(試験例1)
各実施例及び各比較例のテストサンプルの成形性及び表面性を評価した。ここで、「表面性」とはテストサンプルの表面の状態であり、表面の状態に問題がないものを○、表面の状態に問題があるものを×と評価した。また、「成形性」については、成形の際に問題がなかったものを○、成形の際に問題があったものを×と評価した。
【0049】
また、各実施例及び比較例4〜6のテストサンプルについて、25℃でのゴム硬度(JIS A)をJIS K6301に準拠して、100%伸張時の引張強さ(100%Modulus)、200%伸張時の引張強さ(200%Modulus)及び300%伸張時の引張強さ(300%Modulus)をJIS K6251に準拠して、引張強度及び破断時の伸びをJIS K6251に準拠して、引裂強度をJIS K6252に準拠して、ヤング率をJIS K6254で25%伸長により、25℃での反発弾性(Rb)をJIS K6301に準拠したリュプケ式反発弾性試験装置により測定した。さらに、反発弾性(Rb)については10℃〜50℃でも測定し、温度依存性についても評価した。また、tanδをセイコーインスツル社製熱分析装置EXSTAR6000DMS粘弾性スペクトロメータで1Hzにて測定し、ピーク温度を求めた。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
(結果のまとめ)
実施例1〜4のテストサンプルは、成形性及び表面性に優れたものであった。また、いずれも硬度がJIS Aで90°以上であり、反発弾性がいずれも41%以上であった。これより、本願発明のクリーニングブレード部材は、高硬度であり且つ高反発弾性であるということがわかった。
【0052】
また、100%Modulus、200%Modulus、及び300%Modulusはいずれも大きく、破断伸びは300%以上で、引裂強度も高く、機械的強度に優れたものであった。また、反発弾性の温度依存性は非常に低く、tanδ(1Hz)のピーク温度はいずれも10℃以下であった。これより、本願発明のクリーニングブレード部材は、機械的特性に優れ、環境が変化しても安定した特性を維持するものであることがわかった。
【0053】
これに対し、比較例1及び2のように、TODIが規定より少ない、又は配合されていないポリウレタン組成物を反応させると、反応速度が速すぎたためか、気泡が生じてしまいテストサンプルを成形することができなかった。また、比較例3のように、TODIを配合したが、ジアミノ化合物を配合しなかったポリウレタン部材は、成形性には問題がなかったが、成形したテストサンプルの表面には球晶が生じていた。
【0054】
また、比較例4〜6のようにジアミノ化合物及びTODIをいずれも配合しないポリウレタン部材は、成形性及び表面性には問題がなかったが、破断伸び、引張強度等の機械的強度、反発弾性、又はtanδピーク温度において満足する結果が得られなかった。また、反発弾性の温度依存性が高かった。
【0055】
(試験例2)
各実施例及び比較例3〜6のクリーニングブレードを実機(富士ゼロックス社製:Docu Center color 400)に取り付け、クリーニングブレードを当接させた感光体を、LL環境(10℃×35%)、NN環境(23℃×55%)及びHH環境(30℃×85%)の各環境下で、線速125mm/secにて空回し、連続運転を60分間行った。その後、各環境下のクリーニングブレードのエッジの摩耗状態をレーザー顕微鏡により観察・測定し、摩耗断面積の平均値が10μm2未満の場合を○、10〜20μm2の場合を△、20μm2より大きい場合を×として耐摩耗性を評価した。また、聴覚により鳴きの有無を判断し、鳴きが発生しなかった場合を○、発生した場合を×として評価した。さらに、感光体のクリーニング性の評価を行い、クリーニングが良好にできたものを○、クリーニングができなかったものを×とした。測定条件を以下に、結果を表2に示す。
<レーザー顕微鏡測定条件>
測定機:キーエンス VK−9500、倍率:50倍、
測定モード:カラー超深度、
光学ズーム:1.0倍、測定ピッチ:0.10μm、
測定箇所:クリーニングブレード1本内5点
(両端から20mm及び80mmの地点並びに中央)
【0056】
【表2】

【0057】
(結果のまとめ)
実施例1〜4のクリーニングブレード部材は、いずれの環境においても、鳴きが発生することなかった。また、耐摩耗性に優れ、クリーニング特性は良好であった。
【0058】
これに対し、比較例4のクリーニングブレード部材は、破断伸びが300%以下であったためか、いずれの環境においても耐摩耗性が悪く、さらにLL環境、HH環境においてはクリーニングできなかった。また、比較例5のクリーニングブレード部材は、反発弾性の温度依存性が高く、LL環境においてはクリーニングできず、HH環境においては鳴きが発生し、耐摩耗性が悪く、クリーニングもできなかった。比較例6のクリーニングブレード部材は、tanδ(1Hz)のピーク温度が高く、LL環境においてはクリーニングできず、HH環境においては鳴きが発生し、耐摩耗性が優れず、クリーニングもできなかった。
【0059】
これより、本願発明のクリーニングブレード部材は、耐摩耗性に優れるものであることがわかった。また、温度に依存することなく、いずれの環境においても良好に使用できるものであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ポリイソシアネート、及びジアミノ化合物を少なくとも含むポリウレタン組成物を硬化・成形してなる注型タイプのポリウレタン部材からなり、前記ジアミノ化合物の融点が80℃以下であり、前記ポリイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と3,3−ジメチルフェニル−4,4−ジイソシアネート(TODI)とをブレンドしたものであり、前記ポリイソシアネート全体に対して前記TODIの含有比率が30〜100重量%であることを特徴とするクリーニングブレード部材。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニングブレード部材において、前記ジアミノ化合物は、分子構造に塩素原子を含まないが芳香環を有し、且つ2,2’,3,3’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンを同一の硬化・成形条件で用いた場合と比較して、反応速度が遅いことを特徴とするクリーニングブレード部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が10℃及び50℃の反発弾性をそれぞれRbT10及びRbT50としたとき、下記式で表されるΔRb(%)が、40以下であることを特徴とするクリーニングブレード部材。
【数1】

【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が、破断伸びが300%以上であることを特徴とするクリーニングブレード部材。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のクリーニングブレード部材において、前記ポリウレタン部材が、tanδ(1Hz)のピーク温度が10℃以下であることを特徴とするクリーニングブレード部材。

【公開番号】特開2008−52261(P2008−52261A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187482(P2007−187482)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】