説明

クリームチーズおよび製造方法

【課題】クリーミーな口当たりに優れた高脂肪クリームチーズ製品を作製する方法を提供する。
【解決手段】乳源および任意選択の脂肪源を合わせて、約7%以下の第1の脂肪レベルを有する標準化乳ベースを形成することができ、次いでこのベースに細菌菌スターターカルチャーを接種し発酵させる。発酵後、任意選択のpH調節ステップを行ってもよく、pHはスイート(即ち、未発酵の)ミックスを添加することによって調節してもよい。次いで発酵乳ベースを限外濾過し、第1の脂肪レベルよりも高く約20%までの第2の脂肪レベルを有する限外濾過濃縮物が得られる。限外濾過濃縮物を約20%よりも高い脂肪含量を有するサワークリームと合わせ、次いで合わせた混合物を加熱し、均質化し、包装する結果、約20%よりも高い脂肪含量を有する高脂肪クリームチーズ製品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、改善された高脂肪クリームチーズに関し、特に、そのようなクリームチーズを作製するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリームチーズは、脂肪源(例えば、クリームおよびミルクの混合物)を含む乳系成分で作製された、酸性の、培養されまたは直接酸化された、保存処理されていないチーズである。全脂肪クリームチーズは、米国内では含水量が55%以下の少なくとも33%の乳脂肪を含有しかつpH範囲が約4.4から約4.9である、ソフトでマイルドな味のチーズスプレッドである。欧州では、全脂肪クリームチーズは、典型的には少なくとも約23%の乳脂肪を含有する。これらは、一般に高脂肪製品または全脂肪製品と見なされる。
【0003】
典型的には、クリームチーズの作製では、乳系食品ベース、例えばミルクを、脂肪源、例えばクリームと混合し、その後、低温殺菌ステップを行う。低温殺菌ステップの前または後に、クリームチーズの混合物を均質化してもよい。これらのステップの後、細菌培養物を添加して、この混合物に例えば乳酸産生培養物を接種することにより、発酵を開始することができる。発酵ステップは、典型的には少なくとも約10時間、特に約1から2日間行うことができる。適切な培養物には、例えば中温性および高温性の乳酸産生細菌から選択された、乳酸菌スターターカルチャーを含めてもよい。典型的には、発酵プロセスは、その「カルチャーノート」によって消費者に好ましい最終製品をもたらす。カルチャーノートは、発酵させたクリームチーズ製品に関連した風味および/または香りを指す。
【0004】
発酵プロセス中、ミルクは、ミルク中のカゼインが析出する点まで酸性化する。この凝固によって凝乳が生成され、この凝乳が、最終的にはクリームチーズと、水、ラクトース、およびその他のタンパク質を含有する液体部分である乳清とになる。分離ステップは、凝乳タンパク質から水分を除去するのに用いられ、したがって、凝乳を乳清から分離するのに使用される。分離ステップは、典型的には遠心分離プロセスを含み、乳清が凝乳から分離され、このプロセスから除去される。このタイプの分離プロセスを使用する場合、乳清相を凝乳相から除去したときに風味が失われる可能性がある。分離ステップ後、混合物を均質化してもよく、その結果、最終的なクリームチーズ製品が得られる。
【0005】
限外濾過は、より風味のある製品が提供されるよう低脂肪クリームチーズ製品を製造するときに、分離ステップとして用いられてきた。低脂肪クリームチーズベースの使用は、粘性コンシステンシーが低いことによる加工上の問題を、典型的には引き起こすことがなく、限外濾過ユニットの膜は、低脂肪チーズベースが提供される場合に通常は詰まらずまたは塞がれない。さらに、限外濾過プロセスは、凝乳と乳清とを共に一緒に濾過残留分中に保持し、水と、存在するとしても乳清タンパク質を少ししか含まない低分子量の溶質とを含有する水分相を分別する。このように、風味成分および/または乳清タンパク質は、そのような低脂肪クリームチーズ製品中に保持される。
【0006】
高脂肪クリームチーズベースを調製するのに限外濾過を使用する試みは、限外濾過膜の早期の目詰まりをもたらす濃縮プロセス中の粘度上昇および/または圧力の問題などの加工上の問題により、一般に不成功に終わっている。限外濾過は、限外濾過に供される出発成分として未発酵のスイートクリームミックスを使用したときに、いくらか首尾良く全脂肪クリームチーズの製造で用いられているが、この濾過をしばしば「スイート」限外濾過と呼んでいる。スイートクリームは、まだ発酵していないクリームとミルクとの混合物である。発酵は、限外濾過プロセス後に初めて行われる。しかし、限外濾過ステップ中に非常に多くのカルシウムが濃縮されるので、最終的なクリームチーズ製品は、乳清が第2の分離ステップで除去されていない場合、より苦い不愉快な味を有することがある。さらに、発酵中に細菌に必要とされる基質であるラクトースの一部は、限外濾過プロセス中に除去されており、したがって、発酵中のpH低下をより困難にする。このように、クリームチーズベースの発酵後に限外濾過を使用して、高脂肪クリームチーズを提供することが可能ではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発酵後に限外濾過を用いて高脂肪クリームチーズ製品を作製するための、改善された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
最初に、低脂肪分、即ち7%以下の標準化乳ベースを提供する。この乳ベースを、均質化し低温殺菌することができる。次いで得られたスイート(即ち、未発酵の)ミックスに、スターターカルチャーを接種し、発酵させることができる。結果的に生じた発酵乳ベースは、pHを調節してもしなくてもよく、次いで限外濾過プロセスに供することができる。
【0009】
本発明のプロセスでは、脂肪の標準化および風味を目的として、発酵した低脂肪限外濾過濃縮物にサワークリームが添加される。サワークリームは、少なくとも約20%以上、特に約20%から約60%の脂肪レベルを有することができる。好ましくは、約30%から約50%の間の脂肪レベルを有するサワークリームを、提供することができる。添加されるサワークリームの量は、所望のクリームチーズの口当たりを維持しながら、クリームチーズ製品に所望の総脂肪含量を得るのに有効である。実際、サワークリームは、クリームチーズのクリーミーさのプロファイルを、限外濾過なしで作製された通常の全脂肪クリームチーズ製品よりも改善することができる。
【0010】
より低い脂肪分の発酵クリームチーズミックスを使用する1つの利点は、高脂肪または全脂肪の発酵乳ベースの直接限外濾過に関連した膜の詰まりの問題を有することなく、限外濾過プロセスを用いて高脂肪製品を作製することが可能になることである。限外濾過プロセスは、膜の詰まりの問題なしに実施することができる。サワークリームを直接添加することができる、発酵させた限外濾過低脂肪凝乳濃縮物は、限外濾過後に発酵の必要があるスイート限外濾過とは対照的に、限外濾過プロセスから得ることができる。
【0011】
限外濾過プロセスの別の利点は、高脂肪クリームチーズの調製に使用される遠心分離などの典型的な分離技法の場合のように、凝乳またはクリームチーズミックスから乳清を分離し除去するのではなく、凝乳と共に乳清タンパク質を保持することである。発酵低脂肪クリームチーズベースの限外濾過を行うことによって、乳清タンパク質はクリームチーズ内に保持されるので、最終的な高脂肪製品の収量増加がもたらされる。
【0012】
かなりの量の乳清タンパク質を食品に組み込む追加の利点は、乳清タンパク質が、ヒトにとって高い栄養価を有していることである。実際、乳清タンパク質のアミノ酸組成は、ヒトの栄養に理想的なプロファイルに近い。乳清タンパク質は、カゼインに比べて優れた乳化能力を有することも理解される。理論に拘泥するものではないが、乳製タンパク質の組込みは、加工中の相分離などの欠点を減少させることが期待される。さらに、そのような乳清タンパク質は、チーズ製品に首尾良く組み込まれた場合にチーズ作製プロセスの全体的な効率および有効性を著しく増大させることができる、低コスト乳系製品を提供する。
【0013】
最後に、本明細書に開示される高脂肪クリームチーズ製品は、乳清タンパク質の保持およびサワークリームの添加によって、改善されたカルチャーまたはクリーミーノートを有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】限外濾過プロセスを使用して高脂肪クリームチーズ製品を作製する、基本的な方法を示す概略的流れ図である。
【0015】
【図2】限外濾過プロセスを使用して高脂肪クリームチーズ製品を作製する方法を示す、より詳細な概略的流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
高脂肪クリームチーズ製品、好ましくは全脂肪クリームチーズ製品を作製する方法を、本明細書に記述しかつ図1および2に図示する。高脂肪クリームチーズ製品は、最終製品に所望の脂肪レベルが得られるようにかつ所望のクリームチーズの口当たりおよびコンシステンシーが得られるように、発酵低脂肪凝乳または限外濾過(「UF」)によって作製された限外濾過濃縮物を最初に提供し、次いでこれらをサワークリームと混合することにより、限外濾過を介して作製することができる。発酵低脂肪凝乳濃縮物は、発酵させ次いで限外濾過した、軽または低脂肪標準化乳ベースから作製する。乳ベースは、限外濾過の前であるが発酵の後に、培養されていない(即ち、発酵していない)クリームおよびミルクを含有する混合物であるスイート乳ミックスを添加することによって、pH調節することができる。本明細書において、標準化乳ベースに適用される低脂肪は、約7%未満であるものとし;最終的なクリームチーズ製品に適用される高脂肪は、約20%超であるものとする。
【0017】
標準化乳ベースは、タンパク質:脂肪の比を約0.2から約0.8の間にすることができ、ミルクおよび任意選択でクリームを含むことができる。標準化乳ベースは、成分を加えまたは差し引くことによって、ある脂肪または脂肪/タンパク質レベルに調節されたミルクである。本明細書の標準化乳ベースは、合わせた低脂肪レベルが約7%以下である乳源および脂肪源を含むことができ、または所望の脂肪レベル(即ち、約7%以下)にある乳源のみを含むことができる。
【0018】
標準化乳ベースは、約7%以下である第1の脂肪レベルを提供する、乳源および任意選択の脂肪源を含む。ある態様では、標準化乳ベースは、約80%から約100%のミルクと、0%から約20%の脂肪とを含み、特に、約93%から約100%のミルクと、0%から約7%の脂肪とを含む。乳源中の脂肪レベルは、約7%以下、特に約5%以下を構成することができ、その場合、全乳は、4%から5%の間の脂肪を含有することができ、スキムミルクは約0.1%までの脂肪を含有することができる。クリームなどの脂肪源の脂肪レベルは、約10%から約60%の間の脂肪にすることができ、特に約40%にすることができ、その結果、クリームまたはその他の脂肪源は、乳源と合わせた合計脂肪レベルを約7%以下にすることができるようになる。乳源は、全乳、低脂肪乳、スキムミルク、クリーム、およびこれらの混合物など、クリームチーズの製造で典型的に使用される任意のミルクを含むことができる。乳源は、液体乳製品または水で元に戻される乳粉末もしくは濃縮物にすることができる。脂肪源は、全乳、クリーム、バターAMF(無水乳画分)、またはバターの任意のその他の乳系源など、典型的な乳系脂肪を含むことができる。
【0019】
あるいは、乳源が、全乳を使用するときのように十分高い脂肪含量を有する場合、脂肪源(例えば、クリーム)を必要としなくてもよい。しかし、乳源として全乳を使用する場合であっても、追加のクリームまたは脂肪を提供してもよい。したがって、乳源に脂肪源を添加することは、乳源の脂肪含量および所望の標準化乳ベースの脂肪レベル(例えば、第1の脂肪レベル)に応じて任意選択にすることができる。
【0020】
初期標準化乳ベースが得られたら、乳ベースを均質化し低温殺菌することができる。標準化乳ベースの均質化は、上流または下流にすることができ、即ち、熱処理の前または後にすることができる。ある態様では、標準化乳ベースは、約435psi(30バール)の圧力で、上流で均質化することができ、次いで約194°F(90℃)の温度で約300秒間低温殺菌することができる。約2466psi(170バール)までの均質化圧力を使用してもよく、約30秒間にわたり約175°F(79.5℃)の低温殺菌温度を使用することができる。これらは、スイート(即ち、未発酵の)ミックス調製物に使用される典型的な値である。あるいは、指定される加熱の組合せ、即ち194°F(90℃)で約300秒間によってもたらされる乳清タンパク質変性作用と均等な、任意のその他の乳熱処理ステップを適用することができる。結果として得られる均質化および低温殺菌済みの乳ベースは、発酵する前にスイートな品質または味を維持するので、スイート(即ち、未発酵の)ミックスと呼ぶことができる。
【0021】
均質化および低温殺菌ステップの後、発酵ステップが続く。細菌培養物を添加して、乳ベースに接種し、発酵させることができる。発酵ステップは、典型的には室温で少なくとも約10時間、特に最長で1から2日の間行うことができる。好ましくは、発酵ステップは、約15から約20時間、特に約16から約18時間行う。ある態様では、適切な培養物は、従来のクリームチーズの作製に使用される任意の乳酸産生細菌などの、乳酸菌スターターカルチャーを含んでいてもよい。適切な乳酸産生細菌には、例えば、乳連鎖球菌(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカスクレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカスジアセチラクチス(Streptococcus diacetyllactis)、ロイコノストッククレモリス(Leuconostoc cremoris)、およびベタコッカスクレモリス(Betacoccus cremoris)などのストレプトコッカス属(Streptococcus)またはロイコノストック属(Leuconostoc)を含めることができる。しかし、中温性および高温性の乳酸産生細菌から選択された群からの乳酸スターター培養物を利用することが好ましく、中温性細菌を使用することがさらにより好ましい。
【0022】
乳酸産生細菌は、単独でまたは組み合わせて使用することができる。理論に拘泥するものではないが、乳酸産生微生物は、乳系液中に存在するラクトースを発酵させるため、また培養物のプロテアーゼ産生の結果として凝固したカゼインからより小さいペプチドおよび遊離アミノ酸へのさらなる分解を引き起こすため、チーズの製造に使用されると考えられる。乳酸産生培養物は、約0.01%から約2%までの量で添加してもよい。培養物は、凍結乾燥した、凍結した、または液体の培養物として添加することができる。
【0023】
発酵中、標準化乳ベースのpHは低下させることができるが、それは発酵によって、典型的にはpHを約5.0以下に、特に約4.6以下に低下させるからである。したがって、限外濾過の前に、発酵乳ベースのpHを調節することが望ましいと考えられる。この調節は、pH調節剤(例えば、スイート(未発酵の)ミックス)を発酵乳ベースに添加することによって行ってもよい。スイート(即ち、未発酵の)ミックスは、別々に作製されまたは得られたスイートミックスによって提供してもよく、または好ましくは、スイートミックスは、本明細書で作製された乳ベースから生じるものであってもよい。あるいは、液体または粉末化したスイート乳清またはスイート乳清濃縮物、粉乳、乳タンパク質濃縮物、またはこれらの混合物を含む、液体乳系ブレンドなどのその他のpH調節剤を使用してもよい。しかし、ラクトース、乳酸、およびpHのみが異なるだけでサワーミックス、即ち発酵乳ベースと同じ組成を有することから、スイート(即ち、未発酵の)ミックスを添加することによるpHの調節が一般に好ましい。pHは、直接酸性化法を使用して調節することもできる。標準化乳ベースが、約4.6から約5.2の所望のpHを既に有している場合、pH調節剤の添加は必要ではない。
【0024】
ある態様では、発酵前に乳ベースの一部を取っておき、「スイート」に、即ち未発酵のまま保つことができる。これは、スイート(即ち、未発酵の)ミックスの大部分を発酵させた後にpH調節剤として使用することができる、スイート(即ち、未発酵の)ミックスである。未発酵乳ベースまたはスイートミックスの約20%までを、培養物の添加およびその後の発酵の前に取っておくことができ、約50°F(10℃)以下の温度で、またある態様では約39°F(4℃)の温度で維持することができる。次いで残りの乳ベースを、発酵させることができる。発酵後、発酵乳ベースのpHが低下した場合、分離したスイート(即ち、未発酵の)乳ベースまたはスイート(即ち、未発酵の)ミックスを元の発酵乳ベースに添加して、pHレベルを上げることができる。乳ベースのpHは、限外濾過の前にスイート(即ち、未発酵の)ミックスを用いて、約4.6から約5.2のpHに、特に約4.75のpHに、任意選択で調節することができる。スイート未発酵乳ベースの添加によるこのようなpH調節は、乳ベースのより正確なpH制御を可能にし、直接酸の添加によって時々引き起こされるような好ましくない影響をカルチャーノートに及ぼさない。
【0025】
低脂肪乳ベースの限外濾過は、発酵ステップおよび任意選択のpH調節後に行われる。限外濾過プロセスは、従来の限外濾過ユニットで行うことができる。乳ベースの限外濾過は、乳ベースまたはその一部を様々な膜フィルタに通し、そこで静水圧により液体乳ベースを半透膜に押し遣るステップを含むことができる。懸濁した高分子量の固形分および溶質は、典型的には保持され、濾過残留分または限外濾過(UF)濃縮物と呼ばれ、一方、水および低分子量の溶質は、膜を通過し、透過物と呼ばれ、除去することができる。限外濾過は、乳ベースを濃縮するのに(即ち、液相の一部を除去するのに)使用され、その結果、より高い脂肪含量および固形分含量を有するUF濃縮物が得られる。
【0026】
ある態様では、乳ベースを、限外濾過ユニット内で約131°F(55℃)の温度で維持することができる。約104°F(40℃)から約140°F(60℃)の間の温度、好ましくは約122°F(50℃)から約131°F(55℃)の温度を用いることができる。使用することができる半透膜の一例は、螺旋巻き膜であるが、管状膜や中空繊維膜などのその他の膜を利用することができる。別の態様では、限外濾過ユニットは、10kDAの螺旋巻きポリエーテルスルホン膜をステージ1および2に、またプレートおよびフレーム型25,000分子量カットオフ膜をステージ3に有することができる。
【0027】
限外濾過の後、結果的に得られる低脂肪凝乳濃縮物は、濾過残留分であり、凝乳および標準化ミルクの水相である乳清の両方を含んでいてもよい。濾過残留分またはUF濃縮物の総脂肪含量または第2の脂肪レベルは、約20%以下にすることができ、特に第2の脂肪レベル(濾過残留分の)は、第1の脂肪レベル(標準化乳ベースの)よりも高い。このように、UF濃縮物の脂肪レベルは、限外濾過の前は乳ベースの脂肪レベルよりも高いが、約20%以下である。主に分離された水相からなる透過物相は、限外濾過プロセス中にフィルタ膜の細孔を透過しまたは通過する相である。透過物相は、低脂肪凝乳濃縮物または濾過残留分から除去されたものであり、水相に可溶な乳成分からなるものであってもよい。
【0028】
UF濃縮物に所望の脂肪含量を得るために、例えば第1の脂肪レベルよりも高いが約20%以下である第2の脂肪レベルを得るために、適切な限外濾過濃縮係数を使用すべきである。この濃縮係数は、第1の脂肪レベルよりも高い約20%までの脂肪レベルおよび約36%までの固形分レベルを有するUF濃縮物をもたらすために、どの程度の量の液体を出発乳ベースから除去する必要があるかによって、即ちどの程度の量の液体を膜に通すかによって、決定することができる。一般に、限外濾過した濾過残留分は、低脂肪乳ベースに対して約2倍以上濃縮されることが好ましく;より好ましくは、約2.5倍以上である。ある態様では、第2の脂肪レベル、即ちUF濃縮物または濾過残留分中の脂肪レベルは、約10%から約20%の脂肪になり、さらにより好ましくは約15%から約20%の脂肪になる。
【0029】
次いで結果的に得られた低脂肪凝乳濃縮物をサワークリームと合わせ、脂肪レベルを最終的なクリームチーズ製品の所望のレベルに調節することによって、脂肪の標準化を行うことができる。低脂肪凝乳濃縮物に添加されるサワークリームは、典型的には約20%の脂肪よりも高い第3の脂肪レベルを含有することができる。サワークリームの典型的な脂肪レベルは、約20%から約60%を構成することができ、特に約30%から約50%である。任意選択で、バター脂肪画分を、サワークリームの代わりに添加してもよい。最終的な高脂肪クリームチーズ製品の所望の脂肪レベルは、約20%よりも高くすることができる。ある態様では、高脂肪クリームチーズ製品の最終的な脂肪レベルを、約20%から約40%にすることができる。米国市場では、クリームチーズ製品の最終的な脂肪は、好ましくは少なくとも約33%である。米国では、現行の米国品質基準(the U.S.Standards of Identity)により定義されるように、全脂肪クリームチーズは、少なくとも33%の脂肪をクリームチーズ中に含有する必要がある。欧州では、全脂肪クリームチーズに関する典型的な脂肪レベルを、約23%以上にすることができる。このように、本発明の方法は、高脂肪クリームチーズに関する現行の米国基準または高脂肪クリームチーズに関する欧州での典型的レベルを満たす、高脂肪クリームチーズ製品を提供することができる。
【0030】
したがって、低脂肪凝乳濃縮物に添加されるサワークリームの量および脂肪%は、数ある要因の中でも、望まれる最終的な脂肪レベルおよびUF濃縮物中の脂肪レベルに応じて様々になる。第1の脂肪含量および濾過残留分の量と、第3の脂肪含量およびサワークリームの量は、総脂肪含量が約20%よりも高いクリームチーズ製品を形成するのに有効な量で提供することができる。ある態様では、それぞれがほぼ等しい分量でミックスに添加されるように、低脂肪凝乳濃縮物およびサワークリームを1:1の比で添加することができる。しかし、従来の全脂肪クリームチーズ製品に関連した最終的な口当たりが少なくとも得られる限り、最終製品に所望の脂肪レベルを一緒にもたらすことができる任意の量を使用することができる。
【0031】
例えば、スキムミルクから作製したときに濾過残留分がより低い脂肪レベル、例えば約0.35%の脂肪を有する場合、より多くの量のサワークリームを添加することができる。濾過残留分の脂肪がより多く、例えば、全乳とクリームとをその出発成分として使用したときに約17%の脂肪を有する場合は、先のスキムミルクで作製された濾過残留分と同じ脂肪レベルを実現するのに、より少ないサワークリームしか必要としない。したがって、低脂肪凝乳濃縮物とサワークリームは、適切な口当たりおよび所望の最終脂肪レベルが得られる限り、またさらに濾過残留分中の脂肪レベルおよびサワークリーム中の脂肪レベルに応じて、任意の量で添加することができる。別の態様では、UF濃縮物およびサワークリームは、UF濃縮物対サワークリームに関し、1:1.5、1.5:1、および2:1などの比で添加することができる。本明細書において、「適切な口当たり」とは、従来のクリームチーズ製品の口当たりに類似していると見なされる。
【0032】
サワークリームは、ラクトコッカスクレモリス(Lactococcus cremoris)、乳酸連鎖球菌(Lactococcus lactis)、ラクトコッカスジアセチラクチス(Lactococcus diacetylactis)、高温性連鎖球菌(Streptococcus thermophilus)、ロイコノストックスクレモリス(Leuconostocs cremoris)、ブルガリア菌(Lactococcus bulgaricus)、乳酸菌(acidophilus)などの乳酸菌、またはB.ロンガム(B.longum)やB.ビフィダム(B.bifidum)などのビフィドバクテリア(Bifidobacteria)などを使用して、スイート(即ち、未発酵の)クリームを発酵させることにより、提供することができる。サワークリームは、乳酸菌の添加によって酸味が強くなり、他のクリームまたは脂肪よりもクリームチーズに近い味のプロファイルを有する。ある態様では、サワークリームは、約40%の脂肪を有する低温殺菌スイート(即ち、未発酵の)クリームから作製することができ、これを低温殺菌し、次いで均質化する。次いで均質化されたクリームに、中温菌スターターカルチャーなどの乳酸菌スターターカルチャーを接種することができ、次いで最長約24時間発酵させる。
【0033】
発酵後、サワークリームが得られ、UF濃縮物に添加されることができる状態になる。UF濃縮物およびサワークリームの温度は、典型的には異なることになる。ある態様では、UF濃縮物を約122°F(50℃)にすることができ、サワークリームを約73°F(23℃)にすることができる。乳清タンパク質濃縮物、または乳系食品に使用されるその他の典型的な成分など、任意選択の成分をUF濃縮物に添加してもよい。UF濃縮物およびサワークリームを合わせ、ある任意選択の成分を合わせた後、混合物を加熱することができる。ある態様では、クリームチーズ混合物を約117°F(47℃)に加熱することができる。一般に、クリームチーズ混合物は、約104°F(40℃)から約158°F(70℃)の温度に加熱することができる。
【0034】
限外濾過およびサワークリーム添加の後、クリームチーズ混合物のpHは、スイート(即ち、未発酵の)クリームなどのpH調節剤を添加することによってまたは直接酸性化によって、任意選択でさらに調節することができる。任意選択で、塩および安定化剤(即ち、ガム)をクリームチーズ混合物に添加して、最終的なクリームチーズ製品を形成することもできる。安定化剤は、クリームチーズ製品の口当たりを修正し、口当たりおよびクリーミーさを高め、および/または離液(自然分離)を制御するために添加することができる。塩は、クリームチーズ製品の風味および味の改善を助けるために添加することができる。任意選択の安定化剤は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、キャロブビーンガム、カラゲナンガム、アルギネートガム、ペクチンガム、コンニャクガム、カルボキシメチルセルロースガム、メチルセルロースガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースガム、およびこれらの組合せを含むことができる。塩は、約0.05%から約1.3%の量で、特に約0.5%から約0.8%の量で、クリームチーズ混合物に添加することができる。安定化剤(即ち、ガム)の総量を、約0.05%から約0.7%の量で、特に約0.15%から約0.3%の量で添加することもできる。ある態様では、塩0.7部を、1種または複数のガム0.25部と共に添加することができる。混合物は、どの程度マイルドなまたは酸味のある味が望まれるかに応じて、再度ブレンドすることができ、約4.6から約5.2のpHレベルを目的とすることができる。
【0035】
一般に、均質化ステップの目的は、凝乳状態、例えば脂肪球のみ含むような状態ではなく、乳タンパク質に結び付けられた高度に分散した状態で、脂肪を生成および/または維持することである。第2の均質化ステップは、任意のクラスターの脱塊化を補助し、必要ならば、ガムをさらに分散させることもできる。均質化は、典型的には高圧で実施される。しかし、乳系液を均質化するのに使用することができる任意の有効な均質化法を、本発明の方法と共に使用することができる。ある態様では、2段ホモジナイザを、第2の均質化ステップで使用してもよい。好ましくは、第1段を約1160psi(80バール)から約5801psi(400バール)の圧力で動作させ、第2段を約232psi(16バール)から約1160psi(80バール)の圧力で動作させることができる。
【0036】
必要なら、任意選択の成分(例えば、スパイス、香料、着色料、フルーツ、ナッツ、および香辛料など)を、最終均質化ステップの前または後に添加することができる。一般に、最終製品全体に均質に分散することができるよう、最終均質化の前に香料および着色料などを添加することが好ましく;しかし香辛料(例えば、アサツキおよびワケギなど)は、最終製品におけるそれらの一体性を維持するために、最終的な均質化の後に添加することが好ましい。ある態様では、カルシウム強化のために、カルシウムを添加してもよい。適切なカルシウム源には、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびクエン酸カルシウムを含めることができる。香料には、例えば、バターフレーバー、乳フレーバー、およびチーズフレーバーなど、様々な調味料、フルーツピューレ、および/またはフルーツパウダーを含めてもよい。甘くする目的で、スクロース、グルコース、フルクトース、またはマルトースなどの単糖およびオリゴ糖;ソルビトール、マルチトール、およびラクチトールなどの糖アルコール;およびサッカリン、アスパルテーム、ステビオサイド、およびタウマチンなどの低カロリー甘味料を使用してもよい。例えば、β−カロテンおよびアンナットなどの着色料を使用してもよい。
【0037】
ある任意選択の成分を添加した後、クリームチーズ混合物を加熱しまたは低温殺菌することができる。ある態様では、クリームチーズ混合物を、表面スクレープ熱交換器で加熱することができる。別の態様では、クリームチーズ混合物を、約149°F(65℃)から約185°F(85℃)の温度、特に約165°F(74℃)の温度に加熱することができる。さらに別の態様では、クリームチーズ混合物を、例えば約15秒間にわたり約161°F(72℃)の温度を使用して、低温殺菌することができる。加熱ステップに続き、クリームチーズ混合物を再び均質化することができる。
【0038】
均質化後、最終製品を、タブまたはプラスチック容器または小売に適した任意のその他の包装手段に、包装し充填することができる。任意選択で、均質化後であるが充填前に、クリーム化タンク内に混合物を導入するなど、口当たりをもたらすステップを加えてもよい。充填後、クリームチーズは、その包装内でさらに冷却することができる。最終的なクリームチーズ製品は、低温および高温の両方での包装技法を含めた従来の技法を使用して、包装し冷却することができる。好ましくは、最終的な均質化ステップの後、高脂肪クリームチーズを、容器に高温充填した後に冷却する。充填中の温度は、典型的には約143°F(62℃)から約167°F(75℃)である。典型的には、クリームチーズは、小売に適した容器(例えば、カップおよびタブなど)に直接高温充填され、次いで密封される。
【0039】
最終製品は、従来の分離/遠心分離法を使用して作製された通常作製の全脂肪クリームチーズ製品よりも、良好な(はるかに良好とまではいかないが)味がし、見栄えがし、感触がある高脂肪クリームチーズ製品をもたらす。本明細書の方法により作製された高脂肪クリームチーズ製品は、クリーミーで培養された風味と共に、滑らかでしっかりした口当たりを有する。典型的には、最終製品の脂肪の約1/3から約4/5は、典型的な全脂肪クリームチーズの風味を失うことなく、サワークリームの添加によって提供することができる。最終的な高脂肪クリームチーズ製品の所望の脂肪レベルは、約20%の脂肪から約40%の脂肪に及ぶことができる。
【0040】
高脂肪クリームチーズ製品の最終pHは、約4.6から約5.2にすることができる。高脂肪クリームチーズ製品は、スプレッド(即ち、塗り拡げることができるクリームチーズ)、ブリック様製品(即ち、より固いブロック形状の製品)、または中間製品として提供することができる。高脂肪クリームチーズ製品は、塗り拡げることができる製品の場合、約171°F(77℃)で測定したときに約27gから約37gの範囲内の高温Stevens硬度を有することができ、ブロック(即ち、ブリック様)クリームチーズ製品の場合、約54gから約74gの高温Stevens硬度を有することができる。高脂肪クリームチーズ製品は、塗り拡げることができるクリームチーズ製品の場合、やはり約171°F(77℃)で測定したときに約55Pasから約80Pasの間の高温Haake粘度を有することもでき、ブロック製品の場合、約55から約130Pasの間の高温Haakeを有することもできる。高温Stevens硬度は、高い(熱い)温度、例えば77℃で、クリームチーズの口当たりがどの程度しっかりしているかの尺度であり、高温Haake粘度は、充填前のクリームチーズのコンシステンシーの尺度である(例えば、軟らか過ぎずかつ硬過ぎない粘度が望まれる)。塗り拡げることができる高脂肪クリームチーズ製品は、約120gから約253gの、低温Stevens硬度値を有することもでき、ブロック製品は、約295gから約350gの低温Stevens硬度値を有することができる。低温Stevens硬度は、より低い温度、例えば52°F(11℃)で、クリームチーズの口当たりがどの程度しっかりしているかの尺度である。
【0041】
ある態様では、約4%の脂肪および約3.2%のタンパク質を有する全乳を使用することができ、その場合、標準化のために脂肪(即ち、クリーム)を添加しない(0%)。均質化および加熱の後、次いで全乳を培養することができる。次に、約10%の脂肪、約7.8%のタンパク質を有し、かつ約23%の全固形分を有する濾過残留分を作製するために、約2.5×の濃縮係数を使用して、限外濾過を実施することができる。約48%脂肪のサワークリーム約38部を混合した後、約24.8%の脂肪、約5.5%のタンパク質、および約34.5%の固形分を有する高脂肪クリームチーズを得ることができる。上記と同じ濾過残留分を使用し、48部の代わりに52部のサワークリームと混合した場合、高脂肪クリームチーズは、約30%の脂肪、約4.6%のタンパク質、および約38.6%の固形分を有することになる。
【0042】
別の態様では、標準化のために脂肪(即ち、クリーム)を全く添加せずに、スキムミルクを使用することができる。均質化、加熱、次いで培養の後、3.5×の濃縮因子で限外濾過を行って、約0.35%の脂肪、約12%のタンパク質、約17.8%の固形分を有する濾過残留分を得ることができる。次いでUF濾過残留分約40部を、約48%の脂肪含量を有する約60部のサワークリームと混合することができる。約29%の脂肪、約5.8%のタンパク質、および約39%の固形分を有する高脂肪クリームチーズを得ることができる。
【0043】
上記と同じスキムミルクに、約48%の脂肪を有する約10%のクリームを標準化のため添加し、均質化し、加熱し、培養した後に、同じ係数(3.5×)を使用して限外濾過を行い濃縮した場合、濾過残留分は、約17.2%の脂肪、約11.4%のタンパク質、および約33%の固形分を有することになる。次いで濾過残留分約42部を、48%脂肪のサワークリーム約58部と合わせることにより、約35%の脂肪、約5.7%のタンパク質、および約44.3%の固形分を有する最終製品を得ることができる。
【0044】
図1を参照すると、限外濾過から高脂肪クリームチーズ製品を作製するための、基本的な方法を示す流れ図が示されている。第1のステップは、低脂肪標準化乳ベースを提供する。標準化乳ベースは発酵ステップに供され、このステップでは、乳酸菌スターターカルチャーを乳ベースに添加して、発酵乳ベースを形成する。発酵後、次のステップは、発酵乳ベースの限外濾過である。限外濾過ステップは、乳ベース成分からの凝乳と乳清の両方を含むUF濃縮物、即ち濾過残留分をもたらす分離ステップである。次いで限外濾過濃縮物を、サワークリームと合わせかつ混合して、最終的なクリームチーズ混合物中の脂肪含量を調節することができる。
【0045】
図2を参照すると、限外濾過から高脂肪クリームチーズ製品を作製するための、より詳細な方法を示す流れ図が示されている。第1のステップは、任意選択の脂肪源と合わせた乳源を添加して、後に混合される、標準化乳ベースである第1の混合物を形成するステップを示す。次いで乳ベースを第1の均質化ステップに供し、その後、加熱ステップ/低温殺菌ステップに供してもよい。次のステップでは、乳酸菌スターターカルチャーを乳ベースに添加する。スターターカルチャーを添加したら、乳ベースを少なくとも約10時間、好ましくは少なくとも約18時間まで発酵させる。発酵後、発酵乳ベースのpHレベルを任意選択で調節してもよい。発酵乳ベースのpHは、スイート(即ち、未発酵の)乳ミックスを発酵乳ベースに添加することによって、任意選択で調節してもよい。スイート(即ち、未発酵の)ミックスは、発酵前に標準化乳ベースから分離して取っておくことができる。
【0046】
任意選択のpH調節の後、次のステップは、発酵乳ベースの限外濾過である。限外濾過の後、透過物流および濾過残留分流をもたらす2つの流れがある。透過物流は、乳ベース中にあった水分からなり、典型的には廃棄される。第2の流れは、乳ベース成分からの凝乳および乳清の両方を含む濾過残留分またはUF濃縮物であり、濃縮されたクリームチーズの流れである。次いで濾過残留分または限外濾過濃縮物を、サワークリームと合わせて、最終的なクリームチーズ混合物中の脂肪含量を調節し、混合することができる。
【0047】
サワークリームは、最初に加熱され、次いで均質化され、次いで培養されてサワークリーム成分をもたらすスイート(即ち、未発酵の)クリームから作製することができる。乳清タンパク質濃縮物、または乳系製品で典型的に使用されるその他の成分などの、任意選択の成分を、サワークリームと共に添加してもよい。
【0048】
さらに任意選択で、塩および安定化剤をクリームチーズ混合物に添加してもよい。サワークリームを添加した後、次のステップは、表面スクレープ熱交換器で混合物を加熱するなど、クリームチーズ混合物を加熱するステップを含む。加熱後、クリームチーズ混合物をもう一度均質化し、この均質化の後に、最終的な高脂肪クリームチーズ製品を、引き続きプラスチック容器やタブなどの最終パッケージに充填し、次いで続けて冷却してもよい。
【実施例1】
【0049】
標準化乳ベースを、約5%の低温殺菌クリーム(脂肪含量は約40%脂肪)で標準化した約95%の全乳(脂肪含量約4.2%)を使用して作製した。このベースは、最終的なタンパク質:脂肪の比が約0.53であり、合わせた総脂肪レベルまたは第1の脂肪レベルは約6%であった。次いで標準化乳ベースを約435psi(30バール)で均質化し、その後、約194°F(90℃)で約300秒間低温殺菌した。
【0050】
その後、標準化乳ベース約790kgを約75°F(24℃)または室温に冷却し、約0.02%の乳酸菌スターターカルチャー、即ちDANISCO A/S(コペンハーゲン、ドイツ)から入手可能なProbat 505を接種した。乳ベースを、少なくとも約18時間発酵させた。乳ベースの一部、約15%には接種せず、スイートのまま保ち、約39°F(4℃)で保持し、必要に応じて後でpH調節するためにスイート(即ち、未発酵の)乳ミックスが維持されるようにした。発酵した乳ベースのpHは、約18時間後および冷却開始時に約4.63であった。発酵プロセスの終わり、約19時間で、最終的なpHは約4.52であった。したがって、取っておいたスイート(即ち、未発酵の)ミックスの一部(約15%)を発酵乳ベースに添加して、分離ステップの前にpHを約4.74に調節した。
【0051】
発酵乳ベース約263kgを、分離ステップのため限外濾過ユニットに供給した。Messinger System(チューリッヒ、スイス)製3段式限外濾過ユニットは、第1段および第2段にMicrodyn−Nadir GmbH(Wiesbaden、ドイツ)製のNadir膜タイプPOIO Fの10kDa螺旋巻きポリエーテルスルホン膜を備えていた。限外濾過ユニットの第3段は、Dow Chemical Company(Midland、ミシガン)製のプレートおよびフレーム、25000分子量カットオフ膜、モデルGR60PPを備えていた。発酵乳ベースをプレート熱交換器で約122°F(50℃)に加熱し、供給流量は、圧力約14.5psi(1バール)で約170 l/時であった。
【0052】
限外濾過プロセスは、まず濃縮係数約2.5×で、約27%の固形分が実現されるまで実行し、次いで最終的な総固形分約35.4%および脂肪レベル約20%が実現されるまで、濃縮係数約3.4×を使用してさらに濃縮した。第1段の終わりの透過物流量は約120 l/時および温度は約129°F(54℃)であり、かつ圧力約63.8psi(4.4バール)であった。圧力差は約34.8psi(2.4バール)であり、透過膜圧(TMP)は約14.5psi(1バール)であった。温度は、運転時間と共に定常的に上昇し、第3段で約145°F(63℃)に達した。
【0053】
第3段での濾過残留分出力流量は、約42から約52 l/時であった。冷却は、装置内でそれほど粘性のない濃縮物を有するために、約140°F(60℃)の温度に設定した。第3段での圧力は、約116psi±14.5psi(8バール±1バール)であった。圧力差は、第3段で約68psi(4.7バール)であり、TMPは約81psi(5.6バール)であった。
【0054】
約58kgの低脂肪凝乳、UF濃縮物を収集し、ブレンドおよび混合タンクのタイプのマルチバータに導入し、そこで濃縮物を、32Hz(約940rpm)で穏やかに撹拌し、かつ再循環ループポンプを49Hz(約1400rpm)で作動させた。濃縮物の乾燥物質は、約35%であった。
【0055】
サワークリームは、脂肪含量約40%の低温殺菌スイート(即ち、未発酵の)クリーム約45kgを提供し、このスイート(即ち、未発酵の)クリームを、ALPMA(Rott am Inn、ドイツ)製のような2つの表面スクレープ熱交換器(「SSHE」)を使用して約158°F(70℃)に加熱することにより作製した。一方のSSHEを約91.4°F(33℃)に設定し、第2のSSHEを約158°F(70℃)に設定した。次いでスイート(即ち、未発酵の)クリームを、約653/87psi(45/6バール)および約157°F(69.4℃)の温度で均質化した。Thoma価は0.13((p2/p1)=0.13)であり、これは、ホモジナイザの第2段の圧力と第1段の圧力との間の関係を表している。ホモジナイザのポンプは23Hzで動作させ、ホモジナイザのモータは50Hzで動作させた。流れの流量は、120 l/時であった。水を、30%のクリームでSSHEから押し出し、この30%のクリームを使用して、40%のクリームをSSHEおよびホモジナイザから押し出した。
【0056】
サワークリーム製造用の均質化されたスイート(即ち、未発酵の)クリームを、最初は約39°F(4℃)でウォータマントルでブレンダ内に直接搬送した。次いで均質化スイート(即ち、未発酵の)クリームに、Probat 505などの中温菌スターターカルチャー約7.5gを接種し、次いで約72°F(22.3℃)に冷却した。約20時間後、培養クリームのpHは約4.79であり、約23時間後のそのpHは、約70°F(21.3℃)の温度で約4.57pHであった。冷却を開始し、接種から48時間後および冷却を開始してから24時間後、到達したpHは約4.49であった。サワークリームの分析は、pH約4.45および温度約67.5°F(19.7℃)で、最終的な脂肪含量が約39.5%であり、ラクトース含量が約2.25%であり、ガラクトースが約0.05%未満であり、乳酸が約0.26%(L形)および0.01%(D形)であることを示した。
【0057】
サワークリームおよびUF濃縮物の両方が得られた後、両方の材料を、さらに加工する前に約39°F(4℃)で1日保存した。その後、等量部の濃縮物およびサワークリームを、以下の方法で一緒にブレンドした:まず、約45kgのサワークリームを、約122°F(50℃)の温度のウォータマントルを介して約77°F(25℃)まで慎重に温め、ブレンダ内でゆっくり撹拌した。
【0058】
約50°F(10℃)の温度のUF濃縮物を、Sympak Inc.、Stephan Division(Mundelein、IL)製のStephanカッタとして知られているミキサに最初に移し、約131°F(55℃)の温度に穏やかに混合した。次いでUF濃縮物約45kgを計量し、サワークリームが既に入っているブレンダに添加し、混合することにより、クリームチーズ混合物を得た。UF濃縮物を添加すると、クリームチーズ混合物の温度は約98.6°F(37℃)であり、次いでブレンド全体を、高速ブレンダ/ミキサであるリキバータに移した。リキバータは、乾燥固形分、半固形分、または液体を、スラリーまたは液体生成物に組み込むように設計されている。約149°F(65℃)のウォータジャケットで、さらに間接加熱した後、ブレンドは、約122°F(50℃)の温度であった。リキバータでは、約0.6kg(約0.7%)の塩および合計で約0.23kg(約0.25%)の安定化剤をクリームチーズ混合物に添加し、約10分間、約115.5°F(46℃)の温度でブレンドした。約4.71のpHが測定された。安定化剤は、Cesalpinia Food(Bergamo、イタリア)から提供された約0.18kg(約0.2%)のキャロブビーンガムと、Cargill(Atlanta、GA)から提供された約0.05kg(約0.05%)のカラゲナンとの混合物からなるものであった。約115°F(46℃)の温度で安定化剤を添加し混合した後、pHは、約4.79であった。再循環ループを用い、ポンプを約59Hzで運転し、撹拌器を約26Hzで運転した。
【0059】
成分をブレンドした後、ブレンドを、リキバータ内で約35分間および約112°F(44.4℃)の温度で、静止したままにした。次いでこのブレンドをSSHEで加熱して、約165°F(74℃)にした。次いでクリームチーズ混合物を2つの部分に分け、これらを2つの異なる圧力で均質化した。クリームチーズ混合物の第1の部分は、約2538/507psi(175/35バール)(p2/p1=0.2)の圧力で均質化した。均質化混合物約10kgを、200gのタブに即座に充填した(サンプル「1」)。残りの均質化サンプル約60kgを、クリーム化タンクに移し、約40分間クリーム化し;圧力がクリーム化タンク内で約510ミリバールに達したときに、クリーム化サンプル約10kgを200gのタブに充填した(サンプル「2」)。クリーム化タンクからのクリームチーズ混合物のさらに10kgを、圧力が約410ミリバールに達したときに200gのタブに充填して、意図的に過剰にクリーム化したサンプル(サンプル「3」)を得、即ち構造および充填に最適な点を超過させた。サンプル3は、圧力を低下させる、クリームチーズ混合物に与えられたより多くの熱および剪断力があるので、より低い圧力で過剰にクリーム化した。クリームチーズ混合物の第2の部分を、約4351/870psi(300/60バール)(p2/p1=0.2)のより高い圧力で均質化し、約10kgを200gのタブに充填した(サンプル「4」)。これらの4つのサンプルのレオロジー測定は、StevensおよびHaakeの装置で決定されたものであり、以下の表1に報告する。
【0060】
【表1】

【0061】
表1は、サンプル1および4が、加工に良好な高温StevensおよびHaake粘度値を有するのに対し、サンプル2および3は、塗り拡げることが可能なクリームチーズ製品にとって軟らか過ぎることを示す。サンプル2および3は、それぞれクリーム化したおよび過剰にクリーム化したサンプルであった。充填直後に、サンプルの全てを金属トレー上に置き、約50分間室温でそのままにした。その後、サンプルを、約1時間にわたり位置1に設定した状態で空気循環させながら冷却キャビネット内に置き、その後、サンプルを、約39°F(4℃)の輸送ボックス内に置いた。
【0062】
5日後、クリームチーズサンプルについて、その官能特性を評価した。より低い圧力で均質化し、引き続きクリーム化プロセスに供したチーズ(サンプル2および3)は、粒の多い外観をもたらした。クリーム化プロセスは、これらサンプルの品質および口当たりに有害であることが証明された。クリーム化反応は、この配合および加工法に必ずしも必要ではないことが観察された。クリームチーズサンプル1および4は、従来の分離法(即ち、遠心分離)を使用して作製された典型的な全脂肪クリームチーズに比べ、滑らかでしっかりしたものであることが感じられた。サンプル1および4に関する最終的な組成は、脂肪約30%、タンパク質約6.5%、および総固形分約40%であり、pHは約4.83であった。また両方のサンプルは、高いクリーミーさと発酵した乳系の風味も有し、並びに優れた口当たりを有しかつ離液はほとんどなかった(<0.4%)。低温Stevens硬度をサンプル1および4に関して測定した結果、それぞれ174±15gおよび237±15.7gであった。これらの結果の概要に関しては表2を参照されたい。サンプル1および4に関して得られた低温Stevens硬度値は、塗り拡げることが可能な品質を有する全脂肪クリームチーズ製品の120gから253gの許容可能な範囲内にあった。より高い均質化圧力で作製されたクリームチーズサンプル(サンプル4)は、より低い均質化圧力で作製されたサンプル(サンプル1)よりも硬いが、共に、感覚受容的に依然として許容可能なサンプルであった。
【0063】
【表2】

【実施例2】
【0064】
高脂肪クリームチーズ製品の別の変形例を、プロセスパラメータを少し変化させた状態で、実施例1と同じプロセスを使用して作製した。脂肪含量約4%を有する全乳約98%を提供し、約7%の低温殺菌クリーム(約40%の脂肪を有する)で標準化して、タンパク質:脂肪の比を約0.51にした。均質化および熱処理の後、スイート(即ち、未発酵の)ミックスを約76°F(24.5℃)に冷却し、約0.02%のProbat 505を接種した。スイート(即ち、未発酵の)ミックス約10%を分離し、発酵後のpH調節の際に後で使用するために取っておいた。
【0065】
発酵から約16時間後、培養ミックスのpHは、約75°F(24℃)の温度で約4.53であり、そのときに冷却を開始した。培養乳ベースを、事前に取っておいたスイート(即ち、未発酵の)ミックスを添加することによってpH調節して、pHを約4.66にし、その後、限外濾過ステップに供した。
【0066】
発酵乳ベースの限外濾過は、先の実施例のように実施した。約3.4×の濃縮係数を利用し、最終的な総固形分含量約33%が、約19%の脂肪含量を有するUF濃縮物で得られた。第3段での温度は、運転時間と共に定常的に上昇し、約133°F(56℃)に達した。
【0067】
サワークリームを実施例1のように作製し、サワークリームの最終pHは、約114°F(45℃)の温度で約4.45であった。サワークリームの脂肪含量は、約40%であった。約36kgのサワークリーム(約52%)および約33kgのUF濃縮物(約47%)を、約111°F(44℃)の温度でリキバータ内でブレンドし、この濃縮物とサワークリームとの比は約1:1.1であった。約0.2%のローカストビーンガムおよび約0.05%のカラゲナンガムを含む安定化剤を添加して、合計で約0.25%の安定化剤とし、約0.6%の塩を添加し混合し、その後、約4.64のpHが測定された。混合物の最終的な脂肪含量は約30%であり、そのタンパク質レベルは約5.7%であり総固形分は約39%であった。
【0068】
それぞれ約10kgであるミックスの3つのサンプルを得、3つの異なる圧力設定で均質化した。第1のサンプル(「サンプル5」)を約1450/290psi(100/20バール)で均質化し、第2のサンプル(「サンプル6」)を約2538/508psi(175/35バール)で均質化し、第3のサンプル(「サンプル7」)を約4351/870psi(300/60バール)で均質化した。均質化後、これらのサンプルを、別々の200gのタブに充填した。次いで各サンプルの高温粘度を測定し、その結果を以下の表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
3つのサンプル全ては、それら全てが良好なクリーミーさおよび培養風味を有するなどの、良好な官能特性を有していた。様々な均質化圧力の差は、最終製品に種々の硬さをもたらし、それでも3つのサンプル全ては、27gから37gの所望の範囲内にあるStevens高温硬度値を有していた。硬度は、均質化圧力が高くなるにつれて増大する傾向があった。これらサンプルのうち2つのサンプル6および7は、遠心分離などの従来の分離法を使用して作製された全脂肪クリームチーズに匹敵する、高脂肪クリームチーズ製品をもたらした。
【0071】
しかし、Haake高温粘度値は、55Pasから80Pasの所望の範囲内にあるとは限らなかった。サンプル5は、この範囲外にあり、おそらくは使用される均質化圧力がより低いことに起因する。サンプル6および7は、従来の分離法(例えば、遠心分離など)を使用して作製された全脂肪クリームチーズに匹敵しかつ塗り拡げることが可能なクリームチーズに望ましい硬さおよび粘度を有する、所望の範囲内の粘度値を有していた。
【実施例3】
【0072】
高脂肪クリームチーズ製品の別の変形例は、プロセスパラメータにわずかな変更を加えかつクリームチーズ混合物に乳清タンパク質濃縮物の添加を組み込んだ状態で、実施例1と同じプロセスを使用して作製した。乳ベースは、いかなる追加の脂肪源も添加しない状態で、2.5%の脂肪乳源を含んでいた。この乳源を、約194°F(90℃)で約5分間加熱し、引き続き約435psi(30バール)で均質化し、約72°F(22℃)に冷却した。次いで培養物を乳ベースに添加し、発酵させて、約4.6のpHにした。発酵後、スイート(即ち、未発酵の)ミックスを添加することによって、pHを約4.8に再度調節した。次いで限外濾過を、122°F(50℃)で約2.85×の濃縮係数を使用して実施し、その結果、総脂肪レベル(即ち、第2の脂肪レベル)が約7%であり総固形分が約23%である低脂肪凝乳濃縮物が得られた。
【0073】
低脂肪凝乳濃縮物またはUF濃縮物が得られた後、UF濃縮物約24.5kg、即ち約49%を、約40%の総脂肪含量を有するサワークリーム約23.5kg、即ち約47%と合わせた。この混合物に、乳清タンパク質濃縮物約2kg、即ち約4%も添加した。乳清タンパク質濃縮物は、約2.45%の脂肪レベルを有していた。混合物を、約122°F(50℃)に加熱し、次いで追加の塩および安定化剤、例えばガムを混合物に添加し、ブレンドした。塩約0.25kg、即ち約0.5%を、それぞれ約0.15%である等量の、即ち0.076kgのキャロブビーンガムおよびカラゲナンガムと共に、クリームチーズ混合物約50kg(約99%)に添加した。得られた混合物をブレンドし、約167°F(75℃)に加熱した。
【0074】
クリームチーズ混合物を、約4351/870psi(300/60バール)の圧力で均質化した。サンプルを、クリーム化ステップなどの剪断処理にさらに供した後、200gのタブに充填した。最終的なクリームチーズ製品は、約34%の総固形分レベル、約22%の総脂肪含量、および約4.88のpHを有しており、その最終タンパク質レベルは約6%であった。
【0075】
最終的なサンプルの硬さは、Stevens低温硬度試験などによって測定し、その値は、公知の分離法を使用して作製された従来の全脂肪クリームチーズ製品に関する120gから200gの硬度範囲内の、約138gであった。
【実施例4】
【0076】
クリーミーな全脂肪クリームチーズ製品に関する別の配合例を以下に示す。最終製品は、塗り拡げることが可能な製品ではなくブロック製品であり、標準化乳ベースへのスキムミルクの添加に起因して、より高いタンパク質レベルを含有する。標準化乳ベースは、脂肪含量が約48%の脂肪である、約3.4%の低温殺菌クリームで標準化され、かつ約0.15%の脂肪含量を有する約10%のスキムミルクの添加によってさらに標準化された、約87%の全乳(約4.5%の脂肪含量を有する)を使用して作製した。最終的なタンパク質:脂肪の比は、約0.79が得られ、合わせた総脂肪レベルまたは第1の脂肪レベルは、約5.5%であった。次いで標準化乳ベースを、約435psi(30バール)で均質化し、その後、約194°F(90℃)で約300秒間低温殺菌した。
【0077】
その後、標準化乳ベース約575kgを約79°F(26℃)またはほぼ室温に冷却し、約0.02%の乳酸菌スターターカルチャー、Probat 505を接種した。乳ベースを、少なくとも約16時間発酵させた。乳ベースの一部、約10%には接種せず、スイートなままにし、約39°F(4℃)で保持して、必要に応じて後でpH調節するためにスイート(即ち、未発酵の)乳ミックスを維持するようにした。発酵乳ベースのpHは、約16時間後、冷却を開始したときに、約4.56であった。発酵プロセスの終わりに、最終的なpHを約4.66に調節した。したがって、取っておいたスイート(即ち、未発酵の)ミックスの一部を発酵乳ベースに添加して、分離ステップ前にpHを約4.66に調節した。発酵乳ベースをプレート熱交換器で約122°F(50℃)に加熱した後、限外濾過を行った。
【0078】
発酵乳ベースを限外濾過ユニットに供給して、分離ステップを行った。実施例1と同様の限外濾過ユニットを使用した。限外濾過プロセスは、約35%の固形分が実現されるまで、約3×の濃縮係数で実行した。限外濾過ステップの前に、タンパク質レベルは約4%であり、先の実施例よりも非常に高かった。
【0079】
約50kgの低脂肪凝乳、UF濃縮物を収集し、マルチバータに導入し、そこで濃縮物を、23.7Hz(約682rpm)でかつ再循環ループポンプを37.5Hz(約1107rpm)で作動させた状態で、穏やかに撹拌した。濃縮物の乾燥物質は、約35%であった。
【0080】
サワークリームを、実施例1と同様の手順を使用して作製し、その最終的なサワークリーム製品は、約48%の脂肪含量を有していた。サワークリームを熱交換器で約140°F(60℃)に加熱し、UF濃縮物が入っているリキバータに添加した。約55%のUF濃縮物および44%のサワークリームを、一緒にブレンドした。約0.45kgの塩、即ち0.5%、および安定化剤を、添加した。安定化剤は、0.23%のローカストビーンガム(0.2kg)と、アルギネートおよびカラゲナンを合わせたもの約0.10%(0.09kg)とを含んでおり、この場合、アルギン酸ナトリウムとカラゲナンとの比は約60:40であった。
【0081】
成分をブレンドした後、次いでこのブレンドをSSHEで、約4.75のpHで約167°F(75℃)に加熱した。次いでクリームチーズ混合物を、2つの部分に分け、これらを2つの異なる圧力で均質化した。クリームチーズ混合物の第1の部分は、約2538/507psi(175/35バール)(p2/p1=0.2)の圧力で均質化した。均質化混合物約10kgを、200gのタブに即座に充填した(サンプル「8」)。クリームチーズ混合物の第2の部分は、約4351/870psi(300/60バール)(p2/p1=0.2)というより高い圧力で均質化し、約10kgを200gのタブに充填した(サンプル「9」)。高温充填後の、これら2つのサンプルのレオロジー測定は、StevensおよびHaake装置で決定されたものであり、これらを以下の表4に報告する。各サンプルごとに、2つのタブについて測定した。
【0082】
【表4】

【0083】
表4は、サンプルの全てが、サンプル1〜7よりもわずかに高い高温StevensおよびHaake粘度値を有したことを示す。これは、配合のわずかな変更と高いタンパク質含量とによる。このように、より高い硬度のクリームチーズ製品を、より高いタンパク質レベルから得ることができる。
【0084】
充填直後に、サンプルの全てを金属トレー上に置き、そこに室温で約20分間放置した。その後サンプルを、1時間、位置2に設定した空気再循環状態の冷却キャビネット内に置き、その後、サンプルを約39°F(4℃)の輸送ボックス内に置いた。
【0085】
クリームチーズサンプルは、その官能特性に関しても評価した。クリームチーズサンプル8および9は共に、従来の分離法(即ち、遠心分離)を使用して作製された典型的な全脂肪クリームチーズに比べ、滑らかで硬質であるとされた。サンプル8および9の最終的な組成は、脂肪約30%、タンパク質約7.4%、および総固形分約42%で、そのpHは約4.75であった。両方のサンプルは、高いクリーミーさと発酵乳系風味を有しており、並びに優れた口当たりでありかつ離液はほとんどなかった(<0.2%)。
【0086】
低温Stevens硬度を、両方のサンプルに関して測定し、2つの試験結果の平均を示す。これらの結果の概要については表5を参照されたい。得られた低温Stevens硬度値は、塗り拡げることが可能な製品よりも硬い組成を有する全脂肪クリームチーズブリック様製品で許容される120gから350gの範囲内にあった。2つの異なる圧力での均質化は、異なる硬さを有する2種のクリームチーズ製品をもたらしたが、主な官能属性は、これら2種の間で変わらなかった。より高い均質化圧力で作製されたクリームチーズサンプル(サンプル9)は、より低い均質化圧力(サンプル8)で作製されたサンプルよりも硬いが、それでも共に、依然として感覚受容的に許容可能であった。低温Stevens硬度値は、先のサンプル1〜7よりも約1.5から1.7倍高かったが、やはり製法の変更およびより高いタンパク質レベルに起因する。
【0087】
【表5】

【0088】
本明細書で提供される方法は、全脂肪クリームチーズの膜技術および限外濾過で典型的に直面する制約を経験することなく、限外濾過を使用して、高脂肪クリームチーズを作製できることを実証する。この方法は、まず、限外濾過で低脂肪凝乳を作製し、次いでサワークリームの濃縮後添加を介して最終的な脂肪含量を標準化するステップを含む。サワークリームの添加は、最終的なクリームチーズ製品において、クリーミーな培養風味を増大させることができ、並びに最終的な脂肪含量を増加させることができる。
【0089】
前述の事項から、限外濾過を介して高脂肪クリームチーズ製品を作製する方法が提供されることが、理解されよう。しかし、当業者によって、特許請求の範囲に記述される方法の範囲から逸脱することなく、数多くの修正および変更を行うことができる。したがって、この開示は、上述の態様および実施形態にまたは任意の特定の実施形態に限定されない。限外濾過を介して高脂肪クリームチーズ製品を作製する方法を実質的にもたらすことができる、様々な修正を、この方法に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳源を約80%から約100%および脂肪源を0%から約20%有する標準化乳ベースを提供するステップであって、
前記乳源が約7%以下の脂肪を有し、
前記脂肪源が約60%未満の脂肪を有し、
前記標準化乳ベースが約7%以下の第1の脂肪含量を有する、標準化乳ベースを提供するステップと、
細菌培養物で標準化乳ベースを発酵させて発酵乳ベースを形成するステップと、
発酵乳ベースを限外濾過して濾過残留分および透過物を形成するステップであって、
前記濾過残留分が前記第1の脂肪含量よりも高くかつ約20%以下である第2の脂肪含量を有する濾過残留分および透過物を形成するステップと、
約20%よりも高い第3の脂肪含量を有するサワークリームを提供するステップと、
前記濾過残留分および前記サワークリームを混合してクリームチーズ製品を形成するステップであって、
前記第1の脂肪含量および濾過残留分の量および前記第3の脂肪含量およびサワークリームの量が約20%よりも高い総脂肪含量を有するクリームチーズ製品を形成するのに有効であるクリームチーズ製品を形成するステップと、
を含むことを特徴とするクリームチーズ製品を作製する方法。
【請求項2】
前記乳源は、全乳、低脂肪乳、スキムミルク、クリーム、およびこれらの混合物からなる群から選択され、前記脂肪源は、クリームであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
発酵前に、前記標準化乳ベースを均質化し加熱するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
限外濾過する前に、前記標準化乳ベースのpHを、約4.6から約5.2のpHレベルに調節するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記pHレベルは、スイート未発酵乳ベースの添加によって調節されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記濾過残留分に塩および安定化剤を添加するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記安定化剤は、キサンタンガム、グアーガム、タラガム、キャロブビーンガム、カラゲナンガム、アルギネートガム、ペクチンガム、コンニャクガム、カルボキシメチルセルロースガム、メチルセルロースガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースガム、およびこれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記混合された濾過残留分およびサワークリームは、均質化されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ホモジナイザの第1段の均質化圧力は、約1160psi(80バール)から約5801psi(400バール)の間であり、ホモジナイザの第2段の均質化圧力は、約232psi(16バール)から約1160psi(80バール)の間であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記標準化乳ベースは、少なくとも約16時間発酵させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サワークリームは、約20%から約60%の間の脂肪含量を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記クリームチーズ製品の最終的な脂肪レベルは、約22%から約33%の間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記標準化乳ベースは、タンパク質と脂肪との比が約0.2から約0.8の間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
乳源および任意選択の脂肪源を有する低脂肪標準化乳ベースを提供するステップであって、
前記標準化乳ベースが約7%以下の第1の脂肪含量を有する低脂肪標準化乳ベースを提供するステップと、
前記標準化乳ベースを均質化して均質化乳ベースを形成するステップと、
細菌培養物を前記均質化乳ベースに添加するステップと、
前記均質化乳ベースを少なくとも約10時間発酵させて発酵乳ベースを形成するステップと、
前記発酵乳ベースのpHレベルを未発酵のスイート乳ベースを添加することによって約4.6から約5.2のレベルに調節するステップと、
前記発酵乳ベースから低脂肪濃縮物を分離する分離ステップを行うステップであって、
前記低脂肪濃縮物が前記第1の脂肪含量よりも高くかつ約20%までの第2の脂肪含量を有する分離ステップを行うステップと、
約20%よりも高い脂肪含量を有するサワークリームを提供するステップと、
前記サワークリームを低脂肪濃縮物に添加して、クリームチーズ混合物を形成するステップと、
前記クリームチーズ混合物を均質化するステップと、
約20%よりも高い脂肪含量を有する、最終的な高脂肪クリームチーズ製品を得るステップと、
を含むことを特徴とする高脂肪クリームチーズを作製する方法。
【請求項15】
前記分離ステップは限外濾過を含み、前記乳ベースは乳源を約80%から約100%含み、前記脂肪源は0%から約20%を構成することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
乳源および任意選択の脂肪源を有する低脂肪乳ベースを提供するステップであって、
前記乳ベースが約7%以下の第1の脂肪含量を有する低脂肪乳ベースを提供するステップと、
細菌培養物を前記乳ベースに添加するステップと、
前記乳ベースを発酵させて発酵乳ベースを形成するステップと、
前記発酵乳ベースから低脂肪濃縮物を分離する分離ステップを行うステップであって、
前記低脂肪濃縮物が前記第1の脂肪含量よりも高くかつ約20%までの第2の脂肪含量を有する分離ステップを行うステップと、
約20%よりも高い脂肪含量を有するサワークリームを提供するステップと、
前記サワークリームを低脂肪濃縮物に添加してクリームチーズ混合物を得るステップと、
を含む方法によって調製され、
最終的なクリークチーズ製品が約20%よりも高い脂肪含量を有するものであることを特徴とするクリームチーズ製品。
【請求項17】
前記分離ステップは、限外濾過を含むことを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項18】
前記乳源は約80%から約100%を構成し、前記脂肪源は0%から約20%を構成することを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項19】
前記最終的なクリームチーズ製品は、スプレッドまたはブロック型の製品であることを特徴とする請求項16に記載の製品。
【請求項20】
前記最終的なクリームチーズ製品は、スプレッドの場合に約27gから約37g、およびブロックの場合に約54gから約74gの高温Stevens硬度と、スプレッドの場合に約55Pasから80Pas、およびブロックの場合に約55Pasから約130Pasの高温Haake粘度とを有することを特徴とする請求項19に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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